IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

特許7403687電力変換装置、モータ駆動システム、及び信号伝送用ケーブルの断線検出方法
<>
  • 特許-電力変換装置、モータ駆動システム、及び信号伝送用ケーブルの断線検出方法 図1
  • 特許-電力変換装置、モータ駆動システム、及び信号伝送用ケーブルの断線検出方法 図2
  • 特許-電力変換装置、モータ駆動システム、及び信号伝送用ケーブルの断線検出方法 図3
  • 特許-電力変換装置、モータ駆動システム、及び信号伝送用ケーブルの断線検出方法 図4
  • 特許-電力変換装置、モータ駆動システム、及び信号伝送用ケーブルの断線検出方法 図5
  • 特許-電力変換装置、モータ駆動システム、及び信号伝送用ケーブルの断線検出方法 図6
  • 特許-電力変換装置、モータ駆動システム、及び信号伝送用ケーブルの断線検出方法 図7
  • 特許-電力変換装置、モータ駆動システム、及び信号伝送用ケーブルの断線検出方法 図8
  • 特許-電力変換装置、モータ駆動システム、及び信号伝送用ケーブルの断線検出方法 図9
  • 特許-電力変換装置、モータ駆動システム、及び信号伝送用ケーブルの断線検出方法 図10
  • 特許-電力変換装置、モータ駆動システム、及び信号伝送用ケーブルの断線検出方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】電力変換装置、モータ駆動システム、及び信号伝送用ケーブルの断線検出方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231215BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022566594
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2020045138
(87)【国際公開番号】W WO2022118450
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2022-12-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春名 延是
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 慶多
(72)【発明者】
【氏名】山梶 佑介
(72)【発明者】
【氏名】鷲野 将臣
【審査官】町田 舞
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-248371(JP,A)
【文献】国際公開第2019/017200(WO,A1)
【文献】特開2016-112625(JP,A)
【文献】特開2003-180088(JP,A)
【文献】特開2001-268736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力入力端子に入力された電力をモータへの交流電力に変換し、当該変換したモータへの交流電力を、前記モータに交流電力を供給するための動力用ケーブルの電力用ケーブルが接続される電力出力端子に出力する電力変換回路と、
前記動力用ケーブルのグラウンド線が接続されるグラウンド端子と、
情報入力端子に入力された信号伝送用ケーブルの信号線からの角度情報に基づきエンコーダ情報を出力するエンコーダ回路と、
前記エンコーダ回路からのエンコーダ情報に基づき前記電力変換回路を制御する制御信号を出力する制御部と、
前記動力用ケーブルのグラウンド線と前記モータ側で電気的に接続される前記信号伝送用ケーブルのシールドが接続されるシールド端子と、
前記シールド端子に入力された前記信号伝送用ケーブルのシールドに流れる電流を検出し、前記信号伝送用ケーブルのシールドにおける断線に対する断線検出情報を出力する判定部と、
を備えた電力変換装置。
【請求項2】
前記電力入力端子に入力された電力は直流電力である請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記電力入力端子に入力された電力は交流電力である請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電力変換回路は、入力端が前記電力入力端子に接続され、入力された交流電力の交流電圧を直流電圧に変換して出力端に出力する整流回路と、入力端が前記整流回路の出力端に接続され、入力された直流電圧に基づき交流電圧に変換して交流電力を出力端に出力し、当該出力端が前記電力出力端子に接続されるインバータ回路とを有し、
前記判定部は、前記シールド端子に接続される接地線に流れる電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部により検出された電流と設定値を比較し、当該比較結果に基づき前記信号伝送用ケーブルのシールドの断線に対する断線検出情報を出力する比較部を有する、
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記整流回路と前記インバータ回路とを接続する一対の母線のそれぞれと接地ノードとの間に接続されたコンデンサを備えた請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
モータへの交流電力を伝送する電力用ケーブルとグラウンド線を有する動力用ケーブルと、
前記モータの回転軸の角度情報を伝送する信号線と、前記動力用ケーブルのグラウンド線と前記モータ側で電気的に接続されるシールドを有する信号伝送用ケーブルと、
電力源からの電力をモータへの交流電力に変換し、前記動力用ケーブルの電力用ケーブルに前記モータへの交流電力を供給する電力変換回路、前記動力用ケーブルのグラウンド線が接続されるグラウンド端子、前記信号伝送用ケーブルの信号線からの角度情報に基づきエンコーダ情報を出力するエンコーダ回路、前記エンコーダ回路からのエンコーダ情報に基づき前記電力変換回路を制御する制御信号を出力する制御部、前記信号伝送用ケーブルのシールドに流れる電流を検出し、前記信号伝送用ケーブルのシールドの断線に対する断線検出情報を出力する判定部を有する電力変換装置と、
を備えたモータ駆動システム。
【請求項7】
前記電力変換回路は、入力端が前記電力源からの電力が入力される電力入力端子に接続され、入力された電源電圧に基づき交流電圧に変換して交流電力を出力端に出力し、当該出力端が前記動力用ケーブルの電力用ケーブルが接続される電力出力端子に接続されるインバータ回路とを有し、
前記判定部は、前記信号伝送用ケーブルのシールドが接続されるシールド端子に接続される接地線に流れる電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部により検出された電流と設定値を比較し、当該比較結果に基づき前記信号伝送用ケーブルのシールドの断線に対する断線検出情報を出力する比較部を有する、
