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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気構造
(51)【国際特許分類】
   F02B 31/04 20060101AFI20231215BHJP
   F02B 31/00 20060101ALI20231215BHJP
   F02B 31/06 20060101ALI20231215BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20231215BHJP
   F02F 1/42 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
F02B31/04 500A
F02B31/00 500A
F02B31/06 500B
F02M35/10 101E
F02F1/42 F
F02F1/42 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023500861
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2022006018
(87)【国際公開番号】W WO2022176862
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2021025721
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【弁理士】
【氏名又は名称】神澤 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100098176
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 訓
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋平
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-283697(JP,A)
【文献】特開2006-077760(JP,A)
【文献】特開2015-155684(JP,A)
【文献】特開2011-179427(JP,A)
【文献】特開2004-293299(JP,A)
【文献】特開2004-011442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 31/04
F02B 31/00
F02B 31/06
F02M 35/10
F02F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ軸線(C)の方向においてクランク軸(17)側からシリンダヘッド(14)側を第1方向と定義するとき、内燃機関(10)の燃焼室(20)に連なる吸気通路(38)を第1吸気通路(64)と、該第1吸気通路(64)の前記第1方向側の第2吸気通路(66)とに仕切る主仕切部(62)と、
前記第1吸気通路(64)に、第3吸気通路(68)と該第3吸気通路(68)の前記第1方向側の第4吸気通路(70)とを形成するように設けられる
副仕切部(72)と、
前記第3吸気通路(68)と前記第4吸気通路(70)とが合流する合流部(86)であって、該合流部(86)を介して前記第1吸気通路(64)は前記第2吸気通路(66)に合流する、合流部(86)と
を備え、
前記合流部(86)は前記主仕切部(62)の下流端よりも下流側で前記第2吸気通路(66)につながり、
前記第2吸気通路(66)からの吸気よりも、前記合流部(86)を介しての前記第1吸気通路(64)からの吸気が小さい進入角で燃焼室(20)に流入するように、前記合流部(86)は区画形成されている
ことを特徴とする内燃機関(10)の吸気構造(S)。
【請求項5】
シリンダ軸線(C)の方向においてクランク軸(17)側からシリンダヘッド(14)側を第1方向と定義するとき、内燃機関(10)の燃焼室(20)に連なる吸気通路(38)を第1吸気通路(64)と、該第1吸気通路(64)の前記第1方向側の第2吸気通路(66)とに仕切る主仕切部(62)と、
前記第1吸気通路(64)に、第3吸気通路(68)と該第3吸気通路(68)の前記第1方向側の第4吸気通路(70)とを形成するように設けられる副仕切部(72)と、
前記第3吸気通路(68)と前記第4吸気通路(70)とが合流する合流部(86)であって、該合流部(86)を介して前記第1吸気通路(64)は前記第2吸気通路(66)に合流する、合流部(86)と
を備え、
前記第3吸気通路(68)及び前記第4吸気通路(70)の断面積(S1、S2)の和よりも、前記合流部(86)の上流側端部(86u)よりも下流側の流れ方向に直交する断面での前記合流部(86)の断面積が小さくなるように、前記合流部(86)は区画形成されている
ことを特徴とする内燃機関(10)の吸気構造(S)。
【請求項8】
シリンダ軸線(C)の方向においてクランク軸(17)側からシリンダヘッド(14)側を第1方向と定義するとき、内燃機関(10)の燃焼室(20)に連なる吸気通路(38)を第1吸気通路(64)と、該第1吸気通路(64)の前記第1方向側の第2吸気通路(66)とに仕切る主仕切部(62)と、
