(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】バルクフィーダおよびフィーダ管理装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20231215BHJP
【FI】
H05K13/02 J
(21)【出願番号】P 2022577989
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2021003422
(87)【国際公開番号】W WO2022162917
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】高浜 透
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-18874(JP,A)
【文献】特開2018-26448(JP,A)
【文献】特開2009-105363(JP,A)
【文献】国際公開第2011/046107(WO,A1)
【文献】米国特許第6182718(US,B1)
【文献】国際公開第2016/051582(WO,A1)
【文献】特開2010-67907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
B65G 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィーダ本体と、
前記フィーダ本体に対して振動可能に設けられたブラケットと、
前記ブラケットに対して着脱可能に設けられ、複数の部品が搬送される搬送路、および前記搬送路に連通して複数の前記部品を採取可能に上方に開口する供給領域を形成された軌道部材と、
複数の前記部品が前記搬送路に沿って搬送されるように前記ブラケットを介して前記軌道部材に振動を付与する加振装置と、
前記軌道部材および前記ブラケットの一方に設けられた被係止部材と、
前記軌道部材および前記ブラケットの他方に設けられ、前記被係止部材に係止して前記ブラケットに対する前記前記軌道部材の相対移動を規制するロック状態、および前記被係止部材との係止が解除された解除状態を切り換えられるロック部材と、
を備えるバルクフィーダ。
【請求項2】
前記被係止部材は、前記フィーダ本体の幅方向且つ水平方向に突起し、前記フィーダ本体の前後方向における互いに異なる位置に設けられた一対のピンであり、
前記ロック部材は、
前記フィーダ本体の前後方向にスライド可能に設けられたフック本体と、
前記フック本体にそれぞれ設けられ、スライド方向の一端側に移動されて前記一対のピンに係止する一対のフック部と、を有する、請求項1に記載のバルクフィーダ。
【請求項3】
前記バルクフィーダは、前記フィーダ本体に対して前記フック本体を、前記一対のピンに前記一対のフック部が係止する方向に付勢する弾性部材をさらに備える、請求項2に記載のバルクフィーダ。
【請求項4】
前記バルクフィーダは、前記ロック状態と前記解除状態を切り換える操作力を受け付ける操作部をさらに備える、請求項3に記載のバルクフィーダ。
【請求項5】
前記操作部は、前記フック本体に対する前後方向の相対移動を規制されるとともに、前記フック本体に対する上下方向の相対移動を許容され、
前記バルクフィーダは、前記操作部に対する操作力により前記弾性部材の付勢力に抗して前記フック本体がスライドされて前記解除状態に切り換えられた状態において、下方への操作力により前記フック本体に対して下方に移動した前記操作部を保持することにより前記解除状態を維持する保持部をさらに備える、請求項4に記載のバルクフィーダ。
【請求項6】
請求項1-5の何れか一項に記載のバルクフィーダを対象とするフィーダ管理装置であって、
前記加振装置が前記軌道部材を加振したときの前記ブラケットの振動の周波数または振幅を測定する測定部と、
前記測定部による測定結果に基づいて、前記ブラケットに対する前記軌道部材のロックの適否を判定するロック判定部と、
を備えるフィーダ管理装置。
【請求項7】
バルクフィーダを対象とするフィーダ管理装置であって、
前記バルクフィーダは、
フィーダ本体と、
前記フィーダ本体に対して振動可能に設けられたブラケットと、
前記ブラケットに対して着脱可能に設けられ、複数の部品が搬送される搬送路、および前記搬送路に連通して複数の前記部品を採取可能に上方に開口する供給領域を形成された軌道部材と、
複数の前記部品が前記搬送路に沿って搬送されるように前記ブラケットを介して前記軌道部材に振動を付与する加振装置と、を備え、
前記フィーダ管理装置は、
前記加振装置が前記軌道部材を加振したときの前記ブラケットの振動の周波数または振幅を測定する測定部と、
前記測定部による測定結果に基づいて、前記ブラケットに対する前記軌道部材のロックの適否を判定するロック判定部と、
を備えるフィーダ管理装置。
【請求項8】
前記測定部は、前記ブラケットの振動の周波数を測定し、
前記ロック判定部は、前記ブラケットおよび前記軌道部材が前記加振装置の加振により一体的に振動する際の固有振動数と前記測定部による測定結果との差分が予め設定された許容範囲外である場合に、前記ブラケットに対する前記軌道部材のロックが不適であると判定する、請求項6または7に記載のフィーダ管理装置。
【請求項9】
前記加振装置は、
前記ブラケットを支持する支持部材と、
前記支持部材に設けられ、供給される電力に応じて振動する振動子と、を有し、
前記フィーダ管理装置は、
前記ブラケットに対して前記軌道部材がロックされた状態において、前記測定部による測定結果に基づいて前記振動子に供給する電力を調整し、前記ブラケットおよび前記軌道部材が一体的に固有振動数で振動する際に前記振動子に供給される電力を取得する校正部をさらに備える、請求項6-8の何れか一項に記載のフィーダ管理装置。
【請求項10】
前記フィーダ管理装置は、前記ロック判定部により前記ブラケットに対する前記軌道部材のロックが不適であると判定された場合に、作業者に対して通知する通知部をさらに備える、請求項6-9の何れか一項に記載のフィーダ管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルクフィーダおよびフィーダ管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バルクフィーダは、基板に部品を装着する部品装着機に装備され、バルク状態の部品の供給に用いられる。バルクフィーダは、部品ケースから排出された複数の部品を搬送し、吸着ノズルが部品を採取できるように上方に開口した供給領域において部品を供給する。特許文献1には、搬送路に振動を付与して複数の部品を搬送する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなバルクフィーダには、搬送路や供給領域を形成された軌道部材について、メンテナンス性向上の観点から着脱式を採用することがある。しかしながら、軌道部材は、加振装置により振動を付与される部材であるため、確実にロックされることを必要とされ、結果として着脱作業に時間を要する。また、バルクフィーダには、軌道部材のロックが不適であることに起因する動作不良の発生を防止することが求められる。
