(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】半導体装置、電力変換装置、および移動体
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20231215BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20231215BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/28 K
(21)【出願番号】P 2022546769
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2020033217
(87)【国際公開番号】W WO2022049660
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】廣中 陽一
(72)【発明者】
【氏名】柳本 辰則
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-046158(JP,A)
【文献】特開2012-129344(JP,A)
【文献】特開2001-177053(JP,A)
【文献】特開2019-071392(JP,A)
【文献】特開2003-068979(JP,A)
【文献】特開2005-243713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 23/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース板と、
前記ベース板上に設けられた絶縁基板と、
前記絶縁基板上に設けられた半導体チップと、
前記絶縁基板および前記半導体チップを内包するように前記ベース板に取り付けられ、互いに篏合された第1樹脂ケースおよび第2樹脂ケースと、
前記絶縁基板および前記半導体チップを封止する封止材と、
を備え、
前記第1樹脂ケースおよび前記第2樹脂ケースは、比較トラッキング指数が異なる樹脂材料で構成され、
前記絶縁基板上に設けられ、かつ前記第1樹脂ケースに固定された電極端子をさらに備え、
前記第2樹脂ケースは、前記ベース板に直接取り付けられ、
前記第1樹脂ケースは、前記第2樹脂ケースを介して前記ベース板に固定され
、
前記第1樹脂ケースの前記比較トラッキング指数は、前記第2樹脂ケースの前記比較トラッキング指数よりも高い、半導体装置。
【請求項2】
前記第1樹脂ケースおよび前記第2樹脂ケースは、凹凸構造で篏合し、
前記封止材は、前記凹凸構造の少なくとも一部を充填する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1樹脂ケースおよび前記第2樹脂ケースの少なくとも一方における表面絶縁に必要な沿面距離および空間距離は、前記第1樹脂ケースまたは前記第2樹脂ケースのみで充足する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記電極端子が固定された前記第1樹脂ケースは、前記電極端子が固定された位置を含む予め定められた第1部位と、当該第1部位以外の第2部位とを有し、
前記第1部位および前記第2部位は、異なる樹脂材料で構成される、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記電極端子は、前記第1樹脂ケースにインサート成形で固定されている、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記絶縁基板と前記電極端子とは超音波接合で接合されている、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1樹脂ケースおよび前記第2樹脂ケースは、絶縁性接着剤で固定されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1樹脂ケースおよび前記第2樹脂ケースは、ガラス転移温度が100℃以上の樹脂材料で構成される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記絶縁基板および前記電極端子は、超音波接合されている、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1樹脂ケースおよび前記第2樹脂ケースは、スナップフィットで篏合されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1樹脂ケースおよび前記第2樹脂ケースは、二色成形で構成される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体チップは、ワイドバンドギャップ半導体で構成される、請求項1から11のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の半導体装置を有し、かつ入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記半導体装置を駆動するための駆動信号を前記半導体装置に出力する駆動回路と、
前記駆動回路を制御するための制御信号を前記駆動回路に出力する制御回路と、
を備える、電力変換装置。
【請求項14】
