IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特許7403684回転機械の監視装置、監視プログラム及び監視方法並びに回転機械設備
<>
  • 特許-回転機械の監視装置、監視プログラム及び監視方法並びに回転機械設備 図1
  • 特許-回転機械の監視装置、監視プログラム及び監視方法並びに回転機械設備 図2
  • 特許-回転機械の監視装置、監視プログラム及び監視方法並びに回転機械設備 図3A
  • 特許-回転機械の監視装置、監視プログラム及び監視方法並びに回転機械設備 図3B
  • 特許-回転機械の監視装置、監視プログラム及び監視方法並びに回転機械設備 図4
  • 特許-回転機械の監視装置、監視プログラム及び監視方法並びに回転機械設備 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】回転機械の監視装置、監視プログラム及び監視方法並びに回転機械設備
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/00 20060101AFI20231215BHJP
   F01D 21/04 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
F01D25/00 V
F01D25/00 W
F01D21/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022561892
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2021040927
(87)【国際公開番号】W WO2022102556
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2020186961
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】山口 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 雄久
(72)【発明者】
【氏名】中野 隆
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-040795(JP,A)
【文献】特開2000-027606(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0069683(US,A1)
【文献】特開2016-169631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00
F01D 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部および静止部を収容する車室を含む回転機械のクリアランスを監視するための監視装置であって、
前記車室外に設けられ、前記回転部に対する前記車室の径方向における相対位置を検出するための少なくとも1つの位置センサと、
前記少なくとも1つの位置センサによって検出された計測値に基づいて、前記車室内における前記回転部と前記静止部との間の内部クリアランスの予測値を得るように構成された予測部と、
を備え
前記少なくとも1つの位置センサは、前記車室又は前記車室に取り付けられる部材に支持されるとともに、前記少なくとも1つの位置センサと、前記少なくとも1つの位置センサに対向する前記回転部との径方向における距離を検出するように構成された
回転機械の監視装置。
【請求項2】
前記回転機械は、前記車室の軸方向における端部に設けられるアウターグランド部を含み、
前記位置センサは、前記アウターグランド部に支持される
請求項1に記載の回転機械の監視装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの位置センサは、軸方向にて前記車室の両側に設けられる一対の位置センサを含む
請求項1又は2に記載の回転機械の監視装置。
【請求項4】
前記予測部は、前記回転機械の状態を示す状態量、及び、前記位置センサにより得られる前記計測値に基づいて、前記内部クリアランスの前記予測値を算出するように構成された
請求項1乃至3の何れか一項に記載の回転機械の監視装置。
【請求項5】
前記予測部は、前記回転機械の状態を示す状態量、及び、前記位置センサにより得られる前記計測値を入力とする予測モデルを用いて、前記内部クリアランスの前記予測値を算出するように構成された
請求項1乃至3の何れか一項に記載の回転機械の監視装置。
【請求項6】
前記予測部は、前記回転機械の状態を示す状態量から前記内部クリアランスの暫定予測値及び前記相対位置の暫定予測値を算出し、前記位置センサにより得られる前記計測値と前記相対位置の前記暫定予測値との差分を前記内部クリアランスの前記暫定予測値に加算することで、前記内部クリアランスの前記予測値を取得するように構成された
請求項4又は5に記載の回転機械の監視装置。
【請求項7】
前記内部クリアランスの前記予測値に基づいて、前記車室の形状又は位置の変更要否を判定するように構成された判定部を備える
請求項1乃至6の何れか一項に記載の回転機械の監視装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの位置センサは、前記車室の軸方向端面に支持されるとともに、軸方向における前記車室の外側の位置にて、前記少なくとも1つの位置センサと、前記少なくとも1つの位置センサに対向する前記回転部との径方向における前記距離を検出するように構成された
請求項1乃至7の何れか一項に記載の回転機械の監視装置。
【請求項9】
回転部および静止部を収容する車室を含む回転機械と、
