(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】測定装置、測定システム、プログラムおよび測定装置の校正方法
(51)【国際特許分類】
G01F 1/663 20220101AFI20231215BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
G01F1/663
A61B5/1455
(21)【出願番号】P 2022550559
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2021033658
(87)【国際公開番号】W WO2022059663
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2020155516
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100156177
【氏名又は名称】池見 智治
(74)【代理人】
【識別番号】100130166
【氏名又は名称】田中 宏明
(72)【発明者】
【氏名】戸田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】工藤 俊介
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-100968(JP,A)
【文献】国際公開第2015/033469(WO,A1)
【文献】特開平7-311215(JP,A)
【文献】米国特許第4284351(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00 - 9/02
G01F25/00
G01P 5/00 - 5/26
A61B 5/1455- 5/1464
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部で流体が流れる被照射物に光を照射する発光部と、
前記被照射物で散乱した光を含む干渉光を受光して該干渉光の強度に応じた信号を出力する受光部と、
該受光部から出力された信号について信号強度の時間変化に係る周波数スペクトルを生成するとともに、該周波数スペクトルに基づいて、前記被照射物の内部で流れる前記流体の流れの状態に係る計算値を算出する演算処理部と、を備え、
該演算処理部は、前記流体が第1流れ状態にある際に前記受光部から出力された信号について第1周波数スペクトルを生成するとともに、前記流体が前記第1流れ状態よりも流量が小さな第2流れ状態にある際に前記受光部から出力された信号について第2周波数スペクトルを生成し、前記第1周波数スペクトルと前記第2周波数スペクトルとの比較に応じて、前記計算値の算出に用いる使用周波数範囲を算出する、測定装置。
【請求項2】
前記第1流れ状態は、前記流体の流量が制御可能範囲のうちの最大値に設定された状態である、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記第2流れ状態は、前記流体の流量がゼロに設定された状態である、請求項1または請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記受光部から出力される信号についてアナログ信号をデジタル信号に変換する変換処理を行う変換部、を備え、
前記演算処理部は、前記使用周波数範囲に応じて前記変換部におけるサンプリングレートを算出する、請求項1から請求項3の何れか1つの請求項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記演算処理部は、前記第1周波数スペクトルを近似式の形態に変換し、該近似式の形態に変換された前記第1周波数スペクトルと、前記第2周波数スペクトルと、の比較に応じて、前記使用周波数範囲を算出する、請求項1から請求項4の何れか1つの請求項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記演算処理部は、前記第2周波数スペクトルを近似式の形態に変換し、該近似式の形態に変換された前記第2周波数スペクトルと、前記第1周波数スペクトルと、の比較に応じて、前記使用周波数範囲を算出する、請求項1から請求項5の何れか1つの請求項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記演算処理部によって算出された前記計算値を可視的に出力する出力部、を備えている、請求項1から請求項6の何れか1つの請求項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記演算処理部は、前記計算値に基づいて、前記流体の流れの状態を定量的に示す流れ定量値を算出する、請求項1から請求項6の何れか1つの請求項に記載の測定装置。
【請求項9】
前記演算処理部によって算出された前記流れ定量値を可視的に出力する出力部、を備えている、請求項8に記載の測定装置。
【請求項10】
内部で流体が流れる被照射物に光を照射する発光部と、
前記被照射物で散乱した光を含む干渉光を受光して該干渉光の強度に応じた信号を出力する受光部と、
該受光部から出力された信号について信号強度の時間変化に係る周波数スペクトルを生成するとともに、該周波数スペクトルに基づいて、前記被照射物の内部で流れる前記流体の流れの状態に係る計算値を算出する演算処理部と、を備え、
該演算処理部は、前記流体が第1流れ状態にある際に前記受光部から出力された信号について第1周波数スペクトルを生成するとともに、前記流体が前記第1流れ状態よりも流量が小さな第2流れ状態にある際に前記受光部から出力された信号について第2周波数スペクトルを生成し、前記第1周波数スペクトルと前記第2周波数スペクトルとの比較に応じて、前記計算値の算出に用いる使用周波数範囲を算出する、測定システム。
【請求項11】
測定装置に含まれる処理部によって実行されることで、前記測定装置を、請求項1から請求項9の何れか1つの請求項に記載の測定装置として機能させる、プログラム。
【請求項12】
発光部によって内部で流体が第1流れ状態にある被照射物に光を照射しながら、受光部によって前記被照射物で散乱した光を含む干渉光を受光して、該干渉光の強度に応じた信号について信号強度の時間変化に係る第1周波数スペクトルを演算処理部によって生成するとともに、前記発光部によって前記内部で前記流体が前記第1流れ状態よりも流量が小さな第2流れ状態にある前記被照射物に光を照射しながら、前記受光部によって前記被照射物で散乱した光を含む干渉光を受光して、該干渉光の強度に応じた信号について信号強度の時間変化に係る第2周波数スペクトルを前記演算処理部によって生成する第1工程と、
前記演算処理部によって、前記第1周波数スペクトルと前記第2周波数スペクトルとの比較に応じて、前記被照射物の内部で流れる前記流体の流れの状態に係る計算値の算出に用いる使用周波数範囲を算出する第2工程と、を有する測定装置の校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置、測定システム、プログラムおよび測定装置の校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流れの状態を定量的に測定する技術としては、例えば、レーザー血流計などの光学的な手法を用いて流体の流量および流速を測定する技術が知られている(例えば、特許第5806390号公報の記載を参照)。
【発明の概要】
【0003】
測定装置、測定システム、プログラムおよび測定装置の校正方法が開示される。
【0004】
測定装置の一態様は、発光部と、受光部と、演算処理部と、を備えている。前記発光部は、内部で流体が流れる被照射物に光を照射する。前記受光部は、前記被照射物で散乱した光を含む干渉光を受光して該干渉光の強度に応じた信号を出力する。前記演算処理部は、前記受光部から出力された信号について信号強度の時間変化に係る周波数スペクトルを生成するとともに、該周波数スペクトルに基づいて、前記被照射物の内部で流れる前記流体の流れの状態に係る計算値を算出する。そして、前記演算処理部は、前記流体が第1流れ状態にある際に前記受光部から出力された信号について第1周波数スペクトルを生成するとともに、前記流体が前記第1流れ状態よりも流量が小さな第2流れ状態にある際に前記受光部から出力された信号について第2周波数スペクトルを生成し、前記第1周波数スペクトルと前記第2周波数スペクトルとの比較に応じて、前記計算値の算出に用いる使用周波数範囲を算出する。
【0005】
測定システムの一態様は、発光部と、受光部と、演算処理部と、を備えている。前記発光部は、内部で流体が流れる被照射物に光を照射する。前記受光部は、前記被照射物で散乱した光を含む干渉光を受光して該干渉光の強度に応じた信号を出力する。前記演算処理部は、前記受光部から出力された信号について信号強度の時間変化に係る周波数スペクトルを生成するとともに、該周波数スペクトルに基づいて、前記被照射物の内部で流れる前記流体の流れの状態に係る計算値を算出する。そして、前記演算処理部は、前記流体が第1流れ状態にある際に前記受光部から出力された信号について第1周波数スペクトルを生成するとともに、前記流体が前記第1流れ状態よりも流量が小さな第2流れ状態にある際に前記受光部から出力された信号について第2周波数スペクトルを生成し、前記第1周波数スペクトルと前記第2周波数スペクトルとの比較に応じて、前記計算値の算出に用いる使用周波数範囲を算出する。
【0006】
プログラムの一態様は、測定装置に含まれる処理部によって実行されることで、前記測定装置を、上記一態様に係る測定装置として機能させる。
【0007】
