(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】電磁波検出器および電磁波検出器アレイ
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0232 20140101AFI20231215BHJP
【FI】
H01L31/02 D
(21)【出願番号】P 2022545313
(86)(22)【出願日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 JP2021018235
(87)【国際公開番号】W WO2022044447
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2020141687
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、防衛装備庁 安全保障技術研究推進制度、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 新平
(72)【発明者】
【氏名】嶋谷 政彰
(72)【発明者】
【氏名】福島 昌一郎
(72)【発明者】
【氏名】奥田 聡志
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0056992(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0106933(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111341875(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108305912(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/0392,31/08-31/119
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの光電変換素子と、
前記少なくとも1つの光電変換素子と対向するように配置されたプラズモンフィルタとを備え、
前記プラズモンフィルタには、複数の貫通孔が周期的に形成されており、
前記少なくとも1つの光電変換素子は、
平面視において前記複数の貫通孔のうちの少なくとも1つの貫通孔と重なる領域を有する半導体層と、
前記領域の一部を覆うように形成された絶縁層と、
前記領域の他の一部および前記絶縁層上に配置され、かつ前記領域の前記他の一部と電気的に接続されている二次元材料層と、
前記二次元材料層と電気的に接続された第1電極部と、
前記半導体層と電気的に接続された第2電極部とを備える、電磁波検出器。
【請求項2】
前記少なくとも1つの光電変換素子において、
前記半導体層は、平面視において前記複数の貫通孔のうちの2以上の貫通孔の各々と重なる複数の領域を有し、
前記二次元材料層は、前記複数の領域の各々の前記他の一部と電気的に接続されている、請求項1に記載の電磁波検出器。
【請求項3】
前記プラズモンフィルタは、前記半導体層に対して、前記絶縁層、前記二次元材料層、および前記第1電極部と同じ側に配置されており、
前記絶縁層は、前記領域の一部上から前記プラズモンフィルタの一部上にまで延在しており、
前記二次元材料層は、前記領域の前記他の一部から前記プラズモンフィルタ上に配置された前記絶縁層上にまで延在しており、
前記第1電極部は、前記プラズモンフィルタ上に配置された前記絶縁層上に配置されている、請求項1または2に記載の電磁波検出器。
【請求項4】
前記プラズモンフィルタは、前記半導体層に対して、前記絶縁層、前記二次元材料層、および前記第1電極部とは反対側に配置されている、請求項1または2に記載の電磁波検出器。
【請求項5】
前記プラズモンフィルタの表面の少なくとも一部を構成する材料は、電磁波が入射したときに表面プラズモン共鳴が生じる材料である、請求項1~4のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項6】
前記プラズモンフィルタは、芯材と、前記芯材の表面の少なくとも一部上に配置された包材とを含み、
前記包材を構成する材料は、電磁波が入射したときに表面プラズモン共鳴が生じる材料である、請求項5に記載の電磁波検出器。
【請求項7】
前記プラズモンフィルタは、前記複数の貫通孔の各々の孔軸方向に沿って積層された第1部材と第2部材とを含み、
前記第1部材を構成する材料は、電磁波が入射したときに表面プラズモン共鳴が生じる材料であり、
前記第2部材を構成する材料は、誘電体である、請求項5に記載の電磁波検出器。
【請求項8】
前記プラズモンフィルタにおいて表面プラズモンが励起される波長帯域は、前記半導体層が感度を有する波長帯域よりも狭い、請求項1~7のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項9】
前記複数の貫通孔は、少なくとも一方向に沿って周期的に配列されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項10】
前記半導体層は、検出波長に感度を有し、
前記複数の貫通孔の周期は、前記検出波長と等しい、請求項9に記載の電磁波検出器。
【請求項11】
前記複数の貫通孔の各内周面は、前記複数の貫通孔の各孔軸に対して傾斜している、請求項1~10のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項12】
前記複数の貫通孔の各内周面の断面形状は、階段形状である、請求項1~11のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項13】
平面視において、前記プラズモンフィルタ
の表面には、前記複数の貫通孔の1つの貫通孔を囲む少なくとも1つの溝部が形成されている、請求項1~12のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項14】
前記二次元材料層の端部は、前記領域上に配置されている、請求項1~13のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項15】
前記半導体層の前記領域と前記二次元材料層との間に配置されたバッファ層をさらに備える、請求項1~14のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項16】
前記バッファ層は、前記二次元材料層と前記半導体層との間にトンネル電流を形成することが可能な厚さを有する、請求項15に記載の電磁波検出器。
【請求項17】
前記半導体層の前記領域と前記二次元材料層とを電気的に接続する接続導電体をさらに備える、請求項1~14のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項18】
前記半導体層は、
第1導電型を有する第1半導体部分と、
前記第1半導体部分と接合され、第2導電型を有する第2半導体部分とを含み、
前記第1半導体部分と前記第2半導体部分との接合界面は、前記領域内に配置されている、請求項1~17のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項19】
前記第1半導体部分の吸収波長は、前記第2半導体部分の吸収波長とは異なる、請求項18に記載の電磁波検出器。
【請求項20】
平面視において、前記第1電極部は環状に形成されており、かつ前記領域は前記第1電極部よりも内側に配置されている、請求項1~19のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項21】
前記絶縁層の厚み
が領域によって異なる、請求項1~20のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項22】
前記半導体層と前記二次元材料層との間に空隙が形成されている、請求項1~21のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項23】
前記二次元材料層に接触するように配置された接触層をさらに備える、請求項1~22のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項24】
前記二次元材料層は、遷移金属ダイカルコゲナイド、
グラフェンが短冊状に加工されてなるグラフェンナノリボンを含むグラフェン、黒リン、シリセン、ゲルマネン
、およびボロフェンからなるグループから選択されるいずれかの材料を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項25】
前記二次元材料層は、乱層構造部分を含み、
前記乱層構造部分は、少なくとも前記絶縁層上に配置されている、請求項1~24のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか1項に記載の電磁波検出器を複数備え、
前記複数の電磁波検出器が、
前記二次元材料層の二次元面内において互いに異なる2方向の少なくともいずれかに沿って並んで配置されている、電磁波検出器アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁波検出器および電磁波検出器アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、次世代の電磁波検出器に用いられる電磁波検出層の材料として、二次元材料層の一例である移動度が極めて高いグラフェンが知られている。グラフェンの吸収率は2.3%と低い。そのため、グラフェンを用いた電磁波検出器における高感度化手法が提案されている。たとえば、米国特許出願公開第2015/0243826号明細書(特許文献1)では、下記のような構造の検出器が提案されている。すなわち、上記特許文献1の検出器では、n型半導体層上に2つ以上の誘電体層が設けられている。2つの誘電体層上および当該2つの誘電体層の間に位置するn型半導体層の表面部分上にグラフェン層が形成されている。グラフェン層とn型半導体層とはショットキー接合している。グラフェン層の両端に接続されたソース・ドレイン電極が誘電体層上に配置されている。ゲート電極はn型半導体層と接続されている。ゲート電極とソース電極またはドレイン電極との間に電圧を印加した場合には、上記ショットキー接合により、OFF動作が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2015/0243826号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の検出器は、グラフェン層と接触する半導体層のバンドギャップ以上のエネルギーを有する電磁波に感度を有する。言い換えると、上記検出器の検出波長は、半導体層のバンドギャップに対応する波長以下となる。そのため、上記検出器では、特定の波長帯域の電磁波のみを選択的に検出することは困難である。
【0005】
また、上記検出器では、ゲート電極とソース電極またはドレイン電極とに電圧を印加したショットキー動作時の検出器の感度は半導体層の量子効率に依存するため、検出器の高感度化が困難である。
【0006】
本開示の主たる目的は、上述した従来の検出器と比べて、特定の波長帯域の電磁波のみを選択的に検出できかつその検出感度が高い電磁波検出器および電磁波検出器アレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る電磁波検出器は、少なくとも1つの光電変換素子と、少なくとも1つの光電変換素子と対向するように配置されたプラズモンフィルタとを備える。プラズモンフィルタには、複数の貫通孔が周期的に形成されている。少なくとも1つの光電変換素子は、平面視において複数の貫通孔のうちの少なくとも1つの貫通孔と重なる領域を有する半導体層と、領域の一部を覆うように形成された絶縁層と、領域の他の一部および絶縁層上に配置され、かつ領域の他の一部と電気的に接続されている二次元材料層と、二次元材料層と電気的に接続された第1電極部と、半導体層と電気的に接続された第2電極部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、上述した従来の検出器と比べて、特定の波長帯域の電磁波のみを選択的に検出できかつその検出感度が高い電磁波検出器および電磁波検出器アレイを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る電磁波検出器を示す断面図である。
【
図2】
図1に示される電磁波検出器の平面図である。
【
図3】
図1に示される電磁波検出器のプラズモンフィルタの平面図である。
【
図4】実施の形態2に係る電磁波検出器を示す断面図である。
【
図5】実施の形態2に係る電磁波検出器の変形例を示す断面図である。
【
図6】実施の形態3に係る電磁波検出器を示す断面図である。
【
図7】実施の形態4に係る電磁波検出器を示す断面図である。
【
図8】実施の形態5に係る電磁波検出器のプラズモンフィルタを示す平面図である。
【
図9】実施の形態6に係る電磁波検出器のプラズモンフィルタを示す平面図である。
【
図10】実施の形態6に係る電磁波検出器のプラズモンフィルタのさらに他の変形例を示す平面図である。
【
図11】実施の形態7に係る電磁波検出器を示す断面図である。
【
図12】実施の形態8に係る電磁波検出器を示す断面図である。
【
図14】実施の形態9に係る電磁波検出器を示す断面図である。
【
図15】実施の形態10に係る電磁波検出器を示す断面図である。
【
図16】実施の形態11に係る電磁波検出器を示す断面図である。
【
図17】実施の形態12に係る電磁波検出器を示す平面図である。
【
図18】
図17中の線分XVIII-XVIIIにおける断面図である。
【
図19】実施の形態13に係る電磁波検出器を示す平面図である。
【
図21】実施の形態13に係る電磁波検出器の変形例を示す断面図である。
【
図22】実施の形態14に係る電磁波検出器を示す断面図である。
【
図23】実施の形態15に係る電磁波検出器を示す断面図である。
【
図24】実施の形態15に係る電磁波検出器の変形例を示す断面図である。
【
図25】実施の形態16に係る電磁波検出器を示す断面図である。
【
図26】実施の形態19に係る電磁波検出器のプラズモンフィルタの部分断面図である。
【
図27】実施の形態20に係る電磁波検出器のプラズモンフィルタの部分平面図である。
【
図28】
図27中の矢印XXVIII-XXVIIIから視た、プラズモンフィルタの部分断面図である。
【
図29】実施の形態21に係る電磁波検出器アレイを示す平面図である。
【
図30】実施の形態21に係る電磁波検出器アレイの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本開示の実施の形態について説明する。図面は、模式的なものであり、機能又は構造を概念的に説明するものである。また、以下に説明する実施の形態により本開示が限定されるものではない。特記する場合を除いて、電磁波検出器の基本構成は全ての実施の形態において共通である。また、同一の符号を付したものは、上述のように同一又はこれに相当するものである。これは明細書の全文において共通する。
【0011】
本実施の形態に係る電磁波検出器が検出対象とする波長帯域は、特に制限されない。本実施の形態に係る電磁波検出器は、例えば、可視光、赤外光、近赤外光、紫外光、X線、テラヘルツ(THz)波、又はマイクロ波などの電磁波を検出する検出器である。なお、本発明の実施の形態において、これらの光及び電波を総称して電磁波と記載する。また、本実施の形態に係る電磁波検出器が検出対象とする波長帯域内の任意の波長を、検出波長とよぶ。
【0012】
また、本実施の形態に係る電磁波検出器は、1つの波長帯域の電磁波のみを検出するように設けられていてもよいし、互いに異なる複数の波長帯域の電磁波を検出するように設けられていてもよい。言い換えると、本実施の形態に係る電磁波検出器の検出波長は、1つのみであってもよいし、複数であってもよい。
【0013】
また、本実施の形態では、二次元材料層の一例であるグラフェンとしてp型グラフェン又はn型グラフェンの用語が用いられているが、真性状態のグラフェンよりも正孔が多いものをp型、電子が多いものをn型と呼ぶ。
【0014】
また、本実施の形態では、二次元材料層の一例であるグラフェンの上に設ける接触層の材料について、n型又はp型の用語が用いられているが、これらの用語は、例えば、n型であれば電子供与性を有する材料、p型であれば電子求引性を有する材料を示す。また、分子全体において電荷に偏りが見られ、電子が支配的となるものをn型、正孔が支配的となるものをp型と呼ぶ。これらの接触層の材料は、有機物及び無機物のいずれか一方又はそれらの混合物を用いることができる。
【0015】
また、金属表面と光との相互作用である表面プラズモン共鳴現象等のプラズモン共鳴現象、可視光域・近赤外光域以外での金属表面にかかる共鳴という意味での擬似表面プラズモン共鳴と呼ばれる現象、又は、波長以下の寸法の構造により特定の波長を操作するという意味でのメタマテリアル又はプラズモニックメタマテリアルと呼ばれる現象については、特にこれらを名称により区別せず、現象が及ぼす効果の面からは同等の扱いとする。ここでは、これらの共鳴を、表面プラズモン共鳴、プラズモン共鳴、又は、単に共鳴と呼ぶ。
【0016】
また、表面プラズモン共鳴は、一般には金属と誘電体との界面に電磁波が伝搬あるいは局在する現象として表現される。しかし、近年では金属材料以外の、例えば酸化チタンおよびグラフェンなどにも表面プラズモン共鳴が生じることが見出されている。本実施の形態では、このような材料を区別することなく、検出波長の電磁波が入射したときに表面プラズモン共鳴が生じる(表面プラズモンが共鳴的に励起される)材料をプラズモン共鳴材料とよぶ。本実施の形態において、プラズモンフィルタの表面の少なくとも一部を構成する材料は、プラズモン共鳴材料を含む。
【0017】
また、本実施の形態に係る電磁波検出器の動作時において、トンネル電流が生じない層を絶縁層とよび、トンネル電流が生じ得る層をバッファ層とよぶ。
【0018】
また、本実施の形態において、二次元材料層を構成する材料は、原子が二次元面内に単層で配列され得る任意の材料であればよいが、例えばグラフェン、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD:Transition Metal Dichalcogenide)、黒リン(Black Phosphorus)、シリセン(シリコン原子による二次元ハニカム構造)、およびゲルマネン(ゲルマニウム原子による二次元ハニカム構造)からなる群から選択される少なくとも1つを含んでいればよい。遷移金属ダイカルコゲナイドとしては、例えば二硫化モリブデン(MoS2)、二硫化タングステン(WS2)、二セレン化タングステン(WSe2)等が挙げられる。上記材料の少なくともいずれかにより構成されている二次元材料層は、後述するグラフェンにより構成されている二次元材料層と基本的に同様の効果を奏する。
【0019】
実施の形態1.