【0005】
本明細書は、軌道部材の着脱作業を簡易化することにより軌道部材の交換性を向上できるバルクフィーダを提供すること、および軌道部材のロックが不適であることを検出して動作不良の発生を防止することができるフィーダ管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、フィーダ本体と、前記フィーダ本体に対して振動可能に設けられたブラケットと、前記ブラケットに対して着脱可能に設けられ、複数の部品が搬送される搬送路、および前記搬送路に連通して複数の前記部品を採取可能に上方に開口する供給領域を形成された軌道部材と、複数の前記部品が前記搬送路に沿って搬送されるように前記ブラケットを介して前記軌道部材に振動を付与する加振装置と、前記軌道部材および前記ブラケットの一方に設けられた被係止部材と、前記軌道部材および前記ブラケットの他方に設けられ、前記被係止部材に係止して前記ブラケットに対する前記前記軌道部材の相対移動を規制するロック状態、および前記被係止部材との係止が解除された解除状態を切り換えられるロック部材と、を備えるバルクフィーダを開示する。
【0007】
本明細書は、バルクフィーダを対象とするフィーダ管理装置であって、前記バルクフィーダは、フィーダ本体と、前記フィーダ本体に対して振動可能に設けられたブラケットと、前記ブラケットに対して着脱可能に設けられ、複数の部品が搬送される搬送路、および前記搬送路に連通して複数の前記部品を採取可能に上方に開口する供給領域を形成された軌道部材と、複数の前記部品が前記搬送路に沿って搬送されるように前記ブラケットを介して前記軌道部材に振動を付与する加振装置と、を備え、前記フィーダ管理装置は、前記加振装置が前記軌道部材を加振したときの前記ブラケットの振動の周波数または振幅を測定する測定部と、前記測定部による測定結果に基づいて、前記ブラケットに対する前記軌道部材のロックの適否を判定するロック判定部と、を備えるフィーダ管理装置を開示する。
【発明の効果】
【0008】
このようなバルクフィーダの構成によると、ロック部材がブラケットに対する軌道部材のロック状態と解除状態とを切り換えることで、軌道部材の着脱作業を簡易化することができる。よって、軌道部材の交換性を向上できる。
【0009】
このようなフィーダ管理装置の構成によると、軌道部材を取り付けられるブラケットの実際の振動特性(周波数または振幅)に基づいて、軌道部材のロックが不適であることを検出することができる。よって、軌道部材のロックが不適であることに起因する動作不良の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】バルクフィーダを装備された部品装着機を模式的に示す平面図である。
【
図3】バルクフィーダの要部を模式的に示す側面図である。
【
図7】部品装着機およびフィーダ管理装置を示すブロック図である。
【
図8】ロック判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.部品装着機10の構成
部品装着機10は、例えば他の部品装着機10を含む複数種類の対基板作業機とともに、基板製品を生産する生産ラインを構成する。上記の生産ラインを構成する対基板作業機には、印刷機や検査装置、リフロー炉などが含まれ得る。
1-1.基板搬送装置
部品装着機10は、
図1に示すように、基板搬送装置11を備える。基板搬送装置11は、基板91を搬送方向へと順次搬送するとともに、基板91を機内の所定位置に位置決めする。
【0012】
1-2.部品供給装置12
部品装着機10は、部品供給装置12を備える。部品供給装置12は、基板91に装着される部品を供給する。部品供給装置12は、複数のスロット121にフィーダ122をそれぞれ装備される。フィーダ122には、例えば多数の部品が収納されたキャリアテープを送り移動させて、部品を採取可能に供給するテープフィーダが適用される。また、フィーダ122には、バルク状態(それぞれの姿勢が不規則なばら状態)で収容された部品を採取可能に供給するバルクフィーダ30が適用される。バルクフィーダ30の詳細については後述する。
【0013】
1-3.部品移載装置13
部品装着機10は、部品移載装置13を備える。部品移載装置13は、部品供給装置12により供給された部品を基板91上の所定の装着位置に移載する。部品移載装置13は、ヘッド駆動装置131、移動台132、装着ヘッド133、および吸着ノズル134を備える。ヘッド駆動装置131は、直動機構により移動台132を水平方向(X方向およびY方向)に移動させる。装着ヘッド133は、図示しないクランプ部材により移動台132に着脱可能に固定され、機内において水平方向に移動可能に設けられる。
【0014】
装着ヘッド133は、回転可能に且つ昇降可能に複数の吸着ノズル134を支持する。吸着ノズル134は、フィーダ122により供給される部品92を採取して保持する保持部材である。吸着ノズル134は、供給される負圧エアにより、フィーダ122により供給される部品を吸着する。装着ヘッド133に取り付けられる保持部材としては、部品を把持することにより保持するチャックなどが採用され得る。
【0015】
1-4.部品カメラ14、基板カメラ15
部品装着機10は、部品カメラ14、および基板カメラ15を備える。部品カメラ14、および基板カメラ15は、CMOSなどの撮像素子を有するデジタル式の撮像装置である。部品カメラ14、および基板カメラ15は、制御信号に基づいて撮像を行い、当該撮像により取得した画像データを送出する。部品カメラ14は、吸着ノズル134に保持された部品を下方から撮像可能に構成される。基板カメラ15は、装着ヘッド133と一体的に水平方向に移動可能に移動台132に設けられる。基板カメラ15は、基板91を上方から撮像可能に構成される。
【0016】
また、基板カメラ15は、基板91の表面を撮像対象とする他に、移動台132の可動範囲であれば種々の機器などを撮像対象にできる。例えば、基板カメラ15は、本実施形態において、
