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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20231218BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20231218BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/35
A61Q11/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019180604
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021054765
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石川 真実
(72)【発明者】
【氏名】大島 由行
(72)【発明者】
【氏名】野村 収作
(72)【発明者】
【氏名】大川 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】若林 映里
(72)【発明者】
【氏名】門内 佑介
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-104377(JP,A)
【文献】特開2003-212741(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0102157(US,A1)
【文献】特開2012-005503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A成分:ミント系の香料と、
B成分:リモネン、及び、リナロールから選ばれる少なくとも一種と、
C成分:酢酸エステル化合物とを含有してなる口腔用組成物であって、
前記A成分を0.01~0.6質量%、
前記B成分のうち、前記リモネンを0.01質量%以上、及び/又は、前記リナロールを0.001質量%以上、
前記C成分を0.001質量%以上含有し、
グリチルリチン酸ジカリウム、及び研磨性シリカを含有せず、液状に構成されていることを特徴とする口腔用組成物。
【請求項2】
前記ミント系の香料が、メントール、メントン、及び、イソメントンから選ばれる少なくとも二種以上である請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
前記酢酸エステル化合物が、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、酢酸ヘキセニル、酢酸ベンジル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニルから選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
前記B成分として前記リモネンを含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口の中のすっきり感を与えつつ、リラックス効果を有する口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、口腔用組成物について記載している。ミント系の香料であるメントールを0.1~1.0質量%、リナロールを0.001~0.4質量%含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-104377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の口腔用組成物では、ミント系の香料であるメントールを相対的に多く含有しているため、口の中のすっきり感が得られるものの、メントールが有する覚醒効果によって就寝前など鎮静が望まれる状態での使用には適さない場合があるという課題を有している。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、口の中のすっきり感を与えつつ、リラックス効果を有する口腔用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための口腔用組成物は、A成分:ミント系の香料と、B成分:リモネン、及び、リナロールから選ばれる少なくとも一種と、C成分:酢酸エステル化合物とを含有してなる口腔用組成物であって、前記A成分を0.01~0.6質量%、前記B成分のうち、前記リモネンを0.01質量%以上、及び/又は、前記リナロールを0.001質量%以上、前記C成分を0.001質量%以上含有する。
【0007】
上記口腔用組成物について、前記ミント系の香料が、メントール、メントン、及び、イソメントンから選ばれる少なくとも二種以上であることが好ましい。
上記口腔用組成物について、前記酢酸エステル化合物が、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、酢酸ヘキセニル、酢酸ベンジル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニルから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0008】
上記口腔用組成物について、前記B成分として前記リモネンを含有することが好ましい。
上記口腔用組成物について、液状に構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の口腔用組成物によれば、口の中のすっきり感を与えつつ、リラックス効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の口腔用組成物を具体化した一実施形態について説明する。
