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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】移植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
A01C11/02
A01C11/02 322
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021082194
(22)【出願日】2021-05-14
(65)【公開番号】P2022175618
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】山田 佳菜子
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳則
(72)【発明者】
【氏名】前田 尚杜
(72)【発明者】
【氏名】黒木 慎
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-123046(JP,A)
【文献】特開2012-125153(JP,A)
【文献】特開2020-000065(JP,A)
【文献】特開2017-136008(JP,A)
【文献】特開2016-086722(JP,A)
【文献】特開2011-193768(JP,A)
【文献】特開2019-128741(JP,A)
【文献】特開2018-201342(JP,A)
【文献】特開平11-123945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行する走行車体と、圃場に苗を植え付ける苗植付部とを備えた移植機であって、
植え付け地点の生育環境情報を圃場から取得する生育環境情報取得手段と、
前記苗植付部の苗取量を調節する苗取量調節機構と、
前記苗植付部の株間を調節する株間調節機構と、
前記苗植付部の植付深さを調節する植付深さ調節機構と、
前記生育環境情報取得手段から生育環境情報を取得する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記苗植付部による苗の植え付け時、取得した生育環境情報に基づき、植え付け地点ごとに、前記苗取量調節機構を制御して苗取量を、前記株間調節機構を制御して株間を、前記植付深さ調節機構を制御して植付深さを、それぞれ調節可能に構成され、
前記生育環境情報は、土壌の肥沃度に関する情報を含み、
前記制御装置は、植え付け地点における肥沃度が高いほど、苗取量を増加させ、肥沃度が低いほど、苗取量を減少させるよう前記苗取量調節機構を制御することを特徴とする移植機。
【請求項2】
記制御装置は、植え付け地点における肥沃度が高いほど、植付深さを浅く、肥沃度が低いほど、植付深さを深くするよう前記植付深さ調節機構を制御することを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
記制御装置は、植え付け地点における肥沃度が高いほど、株間を狭く、肥沃度が低いほど、株間を広くするよう前記株間調節機構を制御することを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項4】
圃場を走行する走行車体と、圃場に苗を植え付ける苗植付部とを備えた移植機であって、
植え付け地点の生育環境情報を圃場から取得する生育環境情報取得手段と、
前記苗植付部の苗取量を調節する苗取量調節機構と、
前記苗植付部の株間を調節する株間調節機構と、
前記苗植付部の植付深さを調節する植付深さ調節機構と、
前記生育環境情報取得手段から生育環境情報を取得する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記苗植付部による苗の植え付け時、取得した生育環境情報に基づき、植え付け地点ごとに、前記苗取量調節機構を制御して苗取量を、前記株間調節機構を制御して株間を、前記植付深さ調節機構を制御して植付深さを、それぞれ調節可能に構成され、
圃場に施肥を行う施肥装置と、
前記施肥装置の施肥量を調節する施肥量調節機構を備え、
前記生育環境情報は、土壌の肥沃度に関する情報を含み、
前記制御装置は、植え付け地点における肥沃度が、所定値以上の場合、前記株間調節機構を制御して株間を調節し、所定値より小さい場合、前記施肥量調節機構を制御して施肥量を調節することを特徴とすることを特徴とする移植機。
【請求項5】
圃場を走行する走行車体と、圃場に苗を植え付ける苗植付部とを備えた移植機であって、
植え付け地点の生育環境情報を圃場から取得する生育環境情報取得手段と、
前記苗植付部の苗取量を調節する苗取量調節機構と、
前記苗植付部の株間を調節する株間調節機構と、
前記苗植付部の植付深さを調節する植付深さ調節機構と、
前記生育環境情報取得手段から生育環境情報を取得する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記苗植付部による苗の植え付け時、取得した生育環境情報に基づき、植え付け地点ごとに、前記苗取量調節機構を制御して苗取量を、前記株間調節機構を制御して株間を、前記植付深さ調節機構を制御して植付深さを、それぞれ調節可能に構成され、
