(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】回転子、電動機、送風機、空気調和装置、及び回転子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20231215BHJP
【FI】
H02K1/276
(21)【出願番号】P 2022563329
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2020043191
(87)【国際公開番号】W WO2022107273
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】半田 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100203677
【氏名又は名称】山口 力
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 勇二
(72)【発明者】
【氏名】仁吾 昌弘
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-238380(JP,A)
【文献】特開2017-200278(JP,A)
【文献】特開2013-176210(JP,A)
【文献】特開2002-171702(JP,A)
【文献】特開2008-301610(JP,A)
【文献】特開2007-060860(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043026(WO,A1)
【文献】特開2002-354729(JP,A)
【文献】特開2012-165576(JP,A)
【文献】特開2011-078298(JP,A)
【文献】国際公開第2020/183523(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回転子鉄心と、
前記第1の回転子鉄心の第1の径方向外向きの面に当接する第1の面と径方向外向きの第2の面とを有する複数の永久磁石と、
径方向内向きの面を有する複数の第2の回転子鉄心であって、前記複数の第2の回転子鉄心の前記
径方向内向きの面が前記複数の永久磁石の前記第2の面にそれぞれ当接する前記複数の第2の回転子鉄心と、
前記複数の第2の回転子鉄心のうちの隣接する第2の回転子鉄心の間であって、前記第2の回転子鉄心の径方向外向きの面である第2の径方向外向きの面より前記第2の回転子鉄心の径方向の内側で且つ前記第1の面より前記径方向の外側の領域に設けられた第1の樹脂部と
を有
し、
前記第2の回転子鉄心の前記径方向内向きの面の周方向の長さが、前記第1の回転子鉄心の前記第1の径方向外向きの面の前記周方向の長さよりも長く、且つ、前記永久磁石の前記第2の面の前記周方向の長さよりも長い
回転子。
【請求項2】
前記第1の面及び前記第1の径方向外向きの面は、いずれも平面であって互いに密着していて、
前記第2の面及び前記径方向内向きの面は、いずれも平面であって互いに密着している
請求項1に記載の回転子。
【請求項3】
前記第1の面及び前記第1の径方向外向きの面は、同一形状の曲面であって互いに密着していて、
前記第2の面及び前記径方向内向きの面は、同一形状の曲面であって互いに密着している
請求項1に記載の回転子。
【請求項4】
前記第1の面は、半円柱状の第1の凸面であり、
前記第1の径方向外向きの面は、前記第1の凸面に密着する半円柱状の第1の凹面であり、
前記第2の面は、半円柱状の第2の凹面であり、
前記径方向内向きの面は、前記第2の凹面に密着する半円柱状の第2の凸面である
請求項3に記載の回転子。
【請求項5】
前記第2の回転子鉄心は、
第2の径方向外向きの面と、
前記第2の径方向外向きの面と前記径方向内向きの面とを繋ぐ側面と
を更に有し、
前記永久磁石の磁極と前記回転子の回転軸とを結ぶ磁極中心線に直交し且つ前記回転子の回転軸に直交する方向に伸びる直線と前記側面とがなす角度のうち前記磁極中心線側の角度をθとしたときに、
θ<90°である
請求項1から4のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項6】
前記第1の回転子鉄心は、周方向に配列された複数の分割鉄心部を有する
請求項1から5のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項7】
前記複数の分割鉄心部の隣接する2つの分割鉄心部のうちの一方は、第1の嵌合部を有し、
前記2つの分割鉄心部のうちの他方は、前記第1の嵌合部に嵌合する第2の嵌合部を有する
請求項6に記載の回転子。
【請求項8】
前記第1の回転子鉄心、前記永久磁石及び前記第2の回転子鉄心のそれぞれの前記回転子の回転軸の軸方向の端面を覆うように配置された第2の樹脂部を更に有する
請求項1から7のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項9】
前記第2の樹脂部と前記第1の樹脂部とは、一体に形成されている
請求項8に記載の回転子。
【請求項10】
前記永久磁石は、直方体である
請求項1又は2に記載の回転子。
【請求項11】
前記永久磁石は、焼結磁石である
請求項1から10のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項12】
前記永久磁石は、ネオジウム希土類磁石である
請求項1から11のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の前記回転子と、
固定子鉄心と
を有する電動機。
【請求項14】
前記固定子鉄心は、ティース部を有し、
前記回転子の回転軸と前記第1の樹脂部の径方向外向きの面である第3の径方向外向きの面の前記回転軸を中心とする周方向の一方の端部とを結ぶ第1の直線と、前記回転軸と前記第3の径方向外向きの面の前記周方向の他方の端部とを結ぶ第2の直線とがなす角度のうち前記第1の樹脂部側の角度をα、
前記ティース部の数をT、
前記回転子の磁極の数をNとしたときに、
α>360°・(T-N)/(T・N)である
請求項13に記載の電動機。
【請求項15】
前記固定子鉄心は、ヨーク部と、ティース部とを有し、
前記ティース部は、
前記ヨーク部から前記固定子鉄心の径方向の内側に伸びるティース延伸部と、前記ティース延伸部より前記径方向の内側に配置されて前記ティース延伸部より前記固定子鉄心の周方向に幅広なティース先端部とを有し、
前記第2の回転子鉄心の前記周方向の長さは、前記ティース先端部の前記周方向の長さ以下である
請求項13に記載の電動機。
【請求項16】
請求項13から15のいずれか1項に記載の前記電動機と、
前記電動機によって駆動されるファンと
を有する送風機。
【請求項17】
請求項16に記載の前記送風機を
有する空気調和装置。
【請求項18】