本実施形態の口腔用組成物は、A成分:ミント系の香料と、B成分:リモネン、及び、リナロールから選ばれる少なくとも一種と、C成分:酢酸エステル化合物とを含有している。
【0011】
A成分であるミント系の香料としては、特に限定されず、ミント系の天然香料や合成香料を用いることができる。ミント系の香料の成分の具体例としては、例えば、メントール、メントン、イソメントン、シオネール、プレゴン、メンチルアセテート等を挙げることができる。その中でも、メントール、メントン、イソメントンから選ばれる少なくとも二種以上を含有することが好ましい。
【0012】
A成分は、口腔用組成物中に0.01~0.6質量%含有されている。A成分は、口腔用組成物中に0.01~0.1質量%含有されていることが好ましく、0.01~0.06質量%含有されていることがより好ましい。A成分の含有量をかかる範囲に規定することにより、口の中のすっきり感が得られる。なお、口腔用組成物中の各成分の含有量は、水等の溶媒を含めた口腔用組成物中の含有量を示す。また、本明細書において、数値範囲を「~」を用いて表す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0013】
B成分としてリモネンを含有する場合、口腔用組成物中に0.01質量%以上含有されている。リモネンは、口腔組成物中に0.01~0.1質量%含有されていることが好ましく、0.01~0.05質量%含有されていることがより好ましい。
【0014】
B成分としてリナロールを含有する場合、口腔用組成物中に0.001質量%以上含有されている。リナロールは、口腔組成物中に0.001~0.05質量%含有されていることが好ましく、0.001~0.005質量%含有されていることがより好ましい。
【0015】
B成分の含有量をかかる範囲に規定することにより、口の中のすっきり感及び香味の嗜好性を低下させることなく、リラックス効果が得られる。
C成分である酢酸エステル化合物の具体例としては、特に限定されず、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、酢酸ヘキセニル、酢酸ベンジル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル等を挙げることができる。その中でも、酢酸ヘキセニル、酢酸イソアミル、酢酸リナリル、酢酸ベンジルから選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0016】
C成分は、口腔用組成物中に0.001質量%以上含有されている。C成分は、口腔用組成物中に0.001~0.01質量%含有されていることが好ましく、0.001~0.005質量%含有されていることがより好ましい。
【0017】
C成分の含有量をかかる範囲に規定することにより、口の中のすっきり感及び香味の嗜好性を低下させることなく、リラックス効果が得られる。
口腔用組成物の適用形態は、特に限定されず、例えば医薬品、医薬部外品、化粧品として使用することができる。口腔用組成物の用途としては、公知のものを適宜採用することができ、例えば練歯磨剤、洗口剤、含漱剤、液体歯磨剤、バイオフィルム分散剤、口臭予防剤、歯茎マッサージ剤、口腔用湿潤付与剤、舌苔除去剤、口腔内塗布剤、口腔殺菌剤、咽喉殺菌剤、口腔咽喉剤、歯周病治療剤、義歯装着剤、義歯コーティング剤、義歯安定化剤、義歯保存剤、義歯洗浄剤、インプラントケア剤等が挙げられる。
【0018】
口腔用組成物の剤形は、特に限定されず、例えば水、アルコール等の溶媒を含有することにより、軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、スプレー剤、ジェル剤、液剤、懸濁・乳化剤、ガム剤等に適用することができる。
【0019】
溶媒として用いられる水の種類は特に限定されず、例えば蒸留水、純水、超純水、精製水、水道水等を用いることができる。溶媒として用いられるアルコールの種類は特に限定されず、例えばエタノールを用いることができる。水とアルコールを混合して用いることもできる。
【0020】
口腔用組成物が液状に構成されている場合において、水等の溶媒の含有量は、60~99.8質量%であることが好ましく、70~90質量%であることがより好ましい。
口腔用組成物は、適用目的、形態、用途等に応じて、前述した成分以外の成分、例えば抗菌剤、抗炎症剤、香料、湿潤剤、界面活性剤、研磨剤、アルコール類、増粘剤、甘味成分、薬用成分、着色剤、安定化剤、pH調整剤等を配合してもよい。これら各成分は、口腔用組成物に配合される公知のものを使用することができる。これらの成分は、それぞれ1種のみを適用してもよく、2種以上を組み合わせて適用してもよい。
【0021】
抗菌剤の具体例としては、例えば塩化セチルピリジニウム、パラベン、安息香酸ナトリウム、トリクロサン、塩酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ヒノキチオール等が挙げられる。
【0022】
抗炎症剤の具体例としては、例えばグリチルリチン酸塩、トラネキサム酸、ε-アミノカプロン酸、オウバクエキス等が挙げられる。
香料の具体例としては、例えばアネトール、オイゲノール、カルボン、ウインターグリーン、サリチル酸メチル、チモール、丁字油、セージ油、オシメン油、シトロネロール等が挙げられる。
【0023】
湿潤剤の具体例としては、例えばソルビット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる。
【0024】