図4に示すように、バルクフィーダ30が部品92を供給する供給領域Asやバルクフィーダ30の上部に設けられた基準マーク356をカメラ視野に収めて撮像することができる。このように、基板カメラ15は、種々の画像処理に用いられる画像データを取得するために、異なる撮像対象の撮像に兼用され得る。
【0017】
1-5.制御装置20
部品装着機10は、
図1に示すように、制御装置20を備える。制御装置20は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路、および記憶装置により構成される。制御装置20は、制御装置20には、装着処理の制御に用いられる制御プログラムなどの各種データが記憶される。制御プログラムは、装着処理において基板91に装着される部品の装着位置、装着角度、および装着順序を示す。
【0018】
制御装置20は、複数の保持部材(吸着ノズル134)のそれぞれに保持された部品の保持状態の認識処理を実行する。具体的には、制御装置20は、部品カメラ14の撮像により取得された画像データを画像処理し、装着ヘッド133の基準位置に対する各部品の位置および角度を認識する。なお、制御装置20は、部品カメラ14の他に、例えば装着ヘッド133に一体的に設けられるヘッドカメラユニットなどが部品を側方、下方、または上方から撮像して取得された画像データを画像処理するようにしてもよい。
【0019】
制御装置20は、制御プログラムに基づいて、装着ヘッド133による部品の装着動作を制御して装着処理を実行する。ここで、装着処理には、採取動作と装着動作とが含まれるPPサイクル(ピックアンドプレースサイクル)を複数回に亘って繰り返す処理が含まれる。上記の「採取動作」とは、部品供給装置12により供給された部品を吸着ノズル134により採取する動作である。
【0020】
本実施形態において、制御装置20は、上記の採取動作の実行に際して、バルクフィーダ30を含む部品供給装置12の動作を制御する。バルクフィーダ30の動作を対象とした制御には、例えばバルクフィーダ30による部品92の供給動作、および後述するシャッタ51の開閉動作の制御が含まれる。
【0021】
制御装置20は、状態認識部22を備える。状態認識部22は、カメラ(本実施形態において、基板カメラ15)の撮像により取得した画像データに基づいて、バルクフィーダ30の供給領域Asにおける複数の部品92の供給状態を認識する。供給状態の認識処理には、供給領域Asに採取可能な部品92があるか否かを認識し、採取可能な部品92がある場合にはその部品92の位置および角度を認識する処理が含まれる。そして、制御装置20は、供給状態の認識処理の結果に基づいて、採取動作における装着ヘッド133の動作を制御する。
【0022】
また、上記の「装着動作」とは、採取した部品を基板91における所定の装着位置に、所定の装着角度で装着する動作である。制御装置20は、装着処理において、各種センサから出力される情報や画像処理の結果、制御プログラムなどに基づき、装着ヘッド133の動作を制御する。これにより、装着ヘッド133に支持された複数の吸着ノズル134の位置および角度が制御される。
【0023】
2.バルクフィーダ30の構成
バルクフィーダ30は、部品装着機10に装備されて部品供給装置12の一部として機能する。バルクフィーダ30は、キャリアテープのように整列されていないバルク状態で収容された部品92を供給する。そのため、バルクフィーダ30は、テープフィーダと異なりキャリアテープを用いないため、キャリアテープの装填や使用済みテープの回収などを省略できる点でメリットがある。
【0024】
バルクフィーダ30には、例えば平面状の供給領域Asに不規則な姿勢で部品92を供給するタイプがある。しかしながら、バルクフィーダ30は、供給領域Asにおいて部品92同士が接触するほど接近していたり堆積(上下方向に重なり合っている状態)していたり、部品92の幅方向が上下方向となるような横立ち姿勢であったりすると、採取対象にすることができない。そこで、採取可能な部品92の割合を増加すべく、バルクフィーダ30には、供給領域Asにおいて部品92を整列させた状態で供給するタイプがある。本実施形態では、部品92を整列させるタイプのバルクフィーダ30を例示して説明する。
【0025】
2-1.フィーダ本体31
バルクフィーダ30は、
図2に示すように、扁平な箱状に形成されたフィーダ本体31を備える。フィーダ本体31の前部には、コネクタ311および2つのピン312が設けられる。フィーダ本体31は、部品供給装置12のスロット121にセットされると、コネクタ311を介して給電されるとともに、制御装置20と通信可能な状態となる。2つのピン312は、スロット121に設けられたガイド穴に挿入され、フィーダ本体31がスロット121にセットされる際の位置決めに用いられる。
【0026】
2-2.部品ケース32および受容部材33
フィーダ本体31には、複数の部品92をバルク状態で収容する部品ケース32が受容部材33を介して着脱可能に取り付けられる。部品ケース32は、バルクフィーダ30の外部機器である。フィーダ本体31には、種々のタイプの部品ケース32から装着処理に適合する1つが選択されて取り付けられる。部品ケース32の前部には、外部へ部品92を排出する排出口321が形成される。
【0027】
受容部材33は、フィーダ本体31に対して振動可能に設けられ、取り付けられた部品ケース32を支持する。受容部材33は、部品ケース32から排出された部品92を受容する受容領域Arを形成される。本実施形態において、受容部材33は、受容領域Arにおいて水平面に対して前側に傾斜した傾斜部331を有する。この傾斜部331は、部品ケース32の排出口321の下方に位置し、且つ平面状をなす。受容部材33は、受容領域Arの上方に延伸する部品92の流路を形成され、この流路が上方に開口する送出部332を形成される。
【0028】
2-3.ブラケット34、軌道部材35、ロックユニット60
バルクフィーダ30は、ブラケット34および軌道部材35を備える。ブラケット34は、フィーダ本体31に対して振動可能に設けられる。ブラケット34は、フィーダ本体31の前後方向に延伸するブロック状に形成され、上面に軌道部材35を取り付けられる。ブラケット34は、後述する加振装置40の支持部材41により支持される。軌道部材35は、複数の部品92が搬送される搬送路R、および搬送路Rに連通して複数の部品92を採取可能に上方に開口する供給領域Asを形成される。
【0029】