請求項13に記載の電力変換装置を備える、移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置、半導体装置を適用した電力変換装置、および電力変換装置を適用した移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力用半導体装置では、SiC(炭化珪素)などのワイドバンドギャップ半導体の実用化が進展していることに伴って、高耐熱化の要求が高まっている。一方、厳しい環境下で使用される電力用半導体装置では、当該電力用半導体装置の表面における絶縁を確保する部位について、例えばJIS C 60664-1(IEC60664-1)などで要求された規格に基づいて、比較トラッキング指数(CTI:Comparative Tracking Index)が高い材料が必要とされることが多い。従って、電力用半導体装置を構成する筐体ケースに用いられる樹脂材料は、当該電力用半導体装置内部を保護するための機械的強度などの機械物性を有した上で、高耐熱性と高い比較トラッキング指数とを両立することが重要となっている。
【0003】
従来、高耐熱性および高い機械的強度を有し、耐トラッキング性に優れたPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂の成形品で構成されたパワー半導体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、樹脂材料の耐熱性を高めるためには、樹脂材料のガラス転移温度(Tg)を高める必要があるが、ガラス転移温度を高めるとそれに背反して耐トラッキング性が低下する。すなわち、ガラス転移温度と耐トラッキング性とはトレードオフの関係がある。例えば、芳香族系の架橋ユニットにより架橋点数を増やしてガラス転移温度を高めると、芳香族環が増加して炭化しやすくなり、耐トラッキング性が低下する。
【0006】
また、樹脂に水酸化マグネシウム、他のポリマー、および添加剤を加えることによって耐クラッキング性を改良することが検討されている。しかし、例えば、優れた耐クラッキング性を得るためには、高い水酸化マグネシウム含有量が必要となり、そうすると樹脂組成物の機械的強度およびその他の物性が著しく低下する欠点があることも知られている。
【0007】
これらの理由により、樹脂本来の機械物性を損なわずに高耐熱性と高い比較トラッキング指数とを両立した樹脂材料の開発は技術的に難しく、対応している材料は高価かつ選択肢が非常に限られている。従って、市場要求に基づくこの限定的な樹脂材料(筐体ケースに用いられる樹脂材料)の選定が、半導体装置のコストの増加の一因となっている。
【0008】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、コストを低減することが可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本開示による半導体装置は、ベース板と、ベース板上に設けられた絶縁基板と、絶縁基板上に設けられた半導体チップと、絶縁基板および半導体チップを内包するようにベース板に取り付けられ、互いに篏合された第1樹脂ケースおよび第2樹脂ケースと、絶縁基板および半導体チップを封止する封止材とを備え、第1樹脂ケースおよび第2樹脂ケースは、比較トラッキング指数が異なる樹脂材料で構成され、絶縁基板上に設けられ、かつ第1樹脂ケースに固定された電極端子をさらに備え、第2樹脂ケースは、ベース板に直接取り付けられ、第1樹脂ケースは、第2樹脂ケースを介してベース板に固定され、第1樹脂ケースの比較トラッキング指数は、第2樹脂ケースの比較トラッキング指数よりも高い。
【発明の効果】
【0010】
本開示によると、半導体装置は、第1樹脂ケースおよび第2樹脂ケースは比較トラッキング指数が異なる樹脂材料で構成されるため、コストを低減することが可能となる。
【0011】
本開示の目的、特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1による半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図2】実施の形態1による半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。
【
図3】実施の形態1による半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図4】実施の形態1による半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図5】実施の形態2による半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図6】実施の形態3による半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図7】実施の形態4による半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図8】実施の形態5による半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図9】実施の形態1~5による半導体装置を適用した電力変換装置の構成の一例を示す図である。
【
図10】実施の形態6による電力変換装置を移動体に適用した一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態1>
<構成>
図1は、実施の形態1による半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【0014】
図1に示すように、ベース板1上には、絶縁基板3が設けられている。ベース板1は、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、AlSiC、またはMgSiCなど、熱伝導性の良い金属からなる。
【0015】
絶縁基板3は、セラミック基板4と、セラミック基板4の上面(紙面上側の面)に形成された上面電極パターン5と、セラミック基板4の下面(紙面下側の面)に形成された下面電極パターン6とを有している。セラミック基板4は、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、または酸化アルミニウムなどからなる。上面電極パターン5および下面電極パターン6は、例えば、銅またはアルミニウムからなる。