第1の回転子鉄心と、前記第1の回転子鉄心の第1の径方向外向きの面に当接する第1の面と径方向外向きの第2の面とを有する複数の永久磁石と、
径方向内向きの面を有する複数の第2の回転子鉄心であって、前記複数の第2の回転子鉄心の前記
径方向内向きの面が前記複数の永久磁石の前記第2の面にそれぞれ当接する前記複数の第2の回転子鉄心とを有する第1の構造体を形成する工程と、
前記複数の第2の回転子鉄心のうちの隣接する第2の回転子鉄心の間であって、前記第2の回転子鉄心の径方向外向きの面である第2の径方向外向きの面より前記第2の回転子鉄心の径方向の内側で且つ前記第2の面より前記径方向の外側の領域に樹脂を充填して第1の樹脂部を形成する工程と
を有し、
前記第2の回転子鉄心の前記径方向内向きの面の周方向の長さが、前記第1の回転子鉄心の前記第1の径方向外向きの面の前記周方向の長さよりも長く、且つ、前記永久磁石の前記第2の面の前記周方向の長さよりも長い
回転子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転子、電動機、送風機、空気調和装置、及び回転子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機の回転子として、永久磁石と、永久磁石が取り付けられる回転子鉄心とを有する回転子が知られている。例えば、特許文献1を参照。特許文献1の回転子鉄心は、永久磁石が挿入される磁石挿入部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の回転子では、磁気吸引力によって、永久磁石が磁石挿入部の径方向内向きの面及び径方向外向きの面のうちのいずれか一方の面に密着し、永久磁石と他方の面との間には間隙が形成される。この場合、回転子から電動機の固定子に流れる永久磁石の磁束の磁束量が低下するという課題があった。
【0005】
本開示は、永久磁石の磁束の磁束量の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る回転子は、第1の回転子鉄心と、前記第1の回転子鉄心の第1の径方向外向きの面に当接する第1の面と径方向外向きの第2の面とを有する複数の永久磁石と、径方向内向きの面を有する複数の第2の回転子鉄心であって、前記複数の第2の回転子鉄心の前記径方向内向きの面が前記複数の永久磁石の前記第2の面にそれぞれ当接する前記複数の第2の回転子鉄心と、前記複数の第2の回転子鉄心のうちの隣接する第2の回転子鉄心の間であって、前記第2の回転子鉄心の径方向外向きの面である第2の径方向外向きの面より前記第2の回転子鉄心の径方向の内側で且つ前記第1の面より前記径方向の外側の領域に設けられた第1の樹脂部とを有する。前記第2の回転子鉄心の前記径方向内向きの面の周方向の長さは、前記第1の回転子鉄心の前記第1の径方向外向きの面の前記周方向の長さよりも長く、且つ、前記永久磁石の前記第2の面の前記周方向の長さよりも長い。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、永久磁石の磁束の磁束量の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る電動機の構成の一部を示す平面図である。
【
図2】
図1に示される電動機の回転子の構成の一部を示す平面図である。
【
図3】実施の形態1に係る回転子の構成を示す側面図である。
【
図4】
図1に示される固定子鉄心のティース先端部周辺の構成を示す拡大平面図である。
【
図5】実施の形態1に係る回転子の製造工程を示すフローチャートである。
【
図6】(A)~(C)は、回転子の中間構造体の製造工程の一例を示す模式図である。
【
図7】実施の形態1の変形例1に係る回転子の構成を示す平面図である。
【
図8】実施の形態1の変形例2に係る回転子の構成を示す平面図である。
【
図9】実施の形態2に係る回転子の構成を示す拡大平面図である。
【
図10】実施の形態3に係る回転子の構成を示す平面図である。
【
図11】実施の形態3の変形例に係る回転子の構成を示す平面図である。
【
図12】実施の形態4に係る回転子の構成を示す断面図である。
【
図13】実施の形態5に係る送風機の構成を示す図である。
【
図14】実施の形態6に係る空気調和装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施の形態に係る回転子、電動機、送風機、空気調和装置、及び回転子の製造方法を、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は、例にすぎず、実施の形態を適宜組み合わせること及び各実施の形態を適宜変更することが可能である。
【0010】
図面相互の関係についての理解を容易にするために、各図には、必要に応じて、xyz直交座標系が示されている。z軸は、回転子の軸線Cに平行な座標軸である。x軸は、z軸に直交する座標軸である。y軸は、x軸及びz軸の両方に直交する座標軸である。
【0011】
《実施の形態1》
〈電動機〉
図1は、実施の形態1に係る電動機100の構成を示す平面図である。電動機100は、永久磁石同期電動機である。電動機100は、回転子1と、固定子5とを有している。回転子1は、固定子5より内側に配置されている。つまり、電動機100は、インナロータ型の電動機である。回転子1と固定子5との間には、エアギャップが形成されている。エアギャップは、例えば、0.3mm~1.0mmの範囲内の予め決められた間隙である。
【0012】
〈回転子〉
回転子1は、第1の回転子鉄心10と、複数の第2の回転子鉄心20と、複数の永久磁石30と、第1の樹脂部としての樹脂部41と、シャフト50とを有している。回転子1は、シャフト50の軸線Cを中心に回転可能である。
【0013】
シャフト50は、z軸方向に伸びている。シャフト50は、第1の回転子鉄心10の中空部13に連結されている。シャフト50は、例えば、焼き嵌め又は圧入等によって、中空部13に連結されている。これにより、シャフト50が回転したときに発生する回転エネルギが、第1の回転子鉄心10に伝達される。なお、以下の説明では、z軸方向を「軸方向」とも呼ぶ。また、軸線Cを中心とする円の円周に沿った方向を「周方向」(例えば、
図1において、矢印で示される周方向R)、z軸方向に直交して軸線Cを通る直線の方向を「径方向」と呼ぶ。
【0014】
図2は、実施の形態1に係る回転子1の構成の一部を示す平面図である。
図3は、実施の形態1に係る回転子1の構成を示す側
断面図である。
図2及び3に示されるように、第1の回転子鉄心10は、シャフト50に支持されている。第1の回転子鉄心10は、第1の径方向外向きの面としての径方向外向きの面11と、複数の突出部12とを有している。
【0015】
実施の形態1では、径方向外向きの面11は、z軸方向に長い平面である。ここで、回転子1の永久磁石30に形成された磁極Pとシャフト50の軸線Cとを結ぶように径方向に伸びる磁極中心線をMとしたとき、径方向内外向きの面11は、z軸方向に平行で及び磁極中心線Mに直交する方向に伸びる直線にも平行な平面である。