図1および
図2に示されるように、実施の形態1に係る電磁波検出器100は、複数の光電変換素子と、プラズモンフィルタ3とを備える。各光電変換素子は、二次元材料層1、半導体層2、絶縁層4、第1電極部5、および第2電極部6を主に備える。各光電変換素子は、1つの画素を構成し得る。各光電変換素子の二次元材料層1および第1電極部5は、他の光電変換素子のこれらと別体として設けられている。各光電変換素子の半導体層2および第2電極部6は、他の光電変換素子のこれらと一体として設けられている。各光電変換素子の絶縁層4は、例えば他の光電変換素子の絶縁層4と別体として設けられている。なお、各光電変換素子の絶縁層4は、例えば他の光電変換素子の絶縁層4と一体として設けられていてもよい。
【0020】
プラズモンフィルタ3は、複数の光電変換素子の各々と対向するように配置されている。プラズモンフィルタ3は、後述する半導体層2の第1面2Aと対向する第3面3Aと、第3面3Aとは反対側に位置する第4面3Bとを有している。第3面3Aは、例えば半導体層2の第1面2Aと接触している。第4面3Bは、絶縁層4と接触している。
【0021】
プラズモンフィルタ3は、電磁波検出器100が検出対象とする波長帯域内の電磁波のみを第4面3B側から第3面3A側(半導体層2側)に透過するように設けられている。言い換えると、プラズモンフィルタ3は、検出波長の電磁波が入射したときに表面プラズモン共鳴が生じるように設けられている。プラズモンフィルタ3において表面プラズモンが励起される波長帯域と、半導体層2が感度を有する波長帯域には共通する波長域が存在する。一般的には、表面プラズモンが励起される波長帯域は半導体層2が感度を有する波長帯域より狭い場合が想定される。ただし、後述するように表面プラズモンが励起される波長帯域が広帯域化する場合にはその限りではない場合もある。
【0022】
図1~
図3に示されるように、プラズモンフィルタ3には、第3面3Aから第4面3Bに貫通する複数の貫通孔30が形成されている。貫通孔30の数は、例えば3以上である。複数の貫通孔30は、例えば第3面3Aに沿っておりかつ互いに交差する2つの方向に周期的に配列されている。周期的な配列とは、2以上の貫通孔30からなる単位が周期的に配列していることを示す。複数の貫通孔30の各々は、例えば等間隔に配列されている。なお、3以上の貫通孔30からなる単位が周期的に配列していてもよい。また、複数の貫通孔30は、第3面3Aに沿った少なくとも1つの方向に互いに間隔を隔てて周期的に配置されていてもよい。
【0023】
プラズモンフィルタ3の全表面を構成する材料は、例えば上述したプラズモン共鳴材料を含む。なお、プラズモンフィルタ3の表面の少なくとも一部を構成する材料が、プラズモン共鳴材料を含んでいればよい。例えば、プラズモンフィルタ3の少なくとも第4面3Bおよび複数の貫通孔30の各々の内周面を構成する材料のみがプラズモン共鳴材料を含む。
【0024】
複数の貫通孔30の各々の開口幅、深さ(プラズモンフィルタ3の厚さ)、および隣り合う2つの貫通孔30の中心軸C間の間隔P(周期、
図3参照)、ならびに上記プラズモン共鳴材料は、検出波長の電磁波が入射したときにプラズモンフィルタ3にて表面プラズモン共鳴が生じるように、検出波長に応じて任意に選択され得る。各貫通孔30の開口幅は、例えば検出波長よりも短い。
【0025】
複数の貫通孔30の平面形状は、検出波長の電磁波が入射したときにプラズモンフィルタ3にて表面プラズモン共鳴が生じる限りにおいて任意の形状であればよいが、例えば
図3に示されるように円形である。なお、複数の貫通孔30の平面形状は、例えば、正方形、長方形、楕円形、三角形、ブルズアイ形状(1つの円または環と、その周囲に配置されておりかつ同心の環とからなる形状)、フラクタル形状、または十字形状であってもよい。複数の貫通孔30の平面形状が十字形状である場合には、検出波長が異なる2以上の電磁波の各々がプラズモンフィルタ3に照射されたときに、表面プラズモン共鳴が生じる。また、複数の貫通孔30の平面形状は、互いに異なっていてもよい。複数の貫通孔30は、第1の貫通孔と、第1の貫通孔と平面形状が同じであるが第1の貫通孔と大きさが異なる第2の貫通孔とを有していてもよい。
【0026】
半導体層2は、第1面2Aと、第1面2Aとは反対側に位置する第2面2Bとを有している。
図1および
図2に示されるように、二次元材料層1、プラズモンフィルタ3、絶縁層4、および第1電極部5は、半導体層2の第1面2A上に配置されている。第2電極部6は、半導体層2の第2面2B上に配置されている。電磁波検出器100は、半導体層2に対してプラズモンフィルタ3が配置されている側から入射する電磁波を検出する。
【0027】
半導体層2は、平面視において複数の貫通孔30と重なる複数の領域20を有している。各領域20は、第1面2Aおよび第2面2Bを有した柱状の領域である。複数の領域20以外の他の領域の第1面2Aは、プラズモンフィルタ3の第3面3Aと接触している。各領域20の第1面2Aは、後述する二次元材料層1の第1部分と接触している第1接触領域と、絶縁層4の一部と接触している第2接触領域と、平面視において二次元材料層1、プラズモンフィルタ3、および絶縁層4から露出している領域とを有している。第2面2Bの全面は、第2電極部6と接触している。
【0028】
半導体層2は、検出波長に感度を有している。すなわち、半導体層2は、半導体層2に検出波長の電磁波が入射したときに半導体層2内に光キャリアが生じるように設けられている。上述のように、半導体層2が感度を有する波長帯域と、プラズモンフィルタ3において表面プラズモンが励起される波長帯域には共通する波長域が存在する。
【0029】
半導体層2を構成する半導体材料は、検出波長に応じて任意に選択され得る。半導体層2を構成する材料は、任意の半導体材料であればよく、例えば、IV族の任意の半導体材料、III-V族の任意の化合物半導体材料、またはII-VI族の任意の化合物半導体材料を含む。半導体層2を構成する材料は、例えばシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、水銀カドミウムテルル(HgCdTe)、アンチモン化インジウム(InSb)、鉛セレン(PbSe)、鉛硫黄(PbS)、カドミウム硫黄(CdS)、窒化ガリウム(GaN)、シリコンカーバイド(SiC)、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)、ヒ化ガリウム(GaAs)、およびヒ化インジウム(InAs)からなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。半導体層2は、量子井戸および量子ドットの少なくともいずれかを有していてもよいし、このような量子構造が周期的に配置された超格子(例えばTypeII超格子)を有していてもよい。半導体層2は、pn接合を有していてもよい。
【0030】
なお、電磁波検出器100の検出波長が複数である場合、半導体層2は、互いに異なる検出波長に感度を有する複数の半導体層の集合体として構成される。
【0031】
好ましくは、半導体層2の電気抵抗率が100Ω・cm以下になるように、半導体層2には不純物がドーピングされている。半導体層2が高濃度にドーピングされることで、キャリアの半導体層2中での移動速度(読み出し速度)が速くなる。この結果、電磁波検出器の応答速度が向上する。
【0032】
絶縁層4は、上記領域20の第1面2Aの一部(上記第2接触領域)を覆うように形成されている。絶縁層4は、上記第2接触領域上からプラズモンフィルタ3の第4面3Bの一部上にまで延在している。言い換えると、絶縁層4は、上記第2接触領域上に配置されている部分4aと、プラズモンフィルタ3上の配置されている部分4bとを有している。絶縁層4の部分4aは、上記第2接触領域、プラズモンフィルタ3の貫通孔30の内周面の一部、および後述する二次元材料層1の第2部分1bと接触している。絶縁層4の部分4bは、後述する二次元材料層1の第3部分1c、およびプラズモンフィルタ3の第4面3Bの一部と接触している。部分4bは、部分4aの上端部と接続されている。
図1に示されるように、絶縁層4は、ステップ状に形成されている。
【0033】
絶縁層4は、半導体層2と後述する二次元材料層1の第2部分および第1電極部5とを電気的に絶縁している。絶縁層4の厚さは、電磁波検出器100の動作時において、二次元材料層1の第2部分および第1電極部5と半導体層2との間にトンネル電流が生じなければ特に制限されない。好ましくは、後述する光ゲート効果を高める観点で、絶縁層4の厚さは、可能な限り薄い。
【0034】
絶縁層4としては、例えば酸化シリコンからなる絶縁膜を用いることができる。なお、絶縁層4を構成する材料は、電気的絶縁性を有する任意の絶縁材料であればよく、上述した酸化シリコンに限定されない。たとえば、絶縁層4を構成する材料は、酸化シリコン、オルトケイ酸テトラエチル、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、ボロンナイトライド、およびシロキサン系のポリマー材料からなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。例えば、ボロンナイトライドは原子配列がグラフェンと似ているため、グラフェンからなる二次元材料層1と接触しても電荷の移動度に悪影響を与えない。そのため、絶縁層4が電子移動度などの二次元材料層1の性能を阻害することを抑制する観点から、ボロンナイトライドは絶縁層4を構成する材料として好適である。
【0035】
二次元材料層1は、領域20の上記第1接触領域からプラズモンフィルタ3上に配置された絶縁層4上にまで延在している。二次元材料層1は、上記領域20の第1面2Aの他の一部(上記第1接触領域)上に配置されている第1部分1aと、絶縁層4の上記部分4a上に配置されている第2部分1b、およびプラズモンフィルタ3および絶縁層4の上記部分4b上に配置されている第3部分1cとを有している。二次元材料層1の第1部分1aは、絶縁層4を介さずに、領域20上に配置されている。第1部分1aは、例えば半導体層2の上記第1接触領域と電気的に接続されている。好ましくは、第1部分1aは、半導体層2とショットキー接合している。第2部分1bは、半導体層2において生じた光キャリアによって電界効果が与えられるように設けられている。第1部分1aおよび第3部分1cは、後述する光ゲート効果においてソース・ドレイン領域として作用する。第2部分1bは、後述する光ゲート効果においてチャネル領域として作用する。
【0036】
図1に示されるように、二次元材料層1は、ステップ状に形成されている。二次元材料層1のステップ数は、例えば、絶縁層4のステップ数よりも1つ多く、2つである。二次元材料層1の第1部分1aは、二次元材料層1の長手方向の一方の端部を有している。二次元材料層1の第3部分1cは、二次元材料層1の長手方向の他方の端部を有している。
【0037】
二次元材料層1は、例えば、単層のグラフェンを用いることができる。単層のグラフェンは二次元炭素結晶の単原子層である。また、単層のグラフェンは六角形状に配置された各連鎖に炭素原子を有している。また、二次元材料層1は、単層グラフェンが2層以上積層した多層グラフェンとして構成されていてもよい。また、二次元材料層1として、ノンドープのグラフェン、またはp型又はn型の不純物がドープされたグラフェンが用いられてもよい。
【0038】
二次元材料層1に多層グラフェンを用いた場合、二次元材料層1の光電変換効率が増加し、電磁波検出器の感度は高くなる。二次元材料層1として用いられる多層グラフェンは、任意の2層のグラフェンにおける六方格子の格子ベクトルの向きが一致しなくてもよく、一致してもよい。例えば、2層以上のグラフェンを積層することで、二次元材料層1においてバンドギャップが形成される。この結果、光電変換される電磁波の波長選択効果を持たせることが可能である。なお、二次元材料層1を構成する多層グラフェンにおける層数が増加すると、チャネル領域でのキャリアの移動度は低下する。一方、この場合には二次元材料層1が基板などの下地構造からのキャリア散乱の影響を受けにくくなり、結果的にノイズレベルが低下する。そのため、二次元材料層1として多層グラフェンを用いた電磁波検出器は、光吸収が増加し、電磁波の検出感度を高めることができる。
【0039】