【0016】
ベース板1と絶縁基板3の下面電極パターン6とは、接合材2で接合されている。接合材2は、例えば、はんだ、ろう材、焼結銀、または液相拡散材料などからなる。
【0017】
絶縁基板3の上面電極パターン5上には、半導体チップ8および電極端子10,11が設けられている。半導体チップ8は、接合材7を介して上面電極パターン5に電気的に接続されている。半導体チップ8は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、ダイオード、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、またはRC-IGBT(Reverse Conducting IGBT)などからなる。接合材7は、例えば、はんだ、ろう材、焼結銀、または液相拡散材料などからなる。
【0018】
電極端子10,11は、上面電極パターン5に電気的に接続されている。電極端子10,11は、例えば、銅またはアルミニウムからなる。
【0019】
半導体チップ8と上面電極パターン5とは、金属ワイヤ9で電気的に接続されている。金属ワイヤ9は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、または銅合金などからなる。
【0020】
第1樹脂ケース12および第2樹脂ケース13は、絶縁基板3および半導体チップ8を内包するようにベース板1に取り付けられ、互いに篏合されている。具体的には、第2樹脂ケース13は、ベース板1の端部に、半導体装置の側壁の一部を構成するように設けられている。第1樹脂ケース12は、少なくとも第2樹脂ケース13の側面および上面を覆い、かつ半導体装置の内部全体を覆うように設けられている。第1樹脂ケース12には電極端子10,11が固定されており、電極端子10,11の端部は第1樹脂ケース12から外部に露出している。
【0021】
第1樹脂ケース12および第2樹脂ケース13は、互いに異なる樹脂材料からなり、例えば、PPS(Polyphenylenesulfide)、PPA(Polyphthalamide)、LCP(Liquid Crystal Polymer)、PES(Polyethersulfone)、PA(Polyamide)、PET(Polyethylene terephthalate)、またはPBT(Polybutylene terephthalate)などの樹脂材料からなる。
【0022】
第1樹脂ケース12の比較トラッキング指数は、第2樹脂ケース13の比較トラッキング指数よりも高い。第1樹脂ケース12および第2樹脂ケース13の比較トラッキング指数(CTI)は、100以上であり、好ましくは400≦CTI<600、より好ましくは600≦CTIであってもよい。
【0023】
第1樹脂ケース12および第2樹脂ケース13のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上であり、好ましくは150℃≦Tg、より好ましくは175℃≦Tgであってもよい。
【0024】
半導体装置の表面絶縁に必要な沿面距離および空間距離は、第1樹脂ケース12のみで充足している。第1樹脂ケース12および第2樹脂ケース13は、接着剤で接着されてもよく、スナップフィットで接合されてもよく、あるいは二色成形で形成されてもよい。
【0025】
封止材14は、第1樹脂ケース12および第2樹脂ケース13と、ベース板1とで囲まれた半導体装置内部において、半導体チップ8、絶縁基板3、および金属ワイヤ9を封止する。封止材14は、例えば、シリコーンゲルまたはエポキシ樹脂などの絶縁材料からなる。
【0026】
<製造方法>
図2は、実施の形態1による半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。
【0027】
ステップS1において、ベース板1上に絶縁基板3を接合材2で接合する。そして、絶縁基板3上に半導体チップ8を接合材7で接合する。
【0028】
ステップS2において、半導体チップ8と絶縁基板3の上面電極パターン5とを金属ワイヤ9でワイヤボンディングする。
【0029】
ステップS3において、ベース板1の端部に第2樹脂ケース13を取り付ける。
【0030】
ステップS4において、絶縁基板3の上面電極パターン5上に電極端子10,11を接合する。
【0031】
ステップS5において、第2樹脂ケース13に第1樹脂ケース12を嵌合する。
【0032】
ステップS6において、第1樹脂ケース12および第2樹脂ケース13と、ベース板1とで囲まれた半導体装置内部において、半導体チップ8、絶縁基板3、および金属ワイヤ9を封止するように封止材14を充填する。
【0033】
<作用効果>
例えば、太陽光発電、風力発電、および電鉄用途などの厳しい環境下で使用される半導体装置は、半導体装置表面の絶縁担保が必要な部位において、例えばJIS C 60664-1(IEC60664-1)などで要求される規格に基づいて、材料の比較トラッキング指数、使用する電圧実効値、および使用環境の汚染度によって決定される、遵守すべき最小沿面距離および空間距離を満たす必要がある。
【0034】
実施の形態1では、沿面距離および空間距離を確保するために最低限必要となる部分(第1樹脂ケース12)のみに、高い比較トラッキング指数と高耐熱とを両立したコストがかかる樹脂材料を用いることによって、第2樹脂ケース13については比較トラッキング指数の数値によらず材料を選定することができるため、安価な樹脂材料を選択することが可能となる。これにより、半導体装置を構成する材料コストを削減することができる。