測定装置の校正方法の一態様は、第1工程と、第2工程と、を有する。前記第1工程において、発光部によって内部で流体が第1流れ状態にある被照射物に光を照射しながら、受光部によって前記被照射物で散乱した光を含む干渉光を受光して、該干渉光の強度に応じた信号について信号強度の時間変化に係る第1周波数スペクトルを演算処理部によって生成するとともに、前記発光部によって前記内部で前記流体が前記第1流れ状態よりも流量が小さな第2流れ状態にある前記被照射物に光を照射しながら、前記受光部によって前記被照射物で散乱した光を含む干渉光を受光して、該干渉光の強度に応じた信号について信号強度の時間変化に係る第2周波数スペクトルを前記演算処理部によって生成する。前記第2工程において、前記演算処理部によって、前記第1周波数スペクトルと前記第2周波数スペクトルとの比較に応じて、前記被照射物の内部で流れる前記流体の流れの状態に係る計算値の算出に用いる使用周波数範囲を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る測定装置の概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る測定装置の一部の断面の一例を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、流体の流量が小さな場合に受光部から出力された信号について生成された周波数スペクトルを太線で模式的に描いた曲線Lo1の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、流体の流量が大きな場合に受光部から出力された信号について生成された周波数スペクトルを太線で模式的に描いた曲線Lo2の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、流体が第1流れ状態にある際に受光部から出力された信号について生成された第1周波数スペクトルを一点鎖線で模式的に描いた曲線Ln1の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、流体が第2流れ状態にある際に受光部から出力された信号について生成された第2周波数スペクトルを太線で模式的に描いた曲線Ln2の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図5の第1周波数スペクトルの曲線Ln1と
図6の第2周波数スペクトルの曲線Ln2とが重ね合わされた図である。
【
図8】
図8は、他の第1周波数スペクトルの曲線Ln1Aと他の第2周波数スペクトルの曲線Ln2Aとが重ね合わされた図である。
【
図9】
図9は、互いに流量が異なる状態にある流体についてそれぞれ生成された複数の周波数スペクトルをそれぞれ模式的に描いた複数の曲線を例示する図である。
【
図10】
図10は、流量が8つの異なる流量設定値にそれぞれ設定された流体について算出された流量計算値の流量設定値に対する誤差の一具体例を示す図である。
【
図11】
図11は、流量が8つの異なる流量設定値にそれぞれ設定された流体について算出された流量計算値の流量設定値に対する誤差の一参考例を示す図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る測定装置の校正動作のフローの一例を示す流れ図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態に係る測定装置による流れ測定動作のフローの一例を示す流れ図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係る測定装置の概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図15】
図15は、第3実施形態に係る測定装置の概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図16】
図16は、第4実施形態に係る測定システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
流体の流れの状態を定量的に測定する装置(測定装置ともいう)として、例えば、レーザー血流計などの光学的な手法を用いて流体の流量および流速の少なくとも一方を測定する装置が知られている。レーザー血流計は、例えば、発光素子としてのレーザーから生体に照射されたレーザー光が散乱する際に生ずるドップラーシフトに起因したレーザー光の波長の変化に基づいて、生体の血流量を算出することができる。
【0010】
より具体的には、周波数foのレーザー光が生体に照射されると、血管内を流れる血液の流れ(血球などの粒子の移動)による光の散乱と、他の固定組織(皮膚組織および血管を構成している組織など)による光の散乱と、によって、散乱光が生じる。血球の径は、例えば、数マイクロメートル(μm)から20μm程度である。また、血球による散乱で生じた散乱光の周波数fは、他の固定組織による散乱で生じた散乱光の周波数foと比較して、血球などの粒子の移動速度に対応したドップラーシフトによってfbだけ変化した周波数fo+fbとなっている。この変調周波数(差周波ともいう)fbは、血流の速度をVとし、流体に対するレーザー光の入射角度をθとし、レーザー光の波長をλとすると、次の式(1)で示される。
【0011】
fb=(2V×cosθ)/λ ・・・(1)
【0012】
ここでは、固定組織によって生じる周波数foの光と、移動する血球によって生じる周波数fo+fbの光と、の相互干渉によって、差周波fbが光ビート(うなり)として観測され得る。換言すれば、周波数が互いに異なる2種類の光を受光素子が受光することで得られる電気信号(受光信号)には、これらの2種類の光の相互干渉によって生ずる光ビートに対応する電気信号(光ビート信号ともいう)の成分が含まれる。
【0013】
光ビートの周波数に対応する差周波fbは、元のレーザー光の周波数foよりも非常に小さい。例えば、780nmの波長の光の周波数は、400テラヘルツ(THz)程度であり、通常の受光素子で検出が可能である応答速度を超えている。これに対して、光ビートの周波数(光ビート周波数ともいう)fbは、血球の移動速度に依存するものの、例えば、数キロヘルツ(kHz)から数十kHz程度であり、通常の受光素子が十分応答して検出することが可能である周波数帯域に含まれる。このため、受光素子を用いて、固定組織によって生じた周波数foの光と、移動する血球によって生じた周波数fo+fbの光と、を受光することで得られる電気信号(受光信号)は、直流(DC)成分の信号(DC信号)に光ビート周波数fbの強度変調信号が重畳された波形を示す。そして、周波数fbの光ビート信号を解析することで、血流量を算出することができる。
【0014】
例えば、まず、受光素子によって検出された受光信号について高速フーリエ変換(FFT)などの演算を用いて周波数スペクトルP(f)を算出する。次に、この周波数スペクトルP(f)に周波数fの重み付けを行うことで、重み付け後の周波数スペクトル(重み付け周波数スペクトルともいう)P(f)×fを算出する。次に、重み付け周波数スペクトルP(f)×fについて、所定の範囲の周波数で積分を行って、第1の計算値(∫{P(f)×f}df)を算出する。次に、下記の式(2)で示されるように、第1の計算値(∫{P(f)×f}df)を、周波数スペクトルP(f)を所定の範囲の周波数について積分を行うことで算出される第2の計算値(∫P(f)df)で除することで、光ビート周波数fbにおける平均周波数fmを算出する。
【0015】
fm=∫{P(f)×f}df/{∫P(f)df} ・・・(2)
【0016】
そして、平均周波数fmを用いた所定の計算で、生体の血流量を算出することが考えられる。
【0017】
この流体の流量を測定する測定装置は、血管内を流れる血液だけでなく、配管などの流路を構成している部分(流路構成部ともいう)内の流路を流れる流体一般を測定の対象としてもよい。
【0018】
ところで、周波数スペクトルP(f)には、例えば、流体の流れとは異なる流体の外部の環境(外部環境ともいう)に起因するノイズの成分(ノイズ成分ともいう)が含まれ得る。外部環境に起因するノイズは、例えば、流路構成部の振動で発生するノイズ、および測定装置の各種処理回路で発生する電磁的なノイズなどを含み得る。このため、この外部環境に起因するノイズは、例えば、測定装置において流体の流量を測定する際に、測定精度の低下を招く。
【0019】
これは、流体の流量を測定する測定装置に限られず、流体の流量および流速の少なくとも一方を含む流体の流れの状態を定量的に示す値を測定する測定技術一般に共通する。
【0020】
したがって、流体の流れの状態を定量的に示す値の測定については、測定精度を向上させる点で改善の余地がある。
【0021】
そこで、本開示の発明者は、流体の流れの状態を定量的に示す値の測定精度を向上させることができる技術を創出した。
【0022】
これについて、以下、第1実施形態から第4実施形態について図面を参照しつつ説明する。図面では同様な構成および機能を有する部分に同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。図面は模式的に示されたものである。
【0023】
<1.第1実施形態>
<1-1.測定装置の構成>
図1および
図2で示されるように、第1実施形態に係る測定装置1は、例えば、流路を構成する物体(流路構成部ともいう)2aの内部2iを流れる流体2bの流れの状態を定量的に示す値(流れ定量値ともいう)を測定することができる。ここで、流路構成部2aは、例えば、生体内の血管または各種装置の配管などの管状の物体(管状体ともいう)を含み得る。流れ定量値は、例えば、流量および流速のうちの少なくとも一方の値を含み得る。流量は、単位時間あたりに流路を通過する流体の量である。流体の量は、例えば、体積または質量で表され得る。流速は、流路における流体の流れの速さである。流れの速さは、単位時間あたりに流体が進む距離で表され得る。
【0024】
第1実施形態に係る測定装置1は、例えば、光のドップラー効果を利用して流体2bの流れの状態を定量的に示す流れ定量値を測定することができる。ここで、例えば、流体2bに対する光の照射に応じて、その光が流体2bで散乱を生じる場合には、流体2bの流れに応じたドップラー効果によって、流体2bの移動速度に応じた光の周波数のシフト(ドップラーシフトともいう)が生じる。測定装置1は、このドップラーシフトを利用して、流体2bの流れの状態を定量的に示す流れ定量値を測定することができる。後述する測定装置1の各種構成は、例えば、適宜周知または公知の方法を用いて製造され得る。
【0025】
ここで、流れ定量値が測定される対象物(被測定物ともいう)としての流体2bは、例えば、その流体2b自体が光を散乱するもの、または光を散乱する物質(散乱物質ともいう)または光を散乱する物体(散乱体ともいう)を流動させるものを含む。具体的には、この被測定物としての流体2bには、例えば、水、血液、プリンター用のインク、または粉体などの散乱体を含む気体などが適用される。ここで、例えば、散乱物質または散乱体が流体に追従して流動する場合には、「散乱物質または散乱体の流量」を「流体の流量」とみなしてもよいし、「散乱物質または散乱体の流速」を「流体の流速」とみなしてもよい。
【0026】
図1および
図2で示されるように、測定装置1は、例えば、センサ部10と、制御部20と、を備えている。また、測定装置1は、接続部(コネクタ部)30を備えている。
【0027】
センサ部10は、例えば、発光部11と、受光部12と、を有する。