また、二次元材料層1が第1電極部5と接触している場合、第1電極部5から二次元材料層1へキャリアがドープされる。例えば、第1電極部5の材料として金(Au)を用いた場合、二次元材料層1とAuとの仕事関数の差から、第1電極部5近傍の二次元材料層1に正孔がドープされる。この状態で電磁波検出器を電子伝導状態で駆動させると、第1電極部5から二次元材料層1にドープされた正孔の影響により、二次元材料層1のチャネル領域内に流れる電子の移動度が低下し、二次元材料層1と第1電極部5とのコンタクト抵抗が増加する。このコンタクト抵抗の増加により、電磁波検出器における電界効果による電子(キャリア)の移動度が低下し、電磁波検出器の性能低下が生じ得る。特に、二次元材料層1として単層グラフェンを用いた場合、第1電極部5から注入されるキャリアのドープ量が大きい。そのため、電磁波検出器における上記電子の移動度の低下は、二次元材料層1として単層グラフェンを用いた場合に特に顕著である。したがって、二次元材料層1をすべて単層グラフェンにより形成した場合、電磁波検出器の性能が低下する恐れがあった。
【0040】
そこで、第1電極部5からのキャリアがドープされやすい二次元材料層1の上記第1部分1aは、多層グラフェンにより構成されていてもよい。多層グラフェンは単層グラフェンに比べ、第1電極部5からのキャリアドーピングが小さい。そのため、二次元材料層1と第1電極部5との間のコンタクト抵抗の増加を抑制することができる。この結果、電磁波検出器における上述した電子の移動度の低下を抑制することができ、電磁波検出器の性能を向上させることができる。この場合、二次元材料層1の上記第2部分1bは、単層グラフェンにより構成されていてもよい。つまり、二次元材料層1のうち、ソース・ドレイン領域として作用し得る第1部分1aおよび第3部分1cは多層グラフェンにより構成されており、かつチャネル領域として作用し得る第2部分1bは単層グラフェンにより構成されていてもよい。このようにすれば、二次元材料層1全体が単層グラフェンにより構成されている場合と比べて移動度が高く、二次元材料層1全体が多層グラフェンにより構成されている場合と比べてチャネル領域の移動度が高まるため、電磁波検出器100の性能が向上する。
【0041】
また、二次元材料層1としてはナノリボン状のグラフェン(以下、グラフェンナノリボンとも呼ぶ)を用いることもできる。その場合、二次元材料層1としては、たとえばグラフェンナノリボン単体、複数のグラフェンナノリボンを積層した複合体、又は、グラフェンナノリボンが平面上に周期的に配列された構造体のいずれかを用いることができる。例えば、二次元材料層1として、グラフェンナノリボンが周期的に配置された構造体を用いる場合、グラフェンナノリボンにおいて、プラズモン共鳴を発生させることができる。この結果、電磁波検出器の感度を向上させることができる。ここで、グラフェンナノリボンが周期的に配列された構造は、グラフェンメタマテリアルと呼ばれることもある。したがって、二次元材料層1としてグラフェンメタマテリアルを用いた電磁波検出器においても、上述した効果を得ることができる。
【0042】
第1電極部5は、絶縁層4の上記部分4b上に配置されており、二次元材料層1の第3部分1cと電気的に接続されている。第1電極部5は、例えば二次元材料層1の第3部分1c上に配置されている。平面視において、第1電極部5は、プラズモンフィルタ3、絶縁層4の部分4b、および二次元材料層1の第3部分1cと重なるように配置されている。平面視において、第1電極部5は、例えば領域20と重なるように配置されていない。第2電極部6は、半導体層2の第2面2B上に配置されている。
【0043】
第1電極部5および第2電極部6を構成する材料としては、導電体であれば任意の材料を用いることができる。第1電極部5および第2電極部6を構成する材料は、例えば金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、およびパラジウム(Pd)からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0044】
また、第2電極部6と半導体層2との間に、図示しない密着層を形成してもよい。密着層は、第2電極部6と半導体層2との密着性を高めるものである。密着層を構成する材料は、たとえばクロム(Cr)およびチタン(Ti)の少なくともいずれかを含む。
【0045】
なお、二次元材料層1の第3部分1cおよび第1電極部5の相対的な位置関係は、両者が絶縁層4の上記部分4b上において互いに電気的に接続されている限りにおいて、特に制限されない。第1電極部5は、例えば絶縁層4上であって二次元材料層1の第3部分1cよりも下に配置されていてもよい。この場合、第1電極部5と絶縁層4との間に、密着層を形成してもよい。密着層は、第1電極部5と絶縁層4との密着性を高めるものである。密着層を構成する材料は、たとえばCrおよびTiの少なくともいずれかを含む。
【0046】
また、二次元材料層1上には、図示しない保護膜が形成されていてもよい。保護膜は、二次元材料層1、半導体層2、第1電極部5の周りを覆うように設けられてもよい。保護膜を構成する材料としては任意の材料を用いることができるが、例えば、保護膜として酸化シリコンからなる絶縁膜を用いることができる。保護膜を構成する材料としては、酸化物又は窒化物等の絶縁体、たとえば酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、ボロンナイトライドなどを用いてもよい。保護膜は、貫通孔30を埋め込むように形成されていてもよい。この場合、プラズモン共鳴波長は保護膜の屈折率の効果により変化するが、波長選択性は変化しない。
【0047】
電磁波検出器100では、各貫通孔30を1つの検出単位として捉えることができ、その場合、光電変換素子の数は貫通孔30の数と等しくなる。そのため、各光電変換素子から信号を適切に読み出すことで、電磁波検出器100は画像センサを構成し得る。信号の読み出し方法は、例えば従来の画像センサにて一般的に用いられている方法であってもよい。
【0048】
隣り合う2つの貫通孔30の中心間の間隔は、一定でなくてもよい。この場合、プラズモンフィルタ3が透過し得る電磁波の波長(共鳴波長)は、複数または広帯域化する。また、複数の貫通孔30は、第1間隔を隔てて隣り合う第1の貫通孔群と、第1間隔とは異なる第2間隔を隔てて隣り合う第2の貫通孔群とを有していてもよい。
【0049】
<電磁波検出器の製造方法>
まず、半導体層2を準備する。半導体層2は、例えばシリコン等からなる平坦な基板として準備される。
【0050】
次に、半導体層2の第2面2B上に第2電極部6を形成する。具体的には、まず半導体層2の第1面2A上に保護膜を形成する。保護膜としてはたとえばレジストを用いる。この状態で、半導体層2の第2面2B上に第2電極部6を成膜する。この時、半導体層2と第2電極部6との密着性を向上させるために、半導体層2の裏面に、第2電極部6より先に上述のように密着層を形成してもよい。なお、本工程は、半導体層2の第1面2A上の構造を保護し得る限りにおいて、後述する各工程の後に実施してもよい。本工程後、第1面2A上に形成した保護膜を除去する。
【0051】
次に、半導体層2の第1面2A上にプラズモンフィルタ3を形成する。本工程の一例では、まず、上記プラズモン共鳴材料を第1面2A上に成膜する。成膜方法は、特に制限されないが、例えばスパッタリング法または蒸着法である。次に、プラズモン共鳴材料からなる膜上に、写真製版またはEB描画などを用いてレジストマスクを形成する。レジストマスクは、上記膜のうち、複数の貫通孔30が形成されるべき領域のみを露出し、それ以外の領域を覆うように形成される。その後、ウェットエッチングやドライエッチングにより、レジストマスクをマスクとして当該膜を部分的に除去する。この結果、レジストマスク下に膜の一部が残存する。この膜の一部がプラズモンフィルタ3となる。その後、レジストマスクを除去する。このようにして、プラズモンフィルタ3が形成される。同時に、半導体層2には、平面視において複数の貫通孔30と重なる複数の領域20が形成される。
【0052】
本工程の他の例では、まず、半導体層2の第1面2A上に写真製版またはEB描画などを用いてレジストマスクを形成する。このレジストマスクには、半導体層2のうち、複数の領域20以外の領域(言い換えると、プラズモンフィルタ3が形成されるべき領域)のみを露出し、複数の領域20(言い換えると、複数の貫通孔30が形成されるべき領域)を覆うように形成される。その後、レジストマスク上に、上記プラズモン共鳴材料を成膜する。当該膜の成膜方法も、特に制限されないが、例えばスパッタリング法または蒸着法である。このとき、当該膜はレジストマスクの開口部の内部から当該レジストマスクの上部表面にまで延在するように形成される。その後、レジストマスクを当該膜の一部と共に除去することで、レジストマスクの開口部に配置されていた膜の他の一部が半導体層2の複数の領域20上に残存し、プラズモンフィルタ3となる。上述した方法は、一般的にはリフトオフと呼ばれる方法である。
【0053】
次に、半導体層2の第1面2Aおよびプラズモンフィルタ3の第4面3B上に絶縁層4を形成する。具体的には、まず、絶縁層4となるべき絶縁膜を、半導体層2の第1面2Aおよびプラズモンフィルタ3の第4面3B上に成膜する。成膜方法は、特に制限されない。例えば半導体層2を構成する材料がシリコンであり、絶縁層4を構成する材料が酸化シリコン(SiO2)である場合、半導体層2の上記領域20の一部が部分的に熱酸化されてもよい。また、成膜方法は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法またはスパッタ法であってもよい。次に、絶縁層4のとなるべき絶縁膜上に、写真製版またはEB描画などを用いてレジストマスクを形成する。レジストマスクは、上記絶縁膜のうち、絶縁層4が形成されるべき領域のみを覆い、それ以外の領域を露出するように形成される。その後、ウェットエッチングやドライエッチングにより、レジストマスクをマスクとして当該絶縁膜を部分的に除去する。この結果、レジストマスク下に絶縁膜の一部が残存する。この絶縁膜の一部が絶縁層4となる。その後、レジストマスクを除去する。このようにして、絶縁層4が形成される。絶縁層4は、領域20の第2接触領域上に配置されている部分4aと、プラズモンフィルタ3の第4面3B上に配置されている部分4bとを有している。
【0054】
次に、各領域20の第1接触領域および絶縁層4上に二次元材料層1を形成する。具体的には、まず二次元材料層1となるべき二次元材料膜を第1面2A上に成膜する。成膜方法は、特に制限されないが、例えばエピタキシャル成長法である。また、予めCVD法等により形成された二次元材料膜を第1面2A上に転写して貼り付けてもよい。また、二次元材料層1を構成する材料がグラフェンを含む場合、機械的剥離法により高配向熱分解黒鉛(HOPG)から剥離されたグラフェンを第1面2A上に転写して貼り付けてもよい。次に、写真製版またはEB描画などを用いて二次元材料膜上にレジストマスクを形成する。レジストマスクは、二次元材料膜のうち、二次元材料層1が形成されるべき領域のみを覆うように形成される。その後、例えば酸素プラズマによるエッチングにより、レジストマスクをマスクとして当該二次元材料膜を部分的に除去する。この結果、レジストマスク下に二次元材料膜の一部が残存する。この二次元材料膜の一部が二次元材料層1となる。その後、レジストマスクを除去する。このようにして、二次元材料層1が形成される。二次元材料層1は、上記第1部分1a、上記第2部分1b、および上記第3部分1cを有している。
【0055】
次に、第1電極部5を形成する。本工程の一例では、第1電極部5は上述したリフトオフ法により形成される。まず、第1面2A上に写真製版またはEB描画などを用いてレジストマスクを形成する。レジストマスクには、第1電極部5が形成されるべき領域に開口部が形成されている。その後、レジストマスク上に、第1電極部5となるべき金属などの膜を形成する。当該膜の形成には、蒸着法やスパッタリング法などを用いることができる。このとき、当該膜はレジストマスクの開口部の内部から当該レジストマスクの上部表面にまで延在するように形成される。その後、レジストマスクを当該膜の一部と共に除去することで、レジストマスクの開口部に配置されていた膜の他の一部が二次元材料層1の第3部分1c上に残存し、第1電極部5となる。
【0056】