前記生育環境情報は、土壌の作土深に関する情報を含み、
前記走行車体は、苗の植え付け時、苗の植え付け地点における作土深が、所定の作土深よりも深い場合に全輪駆動状態となるよう構成されたことを特徴とする移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に苗を植え付ける移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の移植機は、圃場を走行する走行車体の後部に、圃場に苗を植え付ける苗植付部を備えて圃場を走行しながら苗を植え付けるよう構成され、さらに、所定操作により、1株当たりの苗の量、植付深さ、株間等を調節できるよう構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-55779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、農業従事者の高齢化や労働力不足により耕作放棄地が増加していく中で、新規参入者や規模拡大を志向する次世代の担い手に効率的に農地を集約していくことが重要な課題となっている。そのような時代背景の中、2021年現在、我が国における農家1戸当たりの農地面積は増加傾向にあり、今後もこの傾向は継続するものと予測される。
【0005】
このような農地面積の増加傾向を受け、農作物の品質を安定させることが今後益々重要となっている。その理由として、圃場内の苗の生育地点(苗の植え付け地点)によって、農作物の生育環境(日照、肥沃度、土壌温度など)は異なり、圃場が広大となるほど、異なる生育地点間において生育環境の差が生じやすく、その結果、苗の生育に差が生じて倒伏による品質低下も生じやすい。したがって、圃場の広大化は、農作物の品質平準化をより困難なものとするのである。また、農作物の品質にバラツキが生じると、収穫作業の効率も低下することとなる。
【0006】
このような問題に対し、生育地点の生育環境に応じて、1株当たりの苗の量、植付深さ、株間等を調節することで、農作物の品質を平準化する対策が考えられる。しかしながら、生育地点ごとに、圃場の生育環境を調査し、その結果に応じて、作業者がこれらの調節を行う作業は煩雑に過ぎ、さらに、圃場が広大となるほど、作業負担は過大なものとなるため現実的でない。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題を解消し、農作物の品質平準化に資する移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、第1の発明は、
圃場を走行する走行車体と、圃場に苗を植え付ける苗植付部とを備えた移植機であって、
植え付け地点の生育環境情報を圃場から取得する生育環境情報取得手段と、
前記苗植付部の苗取量を調節する苗取量調節機構と、
前記苗植付部の株間を調節する株間調節機構と、
前記苗植付部の植付深さを調節する植付深さ調節機構と、
前記生育環境情報取得手段から生育環境情報を取得する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記苗植付部による苗の植え付け時、取得した生育環境情報に基づき、植え付け地点ごとに、前記苗取量調節機構を制御して苗取量を、前記株間調節機構を制御して株間を、前記植付深さ調節機構を制御して植付深さを、それぞれ調節可能に構成されたことを特徴とする移植機を提供する。
【0009】
上記第1の発明によれば、制御装置が、植え付け地点において圃場から取得した生育環境情報に基づき、苗取量、株間、植付深さをそれぞれ調節することにより、植え付け地点の生育環境に応じた苗の植え付けが可能となるため、農作物の品質を平準化できる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明の構成に加え、
前記生育環境情報は、土壌の肥沃度に関する情報を含み、
前記制御装置は、植え付け地点における肥沃度が高いほど、苗取量を増加させ、肥沃度が低いほど、苗取量を減少させるよう前記苗取量調節機構を制御すること特徴とする移植機を提供する。
【0011】
上記第2の発明によれば、上記第1の発明の効果に加え、植え付け地点における肥沃度が高いほど、苗取量を増加させ、肥沃度が低いほど、苗取量を減少させることで、農作物の品質をより好適に平準化できる。
【0012】
第3の発明は、上記第1の発明の構成に加え、
前記生育環境情報は、土壌の肥沃度に関する情報を含み、
前記制御装置は、植え付け地点における肥沃度が高いほど、植付深さを浅く、肥沃度が低いほど、植付深さを深くするよう前記株間調節機構を制御すること特徴とする移植機を提供する。
【0013】
上記第3の発明によれば、上記第1の発明の効果に加え、植え付け地点における肥沃度が高いほど、植付深さを浅く、肥沃度が低いほど、植付深さを深くすることで、農作物の品質をより好適に平準化できる。
【0014】
