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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/02 20060101AFI20231215BHJP
【FI】
B66B31/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022551521
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2020036295
(87)【国際公開番号】W WO2022064638
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山中 直輝
(72)【発明者】
【氏名】山下 智典
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0240756(US,A1)
【文献】特開2008-007272(JP,A)
【文献】特開2006-062767(JP,A)
【文献】特開2019-200250(JP,A)
【文献】特開2016-059867(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0028228(US,A1)
【文献】特開平05-008819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環駆動される踏板と、前記踏板の側方に配置されて循環駆動される移動手すりと、紫外線を発光する紫外線発光部を有し前記移動手すりに紫外線を照射して前記移動手すりを除菌する除菌部と、前記除菌部による前記移動手すりに対する紫外線の照射を制御する紫外線照射制御部と、前記移動手すりの移動速度を制御する移動手すり速度制御部と、を備えた乗客コンベアにおいて、
前記紫外線発光部の点灯時間を計測するタイマーと、前記タイマーで計測した前記紫外線発光部の点灯時間を記憶するメモリとを備え、
前記除菌部は、前記紫外線発光部を複数備え、
前記移動手すり速度制御部は、前記移動手すりの移動速度を、第1速度と、前記第1速度よりも低速度かつゼロよりも大きな第2速度と、に切り換え、
前記紫外線照射制御部は、前記第1速度における前記紫外線発光部の点灯数が、前記第2速度における前記紫外線発光部の点灯数よりも多くなるように、前記紫外線発光部を制御することにより、前記第1速度における前記紫外線発光部の単位時間当たりの紫外線発光量が、前記第2速度における前記紫外線発光部の単位時間当たりの紫外線発光量よりも多くなるように、前記紫外線発光部を制御し、
さらに前記紫外線照射制御部は、複数の前記紫外線発光部の間で、点灯時間が等しくなるように、前記紫外線発光部の点灯を切り換えることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
循環駆動される踏板と、前記踏板の側方に配置されて循環駆動される移動手すりと、紫外線を発光する紫外線発光部を有し前記移動手すりに紫外線を照射して前記移動手すりを除菌する除菌部と、前記除菌部による前記移動手すりに対する紫外線の照射を制御する紫外線照射制御部と、前記移動手すりの移動速度を制御する移動手すり速度制御部と、を備えた乗客コンベアにおいて、
前記除菌部は、前記紫外線発光部を複数備え、
前記移動手すり速度制御部は、前記移動手すりの移動速度を、第1速度と、前記第1速度よりも低速度かつゼロよりも大きな第2速度と、に切り換え、
前記紫外線照射制御部は、前記第1速度における前記紫外線発光部の点灯数が、前記第2速度における前記紫外線発光部の点灯数よりも多くなるように、前記紫外線発光部を制御することにより、前記第1速度における前記紫外線発光部の単位時間当たりの紫外線発光量が、前記第2速度における前記紫外線発光部の単位時間当たりの紫外線発光量よりも多くなるように、前記紫外線発光部を制御し、
前記除菌部は、前記第1速度を前記第2速度で除した商に相当する数のみの紫外線発光部を備えることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項3】
請求項1又はに記載の乗客コンベアにおいて、
前記紫外線照射制御部は、前記第1速度から前記第2速度に移行する際に、前回の第2速度時に点灯させた紫外線発光部とは異なる紫外線発光部を点灯させるよう制御することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の乗客コンベアにおいて、
前記紫外線照射制御部は、前記第1速度における前記紫外線発光部の発光強度が、前記第2速度における前記紫外線発光部の発光強度よりも強くなるように、前記紫外線発光部を制御することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の乗客コンベアにおいて、
前記除菌部は、前記紫外線発光部を3個備え、
前記紫外線照射制御部は、前記第1速度において3個の前記紫外線発光部を点灯し、前記第2速度において1個の前記紫外線発光部を点灯するように、前記紫外線発光部を制御することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項6】
循環駆動される踏板と、前記踏板の側方に配置されて循環駆動される移動手すりと、紫外線を発光する紫外線発光部を有し前記移動手すりに紫外線を照射して前記移動手すりを除菌する除菌部と、前記除菌部による前記移動手すりに対する紫外線の照射を制御する紫外線照射制御部と、前記移動手すりの移動速度を制御する移動手すり速度制御部と、を備えた乗客コンベアにおいて、
前記除菌部は、前記紫外線発光部を3個備え、
前記移動手すり速度制御部は、前記移動手すりの移動速度を、第1速度と、前記第1速度よりも低速度かつゼロよりも大きな第2速度と、に切り換え、
前記紫外線照射制御部は、前記第1速度において3個の前記紫外線発光部を点灯し、前記第2速度において2個の前記紫外線発光部を点灯することにより、前記第1速度における3個の前記紫外線発光部の単位時間当たりの紫外線発光量が、前記第2速度における2個の前記紫外線発光部の単位時間当たりの紫外線発光量よりも多くなるように、前記紫外線発光部を制御し、