前記第1吸気通路(64)に、第3吸気通路(68)と該第3吸気通路(68)の前記第1方向側の第4吸気通路(70)とを形成するように設けられる副仕切部(72)と、
前記第3吸気通路(68)と前記第4吸気通路(70)とが合流する合流部(86)であって、該合流部(86)を介して前記第1吸気通路(64)は前記第2吸気通路(66)に合流する、合流部(86)と、
前記主仕切部(62)の上流に設けられた吸気制御弁(76c)と
を備え、
該吸気制御弁(76c)は、前記第2吸気通路(66)及び前記第4吸気通路(70)を開閉可能であるように構成されていて、前記第2吸気通路(66)及び前記第4吸気通路(70)を閉じる第1位置(P1)、前記第2吸気通路(66)を閉じて前記第4吸気通路(70)を開く第2位置(P2)、及び、全開位置(PA)を有し、
前記吸気制御弁(76c)は弁軸(76b)と一体的に回転する単一の弁部材(76d)を備えて構成され、
前記弁部材(76d)の動きを許容する凹部(77)が、前記吸気通路(38)を区画形成する壁部のうち前記第1方向側の壁部(76u)に設けられている
ことを特徴とする内燃機関の吸気構造(S)。
【請求項9】
前記副仕切部(72)を複数備え、
前記第1吸気通路(64)は、複数の前記副仕切部(72)により、前記第3吸気通路(68)及び前記第4吸気通路(70)を含む3つ以上の吸気通路に分けられている
ことを特徴とする請求項1、5、8のいずれか一項に記載の内燃機関の吸気構造(S)。
【請求項10】
前記第3吸気通路(68)及び前記第4吸気通路(70)の各々の断面積(S1、S2)が、前記合流部(86)の上流側端部(86u)の断面積(S3)より小さいように、前記合流部(86)は区画形成されている
ことを特徴とする請求項1、5、8、9のいずれか一項に記載の内燃機関(10)の吸気構造(S)。
【請求項11】
前記シリンダ軸線(C)の方向において前記第1方向と反対向きの方向を第2方向と定義するとき、
前記第1吸気通路(64)は、前記第2方向に凸の湾曲形状を有するように区画形成され、
前記第2吸気通路(66)は、前記第1方向に凸の湾曲形状を有するように区画形成されている
ことを特徴とする請求項1、5、8、9、10のいずれか一項に記載の内燃機関(10)の吸気構造(S)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気通路を複数に分ける仕切部が設けられる内燃機関の吸気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スロットル弁の下流側の吸気通路が、仕切部により複数の通路に分けられる内燃機関の吸気構造が種々提案されている。例えば、特許文献1の内燃機関の吸気構造では、スロットル弁の下流側にタンブル弁を設け、そのタンブル弁の下流側にインレットパイプから吸気ポートへと続けて仕切部である仕切板部を設け、この仕切板部により吸気通路を上下の下側副通路と上側主通路とに仕切ることが行われる。下側副通路がタンブル通路となり、タンブル弁は上側主通路を実質的に開閉するものである。
【0003】
また、特許文献2が開示する内燃機関では、スロットル弁の下流側に吸気制御弁が設けられ、更にその下流側の吸気通路に、吸入空気の流れ方向に沿った横板状部材が配設されている。横板状部材の数が1つのときと、2つ以上のときの内燃機関が開示されている。特許文献2の記載によれば、横板状部材を複数形成し、内燃機関の運転条件に応じた吸気制御弁の開度を決定することで、吸気制御弁の中間開度においても吸入空気の流れを乱さず、安定したガス流動を生成させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特許第6714764号公報
【文献】日本国特開2006-77590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、内燃機関を好適に作動させるためには、その内燃機関の運転状態に応じた吸入空気量を確保することと、燃焼効率を高めるためにタンブル流などの渦流を燃焼室で好適に生じさせることとの両立が望まれる。しかし、例えば特許文献2の構成は、運転状態に応じた吸入空気量の実現に主に向けられていて、例えばエンジン負荷が変動したときにもタンブル性能を維持することについては課題を有する。本発明の目的は、吸気通路が仕切部により分けられるように構成された内燃機関において、運転状態に応じた吸入空気量の確保とタンブル性能の確保との両立を可能にする構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、
シリンダ軸線の方向においてクランク軸側からシリンダヘッド側を第1方向と定義するとき、内燃機関の燃焼室に連なる吸気通路を第1吸気通路と、該第1吸気通路の前記第1方向側の第2吸気通路とに仕切る主仕切部と、
前記第1吸気通路に、第3吸気通路と該第3吸気通路の前記第1方向側の第4吸気通路とを形成するように設けられる副仕切部と、
前記第3吸気通路と前記第4吸気通路とが合流する合流部であって、該合流部を介して前記第1吸気通路は前記第2吸気通路に合流する、合流部と
を備えたことを特徴とする内燃機関の吸気構造
を提供する。
【0007】