【0028】
発光部11は、例えば、内部2iで流体2bが流れる物体(被照射物ともいう)2に光(照射光ともいう)L1を照射することができる。被照射物2は、少なくとも管状体などの流路を構成する物体(流路構成部)2aと、流路を流れる流体2bと、を含む。照射光L1には、例えば、被測定物としての流体2bに応じた所定の波長の光が適用される。例えば、流体2bが血液である場合には、照射光L1の波長は、600ナノメートル(nm)から900nm程度に設定される。また、例えば、流体2bがプリンター用のインクである場合には、被照射物2に照射される光の波長は、700nmから1000nm程度に設定される。発光部11には、例えば、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)などの半導体レーザー素子が適用される。
【0029】
受光部12は、例えば、照射光L1のうち、被照射物2で散乱した光を含む干渉光L2を受光することができる。そして、受光部12は、例えば、受光した光を光の強度に応じた電気信号(適宜、信号と略称する)に変換することができる。換言すれば、受光部12は、例えば、被照射物2で散乱した光を含む干渉光L2を受光して、この干渉光L2の強度に応じた信号を出力することができる。受光部12が受光することができる干渉光L2は、例えば、被照射物2からの散乱光のうち、流体2bの周囲で静止している物体(静止物体ともいう)からのドップラーシフトを生じていない散乱光と、流体2bからの波長のシフト量がfbであるドップラーシフトを生じた散乱光と、によって生じる干渉光を含む。ここで、例えば、流体2bが血管内を流れる血液である場合には、静止物体は、皮膚および血管などの物体(流路構成部)2aを含む。例えば、流体2bが配管内を流れるインクである場合には、静止物体は、配管などの流体2bの流路を構成する物体(流路構成部)2aなどを含む。配管は、例えば、透光性を有する材料によって構成され得る。透光性を有する材料には、例えば、ガラスまたはポリマー樹脂などが適用される。
【0030】
ここで、例えば、時間の経過に対する干渉光L2の強度の変化(時間変化ともいう)は、ドップラーシフトを生じていない散乱光の周波数と、ドップラーシフトを生じた散乱光の周波数と、の差(差周波ともいう)fbに対応する周波数のうなりを示し得る。このため、例えば、受光部12から出力される干渉光L2の強度に応じた信号は、干渉光L2の強度の時間変化におけるうなりに対応する信号(うなり信号とも光ビート信号ともいう)の成分を含み得る。受光部12には、例えば、干渉光L2の強度の時間変化におけるうなりに追従することができる能力(時間分解能ともいう)を有するものが適用される。受光部12が受光することができる光の波長は、例えば、照射光L1の波長および流体2bの速度の範囲などの測定条件に応じて設定され得る。受光部12には、例えば、シリコン(Si)フォトダイオード、ガリウムヒ素(GaAs)フォトダイオード、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)フォトダイオード、またはゲルマニウム(Ge)フォトダイオードなどの各種のフォトダイオードが適用される。
【0031】
また、センサ部10は、さらにパッケージ13を有していてもよい。パッケージ13は、発光部11および受光部12を収容するものである。
図2の例では、測定装置1は、センサ部10、制御部20および接続部30が実装された状態で位置している基板(実装基板ともいう)1sを有する。実装基板1sには、例えば、プリント基板などが適用される。ここでは、例えば、センサ部10のパッケージ13は、実装基板1s上に位置している。センサ部10と制御部20との間および制御部20と接続部30との間のそれぞれは、例えば、実装基板1sによって電気的に接続されている状態にある。
【0032】
パッケージ13は、例えば、立方体状または直方体状の外形を有する。パッケージ13は、例えば、上方に向けてそれぞれ開口している第1凹部R1および第2凹部R2を有する。第1凹部R1には、発光部11が実装された状態で位置している。第2凹部R2には、受光部12が実装された状態で位置している。ここで、例えば、発光部11から発せられる照射光L1は、第1凹部R1の開口を介して被照射物2に照射される。また、例えば、被照射物2からの干渉光L2は、第2凹部R2の開口を介して受光部12によって受光される。パッケージ13には、例えば、セラミック材料または有機材料などで構成されている配線基板の積層体などが適用される。セラミック材料には、例えば、酸化アルミニウム質焼結体またはムライト質焼結体などが適用される。有機材料には、例えば、エポキシ樹脂またはポリイミド樹脂などが適用される。
【0033】
また、例えば、
図2で示されるように、パッケージ13のうちの第1凹部R1および第2凹部R2のそれぞれの開口を覆うように、透光性を有するカバー部材14が位置していてもよい。この構成が採用されれば、例えば、パッケージ13の第1凹部R1内において発光部11が密閉された状態、およびパッケージ13の第2凹部R2内において受光部12が密閉された状態が実現され得る。カバー部材14には、例えば、ガラス板などが適用される。
【0034】
制御部20は、例えば、測定装置1を制御することができる。制御部20は、例えば、トランジスタもしくはダイオードなどの能動素子およびコンデンサなどの受動素子などを含む複数の電子部品を有する。接続部30は、例えば、制御部20と外部装置とを電気的に接続することができる。ここでは、例えば、複数の電子部品を集積して、1つ以上の集積回路(IC)または大規模集積回路(LSI)などを形成したり、複数のICまたはLSIなどをさらに集積して形成したりすることで、制御部20および接続部30を含む各種機能部が構成され得る。制御部20および接続部30を構成する複数の電子部品は、例えば、実装基板1s上に実装されている状態にある。これにより、例えば、パッケージ13と制御部20とが電気的に接続されているとともに、制御部20と接続部30とが電気的に接続されている状態にある。
【0035】
制御部20は、例えば、信号処理部21と、情報処理部22と、を有する。
【0036】
信号処理部21は、例えば、受光部12から受信した電気信号に対して種々の処理を行うことができる。種々の処理には、例えば、電気信号を電圧値に変換する処理、電気信号の交流(AC)成分と直流(DC)成分とを分離する処理、電気信号の強度を増幅する処理(増幅処理ともいう)およびアナログ信号をデジタル信号に変換する処理(AD変換処理ともいう)などが含まれ得る。信号処理部21は、例えば、信号を増幅することが可能である部分(増幅部ともいう)21aとしての機能を有する。信号処理部21は、例えば、増幅回路を有することで、増幅部21aとしての機能を実現することができる。ここで、受光部12から出力された電気信号は、例えば、直流(DC)成分と交流(AC)成分とを含む。このため、例えば、信号処理部21では、受光部12から出力された電気信号について、DC成分とAC成分とに分離する処理が行われた後に、増幅部21aでAC成分の信号を増幅してもよい。また、信号処理部21は、例えば、受光部12から出力された信号について、AD変換処理を行う部分(AD変換部ともいう)21bとしての機能を有していてもよい。信号処理部21は、例えば、アナログ-デジタル変換回路(AD変換回路)を有することで、AD変換部21bとしての機能を実現することができる。AD変換部21bにおけるサンプリングレート(サンプリング周波数ともいう)は、例えば、情報処理部22からの信号に応じて適宜設定もしくは変更されてもよい。
【0037】
信号処理部21は、例えば、電流-電圧変換回路(I-V変換回路)、AD変換部21bとしてのアナログ-デジタル変換回路(AD変換回路)、交流-直流分離回路(AC-DCデカップリング回路)および増幅部21aとしての増幅回路などの回路を有し得る。ここでは、例えば、信号処理部21は、受光部12から受信したアナログの電気信号に対して、増幅処理およびAD変換処理などの処理を施した上で、情報処理部22に向けて、デジタル信号を出力することができる。
【0038】
情報処理部22は、例えば、演算処理部22aと、記憶部22bと、を有する。
【0039】
演算処理部22aは、例えば、電気回路としてのプロセッサを有する。プロセッサは、例えば、1つ以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号処理装置、プログラマブルロジックデバイス、またはこれらのデバイスもしくは任意の構成の組み合わせ、あるいは他の既知のデバイスもしくは構成の組み合わせを含み得る。
【0040】
記憶部22bは、例えば、即時呼び出し記憶装置(RAM)および読み出し専用メモリ(ROM)などを有する。記憶部22bは、例えば、プログラムPg1を含むファームウェアを記憶している状態にある。演算処理部22aは、記憶部22bに記憶されたファームウェアに従って、1つ以上のデータの演算またはデータ処理を実行することができる。換言すれば、例えば、演算処理部22aがプログラムPg1を実行することで、測定装置1の各種機能を実現することができる。これにより、情報処理部22は、例えば、発光部11および受光部12の動作を制御することができる。なお、プログラムPg1は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(記憶部22b)に記憶されている。プログラムPg1が記憶されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体は、光ディスク、磁気ディスクもしくは不揮発性メモリなどの可搬性の記憶媒体であってもよい。この場合には、例えば、接続部30に接続されたディスクドライブもしくはメモリリーダなどのデータの読み取りが可能な装置に可搬性の記憶媒体が装着された状態で、プログラムPg1が可搬性の記憶媒体に記憶されてもよい。
【0041】
ところで、例えば、受光部12から出力される電気信号の周波数および信号強度は、光のドップラー効果に依存する。このため、例えば、電気信号の周波数と信号強度との関係を示す周波数スペクトルP(f)は、流体2bの流れ定量値(流量または流速)に応じて変化する。例えば、流路構成部2aの内部2iを流れる流体2bの流量が小さな場合には、流体2bの流速が全体的に小さく、
図3で示されるように、周波数スペクトルP(f)では比較的低い周波数の狭い範囲で信号強度が顕著に高くなる傾向を示す。一方、例えば、流路構成部2aの内部2iを流れる流体2bの流量が大きな場合には、流路構成部2aの内面から離れた領域では流体2bの流速が大きく、流路構成部2aの内面に近づくにつれて、この内面の抵抗によって流体2bの流速が小さくなる傾向を示す。このため、例えば、