本工程の他の例では、第1面2A上に第1電極部5となるべき金属膜などの膜を先に成膜する。その後、フォトリソグラフィ法によって当該膜上にレジストマスクを形成する。レジストマスクは、第1電極部5が形成されるべき領域を覆うように形成される一方、第1電極部5が形成されるべき領域以外の領域には形成されない。その後、ウェットエッチングやドライエッチングにより、レジストマスクをマスクとして当該膜を部分的に除去する。この結果、レジストマスク下に膜の一部が残存する。この膜の一部が第1電極部5となる。その後、レジストマスクを除去する。このようにして、第1電極部5を形成してもよい。
【0057】
本工程では、好ましくは、第1電極部5となるべき膜の成膜の前に、二次元材料層1の第1部分1aおよび第2部分1bを保護する保護膜を形成する。成膜前に保護膜を形成しておくことで、成膜時に第1部分1aおよび第2部分1bに与えられるプロセスダメージを低減できる。
【0058】
以上の工程により、
図1および
図2に示した電磁波検出器100が得られる。
<電磁波検出器の動作原理>
次に、本実施の形態に係る電磁波検出器の動作原理について説明する。
【0059】
まず、
図1に示すように、第1電極部5と第2電極部6との間に、電圧Vを印加する電源回路が電気的に接続され、第1電極部5、二次元材料層1、半導体層2、および第2電極部6が、この記載順に電気的に接続される。次に、第1電極部5および第2電極部6の間に電圧Vが印加される。好ましくは、電圧Vは、二次元材料層1と半導体層2とのショットキー接合に対して逆バイアスとなるように設定される。電圧Vが印加されることにより、第1電極部5と第2電極部6との間の電流経路の一部となる二次元材料層1には電流Iが流れる。電源回路には図示しない電流計が設置されており、当該電流計により二次元材料層1に流れる電流Iをモニターする。
【0060】
次に、電磁波検出器100に対してプラズモンフィルタ3側から検出波長の電磁波が照射されると、プラズモンフィルタ3に表面プラズモン共鳴が生じる。表面プラズモン共鳴が生じると、共鳴波長における電磁界が増強されることにより、透過率が増強される。透過率は、ほぼ100%に達し得る。さらに、プラズモンフィルタ3の各貫通孔30の外周縁と半導体層2の第1面2Aとが接触している領域では、入射電磁界を1とした場合に対して、電磁界が数倍から数10倍以上に増強される。このように半導体層2とプラズモンフィルタ3との接触界面の周辺領域で電磁界が増強されることにより、半導体層2における量子効率が向上する。
【0061】
その結果、プラズモンフィルタ3により、検出波長の電磁波のみが半導体層2に選択的に入射しかつ半導体層2における量子効率が高められているために、半導体層2内には光電変換によって多数の光キャリア(電子正孔対)が生じる。
【0062】
光キャリアは、電圧Vを受けて二次元材料層1の第1部分1aに注入され、電流Iに変化を生じさせる。電磁波照射に起因して電流Iに変化を引き起こす電流成分を光電流とよぶ。さらに、半導体層2において生じた光キャリアは、絶縁層4の部分4aを介して二次元材料層1の第2部分1bに電界効果を与える。この結果、二次元材料層1の第2部分1bの抵抗値が変化し、二次元材料層1に流れる電流Iが変化する。この効果を、光ゲート効果とよぶ。
【0063】
電磁波検出器100では、光電流が光ゲート効果によって増幅されることにより、電流Iが比較的大きく変化する。電流Iの変化を検出することにより、電磁波検出器100は検出波長の電磁波を検出できる。
【0064】
ここで、本実施の形態に係る電磁波検出器は、上述のような二次元材料層1での電流の変化を検出する構成に限定されるわけではなく、例えば、第1電極部5と第2電極部6との間に一定電流を流し、第1電極部5と第2電極部6間の電圧Vの変化(つまり二次元材料層1での電圧値の変化)を検出してもよい。
【0065】
また、同じ電磁波検出器を2つ以上用いて電磁波を検出してもよい。たとえば、同じ電磁波検出器を2つ以上準備する。1つの電磁波検出器を、電磁波が照射されない遮蔽された空間に配置する。他の電磁波検出器を、測定対象である電磁波が照射される空間に配置する。そして、電磁波が照射される他の電磁波検出器の電流I又は電圧Vと、遮蔽された空間に配置された電磁波検出器の電流I又は電圧Vとの差分を検出する。このようにして、電磁波を検出してもよい。
【0066】
<作用効果>
本実施の形態に係る電磁波検出器100は、複数の光電変換素子と、プラズモンフィルタ3とを備える。プラズモンフィルタ3には、複数の貫通孔30が周期的に形成されている。各光電変換素子は、半導体層2、絶縁層4、二次元材料層1、第1電極部5、および第2電極部6を主に備える。半導体層2は、平面視において1つの貫通孔30と重なる領域20を有する。絶縁層4は、領域20の一部を覆うように形成されている。二次元材料層1は、領域20の他の一部および絶縁層4上に配置され、かつ領域20の上記他の一部と電気的に接続されている。第1電極部5は、二次元材料層1と電気的に接続されている。第2電極部6は、半導体層2と電気的に接続されている。
【0067】
電磁波検出器100では、プラズモンフィルタ3を透過した電磁波のみが複数の光電変換素子の半導体層2に入射する。上述のように、プラズモンフィルタ3は、特定の波長の電磁波のみを透過させ、さらにその波長において半導体層2の量子効率を向上させる効果を奏する。そのため、電磁波検出器100は、上述した特許文献1に記載の検出器と比べて、特定の波長帯域の電磁波のみを選択的に高い精度で検出できる。
【0068】
さらに、電磁波検出器100では、光電変換素子が、プラズモンフィルタ3の複数の貫通孔と重なる領域20の他の一部および絶縁層4上に配置され、かつ領域20の上記他の一部と電気的に接続されている二次元材料層1を含む。そのため、上述のように、電磁波検出器100では、光電流が光ゲート効果によって増幅される。光ゲート効果は、光電変換材料の量子効率を直接的に増強するのではなく、電磁波入射による電流変化を大きくするため、等価的に電磁波入射による差分電流から算出した量子効率は100%を超えることができる。
【0069】
そのため、電磁波検出器100に上記電磁波が入射されたときの電流Iの変化量は、上記光ゲート効果が奏されない上述した特許文献1に記載の検出器に上記電磁波が入射したときの電流の変化量よりも大きい。したがって、電磁波検出器100は、上述した特許文献1に記載の検出器と比較して、高感度である。
【0070】
二次元材料層1が、たとえば単層グラフェンである場合、二次元材料層1の厚みは原子層1層分と究極的に薄い。また、単層グラフェンにおけるキャリア移動度は従来半導体材料と比較して大きい。そのため、二次元材料層1では、従来の半導体材料と比較して、わずかな電位変化に対して大きな電流変化を生じる。例えば、半導体層2の電界が変化することによって二次元材料層1へ印加される電位は変化するが、この電位変化に起因する電流変化量は通常の半導体における電流変化量より大きくなる。具体的には、二次元材料層1における電子の移動度及び厚さなどから算出すると、二次元材料層1での上記電流変化量は、通常の半導体における電流変化量の数百倍~数千倍程度となる。このような電磁波検出器100は、半導体層2で生じる光キャリアのみを検出する電磁波検出器と比べて、高感度である。
【0071】
また、電磁波検出器100では、二次元材料層1は、上記開口部において半導体層2の上記他の一部と電気的に接続され、具体的には半導体層2とショットキー接合している。二次元材料層1と半導体層2とがショットキー接合していることで、逆バイアス印加時には電流が流れず、電磁波検出器100はOFF動作可能となる。
【0072】
また、電磁波検出器100では、二次元材料層1の長手方向の一端が、半導体層2の領域20内に配置されている。そのため、二次元材料層1と半導体層2とが接触状態が比較的良好となり、電磁波照射によって生じた光キャリアの移動が二次元材料層1と半導体層2との接触界面で妨げられにくい。その結果、電磁波検出器100の性能が向上する。また、光ゲート効果が光電流量を増幅させる効果として支配的である場合、電磁波検出器100の感度は二次元材料層1と半導体層2との接触面積には大きく依存しない。よって光ゲート効果を用いる場合、画素の面積を低減でき、画素を小型化できる。一方、一般的な量子型赤外線センサは画素の面積を低減すると必然的に感度が低下する。そのため暗電流の低減も困難である。
【0073】
実施の形態2.
図4に示されるように、実施の形態2に係る電磁波検出器101は、実施の形態1に係る電磁波検出器100と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、プラズモンフィルタ3が半導体層2に対して絶縁層4、二次元材料層1、および第1電極部5とは反対側に配置されている点で、電磁波検出器100とは異なる。
【0074】
図4に示されるように、絶縁層4、二次元材料層1、および第1電極部5は、半導体層2の第1面2A上に配置されている。プラズモンフィルタ3および第2電極部6は、半導体層2の第2面2B上に配置されている。プラズモンフィルタ3は、第2電極部6上に配置されている。プラズモンフィルタ3は、第2電極部6に対して半導体層2とは反対側に配置されている。第2電極部6を構成する材料は、検出波長の電磁波を透過させる導電材料である。
【0075】
複数の領域20以外の他の領域の第1面2Aは、絶縁層4と接触している。各領域20の第1面2Aは、後述する二次元材料層1の第1部分と接触している第1接触領域と、絶縁層4の一部と接触している第2接触領域と、平面視において二次元材料層1、および絶縁層4から露出している領域とを有している。第2面2Bの全面は、第2電極部6と接触している。プラズモンフィルタ3の第3面3Aは、第2電極部6と接触している。
【0076】
絶縁層4は、他の部材を介さずに、半導体層2の第1面2A上に配置されている。絶縁層4において複数の領域20以外の他の領域上に配置されている部分は、半導体層2の第1面2Aに接触している。絶縁層4は、プラズモンフィルタ3上の配置されている部分を含まず、ステップ状に形成されていない。二次元材料層1は、領域20の上記第2接触領域および絶縁層4上に配置されている。二次元材料層1において複数の領域20以外の他の領域上に配置されている部分は、半導体層2の第1面2Aに接触している絶縁層4上に配置されている。二次元材料層1は、上記第1接触領域上に配置されている第1部分1aと、絶縁層4上に配置されている第2部分1bとを含み、ステップ状に形成されているが、プラズモンフィルタ3上の配置されている第3部分を含まない。二次元材料層1のステップ数は、1である。第1電極部5は、二次元材料層1の第2部分1bと電気的に接続されている。
【0077】
電磁波検出器101の製造方法は、電磁波検出器100の製造方法と基本的に同様の構成を備えるが、プラズモンフィルタ3を形成する工程を、第2電極部6を形成する工程後であって第1面2Aを保護していた保護膜を除去する工程の前に実施する点で、電磁波検出器100の製造方法と異なる。
【0078】
電磁波検出器101では、電磁波検出器100と比べて、二次元材料層1のステップ数が少ないため、製造歩留まりおよび検出性能が向上し得る。例えば、半導体層2を構成する材料がSiを含む場合、絶縁層4はSiの熱酸化膜で構成され得る。このような電磁波検出器101では、CVD法などにより成膜された絶縁層4を備える電磁波検出器100と比べて、熱酸化膜の方が表面の凹凸も少なく、残留電荷も少ないことから、二次元材料層1の移動度を妨げることがないため、該移動度が向上し、電磁波検出器101の性能が向上する。
【0079】
<変形例>
図5に示されるように、電磁波検出器101の変形例である電磁波検出器102では、第2電極部6が、絶縁層4、二次元材料層1、および第1電極部5と同様に、半導体層2の第1面2A上に配置されている。プラズモンフィルタ3は、半導体層2に対して絶縁層4、二次元材料層1、第1電極部5、および第2電極部6とは反対側に配置されている。第2電極部6は、半導体層2の第1面2Aと接触している。第2電極部6は、例えば複数の領域20以外の他の領域、および複数の領域20のうちの一部の領域20の各第1面2Aと接触している。
【0080】
電磁波検出器102は、電磁波検出器101と基本的に同様の構成を備えているため、電磁波検出器101と同様の効果を奏することができる。
【0081】
実施の形態3.
