(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】回転子、電動機、圧縮機及び空気調和装置
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20231215BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
H02K1/276
F04C29/00 D
(21)【出願番号】P 2023503317
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2021008675
(87)【国際公開番号】W WO2022185524
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】半田 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100203677
【氏名又は名称】山口 力
(72)【発明者】
【氏名】増子 智希
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-162168(JP,A)
【文献】特開2010-138863(JP,A)
【文献】特開2014-080939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/276
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトの挿入孔であるシャフト挿入孔を有する回転子鉄心と、
前記回転子鉄心に備えられたバランスウェイトと
を有し、
前記シャフトの軸線を含む基準平面によって、前記シャフトは第1の部分と第2の部分とに区分され、前記回転子鉄心は前記第1の部分に接する第1の鉄心部と前記第2の部分に接する第2の鉄心部とに区分され、
前記第1の鉄心部は、前記バランスウェイトを支持し、且つ前記第1の鉄心部の前記シャフトの軸方向の端面に設けられた半円環状のカウンターボア部を有し、
前記第2の鉄心部は、前記第2の鉄心部の前記軸方向の端面に設けられた凹部を有し、
前記凹部は、前記軸方向に見たときに前記第2の部分を囲うように形成され、
前記軸方向に見たときの前記凹部の開口
の面積は、
前記軸方向に見たときの前記カウンターボア部の開口
の面積より大きい
回転子。
【請求項2】
前記軸方向に見たときの前記第1の鉄心部が存在する部分の面積をS1、
前記軸方向に見たときの前記第2の鉄心部が存在する部分の面積をS2としたときに、
1<S1/S2<1.270
を満たす
請求項1に記載の回転子。
【請求項3】
前記凹部は、前記カウンターボア部と繋がっている
請求項1又は2に記載の回転子。
【請求項4】
前記軸方向に見たときの前記凹部の形状は、半円環状である
請求項1から3のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項5】
前記軸方向に見たときの前記凹部の形状は、多角形状である
請求項1から3のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項6】
シャフトと、
前記シャフトの挿入孔であるシャフト挿入孔を有する回転子鉄心と、
前記回転子鉄心に備えられたバランスウェイトと
を有し、
前記シャフトの軸線を含む基準平面によって、前記シャフトは第1の部分と第2の部分とに区分され、前記回転子鉄心は前記第1の部分に接する第1の鉄心部と前記第2の部分に接する第2の鉄心部とに区分され、
前記第1の鉄心部は、前記バランスウェイトを支持し、
前記第2の鉄心部は、前記第2の鉄心部の前記シャフトの軸方向の端面に設けられた凹部を有し、
前記凹部は、前記軸方向に見たときに、前記シャフト挿入孔より前記第2の鉄心部の径方向の外側で前記第2の部分を囲うように形成されている
回転子。
【請求項7】
前記回転子鉄心は、前記軸方向の端面に設けられた他の凹部であるカウンターボア部を有し、
前記凹部は、前記カウンターボア部より前記径方向の外側に設けられている
請求項6に記載の回転子。
【請求項8】
前記凹部の深さは、前記カウンターボア部の深さより深い
請求項7に記載の回転子。
【請求項9】
前記凹部は、前記第2の鉄心部を前記軸方向に貫通している
請求項6から8のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項10】
前記凹部は、
前記軸線を中心とする半円環状の部分である半円環部と、
前記半円環部の前記第2の鉄心部の径方向の外向きの面から前記径方向の外側に伸びる延長部と
を有する
請求項1から9のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項11】
前記回転子鉄心に取り付けられた永久磁石を更に有し、
前記延長部は、前記半円環部の前記径方向の外向きの面から前記永久磁石の前記軸線を中心とする周方向の中心に向かって伸びる
請求項10に記載の回転子。
【請求項12】
前記軸方向に見たときの前記延長部の形状は、長方形状である
請求項10又は11に記載の回転子。
【請求項13】
前記軸方向に見たときの前記第1の鉄心部が存在する部分の面積をS1、
前記軸方向に見たときの前記第2の鉄心部が存在する部分の面積をS21としたとき、
1<S1/S21<1.322
を満たす
請求項12に記載の回転子。
【請求項14】
前記軸方向に見たときの前記延長部の形状は、半円環状である
請求項10又は11に記載の回転子。
【請求項15】
前記軸方向に見たときの前記第1の鉄心部が存在する部分の面積をS1、
前記軸方向に見たときの前記第2の鉄心部が存在する部分の面積をS22としたとき、
1<S1/S22<1.353
を満たす
請求項14に記載の回転子。
【請求項16】
前記軸方向に見たときの前記延長部の形状は、三角形状である
請求項10又は11に記載の回転子。
【請求項17】
前記軸方向に見たときの前記第1の鉄心部が存在する部分の面積をS1、
前記軸方向に見たときの前記第2の鉄心部が存在する部分の面積をS23としたとき、
1<S1/S23<1.277
を満たす
請求項16に記載の回転子。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載の回転子と、
固定子と
を有する電動機。
【請求項19】
請求項18に記載の電動機と、
前記電動機によって駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機構部と
を有する圧縮機。
【請求項20】
請求項19に記載の圧縮機と、
前記圧縮機から送り出された前記冷媒を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器によって凝縮された前記冷媒を減圧する減圧装置と、
前記減圧装置によって減圧された前記冷媒を蒸発させる蒸発器と
を有する空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転子、電動機、圧縮機及び空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シャフトと、シャフト挿入孔を有する回転子鉄心と、回転子鉄心に備えられたバランスウェイトとを有する電動機の回転子が知られている。例えば、特許文献1を参照。
【0003】
特許文献1の回転子鉄心は、シャフト挿入孔の内周面から径方向の外側に伸びる切り欠き部(以下、「凹部」とも呼ぶ。)を有する。そのため、回転子鉄心の重心は、シャフトの軸線に対してずれる。バランスウェイトに加えて、この重心のずれによって、回転子に作用する遠心力が相殺されることで、バランスウェイトの小型化が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の回転子鉄心を採用した場合、上記切り欠き部が当該回転子鉄心における磁束の流れに影響を与えることによって、漏れ磁束が発生するおそれがある。そのため、回転子における漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイトを小型化する技術が望まれている。
【0006】
本開示は、回転子における漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイトを小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る回転子は、シャフトと、前記シャフトの挿入孔であるシャフト挿入孔を有する回転子鉄心と、前記回転子鉄心に備えられたバランスウェイトとを有し、前記シャフトの軸線を含む基準平面によって、前記シャフトは第1の部分と第2の部分とに区分され、前記回転子鉄心は前記第1の部分に接する第1の鉄心部と前記第2の部分に接する第2の鉄心部とに区分され、前記第1の鉄心部は、前記バランスウェイトを支持し、且つ前記第1の鉄心部の前記シャフトの軸方向の端面に設けられた半円環状のカウンターボア部を有し、前記第2の鉄心部は、前記第2の鉄心部の前記軸方向の端面に設けられた凹部を有し、前記凹部は、前記軸方向に見たときに前記第2の部分を囲うように形成され、前記軸方向に見たときの前記凹部の開口の面積は、前記軸方向に見たときの前記カウンターボア部の開口の面積より大きい。