【0016】
突出部12は、径方向外向きの面11から径方向の外側に突出している。突出部12は、永久磁石30の周方向Rの端面を支持している。なお、後述の
図8に示されるように、径方向外向きの面11bは、曲面(例えば、半円柱状の
凹面)であってもよい。
【0017】
複数の第2の回転子鉄心20は、永久磁石30を挟んで第1の回転子鉄心10より径方向の外側に配置されている。第2の回転子鉄心20は、第2の径方向外向きの面としての径方向外向きの面21と、第2の径方向内向きの面としての径方向内向きの面22とを有している。
【0018】
実施の形態1では、径方向外向きの面21は、半円柱状の凸面である。径方向内向きの面22は、z軸方向に長い平面である。また、径方向内向きの面22は、z軸方向
に平行で磁極中心線Mに直交する方向に伸びる直線に
も平行な平面である。なお、後述の
図8に示されるように、径方向内向きの面22bは、曲面(例えば、半円柱状の凹
凸面)であってもよい。
【0019】
第2の回転子鉄心20は、径方向外向きの面21と径方向内向きの面22とを繋ぐ側面23を更に有している。実施の形態1では、径方向内向きの面
22と側面23とがなす角度は、90度である。なお、後述の
図9に示されるように、径方向内向きの面22と側面223とがなす角度は、90度より小さくてもよい。
【0020】
第1の回転子鉄心10及び第2の回転子鉄心20はそれぞれ、z軸方向に積層された複数の電磁鋼板(図示しない)を有している。第1の回転子鉄心10及び第2の回転子鉄心20に用いられる電磁鋼板の1枚当たりの板厚は、例えば、0.1mm~0.7mmの範囲内の決められた厚さであり、例えば、0.35mmである。
【0021】
実施の形態1では、回転子1は、例えば、6個の永久磁石30を有している。なお、永久磁石30は、第1の回転子鉄心10と第2の回転子鉄心20との間に配置されている。なお、永久磁石30の個数は6個に限らず、2個以上の任意の数であればよい。
【0022】
永久磁石30は、第1の面31と、第2の面32とを有している。第1の面31は、第1の回転子鉄心10の径方向外向きの面11に当接している。第2の面32は、第2の回転子鉄心20の径方向内向きの面22に当接している。これにより、永久磁石30と第1の回転子鉄心10との間及び永久磁石30と第2の回転子鉄心20との間には、間隙である空気層が存在しない。一般的に、空気層の透磁率は、金属材料の透磁率より低い。実施の形態1に係る回転子1では、永久磁石30と第1の回転子鉄心10との間及び永久磁石30と第2の回転子鉄心20との間には、空気層が存在しない。これにより、永久磁石30から固定子5のコイル64(
図1参照)に流れる磁束(以下、「鎖交磁束」ともいう)の磁束量の低下を防止することができる。
【0023】
永久磁石30の第1の面31及び第1の回転子鉄心10の径方向外向きの面11は、いずれも平面であって互いに密着している。これにより、永久磁石30と第1の回転子鉄心10との間に、間隙が発生しない。また、永久磁石30の第2の面32及び第2の回転子鉄心20の径方向内向きの面22も、いずれも平面であって互いに密着している。これにより、永久磁石30と第2の回転子鉄心20との間に、間隙が発生しない。このように、永久磁石30が第1の回転子鉄心10及び第2の回転子鉄心20に密着していることによって、鎖交磁束の磁束量の低下を防止することができる。
【0024】
実施の形態1では、永久磁石30は直方体である。つまり、永久磁石30の軸方向の端面の形状は、長方形である。このため、実施の形態1では、永久磁石30の第1の面31及び第2の面32はそれぞれ、平面である。これにより、簡易な形状によって、永久磁石30を第1の回転子鉄心10及び第2の回転子鉄心20に密着させることができる。また、永久磁石30が直方体であることによって、永久磁石30を成形するための金型の構造を簡易化することができる。なお、第1の面31及び第2の面32は平面に限らず、他の形状の面であってもよい。例えば、後述の
図8に示されるように、第1の面31b及び第2の面32bは半円柱状の凹面であってもよい。
【0025】
実施の形態1では、永久磁石30は、焼結磁石である。つまり、実施の形態1では、永久磁石30は、粉末治金法によって形成されている。一般的に、焼結磁石の密度は、樹脂を含むボンド磁石の密度より大きい。そのため、永久磁石30の磁力を向上させることができる。
【0026】
一方、焼結磁石の寸法精度は、ボンド磁石の寸法精度より低い。そのため、磁石挿入部を有する回転子鉄心に焼結磁石が挿入された場合、磁石挿入部と焼結磁石との間に間隙が発生し易いため、永久磁石の磁石磁束量が低下する。実施の形態1では、上述した通り、永久磁石30は第1の回転子鉄心10及び第2の回転子鉄心20にそれぞれ、密着している。そのため、永久磁石30と第1の回転子鉄心10との間、及び永久磁石30と第2の回転子鉄心20との間には間隙が発生しない。よって、永久磁石30が焼結磁石である場合であっても、鎖交磁束の磁束量が低下することを防止できる。
【0027】
永久磁石30は、希土類磁石である。具体的には、永久磁石30は、ネオジウム(Nd)、鉄(Fe)及びホウ素(B)を含むネオジウム希土類磁石である。これにより、ネオジウム希土類磁石の最大エネルギ積は、他の磁石の最大エネルギ積より大きい。ここで、最大エネルギ積とは、永久磁石の磁界と磁束密度の積であるエネルギ積の最大値のことである。つまり、最大エネルギ積は、1つの永久磁石から取り出せる最大磁石磁束量の目安を示す指標値である。よって、永久磁石30がネオジウム希土類磁石である場合、当該永久磁石30の磁力を向上させることができる。
【0028】
一方、ネオジウム希土類磁石は、酸素と反応した場合に錆び易いという性質を有している。実施の形態1では、上述した通り、永久磁石30は第1の回転子鉄心10及び第2の回転子鉄心20にそれぞれ接しているため、永久磁石30が空気に晒される面積が減少する。よって、永久磁石30に錆が発生することを抑制でき、永久磁石30の良好な磁気特性を維持することができる。
【0029】
樹脂部41は、複数の第2の回転子鉄心20のうちの周方向Rに隣接する2つの第2の回転子鉄心20の間を埋めるように設けられている。これにより、複数の第2の回転子鉄心20及び複数の永久磁石30を、第1の回転子鉄心10に固定することができる。
【0030】
また、樹脂部41が、周方向Rに隣接する2つの第2の回転子鉄心20の間を埋めていることにより、当該2つの第2の回転子鉄心20の間における磁気抵抗が大きくなるため、周方向Rに隣接する磁極Pの間における漏れ磁束が抑制される。よって、永久磁石30の磁束が固定子5に流れずに、隣接する磁極Pの間において磁束が短絡することを抑制できる。これにより、鎖交磁束の磁束量が低下することを防止できる。
【0031】