上記構成によれば、吸気通路を、タンブル流路となり得る第3吸気通路と第4吸気通路とを含む第1吸気通路と、第2吸気通路とに分けることができ、内燃機関の運転状態によってそれらのいずれか又は全てを使用して、運転状態に応じた吸気流量を確保することが可能になる。また、上記構成によれば、上記合流部が設けられるので、第3吸気通路と第4吸気通路とを備える第1吸気通路からの吸気に強い指向性を持たせることができ、タンブル性能を確保することができる。よって、上記内燃機関の吸気構造によれば、吸気通路が仕切部により分けられるように構成された内燃機関において、運転状態に応じた吸入空気量の確保とタンブル性能の確保との両立を図ることが可能になる。
【0008】
好ましくは、前記合流部は前記主仕切部の下流端よりも下流側で前記第2吸気通路につながる。この構成により、第1吸気通路を通った吸気に指向性を強く持たせることができる。
【0009】
好ましくは、前記第2吸気通路からの吸気よりも、前記合流部を介しての前記第1吸気通路からの吸気が小さい進入角で燃焼室に流入するように、前記合流部は区画形成されている。この構成により、第1吸気通路を通った吸気が強い指向性を持ったまま燃焼室に導入可能になるため、燃焼室で強いタンブル流を発生させることができる。
【0010】
好ましくは、前記第3吸気通路及び前記第4吸気通路の各々の断面積が、前記合流部の上流側端部の断面積より小さいように、前記合流部は区画形成されている。この構成により、第3吸気通路からの吸気と第4吸気通路からの吸気とが合流部に好適に流入し、よって十分な吸気流量を確保することが可能になる。
【0011】
好ましくは、前記第3吸気通路及び前記第4吸気通路の断面積の和よりも、前記合流部の上流側端部よりも下流側の流れ方向に直交する断面での前記合流部の断面積が小さくなるように、前記合流部は区画形成されている。この構成により、第3吸気通路からの吸気と第4吸気通路からの吸気とが合流部で合流して第2吸気通路に流れるとき、吸気の流速を速い状態に保つことが可能になる。
【0012】
好ましくは、前記シリンダ軸線の方向において前記第1方向と反対向きの方向を第2方向と定義するとき、前記第1吸気通路は、前記第2方向に凸の湾曲形状を有するように区画形成され、前記第2吸気通路は、前記第1方向に凸の湾曲形状を有するように区画形成されている。この構成により、第1吸気通路からの吸気をより小さな進入角で燃焼室に導くことが可能になり、また、第2吸気通路からの吸気をより効果的に燃焼室に導くことが可能になる。
【0013】
好ましくは、前述の内燃機関の吸気構造は、前記主仕切部の上流に設けられた吸気制御弁を更に備える。この場合、該吸気制御弁は、前記第2吸気通路及び前記第4吸気通路を開閉可能であるように構成されていて、前記第2吸気通路及び前記第4吸気通路を閉じる第1位置、前記第2吸気通路を閉じて前記第4吸気通路を開く第2位置、及び、全開位置を有するとよい。この構成により、タンブル流を好適に生じさせつつ、運転状態に応じた吸入空気量をより好適に確保することが可能になる。
【0014】
好ましくは、前記吸気制御弁は弁軸周りに回動する単一の弁部材を備えて構成され、前記弁部材の動きを許容する凹部が、前記吸気通路を区画形成する壁部のうち前記第1方向側の壁部に設けられている。この構成により、単一の弁部材の動きを制御することで吸入空気量をより容易に調整することができ、また、その凹部によって上記弁部材の開閉機能をより良好なものにすることができる。
【0015】
前述の内燃機関の吸気構造は、前記副仕切部を複数備えてもよい。この場合、前記第1吸気通路は、複数の前記副仕切部により、前記第3吸気通路及び前記第4吸気通路を含む3つ以上の吸気通路に分けられてもよい。この構成により、運転状態に応じた吸入空気量をより細かく調整することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記態様によれば、上記構成を備えるので、吸気通路が仕切部により分けられるように構成された内燃機関において、運転状態に応じた吸入空気量の確保とタンブル性能の確保との両立を好適に図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る、内燃機関の概略構成図である。
図2図2は、図1の内燃機関におけるスロットル弁よりも下流側の吸気通路の部分の立体モデルを示す図である。
図3図3は、図2と異なる角度からみた、図2の立体モデルの図である。
図4図4は、図1の内燃機関におけるタンブル弁の弁体を示す図である。
図5図5は、図1の内燃機関における、スロットル弁下流側かつタンブル弁下流側の吸気通路の部分及び排気ポートを含む立体モデルを上側からみた図である。
図6図6は、図5の立体モデルをシリンダ軸線Cに直交するとともに吸気流れ方向に直交する方向からみた図である。
図7A図7Aは、図6の立体モデルの断面図であり、図6のVIIA-VIIA線に沿った位置での断面図である。
図7B図7Bは、図6の立体モデルの断面図であり、図6のVIIB-VIIB線に沿った位置での断面図である。
図7C図7Cは、図6の立体モデルの断面図であり、図6のVIIC-VIIC線に沿った位置での断面図である。
図7D図7Dは、図6の立体モデルの断面図であり、図6のVIID-VIID線に沿った位置での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を添付図に基づいて説明する。同一の部品(又は構成)には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0019】