【0008】
本開示の他の態様に係る回転子は、シャフトと、前記シャフトの挿入孔であるシャフト挿入孔を有する回転子鉄心と、前記回転子鉄心に備えられたバランスウェイトとを有し、前記シャフトの軸線を含む基準平面によって、前記シャフトは第1の部分と第2の部分とに区分され、前記回転子鉄心は前記第1の部分に接する第1の鉄心部と前記第2の部分に接する第2の鉄心部とに区分され、前記第1の鉄心部は、前記バランスウェイトを支持し、前記第2の鉄心部は、前記第2の鉄心部の前記シャフトの軸方向の端面に設けられた凹部を有し、前記凹部は、前記軸方向に見たときに、前記シャフト挿入孔より前記第2の鉄心部の径方向の外側で前記第2の部分を囲うように形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、回転子における漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイトを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る圧縮機の構成を示す断面図である。
【
図2】実施の形態1に係る回転子の構成を示す横断面図である。
【
図3】実施の形態1に係る回転子の構成を示す縦断面図である。
【
図4】実施の形態1に係る回転子の構成を示す斜視図である。
【
図5】
図2に示される回転子鉄心における第2の金属部の面積に対する第1の金属部の面積の面積比と誘起電圧の低下率との関係を示すグラフである。
【
図6】実施の形態1の変形例に係る回転子の構成を示す横断面図である。
【
図7】実施の形態2に係る回転子の構成を示す横断面図である。
【
図8】比較例に係る回転子における磁束の流れのシミュレーション結果を示す磁束線図である。
【
図9】実施の形態2に係る回転子鉄心における第2の金属部の面積に対する第1の金属部の面積の面積比と誘起電圧の低下率との関係を示すグラフである。
【
図10】実施の形態2の変形例1に係る回転子の構成を示す横断面図である。
【
図11】実施の形態2の変形例1に係る回転子鉄心における第2の金属部の面積に対する第1の金属部の面積の面積比と誘起電圧の低下率との関係を示すグラフである。
【
図12】実施の形態2の変形例2に係る回転子の構成を示す横断面図である。
【
図13】実施の形態2の変形例2に係る回転子鉄心における第2の金属部の面積に対する第1の金属部の面積比と誘起電圧の低下率との関係を示す図である。
【
図14】実施の形態3に係る回転子の構成を示す横断面図である。
【
図15】実施の形態3に係る回転子の構成を示す縦断面図である。
【
図16】実施の形態3の変形例に係る回転子の構成を示す縦断面図である。
【
図17】実施の形態4に係る回転子の構成を示す横断面図である。
【
図18】実施の形態4の変形例1に係る回転子の構成を示す横断面図である。
【
図19】実施の形態4の変形例2に係る回転子の構成を示す横断面図である。
【
図20】実施の形態5に係る空気調和装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施の形態に係る回転子、電動機、圧縮機及び空気調和装置を、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は、例にすぎず、本開示の範囲内で種々の変更が可能である。
【0012】
図面相互の関係を理解し易くするために、各図には、xyz直交座標系が示されている。z軸は、シャフト21の回転中心である軸線Cに平行な座標軸である。x軸は、z軸に直交する座標軸である。y軸は、x軸及びz軸の両方に直交する座標軸である。
【0013】
《実施の形態1》
〈スクロール圧縮機〉
図1は、実施の形態1に係る圧縮機としてのスクロール圧縮機100の構成を示す断面図である。
図1に示されるように、スクロール圧縮機100は、圧縮機構部10と、電動機20と、密閉容器101と、サブフレーム102とを有している。
【0014】
圧縮機構部10は、冷媒を圧縮する。電動機20は、圧縮機構部10を駆動する。電動機20は、シャフト21によって圧縮機構部10に連結されている。電動機20は、例えば、同期電動機である。シャフト21は、z軸方向に伸びている。
【0015】
以下の説明では、シャフト21の軸線C(例えば、
図2参照)を中心とする円の円周に沿った方向(例えば、
図2において矢印によって示される方向)を「周方向R」、シャフト21が伸びる方向を「軸方向」、軸方向に直交してシャフト21を通る直線が伸びる方向を「径方向」と呼ぶ。また、「横断面図」とは、軸線Cに直交する面で切断した断面図であり、「縦断面図」とは、軸線Cに平行な面で切断した断面図である。
【0016】
密閉容器101は、圧縮機構部10及び電動機20を収容する容器である。密閉容器101には、圧縮機構部10から吐出される高圧の冷媒ガスをスクロール圧縮機100の外部に吐出する吐出管103が備えられている。また、密閉容器101には、電動機20に電力を供給するガラス端子104が固定されている。ガラス端子104は、例えば、溶接によって、密閉容器101に固定されている。サブフレーム102は、電動機20のシャフト21の-z軸側の端部を支持している。
【0017】
圧縮機構部10は、固定スクロール11と、揺動スクロール12と、コンプライアンスフレーム13と、ガイドフレーム14とを有している。
【0018】
固定スクロール11の渦巻部分と揺動スクロール12の渦巻部分とによって、冷媒を圧縮する圧縮室が形成されている。固定スクロール11には、冷媒を吸入する吸入管105が圧入されている。コンプライアンスフレーム13は、シャフト21の+z軸側の端部を支持している。ガイドフレーム14は、コンプライアンスフレーム13を支持している。ガイドフレーム14は、密閉容器101に固定されている。
【0019】
電動機20は、回転子1と、固定子5とを有している。固定子5は、固定子鉄心51と、固定子鉄心51のティース(図示しない)に巻き付けられた巻線52とを有している。
【0020】
電動機20の回転が揺動スクロール12に伝達されることによって、固定スクロール11に対して揺動スクロール12が揺動する。これにより、揺動スクロール12の渦巻部分と固定スクロール11の渦巻部分とによって形成される圧縮室の容積が変化し、当該圧縮室に吸入された冷媒が圧縮される。圧縮された冷媒は、吐出管103から吐出される。
【0021】
〈回転子〉
次に、回転子1の構成の詳細について説明する。
図2は、実施の形態1に係る回転子1の構成を示す横断面図である。
図3は、実施の形態1に係る回転子1の構成を示す縦断面図である。
図4は、実施の形態1に係る回転子1の構成を示す斜視図である。
図2~4に示されるように、回転子1は、回転軸としてのシャフト21と、回転子鉄心22と、回転子鉄心22に備えられたバランスウェイト23と、永久磁石24とを有している。なお、
図2では、バランスウェイト23の図示が省略されている。
【0022】
バランスウェイト23は、圧縮機構部10の揺動スクロール12(
図1参照)の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺するために備えられている。バランスウェイト23は、非磁性材料から形成されている。バランスウェイト23は、例えば、真鍮から形成されている。
【0023】
図4に示されるように、バランスウェイト23は、端板26を介して回転子鉄心22に固定されている。バランスウェイト23は、端板26に当接する底板部23aと、底板部23aより+z軸側に設けられた半円環部23bとを有している。半円環部23bは、軸線Cを中心とする180度の範囲に形成されている。底板部23a及び半円環部23bには、バランスウェイト23を回転子鉄心22に固定するための締結部材(例えば、リベット)が挿入される挿入孔23cが形成されている。なお、
図3では、説明の便宜上、底板部23a及び端板26の図示が省略されている。また、バランスウェイト23は、端板26を介さずに、回転子鉄心22に固定されていてもよい。
【0024】
図2及び3に示されるように、回転子鉄心22は、上述したリベット(図示せず)の挿入孔であるリベット挿入孔22bと、シャフト21の挿入孔であるシャフト挿入孔22cとを有している。
【0025】
回転子鉄心22は、永久磁石24が挿入される複数(例えば、6つ)の磁石挿入孔22dを更に有している。このように、回転子1は、永久磁石埋込型の回転子である。
【0026】
永久磁石24は、例えば、希土類磁石である。具体的には、永久磁石24は、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)及びホウ素(B)を含むネオジム焼結磁石である。なお、永久磁石24は、ネオジム焼結磁石に限らず、例えば、サマリウムコバルト磁石、フェライト磁石及びボンド磁石のうちいずれか1つの磁石であってもよい。
【0027】
図2に示す例では、1つの磁石挿入孔22dに1つの永久磁石24が挿入されている。回転子鉄心22は、例えば、6つの磁石挿入孔22dを有しているため、回転子1は、6つの永久磁石24を有している。1つの永久磁石24は1磁極を構成するため、実施の形態1では、回転子1の極数は6極である。なお、回転子1の極数は6極に限られず、2極以上であればよい。また、1つの磁石挿入孔22dには、2つ以上の永久磁石24が挿入されていてもよい。