請求項6に記載のモータ駆動システム。
【請求項8】
前記電力変換回路は、入力端が前記電力源からの交流電力が入力される電力入力端子に接続され、入力された交流電力の交流電圧を直流電圧に変換して出力端に出力する整流回路と、入力端が前記整流回路の出力端に接続され、入力された直流電圧に基づき交流電圧に変換して交流電力を出力端に出力し、当該出力端が前記動力用ケーブルの電力用ケーブルが接続される電力出力端子に接続されるインバータ回路とを有し、
前記判定部は、前記信号伝送用ケーブルのシールドが接続されるシールド端子に接続される接地線に流れる電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部により検出された電流と設定値を比較し、当該比較結果に基づき前記信号伝送用ケーブルのシールドの断線に対する断線検出情報を出力する比較部を有する、
請求項6に記載のモータ駆動システム。
【請求項9】
前記整流回路と前記インバータ回路とを接続する一対の母線のそれぞれと接地ノードとの間に接続されたコンデンサを備えた請求項8に記載のモータ駆動システム。
【請求項10】
前記電力変換装置と前記電力源との間に、コモンモードチョークコイルとコンデンサを有するノイズフィルタが接続された請求項6から請求項9のいずれか1項に記載のモータ駆動システム。
【請求項11】
前記動力用ケーブルと前記信号伝送用ケーブルが共通の絶縁被覆で被覆された請求項6から請求項10のいずれか1項に記載のモータ駆動システム。
【請求項12】
電流検出部が、モータの回転軸の角度情報を伝送する信号線、及びモータへの交流電力を伝送する動力用ケーブルのグラウンド線とモータ側で電気的に接続されるシールドを有する信号伝送用ケーブルのシールドに流れる電流を検出する検出ステップと、
比較部が、前記検出ステップにより検出された前記シールドに流れる電流と設定値とを比較し、当該比較結果に基づき、前記信号伝送用ケーブルのシールドの断線検出を実施する断線検出ステップと、
を備えた信号伝送用ケーブルの断線検出方法。
【請求項13】
電流検出部が、モータの回転軸の角度情報を伝送する信号線、及び電力変換回路から供給されるモータへの3相の交流電力を伝送する動力用ケーブルのグラウンド線とモータ側で電気的に接続されるシールドを有する信号伝送用ケーブルのシールドに、前記電力変換回路の上アーム3相分すべてがターンオンし、下アーム3相分がすべてターンオフされた時、もしくは上アーム3相分すべてがターンオフし、下アーム3相分がすべてターンオンされた時に流れる電流を検出し、検出した電流値を設定値として設定する設定ステップと、
電流検出部が、前記信号伝送用ケーブルのシールドに流れる電流を検出する検出ステップと、
比較部が、前記検出ステップにより検出された前記シールドに流れる電流と前記設定ステップにより設定された設定値とを比較し、当該比較結果に基づき、前記信号伝送用ケーブルのシールドの断線検出を実施する断線検出ステップと、
を備えた信号伝送用ケーブルの断線検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータの回転軸の角度情報を伝送する信号線とシールドを有する信号伝送用ケーブルの断線の有無を判定できる電力変換装置、モータ駆動システム、及び信号伝送用ケーブルの断線検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場用ロボット及び工場用工作機械では、サーボモータに電力を供給するための動力用ケーブル及びモータの回転軸の角度情報を伝送する信号線が接続されている。これらはサーボモータの可動により断線する場合があり、これらの断線を未然に防ぐために、シールドケーブルのシールドの断線を検出する方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、抵抗溶接機のケーブルの断線を検出する方法として、シールドケーブルのシールド部の両端間にリレーを介して変圧器の3次巻線を接続し、リレーの開閉によりシールド線のシールド部が断線したことを検出する方法、及び直列接続された直流電源の一方の直流電源の一端とシールド線のシールド部の一端との間に、抵抗-フォトカプラ-抵抗を直列接続し、他方の直流電源の一端とシールド線のシールド部の他端との間に、抵抗-フォトカプラ-抵抗を直列接続し、それぞれの経路にサージ電流吸収用のコンデンサを接続し、経路に流れる電流の有無によりシールド線シールド部分の断線を検出する方法が示されている。
【0004】
特許文献2には、溶接ロボットに接続される一対の制御ケーブルのシールド層の両端部との間の電気的導通の有無を検知するための導通検知電路を設け、シールド層の断線検知を行う方法が示されている。
【0005】
特許文献3には、電動ブレーキ用ケーブルとして、電源供給線と信号線とは別に断線検知線を複合して構成したものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-3447号公報
【文献】特許第6473611号公報
【文献】特開2005-166450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2に示された技術では、変圧器の3次巻線又は直流電源と抵抗とフォトカプラを、あるいは導通検知電路を、シールドケーブルのシールドの断線の有無を判定する判定部とは別に設ける必要があり、また、特許文献3では断線検知線を用意する必要があるという課題があった。
【0008】
本開示は上記課題を解決するものであり、信号伝送用ケーブルのシールドの断線の有無を判定する判定部とは別に新たに、シールドの断線の有無を判定するための電源、導通検知電路、断線検知線を追加する必要がない電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る電力変換装置は、電力入力端子に入力された電力をモータへの交流電力に変換し、当該変換したモータへの交流電力を、モータに交流電力を供給するための動力用ケーブルの電力用ケーブルが接続される電力出力端子に出力する電力変換回路と、動力用ケーブルのグラウンド線が接続されるグラウンド端子と、情報入力端子に入力された信号伝送用ケーブルの信号線からの角度情報に基づきエンコーダ情報を出力するエンコーダ回路と、エンコーダ回路からのエンコーダ情報に基づき電力変換回路を制御する制御信号を出力する制御部と、動力用ケーブルのグラウンド線とモータ側で電気的に接続される、信号伝送用ケーブルのシールドが接続されるシールド端子と、シールド端子に入力された信号伝送用ケーブルのシールドに流れる電流を検出し、信号伝送用ケーブルのシールドにおける断線に対する断線検出情報を出力する判定部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、シールド端子に接続された前記信号伝送用ケーブルのシールドに流れる電流を検出することにより、信号伝送用ケーブルのシールドに対する断線検出情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係るモータ駆動システムを示す回路図である。