さらに前記紫外線照射制御部は、前記第2速度において2個の前記紫外線発光部を点灯する際に、当該2個の紫外線発光部の発光強度を、前記第1速度において点灯する際の発光強度よりも小さくするように制御することを特徴とする乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレーターや動く歩道などの乗客コンベアに係り、特に移動手すりの除菌に関する。ここで、「除菌」はウィルスを対象外とする考え方もあるが、本明細書において、「除菌」はその対象からウィルスを排除するものではない。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2019-52021号公報(特許文献1)に記載された乗客コンベアおよびその手摺ベルト殺菌装置が知られている。特許文献1の手摺ベルト殺菌装置は、乗客コンベアのスカートガードの内部に設けられ、スカートガードの内部を走行する手摺ベルトの表面を殺菌する殺菌部と、殺菌部による殺菌に基づく情報を報知する報知部と、乗客コンベアの運行速度情報を取得し、運行速度ごとに殺菌部による殺菌および報知部による報知を制御する制御部と、殺菌部による殺菌に基づく時間を取得するタイマーと、を備えている(要約参照)。特許文献1の手摺ベルト殺菌装置では、低速運行などの通常運行以外の非通常運行時にのみ、深紫外線による手摺りの殺菌を行うことで、深紫外線LEDモジュールの長寿命化、低消費電力化を図る(段落0040参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-52021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の手摺ベルト殺菌装置では、低速運行などの通常運行以外の非通常運行時にのみ、深紫外線による手摺りの殺菌を行っており、その他の運行時に手摺りの殺菌を行うことについては、配慮されていない。紫外線の照射による除菌では、紫外線の照射量や照射時間が除菌効果に影響を与える。
【0005】
本発明の目的は、異なる速度で運行される移動手すりに対して、好適な除菌を実施することができる乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の乗客コンベアは、
循環駆動される踏板と、前記踏板の側方に配置されて循環駆動される移動手すりと、紫外線を発光する紫外線発光部を有し前記移動手すりに紫外線を照射して前記移動手すりを除菌する除菌部と、前記除菌部による前記移動手すりに対する紫外線の照射を制御する紫外線照射制御部と、前記移動手すりの移動速度を制御する移動手すり速度制御部と、を備えた乗客コンベアにおいて、
前記紫外線発光部の点灯時間を計測するタイマーと、前記タイマーで計測した前記紫外線発光部の点灯時間を記憶するメモリとを備え、
前記除菌部は、前記紫外線発光部を複数備え、
前記移動手すり速度制御部は、前記移動手すりの移動速度を、第1速度と、前記第1速度よりも低速度かつゼロよりも大きな第2速度と、に切り換え、
前記紫外線照射制御部は、前記第1速度における前記紫外線発光部の点灯数が、前記第2速度における前記紫外線発光部の点灯数よりも多くなるように、前記紫外線発光部を制御することにより、前記第1速度における前記紫外線発光部の単位時間当たりの紫外線発光量が、前記第2速度における前記紫外線発光部の単位時間当たりの紫外線発光量よりも多くなるように、前記紫外線発光部を制御し、
さらにように、前記紫外線発光部の点灯を切り換える。
また、上記目的を達成するために、本発明の乗客コンベアは、
循環駆動される踏板と、前記踏板の側方に配置されて循環駆動される移動手すりと、紫外線を発光する紫外線発光部を有し前記移動手すりに紫外線を照射して前記移動手すりを除菌する除菌部と、前記除菌部による前記移動手すりに対する紫外線の照射を制御する紫外線照射制御部と、前記移動手すりの移動速度を制御する移動手すり速度制御部と、を備えた乗客コンベアにおいて、
前記除菌部は、前記紫外線発光部を複数備え、
前記移動手すり速度制御部は、前記移動手すりの移動速度を、第1速度と、前記第1速度よりも低速度かつゼロよりも大きな第2速度と、に切り換え、
前記紫外線照射制御部は、前記第1速度における前記紫外線発光部の点灯数が、前記第2速度における前記紫外線発光部の点灯数よりも多くなるように、前記紫外線発光部を制御することにより、前記第1速度における前記紫外線発光部の単位時間当たりの紫外線発光量が、前記第2速度における前記紫外線発光部の単位時間当たりの紫外線発光量よりも多くなるように、前記紫外線発光部を制御し、
前記除菌部は、前記第1速度を前記第2速度で除した商に相当する数のみの紫外線発光部を備える。
また、上記目的を達成するために、本発明の乗客コンベアは、
循環駆動される踏板と、前記踏板の側方に配置されて循環駆動される移動手すりと、紫外線を発光する紫外線発光部を有し前記移動手すりに紫外線を照射して前記移動手すりを除菌する除菌部と、前記除菌部による前記移動手すりに対する紫外線の照射を制御する紫外線照射制御部と、前記移動手すりの移動速度を制御する移動手すり速度制御部と、を備えた乗客コンベアにおいて、
前記除菌部は、前記紫外線発光部を3個備え、
前記移動手すり速度制御部は、前記移動手すりの移動速度を、第1速度と、前記第1速度よりも低速度かつゼロよりも大きな第2速度と、に切り換え、
前記紫外線照射制御部は、前記第1速度において3個の前記紫外線発光部を点灯し、前記第2速度において2個の前記紫外線発光部を点灯することにより、前記第1速度における3個の前記紫外線発光部の単位時間当たりの紫外線発光量が、前記第2速度における2個の前記紫外線発光部の単位時間当たりの紫外線発光量よりも多くなるように、前記紫外線発光部を制御し、
さらに前記紫外線照射制御部は、前記第2速度において2個の前記紫外線発光部を点灯する際に、当該2個の紫外線発光部の発光強度を、前記第1速度において点灯する際の発光強度よりも小さくするように制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異なる速度で運行される移動手すりに対して、好適な除菌を実施することができる乗客コンベアを提供することができる。