【0028】
また、回転子鉄心22は、複数のフラックスバリア22eを更に有している。複数のフラックスバリア22eは、1つの磁石挿入孔22dの周方向Rの両側に形成されている。フラックスバリア22eと回転子鉄心22の外周面22fとの間の部分が薄肉部であるため、周方向Rに隣り合う磁極間における永久磁石24の磁束の短絡を防止することができる。
【0029】
また、回転子鉄心22は、z軸方向に積層された複数の電磁鋼板25(
図1参照)を有している。1枚の電磁鋼板25の板厚は、例えば、0.1mm~0.5mmの範囲内の決められた厚さである。実施の形態1では、1枚の電磁鋼板25の板厚は、例えば、0.35mmである。複数の電磁鋼板25は、カシメ加工によって互いに固定されている。そのため、回転子鉄心22は、複数のカシメ部22gを有している。
【0030】
以下では、回転子鉄心22の他の構成を説明するにあたって、
図2に示されるように、シャフト21を、軸線Cを含む基準平面Vによって、第1の部分21aと第2の部分21bとに区分する。また、回転子鉄心22を、当該基準平面Vによって、第1の部分21aに接する第1の鉄心部31と、第2の部分21bに接する第2の鉄心部32とに区分する。
【0031】
図3に示されるように、第1の鉄心部31は、回転子鉄心22において、バランスウェイト23を支持している部分である。実施の形態1では、バランスウェイト23は、第1の鉄心部31の+z軸方向を向く端面31cに配置されている。なお、バランスウェイト23は、第1の鉄心部31の-z軸方向を向く端面31dに配置されていてもよい。
【0032】
図2及び3に示されるように、第1の鉄心部31は、第1の凹部としてのカウンターボア部41を有している。カウンターボア部41は、+z軸方向を向く端面31c及び-z軸方向を向く端面31dに設けられている。カウンターボア部41は、例えば、圧縮機構部10(
図1参照)との干渉を避けるため、又はシャフト21の焼き嵌め性を向上させるために設けられている。z軸方向に見たときのカウンターボア部41の形状は、例えば、半円環状である。カウンターボア部41は、シャフト挿入孔22cと繋がっている。なお、カウンターボア部41は、z軸方向の両側の端面31c、31dのうちいずれか一方の端面のみに設けられていてもよい。
【0033】
第2の鉄心部32は、第2の凹部としての凹部61を有している。凹部61は、+z軸方向を向く端面32c及び-z軸方向を向く端面32dに設けられている。凹部61は、z軸方向に見たときに、シャフト21の第2の部分21bを囲うように形成されている。言い換えれば、凹部61は、第2の鉄心部32において、軸線Cを中心とする180度の範囲に形成されている。また、凹部61の開口61sは、カウンターボア部41の開口41sより大きい。これにより、第2の鉄心部32の重量は、第1の鉄心部31の重量より軽い。そのため、第1の鉄心部31と第2の鉄心部32との間で、重量のアンバランス(以下、「重量アンバランス」と呼ぶ。)が生じる。この重量アンバランスによって、圧縮機構部10の揺動スクロール12(
図1参照)の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺することができる。
【0034】
ここで、スクロール圧縮機100(
図1参照)に備えられた電動機20の出力を増加させるために、回転子1のz軸方向の長さを長くする場合がある。しかし、スクロール圧縮機100のz軸方向の長さは予め決められていることから、スクロール圧縮機100内において回転子1が配置されるスペースも予め決められている。よって、回転子1のz軸方向の長さには、上限値がある。特に、回転子鉄心22にバランスウェイト23が備えられている場合、当該上限値との関係で、回転子1のz軸方向の長さを長くし難い。そのため、バランスウェイト23の小型化が望まれている。
【0035】
実施の形態1では、上述した形状を有する凹部61が第2の鉄心部32に形成されていることで、第1の鉄心部31と第2の鉄心部32との間で重量アンバランスが生じている。そのため、バランスウェイト23に限らず、回転子鉄心22における当該重量アンバランスによっても、圧縮機構部10の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺することができる。よって、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0036】
図2に示す例では、z軸方向に見たときの凹部61の形状は、シャフト21の第2の部分21bを囲う半円環状である。言い換えれば、凹部61は、シャフト21の第2の部分21bを囲う半円環状の部分を含む。凹部61の内径は、カウンターボア部41の内径より大きい。これにより、凹部61の開口61sが、カウンターボア部41の開口41sより大きくなっている。なお、後述する
図6に示されるように、z軸方向に見たときの第2の鉄心部32の凹部61の形状は、多角形状であってもよい。
【0037】
また、凹部61は、カウンターボア部41と繋がっている。これにより、例えば、後述する
図14に示されるように、凹部361がカウンターボア部341より径方向の外側に形成されている構成と比較して、回転子鉄心22の製造工程において、凹部61とカウンターボア部41とを同時に形成することができる。よって、回転子鉄心22の製造工程を簡素化することができる。
【0038】
ここで、第1の鉄心部31が存在する部分(以下、「第1の金属部81」と呼ぶ。)の面積である第1の面積をS1、第2の鉄心部32が存在する部分(以下、「第2の金属部82」と呼ぶ。)の面積である第2の面積をS2とする。具体的に言えば、第1の金属部81は、第1の鉄心部31において、リベット挿入孔22b、シャフト挿入孔22c、磁石挿入孔22d、フラックスバリア22e、カシメ部22g及びカウンターボア部41を除いた部分である。また、第2の金属部82は、第2の鉄心部32において、複数のリベット挿入孔22b、シャフト挿入孔22c、磁石挿入孔22d、フラックスバリア22e、カシメ部22g及び凹部61を除いた部分である。
【0039】
上述した通り、凹部61の開口61sは、カウンターボア部41の開口41sより大きい。そのため、実施の形態1では、第1の金属部81の第1の面積S1は、第2の金属部82の第2の面積S2より大きい。つまり、第2の面積S2に対する第1の面積S1の面積比S1/S2は、1より大きい。ここで、凹部61の大きさは、回転子鉄心22における磁路に影響を与える場合がある。実施の形態1では、z軸方向に見たときの凹部61の形状は、軸線Cを中心とする半円環状である。この場合、凹部61の内径が大きくなるほど、回転子1において、漏れ磁束が発生するおそれがある。言い換えれば、回転子1における有効磁束の磁束量が低下するおそれがある。
【0040】
図5は、面積比S1/S2と誘起電圧の低下率(以下、「誘起電圧低下率」という)との関係を示すグラフである。ここで、誘起電圧は、永久磁石24の磁束が固定子5の巻線52(
図1参照)に鎖交することで生じる電圧である。漏れ磁束が発生していない場合には、誘起電圧低下率は0%であり、漏れ磁束の磁束量が多いほど、誘起電圧低下率は増加する。
【0041】
図5に示されるように、面積比S1/S2が1~1.270の範囲内では、誘起電圧低下率は0%又は0%よりやや大きい値である。しかし、面積比S1/S2が1.270より大きくなると、誘起電圧の低下率も大きくなる。
【0042】
よって、面積比S1/S2が1.000~1.270の範囲内であるとき、すなわち、面積比S1/S2が以下の式(1)を満たすときに、漏れ磁束の発生を抑制することができる。これにより、電動機20の効率の低下を抑制することができる。
1<S1/S2<1.270 (1)
このように、z軸方向に見たときの凹部61の形状が半円環状である場合、面積比S1/S2が式(1)を満たすときに、回転子1における漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0043】
〈実施の形態1の効果〉
以上に説明した実施の形態1によれば、回転子鉄心22における第2の鉄心部32は、z軸方向の端面32c、32dに設けられた凹部61を有し、凹部61は、z軸方向に見たときにシャフト21の第2の部分21bを囲うように形成されている。また、凹部61の開口61sは、カウンターボア部41の開口41sより大きい。これにより、第1の鉄心部31と第2の鉄心部32との間で、重量アンバランスが生じる。そのため、バランスウェイト23に加えて、当該重量アンバランスによっても、圧縮機構部10の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺することができる。よって、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0044】
また、実施の形態1によれば、z軸方向に見たときの凹部61の形状は、半円環状である。これにより、回転子1における漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。具体的には、回転子鉄心22において、第2の金属部82の第2の面積S2に対する第1の金属部81の第1の面積S1の面積比S1/S2が、上述した式(1)を満たしているときに、回転子1における漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0045】