【0035】
第1樹脂ケース12と第2樹脂ケース13とをスナップフィットで接合する構成とすることによって、接着剤などで第1樹脂ケース12と第2樹脂ケース13とを接着することが不要となる。これにより、半導体装置およびケースの製造スループットを向上させることができる。
【0036】
第1樹脂ケース12と第2樹脂ケース13とを二色成形で形成することによって、第1樹脂ケース12および第2樹脂ケース13の組み立て工程が不要となる。これにより、半導体装置およびケースの製造スループットを向上させることができるとともに、材料コストのさらなる低減につながる。
【0037】
第2樹脂ケース13は、比較トラッキング指数の数値によらず材料選定することができるため、耐熱性、他材料との密着性、および機械的強度などの機能をさらに向上させることが可能な材料を選定することができる。これにより、ケース設計の自由度、および半導体装置の信頼性をより高めることができる。
【0038】
第2樹脂ケース13を共通部材として、第1樹脂ケース12の構造のみを変更することによって、要求される絶縁耐圧が異なる場合であっても柔軟に対応することができる。例えば、
図3に示すように、第1樹脂ケース12の側面に凹凸を設けて沿面距離を長くすることができる。このように、半導体装置の設計工数の低減および標準化によって、半導体装置のコスト低減が可能となる。
【0039】
なお、第1樹脂ケース12および第2樹脂ケース13の形状は、
図1,3に示す形状に限るものではない。例えば、
図1,2に示すように第1樹脂ケース12が第2樹脂ケース13を覆うような形状であってもよく、
図4に示すように第1樹脂ケース12と第2樹脂ケース13とが上下段に分かれて互い違い嵌合する形状であってもよく、これら以外の形状であってもよい。
【0040】
<実施の形態2>
<構成>
図5は、実施の形態2による半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
図5に示すように、実施の形態2による半導体装置は、第1樹脂ケース12および第2樹脂ケース13が凹凸構造で篏合していることを特徴としている。その他の構成は、実施の形態1で説明した半導体装置の構成と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0041】
第1樹脂ケース12は凹形状であり、第2樹脂ケース13は凸形状であり、第1樹脂ケース12が第2樹脂ケース13を覆うように嵌合している。なお、第1樹脂ケース12を凸形状とし、第2樹脂ケース13を凹形状としてもよい。
【0042】
封止材14は、第1樹脂ケース12と第2樹脂ケース13とが嵌合している部分の高さまで充填されており、嵌合している凹凸部の一部の隙間を充填している。これにより、第1樹脂ケース12と第2樹脂ケース13とが封止材14で接着される。なお、封止材14は、凹凸部の全ての隙間を充填してもよい。
【0043】
<作用効果>
一般的に、樹脂ケース同士を接合するためには、接着剤を用いて接着する必要がある。しかし、実施の形態2によれば、新たな工程(接着剤を用いて接着する工程)を追加することなく、第1樹脂ケース12と第2樹脂ケース13とを接着することができるため、接着に要する加工および材料のコストを低減することが可能となる。
【0044】
<実施の形態3>
<構成>
図6は、実施の形態3による半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
図6に示すように、実施の形態3による半導体装置は、第1樹脂ケースが、電極端子10,11の周囲の部位に相当する第1樹脂ケース15(電極端子10,11を固定している位置を含む予め定められた第1部位)と、それ以外の部位に相当する第1樹脂ケース16(第2部位)とを有し、第1樹脂ケース15および第1樹脂ケース16が異なる樹脂材料で構成されていることを特徴としている。その他の構成は、実施の形態1と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0045】
第1樹脂ケース12において、第1樹脂ケース15の方が第1樹脂ケース16よりもガラス転移温度(Tg)が高い。半導体装置の表面絶縁に必要な沿面距離および空間距離は、第1樹脂ケース16のみで充足している。
【0046】
第1樹脂ケース15および第1樹脂ケース16は、異なる樹脂材料の二色成形によって形成されてもよい。また、第1樹脂ケース16および第2樹脂ケース13は、異なる樹脂材料の二色成形によって形成されてもよい。これら2つの二色形成は、いずれか一方でもよく、両方でもよい。
【0047】
なお、上記では、第1樹脂ケースが第1樹脂ケース15および第1樹脂ケース16を有する場合について説明したが、これに限るものではない。第2樹脂ケース13が、電極端子10,11の周囲の部位と、それ以外の部位(第2部位)とを有する構成としてもよい。
【0048】
<作用効果>
耐熱性が要求される電極端子10,11の周囲の部位のみを耐熱性が高い樹脂とすることによって、半導体装置の材料コストをさらに低減することができる。また、二色形成を採用することによって、半導体装置およびケースの製造スループットを向上させることができる。
【0049】
電極端子10,11の周囲の部位に高靭性および高強度の樹脂材料を選定することによって、電極端子10,11の曲げ加工、および電極端子10,11に対してバスバーを取り付ける時に生じる応力への耐性を向上させることができ、ケース割れのリスクを低減することができる。また、半導体装置およびケースの製造スループットを向上させることができる。
【0050】
<実施の形態4>
<構成>
図7は、実施の形態4による半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