【0008】
上述した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る乗客コンベアの一実施例の構造の概略を示す側面図である。
図2】本発明に係る乗客コンベアの踏板駆動装置及び移動手すり駆動装置の近傍を示す側面図である。
図3】本発明に係る乗客コンベアのシステム構成を示すブロック図である。
図4】本発明に係る乗客コンベアの動作のフローチャートである。
図5】移動手すりの移動方向に垂直な断面(幅方向断面)を示す図である。
図6A】除菌装置を示す図であり、移動手すりの移動方向に垂直な断面(幅方向断面)を示す図である。
図6B】除菌装置を示す図であり、移動手すりの幅方向に垂直な断面(移動方向断面)を示す図である。
図7】除菌装置の駆動回路の構成を示す断面図である。
図8A】定格速度運転時の除菌装置10A,10B,10Cの点灯状態を示す図である。
図8B】低速度運転時の除菌装置の点灯状態を示す図である。
図8C】停止時の除菌装置の点灯状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る乗客コンベアの一実施例について説明する。
【0011】
本実施例の乗客コンベアには、異なる階床間に設置されるエスカレーターや、水平或いは緩やかな傾斜角度を有して設置される動く歩道が含まれる。エスカレーターと動く歩道とでは、構成部品の呼び方に若干の差異がある。例えば、エスカレーターの「踏段」は、動く歩道においては「パレット」と呼ばれる。本実施例では、エスカレーターの「踏段」と動く歩道の「パレット」とを含めて、「踏板」と呼んで説明する。
【0012】
以下では、乗客コンベアの一例としてエスカレーターについて説明する。踏板以外の構成部品において、エスカレーターと動く歩道との間で構成部品の呼称に差異がある場合は、エスカレーターにおける呼称を採用して説明する。
【0013】
図1及び図2を参照して、本実施例に係る乗客コンベア100の構成について説明する。図1は、本発明に係る乗客コンベア100の一実施例の構造の概略を示す側面図である。図2は、本発明に係る乗客コンベア100の踏板駆動装置及び移動手すり駆動装置12の近傍を示す側面図である。
【0014】
図1において、乗客コンベア100には、無端状に連結され2つの乗降口140,150の間を循環駆動される複数の踏板101が設けられる。踏板101の側方(左右両側)に配置されて循環駆動される移動手すり102が設けられる。移動手すり102は踏板101の側方(左右両側)に配置された欄干103に支持される。すなわち移動手すり102は、踏板101の進行方向に向かって、踏板101の左側に配置される左側移動手すり102Lと、踏板101の右側に配置される右側移動手すり102Rと、を有する(図3参照)。欄干103は踏板101の左右両側に配設されたスカートガード116に立設される。乗客が利用する際には、踏板101と移動手すり102とは同期して移動する。
【0015】
踏板101の移動方向(走行方向)において、乗客コンベア100の両端部には、乗降口140,150が設けられる。乗降口140,150の下方には、踏板101や移動手すり102を駆動するための装置が収容されており、その上方を乗降口床板104,105が覆っている。下降運転時には、踏板101及び移動手すり102は移動通路に露出した状態で乗降口140から乗降口150へ移動する。この場合、乗降口140は乗り口となり、乗降口50は降り口となる。上昇運転時には、踏板101及び移動手すり102は移動通路に露出した状態で乗降口150から乗降口140へ移動する。この場合、乗降口150は乗り口となり、乗降口140は降り口となる。
【0016】
なお、本実施例では、エスカレーターを例にとって乗客コンベア100を説明しているため、乗降口140は上部乗降口として構成され、乗降口150は下部乗降口として構成される。また移動手すり102においては、乗客の移動通路に露出した状態で移動する側を往き側移動手すり102Aと呼び、スカートガード116の内部に隠れて移動する側を返り側移動手すり102Bと呼ぶことにする。なお図1では、返り側移動手すり102Bは破線で示されている。
【0017】
また、踏板101を無端状に連結するチェーン106は、スプロケット107,108に巻き掛けられている。さらに、乗降口床板104の下部には、踏板用モータ109及び減速機110を有してなる踏板駆動装置111が設けられている。踏板駆動装置111は、駆動チェーン112を介してスプロケット108を駆動し、チェーン106及び踏板101を駆動する。
【0018】
踏板101の速度は、踏板速度検出装置101a(図2参照)によって常に監視されている。踏板速度検出装置101aは、例えば、減速機110の軸に取り付けたロータリエンコーダによって構成することができる。踏板速度検出装置101aによって検出された踏板101の速度情報は、制御装置(制御部)113に送られる。
【0019】
図2に示すように、移動手すり用モータ114を含む移動手すり駆動装置115が設けられており、移動手すり用モータ114を駆動して移動手すり駆動装置115により移動手すり102を駆動する。本実施例では、移動手すり用モータ114は踏板用モータ109とは別に設けられている。
【0020】
移動手すり駆動装置115は、移動手すり用モータ114と、減速機115aと、移動手すり駆動チェーン115bと、移動手すり駆動ローラ115cと、圧着ロ-ラ115dとを備えている。移動手すり駆動ローラ15cと圧着ロ-ラ15dとは移動手すり102を挟んで対向配置されている。移動手すり用モータ114による駆動力は、減速機115aおよび移動手すり駆動チェーン115bを介して、移動手すり駆動ローラ115cに伝達される。移動手すり102は移動手すり駆動ローラ115cからの駆動力を受けて駆動される。
【0021】
移動手すり102の速度は移動手すり速度検出装置102aにより常に監視されている。移動手すり速度検出装置102aは、例えば、移動手すり駆動装置115と隣接した位置に設置され、移動手すり102と接触したローラとエンコーダで構成される。ローラの回転速度(回転数)を検出することにより、移動手すり102の速度を検出する。移動手すり速度検出装置102aにより検出された移動手すり102の速度情報は制御装置113(図1参照)に送られる。