第4の発明は、上記第1の発明の構成に加え、
前記生育環境情報は、土壌の肥沃度に関する情報を含み、
前記制御装置は、植え付け地点における肥沃度が高いほど、株間を狭く、肥沃度が低いほど、株間を広くするよう前記植付深さ調節機構を制御すること特徴とする移植機を提供する。
【0015】
上記第4の発明によれば、上記第1の発明の効果に加え、植え付け地点における肥沃度が高いほど、株間を狭く、肥沃度が低いほど、株間を広くすることで、農作物の品質をより好適に平準化できる。
【0016】
第5の発明は、
圃場を走行する走行車体と、圃場に苗を植え付ける苗植付部とを備えた移植機であって、
植え付け地点の生育環境情報を圃場から取得する生育環境情報取得手段と、
前記苗植付部の苗取量を調節する苗取量調節機構と、
前記苗植付部の株間を調節する株間調節機構と、
前記苗植付部の植付深さを調節する植付深さ調節機構と、
前記生育環境情報取得手段から生育環境情報を取得する制御装置とを備え、
前記生育環境情報は、土壌の肥沃度、温度、及び作土深に関する情報を含み、
植え付け地点の位置情報を取得する位置情報取得手段を備え、
前記制御装置は、取得した生育環境情報と植え付け地点の位置情報とを紐づけて記録した生育環境情報記録データを作成及び格納するよう構成され、
前記制御装置は、前記生育環境情報記録データから、肥沃度、作土深、土壌温度の平均値をそれぞれ算出し、算出したそれぞれの平均値を肥沃度、作土深、土壌温度それぞれの基準値として設定し、
前記苗植付部による苗の植え付け時、取得した肥沃度、温度、及び作土深の検出値と、設定された肥沃度、温度、及び作土深の基準値を比較し、その比較結果に基づき、前記苗取量調節機構を制御して苗取量を、前記株間調節機構を制御して株間を、前記植付深さ調節機構を制御して植付深さを、それぞれ調節することを特徴とする移植機を提供する。
【0017】
上記第5の発明によれば、平均値から算出された基準値との比較に基づき、株間、施肥量、植付深さ、苗取量を決定・調節することで、農作物の品質を好適に平準化することができる。また、前年度に作成した生育環境情報記録データを今年度の植え付け作業に使用したり、前年度と今年度の生育環境情報記録データを比較して、苗の植え付け作業を行うことが可能となる。
【0018】
第6の発明は、、上記第1の発明の構成に加え、
圃場に施肥を行う施肥装置と、
前記施肥装置の施肥量を調節する施肥量調節機構を備え、
前記生育環境情報は、土壌の肥沃度に関する情報を含み、
前記制御装置は、植え付け地点における肥沃度が、所定値以上の場合、前記株間調節機構を制御して株間を調節し、所定値より小さい場合、前記施肥量調節機構を制御して施肥量を調節することを特徴とすることを特徴とする移植機を提供する。
【0019】
上記第6の発明によれば、上記第1の発明の効果に加え、肥沃度により、施肥量を調節するか株間を調節するかを選択することで、効率的な調節が可能となる。
【0020】
第7の発明は、上記第1の発明の構成に加え、
前記生育環境情報は、土壌の作土深に関する情報を含み、
前記走行車体は、苗の植え付け時、苗の植え付け地点における作土深が、所定の作土深よりも深い場合に全輪駆動状態となるよう構成されたことを特徴とする移植機を提供する。
【0021】
上記第7の発明によれば、上記第1の発明の効果に加え、スリップが生じやすい土壌を判断し、全輪駆動により好適にスリップを防止して、植え付け精度を向上できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、農作物の品質平準化に資する移植機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施形態に係る移植機1の左側面図である。
図2図2は、同上の平面図である。
図3図3は、図1の移植機における操作表示部の概略平面図である。
図4図4は、図1の苗植付部の伝動機構を示した図である。
図5図5は、図1の苗植付部の要部左側面図である。
図6図6は、図1のミッションケース内の株間調節機構に係る要部断面図である。
図7図7は、図1の施肥装置の要部説明図である。
図8図8は、図1の移植機1の制御装置の構成を示すブロック図である。
図9図9は、第1の植付モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
図10図10(a)は、生育環境情報の記録方法を説明するための説明図であり、図10(b)は、生育環境情報が記録された生育環境情報記録データの内容を示すテーブル図である。
図11図11は、第2の植付モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
図12図12は、第3の植付モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
図13図13は、図1のファイナルケースの要部斜視図である。
図14図14(a)は、図1の予備苗載置台の要部平面図であり、図14(b)は、図1の予備苗載置台の要部側面図である。