図2】実施の形態1に係るモータ駆動システムにおける3相インバータ回路の1相分を共通的に示す回路図である。
図3図2に示す3相インバータ回路の1相分のコモンモード発生メカニズムを説明する簡易的な等価回路図である。
図4】実施の形態1におけるに係るモータ駆動システムを示し、コモンモード電流の伝搬経路を示す回路図である。
図5図4に示す3相インバータ回路の1相分のコモンモード電流の伝搬経路を示す等価回路図である。
図6】実施の形態1に係るモータ駆動システムにおける信号伝送ケーブルのシールドの断線を検出するフローチャートである。
図7】実施の形態1に係るモータ駆動システムにおける信号伝送ケーブルのシールドの断線を検出する他の例を示すフローチャートである。
図8】実施の形態2に係るモータ駆動システムを示す回路図である。
図9】実施の形態3に係るモータ駆動システムを示す回路図である。
図10】実施の形態4に係るモータ駆動システムを示す回路図である。
図11】実施の形態4に係るモータ駆動システムにおけるコモンモード電流の伝搬経路を示す等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
実施の形態1に係るモータ駆動システムを図1から図7を用いて説明する。
図1に示すように、モータ駆動システムは、電力変換装置10と、動力用ケーブル20と、信号伝送用ケーブル30と、ノイズフィルタ40を備える。
【0013】
系統電源である交流電力源50は、U相、相、及び相の3相の交流電力を供給する電力源であり、U相、相、及びW相の3相の電力線51U、51、51Wに接続される。
モータ60は3相モータであり、U相、相、及びW相の3相のモータ巻線61U、61V、61W及び回転軸を有するロータ(図示せず)を具備するモータ本体と、モータ本体61における回転軸の角度情報を得るエンコーダ回路62とを有する。
【0014】
モータ60は一般に知られている公知のサーボモータである。
エンコーダ回路62は、サーボモータに適用される一般に知られている公知のエンコーダ回路である。
【0015】
電力変換装置10は、電力入力端子11U、11V、11Wと、電力出力端子12U、12V、12Wと、グラウンド端子12Gと、情報入力端子13a、13bと、シールド端子13Gと、電力変換回路14と、エンコーダ回路15と、制御部である制御回路16と、判定部17とを有する。電力変換回路14とエンコーダ回路15と制御回路16はサーボアンプを構成する。電力変換装置10は回路基板(図示せず)に実装される。
【0016】
3相分の電力入力端子11U、11V、11Wはそれぞれ、ノイズフィルタ40を介して対応した電力線51U、51V、51Wに接続される。
ノイズフィルタ40は、それぞれが対応した電力線51U、51V、51Wと電力入力端子11U、11V、11Wとの間に接続されたコモンモードチョークコイル41U、41V、41Wと、それぞれが対応した電力線51U、51V、51Wに一端が接続され、他端が接地ノードに接続されたコンデンサ42U、42V、42Wとを有する。
【0017】
3相分の電力出力端子12U、12V、12Wはそれぞれ、対応した動力用ケーブル20における3相分の電力用ケーブル21U、21V、21Wの一端が接続される。
電力用ケーブル21U、21V、21Wの他端はそれぞれ、対応したモータ本体61の3相のモータ巻線61U、61V、61Wに接続される。
【0018】
グラウンド端子12Gは動力用ケーブル20のグラウンド線21Gの一端が接続される。
グラウンド線21Gの他端は、モータ巻線61U、61V、61Wなどを収納するモータ本体61のモータ筐体(図示せず)に接続される。モータ筐体は金属製である。
グラウンド端子12Gは接地線80aを介してヒートシンク70に接続される。ヒートシンク70は電力変換回路14から発生される熱を放熱する放熱フィンであり、接地される。ヒートシンク70は整流回路141又はインバータ回路143の少なくとも一方に対する放熱用として回路基板に実装される。
【0019】
動力用ケーブル20は、モータへの交流電力を伝送する芯線である3相分の電力用ケーブル21U、21V、21Wと、安全確保のためのグラウンド線21Gを有する。
グラウンド線21Gは、電力変換回路14から電力用ケーブル21U、21V、21Wを伝わってきた電磁ノイズを電力変換回路14側にリターンさせる役割もあり、電力用ケーブル21U、21V、21Wから電磁ノイズが放射するのを防止する。
電力用ケーブル21U、21V、21W及びグラウンド線21Gはそれぞれ周囲を被覆され、設定されたピッチ間隔により撚り線構造とされ、表面絶縁体22により被覆される。動力用ケーブル20は一般に知られている公知のグラウンド線を有したケーブルである。
【0020】
一対の情報入力端子13a、13bはそれぞれ、信号伝送用ケーブル30の信号線31a、31bの一端が接続される。
一対の信号線31a、31bの他端は、エンコーダ回路62の出力端に接続される。
信号線31a、31bは、エンコーダ回路62から出力されるモータ60の回転軸の角度情報をフィードバック信号として一対の情報入力端子13a、13bへ伝送する。
【0021】
シールド端子13Gは、信号伝送用ケーブル30のシールド31Gの一端が接続される。
シールド31Gの他端は、モータ本体61のモータ筐体に接続される。
シールド31Gはモータ本体61のモータ筐体を介して動力用ケーブル20のグラウンド線21Gとモータ60側で電気的に接続される。
【0022】
信号伝送用ケーブル30は、モータ60の回転軸の角度情報を伝送する芯線である信号線31a、31bと、信号線31a、31bを被覆する層間絶縁体と、層間絶縁体の周囲を囲うように設けられ、信号線31a、31bに電磁ノイズが侵入するのを防止する網目状の金属からなるシールド31Gを有する。シールド31Gは表面絶縁体32により被覆される。信号伝送用ケーブル30は一般に知られている公知のシールドケーブルである。
【0023】
電力入力端子11U、11V、11Wと、電力出力端子12U、12V、12Wと、グラウンド端子12Gと、情報入力端子13a、13bと、シールド端子13Gとは回路基板(図示せず)の表面の端部に設けられる。
【0024】
電力変換回路14は、電力入力端子11U、11V、11Wに入力された交流電力源50からの交流電力をモータ60への交流電力に変換し、電力出力端子12U、12V、12Wにモータ60への交流電力を供給する回路である。電力変換回路14は回路基板の表面に実装される。
【0025】
電力変換回路14は、整流回路141と平滑コンデンサ142とインバータ回路143を有する。
整流回路141は、3相分の入力端それぞれが電力入力端子11U、11V、11Wに接続され、入力された3相の交流電力の交流電圧を単相の直流電圧に変換して一対の出力端に出力する。整流回路141の出力端はそれぞれP母線144PとN母線144Nに接続される。