前記回転機械のクリアランスを監視するための請求項1乃至の何れか一項に記載の監視装置と、
を備える回転機械設備。
【請求項10】
前記監視装置は、前記内部クリアランスの前記予測値に基づいて、前記車室の形状又は位置の変更要否を判定するように構成された判定部を含み、
前記判定部により前記車室の形状又は位置の変更が必要であると判断されたとき、前記内部クリアランスが規定範囲内となるように、前記車室の形状又は位置を変更するように構成された制御部を備える
請求項に記載の回転機械設備。
【請求項11】
前記制御部は、前記内部クリアランスが規定範囲内となるように、前記車室又は前記車室を支持する車室支持部の少なくとも一部を加温又は冷却するための温度調節部を制御するように構成された
請求項10に記載の回転機械設備。
【請求項12】
回転部および静止部を収容する車室を含む回転機械のクリアランスを監視するための監視プログラムであって、
コンピュータに、
前記車室外に設けられた位置センサにより検出された、前記回転部に対する前記車室の径方向における相対位置の計測値を示す信号を受け取る手順と、
前記計測値に基づいて、前記車室内における前記回転部と前記静止部との間の内部クリアランスの予測値を得る手順と、
を実行させるように構成され、
前記少なくとも1つの位置センサは、前記車室又は前記車室に取り付けられる部材に支持されるとともに、前記少なくとも1つの位置センサと、前記少なくとも1つの位置センサに対向する前記回転部との径方向における距離を検出するように構成された
回転機械の監視プログラム。
【請求項13】
回転部および静止部を収容する車室を含む回転機械のクリアランスを監視するための監視方法であって、
前記車室外に設けられた位置センサを用いて、前記回転部に対する前記車室の径方向における相対位置を検出するステップと、
前記位置センサによって検出された計測値に基づいて、前記車室内における前記回転部と前記静止部との間の内部クリアランスの予測値を得るステップと、
を備え
前記少なくとも1つの位置センサは、前記車室又は前記車室に取り付けられる部材に支持されるとともに、前記少なくとも1つの位置センサと、前記少なくとも1つの位置センサに対向する前記回転部との径方向における距離を検出するように構成された
回転機械の監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械の監視装置、監視プログラム及び監視方法並びに回転機械設備に関する。
本願は、2020年11月10日に日本国特許庁に出願された特願2020-186961号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
タービン等の回転機械において、回転部(ロータ)と静止部(ケーシング等)との接触を防止するために、回転部と静止部との間のクリアランスを適切に監視することが求められる。
【0003】
特許文献1には、蒸気タービンのグランド部におけるロータの外周の4か所に設けられたギャップセンサを含むラビング保全装置が開示されている。この装置では、ギャップセンサによる検出結果に基づいて、ギャップセンサの設置位置(グランド部)における最小半径方向隙間を演算し、この演算結果を用いて、グランド部でのロータと静止部との接触を監視するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-54606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、回転機械の車室内での回転部と静止部との接触を適切に抑制するために、車室内部における回転部と静止部とのクリアランス(以下、内部クリアランスともいう。)を監視することが望まれる。しかし、特許文献1に記載の装置では、内部クリアランスを監視しているわけではないため、車室内での回転部と静止部との接触を適切に抑制できない場合がある。一方、車室の内部に設けたクリアランスセンサを用いて内部クリアランスを計測することはできる。しかしこの場合、クリアランスセンサの設置や保守のために、その都度車室を開放する必要があり、設置や保守のためのコストが大きくなる。また、車室内部は高温高圧環境であり、クリアランスセンサの不具合が生じやすく、クリアランスの適切な監視ができなくなる場合がある。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、センサの容易な設置及び管理と、回転機械の内部クリアランスの適切な監視とを両立することが可能な回転機械の監視装置、監視プログラム及び監視方法並びに回転機械設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械の監視装置は、
回転部および静止部を収容する車室を含む回転機械のクリアランスを監視するための監視装置であって、
前記車室外に設けられ、前記回転部に対する前記車室の径方向における相対位置を検出するための少なくとも1つの位置センサと、
前記少なくとも1つの位置センサによって検出された計測値に基づいて、前記車室内における前記回転部と前記静止部との間の内部クリアランスの予測値を得るように構成された予測部と、
を備える。
【0008】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械設備は、
回転部および静止部を収容する車室を含む回転機械と、
前記回転機械のクリアランスを監視するための上述の監視装置と、
を備える。
【0009】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械の監視プログラムは、
回転部および静止部を収容する車室を含む回転機械のクリアランスを監視するための監視プログラムであって、
コンピュータに、