【0022】
乗降口140,150のスカートガード116部には、乗客コンベア100の運転状況を表示する表示装置118A,118Bが設けられている。表示装置118A,118Bは、後述する報知装置(報知部)25の一部を構成する。
【0023】
乗客コンベア100の制御装置113は、踏板速度検出装置101a及び移動手すり速度検出装置102aで検出される踏板速度及び移動手すり速度に基づいて、踏板駆動装置111及び移動手すり駆動装置115を用いて、踏板101及び移動手すり102の駆動を制御する。
【0024】
図1に示すように、本実施例の乗客コンベア100は、移動手すり102を除菌する除菌装置10を備える。除菌装置10は、移動手すり102の移動経路のうち、返り側(移動手すり102B)で行う。このために除菌装置10は、スカートガード116の内側に配置される。
【0025】
図2に示すように、返り側移動手すり102Bは、移動手すり駆動装置115や移動手すり速度検出装置102aの部分で、各装置により、除菌装置10の配置に制約を受ける。このため除菌装置10は、移動手すり駆動装置115や移動手すり速度検出装置102aとの干渉を避けて配置される。
【0026】
「除菌」はウィルスを対象外とする考え方もあるが、本明細書において、「除菌」はその対象からウィルスを排除するものではない。除菌装置10は、深紫外線(UV-C)を移動手すり102に照射する深紫外線LED11Aa,11Ba(図4A参照)を備える。本実施例は、光源を、深紫外線を発光するものに限定する訳ではなく、除菌のために移動手すり102に光を照射する除菌装置において有効である。そして本実施例の除菌装置10においては、ウィルスに対して深紫外線の波長、強度および照射時間を適切に設定することにより、ウィルスの不活化を可能にすることが好ましい。
【0027】
次に、図3を参照して、乗客コンベア100のシステム構成について説明する。図3は、本発明に係る乗客コンベア100のシステム構成を示すブロック図である。
【0028】
本実施例における乗客コンベア100は、乗客検出装置117A,117Bと、制御装置113と、踏板駆動装置111と、移動手すり駆動装置115と、踏板速度検出装置101aと、移動手すり速度検出装置102aと、踏板101と、移動手すり102(左側移動手すり102L、右側移動手すり102R)とで、システムを構成している。乗客検出装置117A,117Bにおいて、117Aは上部乗降口40に設けられる乗客検出装置であり、117Bは下部乗降口50に設けられる乗客検出装置である。制御装置113は、乗客あり/なし判定部119と、運転制御部120と、踏板用インバータ121と、移動手すり用インバータ122と、を備え、踏板101と移動手すり102の駆動を制御する。
【0029】
乗客あり/なし判定部119には、上部乗降口40に設けられた乗客検出装置117Aからの検出信号と、下部乗降口50に設けられた乗客検出装置117Bからの検出信号とが入力され、乗客あり/なし判定部119は乗客検出装置117A,117Bからの検出信号に基づいて、乗客の有無を判定する。この判定結果は、運転制御部120に入力される。
【0030】
運転制御部120には、踏板速度検出装置101aからの検出信号と、移動手すり速度検出装置102aからの検出信号とが入力され、運転制御部120は踏板用インバータ121及び移動手すり用インバータ122に対して運転/停止指令および加速/減速指令を出力する。また、運転制御部120には乗客あり/なし判定部119の判定結果が入力されており、この判定結果に基づいて、運転制御部120は後述するように通常運転状態(通常運転モード)と待機運転状態(待機運転モード)とを切り替え、各運転状態に対応する速度指令を踏板用インバータ121及び移動手すり用インバータ122に対して出力する。
【0031】
踏板用インバータ121は、運転制御部120からの指令に基づいて、踏板用モータ109に駆動電力(運転出力)を供給する。移動手すり用インバータ122は、運転制御部120からの指令に基づいて、移動手すり用モータ114に駆動電力(運転出力)を供給する。
【0032】
踏板用モータ109は踏板駆動装置111を駆動して踏板101を駆動する。移動手すり用モータ114は移動手すり駆動装置115を駆動して移動手すり102L,102Rを駆動する。踏板用モータ109と移動手すり用モータ114は、踏板用インバータ121と移動手すり用インバータ122とによるインバータ制御を用いて、踏板101および移動手すり102L,102Rの運転速度、加速度および減速度を制御する。乗客が利用中の通常運転状態では、移動手すり102L,102Rは、踏板101の速度と同じ速度で移動するように、制御装置113で駆動される。すなわち、移動手すり102L,102Rは踏板101と同期して駆動される。以下、乗客が利用中の踏板101及び移動手すり102L,102Rの速度のことを通常運転速度(定格運転速度)という。
【0033】
制御装置113の構成のうち、運転制御部120および乗客あり/なし判定部119は、CPU、メモリ、入出力回路及びタイマー回路などを集積回路に収めたマイコンにより、構成することができる。
【0034】
図3では、移動手すり用インバータ122及び移動手すり用モータ114は左側移動手すり102L及び右側移動手すり102Rを駆動するように構成されている。左側移動手すり102Lに対して独立した移動手すり用インバータ122及び移動手すり用モータ114を設け、右側移動手すり102Rに対して独立した移動手すり用インバータ122及び移動手すり用モータ114を設けてもよい。
【0035】
本実施例では、乗客コンベア100が通常運転状態、かつ、乗客検出装置117A,117Bにより所定時間、乗客が検出されない場合は、制御装置113は運転状態を通常運転状態から待機運転状態に切り替える。乗客コンベア100が待機運転状態、かつ、乗り口側の乗客検出装置117Aにより乗客が検出された場合は、制御装置113は待機運転状態から通常運転状態に運転状態を切り替える。降り口側の乗客検出装置117Bにより乗客が検出された場合、すなわち運転方向に対し逆方向からの乗客の進入が検出された場合は、制御装置113は報知装置25から警報を発生する指令を出す。