図15図15は、変形例に係る第2の植付モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい一実施形態である移植機につき、図面に基づいて詳細に説明を加える。この好ましい実施形態において、移植機1は、4条植えの乗用型田植機として構成されている。なお、以下の説明においては、移植機1の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向を前、後進方向を後というが、これらの方向の定義自体は、本発明の構成を限定するものでは無い。
【0025】
<1.基本構成>
図1は、本発明の実施形態に係る移植機1の左側面図であり、図2は平面図である。
まず、図1及び図2を参照し、移植機1の基本構成について説明する。なお、以下の説明では、移植機1を指して、単に「機体」ということがある。
【0026】
移植機1は、図1及び図2に示されるように、基本構成として、走行手段である走行車体Aと、苗の植え付け作業を行う作業装置Bとを備えている。
【0027】
走行車体Aは、図1に示されるように、車体骨格を成すメインフレームa1と、このメインフレームa1の上に搭載されたエンジンa2と、このエンジンa2の動力を伝達する動力伝達装置a3とを備える。
【0028】
この動力伝達装置a3は、エンジンa2で発生した動力を移植機1の走行系及び作業系に分岐して伝達する。動力伝達装置a3から走行系に伝達された動力によって、走行車体a2に設けられた左右一対の前輪a4及び後輪a5が駆動される。また、動力伝達装置a3から作業系に伝達された動力によって、作業装置Bが駆動される。
【0029】
メインフレームa1上には、作業者が乗降可能なフロアステップa6が載置固定されており、このフロアステップa6の後方には、後輪a5のフェンダを兼ねたリヤステップa7が設けられる。さらに、フロアステップa6上には、エンジンa2を覆うエンジンカバーa8が設けられ、エンジンカバーa8の上方には、作業者が着座する操縦席a9が設けられる。また、操縦席a9の前方には、移植機1を操縦するための操縦部D(図2参照)が配設され、操縦席a9に着座した作業者が操縦部Dを操作可能に構成されている。
【0030】
また、走行車体Aの前部略中央には、機体の現在位置(苗の植え付け時においては、植え付け地点となる。)の位置情報を測定する測位装置ANが設けられている。測位装置ANは、上空を周回している航法衛星からの電波を測位アンテナ(図示せず)により受信して測位および計時するGNSS(Global Navigation Satellite System)を備え、また、3軸のジャイロスコープおよび3方向の加速度センサなどによって移植機1の姿勢や方位などを測定する慣性計測装置(Inertial Measurement Unit)を備えて構成されている。測位装置ANによって測定された位置情報は、電気信号により後述する制御装置Cに送信される。
【0031】
<2.走行系の構成(動力伝達構造)>
移植機1の走行系及び動力伝達構造について、以下説明する。
動力伝達装置a3は、図示しないが、主変速機構として、油圧式無段変速機と、ベルト式動力伝達機構とを備える。この油圧式無段変速機は、静油圧式の無段変速装置(HST:Hydro Static Transmission)である。また、ベルト式動力伝達機構は、エンジンa2からの動力を油圧式無段変速機に伝達するものである。
【0032】
動力伝達装置a3は、油圧式無段変速機及びベルト式動力伝達機構を介して、エンジンa2からの動力の伝達を受けるミッションケースa10を備える。このミッションケースa10は、メインフレームa1の前部に配され、走行車体Aの路上走行時や植付走行時における走行速度や作業速度を変速して切り替える副変速機構を備える。
【0033】
さらに、ミッションケースa10は、副変速機構で変速された動力を、走行用動力および作業装置B(苗植付部b1)の駆動用動力に分ける機能を果たす。この走行用動力は、一部が左右のファイナルケースa11を介して前輪a4に伝達され、残りが左右の後輪ギヤケースa12を介して後輪a5に伝達される。なお、クラッチ機構(図示せず)の作動により後輪a5のみを駆動することも可能に構成されている。一方、駆動用動力は、走行車体Aの後部に設けられた植付クラッチ(図示せず)に伝達され、植付クラッチによる動力接続時に植付伝動軸(図示せず)によって作業装置B(苗植付部b1)に伝達される。
【0034】
<3.操縦系の構成>
移植機1の操縦系の構成について、以下説明する。
操縦部Dは、その前部に、燃料タンク等を覆うフロントカバーd1が設けられるとともに、移植機1を操舵するためのステアリング装置d2が配設されている。このステアリング装置d2の上部には、各種操作レバーや計器類が配設されている。
【0035】
ステアリング装置d2は、前輪a4を操舵するために作業者が回動操作するステアリングハンドルd3と、ステアリングハンドルd3のステアリングシャフト(回転軸)を内蔵するステアリングコラムと、ステアリングシャフトの回動を左右方向の略直線運動に変換する図示しない操舵機構と、操舵機構の両端と左右の前輪a4とを接続する図示しないタイロッドとを有する(図示せず)。これにより、ステアリングハンドルd3が回動されると、ステアリングシャフトも回動し、その結果、ステアリングハンドルd3の回動角及び回動方向に基づいて、タイロッドが左右に移動し、左右の前輪a4が操舵される。