整流回路141はダイオード又はサイリスタの整流素子を用いた3相ブリッジ整流回路などの全波整流回路であり、一般に知られている公知の3相整流回路である。
【0026】
平滑コンデンサ142はP母線144PとN母線144Nとの間に接続され、整流回路141の出力端から出力された単相の直流電力を平滑する。
インバータ回路143は、一対の入力端それぞれが整流回路141の一対の出力端にP母線144P及びN母線144Nを介して接続され、入力された直流電圧に基づき交流電圧に変換し、設定された電圧及び周波数に変換された3相の交流電力を3相分の出力端に出力する。インバータ回路143の3相分の出力端それぞれは電力出力端子12U、12V、12Wに接続され、インバータ回路143の出力端からのモータへの交流電力が動力用ケーブル20の電力用ケーブル21U、21V、21Wを介して、モータ60のモータ巻線61U、61V、61Wに供給され、モータ60は駆動される。
【0027】
インバータ回路143は、U相、V相、及びW相のインバータ143U、143V、143Wを有する。
U相、V相、及びW相のインバータ143U、143V、143Wは、図2に3相インバータ回路の1相分を共通的に示すように、それぞれが、P母線144PとN母線144Nとの間に直列に接続された上アーム1431と下アーム1432を有する。
【0028】
上アーム1431と下アーム1432との接続点が出力端になり、それぞれの出力端が対応した電力出力端子12U、12V、12Wに接続される。
上アーム1431と下アーム1432はそれぞれ、パワー半導体であるトランジスタTrと、トランジスタTrと逆並列に接続されたダイオードDを有する。
インバータ回路143は、一般に知られている公知のインバータ回路である。
【0029】
エンコーダ回路15は、信号伝送用ケーブル30の信号線31a、31bを介して情報入力端子13a、13bに入力されたエンコーダ回路62からのモータ60における回転軸の角度情報であるフィードバック信号に基づきエンコーダ情報を出力する。エンコーダ回路15は回路基板の表面に実装される。
【0030】
制御回路16は電力変換回路14を制御し、エンコーダ回路15からのエンコーダ情報に基づき電力変換回路14をフィードバック制御する。
制御回路16は、設定された電圧及び周波数によりモータ本体61が動作するように、インバータ回路143にスイッチング指令である制御信号を出力する。また、エンコーダ回路15からのエンコーダ情報を演算し、インバータ回路143への制御信号に対してフィードバック制御する。制御信号は、インバータ回路143の上アーム1431及び下アーム1432におけるトランジスタTrの制御電極に入力される。
【0031】
また、制御信号は、例えば、パルス幅変調方式の場合は、上アーム1431及び下アーム1432におけるトランジスタTrのオン信号及びオフ信号のタイミングを示す信号である。
制御回路16は専用の回路により構成しても良いし、マイクロコンピュータあるいはCPUにソフトウェアとして組み込まれたものでもよく、一般に知られている公知のサーボアンプに適用されたものであればよい。専用の回路による制御回路16及びソフトウェアにより同じ機能を持つものを総称して制御部と称す。以下、説明の混乱を防ぐため、いずれの場合も制御回路16として説明する。
【0032】
判定部17は、シールド端子13Gに入力された信号伝送用ケーブル30のシールド31Gに流れる電流を検出し、信号伝送用ケーブル30のシールド31Gにおける断線に対する断線検出情報を出力する。
断線検出情報は、シールド31Gが網目状の金属により構成されているので、網目の一部に断線が生じた場合、つまり、完全に断線した状態には至らない状態であるが断線の恐れがある状態である情報、又はシールド31Gが完全に断線した時の情報である。
判定部17は、電流検知部171と電流検出部172とデータ記憶部173と比較部174を有する
【0033】
電流検知部171はシールド端子13Gに一端が接続される接地線80bに流れる電流を計測する、一般に知られている公知の電流センサである。
接地線80bの他端はヒートシンク70に接続される。
【0034】
電流検出部172は、接地線80bに流れる電流を検出して電流値にする。電流検出部172は、電流検知部171により計測された電流を設定値と比較するための電流値とする。
インバータ回路143の動作、つまり、上アーム1431がターンオン時、下アーム1432がターンオフするタイミングでは図3のような等価回路となり、スイッチングによる電力出力端子12U、12V、12Wの電圧変動によりコモンモードノイズ電流I0が発生する。図は省略するが上アームがターンオフ、下アームがターンオンのタイミングでも等価回路的には下アーム側に電圧源、上アーム側に浮遊容量となるが、上下反転するだけで電力出力端子12U、12V、12Wの電位変動によりコモンモードノイズ電流I0が発生する。
【0035】
コモンモードノイズ電流I0は、動力用ケーブル20のグラウンド線21Gと信号伝送用ケーブル30のシールド31Gがモータ60側でモータ60のモータ筐体により電気的に接続されるため、動力用ケーブル20のグラウンド線21Gと信号伝送用ケーブル30のシールド31Gに分流される。
コモンモードノイズ電流I0は、接地線80aに流れる電流I1と接地線80bに流れる電流I2の和である。
【0036】
データ記憶部173は、しきい値となる設定値が記憶される。
この時の設定値は、ノイズの発生源となる電力変換回路14と、動力用ケーブル20と、信号伝送用ケーブル30と、これらのケーブルの長さと配置、モータ60の組み合わせから定まるコモンモードノイズ電流のピーク値である。
すなわち、この時の設定値は、信号伝送用ケーブル30のシールド31Gが網目の一部に断線が生じ、完全に断線には至らない状態であるが断線の恐れがある状態を示す値である。
なお、この時の設定値は、信号伝送用ケーブル30のシールド31Gが完全に断線した場合を示す値であってもよい。
【0037】
比較部174は、電流検出部172により検出された電流I2とデータ記憶部173に記憶された設定値を比較し、当該比較結果に基づき信号伝送用ケーブル30のシールド31Gにおける断線に対する断線検出情報を出力する。
比較部174は、電流検出部172により検出された電流I2の値がデータ記憶部173に記憶された設定値以下であると、シールド31Gにおける断線に対する断線検出情報を表示部90に出力する。
【0038】
シールド31Gの一部に断線が生じると、断線部分の拡大に伴い抵抗値が大きくなるため、コモンモードノイズ電流I0から分流された接地線80bに流れる電流I2は、抵抗値の増大に伴い小さい値に変化する。
データ記憶部173に記憶された設定値を適切に選択することにより、比較部174から表示部90に出力された断線検出情報により、シールド31Gの断線状態を知ることができ、シールド31Gの完全な断線を未然に防ぐことができる。
なお、設定値が、信号伝送用ケーブル30のシールド31Gが断線を示す値である場合は、比較部174は、シールド31Gに断線があることを示す断線検出情報を表示部90に出力する。