図4で示されるように、周波数スペクトルP(f)では比較的低い周波数から比較的高い周波数に至る広い範囲で信号強度が高くなる傾向を示す。
【0042】
そこで、情報処理部22は、例えば、演算処理部22aによって、受光部12から出力されて信号処理部21で処理された電気信号に基づいて流体2bの流れの状態を定量的に示す流れ定量値を測定するための演算を実行することができる。換言すれば、測定装置1は、例えば、流体2bに係る流れ定量値の測定(流れ測定ともいう)を行うことができる。ここでは、演算処理部22aは、例えば、受光部12から出力された信号について、信号強度の時間の経過に対する変化(時間変化)についての周波数ごとの信号強度に係る分布を示すパワースペクトル(周波数スペクトルともいう)P(f)を算出することができる。換言すれば、演算処理部22aは、例えば、受光部12から出力された信号について信号強度の時間変化に係る周波数スペクトルP(f)を生成することができる。より具体的には、演算処理部22aは、例えば、受光部12から出力された信号を対象として信号処理部21で各種処理が施されたAC成分を含む信号について、信号強度の時間変化についての周波数スペクトルP(f)を算出することができる。周波数スペクトルP(f)は、例えば、信号処理部21から出力されるAC成分を含む信号の強度の時間変化について、フーリエ変換などの演算を用いた解析が行われることで生成され得る。フーリエ変換には、例えば、高速フーリエ変換(FFT)などが適用され得る。そして、演算処理部22aは、例えば、ここで生成された周波数スペクトルP(f)に基づいて、被照射物2の内部で流れる流体2bの流れの状態に係る計算値(流れ計算値ともいう)を算出することができる。さらに、演算処理部22aは、例えば、算出された流れ計算値に基づいて、流体2bの流れの状態を定量的に示す流れ定量値を算出することができる。
【0043】
また、演算処理部22aは、例えば、周波数スペクトルP(f)のうちの流れ計算値の算出に用いる周波数の範囲(使用周波数範囲ともいう)を算出することができる。使用周波数範囲は、例えば、測定装置1の校正を行う際に、演算処理部22aによって算出され得る。測定装置1の校正は、例えば、接続部30に接続される外部装置などの各種機器から入力される電気信号に応答して行われ得る。そして、算出された使用周波数範囲は、例えば、演算処理部22aによって、流れ計算値を算出する際に用いる周波数の範囲として設定され得る。
【0044】
<<測定装置の校正>>
測定装置1の校正を行う際には、例えば、流路構成部2aにおける流体2bの流れの状態に係る定量的な値をポンプなどの機器(流れ制御機器ともいう)で制御することができる状態に設定される。流れ制御機器の動作は、例えば、外部装置からの信号に応じて適宜制御され得る。そして、例えば、流路構成部2aの内部2iにおける流体2bの流れの状態が、第1の状態(第1流れ状態ともいう)と、第2の状態(第2流れ状態ともいう)と、に順に設定される。ここで、第1流れ状態における流体2bの流量は、第2流れ状態における流体2bの流量よりも大きい。換言すれば、第2流れ状態における流体2bの流量は、第1流れ状態における流体2bの流量よりも小さい。第1流れ状態としては、例えば、流体2bの流量がこの流量を制御することが可能な範囲(制御可能範囲ともいう)のうちの最大値に設定された状態が採用される。第2流れ状態としては、例えば、流体2bの流量がゼロに設定された状態が採用される。ここでは、例えば、測定装置1の校正が行われた後に測定装置1による流れ測定の対象となる流体2bを用いて、測定装置1の校正が行われる。制御可能範囲には、例えば、流路構成部2aにおける流体2bの流量について、流れ制御機器によって制御することが可能な流量の範囲が適用される。
【0045】
演算処理部22aは、例えば、流体2bが第1流れ状態にある際に受光部12から出力された信号について周波数スペクトル(第1周波数スペクトルともいう)P1(f)を生成することができる。ここでは、例えば、
図5で示される第1周波数スペクトルP1(f)が取得され得る。第1周波数スペクトルP1(f)を生成する処理のタイミングは、例えば、接続部30を介した外部装置からの信号に応じて適宜制御され得る。
【0046】
また、演算処理部22aは、例えば、流体2bが第2流れ状態にある際に受光部12から出力された信号について周波数スペクトル(第2周波数スペクトルともいう)P2(f)を生成することができる。ここでは、例えば、
図6で示される第2周波数スペクトルP2(f)が取得され得る。第2周波数スペクトルP2(f)を生成する処理のタイミングは、例えば、接続部30を介した外部装置からの信号に応じて適宜制御され得る。第1周波数スペクトルP1(f)の生成および第2周波数スペクトルP2(f)の生成は、何れが先に行われてもよい。
【0047】
そして、演算処理部22aは、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)と、第2周波数スペクトルP2(f)と、の比較に応じて、使用周波数範囲を算出することができる。ここでは、演算処理部22aによって、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)と第2周波数スペクトルP2(f)とを比較する処理(信号強度比較処理ともいう)が行われる。信号強度比較処理では、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)と第2周波数スペクトルP2(f)とに基づいて、比較の指標となる値(比較指標値ともいう)Vcが算出される。比較指標値Vcは、例えば、式(3)で示されるように、周波数毎に第1周波数スペクトルP1(f)と第2周波数スペクトルP2(f)との間における信号強度の差(|P1(f)-P2(f)|)を特定値Vsで除することで算出され得る。換言すれば、例えば、比較指標値Vcとして、第1周波数スペクトルP1(f)と第2周波数スペクトルP2(f)との間における信号強度の差の特定値Vsに対する比率が、周波数毎に算出され得る。そして、例えば、比較指標値Vcが所定値Vp未満となる周波数(接近周波数ともいう)fnに基づいて、使用周波数範囲の上限を規定する周波数(上限周波数ともいう)fulが算出され得る。接近周波数fnは、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)の信号強度と第2周波数スペクトルP2(f)の信号強度とが、十分接近している周波数に相当する。ここでは、使用周波数範囲には、例えば、上限周波数ful以下の周波数の範囲が適用される。
【0048】
Vc=|P1(f)-P2(f)|/Vs ・・・(3)
【0049】
ここで、特定値Vsには、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)の特定の信号強度(第1特定信号強度ともいう)P1xが適用される。特定信号強度P1xには、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)における信号強度の最大値(第1最大信号強度ともいう)P1max、または第1周波数スペクトルP1(f)における信号強度の平均値(第1平均信号強度ともいう)P1aveなどが適用される。所定値Vpは、例えば、流体2bの種類もしくは特性などに応じた値に設定され得る。所定値Vpには、例えば、0.00015などの値が適用され得る。接近周波数fnとしては、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)において第1最大信号強度P1maxを示す周波数を基準の周波数(基準周波数ともいう)frとして周波数fを増加させた場合に比較指標値Vcが所定値Vp未満となる周波数が採用される。使用周波数範囲の上限周波数fulは、例えば、接近周波数fnと同一であってもよいし、接近周波数fnに予め設定された算出ルールに基づく計算が行われた周波数であってもよい。算出ルールに基づく計算には、例えば、予め設定された値を加える加算、接近周波数fnを用いた所定の計算で算出される値を加える加算、予め設定された値を乗ずる乗算、または接近周波数fnを用いた所定の計算で算出される値を乗じる乗算などが適用され得る。
【0050】
この演算処理によって、例えば、
図7で示されるように、第1周波数スペクトルP1(f)と第2周波数スペクトルP2(f)とが十分接近している周波数としての接近周波数fnが算出され得る。
図7には、接近周波数fnが、そのまま上限周波数fulとされる例が示されている。また、例えば、
図8で示されるように、演算処理部22aによる演算処理によって、接近周波数fnが算出されない場合には、使用周波数範囲の上限周波数fulとして、測定装置1が生成可能な周波数スペクトルP(f)の周波数範囲の最大値が設定されてもよい。ここでは、例えば、AD変換部21bにおけるサンプリングレートが最大値に設定され、測定装置1が生成可能な周波数スペクトルP(f)の周波数範囲の最大値は、サンプリングレートの半分の周波数に設定され得る。ここで、例えば、サンプリングレートの最大値が、1324kHzであれば、測定装置1が生成可能な周波数スペクトルP(f)の周波数範囲の最大値は、662kHzとされる。
【0051】
上述したように算出された使用周波数範囲は、例えば、校正後の測定装置1による流れ測定において、受光部12から出力されて信号処理部21で処理された信号について生成される周波数スペクトルP(f)に基づいて流体2bに係る流れ計算値を算出する際に使用される。これにより、演算処理部22aは、例えば、周波数スペクトルP(f)に基づいて流体2bの流れの状態に係る流れ計算値を算出する際に、流体2bの流れ定量値の変化に応じて信号強度が明らかに変化し得る周波数の情報に基づいて、流れ計算値を算出することができる。
【0052】
図9には、例えば、流路構成部2aの内部2iを流れる流体2bの流量を相互に異ならせた場合に、演算処理部22aにおいてそれぞれ生成される周波数スペクトルP(f)が模式的に描かれた曲線が示されている。