樹脂部41は、熱可塑性樹脂から形成されている。樹脂部41は、例えば、PBT(Poly Butylene Terephthalate)樹脂、PPS(Poly Phenylene Sulfide)樹脂、PET(Poly Ethylene Terephthalate)樹脂及びLCP(Liquid Crystal Polymer)樹脂のうちいずれか1つの樹脂から形成されている。なお、樹脂部41は、他の熱可塑性樹脂から形成されていてもよく、熱可塑性樹脂とは異なる他の樹脂から形成されていてもよい。
【0032】
樹脂部41は、第3の径方向外向きの面としての径方向外向きの面41aを有している。径方向外向きの面41aは、曲面(
図2に示す例では、半円柱状の凸面)である。ここで、軸線Cと樹脂部41の径方向外向きの面41aの周方向Rの一方の端部41bとを結ぶ直線である第1の直線をS1、軸線Cと径方向外向きの面41aの周方向Rの他方の端部41cとを結ぶ直線である第2の直線をS2とする。また、第1の直線S1と第2の直線S2とがなす角度のうち樹脂部41側の角度をαとする。角度αは、周方向Rに隣接する2つの第2の回転子鉄心20の間を埋める樹脂部41の軸線Cを中心とする角度範囲である。言い換えれば、角度αは、隣接する磁極Pの間に位置する樹脂部41の軸線Cを中心とする角度範囲である。
【0033】
ここで、固定子5のティース部62(
図1参照)の数をT、回転子1の磁極Pの数(以下、「磁極数」ともいう)をNとしたときに、角度αは、以下の式(1)を満たす。
α>360°・(T-N)/(T・N) (1)
これにより、複数の第2の回転子鉄心20及び複数の永久磁石30を第1の回転子鉄心10に強固に固定しつつ、永久磁石30の周方向Rの長さが十分に確保されることで回転子1の磁力を十分に確保することができる。
【0034】
図3に示されるように、樹脂部41の軸方向の一方の端面41eは、第1の回転子鉄心10の軸方向の一方の端面10e、第2の回転子鉄心20の軸方向の一方の端面20e及び永久磁石30の軸方向の一方の端面30eと面一である。また、樹脂部41の軸方向の他方の端面41fは、第1の回転子鉄心10の軸方向の他方の端面10f、第2の回転子鉄心20の軸方向の他方の端面20f及び永久磁石30の軸方向の他方の端面30fと面一である。これにより、複数の第2の回転子鉄心20及び複数の永久磁石30を第1の回転子鉄心10に強固に固定することができる。
【0035】
樹脂部41は、回転子1に備えられている他の樹脂部と一体に形成されていてもよい。例えば、樹脂部41は、シャフト50と第1の回転子鉄心10との間に埋められた他の樹脂部と連結されていてもよい。また、後述の図12に示されるように、樹脂部41は、第1の回転子鉄心10、第2の回転子鉄心20及び永久磁石30のそれぞれの軸方向の端面を覆うように配置された他の樹脂部(図12では、第2の樹脂部442、443)と一体に形成されていてもよい。
【0036】
〈固定子〉
次に、固定子5の構成について説明する。
図1に示されるように、固定子5は、固定子鉄心60を有している。
【0037】
固定子鉄心60は、z軸方向に積層された複数の電磁鋼板(図示しない)を有している。実施の形態1では、固定子鉄心60に用いられる電磁鋼板の板厚は、第1の回転子鉄心10及び第2の回転子鉄心20に用いられる電磁鋼板の板厚と同じ厚さである。z軸方向に積層された複数の電磁鋼板のうちのz軸方向に隣接する2つの電磁鋼板は、カシメ加工等によって固定されている。固定子鉄心60は、フレーム7に固定されている。なお、固定子鉄心60に用いられる電磁鋼板の板厚は0.1mm~0.7mmの範囲内の決められた厚さであれば、第1の回転子鉄心10及び第2の回転子鉄心20に用いられる電磁鋼板15の板厚と異なっていてもよい。
【0038】
固定子鉄心60は、ヨーク部61と、複数のティース部62と、複数のスロット部63とを有している。
【0039】
ヨーク部61は、周方向Rに伸びている。複数のティース部62は、周方向Rに等角度の間隔で配置されている。複数のティース部62のうちの各ティース部62には、コイル64が巻き付けられる。なお、複数のティース部62の個数は、2個以上の任意の数である。スロット部63は、複数のティース部62のうちの周方向Rに隣接する2つのティース部62の間に形成された空間である。
【0040】
図4は、実施の形態1に係る電動機100のティース部62周辺の構成を示す拡大平面図である。
図1及び4に示されるように、ティース部62は、ティース延伸部62aと、ティース先端部62bとを有している。ティース延伸部62aは、ヨーク部61の内周面61aから径方向の内側に伸びている。ティース先端部62bは、ティース延伸部62aより径方向の内側に配置されている。ティース先端部62bは、ティース部62におけるティース延伸部62aより周方向Rに幅広な部分である。
【0041】
図4に示されるように、第2の回転子鉄心20の周方向Rの長さをW
1、ティース先端部62bの周方向Rの長さをW
2としたとき、長さW
1は、長さW
2より小さい。これにより、永久磁石30の磁束が第2の回転子鉄心20を通ってティース先端部62bに流れるときに、当該磁束の漏れが発生し難くなる。つまり、永久磁石30からティース部62を通ってコイル64(
図1参照)に流れる鎖交磁束の磁束量の低下が防止されるため、電動機100の出力トルクを向上させることができる。なお、長さW
1は長さW
2以下であればよく、長さW
1は長さW
2と同じであってもよい。つまり、長さW
1及び長さW
2は、以下の式(2)を満たしていればよい。
W
1≦W
2 (2)
【0042】
図1に示されるように、固定子鉄心60は、スロット部63に配置されたコイル64及び絶縁部65を更に有している。コイル64は、例えば、マグネットワイヤである。コイル64の巻線方式は、例えば、コイル64が絶縁部65を介してティース部62に直接巻き付けられる集中巻である。コイル64の巻数及び線径は、電動機100に要求される特性(回転数及びトルク等)、電圧仕様、及びスロット部63の断面積に基づいて定められる。コイル64に、指令回転速度に同期した周波数の電流が通電することにより、回転子1を回転させる回転磁界が発生する。絶縁部65は、例えば、絶縁フィルムである。
【0043】
〈回転子の製造方法〉
次に、
図5を用いて回転子1の製造方法について説明する。
図5は、回転子1の製造工程を示すフローチャートである。なお、以下に説明する回転子1の製造方法は一例であり、他の製造方法であってもよい。
【0044】
ステップST1では、第1の回転子鉄心10、複数の第2の回転子鉄心20及び複数の永久磁石30を有する第1の構造体、つまり、後述の
図6(C)に示される中間構造体80が形成される。中間構造体80は、回転子1の製造工程の途中で形成される構造体である。なお、中間構造体80を形成する製造工程の詳細については、後述する。
【0045】
ステップST2では、複数の第2の回転子鉄心20のうちの隣接する第2の回転子鉄心20の間に樹脂を充填することで樹脂部41が形成される。このように、中間構造体80の製造工程では、永久磁石30及び第2の回転子鉄心20のそれぞれの位置が決められた後に、隣接する2つの第2の回転子鉄心20の間に樹脂が埋められる。これにより、永久磁石30と第1の回転子鉄心10との間及び永久磁石30と第2の回転子鉄心20との間に間隙が発生することを防止できる。