【0036】
以下、図4を参照して、本実施例に係る乗客コンベアの動作について、詳細に説明する。図4は本発明に係る乗客コンベア100の動作のフローチャートである。
【0037】
処理ステップS1において処理を開始する。処理ステップS2において、乗客コンベア100は待機運転状態(待機運転モード)にある。この待機運転状態では、乗り口側の乗客検出装置117Aの検出信号が制御装置113に入力され、乗客あり/なし判定部119により乗客の有無を判定する(処理ステップS3)。乗客あり/なし判定部119により乗客なしと判定した場合(NOの場合)は、処理ステップS2の待機運転状態が継続される。待機運転状態では、運転制御部120により踏板用インバータ121に停止指令を出力し、踏板101を停止状態とする。また、待機運転状態では、運転制御部120により移動手すり用インバータ122に減速指令を出力し、移動手すり102L,102Rを低速度待機運転状態とする。低速度待機運転状態では、移動手すり102L,102Rは通常運転状態(通常運転モード)における移動速度(通常運転速度)に対して遅い速度(減速した速度)で駆動される。この減速した速度を待機運転速度と呼ぶことにする。
【0038】
すなわち本実施例では、移動手すり102L,102Rは、通常運転速度で運転される状態と、通常運転速度を定格速度とした場合に、定格速度に対して低速度で運転される状態と、を有する。
【0039】
処理ステップS3において、乗客あり/なし判定部119により乗り口側からの乗客ありと判定した場合は、処理ステップS4において、運転制御部120から踏板用インバータ121に通常運転速度の運転指令を出力して、踏板101の運転を開始する。次に、処理ステップS4に進み、踏板101を通常運転速度の運転状態とする。また、運転制御部120から移動手すり用インバータ122に通常運転速度への加速指令を出力し、移動手すり102L,102Rを加速する。これにより、移動手すり102L,102Rを通常運転速度の運転状態とする。これにより踏板101および移動手すり102L,102Rを同期した運転状態とする。
【0040】
処理ステップS3において、乗客あり/なし判定部119により乗り口側からの乗客ありと判定した後に、踏板101および移動手すり102L,102Rを通常運転速度にて同期した運転状態とし、乗り口側の乗客検出装置117Aによって乗客が検出されないまま、最後の乗客検出から乗客利用時間が経過した場合は、処理ステップS6で乗客あり/なし判定部119により乗客なしと判定し、処理ステップS7に進む。ここで、「乗客利用時間」とは、乗客が乗り口側の乗客検出装置117Aにより検出された時点から、乗客コンベアに乗り込み、乗客コンベアから降りるまでに要する時間として設定された時間である。
【0041】
処理ステップS7では、運転制御部120により踏板用インバータ121に停止指令を出力し、踏板101を停止状態とする。また、運転制御部120により移動手すり用インバータ122に減速指令を出力し、移動手すり102L,102Rを低速度待機運転状態とする。
【0042】
本実施例の乗客コンベア100では、必要に応じて、踏板101および移動手すり102L,102Rを停止状態とする。例えば、長時間に亘って利用客が無い場合や、時間帯によって、制御装置113は低速度待機運転の形態を切り換える。
【0043】
本実施例では、待機運転状態において、踏板101が停止状態となり、移動手すり102L,102Rが低速度待機運転状態となる。これにより、踏板101の駆動分の電力を不要にし、移動手すり102L,102Rの駆動電力を削減することができる。
【0044】
また、低速度待機運転状態では、移動手すり102L,102Rが低速度待機運転状態で駆動されていることにより、乗客コンベア100の利用客は、乗客コンベアが利用可能か否かを、また乗客コンベアの運転方向を知ることができる。
【0045】
除菌装置10の説明を行う前に、図5を参照して、移動手すり102について説明する。図5は、移動手すり102の移動方向に垂直な断面(幅方向断面)を示す図である。
【0046】
図5において、左右方向を「幅方向」、上下方向をそのまま「上下方向」、と定義する。なお上下方向においては、往き側(往き側移動手すり102A)と返り側(移動手すり102B)とで、上下が逆転する。
【0047】
移動手すり102は、図5に示す状態を基準として、上面102T、下面102Ua,102Ubおよび側面102Sa,102Sbが定義される。上面102Tおよび下面102Ua,102Ubは、幅方向断面において、幅方向に沿い、且つ直線状を成す面である。側面102Sa,102Sbは、上面102Tと下面102Ua,102Ubとの間を接続する面であり、幅方向断面において円弧等の曲線を成す面である。ここで、上面102T、下面102Ua,102Ubおよび側面102Sa,102Sbは、移動手すり102の表側(外側または外周側)の面である。
【0048】
図3は、往き側(往き側移動手すり102A)の状態を示しており、返り側(移動手すり102B)では、上面102Tが下面102Ua,102Ubに対して下方に位置する状態となる。
【0049】
次に、図6Aを参照して、本実施例の除菌装置10について説明する。図6Aは、除菌装置10を示す図であり、移動手すり102の移動方向に垂直な断面(幅方向断面)を示す図である。図6Bは、除菌装置10を示す図であり、移動手すり102の幅方向に垂直な断面(移動方向断面)を示す図である。なお、図6A図6BのVIA―VIA断面を示しており、図6B図6AのVIB―VIB断面を示している。
【0050】
除菌装置10は、返り側移動手すり102Bに対して配置されるため、図6Aおよび図6Bの図面上における上下方向は、除菌装置10の実装状態における上下方向とは、上下が逆になる。
【0051】
乗客は、乗客コンベア100に乗る際、移動手すり102の上面102Tに手を載せる。そして乗客は、移動手すり102を掴む場合、上面102Tのほか、側面102Sa,102Sbに触れる。このため、移動手すり102の除菌を行う場合、上面102Tだけでなく、側面102S1,102S2も除菌することが好ましい。