図9では、流路構成部2aの内部2iを流れる流体2bの流量が、0(ゼロ)ミリリットル毎分(ml/min)、50ml/min、100ml/min、150ml/min、200ml/min、250ml/min、および300ml/minにそれぞれ設定された場合にそれぞれ生成される複数の周波数スペクトルP(f)が模式的に描かれた曲線が示されている。ここでは、流量が0ml/minである流体2bについて生成される周波数スペクトルP(f)が太線で模式的に描かれた曲線で示されている。流量が50ml/minである流体2bについて生成される周波数スペクトルP(f)が細い破線で模式的に描かれた曲線で示されている。流量が100ml/minである流体2bについて生成される周波数スペクトルP(f)が細い一点鎖線で模式的に描かれた曲線で示されている。流量が150ml/minである流体2bについて生成される周波数スペクトルP(f)が細い二点鎖線で模式的に描かれた曲線で示されている。流量が200ml/minである流体2bについて生成される周波数スペクトルP(f)が太い破線で模式的に描かれた曲線で示されている。流量が250ml/minである流体2bについて生成される周波数スペクトルP(f)が太い一点鎖線で模式的に描かれた曲線で示されている。流量が300ml/minである流体2bについて生成される周波数スペクトルP(f)が太い二点鎖線で模式的に描かれた曲線で示されている。
【0053】
図9の例では、流路構成部2aの内部2iを流れる流体2bの流量が変化すると、周波数スペクトルP(f)のうちの40kHz以下の周波数の範囲において信号強度に変化が生じている。この場合には、例えば、使用周波数範囲の上限を規定する上限周波数
fulは、40kHz程度に設定されればよい。ここでは、例えば、周波数スペクトルP(f)において使用周波数範囲を超える信号強度の成分は、流体2bの流れとは異なる流体2bの外部の環境(外部環境)に起因するノイズ成分を主としたものと推察される。外部環境に起因するノイズには、例えば、流路構成部2aの振動で発生するノイズ、および測定装置1の各種処理回路で生じる電磁的なノイズなどが含まれ得る。
【0054】
上述したように、例えば、使用周波数範囲が算出および設定されれば、使用周波数範囲を超える周波数帯のノイズ成分が低減された周波数スペクトルP(f)を用いて、流体2bの流れの状態に係る計算値が算出され得る。これにより、例えば、流体2bの流れの状態を定量的に示す値の測定精度が向上し得る。また、例えば、反射率が小さな流体2bを対象として流体2bの流れの状態を定量的に示す値の測定が行われる場合であっても、流体2bの流れの状態を定量的に示す値の測定精度が向上し得る。
【0055】
ここで、例えば、第1流れ状態として、流体2bの流量が制御可能範囲のうちの最大値に設定された状態が採用されれば、流体2bの流量が大きな値で変化する場合に周波数スペクトルP(f)の信号強度が変化し易くなる周波数帯が、使用周波数範囲に含まれ得る。これにより、例えば、流体2bの流量が比較的大きな場合に、流体2bの流れの状態を定量的に示す値の測定精度が向上し得る。
【0056】
また、ここで、例えば、第2流れ状態として、流体2bの流量がゼロに設定された状態が採用されれば、第2周波数スペクトルP2(f)には、流体2bの流量の変化に応じた信号強度が含まれにくい。これにより、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)と第2周波数スペクトルP2(f)との差が明らかとなり得る。その結果、例えば、使用周波数範囲の上限周波数fulが容易に算出され得る。
【0057】
また、ここで、演算処理部22aは、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)を近似式の形態に変換して、この近似式の形態に変換された第1周波数スペクトルP1(f)と、第2周波数スペクトルP2(f)と、の比較に応じて、使用周波数範囲を算出してもよい。これにより、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)に係るデータ量が低減されることで、第1周波数スペクトルP1(f)を記憶するための記憶部22bの記憶容量の使用量が低減され得る。その結果、例えば、記憶部22bの記憶容量の低減ならびに演算処理部22aにおける処理速度の向上などが図られ得る。ここでは、例えば、演算処理部22aによって、最小二乗法などによって第1周波数スペクトルP1(f)の近似式が算出され得る。具体的には、例えば、周波数がxとされ、信号強度がyとされ、係数a1,b1および定数c1を用いた2次式(y=a1×x2+b1×x+c1)で周波数と信号強度との関係を表すものとされる。そして、例えば、最小二乗法などが用いられて、第1周波数スペクトルP1(f)の生データに対して2次式のフィッティングが行われることで、係数a1,b1および定数c1が求められ、第1周波数スペクトルP1(f)の近似式としての2次式が算出され得る。ここでは、例えば、2次式の代わりに、累乗または指数などを用いた種々の形式の関数を用いた近似式が算出されてもよい。また、演算処理部22aでは、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)の近似式が算出される際に、第1周波数スペクトルP1(f)の低周波側においてDC成分に起因して発生し得る不連続な点を避けるために、第1周波数スペクトルP1(f)の所定周波数未満のデータが用いられなくてもよい。所定周波数は、例えば、流体2bの種類および特性に応じて10kHzから40kHz程度の範囲内の周波数に適宜設定され得る。
【0058】
また、ここで、演算処理部22aは、例えば、第2周波数スペクトルP2(f)を近似式の形態に変換して、この近似式の形態に変換された第2周波数スペクトルP2(f)と、第1周波数スペクトルP1(f)と、の比較に応じて、使用周波数範囲を算出してもよい。これにより、例えば、第2周波数スペクトルP2(f)に係るデータ量が低減されることで、第2周波数スペクトルP2(f)を記憶するための記憶部22bの記憶容量の使用量が低減され得る。その結果、例えば、記憶部22bの記憶容量の低減ならびに演算処理部22aにおける処理速度の向上などが図られ得る。ここでは、例えば、演算処理部22aによって、最小二乗法などによって第2周波数スペクトルP2(f)の近似式が算出され得る。具体的には、例えば、周波数がxとされ、信号強度がyとされ、係数a2,b2および定数c2を用いた2次式(y=a2×x2+b2×x+c2)で周波数と信号強度との関係を表すものとされる。そして、例えば、最小二乗法などが用いられて、第2周波数スペクトルP2(f)の生データに対して2次式のフィッティングが行われることで、係数a2,b2および定数c2が求められ、第2周波数スペクトルP2(f)の近似式としての2次式が算出され得る。ここでは、例えば、2次式の代わりに、累乗または指数などを用いた種々の形式の関数を用いた近似式が算出されてもよい。また、演算処理部22aでは、例えば、第2周波数スペクトルP2(f)の近似式が算出される際に、第2周波数スペクトルP2(f)の低周波側においてDC成分に起因して発生し得る不連続な点を避けるために、第2周波数スペクトルP2(f)の所定周波数未満のデータが用いられなくてもよい。所定周波数は、例えば、流体2bの種類および特性に応じて10kHzから40kHz程度の範囲内の周波数に適宜設定され得る。
【0059】
また、ここで、演算処理部22aは、例えば、算出された使用周波数範囲に応じて、AD変換部21bにおけるサンプリングレートを算出してもよい。ここでは、例えば、サンプリングレートは、使用周波数範囲の2倍の周波数として算出される。例えば、使用周波数範囲が40kHzであれば、サンプリングレートは、80kHzと算出され得る。そして、演算処理部22aは、例えば、AD変換部21bにおけるサンプリングレートを、算出したサンプリングレートに設定してもよい。この構成が採用されれば、例えば、測定装置1の校正によって、流れ測定が行われる際のサンプリングレートが、使用周波数範囲に応じて変更される。これにより、例えば、使用周波数範囲における、流れ計算値などが算出される際に生成される周波数スペクトルP(f)の周波数分解能が向上し得る。これにより、例えば、流体2bの流れの状態を定量的に示す値の測定精度が向上し得る。
【0060】
<<流れ測定>>
演算処理部22aは、例えば、受光部12から出力された信号について、高速フーリエ変換(FFT)などの演算を用いて、信号強度の時間変化についての周波数ごとの信号強度に係る分布を示す周波数スペクトル(第3周波数スペクトルともいう)P3(f)を生成する。換言すれば、演算処理部22aは、例えば、受光部12から出力された信号について信号強度の時間変化に係る第3周波数スペクトルP3(f)を生成する。演算処理部22aは、例えば、受光部12から出力された信号を対象とした信号処理部21における増幅処理およびAD変換処理などの処理で得た信号について、信号強度の時間変化に係る第3周波数スペクトルP3(f)を算出する。第3周波数スペクトルP3(f)における周波数の範囲は、例えば、AD変換部21bにおけるサンプリングレートに基づいて設定され得る。
【0061】
また、演算処理部22aは、例えば、第3周波数スペクトルP3(f)に基づいて、被照射物2の内部2iで流れる流体2bの流れの状態に係る計算値を算出する。ここでは、まず、演算処理部22aは、例えば、第3周波数スペクトルP3(f)に周波数fの重み付けを行うことで、重み付け後の周波数スペクトル(第4周波数スペクトルともいう)P4(f)(=P3(f)×f)を算出する。次に、演算処理部22aは、例えば、第4周波数スペクトルP4(f)(=P3(f)×f)についての信号強度の積分値(∫{P3(f)×f}df)と、第3周波数スペクトルP3(f)についての信号強度の積分値(∫P3(f)df)と、を算出する。ここでは、例えば、上述した使用周波数範囲について積分が行われる。次に、演算処理部22aは、例えば、第4周波数スペクトルP4(f)(=P3(f)×f)についての信号強度の積分値(∫{P3(f)×f}df)を、第3周波数スペクトルP3(f)についての信号強度の積分値(∫P3(f)df)で除することで、流れ計算値の一例として、差周波fbに相当する平均周波数fmを算出する。そして、演算処理部22aは、例えば、上記のように算出した流れ計算値としての平均周波数fmに基づいて、流体2bの流れの状態を定量的に示す値(流れ定量値)を算出することができる。これにより、例えば、測定装置1は、流路構成部2aの内部2iを流れる流体2bの流れの状態を定量的に示す値を測定することができる。
【0062】
例えば、演算処理部22aは、流れ計算値(例えば、平均周波数fm)と、予め準備された検量データ(検量線ともいう)と、に基づいて、流体2bに係る流れ定量値を算出することができる。ここで、例えば、流体2bの流量に係る検量データが予め準備されていれば、流れ計算値(例えば、平均周波数fm)と、流れ定量値としての流量に係る検量線と、に基づいて、流体2bの流量が算出され得る。また、例えば、流体2bの流速に係る検量データが予め準備されていれば、平均周波数fmと、流れ定量値としての流速に係る検量線と、に基づいて、流体2bの流速が算出され得る。これにより、流体2bの流量および流速のうちの少なくとも一方が算出され得る。