本発明の一実施形態に係る内燃機関10の概略構成を図1に示す。図1は、内燃機関10のシリンダブロック12のシリンダボア12bの軸線(シリンダ軸線)Cに沿った、内燃機関10の断面図である。なお、内燃機関10は、単気筒エンジンであり、1つの気筒に対して、単一の吸気弁46および単一の排気弁50を備える。
【0020】
シリンダブロック12のシリンダボア12b内を往復動するピストン15は、クランクケース部16のクランク軸17のクランクピンと、コネクティングロッド18により連結されている。シリンダブロック12のシリンダボア12b内に摺動自在に嵌合されるピストン15の頂面15aと、頂面15aが対向するシリンダヘッド14の燃焼室天井面14aとの間には燃焼室20が構成される。
【0021】
内燃機関10は、SOHC型式の2バルブシステムを採用しており、シリンダヘッド14に動弁機構22が設けられている。動弁機構22を覆うように、シリンダヘッド14にはシリンダヘッドカバー24が重ねられて被せられる。シリンダヘッドカバー24内の動弁機構22に動力伝達を行うため、図示しない無端状のカムチェーンが、クランクケース部16、シリンダブロック12、シリンダヘッド14のクランク軸方向の一方側に設けられた図示しないカムチェーン室を通って、カム軸26とクランク軸17との間に架設され、カム軸26はクランク軸17に同期して1/2の回転速度で回転する。なお、シリンダヘッド14においてカムチェーン室と反対側(クランク軸方向の他方側)から燃焼室20内に向かって点火プラグが嵌挿されている。
【0022】
シリンダヘッド14において、燃焼室天井面14aに開口した吸気弁口28と排気弁口30からは、各々吸気ポート32と排気ポート34が互いに上下に離れる方向に湾曲しながら延出して形成される。吸気ポート32の上流端は、シリンダヘッド14の上方に向けて開口し、インレットパイプ36と接続して、連続した吸気通路38が構成され、インレットパイプ36の上流側に、スロットルボディ40が接続される。
【0023】
排気ポート34の下流端は、シリンダヘッド14の下方に向けて開口し、排気管42に連結される。排気管42の下流側には、排気浄化装置及び消音装置が設けられ得る。
【0024】
シリンダヘッド14における吸気ポート32の湾曲外壁部32aに一体に円筒状の吸気弁ガイド44が嵌着されている。吸気弁ガイド44に摺動可能に支持された吸気弁46が、吸気ポート32の燃焼室20に臨む吸気弁口28を開閉する。
【0025】
また、シリンダヘッド14における排気ポート34の湾曲外壁部34aに一体に嵌着された排気弁ガイド48に摺動可能に支持された排気弁50が、排気ポート34の燃焼室20に臨む排気弁口30を開閉する。
【0026】
吸気弁46および排気弁50はその傘部46a、50aが、いずれも燃焼室20に臨む吸気弁口28、排気弁口30を閉じるように、弁ばねにより上方に付勢されている。カム軸26の吸気カム、排気カムに当接揺動する吸気ロッカアーム56、排気ロッカアーム58によって、吸気弁46、排気弁50のステムエンド46b、50bが押し下げられて、所定のタイミングで吸気弁46、排気弁50が開弁し、吸気ポート32と燃焼室20、また、排気ポート34と燃焼室20が連通し、所定のタイミングの吸気、排気がなされる。
【0027】
内燃機関10の吸気ポート32の上流端には、インシュレ-タ60を介してインレットパイプ36が接続して、連続した吸気通路38が構成され、インレットパイプ36の上流側に、スロットルボディ40が接続される。スロットルボディ40は、内燃機関10の燃焼室20に連なる吸気通路38の一部を構成する断面略円形の吸気路40aを有し、その上流側は、図示しないエアクリーナ装置に接続している。
【0028】
スロットルボディ40は、その吸気路40aの吸気の流れ方向と垂直、すなわち吸気路40aの中心軸線と直角に交差するスロットル弁軸40bによってスロットルボディ40内に回転自在に軸支されて、吸気路40aの流路面積を可変制御し、吸気路40aを開閉し得るスロットル弁40cを備えている。スロットル弁40cはバタフライ式のもので、スロットル弁軸40bと、スロットル弁軸40bに固定される共に一体的に回転する円盤状の弁体40dとを有している。
【0029】
スロットル弁40cは運転者の操作等により、図1において反時計回りに開弁方向に回動可能となっているとともに、図示しない復帰ばねにより、弁体40dはそれの縁部が吸気路40aの内壁面に当接する全閉位置に位置するように、閉弁方向に時計回りに付勢されている。
【0030】
以上のような内燃機関10において、燃焼室20でのより好ましい燃焼を得るために燃焼室20において燃料・空気混合気のタンブル渦流つまりタンブル流、すなわち縦回転を与えるための吸気構造Sが構成されている。すなわち、吸気通路38は、インレットパイプ36から吸気ポート32へと続く仕切部62によって、吸気流れ方向に沿って分割され、通った吸気が燃焼室20内でタンブル流を発生するように構成されたタンブル通路64と、タンブル通路64を除く主通路66とに仕切られている。タンブル通路64が第1吸気通路に相当し、主通路66が第2吸気通路に相当する。なお、タンブル通路64は副通路と称されてもよい。
【0031】
更に、タンブル通路64に、仕切部72がインレットパイプ36から吸気ポート32へと続くように設けられている。仕切部72を設けることで、タンブル通路64に、2つの吸気通路68、70が区画形成される。2つの吸気通路68、70の一方は第1タンブル通路68であり、それらの他方は第2タンブル通路70である。第1タンブル通路68は第3吸気通路に相当し、第2タンブル通路70は第4吸気通路に相当する。