【0046】
次に、
図6(A)~(C)を用いて、回転子1の中間構造体80の製造工程について説明する。
図6(A)~(C)は、中間構造体80の製造工程を示す模式図である。中間構造体80の製造工程では、
図2に示される樹脂部41を形成するための金型である成形金型が用いられる。なお、中間構造体80の工程順序は、
図6(A)、(B)及び(C)の順序に限らず、他の順序であってもよい。
【0047】
図6(A)に示されるように、シャフト50が連結された第1の回転子鉄心10を成形金型に配置する。
【0048】
図6(B)に示されるように、成形金型に配置された第1の回転子鉄心10の径方向外向きの面11に、複数の永久磁石30の各永久磁石30の第1の面31を当接させる。
【0049】
図6(C)に示されるように、複数の永久磁石30の第2の面32に、複数の第2の回転子鉄心20の径方向内向きの面22をそれぞれ当接させる。これにより、第1の回転子鉄心10、複数の永久磁石30及び複数の第2の回転子鉄心20を有する中間構造体80が形成される。
【0050】
〈実施の形態1の効果〉
以上に説明した実施の形態1によれば、永久磁石30の第1の面31が第1の回転子鉄心10の径方向外向きの面11に当接し、且つ永久磁石30の第2の面32が第2の回転子鉄心20の径方向内向きの面22に当接している。これにより、永久磁石30と第1の回転子鉄心10との間、及び永久磁石30と第2の回転子鉄心20との間には、間隙が発生しない。そのため、鎖交磁束の磁束量が低減することを防止できる。
【0051】
また、実施の形態1によれば、樹脂部41が、複数の第2の回転子鉄心20の周方向Rに隣接する2つの第2の回転子鉄心20の間を埋めている。これにより、複数の第2の回転子鉄心20が第1の回転子鉄心10に固定されている。また、周方向Rに隣接する2つの第2の回転子鉄心20の間を埋めていることにより、当該2つの第2の回転子鉄心20の間における磁気抵抗が大きくなるため、周方向Rに隣接する2つの磁極間における漏れ磁束が抑制される。よって、永久磁石30の磁束が固定子5に流れずに、回転子1の隣接する磁極間において磁束が短絡することを抑制できる。したがって、鎖交磁束の磁束量を多くすることができる。
【0052】
また、実施の形態1によれば、永久磁石30の第1の面31及び第1の回転子鉄心10の径方向外向きの面11が互いに平行であり、永久磁石30の第2の面32及び第2の回転子鉄心20の径方向内向きの面22が互いに平行である。これにより、永久磁石30と第1の回転子鉄心10との間、及び永久磁石30と第2の回転子鉄心20との間に間隙が発生することを防止できる。
【0053】
また、実施の形態1によれば、永久磁石30の第1の面31及び第1の回転子鉄心10の径方向外向きの面11は平面であり、永久磁石30の第2の面32及び第2の回転子鉄心20の径方向内向きの面22は平面である。これにより、簡易な形状によって、永久磁石30と第1の回転子鉄心10との間、及び永久磁石30と第2の回転子鉄心20との間に間隙が発生することを防止できる。
【0054】
また、実施の形態1によれば、永久磁石30は直方体である。これにより、永久磁石30において、第1の回転子鉄心10の径方向外向きの面11に当接する第1の面31及び第2の回転子鉄心20の径方向内向きの面22に当接する第2の面32が平面である。したがって、簡易な形状によって、永久磁石30と第1の回転子鉄心10との間、及び永久磁石30と第2の回転子鉄心20との間に間隙が発生することを防止できる。また、永久磁石30が直方体であることによって、永久磁石30を成形するための金型の構造を簡易化することができる。
【0055】
また、実施の形態1によれば、永久磁石30は焼結磁石である。焼結磁石の磁力は、ボンド磁石の磁力より大きいため、鎖交磁束の磁束量を多くすることができる。ここで、焼結磁石の寸法精度は、ボンド磁石の寸法精度より悪い。しかしながら、実施の形態1では、上述した通り、第1の回転子鉄心10の径方向外向きの面11に永久磁石30の第1の面31が当接し、当該永久磁石30の第2の面32に第2の回転子鉄心20の径方向内向きの面22が当接する。よって、永久磁石30が焼結磁石であっても、永久磁石30と回転子鉄心(つまり、第1の回転子鉄心10、第2の回転子鉄心20)との間に間隙が発生しないため、鎖交磁束の磁束量の低下を防止することができる。
【0056】
また、実施の形態1によれば、永久磁石30はネオジウム希土類磁石である。これにより、回転子1の磁力を大きくすることができる。ここで、ネオジウム希土類磁石は、他の磁石に比べて酸素と反応し易いため、錆び易い。しかしながら、実施の形態1では、永久磁石30と第1の回転子鉄心10との間、及び永久磁石30と第2の回転子鉄心20との間に間隙が発生しないため、永久磁石30が酸素と反応し難い。よって、永久磁石30がネオジウム希土類磁石であっても、当該永久磁石30を錆び難くすることができる。
【0057】
また、実施の形態1によれば、周方向Rに隣接する2つの磁極Pの間に存在する樹脂部41の軸線Cを中心とする角度範囲を示す角度αが、固定子鉄心60のティース部62の数T、及び回転子1の磁極Pの数Nによって示された上述した式(1)を満たす。これにより、複数の第2の回転子鉄心20及び複数の永久磁石30を第1の回転子鉄心10に強固に固定しつつ、永久磁石30の周方向Rの長さが十分に確保されることで回転子1の磁力を十分に確保することができる。
【0058】
《実施の形態1の変形例1》
図7は、実施の形態1の変形例1に係る回転子1aの構成を示す平面図である。
図7において、
図2に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、
図2に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態1の変形例1に係る回転子1aは、第1の回転子鉄心10aの形状、第2の回転子鉄心20aの形状及び永久磁石30aの配置の点で、実施の形態1に係る回転子1と相違する。これらの点以外に関し、実施の形態1の変形例1は、実施の形態1と同じである。そのため、以下の説明では、
図1を参照する。
【0059】
図7に示されるように、回転子1aは、第1の回転子鉄心10aと、複数の第2の回転子鉄心20aと、複数の永久磁石30aと、樹脂部41と、シャフト50とを有している。
【0060】
第1の回転子鉄心10aは、径方向外向きの面11aを有している。径方向外向きの面11aの周方向Rの中央部は、面11aの周方向Rの端部より径方向内側に位置している。第2の回転子鉄心20aは、径方向内向きの面22aを有している。径方向内向きの面22aの周方向Rの中央部は、面22aの周方向Rの端部より径方向内側に位置している。
【0061】