【0063】
検量データは、例えば、流体2bの流れ定量値を測定する前に、予め記憶部22bなどに記憶されていればよい。検量データは、例えば、関数式の形式で記憶されていてもよいし、テーブルの形式で記憶されていてもよい。
【0064】
検量データは、例えば、流体2bについて、既知の流れ定量値で流路構成部2a内を流れる流体2bを測定の対象として、測定装置1によって流れ計算値としての平均周波数fmの算出を行うことで準備され得る。ここで、測定装置1による平均周波数fmの算出は、発光部11による被照射物2に向けた照射光L1の照射と、受光部12による被照射物2で散乱した光を含む干渉光L2の受光と、演算処理部22aによる平均周波数fmの算出と、を行うものである。ここでは、例えば、既知の流れ定量値で流路構成部2a内を流れる流体2bを対象として測定装置1によって平均周波数fmを算出し、既知の流れ定量値と、算出された平均周波数fmと、の関係に基づいて検量データが導出され得る。より具体的には、例えば、平均周波数fmを媒介変数とする演算式(検量線)が検量データとして導出され得る。
【0065】
例えば、流れ定量値をyとし、平均周波数fmをxとして、係数a,bおよび定数cを有する式(4)によって検量線が表される場合を想定する。
【0066】
y=a×x2+b×x+c ・・・(4)
【0067】
例えば、流れ定量値が既知の値y1で流路構成部2a内を流れる流体2bを対象として平均周波数fmが値x1と算出され、流れ定量値が既知の値y2で流路構成部2a内を流れる流体2bを対象として平均周波数fmが値x2と算出され、流れ定量値が既知の値y3で流路構成部2a内を流れる流体2bを対象として平均周波数fmが値x3と算出されれば、次の式(5)、式(6)および式(7)が得られる。
【0068】
y1=a×x12+b×x1+c ・・・(5)
y2=a×x22+b×x2+c ・・・(6)
y3=a×x32+b×x3+c ・・・(7)
【0069】
式(5)、式(6)および式(7)から、係数a,bおよび定数cが算出される。そして、ここで算出された係数a、係数bおよび定数cを式(4)に代入すれば、検量線を示す検量データが得られる。
【0070】
検量線を示す関数式は、例えば、流れ定量値をyとし、平均周波数fmを変数であるxとした、n次(nは2以上の自然数)の項を含む多項式で表されるものであってもよい。検量線を示す関数式は、例えば、平均周波数fmに係る変数xについての対数の項および冪乗の項の少なくとも1つの項を有していてもよい。
【0071】
<<具体例>>
ここで第1実施形態に係る測定装置1を用いて、校正および流れ測定を行った結果の一具体例を挙げて説明する。
【0072】
ここでは、流路構成部2aである配管として、外径が6ミリメートル(mm)であり且つ内径が4ミリメートル(mm)である円筒状のフッ素樹脂製のチューブを用いた。流体2bとして透明系のクリア塗料を採用した。
【0073】
測定装置1の校正では、第1流れ状態として流体2bの流量が制御可能範囲のうちの最大値である300ml/minに設定された状態を採用し、第2流れ状態として流体2bの流量が0ml/minに設定された状態を採用した。また、使用周波数範囲の上限周波数fulとして40kHzが算出された。
【0074】
測定装置1による流れ測定では、使用周波数範囲の上限周波数fulを40kHzに設定し、流路構成部2aの内部2iを流れる流体2bの流量を、流路構成部2aに接続したポンプによって8つの異なる設定値(流量設定値ともいう)となるように制御した。8つの異なる流量設定値は、50ml/min、75ml/min、100ml/min、125ml/min、150ml/min、200ml/min、250ml/minおよび300ml/minとした。ここで、流路構成部2aの内部2iを流れる流体2bの流量が8つの流量設定値にそれぞれ設定された状態で、受光部12から出力された信号についてフーリエ変換によって第3周波数スペクトルP3(f)が算出された。また、各流量設定値について、第3周波数スペクトルP3(f)に周波数fの重み付けが行われることで得られた第4周波数スペクトルP4(f)(=P3(f)×f)についての信号強度の積分値(∫{P3(f)×f}df)を、第3周波数スペクトルP3(f)についての信号強度の積分値(∫P3(f)df)で除することで、流れ計算値としての平均周波数fmを算出した。また、積分を行う周波数の範囲が40kHz以下の範囲に限定された。そして、各流量設定値について、算出された平均周波数fmと、流れ定量値としての流量に係る検量線と、に基づいて、流体2bの流れ定量値としての流量(流量計算値ともいう)が算出された。
【0075】
また、一参考例として、測定装置1において、使用周波数範囲の上限周波数fulを設定可能な最大値である662kHzに設定し、各流量設定値について、流れ計算値としての平均周波数fmおよび流量計算値を順に算出させた。
【0076】
ここで、一具体例および一参考例について、流量設定値ごとに、流量計算値から流量設定値を減じた値を流量設定値で除して100を乗じることで、流量設定値に対する流量計算値の誤差を示す百分率を算出した。
【0077】
図10には、一具体例について、流量が8つの異なる流量設定値にそれぞれ設定された流体について算出された流量計算値の流量設定値に対する誤差の百分率が示されている。
図11には、一参考例について、流量が8つの異なる流量設定値にそれぞれ設定された流体について算出された流量計算値の流量設定値に対する誤差の百分率が示されている。
【0078】
図11で示されるように、一参考例では、誤差が最大で約-20.6%であったのに対して、
図10で示されるように、一具体例では、誤差が最大で約-4.4%であった。このため、使用周波数範囲の上限周波数fulが適切に設定されることで、流量計算値の流量設定値に対する誤差が小さくなることが確認された。換言すれば、使用周波数範囲の上限周波数fulが適切に設定されることで、流体2bの流れの状態を定量的に示す値の測定精度が向上し得ることが確認された。
【0079】
<1-2.測定装置の動作>
測定装置1の校正の動作(校正動作ともいう)について、一例を挙げて説明する。
図12は、測定装置1の校正動作のフローの一例を示す流れ図である。この校正動作は、測定装置1の校正方法を規定する一動作例である。この動作は、例えば、演算処理部22aにおいてプログラムPg1が実行されることにより、制御部20によって測定装置1の動作が制御されることで実現され得る。ここでは、例えば、接続部30に接続されている外部装置などの各種機器から入力される電気信号に応答して、
図12のステップSp1からステップSp3の処理がこの記載の順に実行され得る。
【0080】
図12のステップSp1では、第1工程を実行する。この第1工程においては、例えば、発光部11によって内部2iで流体2bが第1流れ状態にある被照射物2に光(照射光)L1が照射されながら、受光部12によって被照射物2で散乱した光を含む干渉光L2が受光されて、この干渉光L2の強度に応じた信号について信号強度の時間変化に係る周波数スペクトル(第1周波数スペクトル)P1(f)が演算処理部22aによって生成される。ここでは、例えば、流路構成部2aに接続されたポンプなどの機器(流れ制御機器)によって流体2bの流れの状態が第1流れ状態に設定される。そして、例えば、外部装置からの信号などに応答して、発光部11による照射光L1の照射、受光部12による干渉光L2の受光および演算処理部22aによる第1周波数スペクトルP1(f)の生成、が行われる。
【0081】
また、第1工程においては、例えば、発光部11によって内部2iで流体2bが第2流れ状態にある被照射物2に光(照射光)L1が照射されながら、受光部12によって被照射物2で散乱した光を含む干渉光L2が受光されて、この干渉光L2の強度に応じた信号について信号強度の時間変化に係る周波数スペクトル(第2周波数スペクトル)P2(f)が演算処理部22aによって生成される。ここでは、例えば、流路構成部2aに接続されたポンプなどの機器(流れ制御機器)によって流体2bの流れの状態が第2流れ状態に設定される。そして、例えば、外部装置からの信号などに応答して、発光部11による照射光L1の照射、受光部12による干渉光L2の受光および演算処理部22aによる第2周波数スペクトルP2(f)の生成、が行われる。第1工程においては、第1流れ状態に係る第1周波数スペクトルP1(f)の生成、および第2流れ状態に係る第2周波数スペクトルP2(f)の生成の何れが先に行われてもよい。
【0082】
ステップSp2では、第2工程を実行する。この第2工程においては、例えば、演算処理部22aによって、第1周波数スペクトルP1(f)と第2周波数スペクトルP2(f)との比較に応じて、被照射物2の内部2iで流れる流体2bの流れの状態に係る計算値の算出に用いる使用周波数範囲が算出される。ここでは、例えば、演算処理部22aによって、第1周波数スペクトルP1(f)と第2周波数スペクトルP2(f)とを比較する処理(信号強度比較処理)が行われる。信号強度比較処理では、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)と第2周波数スペクトルP2(f)とに基づいて、比較の指標となる値(比較指標値)Vcが算出される。比較指標値Vcは、例えば、周波数毎に第1周波数スペクトルP1(f)と第2周波数スペクトルP2(f)との間の信号強度の差を特定値Vsで除することで算出され得る。そして、例えば、比較指標値Vcが所定値Vp未満となる周波数(接近周波数)fnに基づいて、使用周波数範囲の上限を規定する周波数(上限周波数)fulが算出され得る。この上限周波数fulの算出によって、使用周波数範囲が算出され得る。特定値Vsには、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)の特定の信号強度(第1特定信号強度)P1xが適用される。特定信号強度P1xには、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)における信号強度の最大値(第1最大信号強度)P1max、または第1周波数スペクトルP1(f)における信号強度の平均値(第1平均信号強度)P1aveなどが適用される。所定値Vpは、例えば、流体2bの種類もしくは特性などに応じた値に設定され得る。接近周波数fnとしては、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)において第1最大信号強度P1maxを示す周波数を基準の周波数(基準周波数)frとして周波数fを増加させた場合に比較指標値Vcが所定値Vp未満となる周波数が採用される。使用周波数範囲の上限周波数fulは、例えば、接近周波数fnと同一であってもよいし、接近周波数fnに予め設定された算出ルールに基づく計算が行われた周波数であってもよい。算出ルールに基づく計算には、例えば、予め設定された値を加える加算、接近周波数fnを用いた所定の計算で算出される値を加える加算、予め設定された値を乗ずる乗算、または接近周波数fnを用いた所定の計算で算出される値を乗じる乗算などが適用され得る。