【0039】
電流検出部172及び比較部174はマイクロコンピュータあるいはCPUにソフトウェアとして組み込まれたものでよく、制御回路16が、マイクロコンピュータあるいはCPUにソフトウェアとして組み込まれている場合は、同じマイクロコンピュータあるいはCPUにソフトウェアにソフトとして組み込めばよい。
【0040】
表示部90は、回路基板に単独に設けられたLEDランプ、又はサーボアンプに接続されるコントローラユニットのLEDランプにより構成する、あるいは上位の制御用コンピュータの表示画面を表示部として利用するものである。
【0041】
[モータ駆動システムの動作]
次に、実施の形態1に係るモータ駆動システムの動作について説明する。
電源スイッチを投入することにより、交流電力源50から、U相、相、及び相の交流電力がU相、相、及び相の電力線51U、51、51W、ノイズフィルタ40、及び電力入力端子11U、11V、11Wを介して、電力変換装置10に供給される。
【0042】
電力変換装置10では、まず、整流回路141によりU相、V相、及びW相の交流電力を単相の直流電圧に変換し、平滑コンデンサ142により直流電圧を平滑した後、平滑された直流電力を、制御回路16からの制御信号に基づき、インバータ回路143により3相の交流電圧に変換して、モータ60への交流電力として設定された電圧及び周波数に変換された3相の交流電力を電力出力端子12U、12V、12Wに出力する。
制御回路16からの制御信号は、エンコーダ回路15からのエンコーダ情報に従い、フィードバック制御される。
【0043】
電力出力端子12U、12V、12Wに供給された3相の交流電力は、動力用ケーブル20の電力用ケーブル21U、21V、21Wを介して、モータ60のモータ巻線61U、61V、61Wに供給され、モータ60は回転駆動される。
【0044】
一方、モータ60が回転駆動されると、エンコーダ回路62はモータ60における回転軸の角度情報を得、エンコーダ回路62から回転軸の角度情報は、信号伝送用ケーブル30の信号線31a、31b及び情報入力端子13a、13bを介してエンコーダ回路15に入力される。
エンコーダ回路15からのエンコーダ情報は、制御回路16に入力されて、インバータ回路143への制御信号に対してフィードバック制御に用いられる。
【0045】
[コモンモードノイズ電流I0の発生メカニズム]
インバータ回路143が、制御回路16からの制御信号により、高速スイッチング動作を行うと、動力用ケーブル20の電力用ケーブル21U、21V、21Wと接地との間にコモンモードノイズが発生し、電力用ケーブル21U、21V、21Wにコモンモードノイズ電流I0が流れる。
【0046】
まず、コモンモードノイズ電流I0の発生メカニズムについて説明する。
説明を簡略するため、インバータ回路143におけるインバータ143U、143V、143Wの1相分について図3を用いて説明する。
図3は、上アーム1431のトランジスタTrがターンオンし、下アーム1432のトランジスタTrがターンオフした場合の簡易的な等価回路図を示している。
【0047】
電力出力端子12U、12V、12Wの電圧は、N母線144Nの電位からP母線144Pの電位に変化する。この変化の過程で、動力用ケーブル20の電力用ケーブル21U、21V、21Wの浮遊容量、及びモータ60のモータ巻線61U、61V、61Wとモータ60のステータとの間の浮遊容量にコモンモード電圧が印加され、電力用ケーブル21U、21V、21W及びモータ巻線61U、61V、61Wから浮遊容量63U、63V、63Wを介してコモンモードノイズ電流I0がモータ60のモータ筐体へ流れる。
【0048】
図3に示した浮遊容量63U、63V、63Wはそれぞれ、対応した電力用ケーブル21U、21V、21Wの浮遊容量と、対応したモータ巻線61U、61V、61Wとモータ60のステータとの間の浮遊容量との合計である。
浮遊容量63U、63V、63Wはモータ60に依存する値である。
コモンモード電圧はΔt時間の間にΔV変化し、浮遊容量63U、63V、63Wの浮遊容量の値をCとすると、コモンモードノイズ電流I0はC×ΔV/Δtになる。
【0049】
コモンモードノイズ電流I0は、モータ60のモータ筐体に接続された動力用ケーブル20のグラウンド線21Gに流れる電流I1と信号伝送用ケーブル30のシールド31Gに流れる電流I2に分流して流れる。
電流I1はグラウンド端子12G及び接地線80aを介してヒートシンク70に流れる。
電流I2はシールド端子13G及び接地線80bを介してヒートシンク70に流れる。
【0050】
一方、上アーム1431のトランジスタTrがターンオフし、下アーム1432のトランジスタTrがターンオンした場合は、P母線144Pの電位からN母線144Nの電位に変化してコモンモードノイズ電流I0が流れ、電流I1と電流I2が流れる。
3相のインバータ143U、143V、143Wそれぞれに対して上記したコモンモードノイズ電流I0の発生メカニズムにより、コモンモードノイズ電流I0が流れ、電流I1と電流I2が流れる。
【0051】
[コモンモードノイズ電流I0の伝搬経路]
次に、モータ駆動システムにおけるコモンモードノイズ電流I0の伝搬経路を、図4を用いて説明する。
コモンモードノイズ電流I0のうちの大部分はモータ60のモータ筐体から動力用ケーブル20のグラウンド線21Gに流れる電流I1である。電流I1はグラウンド線21Gから、接地線80a-ヒートシンク70-ノイズフィルタ40のコンデンサ42U、42V、42Wを通り、P母線144P、N母線144Nを経てノイズ源であるインバータ回路143まで戻る。
【0052】
また、コモンモードノイズ電流I0のうちの残りの部分はモータ60のモータ筐体から信号伝送用ケーブル30のシールド31Gに流れる電流I2である。電流I2はシールド31Gから、接地線80b-ヒートシンク70-ノイズフィルタ40のコンデンサ42U、42V、42Wを通り、P母線144P、N母線144Nを経てノイズ源であるインバータ回路143まで戻る。
【0053】
[電流I1と電流I2の分流比]
動力ケーブルと信号伝送用ケーブル間が十分離れている場合におけるコモンモードノイズ電流I0からの電流I1と電流I2の分流比を決めるパラメータについて説明する。
説明を簡略するため、インバータ回路143におけるインバータ143U、143V、143Wの1相分について図5を用いて説明する。
【0054】
動力用ケーブル20の電力用ケーブル21U、21V、21Wはそれぞれ、ケーブル自体のインダクタンス21LU、21LV、21LWと、動力用ケーブル20のグラウンド線21Gとの間の相互インダクタンス21MU、21MV、21MWとの和である自己インダクタンスが存在する。
【0055】
動力用ケーブル20のグラウンド線21Gは、ケーブル自体のインダクタンス21LGと、動力用ケーブル20の電力用ケーブル21U、21V、21Wとの間の相互インダクタンス21MU、21MV、21MWとの和である自己インダクタンスが存在する。