【0052】
このために本実施例の除菌装置10は、紫外線を発光する紫外線発光部11Aa,11Baと、紫外線を反射する反射面13Aと、を備える。紫外線発光部11Aa,11Baは、移動手すり102の上面102Tと対向する位置に配置される。反射面13Aは、移動手すり102の側方に配置され、移動手すり102の側面102Sa,102Sbと対向する。以下、詳細に説明する。
【0053】
除菌装置10は、光源となる複数の発光部(発光素子)11Aa,11Baを備える。本実施例では、発光部11Aa,11Baは紫外線を発光する紫外線発光部で構成される。この場合、紫外線発光部11Aa,11Baは、深紫外線を発光する深紫外線LEDで構成されるとよい。複数の紫外線発光部11Aa,11Baはそれぞれ光源格納部11A,11Bに格納される。光源格納部11A,11Bは光源モジュール(深紫外線LEDモジュール)を構成する。
【0054】
本実施例では、2つの紫外線発光部11Aa,11Baを有する例を示しており、2つの紫外線発光部11Aa,11Baは2つの光源格納部11A,11Bに別々に格納されている。紫外線発光部の個数は1つ又は3つ以上であってもよい。
【0055】
除菌装置10は、紫外線発光部11Aa,11Baを支持する支持体13を備える。紫外線発光部11Aa,11Baは、光源格納部11A,11Bに格納されて、支持体13に支持される。このために支持体13の一側面(第1側面部)には、光源格納部11A,11Bを支持する支持面13-1が設けられている。支持体13の支持面13-1には、紫外線発光部11Aa,11Baのドライバ(図示せず)も支持されている。
【0056】
支持体13には、紫外線発光部11Aa,11Baを駆動するドライバ(LEDドライバ)17も支持されている。本実施例では、2つの紫外線発光部11Aa,11Baは、移動手すり102の幅方向に沿って配置され、LEDドライバ17は2つの紫外線発光部11Aa,11Baに対して移動方向前側または移動方向後側に配置されている。なお、LEDドライバ17は、複数の紫外線発光部11Aa,11Ba毎に設けられ、各光源格納部11A,11Bに格納される構成であってもよい。
【0057】
支持体13は、支持面13-1から移動手すり102の側方に延設される第2側面部13-2aおよび第3側面部13-2bを備える。第2側面部13-2aおよび第3側面部13-2bは、紫外線発光部11Aa,11Baから照射される紫外線(深紫外線)を反射する反射部材を構成する。
【0058】
紫外線発光部11Aa,11Baから移動手すり102に照射される紫外線UVは、移動手すり102の上面102Tと側面102Sa,102Sbの一部とに直接照射される紫外線と、第2側面部13-2aおよび第3側面部13-2bで反射された後に移動手すり102の側面102Sa,102Sbに照射される紫外線と、を含む。
【0059】
第2側面部13-2aおよび第3側面部13-2bには、それぞれ紫外線強度検出器(紫外線強度検出部)15a,15bが配置される。紫外線発光部11Aa,11Baから照射される紫外線UVは、紫外線強度検出器15,15bに入射し、紫外線強度検出器15a,15bで紫外線(深紫外線)の強度が測定される。紫外線強度検出器15a,15bで検出された紫外線の強度情報は制御装置113に送られ、制御装置113はLEDドライバ17を制御して紫外線発光部11Aa,11Baから照射される紫外線の強度(照度)を調整または制御する。
【0060】
本実施例では、制御装置113がLEDドライバ17、すなわち除菌装置10の制御部を構成するが、除菌装置10の制御部は制御装置113とは別に設けられてもよい。
【0061】
次に、図7を参照して、除菌装置10の駆動回路の構成について説明する。図7は、除菌装置10の駆動回路の構成を示す断面図である。
【0062】
本実施例では、左側の移動手すり102Lと右側の移動手すり102Rのそれぞれの除菌装置10は、3個の除菌装置10A,10B,10Cで構成されている。
【0063】
制御装置113は100Vの交流電圧(AC100V)を出力する。100Vの交流電圧は、自動電圧調整器(AVR)22により、24Vの直流電圧に調整される。24Vの直流電圧を供給する電源線113A(DC24V,0V)は、3つの除菌装置10A,10B,10Cのために3系統が設けられ、スイッチング部21に接続される。
【0064】
スイッチング部21は、制御装置113からの指令により、3系統の電源線113Aを任意にON/OFFすることができる。スイッチング部21からは3系統の電源線113Bが出力され、各系統の電源線113Bはそれぞれ3つの除菌装置10A,10B,10Cに接続される。
【0065】
自動電圧調整器(AVR)22はLEDドライバ17(図6B参照)に設けられるとよい。この場合、図6Bでは、LEDドライバ17は各除菌装置10に個別に設ける例を示しているが、図7で2つの除菌装置10に対する自動電圧調整器22を1つにまとめているように、複数のLEDドライバ17を1つにまとめてもよい。
【0066】
左側の移動手すり102Lと右側の移動手すり102Rとは、基本的に同じ速度で運転される。従って、左側の移動手すり102Lと右側の移動手すり102Rとにおいて、3個の除菌装置10A,10B,10Cは同じようにON/OFFされればよい。そのため、左側の移動手すり102Lの除菌装置10Aと右側の移動手すり102Rの除菌装置10Aとは同じスイッチでON/OFFされ、左側の移動手すり102Lの除菌装置10Bと右側の移動手すり102Rの除菌装置10Bとは同じスイッチでON/OFFされ、左側の移動手すり102Lの除菌装置10Cと右側の移動手すり102Rの除菌装置10Cとは同じスイッチでON/OFFされる。
【0067】
言い換えれば、左側の移動手すり102Lの除菌装置10AのON/OFFと右側の移動手すり102Rの除菌装置10AのON/OFFとは同期して行われ、左側の移動手すり102Lの除菌装置10BのON/OFFと右側の移動手すり102Rの除菌装置10BのON/OFFとは同期して行われ、左側の移動手すり102Lの除菌装置10CのON/OFFと右側の移動手すり102Rの除菌装置10CのON/OFFとは同期して行われる。