前記車室外に設けられた位置センサにより検出された、前記回転部に対する前記車室の径方向における相対位置の計測値を示す信号を受け取る手順と、
前記計測値に基づいて、前記車室内における前記回転部と前記静止部との間の内部クリアランスの予測値を得る手順と、
を実行させるように構成される。
【0010】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械の監視方法は、
回転部および静止部を収容する車室を含む回転機械のクリアランスを監視するための監視方法であって、
前記車室外に設けられた位置センサを用いて、前記回転部に対する前記車室の径方向における相対位置を検出するステップと、
前記位置センサによって検出された計測値に基づいて、前記車室内における前記回転部と前記静止部との間の内部クリアランスの予測値を得るステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、センサの容易な設置及び管理と、回転機械の内部クリアランスの適切な監視とを両立することが可能な回転機械の監視装置、監視プログラム及び監視方法並びに回転機械設備が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る蒸気タービンを含む回転機械設備の概略図である。
図2図1に示す蒸気タービンの概略断面図である。
図3A図2の部分的な拡大図である。
図3B】他の一実施形態に係る蒸気タービンの部分的な断面図である。
図4】一実施形態に係る監視/制御装置の概略構成図である。
図5】一実施形態に係る回転機械の監視/制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0014】
以下、幾つかの実施形態に係る回転機械設備を構成する回転機械が蒸気タービンである場合について説明するが、本発明における回転機械は、蒸気タービンに限定されず、他の回転機械(例えばガスタービン等)であってもよい。
【0015】
(回転機械設備の構成)
図1は、一実施形態に係る蒸気タービンを含む回転機械設備の概略図であり、図2は、図1に示す蒸気タービンの概略断面図である。図3A及び図3Bは、それぞれ、一実施形態に係る回転機械設備を構成する蒸気タービンの車室の軸方向端部の概略断面図である。なお、図3A図2の部分的な拡大図であり、図3Bは他の一実施形態に係る蒸気タービンの概略断面図である。図4は、一実施形態に係る監視/制御装置の概略構成図である。
【0016】
幾つかの実施形態に係る回転機械設備100は、蒸気タービン(回転機械)1(図1図3B参照)と、蒸気タービン1の回転部と静止部とのクリアランスを監視及び/又は制御するための監視/制御装置90(図4参照)と、を備える。
【0017】
(蒸気タービン(回転機械)の構成)
図1及び図2に示すように、蒸気タービン1は、中心軸Oの周りを回転可能なロータ12(図1においては不図示)と、ロータ12を含む回転部及び静止部を収容する外側車室(車室)2とを備える。
【0018】
外側車室2は、大気圧である空間と、大気圧より高圧または低圧になる空間とを仕切るように構成される。外側車室2は、上下方向(即ち鉛直方向)において上側に位置する車室上半部2Aと、下側に位置する車室下半部2Bとを含み、車室上半部2Aに設けられた上側フランジ部3Aと、車室下半部2Bに設けられた下側フランジ部3Bとが、図示しないボルトによって締結されている。
【0019】
外側車室2は、基礎10に固定される車室支持部8に支持される。図示する実施形態では、車室上半部2Aは、軸方向(ロータの中心軸Oの方向)に突出する猫足部4を有し、該猫足部4を介して車室支持部8に支持されるようになっている。なお、図1に示す外側車室2において、車室上半部2Aには、軸方向の両端部のそれぞれにおいて、平面視にて中心軸Oの両側に一対の猫足部4が設けられ、すなわち、合計4つの猫足部4が設けられる。
【0020】
図2に示すように、外側車室2に収容される回転部は、軸受(不図示)によって回転可能に支持されるロータ12と、ロータ12から径方向に突出するようにロータ12に設けられる複数の動翼14と、を含む。図2に示すように、ロータ12は、外側車室2を貫通するように設けられる。なお、図2に示す例示的な実施形態では、ロータ12には、軸方向にて離間して位置する複数段の動翼14が設けられている。
【0021】
図2に示すように、外側車室2に収容される静止部は、外側車室2に支持される内側車室16と、内側車室16に支持される翼環18、静翼19及びダミーリング20と、軸方向における外側車室2の両端部に設けられるインナーグランド部22と、を含む。なお、静翼19は、翼環18を介して内側車室16に支持され、軸方向において、各段の動翼14の上流側に位置するように設けられる。
【0022】
外側車室2の内部において、径方向における回転部と静止部との間にはクリアランスが存在する。本明細書において、外側車室2(車室)の内部における回転部と静止部との間の径方向のクリアランスを内部クリアランスと称する。内部クリアランスは、例えば、動翼14の先端と翼環18との間のクリアランス、ロータ12と静翼19の先端との間のクリアランス、又は、ロータ12と、ダミーリング20に設けられるシールフィン(不図示)との間のクリアランス等である。
【0023】
図2図3Bに示すように、外側車室2の軸方向における端部には、外側車室2の内部から外部への流体の漏れ、又は、外側車室2の外部から内部への空気の侵入を抑制するためのアウターグランド部24が設けられる。アウターグランド部24は、外側車室2の軸方向端面2aに取り付けられ、これにより、外側車室2の軸方向端部の開放部が閉塞されるようになっている。アウターグランド部24は、グランド蒸気が供給される蒸気室26と、ロータ12に面して設けられるグランドパッキン28と、を含む。