また、実施の形態1によれば、凹部61は、カウンターボア部41と繋がっている。これにより、回転子鉄心22の製造工程において、凹部61とカウンターボア部41とを同時に形成することができる。よって、回転子鉄心22の製造工程を簡素化することができる。
【0046】
また、実施の形態1によれば、電動機20が、回転子1と、固定子5とを有している。上述した通り、回転子1では、漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。漏れ磁束の発生が抑制されることによって、電動機20の効率の低下を抑制することができる。また、バランスウェイト23が小型化されることによって、回転子1のz軸方向の長さを長くできるため、電動機20の出力を向上させることができる。
【0047】
また、実施の形態1によれば、スクロール圧縮機100は、上述した電動機20を有している。これにより、スクロール圧縮機100の効率の低下を抑制しつつ、出力を向上させることができる。
【0048】
《実施の形態1の変形例》
図6は、実施の形態1に係る回転子1Aの構成を示す横断面図である。
図6において、
図2に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、
図2に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態1の変形例に係る回転子1Aは、凹部61Aの形状の点で、実施の形態1に係る回転子1と相違する。これ以外の点については、実施の形態1に係る回転子1Aは、実施の形態1に係る回転子1と同じである。そのため、以下の説明では、
図3を参照する。
【0049】
回転子1Aは、シャフト21と、シャフト挿入孔22cを有する回転子鉄心22Aと、回転子鉄心22Aに備えられたバランスウェイト23(
図3参照)とを有している。
【0050】
回転子鉄心22Aの構成を説明するにあたって、当該回転子鉄心22Aを、軸線Cを含む基準平面Vによって、シャフト21の第1の部分21aに接する第1の鉄心部31と、シャフト21の第2の部分21bに接する第2の鉄心部32Aとに区分する。
【0051】
第2の鉄心部32Aは、z軸方向の端面に設けられた凹部61Aを有している。実施の形態1の変形例では、z軸方向に見たときの凹部61Aの形状は、多角形状である。なお、凹部61Aは、実施の形態1で述べた半円環状の凹部61に内接するため、実施の形態1の変形例においても、回転子1Aにおける漏れ磁束の発生を抑制することができる。
【0052】
凹部61Aは、シャフト21の第2の部分21bを囲うように形成されている。すなわち、凹部61Aは、第2の鉄心部32Aにおいて、軸線Cを中心とする180度の範囲に形成されている。また、凹部61Aの開口61sは、カウンターボア部41の開口41sより大きい。これにより、第2の鉄心部32Aの重量は、第1の鉄心部31の重量より軽い。言い換えれば、第1の鉄心部31と第2の鉄心部32Aとの間で、重量アンバランスが生じる。よって、バランスウェイト23に限らず、この重量アンバランスによっても、圧縮機構部10の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺することができる。よって、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0053】
〈実施の形態1の変形例の効果〉
以上に説明した実施の形態1の変形例によれば、凹部61Aは、シャフト21の第2の部分21bを囲うように形成され、且つ凹部61Aの開口61sは、カウンターボア部41の開口41sより大きい。これにより、第2の鉄心部32Aの重量は、第1の鉄心部31の重量より軽い。そのため、バランスウェイト23に加えて、回転子鉄心22Aにおける重量アンバランスによって、圧縮機構部10の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺することができる。よって、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0054】
また、実施の形態1の変形例によれば、z軸方向に見たときの凹部61Aの形状は、多角形状である。当該凹部61Aは、実施の形態1で述べた半円環状の凹部61に内接する。上述した通り、凹部61が設けられた回転子1では、漏れ磁束の発生が抑制される。よって、実施の形態1の変形例では、回転子1Aにおける漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0055】
《実施の形態2》
図7は、実施の形態2に係る回転子2の構成を示す横断面図である。
図7において、
図2に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、
図2に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態2に係る回転子2は、凹部261の構成の点で、実施の形態1に係る回転子1と相違する。これ以外の点については、実施の形態2に係る回転子2は、実施の形態1に係る回転子1と同じである。そのため、以下の説明では、
図3を参照する。
【0056】
図7に示されるように、回転子2は、シャフト21と、シャフト挿入孔22cを有する回転子鉄心222と、回転子鉄心222に備えられたバランスウェイト23(
図3参照)とを有している。
【0057】
回転子鉄心222の構成を説明するにあたって、当該回転子鉄心222を、軸線Cを含む基準平面Vによって、シャフト21の第1の部分21aに接する第1の鉄心部31と、シャフト21の第2の部分21bに接する第2の鉄心部232とに区分する。
【0058】
第2の鉄心部232は、z軸方向の端面に設けられた凹部261を有している。z軸方向に見たときに、凹部261は、第2の部分21bを囲うように形成されている。
【0059】
また、凹部261は、半円環部271と、複数の延長部272とを有している。半円環部271は、凹部261における軸線Cを中心とする半円環状の部分である。
【0060】
複数の延長部272の各延長部272は、半円環部271の径方向外向きの面271aから径方向の外側に伸びている。これにより、z軸方向に見たときの凹部261の開口が、実施の形態1の凹部61の開口61sより大きくなる。よって、実施の形態2では、第2の鉄心部232の重量が、第1の鉄心部31の重量より一層軽くなる。そのため、バランスウェイト23に加えて、回転子鉄心222における重量アンバランスによって、圧縮機構部10(
図1参照)の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺し易くなる。これにより、バランスウェイト23を小型化し易くなる。なお、凹部261は、1つの延長部272を有していても実現することができる。
【0061】
延長部272は、半円環部271の径方向外向きの面271aから永久磁石24の周方向Rの中心に向かって伸びている。以下の説明では、永久磁石24の周方向Rの中心(以下、「磁極中心」とも呼ぶ)を通る直線を「磁極中心線М」と呼ぶ。延長部272は、磁極中心線Mに沿って伸びている。
【0062】
次に、延長部272が磁極中心線Mに沿って伸びていることによる効果について、比較例と対比しながら説明する。
図8は、比較例に係る回転子202における磁束の流れのシミュレーション結果を示す磁束線図である。
図8において、
図7に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、
図7に示される符号と同じ符号が付される。比較例に係る回転子202の回転子鉄心122は、延長部172の形状及び数の点で、実施の形態2に係る回転子2と相違する。ただし、比較例の延長部172は、半円環部171の径方向外向きの面から磁極中心線Мに沿って伸びている点で、実施の形態2の延長部272と共通する。
【0063】
図8に示されるように、比較例に係る回転子202において、永久磁石24の周方向の中心の周辺の領域における磁束密度は、周方向Rに隣接する2つの永久磁石24の間の領域における磁束密度より低い。そのため、永久磁石24の周方向Rの中心は、磁路としての役割が小さい箇所である。よって、回転子鉄心122に延長部172が設けられた場合であっても、漏れ磁束の発生を抑制することができる。
【0064】
上述した通り、実施の形態2の延長部272は、比較例の延長部172と同様に、磁極中心線Мに沿って伸びている。そのため、回転子2においても、漏れ磁束の発生を抑制することができる。よって、実施の形態2では、漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0065】
実施の形態2では、z軸方向に見たときの延長部272の形状は、矩形状である。具体的には、z軸方向に見たときの延長部272の形状は、長方形状である。なお、後述する
図12に示されるように、z軸方向に見たときの延長部272の形状は、三角形状であってもよい。また、後述する
図10に示されるように、z軸方向に見たときの延長部272の形状は矩形状に限らず、半円環状であってもよい。
【0066】