【0083】
また、第2工程においては、例えば、演算処理部22aによって、使用周波数範囲に応じて、AD変換部21bにおけるサンプリングレートが算出されてもよい。ここでは、例えば、サンプリングレートは、使用周波数範囲の2倍の周波数として算出され得る。
【0084】
ステップSp3では、第3工程を実行する。この第3工程においては、例えば、演算処理部22aによって、測定装置1による流れ測定において流れ計算値を算出する際に用いる周波数の範囲として、ステップSp2で算出された使用周波数範囲が設定される。また、この第3工程においては、例えば、演算処理部22aによって、AD変換部21bにおけるサンプリングレートが、ステップSp2で算出されたサンプリングレートに設定されてもよい。
【0085】
次に、測定装置1による流れ測定の動作(流れ測定動作ともいう)について、一例を挙げて説明する。
図13は、測定装置1による流れ測定動作のフローの一例を示す流れ図である。この動作は、例えば、演算処理部22aにおいてプログラムPg1が実行されることにより、制御部20によって測定装置1の動作が制御されることで実現され得る。ここでは、例えば、接続部30に接続されている外部装置などの各種機器から入力される電気信号に応答して、
図13のステップSt1からステップSt4の処理がこの記載の順に実行され得る。
【0086】
図13のステップSt1では、例えば、発光部11によって内部2iで流体2bが流れている被照射物2に光が照射されながら、受光部12によって被照射物2で散乱した光を含む干渉光L2が受光されてこの干渉光L2の強度に応じた信号が出力される。
【0087】
ステップSt2では、例えば、信号処理部21によって、ステップSt1において受光部12から出力された信号に対する処理が行われる。ここでは、例えば、信号処理部21によって、受光部12から受信したアナログの電気信号に対して、増幅処理およびAD変換処理などの処理が施された上で、情報処理部22に向けて、デジタル信号が出力される。ここでは、例えば、信号処理部21によって他の処理が施されてもよい。例えば、信号処理部21によって、受光部12から出力された電気信号について、DC成分とAC成分とに分離する処理が行われた後に、増幅部21aでAC成分の信号が増幅されてもよい。ここでは、例えば、測定装置1の校正においてAD変換部21bにおけるサンプリングレートが設定されていれば、そのサンプリングレートに従ってAD変換部21bによるAD変換処理が行われる。
【0088】
ステップSt3では、例えば、演算処理部22aによって、ステップSt2で信号処理部21から出力された信号に基づいて、被照射物2の内部2iで流れる流体2bの流れの状態に係る計算値(流れ計算値)が算出される。ここでは、まず、例えば、ステップSt1において受光部12から出力された信号について、信号強度の時間変化に係る周波数スペクトル(第3周波数スペクトル)P3(f)が生成される。具体的には、例えば、演算処理部22aによって、ステップSt2において信号処理部21による処理で得られた信号について、フーリエ変換などの演算を用いて第3周波数スペクトルP3(f)が生成される。フーリエ変換には、例えば、高速フーリエ変換(FFT)などが適用され得る。次に、例えば、演算処理部22aによって、第3周波数スペクトルP3(f)に基づいて、被照射物2の内部2iで流れる流体2bの流れの状態に係る流れ計算値が算出される。ここでは、例えば、演算処理部22aによって、第3周波数スペクトルP3(f)に周波数fの重み付けが行われることで得られた第4周波数スペクトルP4(f)(=P3(f)×f)についての信号強度の積分値(∫{P3(f)×f}df)が、第3周波数スペクトルP3(f)についての信号強度の積分値(∫P3(f)df)で除されることで、流れ計算値としての平均周波数fmが算出され得る。
【0089】
ステップSt4では、例えば、演算処理部22aによって、ステップSt3で算出された流れ計算値(例えば、平均周波数fm)に基づいて、流体2bの流れの状態を定量的に示す値(流れ定量値)が算出される。ここでは、例えば、演算処理部22aによって、流れ計算値(例えば、平均周波数fm)と、予め準備された検量データ(検量線)と、に基づいて、流体2bに係る流れ定量値が算出され得る。これにより、例えば、測定装置1では、流路構成部2aの内部2iを流れる流体2bの流れの状態を定量的に示す値が測定され得る。流れ定量値は、例えば、流体2bの流量および流速のうちの少なくとも一方を含む。
【0090】
<1-3.第1実施形態のまとめ>
第1実施形態に係る測定装置1は、例えば、第1流れ状態の流体2bに係る第1周波数スペクトルP1(f)と第2流れ状態の流体2bに係る第2周波数スペクトルP2(f)との比較に応じて、被照射物2の内部2iで流れる流体2bの流れの状態に係る流れ計算値の算出に用いる使用周波数範囲を算出する。これにより、例えば、使用周波数範囲を超える周波数帯のノイズ成分が低減された周波数スペクトルP(f)を用いて、流体2bの流れの状態に係る流れ計算値が算出され得る。その結果、例えば、流体2bの流れの状態を定量的に示す値の測定精度が向上し得る。また、例えば、反射率が小さな流体2bを対象として流体2bの流れの状態を定量的に示す値の測定が行われる場合であっても、流体2bの流れの状態を定量的に示す値の測定精度が向上し得る。
【0091】
<2.他の実施形態>
本開示は上述の第1実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更および改良などが可能である。
【0092】
<2-1.第2実施形態>
上記第1実施形態において、測定装置1は、例えば、
図14で示されるように、入力部40を有していてもよいし、出力部50を有していてもよい。
【0093】
入力部40は、例えば、接続部30を介して制御部20に接続され得る。入力部40は、例えば、ユーザの動作に応答して、測定装置1による流れ測定に関する種々の条件(測定条件ともいう)に係る情報を制御部20に入力することができる。測定条件は、例えば、演算処理部22aで算出される周波数スペクトルにおける周波数の範囲、発光部11が発する照射光L1の光量もしくは強度、受光部12が信号を出力する周期、AD変換部21bにおけるサンプリングレート、検量データに係る演算式およびこの演算式の係数などを含み得る。入力部40には、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルまたはスイッチなどの操作部あるいは音声による入力が可能なマイク部などが適用される。これにより、例えば、ユーザは、所望の測定条件を容易に設定することができる。その結果、例えば、測定装置1の利便性が向上し得る。また、入力部40は、例えば、流体2bにおける粘度、濃度または散乱体の大きさなど、流体2bに関する種々の情報を入力することができてもよい。
【0094】
出力部50は、例えば、接続部30を介して制御部20に接続され得る。出力部50は、例えば、流れ測定に関する種々の情報を可視的に出力する表示部を含んでいてもよいし、流れ測定に関する種々の情報を可聴的に出力するスピーカ部を含んでいてもよい。表示部には、例えば、液晶ディスプレイまたはタッチパネルなどが適用される。入力部40がタッチパネルを含む場合には、入力部40と出力部50の表示部とが1つのタッチパネルで実現されてもよい。これにより、例えば、測定装置1の構成部材が減り、測定装置1の小型化および製造の容易化が図られ得る。ここで、例えば、出力部50が、演算処理部22aによって算出された流れ計算値を可視的に出力することが可能であれば、ユーザは、流体2bの流れの状態に係る流れ計算値を容易に認識することができる。また、ここで、例えば、演算処理部22aによって算出された流れ定量値を可視的に出力することが可能であれば、ユーザは、流体2bの流れの状態に係る流量または流速などの流れ定量値を容易に認識することができる。ここで、例えば、ユーザが、入力部40を介して出力部50における種々の情報の出力態様を変更させることが可能であってもよい。出力態様の変更には、例えば、表示形式の変更または表示される情報の切り替えなどが含まれ得る。これにより、例えば、ユーザは、流れ計算値および流れ定量値などの測定に関する種々の情報を容易に認識することができる。その結果、例えば、測定装置1の利便性が向上し得る。
【0095】
ここで、例えば、出力部50が、演算処理部22aで算出された使用周波数範囲を可視的に出力することが可能であれば、ユーザによる入力部40を介した使用周波数範囲に係る情報の入力に応答して、演算処理部22aによって、流れ計算値を算出する際に用いる使用周波数範囲が設定されてもよい。
【0096】
また、ここで、例えば、出力部50が、演算処理部22aで算出されたサンプリングレートを可視的に出力することが可能であれば、ユーザによる入力部40を介したサンプリングレートに係る情報の入力に応答して、演算処理部22aによって、AD変換部21bにおけるサンプリングレートが設定されてもよい。
【0097】
<2-2.第3実施形態>
上記各実施形態において、測定装置1は、例えば、
図15で示されるように、外部制御部60をさらに有していてもよい。外部制御部60は、例えば、マイクロコンピュータ(マイコン)などのコンピュータを含み得る。
【0098】
外部制御部60は、例えば、測定条件に係る情報を保持しており、この測定条件に係る情報を制御部20に入力可能であってもよい。これにより、例えば、演算処理部22aにおいて処理する項目が少なくなり、制御部20における処理速度を向上させることができる。ここで、測定条件には、例えば、演算処理部22aで算出される周波数スペクトルにおける周波数の範囲、発光部11が発する照射光L1の光量もしくは強度、受光部12が信号を出力する周期、AD変換部21bにおけるサンプリングレート、検量データに係る演算式およびこの演算式の係数などが適用される。
【0099】