界面活性剤の具体例としては、例えば非イオン性界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、モノラウリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ラウリルグルコシド、デシルグルコシド等のアルキルグルコシド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。
【0025】
アニオン界面活性剤の具体例としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩、ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。
【0026】
両性界面活性剤の具体例としては、例えばNーラウリルジアミノエチルグリシン、Nーミリスチルジエチルグリシン等のアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N-アルキル-N’-カルボキシメチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩、及び2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のベタイン系両性界面活性剤等が挙げられる。
【0027】
研磨剤の具体例としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、メタリン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ベンガラ、硫酸カルシウム、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0028】
アルコール類の具体例としては、例えばエチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール等が挙げられる。
増粘剤の具体例としては、例えばポリアクリル酸ナトリウム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル等が挙げられる。
【0029】
甘味成分の具体例としては、例えばサッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビオサイド、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、シクロヘプタアミロース等が挙げられる。
【0030】
薬用成分の具体例としては、例えばモノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化第1スズ、フッ化ストロンチウム等のフッ化物、ピロリン酸ナトリウムやポリリン酸ナトリウム等の縮合リン酸塩、リン酸一水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム等のリン酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、塩酸ピリドキシン、トコフェロール酢酸エステル等のビタミン剤、デキストラナーゼ、ムタナーゼ等のグルカナーゼ酵素、プロテアーゼ、リゾチーム等の分解酵素、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム等の無機塩類、クロロフィル、グリセロホスフェート等のキレート性化合物、脂を溶解するポリエチレングリコール等、塩化ナトリウム、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム等が挙げられる。
【0031】
着色剤の具体例としては、例えば緑色1号、青色1号、黄色4号等の法定色素、酸化チタン等が挙げられる。
安定化剤の具体例としては、例えばエデト酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、乳酸カルシウム、ラノリン、トリアセチン、ヒマシ油、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
【0032】
pH調整剤の具体例としては、例えばクエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、酢酸、リン酸、ピロリン酸、グリセロリン酸、並びにこれらのカリウム塩、ナトリウム塩及びアンモニウム塩等の各種塩、水酸化ナトリウム等が挙げられる。口腔用組成物は、pH調整剤を配合することにより、pHが4~9、特に5~7の範囲になるように調整されていることが好ましい。
【0033】
本実施形態の口腔用組成物の効果について説明する。
(1)本実施形態の口腔用組成物は、A成分:ミント系の香料と、B成分:リモネン、及び、リナロールから選ばれる少なくとも一種と、C成分:酢酸エステル化合物とを含有している。A成分を0.01~0.6質量%、B成分のうち、リモネンを0.01質量%以上、及び/又は、リナロールを0.001質量%以上、C成分を0.001質量%以上含有する。A成分を上記数値範囲含有することにより、口の中のすっきり感を与えることができる。また、B成分とC成分を上記数値範囲含有することにより、口の中のすっきり感及び香味の嗜好性を低下させることなく、リラックス効果を得ることができる。したがって、就寝前など鎮静が望まれる状態での使用にも適した口腔用組成物を得ることができる。
【0034】
(2)ミント系の香料が、メントール、メントン、及び、イソメントンから選ばれる少なくとも二種以上である。したがって、A成分による口の中のすっきり感がより好適なものとなる。
【0035】
(3)酢酸エステル化合物が、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、酢酸ヘキセニル、酢酸ベンジル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニルから選ばれる少なくとも一種である。したがって、C成分によるリラックス効果がより好適なものとなる。