第1の回転子鉄心10aの径方向外向きの面11aと第2の回転子鉄心20aの径方向内向きの面22aとの間には、2つの永久磁石30aが配置されている。これにより、実施の形態1の変形例1に係る回転子1aの磁力を、実施の形態1に係る回転子1の磁力より大きくすることができる。
図7では、2つの永久磁石30aは、径方向内側に凸のV字をなすように配置されている。
【0062】
永久磁石30aは、第1の面31aと、第2の面32aとを有している。第1の面31aは、第1の回転子鉄心10aの径方向外向きの面11aに当接している。第2の面32aは、第2の回転子鉄心20aの径方向内向きの面22aに当接している。これにより、永久磁石30aと第1の回転子鉄心10aとの間、及び永久磁石30aと第2の回転子鉄心20aとの間には、間隙が発生しない。よって、永久磁石30aからコイル64(
図1参照)に流れる鎖交磁束の磁束量の低下を防止することができる。
【0063】
〈実施の形態1の変形例1の効果〉
以上に説明した実施の形態1の変形例1によれば、永久磁石30aの第1の面31aが第1の回転子鉄心10aの径方向外向きの面11aに当接し、且つ永久磁石30aの第2の面32aが第2の回転子鉄心20aの径方向内向きの面22aに当接している。これにより、永久磁石30aと第1の回転子鉄心10aとの間、及び永久磁石30aと第2の回転子鉄心20aとの間には、間隙が発生しない。そのため、鎖交磁束の磁束量が低減することを防止できる。
【0064】
また、回転子1aは、第1の回転子鉄心10aの径方向外向きの面11aと第2の回転子鉄心20aの径方向内向きの面22aとの間には、2つの永久磁石30aが配置されている。これにより、実施の形態1の変形例1に係る回転子1aの磁力を、実施の形態1に係る回転子1の磁力より大きくすることができる。
【0065】
《実施の形態1の変形例2》
図8は、実施の形態1の変形例2に係る回転子1bの構成を示す平面図である。
図8において、
図2に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、
図2に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態1の変形例2に係る回転子1bは、第1の回転子鉄心10bの形状、第2の回転子鉄心20bの形状、及び永久磁石30bの形状の点で、実施の形態1に係る回転子1と相違する。これらの点以外に関し、実施の形態1の変形例2は、実施の形態1と同じである。そのため、以下の説明では、
図1を参照する。
【0066】
図8に示されるように、回転子1bは、第1の回転子鉄心10bと、複数の第2の回転子鉄心20bと、複数の永久磁石30bと、樹脂部41と、シャフト50とを有している。
【0067】
永久磁石30bの第1の面31bは、第1の回転子鉄心10bの径方向外向きの面11bに当接している。実施の形態1の変形例2では、永久磁石30bの第1の面31b及び第1の回転子鉄心10bの第1の径方向外向きの面11bは、同一形状の曲面であって互いに密着している。また、第2の面32bは、第2の回転子鉄心20bの径方向内向きの面22bに当接している。実施の形態1の変形例2では、永久磁石30bの第2の面32b及び第2の回転子鉄心20bの径方向内向きの面22bは、同一形状の曲面であって互いに密着している。これにより、永久磁石30bと第1の回転子鉄心10bとの間、及び永久磁石30bと第2の回転子鉄心20bとの間には、間隙が発生しない。よって、永久磁石30bからコイル64(
図1参照)に流れる鎖交磁束の磁束量の低下を防止することができる。
【0068】
図8では、永久磁石30bの第1の面31bは、第1の凸面としての半円柱状の凸面であり、第1の回転子鉄心10bの径方向外向きの面11bは、第1の凹面としての半円柱状の凹面である。永久磁石30bの第2の面32bは、第2の凹面としての半円柱状の凹面であり、第2の回転子鉄心20bの径方向内向きの面22bは、第2の凸面としての半円柱状の凸面である。また、上述した通り、永久磁石30bの第1の面31
b及び第2の面32
bが、いずれも曲面であることにより、永久磁石30bの周方向Rの長さは、実施の形態1の永久磁石30の周方向Rの長さより長くなる。よって、実施の形態1の変形例2に係る回転子1bの磁力を、実施の形態1に係る回転子1の磁力より大きくすることができる。
【0069】
〈実施の形態1の変形例2の効果〉
以上に説明した実施の形態1の変形例2によれば、永久磁石30bの第1の面31bが第1の回転子鉄心10bの径方向外向きの面11bに当接し、且つ永久磁石30bの第2の面32bが第2の回転子鉄心20bの径方向内向きの面22bに当接している。これにより、永久磁石30bと第1の回転子鉄心10bとの間、及び永久磁石30bと第2の回転子鉄心20bとの間には、間隙が発生しない。そのため、鎖交磁束の磁束量が低減することを防止できる。
【0070】
また、実施の形態1の変形例2によれば、永久磁石30bの第1の面31b及び第2の面32bはいずれも曲面である。これにより、永久磁石30bの周方向Rの長さは、実施の形態1の永久磁石30の周方向Rの長さより長くなる。よって、実施の形態1の変形例2に係る回転子1bの磁力を、実施の形態1に係る回転子1の磁力より大きくすることができる。
【0071】
《実施の形態2》
図9は、実施の形態2に係る回転子2の構成を示す平面図である。
図9において、
図2に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、
図2に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態2に係る回転子2は、第2の回転子鉄心220の形状の点で、実施の形態1に係る回転子1と相違する。これらの点以外に関し、実施の形態2は、実施の形態1と同じである。そのため、以下の説明では、
図2を参照する。
【0072】
図9に示されるように、回転子2は、第1の回転子鉄心10と、複数の第2の回転子鉄心220と、複数の永久磁石30と、樹脂部241とを有している。
【0073】
第2の回転子鉄心220は、径方向外向きの面21と、径方向内向きの面22と、径方向外向きの面21と径方向内向きの面22とを繋ぐ複数の側面223とを有する。
【0074】
図9に示されるように、磁極中心線Mに直交し且つシャフト50に直交する方向に伸びる直線をLとする。また、直線Lと側面223とがなす角度のうち磁極中心線M側の角度をθとしたとき、角度θは以下の式(
3)を満たす。
θ<90° (
3)
【0075】
角度θが式(2)を満たすことにより、周方向Rに隣接する2つの第2の回転子鉄心220の間を埋める樹脂部241の量が、実施の形態1の樹脂部41の量より増える。具体的には、樹脂部241は、実施の形態1の樹脂部41と比較して、径方向内向きの面22における周方向Rの端縁22sより径方向外側にも配置された端部241aを更に有している。これにより、樹脂部241が、第2の回転子鉄心20を第1の回転子鉄心10により一層強固に固定することができる。よって、電動機100の回転中における遠心力による第2の回転子鉄心20の径方向外側への変位を防止することができる。