バルクフィーダ30は、ロックユニット60を備える。ロックユニット60は、軌道部材35がブラケット34に取り付けられた状態で、軌道部材35をロックする。軌道部材35は、ロックユニット60によりロックされると、フィーダ本体31に対してブラケット34と一体的に振動する状態となる。軌道部材35は、ロックユニット60のアンロックによりブラケット34から取り外し可能な状態となる。ロックユニット60の詳細構成については後述する。
【0030】
2-4.軌道部材35の詳細構成、カバー37、連結部材38
軌道部材35は、フィーダ本体31の前後方向(
図4の左右方向)に延伸するように形成される。軌道部材35の幅方向(
図4の上下方向)の両縁には、上方に突出する一対の側壁351が形成される。一対の側壁351は、軌道部材35の先端部352とともに搬送路Rの周縁を囲い、搬送路Rを搬送される部品92の漏出を防止する。先端部352の上面には、供給領域Asの基準位置を示す円形の基準マーク356が左右一対で付される。
【0031】
本実施形態において、軌道部材35には、整列部材353が交換可能に取り付けられる。整列部材353は、複数の部品92を個々に収容する複数のキャビティ354を有する。詳細には、複数のキャビティ354は、供給領域Asにおいてマトリックス状に配列される。例えば、整列部材353は、規則的に搬送方向に8個、搬送路Rの幅方向に10個それぞれ配列された計80個のキャビティ354を有する。複数のキャビティ354のそれぞれは、上方に開口し、部品92の厚み方向が上下方向となる姿勢で部品92を収容する。
【0032】
キャビティ354の開口は、上方視における部品92の外形状よりも僅かに大きくなる寸法に設定される。キャビティ354の深さは、部品92の種類(形状、質量など)に応じて設定される。軌道部材35には、種々のタイプの軌道部材35から、部品92の種類や、キャビティ354の必要数、機能性に基づいて選択された1つが取り付けられる。
【0033】
ここで、軌道部材35の「供給領域As」とは、部品92をバルク状態で供給する領域であって、装着ヘッド133に支持された吸着ノズル134により部品92を採取可能な領域である。また、軌道部材35の「搬送路R」とは、受容領域Arから軌道部材35へと流通した部品92が供給領域Asへと搬送される部品92の通り道である。
【0034】
バルクフィーダ30は、カバー37を備える。カバー37は、軌道部材35に固定され、搬送路Rの上方を覆う。カバー37は、上面に複数の排気口371が形成されている。排気口371には、目地が部品92の外形寸法より小さいメッシュが張られている。このような構成により、カバー37は、搬送路Rからの部品92の飛び出しを防止しつつ、排気口371からエアを外部に排出することができるように構成されている。
【0035】
軌道部材35は、後部において下方に延伸する部品92の流路を形成され、この流路が下方に開口する導入部355を有する。導入部355は、受容部材33の送出部332と上下方向に対向する。バルクフィーダ30は、管状をなす連結部材38を備える。連結部材38は、受容部材33の送出部332および軌道部材35の導入部355を連結する。本実施形態において、連結部材38は、密着コイルばねであり、全体として可撓性を有する。
【0036】
上記のような構成により、連結部材38は、受容領域Arと搬送路Rとの間を複数の部品92を流通可能に連結する。また、連結部材38は、フィーダ本体31に対する受容部材33の振動および軌道部材35の振動に応じて変形することにより振動を吸収する。連結部材38は、互いに独立して振動する受容部材33および軌道部材35の間で伝達される振動を軽減または遮断する。
【0037】
2-5.エア供給装置39
バルクフィーダ30は、エア供給装置39を備える。エア供給装置39は、受容領域Arの下方から正圧エアを供給して、受容部材33から連結部材38を介して軌道部材35まで複数の部品92を流通させる。本実施形態において、エア供給装置39は、外部から供給される正圧エアを、後述するフィーダ制御装置70の指令に基づいて受容領域Arの下方から供給または遮断する。
【0038】
エア供給装置39が正圧エアを供給すると、受容領域Arに滞留していた複数の部品92は、正圧エアにより上方に吹き上げられる。正圧エアおよび複数の部品92は、受容部材33の送出部332、連結部材38、および導入部355の順に流通し、軌道部材35の搬送路Rに到達する。ここで、正圧エアは、カバー37の排気口371から外部に排気される。また、複数の部品92は、自重により軌道部材35の搬送路Rに落下する。
【0039】
2-6.加振装置40
バルクフィーダ30は、フィーダ本体31に設けられる加振装置40を備える。加振装置40は、複数の部品92が搬送路Rに沿って搬送されるように軌道部材35に振動を付与する。具体的には、加振装置40は、複数の支持部材41、複数の圧電素子42、振動センサ43、および給電装置44を有する。複数の支持部材41は、フィーダ本体31とブラケット34を直接的または間接的に連結して、ブラケット34を支持する。
【0040】
本実施形態において、複数の支持部材41には、部品92の前側搬送に用いられる前進用支持部材41Aと、後側搬送に用いられる後退用支持部材41Bとがある。前進用支持部材41Aおよび後退用支持部材41Bは、それぞれ鉛直方向に対する傾斜方向が互いに相違する。複数の圧電素子42は、給電装置44から給電される電力に応じた周波数で振動する振動子である。複数の圧電素子42は、複数の支持部材41のそれぞれに貼付されている。
【0041】
複数の圧電素子42の少なくとも一部が振動すると、ブラケット34を介して軌道部材35に振動が付与される。また、圧電素子42に印加する電圧に応じて、軌道部材35の振幅が変動する。振動センサ43は、圧電素子42が給電されて振動したときに、軌道部材35の実際の振動の周波数または振幅を検出する。本実施形態において、振動センサ43は、軌道部材35と一体的に振動するブラケット34を支持する複数の支持部材41に設けられている。
【0042】
ここで、加振装置40が軌道部材35に振動を付与すると、軌道部材35は、側方視において楕円運動する。これにより、搬送路Rにある複数の部品92は、軌道部材35の楕円運動の回転方向に応じて前方且つ上方の外力、または後方且つ上方の外力を加えられる。これにより、複数の部品92は、軌道部材35の前側に搬送されたり、後側に搬送されたりすることになる。
【0043】