ここで、第2の鉄心部232が存在する部分(以下、「第2の金属部282」と呼ぶ)の面積である第3の面積をS21とする。第2の金属部282は、第2の鉄心部232において、リベット挿入孔22b、磁石挿入孔22d、フラックスバリア、カシメ部22g及び凹部261を除いた部分の面積である。
【0067】
図9は、面積比S1/S21と誘起電圧低下率との関係を示すグラフである。
図9に示されるように、面積比S1/S21が1~1.322の範囲内では、誘起電圧低下率は0%又は0%よりやや大きい値である。しかし、面積比S1/S21が1.322より大きいとき、誘起電圧低下率は大きい。
【0068】
よって、面積比S1/S21が1~1.322の範囲内では、すなわち、面積比S1/S21が以下の式(2)を満たすときに、漏れ磁束の発生を一層抑制することができる。
1<S1/S21<1.322 (2)
よって、z軸方向に見たときの延長部272の形状が長方形状である場合、面積比S1/S21が式(2)を満たすことによって、回転子2における漏れ磁束の発生を一層抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0069】
〈実施の形態2の効果〉
以上に説明した実施の形態2によれば、凹部261は、半円環部271と、半円環部271の径方向外向きの面271aから径方向の外側に伸びる延長部272とを有している。これにより、z軸方向に見たときの凹部261の開口が、実施の形態1の凹部61の開口61sより大きくなる。よって、実施の形態2では、第2の鉄心部232の重量が、第1の鉄心部31の重量より一層軽くなる。そのため、バランスウェイト23に加えて、回転子鉄心222における重量アンバランスによって、圧縮機構部10の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺し易くなる。よって、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0070】
また、実施の形態2によれば、延長部272が半円環部271の径方向外向きの面271aから永久磁石24の磁極中心に向かって伸びている。これにより、回転子2における漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0071】
また、実施の形態2によれば、z軸方向に見たときの延長部272の形状が長方形状であり、第2の金属部282の第3の面積S21に対する第1の金属部81の第1の面積S1の面積比S1/S21が、上述した式(2)を満たしている。これにより、回転子2における漏れ磁束の発生を一層抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0072】
《実施の形態2の変形例1》
図10は、実施の形態2の変形例1に係る回転子2Aの構成を示す横断面図である。
図10において、
図10に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、
図7に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態2の変形例1に係る回転子2Aは、延長部272Aの形状の点で、実施の形態2に係る回転子2と相違する。これ以外の点については、実施の形態2の変形例1に係る回転子2Aは、実施の形態2に係る回転子2と同じである。
【0073】
図10に示されるように、回転子2Aは、シャフト21と、シャフト挿入孔22cを有する回転子鉄心222Aと、回転子鉄心222Aに備えられたバランスウェイト23(
図3参照)とを有している。
【0074】
回転子鉄心222Aの構成を説明するにあたって、当該回転子鉄心222Aを、軸線Cを含む基準平面Vによって、シャフト21の第1の部分21aに接する第1の鉄心部31と、シャフト21の第2の部分21bに接する第2の鉄心部232Aとに区分する。
【0075】
第2の鉄心部232Aは、z軸方向の端面に設けられた凹部261Aを有している。凹部261Aは、シャフト21の第2の部分21bを囲うように形成されている。
【0076】
また、凹部261Aは、半円環部271と、半円環部271の径方向外向きの面271aから径方向の外側に伸びる複数の延長部272Aを有している。これにより、z軸方向に見たときの凹部261Aの開口が、実施の形態1の凹部61の開口61sより大きくなる。よって、実施の形態2の変形例1では、第2の鉄心部232Aの重量が、第1の鉄心部31の重量より一層軽くなる。そのため、バランスウェイト23に加えて、回転子鉄心222Aにおける重量アンバランスによって、圧縮機構部10(
図1参照)の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺し易くなる。よって、バランスウェイト23を小型化し易くなる。
【0077】
複数の延長部272Aの各延長部272Aは、半円環部271の径方向外向きの面271aから永久磁石24の磁極中心に向かって径方向に伸びている。これにより、回転子2Aにおける漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。なお、凹部261Aは、1つの延長部272Aを有していても実現することができる。
【0078】
実施の形態2の変形例1では、z軸方向に見たときの延長部272Aの形状は、半円環状である。ここで、第2の鉄心部232Aが存在する部分(以下、「第2の金属部282A」と呼ぶ)の面積である第4の面積をS22とする。第2の金属部282Aは、第2の鉄心部232Aにおいて、リベット挿入孔22b、磁石挿入孔22d、フラックスバリア、カシメ部22g及び凹部261Aを除いた部分の面積である。
【0079】
図11は、面積比S1/S22と誘起電圧低下率との関係を示すグラフである。
図11に示されるように、面積比S1/S22が1~1.353の範囲内では、誘起電圧低下率は0%又は0%よりやや大きい値である。しかし、面積比S1/S22が1.353より大きいとき、誘起電圧低下率は大きい。
【0080】
よって、面積比S1/S22が1~1.353の範囲内では、すなわち、面積比S1/S22が以下の式(3)を満たすときに、漏れ磁束の発生を一層抑制することができる。
1<S1/S22<1.353 (3)
よって、z軸方向に見たときの延長部272Aの形状が半円環状である場合、面積比S1/S22が式(3)を満たすことによって、回転子2Aにおける漏れ磁束の発生を一層抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0081】
〈実施の形態2の変形例1の効果〉
以上に説明した実施の形態2の変形例1によれば、凹部261Aは、半円環部271と、半円環部271の径方向外向きの面271aから径方向の外側に伸びる延長部272Aとを有している。これにより、z軸方向に見たときの凹部261Aの開口が、実施の形態1の凹部61の開口61sより大きくなる。よって、実施の形態2の変形例1では、第2の鉄心部232Aの重量が、第1の鉄心部31の重量より一層軽くなる。そのため、バランスウェイト23に加えて、回転子鉄心222Aにおける重量アンバランスによって、圧縮機構部10(
図1参照)の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺し易くなる。よって、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0082】
また、実施の形態2の変形例1によれば、延長部272Aが半円環部271の径方向外向きの面271aから永久磁石24の磁極中心に向かって伸びている。これにより、回転子2Aにおける漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0083】
また、実施の形態2の変形例1によれば、z軸方向に見たときの延長部272Aの形状が半円環状であり、第2の金属部282Aの第3の面積S22に対する第1の金属部81の第1の面積S1の面積比S1/S21が、上述した式(3)を満たしている。これにより、回転子2Aにおける漏れ磁束の発生を一層抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0084】
《実施の形態2の変形例2》
図12は、実施の形態2の変形例2に係る回転子2Bの構成を示す横断面図である。
図12において、
図7に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、
図7に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態2の変形例2に係る回転子2Bは、延長部272Bの形状の点で、実施の形態2に係る回転子2と相違する。これ以外の点については、実施の形態2の変形例2に係る回転子2Bは、実施の形態2に係る回転子2と同じである。
【0085】
回転子2Bは、シャフト21と、シャフト挿入孔22cを有する回転子鉄心222Bと、回転子鉄心222Bに備えられたバランスウェイト23(
図3参照)とを有している。
【0086】
回転子鉄心222Bの構成を説明するにあたって、当該回転子鉄心222Bを、軸線Cを含む基準平面Vによって、シャフト21の第1の部分21aに接する第1の鉄心部31と、シャフト21の第2の部分21bに接する第2の鉄心部232Bとに区分する。