図6に示されるように、実施の形態3に係る電磁波検出器103は、実施の形態1に係る電磁波検出器100と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、プラズモンフィルタ3の表面の一部を構成する材料が、上述したプラズモン共鳴材料を含む点で、電磁波検出器100とは異なる。言い換えると、電磁波検出器103は、プラズモンフィルタ3が、プラズモン共鳴材料により構成されている第1部材10と、プラズモン共鳴材料により構成されていない第2部材11とを含む点で、電磁波検出器100とは異なる。
【0082】
第2部材11は、例えば芯材として構成されている。第2部材11は、半導体層2の第1面2Aと接触している表面と、その他の表面とを有している。第1部材10は、第2部材11の上記その他の表面の全体を覆っている包材として構成されている。
【0083】
第2部材11を構成する材料は、例えば誘電体材料を含む。第2部材11を構成する材料は、例えば酸化シリコンおよび窒化シリコンの少なくともいずれかを含む。
【0084】
電磁波検出器103の製造方法は、電磁波検出器100の製造方法と基本的に同様の構成を備えるが、プラズモンフィルタ3を形成する工程において、まず第2部材11を成膜および加工した後に、第1部材10を成膜する点で、電磁波検出器100の製造方法と異なる。
【0085】
この場合、プラズモンフィルタ3を形成する工程は、第2部材11を成膜する工程、第2部材11を加工する工程、および第1部材10を成膜する工程のみによって、実施され得る。言い換えると、プラズモンフィルタ3を形成する工程では、プラズモン共鳴材料を加工する工程が不要とされ得る。一般的に、誘電体材料の加工は、プラズモン共鳴材料の加工と比べて、容易である。また、一般的に、誘電体材料のコストは、AuおよびAg等のコストよりも低い。
【0086】
そのため、電磁波検出器103の製造コストは、電磁波検出器100の製造コストと比べて、低い。
【0087】
なお、電磁波検出器103は、プラズモン共鳴材料により構成されていない第2部材11とを含む点を除き、電磁波検出器101または電磁波検出器102と同様の構成を備えていてもよい。
【0088】
実施の形態4.
図7に示されるように、実施の形態4に係る電磁波検出器104は、実施の形態3に係る電磁波検出器103と同様に、プラズモンフィルタ3が、プラズモン共鳴材料により構成されている第1部材10と、プラズモン共鳴材料により構成されていない第2部材11とを含む点で、電磁波検出器100とは異なる。
【0089】
電磁波検出器104は、電磁波検出器103と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、第1部材10および第2部材11が複数の貫通孔30の各孔軸方向に沿って積層されている点で、電磁波検出器103とは異なる。
【0090】
プラズモンフィルタ3は、2以上の第1部材10と、1以上の第2部材11との積層体として構成されている。プラズモンフィルタ3は、例えば3つ以上の第1部材10と、2つ以上の第2部材11とにより構成されている。
【0091】
第1部材10を構成する材料は、上記プラズモン共鳴材料である。第2部材11を構成する材料は、誘電体材料である。第2部材11を構成する材料は、例えば酸化シリコンおよび窒化シリコンの少なくともいずれかを含む。
【0092】
第1部材10と第2部材11とは、キャパシタンスを構成している。このようなプラズモンフィルタ3は、検出波長においてスプリットリング共振器またはハイパボリックメタマテリアルと同様に作用し得るため、検出波長において屈折率が負の値またはゼロとなり、その結果集光効果またはレンズ効果を奏する。その結果、電磁波検出器104における各貫通孔30の開口面積は電磁波検出器100における各貫通孔30の開口面積よりも小さくされ得る。つまり、電磁波検出器104の画素、は電磁波検出器100の画素よりも小型化され得る。そのため、外形の寸法が同等である電磁波検出器104と電磁波検出器100とを比べると、電磁波検出器104は、電磁波検出器100と比べて、多くの画素を備えて高い分解能を有することができる。
【0093】
なお、電磁波検出器104は、プラズモン共鳴材料により構成されている第1部材10およびプラズモン共鳴材料により構成されていない第2部材11を含む点を除き、電磁波検出器101または電磁波検出器102と同様の構成を備えていてもよい。
【0094】
実施の形態5.
実施の形態5に係る電磁波検出器は、実施の形態1に係る電磁波検出器100と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、
図8に示されるプラズモンフィルタ3の複数の貫通孔30の周期Pが検出波長と等しいことが特定されている点で、電磁波検出器100とは異なる。
【0095】
実施の形態5においては、周期Pが、プラズモンフィルタ3によって選択される波長帯域を決定する主要なパラメータとされている。検出波長が赤外線の波長帯域内にある場合、プラズモンフィルタ3の複数の貫通孔30の各々の開口幅および深さ(プラズモンフィルタ3の厚さ)が検出波長の1/4程度である。
【0096】
複数の貫通孔30の上記周期Pには、複数の貫通孔30の各々の開口幅および深さと比べて、製造ばらつきが生じにくい。そのため、実施の形態5に係る電磁波検出器では、電磁波検出器100と比べて、プラズモンフィルタ3の複数の貫通孔30の各々の開口幅および深さにばらつきが生じた場合にも、検出波長の選択性能が当該ばらつきによって影響を受けにくい。
【0097】
なお、上述のように、複数の貫通孔30の各々の平面形状は、任意の形状であればよい。
図8に示されるように、複数の貫通孔30の各平面形状は、例えば正方形状であってもよい。
【0098】
なお、実施の形態5に係る電磁波検出器は、プラズモンフィルタ3の複数の貫通孔30の周期Pが検出波長と等しいことが特定されている点を除き、実施の形態2~4に係る電磁波検出器101~電磁波検出器104のいずれかと同様の構成を備えていてもよい。
【0099】
実施の形態6.
実施の形態6に係る電磁波検出器は、実施の形態1に係る電磁波検出器100と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、
図9および
図10に示されるように、複数の貫通孔30の各平面形状が長手方向および短手方向を有していることが特定されている点で、電磁波検出器100とは異なる。
【0100】
図9および
図10に示されるプラズモンフィルタ3では、各貫通孔30の平面形状は、第3面3Aに沿った1つの仮想直線のみに対して対称性を有している。言い換えると、各貫通孔30の平面形状は、長手方向と短手方向とを有している。各貫通孔30の長手方向は、例えば互いに並行である。各貫通孔30の短手方向は、例えば互いに並行である。
【0101】
このようなプラズモンフィルタ3では、検出波長の電磁波であって、各貫通孔30の平面形状における長手方向と直交する電界を有する電磁波が照射されたときにのみ、表面プラズモン共鳴が生じる。つまり、
図9および
図10に示されるプラズモンフィルタ3は、偏光選択性を有している。そのため、このようなプラズモンフィルタ3を備える電磁波検出器は、検出波長の電磁波のうち特定の偏光のみを検知できる。このような偏光を検出できる電磁波検出器は、人工物と自然物の判別、例えば海面に浮かんだ油の判別、砂漠における車両の判別、または夏場の人体と道路の判別を行うことができる。また、このような偏光を検出できる電磁波検出器は、分子の偏光特性の判別などにも利用できる。
【0102】
図10に示されるように、各貫通孔30の長手方向における周期Pは、例えば各貫通孔30の短手方向における周期Pと等しくてもよい。また、各貫通孔30の長手方向における周期Pは、例えば各貫通孔30の短手方向における周期Pと異なっていてもよい。また、各貫通孔30の短手方向において、複数の貫通孔30の配列は非対称であってもよい。
【0103】
なお、実施の形態6に係る電磁波検出器は、複数の貫通孔30の各平面形状が長手方向および短手方向を有していることが特定されている点を除き、実施の形態2~5に係る電磁波検出器101~電磁波検出器104のいずれかと同様の構成を備えていてもよい。
【0104】
実施の形態7.
図11に示されるように、実施の形態
7に係る電磁波検出器105は、実施の形態1に係る電磁波検出器100と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、複数の貫通孔30の各内周面3Cが各貫通孔30の各孔軸に対して傾斜している点で、電磁波検出器100とは異なる。
【0105】
図11に示されるように、プラズモンフィルタ3の断面形状は、例えばいわゆる順テーパー形状である。複数の貫通孔30の各内周面3Cは、第3面3Aに対して鋭角を成すとともに、第4面3Bに対して鈍角を成している。第3面3Aに対して内周面3Cが成す角度(以下、傾斜角度)に応じて、共鳴波長の波長帯域、半値半幅、およびQ値(Quality Factor)が制御される。
【0106】
基本的には、上記傾斜角度が小さいほど、プラズモンフィルタ3が透過する電磁波の波長帯域は狭くなる。その結果、
図11に示される電磁波検出器105は、
図1に示される電磁波検出器100と比べて、電磁波の波長選択性(単色性)が高くなり、検出波長の電磁波をより高精度に検出できる。
【0107】
また、プラズモンフィルタ3の断面形状は、例えばいわゆる逆テーパー形状であってもよい。複数の貫通孔30の各内周面3Cは、第3面3Aに対して鈍角を成すとともに、第4面3Bに対して鋭角を成していてもよい。基本的には、上記傾斜角度が大きいほど、プラズモンフィルタ3が透過する電磁波の波長帯域は広くなる。
【0108】
なお、上記傾斜角度の波長帯域への寄与度は、複数の貫通孔30の周期性が一次元的か二次元的であるか、および複数の貫通孔30の各平面形状等に応じて変化する。
【0109】
実施の形態7に係る電磁波検出器は、複数の貫通孔30の各平面形状が長手方向および短手方向を有していることが特定されている点を除き、実施の形態2~6に係る電磁波検出器101~電磁波検出器104のいずれかと同様の構成を備えていてもよい。
【0110】
実施の形態8.
図12および
図13に示されるように、実施の形態8に係る電磁波検出器106は、実施の形態1に係る電磁波検出器100と基本的に同様の構成を備え、同等の効果を奏するが、二次元材料層1の長手方向の端部が絶縁層4上に配置されている点で、電磁波検出器100とは異なる。
【0111】
二次元材料層1の長手方向の端部は、例えばプラズモンフィルタ3上に配置されている絶縁層4上に配置されている。この場合、二次元材料層1は、第1部分1aと、第1部分1aを挟むように配置された2以上の第2部分1bおよび第3部分1cを有している。なお、二次元材料層1の長手方向の端部は、例えば領域20上に配置されている絶縁層4上に配置されていてもよい。この場合、二次元材料層1は、第1部分1aおよび第3部分1cと、第1部分1aを挟むように配置された2以上の第2部分1bとを有している。
【0112】
実施の形態8に係る電磁波検出器は、二次元材料層1の長手方向の端部が絶縁層4上に配置されている点を除き、実施の形態2~7に係る電磁波検出器101~電磁波検出器105のいずれかと同様の構成を備えていてもよい。
【0113】
実施の形態9.
図14に示されるように、実施の形態9に係る電磁波検出器107は、実施の形態1に係る電磁波検出器100と基本的に同様の構成を備え、同等の効果を奏するが、貫通孔30の内部において、二次元材料層1と半導体層2との間にバッファ層7が配置されている点で、電磁波検出器100とは異なる。
【0114】
バッファ層7は、二次元材料層1の第1部分1aと半導体層2の領域20とを電気的に接続している。具体的には、バッファ層7は、二次元材料層1の第1部分1aと半導体層2の上記第1接触領域とが当該トンネル電流によって電気的に接続されるように、設けられている。バッファ層7を構成する材料は、電気的絶縁性を有する任意の材料であればよいが、例えばSiO2、Si3N4、HfO2、Al2O3、およびBNから成る群から選択される少なくとも1つを含む。
【0115】
バッファ層7は、領域20のうち少なくとも第1接触領域上に配置されていればよいが、例えば第1接触領域および第2接触領域上に配置されている。バッファ層7は、例えば領域20の一部を露出させるように設けられている。
【0116】
バッファ層7の厚さは、例えば、検出波長の電磁波が入射したときに、二次元材料層1と半導体層2との間にトンネル電流が生じ得るように設定される。バッファ層7の厚さは、例えば厚さが1nm以上10nm以下である。バッファ層7の厚さは、検出波長に応じて決定される。バッファ層7の作製方法は、任意の方法とされ得るが、例えばALD(Atomic Layer Deposition)法、真空蒸着法、およびスパッタ法などから選択され得る。あるいは、バッファ層7は、半導体層2の表面を酸化または窒化することにより形成されてもよい。あるいは、バッファ層7は、半導体層2の表面に形成される自然酸化膜であってもよい。
【0117】
電磁波検出器107では、バッファ層7により半導体層2と二次元材料層1との接合界面での漏れ電流を抑制することで、バッファ層7を備えない電磁波検出器100と比べて、暗電流が低減され得る。また、電磁波検出器107では、バッファ層7の膜厚を半導体層2から二次元材料層1へトンネル注入が生じる程度の厚さとすることで、二次元材料層1に大きな光電流が注入され、感度が高い。
【0118】
なお、バッファ層7の厚さは、二次元材料層1と半導体層2との間にトンネル電流を形成することが可能な厚さよりも厚く、かつ絶縁層4の厚さよりも薄くてもよい。この場合、半導体層2にて生じた光キャリアは二次元材料層1に注入されず、光ゲート効果のみが生じる。バッファ層7が絶縁層4より薄ければ、絶縁層4と接触している二次元材料層1と、バッファ層7と接触している二次元材料層1との間に、キャリア密度の勾配が生じる。その結果、二次元材料層1の移動度が向上するため、感度が高くなる。
【0119】
実施の形態9に係る電磁波検出器107は、各貫通孔30の内部において、二次元材料層1と半導体層2との間にバッファ層7が配置されている点を除き、実施の形態2~8に係る電磁波検出器101~電磁波検出器106のいずれかと同様の構成を備えていてもよい。
【0120】
実施の形態10.