【0032】
なお、タンブル通路64と主通路66とを仕切る仕切部62を主仕切部と称し、タンブル通路64の第1タンブル通路68と第2タンブル通路70とを仕切る仕切部72を副仕切部と称する。主仕切部62は吸気の流れ方向に板状に延在し、副仕切部72も主仕切部62に沿って、例えば略平行に、吸気の流れ方向に板状に延在する。主仕切部62は吸気通路38を実質的に上下方向において二分するように、ここでは流れ方向に延びる中心軸線上に実質的に延びるように設けられていて、タンブル通路64の流路断面積は主通路66の流路断面積と大きく違わない。しかし、タンブル通路64の流路断面積が主通路66の流路断面積よりも小さくなるように主仕切部62は設けられてもよく、この関係を逆にすることも可能である。また、副仕切部72はタンブル通路64を実質的に上下方向において二分するように、ここでは流れ方向に延びるタンブル通路64の中心軸線上に実質的に延びるように設けられているが、例えば上下方向のいずれかに偏るように設けられてもよい。
【0033】
吸気通路38の主仕切部62によって仕切られた下側部分がタンブル通路64、上側部分が主通路66となり、タンブル通路64の副仕切部72によって仕切られた下側部分が第1タンブル通路68、上側部分が第2タンブル通路70となるが、本明細書においてはそれらはその上下配置に限定されない。なお、本明細書において、吸気通路38などについての「上」、「下」とは、シリンダ軸線C方向においてクランク軸17側からシリンダヘッド14ないしシリンダヘッドカバー24側の方向を「上」又は「上」方向、この「上」方向とは逆向きの方向つまりシリンダヘッド14側からクランク軸17側の方向を「下」又は「下」方向といい、空間上の絶対的な「上」、「下」の意味ではない。この「上」又は「上」方向は第1方向に相当し、「下」又は「下」方向は第2方向に相当する。
【0034】
インレットパイプ36の上流端には、インシュレ-タ74を介してタンブル弁ボディ76が接続されている。このタンブル弁ボディ76は、吸気通路38の一部を構成する断面略円形の吸気路76aを有し、その上流端に前述のスロットルボディ40が接続されている。
【0035】
タンブル弁ボディ76は、その吸気路76aの吸気の流れ方向と垂直、すなわち吸気路76aの中心軸線と直角に交差する弁軸76bによってタンブル弁ボディ76内に回転自在に軸支されて、吸気路76aの流路面積を可変制御し、吸気路76aの上側領域を上記仕切部62、72と協働して開閉し得るタンブル弁76cを備えている。タンブル弁76cはバタフライ式のもので、弁軸76bと、この弁軸76bに固定される共に一体的に回転する略円盤状の弁体76dとを有している。このように、タンブル弁76cは弁軸76bと一体的に回転する単一の弁部材である弁体76dを備えて構成されている。なお、タンブル弁76cは、タンブル制御弁、TCVなどとも称され得、本発明の吸気制御弁に相当する。
【0036】
ここで、スロットル弁40cよりも下流側の吸気通路38の部分の立体モデルM1を図2及び図3に示す。図2は立体モデルM1の下流側からの斜視図であり、図3は立体モデルM1の(上下方向に直交する)左右方向からの図である。図3は、吸気弁46のバルブ軸線46cに直交する方向であって主仕切部62の延在方向に対して直交する方向から立体モデルM1をみた図である。立体モデルM1では、タンブル弁76cの弁体76dが表されている。また、図4にタンブル弁76cの弁体76dを示す。タンブル弁76cの単一の弁部材である弁体76dは上述のように略円盤状であるが、下流側において弁軸76bまわりに振られる先端部76tは略直線状にされている。これにより、弁体76dは主仕切部62との間で閉状態になったり、副仕切部72との間で閉状態になったりすることができる。
【0037】
主仕切部62は、タンブル弁76cのすぐ下流側の位置から吸気ポート32にまで連続して延びている。同様に、副仕切部72は、タンブル弁76cのすぐ下流側の位置から吸気ポート32にまで連続して延びている。図1から明らかなように、タンブル弁76cの弁軸76bは主仕切部62の上側に位置付けられていて、かつ、タンブル弁76cはバタフライ式のバルブであるので、主仕切部62の上流端縁62aの方が、副仕切部72の上流端縁72aよりも下流側に位置する。なお、主仕切部62の下流端縁62bは、副仕切部72の下流端縁72bよりも下流側に位置する。
【0038】
タンブル弁ボディ76には、図1に示すように、タンブル弁76cの弁体76dの動きを許容する凹部77が設けられている。凹部77は、吸気通路38を区画形成する壁部であるタンブル弁ボディ76の壁部76eのうち上側の壁部76uに設けられている。
【0039】
上記構成のタンブル弁76cは、第2吸気通路である主通路66及び第4吸気通路である第2タンブル通路70を開閉可能であるように構成されている。ここでは、タンブル弁76cは、第1タンブル通路68の開度に影響しないように設けられているが、第1タンブル通路68の開度にも影響するように、例えばその一部にも延びるように設けられることも可能である。
【0040】