給電装置44は、後述するフィーダ制御装置70の指令に基づいて、圧電素子42に供給する電力の周波数、および印加電圧を変動させる。これにより、軌道部材35に付与される振動の周波数および振幅が調整され、軌道部材35の楕円運動の回転方向が定まる。軌道部材35の振動の周波数や振幅、振動による楕円運動の回転方向が変動すると、搬送される部品92の搬送速度、部品92の分散度合い、および搬送方向などが変動する。
【0044】
そこで、加振装置40は、搬送効率を向上させるために、個体差のある振動特性(固有振動数を含む)に対応した電力供給(周波数、印加電圧)を予め設定される。例えば、バルクフィーダ30は、実行予定の供給動作に用いられる軌道部材35が取り付けられた状態、即ちブラケット34に対して軌道部材35がロックユニット60によりロックされた状態において、校正処理を実行される。上記の校正処理の詳細については後述する。
【0045】
2-7.シャッタ51
バルクフィーダ30は、軌道部材35の上部に設けられ、供給領域Asの開口を閉塞可能なシャッタ51を有する。バルクフィーダ30は、シャッタ51を開閉することによって部品92の飛び出しや供給領域Asへの異物混入を防止することができる。本実施形態において、シャッタ51は、開閉動作により開状態、閉状態、および中間状態を切り換えられる。シャッタ51の閉状態とは、シャッタ51が軌道部材35に接触し、供給領域Asの開口が完全に閉塞された状態である。このとき、シャッタ51は、
図4の破線で示すように、軌道部材35の一対の基準マーク356よりもフィーダ本体31の後側に位置し、上方視において一対の基準マーク356を視認および撮像可能とする。
【0046】
また、シャッタ51の開状態とは、供給領域Asの開口が閉塞されておらず、且つ供給領域Asの主要範囲(本実施形態において複数のキャビティ354が設けられた範囲)を露出させた状態である。このとき、吸着ノズル134は、何れのキャビティ354に対して部品92の採取動作を実行することができる。シャッタ51の中間状態とは、閉状態と開状態の間の状態であって、シャッタ51が軌道部材35から少なくとも加振装置40の加振により振動する軌道部材35の振幅よりも離間し且つ供給領域Asの開口から部品92の飛び出しを規制する状態である。シャッタ51は、図略の駆動装置により開閉動作を行い、駆動装置の駆動状態に応じて閉状態、開状態、および中間状態とされる。
【0047】
3.フィーダ制御装置70
バルクフィーダ30は、フィーダ制御装置70を備える。フィーダ制御装置70は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成される。フィーダ制御装置70は、バルクフィーダ30がスロット121にセットされた状態において、コネクタ311を介して給電され、また部品装着機10の制御装置20と通信可能な状態となる。
【0048】
フィーダ制御装置70は、
図2に示すように、記憶部71を有する。記憶部71は、フラッシュメモリなどにより構成される。記憶部71には、部品供給処理の制御に用いられるプログラムや搬送パラメータなどの各種データが記憶される。上記の「搬送パラメータ」は、部品供給処理において部品92を搬送する際に、軌道部材35に付与する振動が適正となるように加振装置40の動作を制御するためのパラメータであり、例えば部品92の種類ごとに関連付けて予め設定される。
【0049】
フィーダ制御装置70は、搬送制御部72を有する。搬送制御部72は、加振装置40の動作を制御して、部品92の搬送動作を実行する。詳細には、搬送制御部72は、搬送動作を実行する場合に、加振装置40の給電装置44に対して指令を送出する。これにより、給電装置44が圧電素子42に所定の電力を供給することにより、ブラケット34を介して軌道部材35に振動が付与される。そして、搬送路R上の部品92が搬送方向に移動するように外力を受けて搬送される。
【0050】
4.ロックユニット60の詳細構成
上記のような構成からなるバルクフィーダ30は、メンテナンス性向上、種々の部品や供給形態への対応の観点から軌道部材35を着脱式とする。本実施形態において、種々の部品ケース32に対応する受容部材33、軌道部材35、これらを連結する連結部材38、および軌道部材35に取り付けられたカバー37が一組の搬送ユニットとして、フィーダ本体31に着脱される構成となっている。
【0051】
搬送ユニットのうち軌道部材35は、上記のようにブラケット34に取り付けられる。軌道部材35の着脱を容易にすることで交換性の向上を期待できる一方で、軌道部材35が加振装置40により振動を付与される部材であるため、ブラケット34に軌道部材35が確実にロックされることを必要とされる。
【0052】
例えば、ブラケット34と軌道部材35をボルトにより締結することが想定される。しかしながら、バルクフィーダ30は、部品供給装置12のスロット121に装備されることから隣り合うフィーダ122と干渉しないように幅方向寸法に制約がある。また、上記のボルトは、搬送路R上の部品92の移動を妨げない位置に配置される必要があり、配置可能な位置が制約される。このように、バルクフィーダ30において着脱式の軌道部材35を適用する場合には、上記のような制約により専用工具を用いる必要があったり、着脱作業が難しく所要時間が長くなったりすることが懸念されていた。
【0053】
これに対して、本実施形態のバルクフィーダ30は、軌道部材35の着脱作業を簡易に行うことができ、且つ振動への耐久性を有するロック機構を採用する。具体的には、ロックユニット60は、軌道部材35およびブラケット34の一方に設けられた被係止部材と、軌道部材35およびブラケット34の他方に設けられたロック部材62とを備える。さらに、ロックユニット60は、弾性部材(スプリング63)、操作部64、および保持部65を備えると好適である。
【0054】
4-1.被係止部材(一対のピン61)
ロックユニット60の被係止部材は、本実施形態において、
図5に示すように、一対のピン61である。一対のピン61のそれぞれは、フィーダ本体31の幅方向(
図5の前後方向)且つ水平方向に突起し、フィーダ本体31の前後方向における互いに異なる位置に設けられる。
【0055】
本実施形態において、一対のピン61は、軌道部材35の側面に設けられている。一対のピン61のうち前側ピン61Aは、軌道部材35の右側面に設けられている。また、一対のピン61のうち後側ピン61Bは、軌道部材35の左側面に設けられている。一対のピン61のそれぞれは、円柱状に形成される。一対のピン61のそれぞれの長さは、軌道部材35がブラケット34に取り付けられた状態において、フィーダ本体31の幅方向においてピン61の先端がフィーダ本体31の側面より内側に位置するように設定される。
【0056】
4-2.ロック部材62