【0024】
幾つかの実施形態では、回転機械設備100は、外側車室2又は車室支持部8の少なくとも一部を加熱又は冷却するための温度調節部60を含む。温度調節部60によって外側車室2又は車室支持部8の少なくとも一部を加熱又は冷却することで、外側車室2又は車室支持部8の熱伸び量を調節することができ、これにより、外側車室2の形状又は位置を調節することができる。したがって、温度調節部60により外側車室2の形状又は位置を適切に調節することで、蒸気タービン1の内部クリアランスを適切な範囲に維持することができる。
【0025】
一実施形態では、例えば図1に示すように、温度調節部60は、外側車室2を支持する車室支持部8を加熱するための加熱部62と、外側車室2の猫足部4を冷却するための冷却部64を含む。この場合、加熱部62で車室支持部8を加熱することにより、車室支持部8の鉛直方向に熱伸びし、外側車室2が持ち上がるように外側車室2の位置が変更される。一方、冷却部で猫足部4を冷却することにより、外側車室2が沈み込むように外側車室2が変形される。
【0026】
加熱部62は、電気エネルギーを用いて発熱するように構成されたヒータであってもよい。図1に示す例示的な実施形態では、加熱部62は、猫足部4を支持する車室支持部8の表面に設けられたパネル状のヒータを含む。
【0027】
冷却部64は、猫足部4に冷却流体を供給するように構成されてもよい。図1に示す例示的な実施形態では、冷却部64は、冷却流体としての空気を猫足部4に向けて噴出するように構成されたノズルを含む。
【0028】
(監視/制御装置の構成)
監視/制御装置(監視装置)90は、外側車室の外部に設けられる少なくとも1つの位置センサ30と、位置センサ30からの信号を受け取って処理するための処理部50と、を含む。監視/制御装置90は、さらに、蒸気タービン1の状態を示す状態量を計測するための状態量センサ40(図1図3Bにおいて不図示)を含んでもよい。
【0029】
位置センサ30は、外側車室2の外部の位置にて、蒸気タービン1の回転部に対する外側車室2の径方向における相対位置を検出するように構成される。
【0030】
位置センサ30が設けられる外側車室2の外部の位置(すなわちアウターグランド部24近傍の位置)における温度は100℃程度である。これに対し、外側車室2の内部は、概ね300℃~500℃程度であり比較的高温である。また、アウターグランド部24はグランド蒸気により冷却されているため、外側車室2の外部の温度は比較的一定である。
【0031】
幾つかの実施形態では、例えば図3Aに示すように、位置センサ30は、大気圧に接するように設けられてもよい。
【0032】
幾つかの実施形態では、例えば図3A及び図3Bに示すように、位置センサ30は、外側車室2又は外側車室2に取り付けられる部材に支持されるとともに、外側車室2の外部の位置にてロータ12に対向するように設けられる。
【0033】
図3Aに示す例示的な実施形態では、位置センサ30は、アウターグランド部24の外部に設けられ、支持部材32を介してアウターグランド部24に支持される。この場合、位置センサ30は、大気圧に接する。図3Bに示す例示的な実施形態では、位置センサ30は、アウターグランド部24の中に設けられ、支持部材32を介してアウターグランド部24に支持される。この場合、位置センサ30は、グランド蒸気圧と大気圧の間の圧力に接する。
【0034】
位置センサ30は、位置センサ30と、該位置センサ30に対向するロータ12との径方向における距離G(図3A及び図3B参照)を検出するように構成される。このようにして、位置センサ30の取付位置(外側車室2の外部の位置)における、ロータ12(回転部)に対する外側車室2の径方向における相対位置が検出される。
【0035】
位置センサ30は、非接触式のギャップセンサであってもよく、例えば、渦電流式センサ、静電容量式センサ又は光学式センサであってもよい。
【0036】
一実施形態では、位置センサ30に対向するロータ12の面は、該ロータ12の周方向の全域に亘って同一径を有する。また、一実施形態では、位置センサ30に対向するロータ12の直径は、アウターグランド部24におけるロータ12の直径と同一である。
【0037】
以下において、位置センサ30によって検出される上述の相対位置(あるいは距離G)を、便宜的に、外部クリアランスと呼ぶ。
【0038】
図2に示す例示的な実施形態では、少なくとも1つの位置センサ30は、ロータ12の最上部における上述の相対位置(外部クリアランス)を検出するための上側センサ30Aと、ロータ12の最下部における上述の相対位置(外部クリアランス)を検出するための下側センサ30Bと、を含む。このように、ロータ12の最上部及び最下部に設けられる上側センサ30A及び下側センサ30Bのそれぞれでの上述の相対位置(外部クリアランス)の検出結果を用いることで、後述する予測部54(処理部50)で予測される内部クリアランスの予測精度を向上することができる。
【0039】
また、幾つかの実施形態では、少なくとも1つの位置センサ30は、軸方向にて外側車室2の両側に設けられる一対の位置センサ30を含む。図2に示す例示的な実施形態では、少なくとも1つの位置センサ30は、軸方向にて外側車室2の両側に設けられる一対の上側センサ30A及び一対の下側センサ30Bを含む。このように、ロータ12の軸方向における両側に設けられる一対の位置センサ30のそれぞれでの上述の相対位置(外部クリアランス)の検出結果を用いることで、後述する予測部54(処理部50)で予測される内部クリアランスの予測精度を向上することができる。
【0040】