信号伝送用ケーブル30のシールド31Gは自己インダクタンス31LGが存在する。
【0056】
動力用ケーブル20の電力用ケーブル21U、21V、21Wとモータ60のモータ筐体に接続されたグラウンド線21Gとの間に浮遊容量が存在し、モータ60のモータ巻線61U、61V、61Wとモータ60のステータとの間の浮遊容量が存在する。
【0057】
コモンモードノイズ電流I0の伝搬経路は図4を用いて説明したように、コモンモードノイズ電流I0が分流したグラウンド線21Gを流れる電流I1とシールド31Gを流れる電流I2との2つの経路がある。
電流I1と電流I2との分流比は、電流I1と電流I2の電流経路におけるインピーダンスで決まる。
【0058】
電力用ケーブル21U、21V、21Wと動力用ケーブル20のグラウンド線21Gとの間の相互インダクタンス21MU、21MV、21MWが大きいと、電流I1の電流経路におけるインピーダンスが低くなるため、電流I1はコモンモードノイズ電流I0から多く分流される。
【0059】
反対に結合が弱く、相互インダクタンス21MU、21MV、21MWが小さいと、電流I1の電流経路におけるインピーダンスが電流I2の電流経路におけるインピーダンスに比べて相対的に大きくなるため、電流I2は相対的に大きくなる。
【0060】
動力用ケーブル20の長さが長くなると、動力用ケーブル20の電力用ケーブル21U、21V、21Wのインダクタンス21LU、21LV、21LWと、相互インダクタンス21MU、21MV、21MWと、動力用ケーブル20のグラウンド線21Gのインダクタンス21LGと、信号伝送用ケーブル30のシールド31Gの自己インダクタンス31LGはすべて大きくなる。
【0061】
また、図4に示していないが、厳密には、電力線51U、51V、51W側から漏れてからコモンモードノイズ電流I0へ還流してくる電流成分も存在する。
しかし、実施の形態1においては、電力線51U、51V、51Wのインピーダンスをハイインピーダンスでマスクするコモンモードチョークコイル41U、41V、41Wと十分大きな容量のコンデンサ42U、42V、42Wを有するノイズフィルタ40を備えているので、電力線51U、51V、51W側から漏れるノイズ電流はコモンモードノイズ電流I0に対して非常に小さな値であり、電流I1及び電流I2に対しても無視できる値である。
【0062】
従って、電流I1及び電流I2は、動力用ケーブル20の長さ、信号伝送用ケーブル30の長さ、動力用ケーブル20の電力用ケーブル21U、21V、21W及びグラウンド線21Gの線間距離、動力用ケーブル20における撚り線構造のピッチ間隔、モータ60の構造、ノイズフィルタ40の特性、P母線144PとN母線144Nとの間の電圧により決定される。
【0063】
従って、動力用ケーブル20、信号伝送用ケーブル30、及びノイズフィルタ40を適切に選択することにより、断線検出情報を得るために、正常時に流れる電流I2の値を適切に設定できる。
なお、動力用ケーブル20の線間距離及び撚り線構造のピッチ間隔は、動力用ケーブル20における相互インダクタンス21MU、21MV、21MWを決定する一要因である。
【0064】
[信号伝送用ケーブル30の断線検出方法]
次に、判定部17よる信号伝送用ケーブル30の断線検出方法を図6に示すフローチャートにより説明する。
判定部における電流検出部172と比較部174は、機能としてマイクロコンピュータあるいはCPUにソフトウェアとして組み込まれたものであり、図6に示すフローチャートにより、信号伝送用ケーブル30の断線検出が実施される。
【0065】
ステップST1において、電流検知部171が接地線80bに流れる電流I2を検出した電流値を、電流検出部172が取り込む。
すなわち、ステップST1は、電流検出部172が、インバータ回路143の動作により発生したコモンモードノイズ電流I0のうちの、動力用ケーブル20のグラウンド線21Gとモータ60側で電気的に接続される信号伝送用ケーブル30のシールド31Gに流れる電流I2を検出する検出ステップである。
【0066】
ステップST2において、比較部174が、ステップST1において検出されたシールド31Gに流れる電流I2の電流値とデータ記憶部173に記憶された設定値とを比較し(比較ステップ)、電流I2の電流値が設定値以下であると判定する(判定ステップ)とステップST3に進む。判定ステップにおいて、電流I2の電流値が設定値を超えていると終了する。
【0067】
ステップST3に進むと、比較部174が信号伝送用ケーブル30のシールド31Gが断線の恐れがある状態を示す断線検出情報を表示部90に出力する。
ステップST2及びステップST3が、比較部174が、検出ステップにより検出されたシールド31Gに流れる電流I2の電流値とデータ記憶部173に記憶された設定値とを比較し、当該比較結果に基づき、信号伝送用ケーブル30のシールド31Gの断線検出を実施する断線検出ステップである。
【0068】
表示部90は、比較部174からの断線検出情報に基づき、ユーザに対して信号伝送用ケーブル30のシールド31Gの断線状態を警告する表示を行う。
ユーザは表示部90の表示により、信号伝送用ケーブル30のシールド31Gが断線の恐れがあることを知ることができ、信号伝送用ケーブル30及び動力用ケーブル20の交換を、ケーブルの断線前に行える。
【0069】
その結果、信号伝送用ケーブル30の断線を未然に防ぐことができ、ケーブルの断線によるモータ60を使用したラインが停止し、ラインの停止による工程遅延及びラインにおける装置、機器の修理による損失を未然に防ぐことができる。
【0070】
同様に、比較部174からの断線検出情報に基づく表示部90の表示により、動力用ケーブル20と電力出力端子12U、12V、12W及びグラウンド端子12Gとを接続するコネクタ、動力用ケーブル20とモータ60とを接続するコネクタ、信号伝送用ケーブル30と情報入力端子13a、13b及びシールド端子13Gとを接続するコネクタ、信号伝送用ケーブル30とモータ60とを接続するコネクタの接触不良を確認することができる。
【0071】
[データ記憶部173に記憶される設定値の設定の仕方の他の例]
実施の形態1に対する判定部17による信号伝送用ケーブル30の断線検出方法において、データ記憶部173に記憶される設定値の設定の仕方の他の例を図7に示すフローチャートにより説明する。
【0072】
実施の形態1に係るモータ駆動システムにおけるデータ記憶部173に記憶された設定値を、電力変換回路14と、エンコーダ回路15と、制御回路16と、動力用ケーブル20と、信号伝送用ケーブル30と、モータ60の組み合わせから定まるコモンモードノイズ電流によって決定していたが、この他の例では、モータ駆動システムの電力変換回路の3相すべての出力電圧が0で、モータのロータを回転させるためのトルクが発生しない、ノイズ電流のみが発生する試運転(ケーブル診断用運転)により、接地線80bに流れる電流I2を検出した電流値により決定した値としたものであり、その他の点については同じもしくは同様である。