ロック部材62は、ロック状態および解除状態を切り換えられる部材である。上記の「ロック状態」とは、一対のピン61に係止してブラケット34に対する軌道部材35の相対移動を規制する状態である。また、上記の「解除状態」とは、一対のピン61との係止が解除された状態である。ロック部材62が解除状態となると、ロックユニット60は、軌道部材35の取り外しを許容するアンロック状態となる。
【0057】
本実施形態において、ロック部材62は、ブラケット34の側面に設けられている。ロック部材62は、本実施形態において、フック本体621および一対のフック部622を有する。フック本体621は、フィーダ本体31の前後方向にスライド可能に設けらる。本実施形態において、フック本体621は、ブラケット34を左右方向から挟むように配置される2枚の前側プレート621A、および後側プレート621Bにより構成される。
【0058】
フック本体621は、前後方向に延伸する複数の水平長穴625を形成される。フック本体621は、ブラケット34に固定された複数の支持ピン624が複数の水平長穴625を貫通することにより、ブラケット34に対して前後方向にスライド可能に構成される。一対のフック部622は、フック本体621にそれぞれ設けられる。詳細には、一対のフック部622のうち前側フック部622Aは、前側プレート621Aの前端上部に形成される。また、一対のフック部622のうち後側フック部622Bは、後側プレート621Bの後端上部に形成される。
【0059】
一対のフック部622のそれぞれは、
図5に示すように、ブラケット34の上面より上方に突出し、前側に湾曲するL字形状に形成される。一対のフック部622は、フック本体621のスライド方向の一端側(本実施形態において、前後方向の前側)に移動されて一対のピン61に係止する。また、一対のフック部622は、フック本体621のスライド方向の他端側(本実施形態において、前後方向の後側)に移動されて一対のピン61から離間する(
図6を参照)。
【0060】
4-3.弾性部材(スプリング63)
ロックユニット60は、本実施形態において、複数のスプリング63を備える。複数のスプリング63のそれぞれは、フィーダ本体31に対してフック本体621を、一対のピン61に一対のフック部622が係止する方向に付勢する弾性部材である。具体的には、スプリング63は、圧縮コイルばねである。スプリング63は、長手方向が前後方向となるように配置され、一端をフック本体621に固定され、他端をブラケット34に固定される。
【0061】
上記のような構成により、スプリング63は、ブラケット34に対してフック本体621を前側に付勢する。これにより、フック本体621は、外力を加えられていない状態において、支持ピン624が水平長穴625の後端に接触する位置まで前方に移動する。このとき、ブラケット34に軌道部材35が取り付けられている場合には、一対のピン61に一対のフック部622が係止した状態が維持されるように、スプリング63がフック本体621を付勢する。
【0062】
4-4.操作部64
操作部64は、ロック状態と解除状態を切り換える操作力を受け付ける。本実施形態において、操作部64は、ロック部材62を貫通する軸部材である。より詳細には、操作部64は、前後方向においてロック部材62の前側プレート621Aおよび後側プレート621Bが重複する領域に形成され、上下方向に延伸する垂直長穴626を貫通する。これにより、操作部64は、ロック部材62に対して前後方向に係止し、且つ上下方向には垂直長穴626の延伸範囲において移動可能に構成される。また、操作部64は、
図4に示すように、両端に設けられたフランジ641によってロック部材62から抜け止めされる。
【0063】
このように、操作部64は、少なくともフランジ641が外部に露出した状態にあり、作業者による前後方向の操作力を受け付ける。例えば、ロックユニット60のロック状態において、操作部64が後方への操作力を受け付けると、スプリング63の付勢力に抗してロック部材62が後側に移動する。これにより、一対のフック部622が一対のピン61から離間し、フック本体621が解除状態(ロックユニット60のアンロック状態)となる。上記の状態で、作業者が操作を止めると、ロック部材62がスプリング63の付勢力により前側に移動する。これにより、一対のフック部622が一対のピン61に係止して、フック本体621は、再びロック状態となる。
【0064】
4-5.保持部65
保持部65は、ロックユニット60の開状態の維持に用いられる。ここで、上記の操作部64は、フック本体621に設けられた垂直長穴626を貫通することによって、フック本体621に対する前後方向の相対移動を規制されるとともに、フック本体621に対する上下方向の相対移動を許容される。そして、保持部65は、操作部64への操作によりフック本体621が解除状態に切り換えられた状態において、下方への操作力によりフック本体621に対して下方に移動した操作部64を保持することにより解除状態を維持する。
【0065】
本実施形態において、保持部65は、ブラケット34に設けられ、側方視においてL字状をなすL字溝である。操作部64は、L字溝である保持部65およびフック本体621の垂直長穴626をともに貫通する。このような構成により、
図6に示すように、操作部64への操作によってフック本体621が後側の移動端まで移動すると、L字溝のうち上下方向に延伸する部位にフック本体621の垂直長穴626が重なり、操作部64の下方移動が許容される。
【0066】
このとき、操作部64に下方への操作力が加えられて移動すると、操作部64は、L字溝の上下方向に延伸する部位を有する保持部65により前後方向の移動を規制される。結果として、フック本体621の開状態が維持される。このとき、スプリング63は、圧縮された状態を維持される。このように、操作部64への操作力を加えなくてもロックユニット60の開状態が維持されると、作業者は操作部64から手を離して別作業を行うことができる。これにより、ブラケット34から軌道部材35を着脱する作業が容易となり、段取り替え作業などの作業性を向上できる。
【0067】
5.フィーダ管理装置80の構成
部品装着機10は、バルクフィーダ30を対象とするフィーダ管理装置80を備える。本実施形態において、フィーダ管理装置80は、
図7に示すように、制御装置20に組み込まれ、スロット121に装備されたバルクフィーダ30と通信可能に構成される。フィーダ管理装置80は、バルクフィーダ30が適正に供給動作を行うことができるように、バルクフィーダ30の状態や固有の特性を認識し、これらに基づいて管理を行う。
【0068】
5-1.測定部81