状態量センサ40による状態量の検出結果は、後述する予測部54(処理部50)での内部クリアランスの予測値の算出に用いられる。状態量センサ40は、例えば、蒸気タービン1の入口蒸気温度を計測するための温度センサ、入口圧力を計測するための圧力センサ、出口蒸気温度を計測するための温度センサ、出口圧力を計測するための圧力センサ、ロータ12の回転数を計測するための回転数センサ、ロータ12の表面温度を計測するための温度センサ、又は、車室(外側車室2等)の温度を計測するための温度センサのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0041】
処理部50は、位置センサ30及び/又は状態量センサ40からの信号を受け取って処理するように構成される。図4に示すように、処理部50は、センサデータ取得部52と、予測部54と、判定部56と、制御部58と、を備える。
【0042】
センサデータ取得部52は、位置センサ30及び/又は状態量センサ40から、各センサによる計測値を示す信号を受け取るように構成される。
【0043】
予測部54は、位置センサ30により検出された計測値(センサデータ取得部52で受け取った信号)に基づき、外側車室2内における回転部と静止部との間の内部クリアランスの予測値を得るように構成される。
【0044】
判定部56は、予測部54による内部クリアランスの予測値に基づいて、外側車室2の形状又は位置の変更要否を判定するように構成される。
【0045】
制御部58は、判定部56により外側車室2の形状又は位置の変更が必要であると判断されたとき、内部クリアランスが規定範囲内となるように、外側車室2の形状又は位置を変更するように構成される。制御部58は、例えば、上述の内部クリアランスが規定範囲内となるように、温度調節部60を制御するように構成されてもよい。
【0046】
なお、処理部50は、プロセッサ(CPU等)、記憶装置(メモリデバイス;RAM等)、補助記憶部及びインターフェース等を備えた計算機を含む。処理部50は、インターフェースを介して、上述の位置センサ30及び/又は状態量センサ40からの信号を受け取るようになっている。プロセッサは、このようにして受け取った信号を処理するように構成される。また、プロセッサは、記憶装置に展開されるプログラムを処理するように構成される。これにより、上述の各機能部(予測部54等)の機能が実現される。
【0047】
処理部50での処理内容は、プロセッサにより実行されるプログラムとして実装される。プログラムは、補助記憶部に記憶されていてもよい。プログラム実行時には、これらのプログラムは記憶装置に展開される。プロセッサは、記憶装置からプログラムを読み出し、プログラムに含まれる命令を実行するようになっている。
【0048】
上述の構成を有する監視/制御装置(監視装置)90では、蒸気タービン(回転機械)1の外側車室2外に、回転部に対する車室の径方向における相対位置を検出するための位置センサ30を設けたので、外側車室2内に位置センサを設ける場合に比べて、位置センサ30の設置や管理を容易にすることができる。すなわち、外側車室2を開放することなく、位置センサ30の設置・交換をしたり、位置センサ30の精度確認をしたりすることができる。また、高温高圧環境の外側車室2の内部に位置センサを設ける場合に比べて、位置センサ30の不具合が発生し難い。また、上述の構成を有する監視/制御装置(監視装置)90では、位置センサ30による上述の相対位置(外部クリアランス)の検出結果に基づき蒸気タービン1の内部クリアランスの予測値を得るようにしたので、該予測値に基づき、蒸気タービン1の内部クリアランスを適切に監視することができる。これにより、例えば、回転部と静止部との接触を効果的に抑制することができる。よって、上述の監視/制御装置(監視装置)90によれば、位置センサ30の容易な設置及び管理と、蒸気タービン1の内部クリアランスの適切な監視とを両立することができる。
【0049】
(回転機械の監視/制御フロー)
次に、幾つかの実施形態に係る蒸気タービン(回転機械)1の監視/制御方法のフローについて説明する。なお、以下においては、上述の監視/制御装置90を用いて回転機械の監視/制御を行う場合について説明するが、以下に説明する手順の一部又は全部を手動で行ってもよい。
【0050】
図5は、一実施形態に係る回転機械の監視/制御方法のフローチャートである。一実施形態ではまず、上述の位置センサ30を用いて、蒸気タービン1の回転部に対する外側車室2の径方向における相対位置(外部クリアランス)を計測する(S102)。また、上述の状態量センサ40を用いて、蒸気タービン1の状態を示す状態量を取得する(S104)。ここで、状態量は、例えば、蒸気タービン1の入口蒸気温度、入口圧力、出口蒸気温度、出口圧力、ロータ12の回転数、ロータ12の表面温度、又は、車室(外側車室2等)の温度の少なくとも1つを含む。
【0051】
なお、上述のステップS102とステップS104の実行順序は限定されない。すなわち、ステップS102とステップS104を任意の順序で行ってもよく、あるいは、ステップS102とS104を同時に行ってもよい。
【0052】
次に、予測部54は、ステップS102で得られた外部クリアランスの計測値に基づき、外側車室2内における回転部と静止部との間の内部クリアランスの予測値を算出する(S106)。ステップS106では、ステップS102で得られた外部クリアランスの計測値、及び、ステップS104で得られた状態量の計測値に基づいて、上述の内部クリアランスの予測値を算出するようにしてもよい。
【0053】
ステップS106では、周方向における複数の位置の各々での内部クリアランスの予測値を算出するようにしてもよい。例えば、ロータ12の最上部における内部クリアランスの予測値、及び/又は、ロータ12の最下部における内部クリアランスの予測値を取得するようにしてもよい。
【0054】