【0087】
第2の鉄心部232Bは、z軸方向の端面に設けられた凹部261Bを有している。凹部261Bは、シャフト21の第2の部分21bを囲うように形成されている。
【0088】
また、凹部261Bは、半円環部271と、半円環部271の径方向外向きの面271aから径方向の外側に伸びる複数の延長部272Bを有している。これにより、z軸方向に見たときの凹部261Bの開口が、実施の形態1の凹部61の開口61sより大きくなる。よって、実施の形態2の変形例2では、第2の鉄心部232Bの重量が、第1の鉄心部31の重量より一層軽くなる。そのため、バランスウェイト23に加えて、回転子鉄心222Bにおける重量アンバランスによって、圧縮機構部10(
図1参照)の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺し易くなる。よって、バランスウェイト23を小型化し易くなる。
【0089】
複数の延長部272Bの各延長部272Bは、半円環部271の径方向外向きの面271aから永久磁石24の磁極中心に向かって径方向に伸びている。これにより、回転子2Bにおける漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。なお、凹部261Bは、1つの延長部272Bを有していても実現することができる。
【0090】
実施の形態2の変形例2では、z軸方向に見たときの延長部272Bの形状は、三角形状である。ここで、第2の鉄心部232Bが存在する部分(以下、「第2の金属部282B」と呼ぶ)の面積である第5の面積をS23とする。第2の金属部282Bは、第2の鉄心部232Bにおいて、リベット挿入孔22b、磁石挿入孔22d、フラックスバリア、カシメ部22g及び凹部261Bを除いた部分の面積である。
【0091】
図13は、面積比S1/S23と誘起電圧低下率との関係を示すグラフである。
図13に示されるように、面積比S1/S23が1~1.277の範囲内では、誘起電圧低下率は0%又は0%よりやや大きい値である。しかし、面積比S1/S23が1.277より大きいとき、誘起電圧低下率は大きい。
【0092】
よって、面積比S1/S23が1~1.277の範囲内では、すなわち、面積比S1/S23が以下の式(4)を満たすときに、漏れ磁束の発生を一層抑制することができる。
1<S1/S23<1.277 (4)
よって、z軸方向に見たときの延長部272Bの形状が三角形状である場合、面積比S1/S23が以下の式(4)を満たすときに、漏れ磁束の発生を一層抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0093】
〈実施の形態2の変形例2の効果〉
以上に説明した実施の形態2の変形例2によれば、凹部261Bは、半円環部271と、半円環部271の径方向外向きの面271aから径方向の外側に伸びる延長部272Bとを有している。これにより、z軸方向に見たときの凹部261Bの開口が、実施の形態1の凹部61の開口61sより大きくなる。よって、実施の形態2の変形例2では、第2の鉄心部232Bの重量が、第1の鉄心部31の重量より一層軽くなる。そのため、バランスウェイト23に加えて、回転子鉄心222Bにおける重量アンバランスによって、圧縮機構部10(
図1参照)の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺し易くなる。よって、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0094】
また、実施の形態2の変形例2によれば、延長部272Bは、半円環部271の径方向外向きの面271aから永久磁石24の磁極中心に向かって伸びている。これにより、回転子2Bにおける漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0095】
また、実施の形態2の変形例2によれば、z軸方向に見たときの延長部272Bの形状が三角形状であり、第2の金属部282Bの第5の面積S23に対する第1の金属部81の第1の面積S1の面積比S1/S23が、上述した式(4)を満たしている。これにより、回転子2Bにおける漏れ磁束の発生を一層抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0096】
《実施の形態3》
図14は、実施の形態3に係る回転子3の構成を示す横断面図である。
図15は、実施の形態3に係る回転子3の構成を示す縦断面図である。
図14及び15において、
図2及び3に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、
図2及び3に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態3に係る回転子3は、凹部361の構成の点で、実施の形態1に係る回転子1と相違する。これ以外の点については、実施の形態3に係る回転子3は、実施の形態1に係る回転子1と同じである。そのため、以下の説明では、
図3を参照する。
【0097】
図14及び15に示されるように、回転子3は、シャフト21と、シャフト挿入孔22cを有する回転子鉄心322と、回転子鉄心322に備えられたバランスウェイト23とを有している。
【0098】
回転子鉄心322は、z軸方向の端面322c、322dに設けられたカウンターボア部341を有している。実施の形態3では、z軸方向に見たときのカウンターボア部341の形状は、円環状である。なお、カウンターボア部341は、z軸方向の端面322c、322dのうちいずれか一方の端面のみに設けられていてもよい。また、回転子鉄心322は、カウンターボア部341を有していなくても実現することができる。
【0099】
図14に示されるように、回転子鉄心322の構成を説明するにあたって、当該回転子鉄心322を、軸線Cを含む基準平面Vによって、シャフト21の第1の部分21aに接する第1の鉄心部331と、シャフト21の第2の部分21bに接する第2の鉄心部332とに区分する。
【0100】
第2の鉄心部332は、+z軸方向を向く端面332c(
図15参照)に設けられた凹部361を有している。凹部361は、シャフト挿入孔22c及びカウンターボア部341より径方向の外側に形成されている。具体的には、凹部361は、第2の鉄心部332において、カウンターボア部341と磁石挿入孔22dとの間に形成されている。
【0101】
凹部361は、第2の部分21bを囲うように形成されている。言い換えれば、凹部361は、第2の鉄心部332において、軸線Cを中心とする180度の範囲に形成されている。第2の鉄心部332に凹部361が形成されていることによって、第2の鉄心部332の重量は、第1の鉄心部331の重量より軽くなる。よって、第1の鉄心部331と第2の鉄心部332との間で、重量アンバランスが生じる。そのため、バランスウェイト23に加えて、回転子鉄心322における重量アンバランスによって、圧縮機構部10(
図1参照)の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺することができる。これにより、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0102】
図15に示されるように、凹部361の深さは、カウンターボア部341の深さより深い。これにより、第2の鉄心部332の重量が、第1の鉄心部331の重量より一層軽くなる。そのため、回転子鉄心322Aにおける重量バランスによって、上記遠心力のアンバランスを相殺し易くなる。よって、バランスウェイト23を小型化し易くなる。なお、実施の形態3では、凹部361は、第2の鉄心部332をz軸方向に貫通していない。言い換えれば、凹部361の底面361dは、第2の鉄心部332のz軸方向の端面である。
【0103】
〈実施の形態3の効果〉
以上に説明した実施の形態3によれば、回転子鉄心322における第2の鉄心部332は、z軸方向の端面332cに設けられた凹部361を有し、凹部61は、z軸方向に見たときに、シャフト挿入孔22cより径方向の外側でシャフト21の第2の部分21bを囲うように形成されている。これにより、第1の鉄心部331と第2の鉄心部332との間で、重量アンバランスが生じる。そのため、バランスウェイト23に加えて、当該重量アンバランスによっても、圧縮機構部10の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺することができる。よって、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0104】
また、実施の形態3によれば、凹部361の深さは、カウンターボア部341の深さより深い。これにより、第2の鉄心部332の重量が、第1の鉄心部331の重量より一層軽くなる。そのため、回転子鉄心322Aにおける重量バランスによって、上記遠心力のアンバランスを相殺し易くなる。よって、バランスウェイト23を小型化し易くなる。
【0105】
《実施の形態3の変形例》
図16は、実施の形態3の変形例に係る回転子3Aの構成を示す縦断面図である。
図15において、
図14及び15に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、