【0036】
ステアリングハンドルd3の左側には、変速操作レバーd4(走行操作部材、HSTレバー)が配設されており、右側には、副変速レバーd5が配設されている。また、図示されていないが、ステアリング装置d2の下部には、アクセルペダルやブレーキペダル、あるいはクラッチペダルなどの各種ペダル類が設けられている。
【0037】
図3は、図1の移植機1における操作表示部d6の概略平面図である。
操作表示部d6は、図1及び図2において図示されていないが、操縦部D上において、操縦席a9の正面に配設され、操作ボタンの操作により作業者から入力を受ける入力部d7と、LED等の発光素子の点灯及び消灯により情報を表示する電光表示部d8と、液晶ディスプレイにより情報を表示する液晶表示部d9と、音声を出力する音声出力部d10を備え、入力部d7から作業者の操作を受け付け、電光表示部d8と液晶表示部d9と音声出力部d10とによる視覚や音の出力によって、作業者に各種の情報を報知できるよう構成されている。入力部d7から受け付けた操作情報は、電気信号により後述する制御装置Cに送信される。
【0038】
<4.作業系の構成>
移植機1の作業系の構成について、以下説明する。
作業装置Bは、図1に示されるように、走行車体Aの後部に配され、圃場に苗を植え付ける苗植付部b1と、苗植付部b1を昇降するための昇降機構b2とを備える。
【0039】
昇降機構b2は、走行車体A後部に固定されたリンクベースフレームb3に、それぞれ回動自在に連結された上リンク及び下リンクからなる平行リンク機構b4を備える。
【0040】
この平行リンク機構b4の後端側には、苗植付部b1が連結されており、油圧式の昇降シリンダb5の伸縮を電気的に制御可能することによって、苗植付部b1を上下回動する仕組みとなっている。
【0041】
この昇降シリンダb5は、ミッションケースa10の内部から作動油の供給を受け、制御装置Cの制御信号に制御される昇降バルブ(図示せず)により作動油を給排出し、これにより、伸縮が制御されるよう構成された油圧式のシリンダである。
【0042】
また、平行リンク機構b4には、平行リンク機構b4の上下回動角度を苗植付部b1の高さ位置として検出する高さ検出センサs1(図8参照)が設けられている。この高さ検出センサs1によって検出された情報は、電気信号により後述する制御装置Cに送信される。
【0043】
このように構成された昇降機構b2によって、苗の植え付け時は、苗植付部b1を下降させて対地作業位置(植付位置)に、旋回などの非植え付け時は、苗植付部b1を上昇させて非作業位置とすることができる。
【0044】
次に、苗植付部b1について説明する。
苗植付部b1は4条植の構成で、植付伝動軸b6(図1参照)から苗植付部b1の駆動力を受ける植付伝動ケースb7、苗を載せて左右往復運動しながら苗を一株分ずつ苗取出案内枠b8の苗取出口b9(図2参照)に供給する苗載台b10、苗取出口b9に供給された苗を圃場に植え付ける苗植付装置b11等を備えている。
【0045】
苗載台b10は、仕切突条部b12によって各条に対応して区切られており、苗載台b10の苗送りベルトb13で植付伝動ケースb7の苗取出案内枠b8上に送られた苗マットが苗取出口b9で苗植付装置b11の苗植付爪b14で一株分の苗が掻き取られ、植付動作で圃場に移植される。
【0046】
図4は、図1の苗植付部b1の伝動機構を示した図である。
植付伝動軸b6によって苗植付部b1へ伝動される動力は、苗植付部b1に備える植付伝動ケースb7内へ伝動され、植付伝動ケースb7内から各条の苗植付装置b11及び苗送りベルトb13へ伝動される。苗植付装置b11は、植付伝動ケースb7内で動力を分岐して各2条毎の単位で苗植付装置b11へ伝動する分岐伝動部b15が設けられ、該分岐伝動部b15の伝動を入切する植付用部分クラッチb16が設けられ、植付用部分クラッチb16から分岐伝動部b15にはチェーンb17により伝動される構成であり、植付用部分クラッチb16により苗植付装置b11を2条毎に停止させることができる。
【0047】
植付伝動ケースb7(図1参照)内の動力からの駆動により苗送り駆動カムb18が常時回転し、苗載台b10の左右移動端で苗送り駆動カムb18が苗送りアームb19、b19に作用して苗送りアームb19、b19が駆動し、回転軸b20及び左右のリンクb21、b21を介して左右の苗送り用部分クラッチb22に伝動し、苗送り用部分クラッチb22から苗送り駆動ローラb23を駆動して、苗送りベルトb13を駆動するよう構成されている。
【0048】
<5.植付深さ調節機構>
制御装置Cからの制御信号により、苗の植付深さを調節する植付深さ調節機構Jについて以下説明する。苗植付部b1の下部には中央にセンターフロートj1、その左右両側にサイドフロートj2がそれぞれ設けられている。これら各フロート(センターフロートj1、サイドフロートj2)を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置b11により苗が植付けられる。