ステップS106では、軸方向における複数の位置の各々での内部クリアランスの予測値を算出するようにしてもよい。例えば、複数段の動翼14の各々の先端と翼環18との間のクリアランス、及び/又は、複数段の静翼19の各々の先端とロータ12との間のクリアランス、及び/又は、ダミーリング20に設けられる複数のシールフィンの各々とロータ12との間のクリアランスの予測値をそれぞれ算出するようにしてもよい。
【0055】
なお、ステップS106での内部クリアランスの予測手法の幾つかの例について後述する。
【0056】
次に、判定部56は、ステップS106で得られた内部クリアランスの予測値に基づいて、外側車室2の形状又は位置の変更要否を判定する(S108)。
【0057】
ステップS108では、例えば、内部クリアランスの予測値が規定範囲内(適正範囲内)であるときに、外側車室2の形状又は位置を変更する必要はないと判定する(S108でYes)。この場合、そのままこのフローを終了する。一方、内部クリアランスの予測値が規定範囲外(適正範囲外)であるときに、外側車室2の形状又は位置を変更する必要があると判定する(S108でNo)。この場合、ステップS110に進む。
【0058】
ステップS110では、内部クリアランスが規定範囲内となるように、外側車室2の形状又は位置を変更する。ステップS110では、制御部58により、温度調節部60(加熱部62及び冷却部64)を適切に制御することにより、外側車室2が所望の形状又は位置となるようにしてもよい。
【0059】
例えば、ステップS108にて、ロータ12の最上部における内部クリアランスの予測値が規定範囲よりも小さいと判定された場合、ステップS110では、加熱部62により車室支持部8を加熱することで、車室支持部8の熱伸び量を調節して、外側車室2を持ち上げるように外側車室2の位置を変更するようにしてもよい。あるいは、ステップS108にて、ロータ12の最下部における内部クリアランスの予測値が規定範囲よりも小さいと判定された場合、ステップS110では、冷却部64により猫足部4に冷却流体を供給することで、外側車室2を沈みこませるように変形するようにしてもよい。
【0060】
なお、内部クリアランスの予測値が規定範囲内となるまで、ステップS102~S110の手順を繰り返し行ってもよい。
【0061】
(内部クリアランスの予測手法)
ステップS106では、例えば、以下に述べる手法により、外部クリアランスの計測値を用いて、内部クリアランスの予測値を取得するようにしてもよい。
【0062】
例えば、ステップS106では、蒸気タービン1の状態量に基づく簡易推定により、内部クリアランスの予測値を取得してもよい。この場合、まず、ステップS104で取得される蒸気タービン1の状態量の計測値に基づき、予め取得される推定式等を用いた簡易推定により、内部クリアランス及び外部クリアランスの暫定予測値(仮の予測値)を算出する。なお、上述の推算式は、蒸気タービン1の状態量と内部/外部クリアランスとの関係を表現する式である。そして、ステップS102で取得した外部クリアランスの計測値、及び、上述の外部クリアランスの暫定予測値に基づき、上述の内部クリアランスの暫定予測値を補正することにより、内部クリアランスの予測値を取得する。例えば、外部クリアランスの計測値と外部クリアランスの暫定予測値との差分を取得し、この差分を、上述の内部クリアランスの暫定予測値に加算することで、内部クリアランスの予測値を取得してもよい。
【0063】
あるいは、ステップS106では、有限要素法(Finite Element Method;FEM)による数値解析や、有限要素法のモデルを簡略化した解析手法(Model Order Reduction;MOR)を用いて、内部クリアランスの予測値を取得してもよい。この場合、まず、ステップS104で取得される蒸気タービン1の状態量の計測値を入力(境界条件)として、FEM又はMORの手法により、内部クリアランス及び外部クリアランスの暫定予測値(仮の予測値)を算出する。そして、ステップS102で取得した外部クリアランスの計測値、及び、上述の外部クリアランスの暫定予測値に基づき、上述の内部クリアランスの暫定予測値を補正することにより、内部クリアランスの予測値を取得する。例えば、外部クリアランスの計測値と外部クリアランスの暫定予測値との差分を取得し、この差分を、上述の内部クリアランスの暫定予測値に加算することで、内部クリアランスの予測値を取得してもよい。
【0064】
あるいは、ステップS106では、機械学習等のAI(artificial intelligence)を用いた分析により、予測モデルを用いて、内部クリアランスの予測値を取得してもよい。この予測モデルは、蒸気タービン1の状態量、及び、外部クリアランスを入力とし、蒸気タービン1の内部クリアランスを出力とする予測モデルである。この場合、ステップS102で取得される外部クリアランスの計測値、及び、ステップS104で取得される蒸気タービン1の状態量の計測値を、上述の予測モデルの入力として用い、予測モデルを用いた演算結果の出力として、内部クリアランスの予測値を取得する。なお、上述の予測モデルは、すでに教師データを用いて機械学習を行った学習済みの予測モデルであってもよい。
【0065】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0066】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械(例えば上述の蒸気タービン1)の監視装置(例えば上述の監視/制御装置90)は、
回転部および静止部を収容する車室(例えば上述の外側車室2)を含む回転機械のクリアランスを監視するための監視装置であって、
前記車室外に設けられ、前記回転部に対する前記車室の径方向における相対位置を検出するための少なくとも1つの位置センサ(30)と、