図14及び15に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態3の変形例1に係る回転子3Aは、凹部361Aの形状の点で、実施の形態3に係る回転子3と相違する。これ以外の点については、実施の形態3の変形例に係る回転子3Aは、実施の形態3に係る回転子3と同じである。そのため、以下の説明では、
図14を参照する。
【0106】
図14及び16に示されるように、回転子3Aは、シャフト21と、シャフト挿入孔22cを有する回転子鉄心322Aと、回転子鉄心322に備えられたバランスウェイト23とを有している。
【0107】
回転子鉄心322Aの構成を説明するにあたって、当該回転子鉄心322Aを、軸線Cを含む基準平面Vによって、シャフト21の第1の部分21aに接する第1の鉄心部331と、シャフト21の第2の部分21bに接する第2の鉄心部332Aとに区分する。
【0108】
第2の鉄心部332Aは、z軸方向の端面に設けられた凹部361Aを有している。凹部361Aは、シャフト挿入孔22c及びカウンターボア部341より径方向の外側に設けられている。凹部361Aの深さは、カウンターボア部341の深さより深い。
【0109】
図15に示されるように、凹部361Aは、第2の鉄心部332Aをz軸方向に貫通している。これにより、第2の鉄心部332Aの重量が、第1の鉄心部331の重量より一層軽くなる。そのため、回転子鉄心322Aにおける重量バランスによって、圧縮機構部10(
図1参照)の回転によって発生する遠心力のアンバランスを相殺し易くなる。よって、バランスウェイト23を小型化し易くなる。
【0110】
〈実施の形態3の変形例の効果〉
以上に説明した実施の形態3の変形例によれば、凹部361Aは、第2の鉄心部332Aをz軸方向に貫通している。これにより、第2の鉄心部332Aの重量が、第1の鉄心部331の重量より一層軽くなる。そのため、回転子鉄心322Aにおける重量バランスによって、圧縮機構部10(
図1参照)の回転によって発生する遠心力のアンバランスを相殺し易くなる。よって、バランスウェイト23を小型化し易くなる。
【0111】
《実施の形態4》
図17は、実施の形態4に係る回転子4の構成を示す横断面図である。
図17において、
図14及び15に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、
図14及び15に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態4に係る回転子4は、凹部461の構成の点で、実施の形態3に係る回転子3と相違する。これ以外の点については、実施の形態4に係る回転子4は、実施の形態3に係る回転子3と同じである。そのため、以下の説明では、
図15を参照する。
【0112】
図17に示されるように、回転子4は、シャフト21と、シャフト挿入孔22cを有する回転子鉄心422と、回転子鉄心422に備えられたバランスウェイト23(
図15参照)とを有している。
【0113】
回転子鉄心422の構成を説明するためにあたって、回転子鉄心422を、軸線Cを含む基準平面Vによって、シャフト21の第1の部分21aに接する第1の鉄心部331と、シャフト21の第2の部分21bに接する第2の鉄心部432とに区分する。
【0114】
第2の鉄心部432は、z軸方向の端面に設けられた凹部461を有している。凹部461は、シャフト21の第2の部分21bを囲うように形成されている。言い換えれば、凹部461は、第2の鉄心部432において、180度の範囲に形成されている。
【0115】
また、凹部461は、半円環部471と、複数の延長部472とを有している。半円環部471は、凹部461における軸線Cを中心とする半円環状の部分である。複数の延長部472の各延長部472は、半円環部471の径方向外向きの面471aから径方向の外側に伸びている。これにより、z軸方向に見たときの凹部461の開口が、実施の形態3の凹部361の開口より大きくなる。よって、実施の形態4では、第2の鉄心部432の重量が、第1の鉄心部331の重量より一層軽くなる。そのため、バランスウェイト23に加えて、回転子鉄心422における重量アンバランスによって、圧縮機構部10(
図1参照)の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺し易くなる。これにより、バランスウェイト23を小型化し易くなる。なお、凹部461は、1つの延長部472を有していても実現することができる。
【0116】
延長部472は、半円環部471の径方向外向きの面471aから永久磁石24の磁極中心に向かって径方向に伸びている。これにより、回転子4における漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0117】
実施の形態4では、z軸方向に見たときの延長部472の形状は、矩形状である。具体的には、延長部472の形状は、長方形状である。なお、後述する
図19に示されるように、z軸方向に見たときの延長部472の形状は、三角形状であってもよい。また、後述する
図18に示されるように、z軸方向に見たときの延長部472の形状は矩形状に限らず、半円環状であってもよい。
【0118】
〈実施の形態4の効果〉
以上に説明した実施の形態4によれば、凹部461は、半円環部471と、半円環部471の径方向外向きの面471aから径方向の外側に伸びる延長部472とを有している。これにより、z軸方向に見たときの凹部461の開口が、実施の形態3の凹部361の開口より大きくなる。よって、実施の形態4では、第2の鉄心部432の重量が、第1の鉄心部331の重量より一層軽くなる。そのため、バランスウェイト23に加えて、回転子鉄心422における重量アンバランスによって、圧縮機構部10(
図1参照)の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺し易くなる。よって、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0119】
また、実施の形態4によれば、延長部272が半円環部271の径方向外向きの面271aから永久磁石24の磁極中心に向かって伸びている。これにより、回転子4における漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0120】
《実施の形態4の変形例1》
図18は、実施の形態4の変形例1に係る回転子4Aの構成を示す横断面図である。
図18において、
図17に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、
図17に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態4の変形例1に係る回転子4Aは、延長部472Aの形状の点で、実施の形態4に係る回転子4と相違する。これ以外の点については、実施の形態4の変形例1に係る回転子4Aは、実施の形態4に係る回転子4と同じである。
【0121】
図18に示されるように、回転子4Aは、シャフト21と、シャフト挿入孔22cを有する回転子鉄心422Aと、回転子鉄心422Aに備えられたバランスウェイト23(
図15参照)とを有している。
【0122】
回転子鉄心422Aの構成を説明するにあたって、当該回転子鉄心422Aを、軸線Cを含む基準平面Vによって、シャフト21の第1の部分21aに接する第1の鉄心部331と、シャフト21の第2の部分21bに接する第2の鉄心部432Aとに区分する。
【0123】
第2の鉄心部432Aは、z軸方向の端面に設けられた凹部461Aを有している。凹部461Aは、シャフト21の第2の部分21bを囲うように形成されている。言い換えれば、凹部461Aは、第2の鉄心部432Aにおいて、180度の範囲に形成されている。
【0124】
凹部461Aは、半円環部471と、複数の延長部472Aとを有している。複数の延長部472Aの各延長部472Aは、半円環部471の径方向外向きの面471aから径方向の外側に伸びている。これにより、z軸方向に見たときの凹部461Aの開口が、実施の形態3の凹部361の開口より大きくなる。よって、実施の形態4の変形例1では、第2の鉄心部432Aの重量が、第1の鉄心部331の重量より一層軽くなる。そのため、バランスウェイト23に加えて、回転子鉄心422における重量アンバランスによって、圧縮機構部10(
図1参照)の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺し易くなる。これにより、バランスウェイト23を小型化し易くなる。なお、凹部461Aは、1つの延長部472を有していても実現することができる。
【0125】
また、延長部472Aは、半円環部471の径方向外向きの面471aから永久磁石24の磁極中心に向かって伸びている。実施の形態4の変形例1では、z軸方向に見たときの延長部472Aの形状は、半円環状である。これにより、回転子4Aにおける漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0126】
〈実施の形態4の変形例1の効果〉