フィーダ管理装置80は、
図7に示すように、測定部81を備える。測定部81は、加振装置40が軌道部材35を加振したときのブラケット34の振動の周波数または振幅を測定する。本実施形態において、測定部81は、加振装置40の振動センサ43による検出値に基づいて、ブラケット34の振動の周波数を測定する。このブラケット34の振動の周波数は、加振装置40が軌道部材35への振動の付与を試行した際に、この軌道部材35が取り付けられているブラケット34の実際の振動の周波数である。
【0069】
5-2.ロック判定部82
フィーダ管理装置80は、
図7に示すように、ロック判定部82を備える。ロック判定部82は、測定部81による測定結果に基づいて、ブラケット34に対する軌道部材35のロックの適否を判定する。本実施形態において、ロック判定部82は、予め記憶されている振動特性との比較によってロックの適否を判定する。
【0070】
具体的には、ロック判定部82は、先ず、ブラケット34および軌道部材35が加振装置40の加振により一体的に振動する際の振動特性としての固有振動数を、制御装置20より取得する。この固有振動数は、例えば軌道部材35に複数種類の周波数からなる周期的な加振を行い、共振点を検出することにより特定することができる。固有振動数の特定処理は、例えばロックユニット60が正常に動作していること、つまりブラケット34に軌道部材35が固定されていることを作業者が確認して実行される。
【0071】
次に、ロック判定部82は、取得した固有振動数と測定部81による測定結果との差分が予め設定された許容範囲にあるか判定する。このとき、測定部81は、軌道部材35が固有振動数で振動するように加振装置40が軌道部材35に振動を付与したときの実際の振動数を測定する。また、上記の許容範囲は、測定誤差などを考慮して予め設定された範囲である。
【0072】
ロック判定部82は、上記の差分が許容範囲外である場合に、ブラケット34に対する軌道部材35のロックが不適であると判定する。この判定は、ブラケット34に軌道部材35が正常にロックされていないと、振動体の質量が減って固有振動数が変動することを利用するものである。ロック判定部82は、上記の差分が許容範囲内である場合に、ブラケット34に対する軌道部材35のロックが正常であると判定する。
【0073】
5-3.校正部83
フィーダ管理装置80は、
図7に示すように、校正部83を備える。校正部83は、加振装置40の動作を校正する校正処理を実行する。校正部83は、ブラケット34に対して軌道部材35がロックされた状態において、測定部81による測定結果に基づいて振動子(圧電素子42)に供給する電力を調整する。そして、校正部83は、ブラケット34および軌道部材35が一体的に固有振動数で振動する際に振動子(圧電素子42)に供給される電力を取得する。
【0074】
具体的には、校正部83は、先ず、ブラケット34および軌道部材35が加振装置40の加振により一体的に振動する際の振動特性としての固有振動数を、制御装置20より取得する。次に、校正部83は、所定の電力を所定の期間だけ圧電素子42に供給するように加振装置40の給電装置44に指令する。そして、測定部81は、上記の期間において、振動センサ43による検出値に基づいて軌道部材35の実際の振動の周波数を測定する。
【0075】
続いて、校正部83は、振動に関する測定結果としての周波数に基づいて、給電装置44による圧電素子42への電力を調整する。このとき、校正部83は、測定された実際の周波数と、先に取得した固有振動数との差分に基づいて、圧電素子への電力を調整する。校正部83は、上記のような測定と調整を繰り返すことにより、ブラケット34および軌道部材35が一体的に固有振動数で振動する際に圧電素子42に供給される電力を取得する。
【0076】
なお、上記のような手法の他に、校正部83は、例えば所定の期間に供給される電力を段階的に変更するように指令し、それぞれの期間で測定された周波数と既知の固有振動数とを比較してもよい。そして、校正部83は、固有振動数に最も近い振動数となった期間において供給されていた電力を取得する。このようにして、校正部83は、現在のバルクフィーダ30の構成において、固有振動数で振動させるために必要な電力を取得する。
【0077】
そして、校正部83は、上記の電力を部品92の搬送時における基準電力として、バルクフィーダ30に設定する。これにより、バルクフィーダ30は、外部からの指令に基づいて部品92の搬送動作を行う場合に、設定された基準電力を給電装置44が圧電素子42に供給するように制御する。なお、バルクフィーダ30は、搬送動作の形態(送り動作、戻り動作など)に応じて、基準電力に所定の補正などを加えることがある。
【0078】
なお、上記の固有振動数は、バルクフィーダ30ごとに固有であり、バルクフィーダ30に取り付けられる軌道部材35に応じて変動する。そのため、少なくとも軌道部材35が交換された後には、上記の固有振動数の特定処理および校正処理を行うことが好ましい。さらには、バルクフィーダ30の稼働時間などによって、適正な電力が変動し得ることを考慮して、校正部83は、例えば一定の期間経過後や電源投入時に、現状に対応すべく校正処理を実行しても。
【0079】
5-4.通知部84
フィーダ管理装置80は、
図7に示すように、通知部84を備える。通知部84は、ロック判定部82によりブラケット34に対する軌道部材35のロックが不適であると判定された場合に、作業者に対して通知する。具体的には、通知部84は、部品装着機10に設けられた表示装置(図略)に、スロット121を特定する情報とともに、ロックが不適である旨を表示させてもよい。
【0080】
また、通知部84は、上記に加えて、または換えて、例えばバルクフィーダ30に設けられたエラー表示灯(図略)を点灯させてもよい。これにより、作業者は、軌道部材35がブラケット34に正常に取り付けられていないことを認識できる。よって、作業者が軌道部材35の再取り付けや確認作業を行うことにより、軌道部材35が確実にブラケット34に取り付けられる。結果として、軌道部材35のロックが不適であることに起因するバルクフィーダ30の動作不良の発生を防止することができる。
【0081】
6.フィーダ管理装置80によるロック判定処理
フィーダ管理装置80によるロック判定処理について
図8を参照して説明する。フィーダ管理装置80は、軌道部材35の交換後や電源投入時、または作業者による要求に応じて、ロックユニット60によりブラケット34に対する軌道部材35のロックの適否を判定するロック判定処理を行う。なお、フィーダ管理装置80は、このロック判定処理の実行タイミングに合わせて、事前に固定振動数の特定処理および加振装置40の校正処理を行っておいてもよい。