前記少なくとも1つの位置センサによって検出された計測値に基づいて、前記車室内における前記回転部と前記静止部との間の内部クリアランスの予測値を得るように構成された予測部(54)と、
を備える。
【0067】
上記(1)の構成では、回転機械の車室外に、回転部に対する車室の径方向における相対位置を検出するための位置センサを設けたので、車室内に位置センサを設ける場合に比べて、位置センサの設置や管理を容易にすることができる。また、上記(1)の構成では、位置センサによる上述の相対位置の検出結果に基づき回転機械の内部クリアランスの予測値を得るようにしたので、該予測値に基づき、回転機械の内部クリアランスを適切に監視することができる。これにより、例えば、回転部と静止部との接触を効果的に抑制することができる。よって、上記(1)の構成によれば、位置センサの容易な設置及び管理と、回転機械の内部クリアランスの適切な監視とを両立することができる。
【0068】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記回転機械は、前記車室の軸方向における端部に設けられるアウターグランド部を含み、
前記位置センサは、前記アウターグランド部に支持される。
【0069】
上記(2)の構成によれば、位置センサをアウターグランド部に支持されるように設けるので、位置センサの設置や管理を容易にすることができる。
【0070】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記少なくとも1つの位置センサは、軸方向にて前記車室の両側に設けられる一対の位置センサを含む。
【0071】
上記(3)の構成によれば、軸方向における車室の両側に一対の位置センサを設けたので、車室の一方側のみに位置センサを設ける場合に比べて、内部クリアランスをより適切に予測することができる。
【0072】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記予測部は、前記回転機械の状態を示す状態量、及び、前記位置センサにより得られる前記計測値に基づいて、前記内部クリアランスの前記予測値を算出するように構成される。
【0073】
上記(4)の構成によれば、回転機械の状態を示す状態量、及び、位置センサにより取得される計測値に基づいて、内部クリアランスの予測値を適切に算出することができる。よって、算出された予測値に基づき、回転機械の内部クリアランスを適切に監視することができる。
【0074】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記予測部は、前記回転機械の状態を示す状態量、及び、前記位置センサにより得られる前記計測値を入力とする予測モデルを用いて、前記内部クリアランスの前記予測値を算出するように構成される。
【0075】
上記(5)の構成によれば、回転機械の状態を示す状態量、及び、位置センサにより取得される計測値を入力とする予測モデルを用いて、内部クリアランスの予測値を適切に算出することができる。よって、算出された予測値に基づき、回転機械の内部クリアランスを適切に監視することができる。
【0076】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)又は(5)の構成において、
前記予測部は、前記回転機械の状態を示す状態量から前記内部クリアランスの暫定予測値及び前記相対位置の暫定予測値を算出し、前記位置センサにより取得される前記計測値と前記相対位置の前記暫定予測値との差分を前記内部クリアランスの前記暫定予測値に加算することで、前記内部クリアランスの前記予測値を取得するように構成される。
【0077】
上記(6)の構成によれば、回転部に対する車室の径方向における相対位(すなわち外部クリアランス)の計測値と暫定予測値との差分を、内部クリアランスの暫定予測値に加算することで内部クリアランスの予測値を取得するようにしたので、該内部クリアランスの予測値を適切に算出することができる。よって、算出された予測値に基づき、回転機械の内部クリアランスを適切に監視することができる。
【0078】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
前記回転機械の監視装置は、
前記内部クリアランスの前記予測値に基づいて、前記車室の形状又は位置の変更要否を判定するように構成された判定部(56)を備える。
【0079】
上記(7)の構成によれば、内部クリアランスの予測値に基づいて、車室の形状又は位置の変更要否を適切に判定することができる。例えば、内部クリアランスの予測値が規定範囲外であるときに、車室の形状又は位置の変更があると判定することができる。よって、この判定結果に基づき車室の形状又は位置を適切に変更することで、回転部と静止部との接触を効果的に抑制することができる。
【0080】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械設備(100)は、
回転部および静止部を収容する車室を含む回転機械(例えば上述の蒸気タービン1)と、
前記回転機械のクリアランスを監視するための上記(1)乃至(7)の何れか一項に記載の監視装置(例えば上述の監視/制御装置90)と、
を備える。
【0081】
上記(8)の構成では、回転機械の車室外に、回転部に対する車室の径方向における相対位置を検出するための位置センサを設けたので、車室内に位置センサを設ける場合に比べて、位置センサの設置や管理を容易にすることができる。また、上記(8)の構成では、位置センサによる上述の相対位置の検出結果に基づき回転機械の内部クリアランスの予測値を得るようにしたので、該予測値に基づき、回転機械の内部クリアランスを適切に監視することができる。これにより、例えば、回転部と静止部との接触を効果的に抑制することができる。よって、上記(8)の構成によれば、位置センサの容易な設置及び管理と、回転機械の内部クリアランスの適切な監視とを両立することができる。