図15に示されるように、実施の形態10に係る電磁波検出器108は、実施の形態1に係る電磁波検出器100と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を奏するが、各貫通孔30の内部において、二次元材料層1と半導体層2との間に接続導電体8が配置されている点で、電磁波検出器100と異なっている。
【0121】
接続導電体8は、二次元材料層1の第1部分1aと半導体層2の領域20とを電気的に接続する。二次元材料層1の第1部分1aは、半導体層2の上記第1接触領域と、接続導電体8を介して電気的に接続されている。
【0122】
接続導電体8は半導体層2とオーミック接合していることが望ましい。また、接続導電体8は電磁波検出器が検出する電磁波の波長において高い透過率を示すことが望ましい。
【0123】
接続導電体8は、領域20のうち少なくとも第1接触領域上に配置されていればよいが、例えば第1接触領域および第2接触領域上に配置されている。接続導電体8は、例えば領域20の一部を露出させるように設けられている。
【0124】
電磁波検出器108では、二次元材料層1と半導体層2との間に接続導電体8が設けられることにより、電磁波検出器100と比べて、二次元材料層1と半導体層2との間のコンタクト抵抗を低減でき、また二次元材料層1と半導体層2との接合がショットキー接合である場合に問題となる光電流の減衰を抑制できる。
【0125】
また、電磁波検出器108では、接続導電体8の厚みと絶縁層4の厚みとが実質的に同じである、つまり接続導電体8の上面の位置が絶縁層4の上面の位置と実質的に同じであるのが好ましい。この場合、二次元材料層1が折れ曲がることなく水平に形成されるため、二次元材料層1でのキャリアの移動度が向上する。光ゲート効果は移動度に比例するため、電磁波検出器の検出感度が向上する。
【0126】
実施の形態10に係る電磁波検出器108は、各貫通孔30の内部に接続導電体8が形成されている点を除き、実施の形態2~8に係る電磁波検出器101~電磁波検出器106のいずれかと同様の構成を備えていてもよい。
【0127】
実施の形態11.
図16に示されるように、実施の形態11に係る電磁波検出器109は、実施の形態1に係る電磁波検出器100と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を奏するが、半導体層2が第1導電型を有する第1半導体部分21と第1半導体部分21と接合され、第2導電型を有する第2半導体部分22とを含み、第1半導体部分21と第2半導体部分22との接合界面が各領域20内に配置されている点で、電磁波検出器100と異なっている。
【0128】
第1半導体部分21および第2半導体部分22は、第1面2Aに沿って並んで配置されている。第1半導体部分21は、第2半導体部分22と逆のキャリアでドーピングされている。すなわち、第1半導体部分21と第2半導体部分22とは、pn接合している。第1半導体部分21、第2半導体部分22、および第1半導体部分21と第2半導体部分22とのpn接合界面23の各々の少なくとも一部は、領域20内に配置されている。
【0129】
第1半導体部分21および第2半導体部分22を構成する材料は、例えば同じ半導体材料である。
【0130】
図16に示されるように、第1半導体部分21と第2半導体部分22とのpn接合界面23は二次元材料層1の第1部分1aと接触するように配置されている。そのため、電磁波が照射されたときに第1半導体部分21と第2半導体部分22とのpn接合界面23で発生した光キャリアは二次元材料層1に容易に取り出され得る。さらに、pn接合界面23上の二次元材料層1の導電率は、光キャリアにより生じたpn接合での局所電界変化の影響を受けて、変化する。この結果、電磁波検出器の検出感度が向上する。
【0131】
なお、第1半導体部分21および第2半導体部分22を構成する材料は、異なる半導体材料であってもよい。この場合、電磁波検出器109が複数の共鳴波長が存在するように設けられたプラズモンフィルタ3をさらに備えていれば、該電磁波検出器109は複数かつ狭い波長帯域の電磁波を検出できる。
【0132】
実施の形態11に係る電磁波検出器109は、各貫通孔30の内部に接続導電体8が形成されている点を除き、実施の形態2~9に係る電磁波検出器101~電磁波検出器108のいずれかと同様の構成を備えていてもよい。
【0133】
実施の形態12.
図17および
図18に示されるように、実施の形態12に係る電磁波検出器110は、実施の形態1に係る電磁波検出器100と基本的に同様の構成を備え、同等の効果を奏するが、1つの二次元材料層1が複数の領域20の各々の上記第1接触領域と電気的に接続されている点で、電磁波検出器100とは異なる。なお、
図18では、第1電極部5および第2電極部6に接続される電気配線は省略されている。
【0134】
1つの二次元材料層1は、例えば隣り合う2つの領域20の各々と電気的に接続されている。なお、1つの二次元材料層1は、隣り合う3つ以上の領域20の各々と電気的に接続されていてもよい。
【0135】
また、
図18に示される絶縁層4では、貫通孔30に対して一方の側に位置する部分のみがステップ状に設けられているが、絶縁層4の貫通孔30に対する一方の側に位置する部分および他方の側に位置する部分がいずれもステップ状に設けられていてもよい。異なる観点から言えば、
図18に示される二次元材料層1では、貫通孔30に対して一方の側に位置する部分のステップ数が他方の側に位置する部分のステップ数よりも多いが、二次元材料層1の貫通孔30に対する一方の側に位置する部分および他方の側に位置する部分の各ステップ数が等しくてもよい。
【0136】
電磁波検出器110では、電磁波検出器100と比べて、1つの二次元材料層1が電気的に接続されている領域20の数が多いため、1つの二次元材料層1が半導体層2から受け取る光キャリアの量が多くなる。その結果、電磁波検出器110の感度は、電磁波検出器100の感度と比べて高くなる。
【0137】
実施の形態12に係る電磁波検出器110は、1つの二次元材料層1が複数の領域20の各々の上記第1接触領域と電気的に接続されている点を除き、実施の形態2~10に係る電磁波検出器101~電磁波検出器109のいずれかと同様の構成を備えていてもよい。
【0138】
実施の形態13.
図19および
図20に示されるように、実施の形態13に係る電磁波検出器111は、実施の形態1に係る電磁波検出器100と基本的に同様の構成を備え、同等の効果を奏するが、第1電極部5および絶縁層4の構成が電磁波検出器100と異なっている。
【0139】
電磁波検出器111では、絶縁層4および第1電極部5が環状に形成されており、二次元材料層1の上記第1部分が絶縁層4および第1電極部5よりも内側に配置されている。
【0140】
電磁波検出器111では、電磁波検出器100と比べて、二次元材料層1を介して半導体層2から取り出される光電流が増加するため、検出感度は高い。
【0141】
なお、
図19および
図20では、二次元材料層1の第3部分1cが第1電極部5上に配置されているが、二次元材料層1の第3部分1cは第1電極部5よりも下に配置されていてもよい。
【0142】
<変形例>
図21に示されるように、電磁波検出器111の変形例としての電磁波検出器112では、二次元材料層1が、第1電極部5のうち貫通孔30に対して一方の側に位置する第1電極部5の一部分と電気的に接続されているとともに、貫通孔30に対して他方の側に位置する第1電極部5の他の一部分と電気的に接続されている。
【0143】
電磁波検出器112は、電磁波検出器111と基本的に同様の構成を備えているため、電磁波検出器111と同様の効果を奏することができる。
【0144】
なお、電磁波検出器111および電磁波検出器112では、第1電極部5の平面形状はC字状であってもよい。言い換えると、平面視において、第1電極部5の端部間は貫通孔30の周方向において間隔を隔てて配置されていてもよい。また、平面視において、第1電極部5の端部間は貫通孔30の径方向において間隔を隔てて配置されていてもよい。
【0145】
実施の形態13に係る電磁波検出器111,112は、絶縁層4および第1電極部5が環状に形成されている点を除き、実施の形態2~12に係る電磁波検出器101~電磁波検出器110のいずれかと同様の構成を備えていてもよい。
【0146】
実施の形態14.
図22に示されるように、実施の形態14に係る電磁波検出器113は、実施の形態1に係る電磁波検出器100と基本的には同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、絶縁層4の厚さが領域20から第1電極部5に近づくにつれて変化している点で、電磁波検出器100と異なる。
【0147】
図22に示されるように、絶縁層4の厚さは、領域20から第1電極部5に近づくにつれて厚くなっている。絶縁層4は、半導体層2の第1面2Aに対して傾斜している傾斜面4Cを有している。第1面2Aに対して傾斜面4Cが成す傾斜角度は、鋭角である。傾斜面4Cの少なくとも一部は、領域20上に配置されている。
【0148】
二次元材料層1は、傾斜面4C上を延在している。具体的には、二次元材料層1の第2部分1bは、傾斜面4C上に配置されている。
【0149】
傾斜面4Cを有する絶縁層4は、任意の方法により形成され得る。たとえば、半導体層2を傾けて絶縁膜を成膜することにより、傾斜面4Cを有する絶縁層4を形成してもよい。あるいは、半導体層2を傾けた状態で、当該半導体層2上に予め形成された絶縁層4をドライエッチングすることにより、傾斜面4Cを有する絶縁層4を形成してもよい。
【0150】
電磁波検出器113では、絶縁層4の厚さに勾配が設けられていることで、半導体層2に電磁波が照射された場合に、二次元材料層1中における電界変化の程度に局所的な変化が生じる。つまり、半導体層2に電磁波が照射され、二次元材料層1に電界変化が与えられる際に、絶縁層4の厚さの変化に応じて当該電界変化の程度が局所的に変わる。これにより、二次元材料層1中のキャリアの移動度が向上し、電磁波検出器の検出感度が向上する。
【0151】
実施の形態14に係る電磁波検出器113は、絶縁層4の厚さが領域20から第1電極部5に近づくにつれて変化している点を除き、実施の形態2~13に係る電磁波検出器101~電磁波検出器112のいずれかと同様の構成を備えていてもよい。
【0152】
実施の形態15.
図23に示されるように、実施の形態15に係る電磁波検出器114は、実施の形態1に係る電磁波検出器100と基本的には同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、半導体層2と二次元材料層1との間に空隙Vが形成されている点で、電磁波検出器100と異なる。
【0153】
光ゲート効果においてソース領域として作用する二次元材料層1の第1部分1aは、接続導電体8を介して、半導体層2の上記第1接触領域と電気的に接続されている。接続導電体8の厚さは、プラズモンフィルタ3の厚さと絶縁層4の厚さとの和と等しいことが好ましい。この場合、二次元材料層1は、接続導電体8上から絶縁層4上にまで、平面状に延びている。なお、半導体層2の上記第1接触領域は、二次元材料層1と接触しておらず、接続導体8と接触している。
【0154】
光ゲート効果においてソース領域として作用する二次元材料層1の第2部分1bは、空隙Vに面している部分と、絶縁層4と接している部分とを有している。この場合、電磁波入射時に半導体層2において生じた光キャリアは、絶縁層4の部分4aまたは空隙Vを介して二次元材料層1の第2部分1bに電界効果を与える。つまり、この構成においても光ゲート効果が生じる。二次元材料層1と半導体層2が直接接していないため二次元材料層1の移動度の低下が生じない。よって、電磁波検出器としての性能も向上する。
【0155】
<変形例>
図24に示されるように、電磁波検出器114の変形例としての電磁波検出器115では、半導体層2が、凸部24を有している。凸部24は、プラズモンフィルタ3の貫通孔30の内部、すなわち領域20上に配置されている。二次元材料層1は、凸部24と接触している。凸部24は、半導体層2において二次元材料層1の第1部分と接触している上記第1接触領域を有している。凸部24の高さは、
図24に示すようにプラズモンフィルタ3の厚さと絶縁層4の厚さとの和と等しいことが好ましい。なお、凸部24は、上述した製造方法の半導体層2を準備する工程において、半導体層2をフォトリソグラフィおよびドライエッチングなどで加工することによって形成され得る。プラズモンフィルタ3は、凸部24が形成された半導体層2上に形成され得る。
【0156】
この構成においても、光ゲート効果が生じる。さらに、空隙Vの部分では二次元材料層1と絶縁層4が直接接していないため二次元材料層1の移動度の低下が生じない。よって、電磁波検出器としての性能も向上する。
【0157】
実施の形態15に係る電磁波検出器114,115は、半導体層2と二次元材料層1との間に空隙Vが形成されている点を除き、実施の形態2~14に係る電磁波検出器101~電磁波検出器113のいずれかと同様の構成を備えていてもよい。
【0158】
実施の形態16.