【0068】
次に、図8図8A図8Bおよび図8C)を参照して、除菌装置10の動作について説明する。
【0069】
除菌の効果は、紫外線の照射量(紫外線強度(照度)および照射時間)によって、影響を受ける。紫外線の照射量が十分でないと、除菌の効果は低減し、十分な除菌効果が得られなくなる。一方、移動手すり102L,102Rは、上述した様に、通常運転速度で運転される状態と、低速度で運転される状態と、を有し、異なる速度で運転される。このため、除菌装置10の紫外線発光部11Aa,11Baを常時同じ発光強度で発光させると、通常運転時と低速度運転時とで移動手すり102L,102Rに対する紫外線の照射量に過不足が生じる。定格速度運転時には、移動手すり102L,102Rは除菌装置10を速く通過するため、紫外線を浴びる時間は短くなる。一方、低速度運転時には、移動手すり102L,102Rは除菌装置10をゆっくり通過するため、紫外線を浴びる時間は長くなる。
【0070】
照射量の不足は上述した様に除菌効果の低減を招く。これを防ぐため、紫外線発光部11Aa,11Baの発光強度を強くして、定格速度運転時に移動手すり102L,102Rが十分な照射量を得られるようにすると、低速度運転時には移動手すり102L,102Rが浴びる紫外線量が増え過ぎる。移動手すり102L,102Rには樹脂材が用いられるため、移動手すり102L,102Rが浴びる紫外線量が増え過ぎると、移動手すり102L,102Rの劣化を速めることになる。
【0071】
また、紫外線発光部11Aa,11Baの発光強度を強くすることは、紫外線発光部11Aa,11Baの劣化を速めることになる。このため、紫外線発光部11Aa,11Baの寿命を長くするには、発光強度を弱めることが好ましい。
【0072】
本実施例では、移動手すり102L,102Rに対する紫外線の照射量の過不足を抑制するため、定格速度運転時と低速度運転時とで移動手すり102L,102Rが浴びる紫外線の量が均一化されるように、点灯される除菌装置10A,10B,10Cの個数を変化させて、除菌装置10A,10B,10Cにおける単位時間当たりの紫外線発光量を変化させる。または、点灯される除菌装置10A,10B,10Cの紫外線発光部11Aa,11Baの発光強度をかえることにより、除菌装置10A,10B,10Cにおける単位時間当たりの紫外線発光量を変化させる。
【0073】
本実施例では、図6Aに示すように、1つの除菌装置に2つの紫外線発光部11Aa,11Baを設け、図7に示すように、3個の除菌装置10A,10B,10C毎に紫外線発光部11Aa,11Baの点灯/消灯を切り換えている。この場合、2つの紫外線発光部11Aa,11Baが3セット設けられ、計6個の紫外線発光部が設けられる。そして制御装置113は、6個の紫外線発光部の点灯/消灯を切り換えることにより、6個の紫外線発光部における単位時間当たりの紫外線発光量を制御していると見なすこともできる。
【0074】
図7及び図8に図示した制御装置113は、除菌部10による移動手すり102に対する紫外線の照射を制御する紫外線照射制御部と、移動手すり102の移動速度を制御する移動手すり速度制御部と、を兼ねる。しかし、紫外線照射制御部と移動手すり速度制御部とは、別々の制御部として構成されてもよい。
【0075】
図8Aは、定格速度運転時の除菌装置10A,10B,10Cの点灯状態を示す図である。本実施例では、移動手すり102L,102Rの定格速度運転時の速度は30m/min、低速度運転時の速度は10m/minとする。定格速度運転時の速度を第1速度とし、低速度運転時の速度を第2速度とすると、第2速度は第1速度よりも低速度かつゼロよりも大きな速度である。
【0076】
除菌装置(除菌部)は3個の除菌装置10A,10B,10Cを備える。すなわち、除菌部10A,10B,10Cは、第1速度を第2速度で除した商に相当する数(本実施例では3組)の紫外線発光部11Aa,11Baを備える。すなわち、1つの除菌装置10A(又は10B、又は10C)の2つの紫外線発光部11Aa,11Baを1組(1個)として、3組(3個)の紫外線発光部11Aa,11Baを備える。
【0077】
定格速度運転時には、3個の除菌装置10A,10B,10Cを点灯する。この場合、図7のスイッチング部21の3個のスイッチの全てがONされる。
【0078】
図8Bは、低速度運転時の除菌装置10A,10B,10Cの点灯状態を示す図である。低速度運転時には、3個の除菌装置10A,10B,10Cのうち、1つの除菌装置10Aを点灯する。この場合、図7のスイッチング部21の3個のスイッチのうち、除菌装置10AのスイッチがONされる。すなわち、除菌装置(除菌部)10は、紫外線発光部11Aa,11Baを複数備える構成であって、制御部(紫外線照射制御部)113は、定格速度(第1速度)における紫外線発光部11Aa,11Baの点灯数が、低速度運転時の速度(第2速度)における紫外線発光部11Aa,11Baの点灯数よりも多くなるように、紫外線発光部11Aa,11Baを制御する。
【0079】
さらに具体的には、除菌装置(除菌部)10は、紫外線発光部11Aa,11Baを3個(3組)備える構成であって、制御部(紫外線照射制御部)は、第1速度において3個(3組)の紫外線発光部11Aa,11Baを点灯し、第2速度において1個(1組)の紫外線発光部11Aa,11Baを点灯するように、紫外線発光部11Aa,11Baを制御する。
【0080】
これにより、定格速度運転時における除菌装置10A,10B,10Cの単位時間当たりの紫外線発光量が、低速度運転時における除菌装置10A,10B,10Cの単位時間当たりの紫外線発光量よりも多くなり、定格速度運転時に移動手すり102L,102Rが浴びる紫外線量と、低速度運転時に移動手すり102L,102Rが浴びる紫外線量とが、均一化される。
【0081】
低速度運転時に移動手すり102L,102Rが浴びる紫外線量と、定格速度運転時に移動手すり102L,102Rが浴びる紫外線量とは、必ずしも一致させる必要はないが、できる限り近づけることで、移動手すり102L,102Rが浴びる紫外線量の過不足を減らすことができる。