【0082】
ロック判定処理において、測定部81は、軌道部材35が固有振動数で振動するように、加振装置40により軌道部材35に振動を付与させる加振処理を実行する(S11)。そして、測定部81は、S11により軌道部材35への振動の付与が試行されたときの実際の振動数を測定する(S12)。なお、この測定された振動数は、軌道部材35と一体的に振動する部材であるブラケット34の実際の振動数である。
【0083】
ロック判定部82は、ブラケット34に現在取り付けられている軌道部材35に関する固有振動数と、S12にて測定された振動数との差分を算出する(S13)。ロック判定部82は、算出された差分が予め設定された許容範囲内である場合には(S14:Yes)、ブラケット34に対する軌道部材35のロックが正常であるとして、ロック判定処理を終了する。
【0084】
一方で、算出された差分が許容範囲外である場合には(S14:No)、ブラケット34に対する軌道部材35のロックが不適であるとして、通知部84は、通知処理を実行する(S15)。この通知処理において、通知部84は、部品装着機10に設けられた表示装置に、ロックが不適のバルクフィーダ30が装備されているスロット121の番号、および取付作業の再実行を促すメッセージを表示させる。なお、この通知に基づいて作業者が軌道部材35の取付作業を実行した後に、フィーダ管理装置80は、ロック判定処理を再度実行する。
【0085】
7.実施形態の構成による効果
上記のような実施形態にて例示したバルクフィーダ30の構成によると、ロック部材62がブラケット34に対する軌道部材35のロック状態と解除状態とを切り換えることで、軌道部材35の着脱作業を簡易化することができる。よって、軌道部材35の交換性を向上できる。
【0086】
また、上記のような実施形態にて例示したフィーダ管理装置80の構成によると、軌道部材35を取り付けられるブラケット34の実際の振動特性(周波数または振幅)に基づいて、軌道部材35のロックが不適であることを検出することができる。よって、軌道部材35のロックが不適であることに起因する動作不良の発生を防止することができる。
【0087】
8.実施形態の変形態様
8-1.ロックユニット60について
実施形態において、ロックユニット60の被係止部材としてピン61は、軌道部材35に設けられる構成とした。また、ピン61に係止するロック部材62は、ブラケット34に設けられる構成とした。これに対して、ロックユニット60は、被係止部材(ピン61)がブラケット34に設けられ、ロック部材62が軌道部材35に設けられる構成としてもよい。
【0088】
また、ロックユニット60は、弾性部材としてのスプリング63を備える構成とした。これに対して、ロックユニット60は、スプリング63とは異なり、弾性を有する材料(例えばゴム)により形成された部材を適用してもよい。また、ロックユニット60は、ロック部材62を被係止部材に係止する方向に付勢する弾性部材を省略した構成を採用してもよい。但し、軌道部材35が運用状態において振動を付与されることから、一対のピン61に一対のフック部622が係止した状態、即ち弾性部材により常時ロック状態を維持する構成は有用である。
【0089】
8-2.フィーダ管理装置80について
実施形態において、フィーダ管理装置80の測定部81は、加振装置40の振動センサ43による検出値に基づいて、ブラケット34の振動の周波数を測定する構成とした。これに対して、測定部81は、ブラケット34の振動の振幅を測定してもよい。例えば、ブラケット34に軌道部材35が正常にロックされている状態において、加振装置40が所定の電力を圧電素子42に供給した場合に、軌道部材35と一体的に振動するブラケット34の振幅を予め測定する。
【0090】
そして、フィーダ管理装置80は、ロック判定処理において、測定部81により測定されたブラケット34の振幅と、予め測定されていた正常時の振幅とを比較することによって、ブラケット34に対する軌道部材35のロックの適否を判定する。この判定は、ブラケット34に軌道部材35が正常にロックされていないと、振動体の質量が減って振幅が変動することを利用するものである。ロック判定部82は、それぞれの振幅の差分が許容範囲内である場合に、ブラケット34に対する軌道部材35のロックが正常であると判定する。
【0091】
また、本実施形態において、フィーダ管理装置80が部品装着機10の制御装置20に組み込まれる構成を例示して説明した。これに対して、フィーダ管理装置80の一部または全部は、部品装着機10の外部装置としてもよい。例えば、フィーダ管理装置80は、複数のスロット121に装備されたフィーダ122と、制御装置20との通信を仲介する部品供給装置12に組み込まれてもよい。
【0092】
また、フィーダ管理装置80は、バルクフィーダ30の自己診断機能として、バルクフィーダ30のフィーダ制御装置70に組み込まれてもよい。さらに、フィーダ管理装置80は、部品装着機10と通信可能に接続されるホストコンピュータや専用機器などに組み込まれてもよい。何れの態様においても実施形態と同様の効果を奏する。
【0093】
8-3.軌道部材35について
実施形態において、バルクフィーダ30の軌道部材35は、複数のキャビティ354を形成された整列部材353を備える構成とした。これに対して、整列部材353を省略した構成としてもよい。つまり、軌道部材35の供給領域Asには、搬送路Rの上面より低い位置で部品92が分散される凹状部や、搬送路Rの上面と均一な平面状部が形成され、バルク状態で部品92が供給されるようにしてもよい。但し、部品供給処理の効率化や、供給領域Asにおける供給状態の認識処理における画像処理の負荷を軽減する観点からは、実施形態にて例示した構成が好適である。
【符号の説明】
【0094】
10:部品装着機、 12:部品供給装置、 13:部品移載装置、 20:制御装置、 30:バルクフィーダ、 31:フィーダ本体、 32:部品ケース、 34:ブラケット、 35:軌道部材、 40:加振装置、 41:支持部材、 42:圧電素子(振動子)、 43:振動センサ、 44:給電装置、 60:ロックユニット、 61:ピン(被係止部材)、 62:ロック部材、 621:フック本体、 622:フック部、 63:スプリング(弾性部材)、 64:操作部、 65:保持部、 80:フィーダ管理装置、 81:測定部、 82:ロック判定部、 83:校正部、 84:通知部、 91:基板、 92:部品、 As:供給領域、 R:搬送路