図25に示されるように、実施の形態16に係る電磁波検出器116は、実施の形態1に係る電磁波検出器100と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、二次元材料層1と接触している少なくとも1つ以上の接触層9をさらに備えている点で、電磁波検出器100と異なっている。
【0159】
接触層9は、例えば二次元材料層1上に配置されている。接触層9は、二次元材料層1と接触することで、二次元材料層1に正孔又は電子を供給することが可能な材料により構成されている。接触層9により二次元材料層1に任意に正孔又は電子をドーピングすることができる。
【0160】
接触層9としては、例えば、ポジ型フォトレジストと呼ばれる、キノンジアジト基を有する感光剤とノボラック樹脂とを含有する組成物を用いることができる。また、接触層9を構成する材料としては、例えば、極性基を有する材料を用いることができる。例えば、当該材料の一例である電子求引基を有する材料は、二次元材料層1の電子密度を減少させる効果を持つ。また、当該材料の一例である電子供与基を有する材料は、二次元材料層1の電子密度を増加させる効果を持つ。電子求引基を有する材料としては、例えば、ハロゲン、ニトリル、カルボキシル基、又は、カルボニル基等を有する材料が挙げられる。また、電子供与基を有する材料としては、例えば、アルキル基、アルコール、アミノ基、又は、ヒドロキシル基等を有する材料が挙げられる。また、上記以外にも極性基によって分子全体において電荷の偏りが生じる材料も、接触層9の材料として用いることができる。
【0161】
また、有機物、金属、半導体、絶縁体、2次元材料、又は、これら材料のいずれかの混合物においても、分子内で電荷の偏りが生じて極性を生じる材料であれば、接触層9の材料として用いることができる。ここで、無機物からなる接触層9と二次元材料層1とを接触させた場合、二次元材料層1がドーピングされる導電型は、二次元材料層1の仕事関数よりも接触層9の仕事関数が大きい場合はp型、小さい場合はn型である。それに対して、接触層9が有機物の場合、当該接触層9を構成する材料である有機物が明確な仕事関数を有していない。そのため、二次元材料層1に対してn型ドープになるのか、p型ドープになるのかは、接触層9に用いる有機物の分子の極性によって、接触層9の材料の極性基を判断することが好ましい。
【0162】
例えば、接触層9として、ポジ型フォトレジストと呼ばれる、キノンジアジト基を有する感光剤とノボラック樹脂とを含有する組成物を用いる場合、二次元材料層1においてフォトリソグラフィ工程によりレジストを形成した領域がp型二次元材料層領域となる。これにより、二次元材料層1の表面上に接触するマスク形成処理が不要となる。この結果、二次元材料層1に対するプロセスダメージの低減及びプロセスの簡素化が可能となる。
【0163】
電磁波検出器116は、二次元材料層1と接触している接触層9をさらに備えている。上述した通り、接触層9の材料として、例えば、電子求引基を有する材料、又は、電子供与基を有する材料を用いることで、二次元材料層1の状態(導電型)を意図的にn型又はp型とすることができる。この場合、第1電極部5および半導体層2からのキャリアドーピングの影響を考慮せず、二次元材料層1のキャリアドーピングを制御することができる。この結果、電磁波検出器の性能を向上させることができる。
【0164】
また、接触層9を、二次元材料層1の上部表面における第1電極部5側または半導体層2側のどちらか一方にのみ形成することで、二次元材料層1中に電荷密度の勾配が形成される。この結果、二次元材料層1中のキャリアの移動度が向上し、電磁波検出器を高感度化することが出来る。
【0165】
また、二次元材料層1上に複数の接触層9を形成してもよい。接触層9の数は3以上であってもよく、任意の数とすることができる。複数の接触層9を第1電極部5と半導体層2との間に位置する二次元材料層1上に形成してもよい。その場合、複数の接触層9の材料は、同じ材料でも異なる材料でもよい。
【0166】
また、電磁波検出器116において、接触層9の膜厚は、電磁波が二次元材料層1に照射された場合に、光電変換を行うことができるよう十分薄い方が好ましい。一方、接触層9から二次元材料層1にキャリアがドーピングされる程度の厚さを有するように接触層9を形成することが好ましい。接触層9は、分子又は電子などのキャリアが二次元材料層1に導入されれば任意の構成としても良い。たとえば、二次元材料層1を溶液に浸漬させて、分子レベルで二次元材料層1にキャリアを供給することで、固体の接触層9を二次元材料層1上に形成しないで、二次元材料層1にキャリアをドーピングしてもよい。
【0167】
また、接触層9の材料として、上述した材料以外にも、極性変換を生じる材料を用いてもよい。その場合、接触層9が極性変換すると、変換の際に生じた電子又は正孔が、二次元材料層1に供給される。そのため、接触層9が接触している二次元材料層1の部分に電子又は正孔のドーピングが生じる。そのため、接触層9を取り除いても、接触層9と接触していた二次元材料層1の当該部分は、電子又は正孔がドーピングされたままの状態となる。したがって、接触層9として、極性変換を生じる材料を用いた場合、一定の時間が経過した後に接触層9を二次元材料層1上から取り除いてもよい。この場合、接触層9が存在している場合より二次元材料層1の開口部面積が増加する。このため、電磁波検出器の検出感度を向上させることができる。ここで、極性変換とは、極性基が化学的に変換する現象であり、例えば、電子求引基が電子供与基に変化する、または電子供与基が電子求引基に変化する、または極性基が非極性基に変化する、または非極性基が極性基に変化する、といった現象を意味する。
【0168】
また、接触層9が電磁波照射によって極性変換を生じる材料により形成されてもよい。この場合、特定の電磁波の波長において極性変換を生じる材料を接触層9の材料として選択することで、特定の電磁波の波長の電磁波照射時のみ接触層9で極性変換を生じさせ、二次元材料層1へのドーピングを行うことができる。この結果、二次元材料層1に流入する光電流を増大させることができる。
【0169】
また、電磁波照射によって酸化還元反応を生じる材料を接触層9の材料として用いてもよい。この場合、酸化還元反応時に生じる電子又は正孔を二次元材料層1にドーピングすることができる。
【0170】
実施の形態16に係る電磁波検出器116は、二次元材料層1と接触している少なくとも1つ以上の接触層9をさらに備えている点を除き、実施の形態2~15に係る電磁波検出器101~電磁波検出器115のいずれかと同様の構成を備えていてもよい。
【0171】
実施の形態17.
実施の形態17に係る電磁波検出器は、実施の形態1に係る電磁波検出器と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を奏するが、二次元材料層1が乱層構造部分を含む点で、電磁波検出器100と異なる。
【0172】
本実施の形態に係る電磁波検出器では、二次元材料層1においてチャネル領域に対応する領域が乱層構造部分となっている。ここで、乱層構造とは、グラフェンが複数積層された領域であって、積層されたグラフェン同士の格子が不整合な状態で積層された構造を意味する。なお、二次元材料層1の全体が乱層構造であってもよいし、一部のみが乱層構造となっていてもよい。
【0173】
乱層構造部分の作製方法としては任意の方法を用いることができる。たとえば、CVD法で作製した単層のグラフェンを複数回転写し、多層グラフェンを積層することで乱層構造部分を形成してもよい。また、グラフェン上に、エタノールまたはメタンなどを炭素源としてCVD法によりグラフェンを成長して乱層構造部分を形成しても良い。二次元材料層1において絶縁層4との接触領域を乱層構造とすることで、二次元材料層1におけるキャリアの移動度が向上する。ここで、通常の積層グラフェンは、A-B積層と呼ばれ、積層したグラフェン同士の格子が整合した状態で積層される。しかし、CVD法により作製したグラフェンは多結晶であり、グラフェン上に更にグラフェンを複数回転写した場合、またはCVD法を用いて下地のグラフェン上にグラフェンを積層した場合は、積層されたグラフェン同士の格子が不整合な状態である乱層構造となる。
【0174】
乱層構造のグラフェンは、層間の相互作用の影響が少なく、単層グラフェンと同等の性質を持つ。さらに、二次元材料層1は下地となる絶縁層4でのキャリア散乱の影響を受けて移動度が低下する。しかし、乱層構造のグラフェンは絶縁層4と接触するグラフェンはキャリア散乱の影響を受けるが、当該グラフェン上に乱層構造で積層された上層のグラフェンは、下地の絶縁層4のキャリア散乱の影響を受けにくくなる。また、乱層構造のグラフェンでは、層間の相互作用の影響が少ないため、導電率も向上する。以上より、乱層構造のグラフェンではキャリアの移動度を向上させることができる。この結果、電磁波検出器の感度を向上させることができる。
【0175】
また、乱層構造のグラフェンは絶縁層4上に存在する二次元材料層1の部分のみに適用しても良い。たとえば、二次元材料層1において半導体層2との接触領域や第1電極部5との接触領域については乱層構造ではないグラフェン、たとえば単層のグラフェンを用いてもよい。この場合、第1電極部5および半導体層2と二次元材料層1とのコンタクト抵抗を増大させることなく、二次元材料層1に対する絶縁層4のキャリア散乱の影響を抑制することが出来る。
【0176】
実施の形態17に係る電磁波検出器は、二次元材料層1が乱層構造部分を含む点を除き、実施の形態2~16に係る電磁波検出器101~電磁波検出器116のいずれかと同様の構成を備えていてもよい。
【0177】
実施の形態18.
実施の形態18に係る電磁波検出器は、実施の形態1に係る電磁波検出器100と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を奏するが、半導体層2、絶縁層4、および接触層9の少なくともいずれかを構成する材料が、電磁波の照射により特性が変化し二次元材料層1に電位の変化を与える材料に特定されている点で、電磁波検出器100とは異なる。
【0178】
半導体層2、絶縁層4、および接触層9の各々を構成する材料が、電磁波の照射により特性が変化し二次元材料層1に電位の変化を与える材料であってもよい。また、半導体層2、絶縁層4、および接触層9のいずれかを構成する材料のみが、電磁波の照射により特性が変化し二次元材料層1に電位の変化を与える材料であってもよい。また、半導体層2、絶縁層4、および接触層9のうちの2つの構成材料のみが、電磁波の照射により特性が変化し二次元材料層1に電位の変化を与える材料であってもよい。
【0179】
半導体層2は、例えば、半導体材料、pn接合材料、金属-半導体接合材料、金属-絶縁物-半導体接合材料、およびペロブスカイト材料(結晶構造がペロブスカイト構造である材料)からなる群から選択される少なくとも1つにより構成されている。
【0180】
接触層9は、量子ドット、液晶材料、フラーレン、およびペロブスカイト材料からなる群から選択される少なくとも1により構成されている。
【0181】
絶縁層4は、例えば強誘電体材料および希土類酸化物の少なくともいずれかにより構成されている。例えば、強誘電体材料として、電磁波による分極効果(焦電効果)を有する強誘電体材料を用いる場合、電磁波の照射により、強誘電体材料に分極の変化が生じる。この結果、二次元材料層1に電位の変化を与えることができる。
【0182】
なお、接触層9が上記のように二次元材料層1に電位の変化を与える材料で構成されている場合、接触層9は、必ずしも二次元材料層1に直接接触している必要はない。接触層9は、例えば絶縁膜を介して二次元材料層1の上面又は下面上に接触するように設けられていてもよい。
【0183】
なお、実施の形態18に係る電磁波検出器は、半導体層2、絶縁層4、および接触層9の少なくともいずれかを構成する材料が、電磁波の照射により特性が変化し二次元材料層1に電位の変化を与える材料に特定されている点を除き、実施の形態2~17に係る電磁波検出器のいずれかと同様の構成を備えていてもよい。
【0184】
実施の形態19.