【0082】
低速度運転時には、3個の除菌装置10A,10B,10Cのうち、2つの除菌装置を点灯するようにしてもよい。
【0083】
すなわち、制御部(紫外線照射制御部)113は、紫外線発光部11Aa,11Baを3個(3組)備える構成であって、制御部(紫外線照射制御部)113は、定格速度(第1速度)において3個(3組)の紫外線発光部11Aa,11Baを点灯し、低速度運転時の速度(第2速度)において2個(2組)の紫外線発光部11Aa,11Baを点灯する。さらに、制御部(紫外線照射制御部)113は、第2速度において2個(2組)の紫外線発光部11Aa,11Baを点灯する際に、当該2個(2組)の紫外線発光部11Aa,11Baの発光強度を、第1速度において点灯する際の発光強度よりも小さくするように制御する。
【0084】
この場合、点灯させる2つの除菌装置の発光強度を定格速度運転時の発光強度と同じにすると、低速度運転時に移動手すり102L,102Rが浴びる紫外線量が増え過ぎる。そこで、2つの除菌装置の発光強度を定格速度運転時の発光強度よりも小さくすることにより、紫外線発光部11Aa,11Baの寿命を延ばすことができる。
【0085】
低速度運転時に常に同じ除菌装置を点灯させるのではなく、低速度運転に移行する際に、前回の低速度運転時に点灯させた除菌装置10A,10B,10Cとは異なる除菌装置10A,10B,10Cを点灯させるようにするとよい。すなわち、制御部(紫外線照射制御部)113は、定格速度(第1速度)から低速度運転時の速度(第2速度)に移行する際に、前回の第2速度時に点灯させた紫外線発光部11Aa,11Baとは異なる紫外線発光部11Aa,11Baを点灯させるよう制御するとよい。
【0086】
これにより、除菌装置10A,10B,10Cの駆動時間を均一化し、除菌装置10A,10B,10Cの寿命を延ばすことができる。
【0087】
或いは、制御装置113にタイマー113Tおよびメモリ113Mを設け、3個の除菌装置10A,10B,10Cの点灯時間を計測・記憶し、各除菌装置10A,10B,10Cの点灯時間を管理するとよい。すなわち、紫外線発光部11Aa,11Baの点灯時間を計測するタイマー113Tと、タイマー113Tで計測した紫外線発光部11Aa,11Baの点灯時間を記憶するメモリ113Mとを備え、制御部(紫外線照射制御部)113は、複数の紫外線発光部11Aa,11Baの間で、点灯時間が等しくなるように、紫外線発光部11Aa,11Baの点灯を切り換えるようにするとよい。
【0088】
これにより、3個の除菌装置10A,10B,10Cの駆動時間を均一化し、3個の除菌装置10A,10B,10Cの寿命を均等に延ばすことができる。
【0089】
図8Cは、停止時の除菌装置10A,10B,10Cの点灯状態を示す図である。移動手すり102L,102Rの停止時に、3個の除菌装置10A,10B,10Cのうち1つでも点灯させておくと、移動手すり102L,102Rの同じ個所が紫外線を浴び続けることになり、移動手すり102L,102Rの劣化を速めることになる。このため、移動手すり102L,102Rの停止時には、3個の除菌装置10A,10B,10Cの全てを消灯状態にする。この場合、図7のスイッチング部21の3個のスイッチの全てがOFFされる。
【0090】
移動手すり102L,102Rが浴びる紫外線量を均一化するためには、複数の除菌装置の点灯/消灯を切り換えるだけでなく、1つまたは複数の除菌装置において、紫外線発光部11Aa,11Baの発光強度を変化させてもよい。すなわち、制御部(紫外線照射制御部)113は、定格速度(第1速度)における紫外線発光部11Aa,11Baの発光強度が、低速度運転時の速度(第2速度)における紫外線発光部11Aa,11Baの発光強度よりも強くなるように、紫外線発光部11Aa,11Baを制御する。
【0091】
これによっても、定格速度運転時における除菌装置10A,10B,10Cの単位時間当たりの紫外線発光量は、低速度運転時における除菌装置10A,10B,10Cの単位時間当たりの紫外線発光量よりも多くなる。
【0092】
本実施例では、自動電圧調整器22(図7参照)の出力電圧を24Vの直流電圧に調整しているが、この出力電圧を変化させることにより、紫外線発光部11Aa,11Baの発光強度を変化させることができる。
【0093】
上述した実施例は、下記構成を有する。
循環駆動される踏板101と、踏板101の側方に配置されて循環駆動される移動手すり102と、紫外線を発光する紫外線発光部11Aa,11Baを有し移動手すり102に紫外線を照射して移動手すり102を除菌する除菌部10と、除菌部10による移動手すり102に対する紫外線の照射を制御する紫外線照射制御部113と、移動手すり102の移動速度を制御する移動手すり速度制御部113と、を備えた乗客コンベア100において、
移動手すり速度制御部113は、移動手すりの移動速度を、第1速度(定格速度運転時の速度)と、第1速度よりも低速度かつゼロよりも大きな第2速度(低速度運転時の速度)と、に切り換え、
紫外線照射制御部113は、第1速度における紫外線発光部11Aa,11Baの単位時間当たりの紫外線発光量が、第2速度における紫外線発光部11Aa,11Baの単位時間当たりの紫外線発光量よりも多くなるように、紫外線発光部11Aa,11Baを制御する。
【0094】
これにより、本実施例は、移動手すり102L,102Rの停止中を除いて、移動手すり102L,102Rの除菌を行うことができ、乗客には常時、除菌された移動手すり102L,102Rを提供することができる。また、移動手すり102の一周当たりの紫外線による除菌効果、および劣化は乗客コンベア100の速度によらず一定となる。
【0095】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0096】
10…除菌部(除菌装置)、11Aa,11Ba…紫外線発光部、100…乗客コンベア、101…踏板、102…移動手すり、113…制御部(紫外線照射制御部、移動手すり速度制御部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C