図1では、タンブル弁76cの弁体76dは、流れ方向に延びることができるように位置付けられていて、実線で示すように全開位置PAにある。タンブル弁76cは、この全開位置PAの他、その弁体76dの下流側が副仕切部72の上流端縁72aに延びる第1位置P1(図1の一点鎖線)と、その弁体76dの下流側が主仕切部62の上流端縁62aに延びる第2位置P2(図1の二点鎖線)とを有する。タンブル弁76cが全開位置PAにあることで、タンブル通路64及び主通路66が全開状態になる。タンブル弁76cが第1位置P1にあることで、主通路66と第2タンブル通路70は実質的に閉じられ、当然に第1タンブル通路68は開いたままになる。タンブル弁76cが第2位置P2にあることで、主通路66は実質的に閉じられ、第1タンブル通路68に加えて第2タンブル通路70は開いた状態になる。このように、タンブル弁76cは複数の開度で用いられることになるが、凹部77が設けられていることにより第1位置P1と第2位置P2のどちらの場合でも壁部76uと弁体76dとの間の隙間が実質的に無くなるように閉じることができる。なお、タンブル弁76cはこれら以外の任意の位置に位置付けられることができる。タンブル弁76cのこれらの位置は、ここでは内燃機関10の運転状態に基づいて後述するECU80により制御される。
【0041】
内燃機関10では、燃料噴射弁78が設けられている。燃料噴射弁78は、スロットル弁40c及びタンブル弁76cの下流側に設けられている。燃料噴射弁78は主通路66を介して吸気弁46に向けて燃料を噴射するように設けられている。この燃料噴射弁78からの燃料噴射量及びその噴射タイミングは、スロットル弁40c及びタンブル弁76cのそれぞれの制御と関連付けて制御される。なお、スロットル弁40cは、電子制御されることに限定されず、例えばスロットルケーブルで機械的にコントロールされる弁であってもよく、これはタンブル弁76cにおいても同様である。
【0042】
内燃機関10を制御するECU(電子制御ユニット)80は、所謂コンピュータとしての構成を備え、吸気制御部82及び燃料噴射制御部84を備えている。つまり、ECU80は、例えばCPUである処理装置つまりプロセッサと、例えばROM、RAMを含む記憶装置つまりメモリとを備える。ECU80は、エンジン回転速度センサ、エンジン負荷センサなどの各種センサからの出力に基づいて内燃機関10の運転状態を解析して、吸気制御部82により、スロットル弁40c及びタンブル弁76cの各作動を制御する。例えば、スロットル弁40cは、内燃機関10の運転状態に応じた開度に制御され、例えば内燃機関10の運転状態が低負荷領域にあるときよりも、内燃機関10の運転状態が高負荷領域にあるとき、より大きく開いた開度になるように制御され、同様に、タンブル弁76cは、内燃機関10の運転状態に応じた開度に制御され、例えば内燃機関10の運転状態が低負荷領域にあるときよりも、内燃機関10の運転状態が高負荷領域にあるとき、より大きく開いた開度になるように制御される。また、ECU80は、解析した内燃機関10の運転状態に基づいて、燃料噴射制御部84により、燃料噴射弁78の作動を制御する。なお、ECU80には、これらの制御のためのプログラム及び各種データが記憶されている。
【0043】
ここで、タンブル弁76cの制御について詳しく説明する。例えば、内燃機関10の運転状態が低負荷領域にあるとき、ECU80は、第1タンブル通路68のみから吸気を吸入させるように、タンブル弁76cを第1位置P1に位置するようにその作動を制御する。これにより、低負荷領域に即した吸入空気量を確保するとともに、第1タンブル通路68からの吸気で燃焼室20にタンブル流を形成させる。第1タンブル通路68は比較的断面積が小さいため、低負荷領域に即した吸入空気量でも流速を早くすることができ、強いタンブル流を形成することができる。ここでは、内燃機関10の運転状態が低負荷領域にあるとき、燃料噴射弁78からの燃料噴射は空燃比がリーンになるように制御されるが、タンブル流を形成することで効果的に燃焼を生じさせることができる。
【0044】
また、例えば、内燃機関10の運転状態が中負荷領域にあるとき、ECU80は、第1タンブル通路68及び第2タンブル通路70からつまりタンブル通路64から吸気を吸入させるように、タンブル弁76cを第2位置P2に位置するようにその作動を制御する。これにより、中負荷領域に即した吸入空気量を確保するとともに、第1及び第2タンブル通路68、70からの吸気で燃焼室20にタンブル流を形成させる。第1及び第2タンブル通路68、70からの吸気でタンブル流を形成するため、低負荷領域より多くの吸入空気量が必要な中負荷領域においても必要な吸入空気量を確保しつつ、強いタンブル流を形成することができる。ここでは、内燃機関10の運転状態が中負荷領域にあるとき、燃料噴射弁78からの燃料噴射は空燃比がリーンになるように制御されるが、タンブル流を形成することで効果的に燃焼を生じさせることができる。
【0045】
更に、例えば、内燃機関10の運転状態が高負荷領域にあるとき、ECU80は、第1タンブル通路68及び第2タンブル通路70を含むタンブル通路64並びに主通路66から吸気を吸入させるように、タンブル弁76cを全開位置PAに位置するようにその作動を制御する。これにより、高負荷領域に即した吸入空気量を確保するとともに、第1及び第2タンブル通路68、70からの吸気で燃焼室20に好ましくはタンブル流を、そうでなくても好適な筒内流速を実現させる。ここでは、内燃機関10の運転状態が高負荷領域にあるとき、燃料噴射弁78からの燃料噴射は空燃比がストイキになるように制御され、更に好適な筒内流速を実現することでより効果的に燃焼を生じさせることができる。