【0073】
すなわち、モータ駆動システムの試運転時におけるステップST01において、インバータ回路143におけるインバータ143U、143V、143Wの上アーム1431のトランジスタTrが同時にターンオンし、下アーム1432のトランジスタTr同時にターンオフさせる、もしくは反対に上アーム1431のトランジスタTrが同時にターンオフし、下アーム1432のトランジスタTrが同時にターンオンさせ、電流検知部171が接地線80bに流れる電流I2を検出し、検出した電流I2を電流検出部172が取り込む。これはPWM制御において電力変換回路の出力3相すべて短絡しているため、出力電圧が0となり、ゼロベクトルとも呼ばれる状態であり、この状態を継続させると、モータを回転させるための電流も流れず、モータのロータにトルクが発生しないため、制御対象の装置は動作せず待機している状態となる。一般的なPWM制御の場合、出力電圧0の指令をだせば、上アーム1431のトランジスタTrが同時にターンオンし、下アーム1432のトランジスタTrが同時にターンオフ、次に上アーム1431のトランジスタTrが同時にターンオフし、下アーム1432のトランジスタTrが同時にターンオンするスイッチングが繰り返し行われる。
【0074】
ステップST02において、電流検出部172が取り込んだ電流I2の電流値に基づき、データ記憶部173に設定値として出力する。
データ記憶部173に記憶させる設定値は、電流検出部172が取り込んだ電流I2の電流値そのものでもよいし、電流I2の電流値を、例えば、0.8倍した電流値でもよい。
【0075】
モータ駆動システムが通常運転、もしくは、上記とは異なる時刻で出力電圧が0となるように上アーム1431と下アーム1432をスイッチングさせると、図6に示した判定部17による信号伝送用ケーブル30の断線検出方法と同様に、ステップST1からステップST3により、電流検出部172が信号伝送用ケーブル30のシールド31Gに流れる電流I2を検出し、電流I2の電流値とデータ記憶部173に記憶された設定値とを比較し、電流I2の電流値が設定値以下であると、信号伝送用ケーブル30のシールド31Gが断線の恐れがある状態を示す断線検出情報を表示部90に出力する。
【0076】
データ記憶部173に記憶される設定値は上アーム1431のトランジスタTrが同時にターンオンし、下アーム1432のトランジスタTr同時にターンオフさせる、もしくは反対に上アーム1431のトランジスタTrが同時にターンオフし、下アーム1432のトランジスタTrが同時にターンオンさせた時の、接地線80bに流れる電流I2に基づいた値としたので、モータ60を駆動するための周波数成分の電流が流れず、さらにインバータ143U、143V、143Wによるコモンモードノイズ電流が重なりあうため、コモンモード電圧の変動による瞬時的なコモンモードノイズ電流I0が最大の条件で検出でき、測定値とした精度の高い値が得られる。その結果、信号伝送用ケーブル30のシールド31Gに対する断線検出情報を精度高く得られる。
【0077】
モータ駆動システムを停止から通常運転する前に、毎回上アーム1431のトランジスタTrが同時にターンオンし、下アーム1432のトランジスタTr同時にターンオフさせる、もしくは反対に上アーム1431のトランジスタTrが同時にターンオフし、下アーム1432のトランジスタTrが同時にターンオンさせてノイズ測定を実施すれば、さらに診断の精度があがる。
【0078】
なお、上記した例では、判定部17による信号伝送用ケーブル30の断線検出方法は、モータ駆動システムが通常運転時常時行うものとしているが定期的に、電源投入後の通常運転前の出力電圧0状態のスイッチング、すなわち、上アーム1431のトランジスタTrが同時にターンオンし、下アーム1432のトランジスタTrが同時にターンオフさせる、もしくは反対に上アーム1431のトランジスタTrが同時にターンオフし、下アーム1432のトランジスタTrが同時にターンオンさせた条件で断線の検出を行うこととし、断線検出時において上アーム1431のトランジスタTrが同時にターンオンし、下アーム1432のトランジスタTr同時にターンオフさせる、もしくは反対に上アーム1431のトランジスタTrが同時にターンオフし、下アーム1432のトランジスタTrが同時にターンオンさせた時の、接地線80bに流れる電流I2とデータ記憶部173に記憶された設定値とを比較することにより、断線検出情報を得るものでもよい。
【0079】
この例においては、接地線80bに流れる電流I2として、通常時に接地線80bに流れる電流I2より大きな値となるため、信号伝送用ケーブル30のシールド31Gに対する断線検出情報をより精度高く得られる。
【0080】
以上のように構成された実施の形態1に係るモータ駆動システムは、動力用ケーブル20のグラウンド線21Gと信号伝送用ケーブル30のシールド31Gをモータ60側で電気的に接続し、電力変換装置10における電力変換回路14のインバータ回路143の動作により発生したコモンモードノイズ電流I0のうちの、信号伝送用ケーブル30のシールド31Gに流れる電流I2を検出し、信号伝送用ケーブルのシールドにおける断線に対する断線検出情報を出力するものとしたので、信号伝送用ケーブルのシールドに対する断線検出情報を得るために、モータ駆動システムに新たな電源又は信号回路を追加することなく、信号伝送用ケーブル30の断線を未然に防ぐことができ、信号伝送用ケーブル30の信号線31a、31bが断線して信号伝送できなくなる前に、信号伝送用ケーブル30のシールド31Gの断線段階で信号伝送用ケーブル30の劣化に気づくことができ、信号伝送用ケーブル30を交換することができる。
その結果、モータ60を使用したラインが停止し、ラインの停止による工程遅延及びラインにおける装置、機器の修理による損失を未然に防ぐことができる。
【0081】
さらに、信号伝送用ケーブル30のシールド31Gの断線が進展し、信号伝送用ケーブル30の信号線31a、31bが断線したり、インバータ143U、143V、143Wからのノイズが直接信号伝送用ケーブル30の信号線31a、31bに結合したり、突発的な外来ノイズが信号伝送用ケーブル30の信号線31a、31bに結合することにより、信号伝送用ケーブル30の信号線31a、31bによる通信エラーが生じるのを、信号伝送用ケーブル30を交換するタイミングを事前に知ることができるため、未然に防ぐことができる。
その結果、モータ60を使用したラインが停止し、ラインの停止による工程遅延及びラインにおける装置、機器の修理による損失を未然に防ぐことができる。
【0082】
また、電力変換装置10と交流電力源50との間に、コモンモードチョークコイル41U、41V、41Wとコンデンサ42U、42V、42Wを有するノイズフィルタ40を接続したので、信号伝送用ケーブル30のシールド31Gに流れる電流I2に占める電力線51U、51V、51W側から漏れるノイズ電流を無視でき、信号伝送用ケーブルのシールドに対する断線検出情報が精度高く得られる。
【0083】
実施の形態2.