図7に示すように、実施の形態4による半導体装置は、電極端子10,11が第2樹脂ケース13にインサート成形で固定されていることを特徴としている。その他の構成は、実施の形態1と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0051】
図7の例では、電極端子10,11が第2樹脂ケース13にインサート成形で固定されているが、これに限るものではない。例えば、電極端子10,11は第1樹脂ケース12にインサート成形で固定されてもよい。
【0052】
半導体チップ8は、例えば、SiCまたはGaNなどのワイドバンドギャップ半導体である。また、半導体チップ8は、IGBT、MOSFET、ダイオードなどのいずれかの組み合わせであってもよい。
【0053】
電極端子10,11は、絶縁基板3の上面電極パターン5と超音波接合(超音波溶接)で接合されている。
【0054】
<作用効果>
電極端子10,11を第2樹脂ケース13にインサート成形することによって、電極端子10,11と絶縁基板3とを予め固定することができる。これにより、電極端子10,11と絶縁基板3とを別々に組み合わせた場合と比較して、位置のバラツキを低減することができる。
【0055】
電極端子10,11と絶縁基板3との接合方法として超音波接合(超音波溶接)を用いる場合、電極端子10,11と絶縁基板3との位置合わせを精度良く行うことは重要であり、電極端子10,11と絶縁基板3とを別々に組み合わせる場合は、固定治具を用いた位置決め工程が必要となる。実施の形態4によれば、半導体装置の製造工程中に第2樹脂ケース13による電極端子10,11の位置の固定が可能となり、治具を用いた位置決めは必要ない。これにより、半導体装置の製造工程における工数を増やすことなく超音波接合を用いることができる。
【0056】
なお、従来では、電極端子と絶縁基板との接合方法としてはんだ接合が主に用いられているが、超音波接合を用いることによって、はんだ接合と比較して例えば下記(A)~(D)のような多くの利点が得られる。
(A)はんだなどの低融点材料を用いないため、電極端子と絶縁基板との接合部を高耐熱化することができる。
(B)超音波接合は、金属同士の固相拡散であるため接合強度が強く、接合部の信頼性および品質の向上が可能となる。
(C)接合部の信頼性が向上することに伴って、接合に要する面積を小さくすることができる。これにより、半導体装置の設計の自由度が向上する。
(D)はんだ接合では、フラックス残渣除去のために接合後の洗浄工程が必要である。一方、超音波接合では、接合部の洗浄が不要となり、半導体装置の製造スループットが向上する。
【0057】
高温を放熱するワイドバンドギャップ半導体チップを半導体チップ8として用いることによって、半導体装置の大電流化および高温動作化が可能となり、半導体装置の省エネルギー化に寄与することができる。また、Tg≧100℃(より好ましくは175℃)の高耐熱の第1樹脂ケース12および第2樹脂ケース13を用い、電極端子10,11と絶縁基板3との接合に超音波接合を用いることによって半導体装置の耐熱性が向上し、さらなる半導体装置の大電流化、高温動作化、および省エネルギー化が可能となる。
【0058】
<実施の形態5>
<構成>
図8は、実施の形態5による半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
図8に示すように、実施の形態5による半導体装置は、第1樹脂ケース12および第2樹脂ケース13が絶縁性接着剤で固定されていることを特徴とする。その他の構成は、実施の形態1と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0059】
<作用効果>
設計上、第2樹脂ケース13が半導体装置の表面絶縁における沿面距離の最短経路になり得るような構造であっても、経路の途中に絶縁性材料を介在させることによって絶縁性を確保することができる。これにより、さらにケース設計の自由度を向上させることができる。
【0060】
<実施の形態6>
実施の形態6は、上述した実施の形態1~5による半導体装置を電力変換装置に適用したものである。実施の形態1~5による半導体装置の適用は特定の電力変換装置に限定されるものではないが、以下では、三相のインバータに実施の形態1~5による半導体装置を適用した場合について説明する。
【0061】
図9は、実施の形態6による電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【0062】
図9に示す電力変換システムは、電源100、電力変換装置200、および負荷300から構成される。電源100は、直流電源であり、電力変換装置200に直流電力を供給する。電源100は種々のもので構成することが可能であり、例えば、直流系統、太陽電池、および蓄電池で構成してもよく、交流系統に接続された整流回路またはAC/DCコンバータで構成してもよい。また、電源100は、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成してもよい。
【0063】
電力変換装置200は、電源100と負荷300との間に接続された三相のインバータであり、電源100から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷300に交流電力を供給する。電力変換装置200は、
図9に示すように、直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路201と、主変換回路201の各スイッチング素子を駆動する駆動信号を出力する駆動回路203と、駆動回路203を制御する制御信号を駆動回路203に出力する制御回路204とを備えている。主変換回路201は、半導体装置202を有する。半導体装置202は、実施の形態1~5による半導体装置に相当する。