【0046】
例えば、内燃機関10の運転状態が高負荷領域にあるとき、タンブル弁76cは全開位置PAに位置するようにその作動が制御され、タンブル通路64及び主通路66から吸気を吸入させる。このときに、主通路66からの吸気により吸入空気量をより多くし、かつ、タンブル通路64からの吸気によるタンブル性能をより好適に確保可能にするように、内燃機関10の吸気構造Sは更なる構成及び形状を有する。以下、更に説明する。
【0047】
タンブル通路64の下流側には合流部86が区画形成されている。合流部86は、第1タンブル通路68及び第2タンブル通路70がその下流側で合流する個所に設けられている。そして、合流部86を介してタンブル通路64は主通路66に合流する。合流部86は、シリンダヘッド14に形成されている。ここでは、合流部86は吸気ポート32の一部として形成されている。
【0048】
ここで、図5及び図6に、スロットル弁40c及びタンブル弁76cの下流側の吸気通路38の部分及び排気ポート34の排気通路を含む立体モデルM2を示す。図5は立体モデルM2の上側からの図であり、図6はシリンダ軸線Cに直交するとともに吸気流れ方向に直交する方向からの立体モデルM2の図である。更に、図6のVIIA-VIIA線に沿った位置での立体モデルM2の断面図を図7Aに示し、図6のVIIB-VIIB線に沿った位置での立体モデルM2の断面図を図7Bに示し、図6のVIIC-VIIC線に沿った位置での立体モデルM2の断面図を図7Cに示し、図6のVIID-VIID線に沿った位置での立体モデルM2の断面図を図7Dに示す。図6のVIIA-VIIA線は主仕切部62の上流端縁近傍を通り、図6のVIIB-VIIB線は吸気ポート32の上流端近傍を通り、図6のVIIC-VIIC線は副仕切部72の下流端縁72b近傍を通り、図6のVIID-VIID線は主仕切部62の下流端縁62bの近傍を通る。これらのVIIA-VIIA線からVIID-VIID線は、いずれも、図6においてシリンダ軸線Cに平行である。なお、図7Aから図7Dでは、排気側を省略している。
【0049】
図7A図7B及び図7Cにおいて、第1タンブル通路68と第2タンブル通路70とは概ね同じ形状及びサイズを有する。このように、第1タンブル通路68と第2タンブル通路70とのそれぞれは、その吸気流れ方向においてその形状又はサイズが大きく変わることなく、滑らかに上流側から下流側に至る。そして、第1タンブル通路68と第2タンブル通路70とは合流部86につながる。合流部86は、主仕切部62の下流端の下流端縁62bよりも下流側で主通路66につながる(図1及び図6参照)。この構成により、第1タンブル通路68と第2タンブル通路70とは副仕切部72の下流端縁72bよりも下流側の合流部86を経て、主通路66につながることになる。よって、タンブル通路64の第1タンブル通路68と第2タンブル通路70を通った吸気に指向性を強く持たせることができる。
【0050】
図6において、合流部86において流れ方向に延びるように定められる線L1が直角に近い角度θ1でシリンダ軸線Cに交わるのに対して、主通路66の下流端において流れ方向に延びるように定められる線L2が角度θ1よりも小さな角度θ2でシリンダ軸線Cに交わる。このように、主通路66からの吸気よりも、合流部86を介してのタンブル通路64からの吸気が小さい進入角で燃焼室20に流入するように、合流部86は区画形成されている。この構成により、タンブル通路64を通った吸気が強い指向性を持ったまま燃焼室20に導入可能になり、例えば燃焼室20で強いタンブル流を発生させることができる。なお、ここでいう進入角とは、燃焼室20に向けて流入する吸気の燃焼室20への流入の角度であり、例えばシリンダ軸線Cに直交するとともに吸気流れ方向に直交する方向からみた図6においてシリンダ軸線Cとの間でなす角度が大きいほど進入角は小さいということになる。なお、ここでは、進入角θは、0°よりも大きく、90°よりも小さい角度である(0°<θ<90°)。
【0051】
更に、図1図3及び図6から明らかなように、タンブル通路64は、下側に凸の湾曲形状を有するように区画形成され、主通路66は、上側に凸の湾曲形状を有するように区画形成されている。この構成により、上述のように、タンブル通路64からの吸気をより小さな進入角で燃焼室に導くことが可能になり、また、主通路66からの吸気をより効果的に燃焼室20に導くことが可能になる。
【0052】
図7Cに、合流部86の上流側端部に第1タンブル通路68及び第2タンブル通路70が連通するところが示されている。ここで、参考までに、図7Cに、第1タンブル通路68の断面68A、第2タンブル通路70の断面70A、及び、合流部86の上流側端部86uに定められる仮想面のつまりこの仮想面での断面の1つの辺TA1を示す。第1タンブル通路68の断面68Aの上下方向の長さ及び第2タンブル通路70の断面70Aの上下方向の長さのそれぞれよりも、合流部86の上流側端部86uの辺TA1の方が明らかに長い。このように、第1タンブル通路68及び第2タンブル通路70の各々の断面積(図7Cの面積S1、S2)が、合流部86の上流側端部86uの断面積S3(辺TA1により一部が区画形成される断面の面積)より小さいように、合流部86は区画形成されている(S1<S3、S2<S3)。この構成により、第1タンブル通路68からの吸気と第2タンブル通路70からの吸気とが合流部86に好適に流入可能である。より詳細には、タンブル弁76cが第2位置P2にあり第1タンブル通路68及び第2タンブル通路70に吸気が流れている場合、合流部86の断面積が第1タンブル通路68及び第2タンブル通路70それぞれの断面積より大きいため、合流部86で吸入空気量が制限されにくく、中負荷領域の運転領域に即した吸入空気量を確保することができる。