また、外部制御部60は、例えば、入力部40および出力部50の制御を行うことが可能であってもよい。この場合には、例えば、制御部20が制御する種々の機能を有する部分(機能部ともいう)の数が少なくなり、制御部20の処理速度を向上させることができる。また、外部制御部60は、例えば、複数の電子部品によって構成された種々の他の機能部を有していてもよい。種々の他の機能部には、例えば、圧力計または温度計などが適用される。これにより、例えば、測定装置1における設計の自由度が向上し、測定装置1の利便性が向上し得る。
【0100】
外部制御部60と、制御部20、入力部40および出力部50と、の間における通信は、有線および無線の何れの方式で実現されてもよい。制御部20と外部制御部60との間における通信は、例えば、任意の通信規格に準じた通信が適用される。任意の通信規格は、例えば、IIC(Inter Integrated Circuit)、SPI(Serial Peripheral Interface)、またはUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)などを含む。
【0101】
ここで、例えば、センサ部10および信号処理部21と外部制御部60とが、直接的に通信可能であってもよい。この場合には、例えば、測定装置1が、制御部20を有することなく、外部制御部60が制御部20の機能を有していてもよい。ここでは、例えば、センサ部10と外部制御部60とが、直接通信を行うことで、制御部20と外部制御部60との間で生じる信号の遅延が解消され得る。これにより、例えば、測定装置1の処理速度を向上させることができる。その結果、例えば、測定装置1の利便性が向上し得る。
【0102】
<2-3.第4実施形態>
上記各実施形態において、例えば、測定装置1を構成する全ての部分または少なくとも2つ以上の部分が、相互に通信可能に接続された、測定システム100が採用されてもよい。例えば、
図16で示されるように、第4実施形態に係る測定システム100は、発光部11と、受光部12と、増幅部21aおよびAD変換部21bを含む信号処理部21と、演算処理部22aおよび記憶部22bを含む情報処理部22と、を備えている。
図16の例では、例えば、発光部11と受光部12との間、発光部11と情報処理部22との間、受光部12と信号処理部21との間、および信号処理部21と情報処理部22との間のそれぞれが通信可能に接続されている状態にある。
【0103】
<3.その他>
上記各実施形態では、例えば、第1流れ状態として、流体2bの流量が制御可能範囲のうちの最大値に設定された状態が採用され、第2流れ状態として、流体2bの流量が制御可能範囲のうちの最小値に設定された状態が採用されてもよい。この場合には、例えば、ポンプなどの流れ制御機器の動作で生じ得るノイズ成分がそれぞれ含まれた、第1周波数スペクトルP1(f)と第2周波数スペクトルP2(f)との比較に応じて、使用周波数範囲が算出される。これにより、例えば、ポンプなどの流れ制御機器の動作で生じ得るノイズ成分以外の流体2bの流量の変化に起因する信号強度の変化が生じる、周波数スペクトルの周波数の範囲を包含するように使用周波数範囲が算出され易くなる。
【0104】
また、例えば、第1流れ状態における流体2bの流量は、制御可能範囲の最大値でなくてもよいし、第2流れ状態における流体2bの流量は、制御可能範囲の最小値でなくてもよい。ただし、例えば、第1流れ状態における流体2bの流量が、制御可能範囲の最大値に近いほど、流体2bの流量が大きな値で変化する場合に周波数スペクトルP(f)の信号強度が変化し易くなる周波数帯が、使用周波数範囲に含まれ得る。これにより、例えば、流体2bの流量が比較的大きな場合に、流体2bの流れの状態を定量的に示す値の測定精度が向上し得る。また、例えば、第2流れ状態における流体2bの流量と、第1流れ状態における流体2bの流量と、の差が大きいほど、第1周波数スペクトルP1(f)と第2周波数スペクトルP2(f)との差が明らかとなり得る。その結果、例えば、使用周波数範囲の算出が容易に可能となり得る。
【0105】
上記各実施形態では、信号強度比較処理において、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)と第2周波数スペクトルP2(f)とを用いた種々の計算によって、比較指標値Vcが算出されてもよい。
【0106】
ここで、例えば、第1最大信号強度P1maxを示す基準周波数frから周波数fが大きくなるにつれて比較指標値Vcが小さくなる傾向を示す場合を想定する。この場合には、例えば、基準周波数frから周波数fを増加させたときに、比較指標値Vcが所定値Vpよりも小さくなる接近周波数fnに基づいて、上限周波数fulが算出されてもよい。具体的には、例えば、信号強度比較処理において、比較指標値Vcとして、周波数毎に第1周波数スペクトルP1(f)を第2周波数スペクトルP2(f)で除した値が算出され、基準周波数frから周波数fを増加させたときに、比較指標値Vcが所定値Vpよりも小さくなる接近周波数fnに基づいて、上限周波数fulが算出される態様が考えられる。ここでは、所定値Vpには、例えば、1よりも大きく且つ1に近い値が適用され得る。1よりも大きく且つ1に近い値には、例えば、1.1などが適用される。
【0107】
また、ここで、例えば、第1最大信号強度P1maxを示す基準周波数frから周波数fが大きくなるにつれて比較指標値Vcが大きくなる傾向を示す場合を想定する。この場合には、例えば、基準周波数frから周波数fを増加させたときに、比較指標値Vcが所定値Vpよりも大きくなる接近周波数fnに基づいて、上限周波数fulが算出されてもよい。具体的には、例えば、信号強度比較処理において、比較指標値Vcとして、周波数毎に第2周波数スペクトルP2(f)を第1周波数スペクトルP1(f)で除した値が算出され、基準周波数frから周波数fを増加させたときに、比較指標値Vcが所定値Vpよりも大きくなる接近周波数fnに基づいて、上限周波数fulが算出される態様が考えられる。ここでは、所定値Vpには、例えば、1よりも小さく且つ1に近い値が適用され得る。1よりも小さく且つ1に近い値には、例えば、0.9などが適用される。
【0108】
また、ここで、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)および第2周波数スペクトルP2(f)における十分大きな周波数を基準の周波数(基準周波数)frとして周波数fが小さくなるにつれて比較指標値Vcが大きくなる傾向を示す場合を想定する。基準周波数frとしては、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)および第2周波数スペクトルP2(f)の周波数の最大値が採用される。この場合には、例えば、基準周波数frから周波数fを減少させたときに、比較指標値Vcが所定値Vp以上となる接近周波数fnに基づいて、上限周波数fulが算出されてもよい。具体的には、例えば、信号強度比較処理において、比較指標値Vcとして、周波数毎に第1周波数スペクトルP1(f)を第2周波数スペクトルP2(f)で除した値が算出され、基準周波数frから周波数fを減少させたときに、比較指標値Vcが所定値Vp以上となる接近周波数fnに基づいて、上限周波数fulが算出される態様が考えられる。ここでは、所定値Vpには、例えば、1よりも大きく且つ1に近い値が適用され得る。1よりも大きく且つ1に近い値には、例えば、1.1などが適用される。
【0109】
また、ここで、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)および第2周波数スペクトルP2(f)における十分大きな周波数を基準の周波数(基準周波数)frとして周波数fが小さくなるにつれて比較指標値Vcが小さくなる傾向を示す場合を想定する。基準周波数frとしては、例えば、第1周波数スペクトルP1(f)および第2周波数スペクトルP2(f)の周波数の最大値が採用される。この場合には、例えば、基準周波数frから周波数fを減少させたときに、比較指標値Vcが所定値Vp以下となる接近周波数fnに基づいて、上限周波数fulが算出されてもよい。具体的には、例えば、信号強度比較処理において、比較指標値Vcとして、周波数毎に第2周波数スペクトルP2(f)を第1周波数スペクトルP1(f)で除した値が算出され、基準周波数frから周波数fを減少させたときに、比較指標値Vcが所定値Vp以下となる接近周波数fnに基づいて、上限周波数fulが算出される態様が考えられる。ここでは、所定値Vpには、例えば、1よりも小さく且つ1に近い値が適用され得る。1よりも小さく且つ1に近い値には、例えば、0.9などが適用される。
【0110】
上記各実施形態においては、例えば、第3周波数スペクトルP3(f)について、低周波数側から算出される信号強度の積分値と高周波数側から算出される信号強度の積分値とが所定の比率となる境界の周波数が、差周波fbに相当する平均周波数fmとして算出されてもよい。所定の比率は、例えば、1:1などに設定される。
【0111】
上記各実施形態では、例えば、検量データは、平均周波数fmに所定の演算を施した値(流れ計算値)と、流体2bの流れに係る定量的な値(流れ定量値)と、の関係を示すものであってもよい。この場合には、例えば、演算処理部22aは、平均周波数fmに所定の演算を施した流れ計算値と、予め準備された検量データと、に基づいて、流体2bの流れの状態を定量的に示す値(流れ定量値)を算出することができる。
【0112】
上記各実施形態において、演算処理部22aは、例えば、流れ計算値に基づいて流れ定量値を算出しなくてもよい。この構成によっても、例えば、ユーザは、流れ計算値の変化に基づいて、流体2bの流れの状態の変化を把握することができる。この場合には、例えば、流れ計算値を、流体2bの流れの状態を定量的に示す値とみなすことも可能である。このため、例えば、流体2bの流れの状態を定量的に示す値の測定精度が向上し得る。
【0113】
上記各実施形態において、演算処理部22aの機能の少なくとも一部の機能は、例えば、専用の電子回路などのハードウェアで構成されてもよい。
【0114】
上記各実施形態および各種変形例をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0115】
1 測定装置
2 被照射物
2a 流路構成部
2b 流体
2i 内部
10 センサ部
11 発光部
12 受光部
20 制御部
21 信号処理部
21a 増幅部
21b AD変換部
22 情報処理部
22a 演算処理部
22b 記憶部
40 入力部
50 出力部
60 外部制御部
100 測定システム
L1 照射光
L2 干渉光
Pg1 プログラム