以上に説明した実施の形態4の変形例1によれば、凹部461Aは、半円環部471と、半円環部471の径方向外向きの面471aから径方向の外側に伸びる延長部472Aとを有している。これにより、z軸方向に見たときの凹部461Aの開口が、実施の形態3の凹部361の開口より大きくなる。よって、実施の形態4の変形例1では、第2の鉄心部432Aの重量が、第1の鉄心部331の重量より一層軽くなる。そのため、バランスウェイト23に加えて、回転子鉄心422Aにおける重量アンバランスによって、圧縮機構部10(
図1参照)の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺し易くなる。よって、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0127】
また、実施の形態4の変形例1によれば、延長部472Aが半円環部471の径方向外向きの面471aから永久磁石24の磁極中心に向かって伸びている。これにより、回転子4Aにおける漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0128】
《実施の形態4の変形例2》
図19は、実施の形態4の変形例2に係る回転子4Bの構成を示す横断面図である。
図19において、
図17に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、
図17に示される符号と同じ符号が付される。実施の形態4の変形例2に係る回転子は、延長部272Bの形状の点で、実施の形態4に係る回転子4と相違する。これ以外の点については、実施の形態4の変形例2に係る回転子4Bは、実施の形態4に係る回転子4と同じである。
【0129】
図19に示されるように、回転子4Bは、シャフト21と、シャフト挿入孔22cを有する回転子鉄心422Bと、回転子鉄心422Bに備えられたバランスウェイト23(
図15参照)とを有している。
【0130】
回転子鉄心422Bの構成を説明するにあたって、当該回転子鉄心422Bを、軸線Cを含む基準平面Vによって、シャフト21の第1の部分21aに接する第1の鉄心部331と、シャフト21の第2の部分21bに接する第2の鉄心部432Bとに区分する。
【0131】
第2の鉄心部432Bは、z軸方向の端面に設けられた凹部461Bを有している。凹部461Bは、シャフト21の第2の部分21bを囲うように形成されている。複数の延長部472Bの各延長部472Bは、半円環部471の径方向外向きの面471aから径方向の外側に伸びている。これにより、z軸方向に見たときの凹部461Bの開口が、実施の形態3の凹部361の開口より大きくなる。よって、実施の形態4の変形例2では、第2の鉄心部432Bの重量が、第1の鉄心部331の重量より一層軽くなる。そのため、バランスウェイト23に加えて、回転子鉄心422Bにおける重量アンバランスによって、圧縮機構部10(
図1参照)の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺し易くなる。これにより、バランスウェイト23を小型化し易くなる。なお、凹部461Bは、1つの延長部472を有していても実現することができる。
【0132】
また、延長部472Bは、半円環部471の径方向外向きの面471aから永久磁石24の磁極中心に向かって伸びている。実施の形態4の変形例2では、z軸方向に見たときの延長部472Bの形状は、三角形状である。これにより、回転子4Bにおける漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0133】
〈実施の形態4の変形例2の効果〉
以上に説明した実施の形態4の変形例2によれば、凹部461Bは、半円環部471と、半円環部471の径方向外向きの面471aから径方向の外側に伸びる延長部472Bとを有している。これにより、z軸方向に見たときの凹部461Bの開口が、実施の形態3の凹部361の開口より大きくなる。よって、実施の形態4の変形例1では、第2の鉄心部432Bの重量が、第1の鉄心部331の重量より一層軽くなる。そのため、バランスウェイト23に加えて、回転子鉄心422Bにおける重量アンバランスによって、圧縮機構部10(
図1参照)の回転により発生する遠心力のアンバランスを相殺し易くなる。よって、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0134】
また、実施の形態4の変形例2によれば、延長部472Bが半円環部471の径方向外向きの面471aから永久磁石24の磁極中心に向かって伸びている。これにより、回転子4Bにおける漏れ磁束の発生を抑制しつつ、バランスウェイト23を小型化することができる。
【0135】
《実施の形態5》
図20は、実施の形態5に係る空気調和装置500の構成を示す図である。この実施の形態5では、実施の形態1で説明した圧縮機を適用した室外機501を含む冷凍サイクル装置を有する空気調和装置500について説明する。
【0136】
空気調和装置500は、室外機501と室内機502とを備えている。室外機501と室内機502とは、冷媒配管であるガス配管503及び液配管504によって互いに連結されている。室外機501、室内機502、ガス配管503及び液配管504は、冷媒回路を構成し、冷媒を循環させる。ガス配管503には、気体の冷媒であるガス冷媒が流れる。液配管504は、液体の冷媒である液冷媒又は気液二相冷媒が流れる。
【0137】
室外機501は、スクロール圧縮機100と、流路切替弁としての四方弁511と、室外側熱交換器512と、室外側送風機513と、減圧装置としての膨張弁514とを有している。
【0138】
スクロール圧縮機100は、例えば、運転周波数を任意に変化させるインバータ装置を備えることにより、スクロール圧縮機100の容量(具体的には、単位時間当たりの冷媒の送り出し量)を細かく変化させることができる。
【0139】
四方弁511は、図示しない制御装置の指示に基づいて、暖房運転時及び冷房運転時において、冷媒の流れを切り換える。
【0140】
室外側熱交換器512は、冷媒と、室外側送風機513から供給された室外の空気との熱交換を行う。例えば、冷房運転時には、室外側熱交換器512は凝縮器として機能する。具体的には、室外側熱交換器512は、スクロール圧縮機100で圧縮されて四方弁511を経て流入した冷媒と室外の空気との熱交換を行い、冷媒を凝縮して液化させる。また、暖房運転時には、室外側熱交換器512は蒸発器として機能する。具体的には、室外側熱交換器512は、液配管504から膨張弁514を経て流入した低温低圧の冷媒と室外の空気との熱交換を行い、当該冷媒を蒸発させる。
【0141】
膨張弁514は、凝縮器によって凝縮された冷媒を減圧する。具体的には、膨張弁514は、凝縮器から送り出された液冷媒を膨張させて、低温低圧の液冷媒として送り出す。例えば、冷房運転時には、膨張弁514は、室外側熱交換器512によって凝縮された冷媒を減圧する。
【0142】
室内機502は、室内側熱交換器521と、室内側送風機522とを有している。
【0143】
室内側熱交換器521は、冷媒と、室内側送風機522から供給された室内の空気との熱交換を行う。冷房運転時には、室内側熱交換器521は蒸発器として機能する。具体的には、室内側熱交換器521は、低温低圧の冷媒と室内の空気との熱交換を行うことによって蒸発した冷媒をガス配管503に送り出す。また、暖房運転時には、室内側熱交換器521は凝縮器として機能する。具体的には、室内側熱交換器521は、ガス配管503から流入した冷媒と空気との熱交換を行うことによって、当該冷媒を凝縮させて液化(又は気液二相化)させ、液配管504に送り出す。
【0144】
〈実施の形態5の効果〉
以上に説明した実施の形態5によれば、空気調和装置500は、実施の形態1で説明したスクロール圧縮機100と、スクロール圧縮機100から送り出された冷媒を凝縮する凝縮器と、凝縮器により凝縮された冷媒を減圧する膨張弁514と、減圧装置で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器とを有している。上述した通り、スクロール圧縮機100は、電動機20を有していることにより、効率の低下を抑制しつつ、出力を向上させることができる。よって、当該スクロール圧縮機100を有する空気調和装置500においても、効率の低下を抑制しつつ、出力を向上させることができる。
【符号の説明】
【0145】
1、1A、2、2A、2B、3、3A、4、4A、4B 回転子、 5 固定子、 10 圧縮機構部、 20 電動機、 21 シャフト、 21a 第1の部分、 21b 第2の部分、 22、22A、222、222A、222B、322、322A、422、422A、422B 回転子鉄心、 22c シャフト挿入孔、 23 バランスウェイト、 24 永久磁石、 31 第1の鉄心部、 32、32A、232、232A、232B、332、332A、432、432A、432B 第2の鉄心部、 41、341 カウンターボア部、 41s 開口、 61、61A、261、261A、261B、361、361A、461、461A、461B 凹部、 61s 開口、 271、471 半円環部、 271a、471a 径方向外向きの面、 272、272A、272B、472、472A、472B 延長部、 100 スクロール圧縮機、 500 空気調和装置、 512 室外側熱交換器、 521 室内側熱交換器、 514 膨張弁、 C 軸線、 V 基準平面。