【0049】
各フロートは圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロートj1の前部の上下動が迎角制御センサs2(図8参照)により検出され、その検出値から制御装置Cが植付深さを算出可能となっている。したがって、迎角制御センサs2の検出結果に応じ、制御装置Cが、昇降シリンダb5を介して苗植付装置b11の高さ位置をフィードバック制御することにより、苗の植付深さを一定に維持することが可能であり、さらに、現在設定されている植付深さから浅く、あるいは深くなるよう調節することも可能となっている。このようにして、センターフロートj1、迎角制御センサs2、昇降シリンダb5等を含んで構成された植付深さ調節機構Jの制御により、苗の植付深さが調節可能となっている。
【0050】
<6.苗取量調節機構>
図5は、図1の苗植付部b1の要部左側面図である。
制御装置Cからの制御信号により、苗取量(1株分の苗の量)を調節する苗取量調節機構Kについて以下説明する。苗取量調節機構Kは、苗取量調節レバーk1と、この苗取量調節レバーk1を、苗取量アクチュエータAC1の駆動によって自動操作する自動操作部k2とを備えている。なお、苗取量アクチュエータAC1は、制御装置Cによって駆動が制御される。また、苗取量アクチュエータAC1は、苗載台b10の左右方向略中央部に設ける構成としているが、左右方向端部に設けられてもよい。
【0051】
苗載台b10の下端部は、苗取量調節レバーk1の操作(図5中の矢印F1方向)と連動して前後方向に位置を移動するよう構成されており、詳細には、苗取量調節レバーk1を前方へと操作すると、苗載台b10の下端部は後方に移動し、苗取量調節レバーk1を後方へと操作すると、苗載台b10の下端部は前方に移動するよう構成されている。
【0052】
苗載台b10の下端部が前後に移動することにより、苗取出案内枠b8が前後に移動し、各苗取出口b9に対する苗植付爪b14の苗取介入深さの深浅が調節される。すなわち、苗取出口b9が苗植付爪b14の植付軌跡線から前側へと離間するほど、苗植付爪b14の苗取出口b9に対する介入深さは浅くなって苗取量は減少し、後側へと近接するほど、介入深さは深くなって苗取量は増加する。
【0053】
苗取量調節レバーk1の上部には、上下方向を長手とするスライド孔k3が設けられており、自動操作部k2は、苗取量アクチュエータAC1の駆動によって、スライド孔k3内をスライド可能に嵌合されたスライドピンk4を正逆回動することで、苗取量調節レバーk1の自動操作が可能となっている。このようにして、苗取量調節機構Kの制御によって、苗取量の調節が可能となっている。なお、この苗取量調節レバーk3は、作業者の手動操作によっても苗取量を変更することができる。
【0054】
<7.株間調節機構>
苗の株間を調節する株間調節機構Gについて以下説明する。
図6は、図1のミッションケースa10内の株間調節機構Gに係る要部断面図である。
株間調節機構Gは、ミッションケースa10内に配設されており、作業動力の2段階の変速に基いて株間を「標準株間」、「広株間」の2段階に切換える第1株間変速部g1と、作業動力の3段階の変速に基いて株間を「大」、「中」、「小」の3段階に切換える第2株間変速部g2とを備えて、第1株間変速部g1による変速と第2株間変速部g2による変速の組み合わせで、6段階の株間調節が可能となっている(例えば、株間14・16・18・21・24・30cm)。
【0055】
ミッションケースa10は、エンジンの動力を受ける入力軸a13を備え、株間調節機構Gによって出力軸a14の出力を調節し、これにより、出力軸a14の出力と連動する植付伝動軸b6を介して、苗植付部b1の株間を調節するよう構成されている。
【0056】
無段変速装置から動力の入力を受ける入力軸a13と、入力軸a13の動力を出力軸a14に伝動する作業動力伝動経路a15とを備えている。作業動力伝動経路a15には、作業動力を変速によって株間を調節する株間調節機構Gと、苗植付部b1の負荷に応じて作業動力を入り/切りするトルクリミッタa16と、作業機クラッチ操作具の操作に応じて作業動力を入り/切りする作業機クラッチa17とが介設されている。
【0057】
株間調節機構Gは、第1株間変速部g1と、第2株間変速部g2とを備える。
第1株間変速部g1は、第1株間アクチュエータAC2の進退駆動に応じてスライドする第1変速ロッドg3と、第1変速ロッドg3に設けられる第1シフタg4とを備えており、第1シフタg4は、第1株間変速部g1の第1変速ギヤg5に係合されている。したがって、第1株間アクチュエータAC2が進退駆動すると、第1変速ロッドg3、第1シフタg4及び第1変速ギヤg5が一体的にスライドし、第1株間変速部g1が「標準株間」、「広株間」の2段階に変速される。
【0058】