【0036】
(4)B成分としてリモネンを含有する。したがって、B成分によるリラックス効果がより好適なものとなる。
(5)口腔用組成物は、液状に構成されている。したがって、口腔用組成物が固体状に構成された態様に比べて、口腔内に適用してからより短時間で効果を得ることができる。
【0037】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態において上述したA成分、B成分、及びC成分は、使用時に口腔用組成物中に配合されていればよく、保存時においては複数剤に分けて保存してもよい。また、口腔用組成物を粉末等の固体状の剤として保存し、使用時に水等の溶媒を加えて液状に構成してもよい。かかる構成においても、口の中のすっきり感を与えつつ、リラックス効果を得ることができる。
【実施例
【0038】
本発明の口腔用組成物について、以下の試験例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、本発明は、実施例欄記載の構成に限定されるものではない。
表1に示す実施例1、2、及び、比較例1、2の口腔用組成物を常法に従って各成分を混合、撹拌することによって製造した。口腔用組成物のその他成分における香料には、A成分、B成分、及びC成分がほとんど含まれないものを用いた。ここで、「ほとんど含まれないもの」には、全く含有していないものだけでなく、不純物レベル程度含有するものが含まれるものとする。製造された口腔用組成物は液状であった。表1において、各成分の右側に記載した数値は、口腔用組成物における含有量(質量%)を意味する。
【0039】
(評価試験)
実施例1、2、及び、比較例1、2の口腔用組成物について、口の中のすっきり感、及び、香味の嗜好性についての官能評価を行った。また、リラックス効果について、皮膚電気反応(以下、「GSR」ともいう。)を測定した。GSRは、皮膚において観測される電位的活動と発汗に伴うインピーダンス変動の総称を意味する。緊張、ストレス、不安などの心理的動揺により、交感神経が活発になると、抹消での発汗が起こる。GSRはこのような精神性発汗を反映しやすい指先や掌に電極を装着し、測定を行うことで、末梢部自律神経系の交感神経の指標として用いられる。
【0040】
(すっきり感についての官能評価)
すっきり感についての官能評価は、10人のモニターにより行った。各実施例、各比較例で調製した口腔用組成物を洗口液として10ml口に含み、20秒間洗口を行った。洗口液を吐き出した後、口の中のすっきり感について視覚的評価スケール(以下、「VAS」ともいう。)を用いて以下の評価基準で評価した。
【0041】
(評価基準)
直線の左端を「全く感じない」、直線の右端を「非常に感じる」とし、感じた強度に応じて任意の位置に印をつけることで評価した。直線の左端を0点、直線の右端を100点とし、直線の左端側からの距離により評点を算出した。10人のモニターによる官能評価の値を集計して平均値を算出した。以下のように、平均値が60点以上で良好な結果が得られているとした。結果を表1に示す。
【0042】
◎:80点以上
○:60点以上、80点未満
△:40点以上、60点未満
×:40点未満
(香味の嗜好性についての官能評価)
香味の嗜好性についての官能評価は、上記すっきり感についての官能評価と同様に行い、すっきり感の官能評価と同時に行った。香味の嗜好性についてVASを用いて以下の評価基準で評価した。
【0043】
(評価基準)
直線の左端を「嫌い」、直線の右端を「好き」とし、好みに応じて任意の位置に印をつけることで評価した。直線の左端を0点、直線の右端を100点とし、直線の左端側からの距離により評点を算出した。10人のモニターによる官能評価の値を集計して平均値を算出した。以下のように、平均値が60点以上で良好な結果が得られているとした。結果を表1に示す。
【0044】
◎:80点以上
○:60点以上、80点未満
△:40点以上、60点未満
×:40点未満
(リラックス効果)
リラックス効果は、10人のモニターのGSRを測定して行った。
【0045】
GSRの測定手順について以下に説明する。
まず、10人のモニターが、安静期として10分間安静にした後、ストレス課題としてクレペリン検査を20分間連続的に行った。その後、調製した洗口液としての口腔用組成物を10ml口に含み、20秒間洗口を行った。洗口液を吐き出した後、回復期として20分間安静にした。安静期、ストレス課題時、回復期を通じて、モニターに装着したGSRの計測センサーによってGSRを測定した。10人のモニターが各実施例、各比較例の洗口液を使用して、上記GSRの測定手順に従ってGSRの測定を繰り返し行った。
【0046】
リラックス効果の評価には、GSRの測定値を標準化したZ値を用いた。Z値は、Z=(X-μ)/σより算出した。ここで、Xは標本データ、μはXの平均、σは標準偏差を意味する。Z値は、ストレス課題時に上昇し、その後徐々に低下する。ストレス課題終了時を基準として、課題終了後10分間のZ値の変化量の絶対値を測定した。10人の平均値を算出し、以下のように、平均値が1.0以上で良好な結果が得られているとした。結果を表1に示す。
【0047】
(評価基準)
◎:1.2以上
○:1.0以上、1.2未満
△:0.8以上、1.0未満
×:0.8未満
【0048】
【表1】
表1に示されるように、比較例1では、B成分のリモネンとリナロールの両方、及び、C成分の酢酸リナリルの含有量が本発明において規定の含有量より少ないため、各実施例に対してリラックス効果が十分ではなかった。また、比較例2では、C成分の酢酸リナリルの含有量が本発明において規定の含有量より少ないため、比較例1よりは効果があったもののリラックス効果が十分ではなかった。