【0053】
また、例えば、図7Dの辺TA2の方が図7Cの辺TA1よりも短い。つまり、下流側に至るに従い、例えば図7Cの辺TA1の箇所よりも図7Dの断面箇所で、タンブル通路64の合流部86の断面積が小さくなる傾向にある。このように、内燃機関10では、合流部86は、該合流部86の上流側端部から下流側に向けて概ね先細りするように区画形成されている。この構成により、第1タンブル通路68および第2タンブル通路70の断面積の和(例えば断面68Aの面積S1と断面70Aの面積S2の和)よりも、合流部86の上流側端部86uよりも下流側の流れ方向に直交する断面での面積(断面積)が小さくなる。これにより、第1タンブル通路68からの吸気と第2タンブル通路70からの吸気とが合流部86で合流して主通路66に流れ込むとき、吸気の流速を速い状態に保つことが可能になる。したがって、タンブル通路64からの吸気は、速い流速で燃焼室20内に流入し、好ましくはタンブル流を形成することができる。なお、第1タンブル通路68および第2タンブル通路70の断面積の和よりも、合流部86の上流側端部よりも下流側の流れ方向に直交する断面での合流部86の断面積を小さくすることは、先細り以外の手段により実現されてもよい。
【0054】
以上説明した内燃機関10の吸気構造Sは、タンブル通路64と主通路66とを仕切る主仕切部62と、タンブル通路64を第1及び第2タンブル通路68、70とに仕切る副仕切部72と、第1及び第2タンブル通路68、70とが合流する合流部86とを備える。そして、上記構成の合流部86を介してタンブル通路64は主通路66に合流する。
【0055】
この吸気構造Sによれば、主通路66と、タンブル通路64とを備え、タンブル通路64を第1タンブル通路68と第2タンブル通路70とに分けることができる。よって内燃機関の運転状態によってそれらのいずれか1つ又は2つ又は全てを使用して、運転状態に応じた吸入空気量を確保することが可能になる。
【0056】
また、上記吸気構造Sによれば、上記合流部86が設けられるので、第1タンブル通路68と第2タンブル通路70とを備えるタンブル通路64からの吸気に強い指向性を持たせることができる。よって、タンブル性能を確保することができる。
【0057】
したがって、内燃機関10の吸気構造Sによれば、運転状態に応じた吸入空気量の確保とタンブル性能の確保との両立を図ることが可能になる。
【0058】
なお、副仕切部は1つに限定されず、複数であってもよい。複数の副仕切部をタンブル通路64に設けることで、タンブル通路64を、上記第1タンブル通路68に対応する第3吸気通路及び上記第2タンブル通路70に対応する第4吸気通路を含む3つ以上の吸気通路つまり吸気通路部分に分けることが可能になる。この分けられた複数の吸気通路部分は、上述の第1及び第2タンブル通路68、70と同様に合流部86を介して主通路66につながり、燃焼室20につながるとよい。なお、この場合、複数の副仕切部は上下方向に離してタンブル通路64に設けられ得る。
【0059】
なお、上記タンブル弁76cは、単一の弁部材つまり弁体を備えることに限定されない。また、タンブル弁76cの上記機能を実現するように、複数のバルブが組み合わせて適用されてもよい。
【0060】
また、上記内燃機関10の吸気通路を、特にスロットル弁40cの下流側の吸気通路を区画形成する各種部材は主に鋳造により作製されるとよい。これにより、下側に凸のタンブル通路64及び上側に凸の主通路66など種々の形状を実現することが可能である。なお、鋳造以外の方法により、吸気通路を区画形成する部材が作製されることを本開示は排除するものではない。
【0061】
以上、本発明に係る実施形態及びその変形例について説明したが、本発明はそれらに限定されない。本願の請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。
【0062】
例えば、内燃機関10は、単気筒エンジンであり、1つの気筒に対して、1つの吸気弁46および1つの排気弁50を備えた。しかし、内燃機関の気筒数、1つの気筒あたりの吸気弁の数および/又は1つの気筒あたりの排気弁の数は、上記技術と矛盾しない範囲で、任意に定めることができる。
【符号の説明】
【0063】
10…内燃機関、12…シリンダブロック、14…シリンダヘッド、15…ピストン、
20…燃焼室、28…吸気弁口、
30…排気弁口、32…吸気ポート、34…排気ポート、38…吸気通路
40…スロットルボディ、46…吸気弁、
50…排気弁、
62…仕切部(主仕切部)、64…タンブル通路(第1吸気通路)、66…主通路(第2吸気通路)、68…第1タンブル通路、
70…第2タンブル通路、72…仕切部(副仕切部)、76…タンブル弁ボディ、76c…タンブル弁(吸気制御弁)、
86…合流部、
S…吸気構造。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D