第2株間変速部g2は、第2株間アクチュエータAC3の進退駆動に応じてスライドする第2変速ロッドg6と、第2変速ロッドg6に設けられる第2シフタg7とを備えており、第2シフタg7は、第2株間変速部g2の第2変速ギヤg8に係合されている。したがって、第2株間アクチュエータAC3が進退駆動すると、第2変速ロッドg6、第2シフタg7及び第2変速ギヤg8が一体的にスライドし、第2株間変速部g2が「大」、「中」、「小」の3段階に変速される。
【0059】
制御装置Cの制御によって、第1株間アクチュエータAC2及び第2株間アクチュエータAC3の駆動は制御され、これにより、入力軸a13から入力される動力に対する出力軸a14の出力が制御される。このようにして、株間調節機構Gの制御によって、株間の調節が可能となっている。
【0060】
<8.施肥量調節機構>
施肥量を調節する施肥量調節機構Hについて、以下説明する。図7は、図1の施肥装置h1の要部説明図である。施肥装置h1は、走行車体Aの後部に設けられ、肥料ホッパーh2に貯留されている粒状の肥料を、各苗植付条毎に設けられている繰出部h3によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホースh4でセンターフロートj1及びサイドフロートj2の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)まで導き、施肥ガイドの前側に設けた作溝体(図示せず)によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込む構成となっている。
【0061】
繰出部h3は、繰出回動シャフトh5の間欠的な回転速度に応じて、繰り出す施肥量を増減できるよう構成されている。
【0062】
施肥量調節機構Hは、制御装置Cによって制御される施肥量調節モータAC4の駆動により、ボールナットh6が高速で前進又は後進(図7の矢印F2方向)すると同時に、ボールナット保持プレートh7に固定された揺動支点ピンh8が、ガイド用長孔h9に沿って、高速で前進又は後進(図7の矢印F2方向)するよう構成されている。
【0063】
施肥量調節モータAC4が回転してボールナットh6が最後端の位置まで高速で移動した時、揺動支点ピンh8は最も後側に移動する。このとき、揺動アームh10の揺動により揺動伝動アームh12の上下方向の移動距離が最大となり、一方向クラッチ機構h11の回動距離も最大となり、これに応じて繰出回動シャフトh5の間欠的な回転速度も最大となり、繰出部h3から繰り出される施肥量は最大となる。
【0064】
施肥量調節モータAC4が回転してボールナットh6が、最前端の位置まで高速で移動した時、揺動支点ピンh8は最も前側に移動する。そして、揺動アームh10の揺動により揺動伝動アームh12の上下方向の移動距離が最小となり、一方向クラッチ機構390の回動距離も最小となり、これに応じて繰出回動シャフトh5の間欠的な回転速度も最小となり、繰出部h3から繰り出される施肥量は最小となる。このようにして、施肥量調節機構Hの制御によって、施肥量の調節が可能となっている。
【0065】
<9.生育環境情報取得手段>
移植機1は、植え付け地点(機体の現在位置)における苗の生育環境に関する情報(以下、生育環境情報という。)を圃場から取得する生育環境情報取得手段を備えている。

生育環境情報情報習得手段は、肥沃度を検出する肥沃度センサs3と、作土深(鋤床層までの深さ)を検出する作土深センサs4と、土壌の温度を検出する土壌温度センサs5とを備えている。
【0066】
作土深センサs3は、走行車体A前部の適宜の箇所に設けられ、超音波を発して作土深を計測及び検出する。肥沃度センサs3は、左右の前輪a4に設けられており、土壌の電気抵抗から養分総量(肥沃度)を計測及び検出する。土壌温度センサs5は、センターフロートj1の適宜の箇所に設けられており、土壌と接触して温度を計測及び検出する。生育環境情報情報習得手段によって取得された生育環境情報は、電気信号により後述する制御装置Cに送信される。
【0067】
<10.補助装置の構成>
次に、移植機1の作業を補助する補助装置の構成について、以下説明する。
フロアステップa6の前部における左右の側方には、予備苗載置台a18が設けられる(図2参照)。
予備苗載置台a18は、補給用の苗を載置するための台であり、フロアステップa6のステップ面から突出した支持軸によって回転自在に支持される。予備苗載置台a18は、作業者の手動による回動の他、電動モータなどの駆動部によって回動させることもできる。これにより、苗載台b10へ容易に苗を補給できる。
【0068】
<11.制御系の構成>
図8は、図1の移植機1の制御装置Cの構成を示すブロック図である。
制御装置Cは、移植機1の走行系及び作業系を主に制御する装置であり、複数のECU(Electronic Control Unit)を組み合わせて構成された情報処理装置である。この複数のECUは、それぞれが、演算処理を行うCPUと、演算処理に必要な情報を読み書き可能なメモリとを備えて構成されており、メモリに記憶された各種の制御プログラムに従ってCPUが動作することにより、各種の機能が発揮される。制御装置Cを構成する各要素は、CAN(Controller Area Network)などの車内通信又は電力線などを介して、通信可能又は送電可能に接続されている。