実施の形態19に係る電磁波検出器は、実施の形態1に係る電磁波検出器100と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を奏するが、複数の貫通孔30の各内周面3Cの断面形状が階段形状(ステップ形状)である点で、電磁波検出器100とは異なる。
図26では、実施の形態19に係る電磁波検出器のプラズモンフィルタ3の1つの貫通孔30の周辺構造のみが図示されており、プラズモンフィルタ3の他の貫通孔30の周辺構造および他の部材の図示が省略されている。
【0185】
図26に示されるように、内周面3Cは、複数(例えば2つ)のステップ面3Dと、複数(例えば3つ)のテラス面3Eとを有している。各ステップ面3Dは、例えば貫通孔30の孔軸に沿って延びている。各テラス面3Eは、貫通孔30の孔軸と交差しており、平面視において環形状を有している。平面視において、各テラス面3Eの中心は、例えば互いに重なっている。平面視において、各テラス面3Eの中心は、例えば貫通孔30の中心と重なっている。各テラス面3Eは、例えば貫通孔30の孔軸と直交している。各ステップ面3Dの寸法は、例えば互いに等しい。各テラス面3Eの寸法は、例えば互いに等しい。各貫通孔30の中心に対する径方向において、最も外側に位置するステップ面3D(最上段のステップ面3D)の上端部は、第4面3Bの内周端部に接続されている。絶縁層4および二次元材料層1は、プラズモンフィルタ3の複数のステップ面3D、複数のテラス面3E、および第4面3B上に配置されている。
【0186】
複数の貫通孔30のうち少なくとも1つの貫通孔30が、
図26に示される構造を有していればよいが、例えばプラズモンフィルタ3の複数の貫通孔30の各々が
図26に示される構造を有している。
【0187】
実施の形態19に係る電磁波検出器では、電磁波検出器100と比べて、電磁波がプラズモンフィルタ3に照射されたときにプラズモンフィルタ3において高次の回折が起こりにくいため、プラズモンフィルタ3を透過する電磁波の強度が増強され得る。
【0188】
断面視において、各ステップ面3Dは、順テーパー形状を有していてもよい。言い換えると、各ステップ面3Dは、貫通孔30の中心から離れるにつれて、第3面3Aからの距離が長くなるように、傾斜していてもよい。
【0189】
実施の形態19に係る電磁波検出器は、複数の貫通孔30の各内周面3Cの断面形状が階段形状(ステップ形状)である点を除き、実施の形態2~18に係る電磁波検出器のいずれかと同様の構成を備えていてもよい。
【0190】
実施の形態20.
実施の形態20に係る電磁波検出器は、実施の形態1に係る電磁波検出器100と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を奏するが、プラズモンフィルタ3の第4面3Bに1つの貫通孔30を囲む複数の溝部31(堀り込み)が形成されている点で、電磁波検出器100とは異なる。
図27および
図28は、実施の形態20に係る電磁波検出器のプラズモンフィルタ3の1つの貫通孔30の周辺構造のみが図示されており、プラズモンフィルタ3の他の貫通孔30の周辺構造および他の部材の図示が省略されている。
【0191】
図27に示されるように、平面視において、複数(例えば2つ)の溝部31の各中心は、互いに重なっている。平面視において、各溝部31の中心は、例えば1つの貫通孔30の中心と重なっている。異なる観点から言えば、平面視において、プラズモンフィルタ3の第4面3Bは、いわゆるブルズアイ構造を有している。
【0192】
図28に示されるように、第4面3Bは、複数(例えば3つ)の頂面3Fと、複数(例えば4つ)の壁面3Gと、複数(例えば2つ)の底面3Hとを有している。各溝部31は、2つの壁面3Gと、1つの底面3Hとを有している。各溝部31の2つの壁面3Gは、貫通孔30の孔軸に対する径方向において、互いに対向している。各壁面3Gの上端部は、各頂面3Fの内周端部または外周端部に接続されている。各壁面31Aの下端部は、各底面3Hの内周端部または外周端部に接続されている。各壁面3Gは、例えば貫通孔30の孔軸に沿って延びている。各頂面3Fおよび各底面3Hは、例えば貫通孔30の孔軸と直交している。貫通孔30の中心に対する径方向において最も内側に位置する頂面3Fの内周端部は、内周面3Cの上端部に接続されている。絶縁層4および二次元材料層1は、プラズモンフィルタ3の複数の頂面3F、複数の壁面3G、および複数の底面3H上に配置されている。第1電極部5は、例えば貫通孔30の中心に対する径方向において最も外側に位置する頂面3F上に配置されている。
【0193】
平面視において、各溝部31は、1つの貫通孔30のみを囲んでいる。平面視において、各溝部31は、隣り合う2つの貫通孔30を囲んでいない。
【0194】
複数の貫通孔30のうち少なくとも1つの貫通孔30が、
図27および
図28に示される構造を有していればよいが、例えば複数の貫通孔30の各々が
図27および
図28に示される構造を有している。
【0195】
実施の形態20に係る電磁波検出器では、溝部31が形成された第4面3Bに電磁波が入射すると、プラズモンフィルタ3にて伝搬型の表面プラズモン共鳴が生じる。表面プラズモン共鳴は、複数の溝部31が形成されている第4面3Bを伝搬して貫通孔30に導かれるため、プラズモンフィルタ3を透過する電磁波の強度が増強され得る。
【0196】
さらに、実施の形態20に係る電磁波検出器では、検出波長が複数の溝部31の形状(複数の溝部31の周期、各溝部31の寸法など)によって決定されるため、複数の溝部31が形成されていない電磁波検出器100と比べて検出波長の設定の自由度が高い。
【0197】
プラズモンフィルタ3には、少なくとも1つの溝部31が形成されていればよい。溝部31の数は、1であってもよい。また、溝部31の数は、3以上であってもよい。上記径方向に隣り合う2つの溝部31間の間隔は、例えば互いに等しい。このようにすれば、波長選択性(単色性)が高められる。一方で、上記径方向に隣り合う溝部31間の間隔は、互いに異なっていてもよい。このようにすれば、プラズモンフィルタ3を透過する電磁波の波長帯域が広くなる。
【0198】
断面視において、各壁面3Gは、順テーパー形状を有していてもよい。言い換えると、各壁面3Gは、貫通孔30の中心から離れるにつれて、第3面3Aからの距離が長くなるように、傾斜していてもよい。
【0199】
実施の形態20に係る電磁波検出器は、プラズモンフィルタ3の第4面3Bに貫通孔30を囲む少なくとも1つの溝部31が形成されている点を除き、実施の形態2~19に係る電磁波検出器のいずれかと同様の構成を備えていてもよい。
【0200】
実施の形態21.
図29に示されるように、実施の形態21に係る電磁波検出器アレイ300は、複数の電磁波検出器200の集合体である。各電磁波検出器200は、実施の形態1~実施の形態20に係る電磁波検出器100~116のいずれかである。
【0201】
図29に示される電磁波検出器アレイ300では、複数の電磁波検出器200が二次元に周期的に配列されている。なお、複数の電磁波検出器200は、一次元に周期的に配列されていてもよい。また、複数の電磁波検出器200の配置は周期的ではなく、異なる間隔で配置してもよい。
【0202】
図29に示される電磁波検出器アレイ300では、電磁波検出器200が、2×2のマトリックス状に配置されている。ただし、配置される電磁波検出器200の数はこれに限定されない。たとえば、複数の電磁波検出器200を3以上×3以上のマトリックス状に配置してもよい。
【0203】
また、複数の電磁波検出器200がアレイ状に配置されている電磁波検出器アレイでは、各電磁波検出器200の二次元材料層1が互いに分離されていれば、第2電極部6は共通電極としてもよい。第2電極部6が共通電極である電磁波検出器アレイでは、各電磁波検出器200の第2電極部6が互いに独立している電磁波検出器アレイと比べて、画素の配線を少なくすることができ、解像度が高くなる。
【0204】
なお、各電磁波検出器200同士を分離するために、半導体層2トレンチ構造などの電流遮断構造が形成されていてもよい。
【0205】
電磁波検出器アレイ300は、アレイ状に複数の電磁波検出器200を配列することで画像センサとしても使用できる。各電磁波検出器200の検出波長は、互いに同じであってもよいが、互いに異なっていてもよい。
【0206】
また、電磁波検出器アレイ300は、各電磁波検出器200からの信号を読み出すように構成された読み出し回路を含んでいてもよい。各電磁波検出器200は、読み出し回路上に配置されてもよい。読み出し回路の読み出し形式は、例えば、CTAI(Capacitive Transimpedance Amplifier)型である。読み出し回路は、他の読み出し形式であってもよい。
【0207】
また、電磁波検出器アレイ300は、各電磁波検出器200の第1電極部5と読み出し回路とを電気的に接続するバンプを含んでいてもよい。各電磁波検出器200と読み出し回路とがバンプによって接続される構造は、ハイブリッド接合と呼ばれる。ハイブリッド接合は、量子型赤外線センサにおいては一般的な構造である。この場合、各電磁波検出器200は、例えば第1電極部5と電気的に接続されているパッドをさらに備え、各バンプは該パッドと電気的に接続される。バンプの材料は、例えば、インジウム(In)などの導電性材料である。パッドの材料は、アルミニウムシリコン(Al-Si)系合金、ニッケル(Ni)、金(Au)などの導電性材料である。
【0208】
<変形例>
図30に示される電磁波検出器アレイ301は、電磁波検出器アレイ300と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を奏するが、複数の電磁波検出器として種類の異なる電磁波検出器200、201,202,203を備えている点で、電磁波検出器アレイ300とは異なる。各電磁波検出器200、201,202,203は、実施の形態1~実施の形態20に係る電磁波検出器100~116のいずれかである。
【0209】
電磁波検出器アレイ301では、互いに異なる種類の電磁波検出器200,201,202,203がマトリックス状に配置されている。
【0210】
図30では、電磁波検出器200,201,202,203が2×2のマトリックス状に配置されているが、配置される電磁波検出器の数はこれに限定されない。また、本実施の形態では、種類の異なる電磁波検出器200,201,202,203を二次元に周期的に配列したが、一次元に周期的に配列してもよい。また、種類の異なる電磁波検出器200,201,202,203を周期的ではなく異なる間隔で配置してもよい。
【0211】
電磁波検出器アレイ301では、実施の形態1~20のいずれかに係る、種類の異なる電磁波検出器200,201,202,203を、一次元又は二次元のアレイ状に配置することで、画像センサとしての機能を持たせることができる。例えば、電磁波検出器200,201,202,203として、それぞれ検出波長の異なる電磁波検出器を用いてもよい。具体的には、実施の形態1~20のいずれかに係る電磁波検出器からそれぞれ異なる検出波長選択性を有する電磁波検出器を準備し、アレイ状に並べてもよい。この場合、電磁波検出器集合体は、少なくとも2つ以上の異なる波長の電磁波を検出することができる。
【0212】
このように異なる検出波長を有する電磁波検出器200,201,202,203をアレイ状に配置することにより、可視光域で用いるイメージセンサと同様に、たとえば紫外光、赤外光、テラヘルツ波、電波の波長域などの任意の波長域において、電磁波の波長を識別できる。この結果、たとえば波長の相違を色の相違として示した、カラー化した画像を得ることができる。
【0213】
また、各電磁波検出器200,201,202,203の各半導体層2は、検出波長の異なる材料により構成されていてもよい。たとえば、検出波長が可視光の波長である半導体材料と、検出波長が赤外線の波長である半導体材料とを上記構成材料として用いてもよい。この場合、例えば、当該電磁波検出器を車載センサに適用した時に、昼間は可視光画像用カメラとして電磁波検出器を使用できる。さらに、夜間は赤外線カメラとしても電磁波検出器を使用できる。このようにすれば、電磁波の検出波長によって、画像センサを有するカメラを使い分ける必要が無い。
【0214】
また、イメージセンサ以外の電磁波検出器の用途としては、たとえば少ない画素数でも、物体の位置検出を行うことが可能な位置検出用センサとして当該電磁波検出器を用いることができる。たとえば、電磁波検出器集合体の構造により、上記のように検出波長の異なる電磁波検出器200,201,202,203を用いれば、複数波長の電磁波の強度を検出する画像センサが得られる。これにより、従来、CMOSイメージセンサなどで必要であったカラーフィルタを用いることなく、複数の波長の電磁波を検出し、カラー画像を得ることができる。
【0215】
さらに、検出する偏光が異なる電磁波検出器200,201,202,203をアレイ化することにより、偏光識別イメージセンサを形成することもできる。例えば、検知する偏光角度が0°、90°、45°、135°である4つの画素を一単位として、当該一単位の電磁波検出器を複数配置することで偏光イメージングが可能になる。偏光識別イメージセンサによって、例えば、人工物と自然物の識別、材料識別、赤外波長域における同一温度物体の識別、物体間の境界の識別、又は、等価的な分解能の向上などが可能になる。
【0216】
以上より、上述のように構成された本実施の形態に係る電磁波検出器集合体は、広い波長域の電磁波を検出することができる。また、本実施の形態に係る電磁波検出器集合体は、異なる波長の電磁波を検出することができる。
【0217】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。矛盾のない限り、今回開示された実施の形態の少なくとも2つを組み合わせてもよい。本開示の範囲は、上記した説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0218】
1 二次元材料層、1a 第1部分、1b 第2部分、1c 第3部分、2 半導体層、2A 第1面、2B 第2面、3 プラズモンフィルタ、3A 第3面、3B 第4面、3C 内周面、4 絶縁層、4C 傾斜面、4a,4b 部分、5 第1電極部、6 第2電極部、7 バッファ層、8 接続導電体、9 接触層、10 第1部材、11 第2部材、20 領域、21 第1半導体部分、22 第2半導体部分、23 接合界面、24 凸部、30 貫通孔、100,101,102,103,104,105,106,107,108,109,110,111,112,113,114,115,116,200,201,202,203 電磁波検出器、300,301 電磁波検出器アレイ。