【0064】
負荷300は、電力変換装置200から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷300は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であり、例えば、ハイブリッド自転車、電気自動車、鉄道車両、エレベーター、または空調機器向けの電動機として用いられる。
【0065】
以下、電力変換装置200の詳細を説明する。主変換回路201は、スイッチング素子と還流ダイオードとを備えており、スイッチング素子がスイッチングすることによって、電源100から供給される直流電力を交流電力に変換し、負荷300に供給する。主変換回路201の具体的な回路構成は種々のものがあるが、実施の形態6による主変換回路201は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子とそれぞれのスイッチング素子に逆並列された6つの還流ダイオードとから構成することができる。主変換回路201の各スイッチング素子には、上述した実施の形態1~5のいずれかによる半導体装置を適用する。6つのスイッチング素子は2つのスイッチング素子ごとに直列接続された上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち主変換回路201の3つの出力端子は、負荷300に接続される。
【0066】
駆動回路203は、主変換回路201のスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成し、主変換回路201のスイッチング素子の制御電極に供給する。具体的には、後述する制御回路204からの制御信号に従い、スイッチング素子をオン状態にする駆動信号とスイッチング素子をオフ状態にする駆動信号とを各スイッチング素子の制御電極に出力する。スイッチング素子をオン状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、スイッチング素子をオフ状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
【0067】
制御回路204は、負荷300に所望の電力が供給されるよう主変換回路201のスイッチング素子を制御する。具体的には、負荷300に供給すべき電力に基づいて主変換回路201の各スイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、出力すべき電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を変調するPWM制御によって主変換回路201を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号が出力されるよう、駆動回路203に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路203は、この制御信号に従い、各スイッチング素子の制御電極にオン信号またはオフ信号を駆動信号として出力する。
【0068】
実施の形態6による電力変換装置では、主変換回路201のスイッチング素子として実施の形態1~5による半導体装置を適用するため、電力変換装置のコストの低減および省エネルギー化が可能となる。
【0069】
実施の形態6では、2レベルの三相インバータに実施の形態1~5による半導体装置を適用する例を説明したが、実施の形態1~5による半導体装置の適用は、これに限るものではなく、種々の電力変換装置に適用することができる。実施の形態6では、2レベルの電力変換装置を一例として説明したが、3レベルまたはマルチレベルの電力変換装置であってもよく、単相負荷に電力を供給する場合には単相のインバータに実施の形態1~5による半導体装置を適用してもよい。また、直流負荷などに電力を供給する場合には、DC/DCコンバータまたはAC/DCコンバータに実施の形態1~5による半導体装置を適用することも可能である。
【0070】
また、実施の形態1~5による半導体装置を適用した電力変換装置は、上述した負荷が電動機の場合に限定するものではなく、例えば、放電加工機、レーザー加工機、誘導加熱調理機、または非接触給電システムの電源装置として用いることができ、さらには太陽光発電システムまたは蓄電システムなどのパワーコンディショナーとして用いることもできる。
【0071】
<実施の形態7>
図10は、実施の形態6による電力変換装置を移動体に適用した一例を示す図である。
図10に示すように、移動体400は、実施の形態6で説明した電力変換装置200を搭載している。
【0072】
実施の形態7によれば、移動体のコスト低減および省エネルギー化が可能となる。
【0073】
なお、本開示の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0074】
本開示は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての態様において、例示であって、限定的なものではない。例示されていない無数の変形例が想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0075】
1 ベース板、2 接合材、3 絶縁基板、4 セラミック基板、5 上面電極パターン、6 下面電極パターン、7 接合材、8 半導体チップ、9 金属ワイヤ、10 電極端子、11 電極端子、12 第1樹脂ケース、13 第2樹脂ケース、14 封止材、15 第1樹脂ケース、16 第1樹脂ケース、17 絶縁性接着剤、100 電源、200 電力変換装置、201 主変換回路、202 半導体装置、203 駆動回路、204 制御回路、300 負荷、400 移動体。