実施の形態2に係るモータ駆動システムを、図8を用いて説明する。
実施の形態2に係るモータ駆動システムは、実施の形態1に係るモータ駆動システムが交流電力源50としてU相、V相、及びW相の3相の交流電力を供給する電力源を用いたものであるのに対して、直流電力源50Aを用いたものであり、直流電力源50Aを用いたことにより、電力変換回路14Aが平滑コンデンサ142とインバータ回路143を有する構成とした点が相違し、その他の点については実施の形態1に係るモータ駆動システムと同様である。
中、図1に付された符号と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0084】
すなわち、直流電力源50Aは、バッテリもしくは装置外部で交流を直流に変換して直流電力源であり、電力線51AP、51ANに接続される。
電力変換装置10Aは、電力入力端子11P、11Nと、電力出力端子12U、12V、12Wと、グラウンド端子12Gと、情報入力端子13a、13bと、シールド端子13Gと、電力変換回路14Aと、エンコーダ回路15と、制御部である制御回路16と、判定部17とを有する。電力変換回路14Aとエンコーダ回路15と制御回路16はサーボアンプを構成する。電力変換装置10Aは回路基板(図示せず)に実装される。
【0085】
電力入力端子11P、11Nそれぞれ、ノイズフィルタ40Aを介して対応した電力線51AP、51ANに接続される。
ノイズフィルタ40は、それぞれが対応した電力線51AP、51ANに一端が接続され、他端が接地ノードに接続されたコンデンサ42P、42Nを有する。
【0086】
ノイズフィルタ40は、それぞれが対応した電力線51AP、51ANと電力入力端子11P、11Nとの間に接続されたコモンモードチョークコイルと、それぞれが対応した電力線51AP、51ANに一端が接続され、他端が接地ノードに接続されたコンデンサを有するものでも良い。
【0087】
ノイズフィルタ40を設けることにより、電力線51AP、51AN側から漏れるノイズ電流はコモンモードノイズ電流に対して非常に小さな値であり、無視できる値である。
また、コンデンサ42P、42Nを装置内部に設けることにより、外部ノイズの影響を受けづらくなる。
【0088】
電力変換回路14Aは、平滑コンデンサ142とインバータ回路143を有する。
平滑コンデンサ142は、電力入力端子11P、11Nに接続されたP母線144PとN母線144Nとの間に接続され、直流電力源50Aから供給された直流電力を平滑する。
インバータ回路143は、一対の入力端それぞれがP母線144P及びN母線144Nに接続され、平滑された直流電圧に基づき交流電圧に変換し、設定された電圧及び周波数に変換された3相の交流電力を3相分の出力端に出力する。インバータ回路143は実施の形態1に係るモータ駆動システムにおける電力変換回路14のインバータ回路143と同じである。
【0089】
実施の形態2に係るモータ駆動システムは、実施の形態1に係るモータ駆動システムと電力源が直流電力源50Aである点が異なり、それに伴い電力変換回路14Aが直流電力源50Aに合うように変更されただけであるので、実施の形態1に係るモータ駆動システムと同様の動作を、同様の効果が得られる。
【0090】
実施の形態3.
実施の形態3に係るモータ駆動システムを、図9を用いて説明する。
実施の形態3に係るモータ駆動システムは、実施の形態1に係るモータ駆動システムに対して、整流回路141とインバータ回路143とを接続する一対の母線、つまり、P母線144PとN母線144Nそれぞれと接地ノードとなるヒートシンク70との間にコンデンサ18a、18bを接続した点が相違し、その他の点については同様である。
図9中、図1に付された符号と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0091】
コンデンサ18aをP母線144Pと接地ノードとの間に接続し、コンデンサ18bをN母線144Nと接地ノードとの間に接続した。
その結果、コモンモードノイズ電流I0が流れる還流経路となる伝搬経路におけるインピーダンスが低くなるので、電力線51U、51V、51W側に対してインピーダンスマスクする効果がある。
電力線51U、51V、51W側からの外部ノイズによるP母線144P及びN母線144Nに流れるノイズ電流はコンデンサ18a、18bによりヒートシンク70へ流れる。
【0092】
従って、電力線51U、51V、51W側からの外部ノイズの影響を抑制でき、信号伝送用ケーブル30のシールド31Gに流れる電流I2に占める外部ノイズの影響を無視でき、信号伝送用ケーブルのシールドに対する断線検出情報が精度高く得られる。
しかも、回路基板上において、コンデンサ18aがP母線144に、コンデンサ18bがN母線144Nに接続されるので、電力変換装置10の内部にノイズフィルタが実装されるため、ノイズフィルタとしての機能を十分に発揮できる。
【0093】
実施の形態4.
実施の形態4に係るモータ駆動システムを、図10及び図11を用いて説明する。
実施の形態4に係るモータ駆動システムは、実施の形態1に係るモータ駆動システムに対して、動力用ケーブル20と信号伝送用ケーブル30両者を絶縁被覆23によって内挿した点が相違し、その他の点については同様である。
図10中、図1に付された符号と同一符号は同一又は相当部分を示す。
図11中、図5に付された符号と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0094】
動力用ケーブル20と信号伝送用ケーブル30は隣接、つまり、一部が接触して配置され、両者の周囲を絶縁被覆23により被覆され、一体化される。
動力用ケーブル20と信号伝送用ケーブル30が隣接しているため、動力用ケーブル20の電力用ケーブル21U、21V、21Wと、グラウンド線21Gと、信号伝送用ケーブル30のシールド31Gとの間に相互インダクタンス21M’U、21M’V、21M’Wが存在する。
【0095】
動力用ケーブル20と信号伝送用ケーブル30は一体化されているため、別々の動力用ケーブル20と信号伝送用ケーブル30が近接して配置された場合に比べて、相互インダクタンス21M’U、21M’V、21M’Wの変動が小さく、動力用ケーブル20のグラウンド線21Gに流れる電流I1の伝搬経路におけるインピーダンス及び信号伝送用ケーブル30のシールド31Gに流れる電流I2の伝搬経路におけるインピーダンスの変動がない。
その結果、モータ駆動システムの通常運転時におけるコモンモードノイズ電流I0の変動が小さいため、電流I1及び電流I2の変動も小さく、信号伝送用ケーブル30のシールド31Gに対する断線検出情報を精度高く得られる。
【0096】
なお、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本開示に係るモータ駆動システムは、工場用のロボット又は工場用工作機械に適用されるのに好適である。
【符号の説明】
【0098】
10、10A 電力変換装置、11U、11V、11W 電力入力端子、12U、12V、12W電力出力端子、12G グラウンド端子、13a、13b 情報入力端子、13G シールド端子、14 電力変換回路、141 整流回路、142 平滑コンデンサ、143 インバータ回路、1431 上アーム、1432 下アーム、144P P母線、144N N母線、15 エンコーダ回路、16 制御回路、17 判定部、18a、18b コンデンサ、20 動力用ケーブル、21U、21V、21W 電力用ケーブル、21G グラウンド線、30 信号伝送用ケーブル、31a、31b 信号線、31G シールド、40 ノイズフィルタ、41U、41V、41W コモンモードチョークコイル、42U、42V、42W コンデンサ、50 交流電力源、51U、51v、51W 電力線、50A 直流電力源、51AP、51AN 電力線、60 モータ、61 モータ本体、62 エンコーダ回路、90 表示部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11