【0076】
〈実施の形態2の効果〉
以上に説明した実施の形態2によれば、磁極中心線Mに直交し且つシャフト50に直交する方向に伸びる直線Lと側面223とがなす角度のうち磁極中心線M側の角度θが、90度より小さい。これにより、樹脂部241が、第2の回転子鉄心20を第1の回転子鉄心10により一層強固に固定することができる。よって、電動機100の回転中における遠心力による第2の回転子鉄心20の径方向の外側への変位を防止することができる。
【0077】
《実施の形態3》
次に、実施の形態3に係る回転子3について説明する。
図10は、実施の形態3に係る回転子3の構成を示す平面図である。
図10において、
図1に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、
図1に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態3に回転子3は、第1の回転子鉄心310の構成の点で、実施の形態1に係る回転子1と相違する。これ以外の点については、実施の形態3に係る回転子3は、実施の形態1に係る回転子1と同じである。そのため、以下の説明では、
図1を参照する。
【0078】
図10に示されるように、実施の形態3に係る回転子3は、第1の回転子鉄心310と、複数の第2の回転子鉄心20と、複数の永久磁石30と、樹脂部41とを有している。
【0079】
第1の回転子鉄心310は、周方向Rに配列された複数の分割鉄心部370を有している。実施の形態3では、第1の回転子鉄心310は、突出部12において分割されている。つまり、第1の回転子鉄心310は、周方向Rに隣接する2つの永久磁石30の間の部分において分割されている。そのため、実施の形態3では、複数の分割鉄心部370の数は、回転子3の磁極の数(つまり、永久磁石30の数)に対応している。具体的には、複数の分割鉄心部370の数は、回転子3の磁極の数と同じである。
【0080】
複数の分割鉄心部370のうちの各分割鉄心部370は、径方向外向きの面311を有している。永久磁石30の第1の面31は、分割鉄心部370の径方向外向きの面311に接している。これにより、永久磁石30と分割鉄心部370との間には間隙が発生しない。よって、鎖交磁束の磁束量が低減することを防止できる。
【0081】
複数の分割鉄心部370は、z軸方向に積層された複数の電磁鋼板を有する。実施の形態3では、第1の回転子鉄心310の製造時における、電磁鋼板の打ち抜き加工時の加工面積は、z軸方向に見たときの分割鉄心部370の平面積と同じである。他方、実施の形態1では、電磁鋼板15の打ち抜き加工時の加工面積は、環状の第1の回転子鉄心10の平面積と同じである。そのため、実施の形態3において、電磁鋼板15の打ち抜き加工時の加工面積は、実施の形態1における電磁鋼板15の打ち抜き加工時の加工面積より狭い。よって、実施の形態3では、第1の回転子鉄心310の製造時における歩留まりを向上させることができる。
【0082】
〈実施の形態3の効果〉
以上に説明した実施の形態3によれば、永久磁石30の第1の面31が第1の回転子鉄心310の径方向外向きの面311に当接し、且つ永久磁石30の第2の面32が第2の回転子鉄心20の径方向内向きの面22に当接している。これにより、永久磁石30と第1の回転子鉄心310との間、及び永久磁石30と第2の回転子鉄心20との間には、間隙が発生しない。そのため、鎖交磁束の磁束量が低減することを防止できる。
【0083】
また、実施の形態3によれば、第1の回転子鉄心310は、複数の分割鉄心部370を有する。これにより、第1の回転子鉄心310の製造時における歩留まりを向上させることができる。
【0084】
《実施の形態3の変形例1》
次に、実施の形態3の変形例1に係る回転子3aについて説明する。
図11は、実施の形態3の変形例1に係る回転子3aの構成を示す平面図である。
図11において、
図10に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、
図10に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態3の変形例1に係る回転子3aは、第1の回転子鉄心310aの形状の点で、実施の形態3に係る回転子3と相違する。
【0085】
図11に示されるように、第1の回転子鉄心310aは、周方向Rに配列された複数の分割鉄心部370aを有している。複数の分割鉄心部370aの各分割鉄心部370aは、第1の嵌合部としての凸部371と、周方向Rに隣接する他の分割鉄心部370aの凸部371に嵌合する第2の嵌合部としての凹部372とを有している。このように、周方向Rに隣接する2つの分割鉄心部370aのうちの一方の凸部371に、他方の凹部372が嵌合することにより、隣接する2つの分割鉄心部370aが強固に固定される。よって、第1の回転子鉄心310aの剛性を向上させることができる。
【0086】
〈実施の形態3の変形例1の効果〉
以上に説明した実施の形態3の変形例1によれば、複数の分割鉄心部370aの隣接する2つの分割鉄心部370aのうちの一方は、凸部371を有し、2つの分割鉄心部370aのうちの他方は、凸部371に嵌合する凹部372を有する。これにより、隣接する2つの分割鉄心部370aが強固に固定される。よって、第1の回転子鉄心310aの剛性を向上させることができる。
【0087】
《実施の形態4》
次に、実施の形態4に係る回転子4について説明する。
図12は、実施の形態4に係る回転子4の構成を示す断面図である。
図12において、
図1~3に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、
図1~3に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態4に係る回転子4は、第1の回転子鉄心10、第2の回転子鉄心20及び永久磁石30のそれぞれの軸方向の端面を覆う第2の樹脂部442、443を更に有している点で、実施の形態1に係る回転子1と相違する。これ以外の点については、実施の形態4に係る回転子4は、実施の形態1に係る回転子1と同じである。そのため、以下の説明では、
図2を参照する。
【0088】
図12に示されるように、回転子4は、第1の回転子鉄心10と、複数の第2の回転子鉄心20と、複数の永久磁石30と、第1の樹脂部441と、シャフト50と、複数の第2の樹脂部442、443とを有している。
【0089】
第1の樹脂部441は、複数の第2の回転子鉄心20のうちの周方向Rに隣接する2つの第2の回転子鉄心20(
図2参照)の間を埋めている。
【0090】