【0082】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、
前記監視装置は、前記内部クリアランスの前記予測値に基づいて、前記車室の形状又は位置の変更要否を判定するように構成された判定部(56)を含み、
前記回転機械設備は、
前記判定部により前記車室の形状又は位置の変更が必要であると判断されたとき、前記内部クリアランスが規定範囲内となるように、前記車室の形状又は位置を変更するように構成された制御部(58)を備える。
【0083】
上記(9)の構成によれば、判定部により車室の形状又は位置の変更が必要であると判断されたとき、制御部によって、内部クリアランスが規定範囲内となるように車室の形状又は位置を変更可能である。よって、判定部の判定結果に基づき車室の形状又は位置を適切に変更することで、回転部と静止部との接触を効果的に抑制することができる。
【0084】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、
前記制御部は、前記内部クリアランスが規定範囲内となるように、前記車室又は前記車室を支持する車室支持部の少なくとも一部を加温又は冷却するための温度調節部(60)を制御するように構成される。
【0085】
上記(10)の構成によれば、判定部により車室の形状又は位置の変更が必要であると判断されたとき、内部クリアランスが規定範囲内となるように、温度調節部が制御されて車室の少なくとも一部が加熱又は冷却される。よって、回転部と静止部との接触を効果的に抑制することができる。
【0086】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械(例えば上述の蒸気タービン1)の監視プログラムは、
回転部および静止部を収容する車室(例えば上述の外側車室2)を含む回転機械のクリアランスを監視するための監視プログラムであって、
コンピュータ(例えば上述の処理部50)に、
前記車室外に設けられた位置センサにより検出された、前記回転部に対する前記車室の径方向における相対位置の計測値を示す信号を受け取る手順と、
前記計測値に基づいて、前記車室内における前記回転部と前記静止部との間の内部クリアランスの予測値を得る手順と、
を実行させるように構成される。
【0087】
上記(11)のプログラムでは、回転機械の車室外に、回転部に対する車室の径方向における相対位置を検出するための位置センサを設けたので、車室内に位置センサを設ける場合に比べて、位置センサの設置や管理を容易にすることができる。また、上記(11)のプログラムでは、位置センサによる上述の相対位置の検出結果に基づき回転機械の内部クリアランスの予測値を得るようにしたので、該予測値に基づき、回転機械の内部クリアランスを適切に監視することができる。これにより、例えば、回転部と静止部との接触を効果的に抑制することができる。よって、上記(11)のプログラムによれば、位置センサの容易な設置及び管理と、回転機械の内部クリアランスの適切な監視とを両立することができる。
【0088】
(12)本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械(例えば上述の蒸気タービン1)の監視方法は、
回転部および静止部を収容する車室(例えば上述の外側車室2)を含む回転機械のクリアランスを監視するための監視方法であって、
前記車室外に設けられた位置センサを用いて、前記回転部に対する前記車室の径方向における相対位置を検出するステップ(S102)と、
前記位置センサによって検出された計測値に基づいて、前記車室内における前記回転部と前記静止部との間の内部クリアランスの予測値を得るステップ(S106)と、
を備える。
【0089】
上記(12)の方法では、回転機械の車室外に、回転部に対する車室の径方向における相対位置を検出するための位置センサを設けたので、車室内に位置センサを設ける場合に比べて、位置センサの設置や管理を容易にすることができる。また、上記(12)の方法では、位置センサによる上述の相対位置の検出結果に基づき回転機械の内部クリアランスの予測値を得るようにしたので、該予測値に基づき、回転機械の内部クリアランスを適切に監視することができる。これにより、例えば、回転部と静止部との接触を効果的に抑制することができる。よって、上記(12)の方法によれば、位置センサの容易な設置及び管理と、回転機械の内部クリアランスの適切な監視とを両立することができる。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0091】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0092】
1 蒸気タービン
2 外側車室
2A 車室上半部
2B 車室下半部
2a 軸方向端面
3A 上側フランジ部
3B 下側フランジ部
4 猫足部
8 車室支持部
10 基礎
12 ロータ
14 動翼
16 内側車室
18 翼環
19 静翼
20 ダミーリング
22 インナーグランド部
24 アウターグランド部
26 蒸気室
28 グランドパッキン
30 位置センサ
30A 上側センサ
30B 下側センサ
32 支持部材
40 状態量センサ
50 処理部
52 センサデータ取得部
54 予測部
56 判定部
58 制御部
60 温度調節部
62 加熱部
64 冷却部
90 監視/制御装置
100 回転機械設備
O 中心軸
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5