第2の樹脂部442は、第1の回転子鉄心10、第2の回転子鉄心20及び永久磁石30のそれぞれの軸方向の一方の端面10e、20e、30eを覆うように配置されている。第2の樹脂部443は、第1の回転子鉄心10、第2の回転子鉄心20及び永久磁石30のそれぞれの軸方向の他方の端面10f、20f、30fを覆うように配置されている。これにより、複数の第2の回転子鉄心20及び複数の永久磁石30を、第1の回転子鉄心10を一層強固に固定することができる。第2の樹脂部442、443が、永久磁石30の軸方向の端面30e、30fをそれぞれ覆っていることによって、永久磁石30が空気に晒されない。永久磁石30における錆の発生を抑制でき、永久磁石30の良好な磁気特性を維持することができる。
【0091】
第2の樹脂部442、443と第1の樹脂部441とは一体に形成されている。これにより、周方向Rに配列された複数の第1の樹脂部441が、第2の樹脂部442、443を介して互いに連結されるため、回転子4の剛性を向上させることができる。なお、回転子4は、第2の樹脂部442、443が第1の樹脂部441と一体に形成されていなくても実現することができる。また、回転子4は、複数の第2の樹脂部442、443のうちいずれか一方の第2の樹脂部のみを有していてもよい。
【0092】
〈実施の形態4の効果〉
以上に説明した実施の形態4によれば、回転子4は、軸方向において、第1の回転子鉄心10、第2の回転子鉄心20及び永久磁石30のそれぞれの軸方向の端面を覆うように配置された第2の樹脂部442、443を更に有している。これにより、複数の第2の回転子鉄心20及び複数の永久磁石30を、第1の回転子鉄心10に一層強固に固定することができる。
【0093】
また、実施の形態4によれば、第2の樹脂部442、443が、永久磁石30の軸方向の端面30e、30fをそれぞれ覆っている。これにより、永久磁石30が空気に晒されない。よって、永久磁石30における錆の発生を抑制でき、永久磁石30の良好な磁気特性を維持することができる。
【0094】
また、実施の形態4によれば、第2の樹脂部442,443は、第1の樹脂部441と繋がっている。これにより、周方向Rに配列された複数の第1の樹脂部441が、第2の樹脂部442、443を介して互いに連結されるため、回転子4の剛性を向上させることができる。
【0095】
《実施の形態5》
次に、
図1に示される電動機100を有する送風機500について説明する。
図13は、実施の形態5に係る送風機500の構成を示す図である。
【0096】
図13に示されるように、送風機500は、電動機100と、電動機100によって駆動されるファン501とを有している。ファン501は、電動機100のシャフトに取り付けられている。電動機100のシャフトが回転すると、ファン501が回転し、気流が生成される。送風機500は、例えば、後述の
図14に示される空気調和装置600の室外機620の室外送風機として用いられる。この場合、ファン501は、例えば、プロペラファンである。
【0097】
〈実施の形態5の効果〉
以上に説明した実施の形態5によれば、送風機500は、実施の形態1で説明した電動機100を有する。上述した通り、実施の形態1に係る電動機100では、鎖交磁束の磁束量の低下を防止できるため、電動機100の出力トルクが低下することを防止できる。よって、送風機500の出力が低下することも防止できる。
【0098】
《実施の形態6》
次に、
図13に示される送風機500を有する空気調和装置600について説明する。
図14は、実施の形態6に係る空気調和装置600の構成を示す図である。
【0099】
図14に示されるように、空気調和装置600は、室内機610と、室外機620と、冷媒配管630とを有している。室内機610及び室外機620は、冷媒配管630によって接続されることで、冷媒が循環する冷媒回路を構成する。空気調和装置600は、例えば、室内機610から冷たい空気を送風する冷房運転、又は温かい空気を送風する暖房運転等の運転を行うことができる。
【0100】
室内機610は、室内送風機611と、室内送風機611を収容するハウジング612とを有している。室内送風機611は、電動機611aと、電動機611aによって駆動されるファン611bとを有している。ファン611bは、電動機611aのシャフトに取り付けられている。電動機611aのシャフトが回転することで、ファン611bが回転し、気流が生成される。ファン611bは、例えば、クロスフローファンである。
【0101】
室外機620は、室外送風機としての送風機500と、圧縮機621と、送風機500及び圧縮機621を収容するハウジング622とを有している。圧縮機621は、冷媒を圧縮する圧縮機構部621aと、圧縮機構部621aを駆動する電動機621bとを有している。圧縮機構部621aと電動機621bとは、回転軸621cによって互いに連結されている。なお、圧縮機621の電動機621bには、実施の形態1に係る電動機100が用いられてもよい。
【0102】
例えば、空気調和装置600の冷房運転時に、圧縮機621で圧縮された冷媒が凝縮器(図示せず)で凝縮する際に放出された熱が、送風機500の送風によって室外に放出される。なお、実施の形態5に係る送風機500は、室外機620の室外送風機に限らず、上述した室内送風機611として用いられてもよい。また、送風機500は、空気調和装置600に限らず、他の機器に備えられていてもよい。
【0103】
室外機620は、冷媒の流れ方向を切り替える四方弁(図示しない)を更に有している。室外機620の四方弁は、圧縮機621から送り出された高温高圧の冷媒ガスを、冷房運転時には室外機620の熱交換器に流し、暖房運転時には、室内機610の熱交換器に流す。
【0104】
〈実施の形態6の効果〉
以上に説明した実施の形態6によれば、空気調和装置600は、送風機500を有している。上述した通り、送風機500は、実施の形態1で説明した電動機100を有しているため、送風機500の出力が低下することを防止できる。よって、空気調和装置600の出力が低下することも防止できる。
【符号の説明】
【0105】
1、1a、1b、2、3、3a、4 回転子、 10、10a、10b、310 第1の回転子鉄心、 10e、10f、20e、20f、30e、30f 端面、 11、11a、11b、311 径方向外向きの面、 20、20a、20b、220 第2の回転子鉄心、 22、22a、22b 径方向内向きの面、 23、223 側面、 30、30a、30b 永久磁石、 31 第1の面、 32 第2の面、 41 樹脂部、 41a 径方向外向きの面、 50 シャフト、 60 固定子鉄心、 61 ヨーク部、 62 ティース部、 62a ティース延伸部、 62b ティース先端部、 80 中間構造体、 100、621b 電動機、 370、370a 分割鉄心部、 371 凸部、 372 凹部、 441 第1の樹脂部、 442、443 第2の樹脂部、 500 送風機、 501 ファン、 600 空気調和装置、 611 室内送風機、 C 軸線、 L、S1、S2 直線、 M 磁極中心線、 P 磁極、 W1、W2 周方向の長さ、 α、θ 角度。