【0069】
制御装置Cの入力側には、測位装置AN、高さ検出センサs1、迎角検出センサs2、肥沃度センサs3、作土深センサs4、土壌温度センサs5、入力部d7が接続されており、制御装置Cは、これらから位置情報や検出値等の各種情報の取得が可能に構成されている。
【0070】
制御装置Cの出力側には、作業装置B、株間調節機構G、施肥量調節機構H、植付深さ調節機構J、苗取量調節機構K、操作表示部d6が接続されており、制御装置Cは、これらに制御信号や文字・画像・音声データ等の各種情報を送信可能に構成されている。
【0071】
制御装置Cは、植付制御部c1を備えており、植付制御部c1は、苗の植え付けに係る各機構を制御する機能を果たすプログラムである。植付制御部c1は、第1植付モード制御部c2、第2植付モード制御部c3、第3植付モード制御部c4を備えている。これにより、制御装置Cは、入力部d7から作業者の所定操作を受け付けることより、第1~第3の植付モードを切り替え可能となっている。
【0072】
情報格納部c5は、植え付け作業に必要な各種情報を格納する記憶装置であり、例えばHDD(Hard Disc Drive)やSSD(Solid State Drive)で構成される。情報格納部c5には、例えば、圃場情報(作業対象となっている圃場の大きさ・形状・地図位置や当該圃場の境界線を規定する畦の位置データなどの情報)や作業装置Bの各種設定に関する情報が記憶される。
【0073】
<12.第1の植付モード>
図9は、第1の植付モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
制御装置Cは、第1の植付モードが選択され、苗植付部b1による苗の植え付けが開始されると、第1植付モード制御部c2によって、以下の制御を行う。
【0074】
制御装置Cは、植え付け地点ごとに、測位装置ANにより機体の現在の位置情報を取得し、これを現在の植え付け地点の位置を示す情報として記憶する(ステップS101)。
【0075】
次に、生育環境情報取得手段によって、現在の植え付け地点において測定・検出された生育環境情報(肥沃度、作土深、土壌温度)を取得する(ステップS102)。
【0076】
続いて、取得された生育環境情報から株間を決定し、決定された株間となるように、株間調節機構Gを制御する(ステップS103)。これにより、現在の植え付け地点における株間が調節される。このとき、制御装置Cは、生育環境情報の検出値が、農作物の生育に好ましいほど株間を広げ、好ましくないほど株間を狭くする。
【0077】
より具体的には、肥沃度が低いほど株間を広く、肥沃度が高いほど株間が狭くなるように株間を決定する。すなわち、一般に肥沃度が低いほど苗が育ちにくく、高いほど育ちやすいため、所定の閾値を設けて肥沃度が低数値~高数値となるほど、株間を14・16・18・21・24・30cmの順に広げ、肥沃度の低い地点は疎植とし、肥沃度の高い地点は密植とすることで、農作物の品質を平準化できる。
【0078】
また、土壌温度に基づいて株間を決定してもよい。このとき、土壌温度が高いほど、株間を狭く、土壌温度が低いほど広くする。すなわち、土壌温度が高いと、農作物の出葉及び分けつが促進されることから、農作物がよく育つため、株間を狭くすることで品質を保ったまま収量を増加できる。
【0079】
また、作土深に基づいて株間を決定してもよい。このとき、作土深が深いほど、株間を狭く、作土深が浅いほど、株間を広くしてもよい。これにより、作土深が深いと、根が深く伸び、気温や水分の変化を受けにくいことから、農作物がよく育つため、株間を狭くすることで、株間を狭くすることで品質を保ったまま収量を増加できる。また、ステップS103において、肥沃度、作土深、土壌温度のいずれかの項目により、株間を決定し、その他の項目で上記の要領で決定された株間を増減するように補正してもよい。
【0080】
次に、取得された生育環境情報から最適な施肥量を決定し、決定された施肥量となるように、施肥量調節機構Gを制御する(ステップS104)。これにより現在の植え付け地点における施肥量が調節される。このとき、肥沃度が低いほど施肥量を多く、肥沃度が高いほど施肥量が少なくなるように決定する。これにより、農作物の品質を平準化できる。
【0081】
続いて、取得された生育環境情報から植付深さを決定し、決定された植付深さとなるように、植付深さ調節機構Jを制御する(ステップS105)。これにより、現在の植え付け地点における植付深さが調節される。このとき、制御装置Cは、生育環境情報の検出値が農作物の生育に好ましいほど植付深さを浅くし、好ましくないほど植付深さを深くする。
【0082】
より具体的には、肥沃度が低いほど植付深さを深く(例えば、4cm)、肥沃度が高いほど植付深さが浅く(例えば、2cm)なるように決定する。すなわち、一般に、肥沃度が低いほど作物が育ちにくいため、植付深さを深くすることで登熟歩合を高め、農作物の品質を平準化できる。
【0083】
また、土壌温度に基づいて植付深さを決定してもよい。より具体的には、土壌温度が高いほど、植付深さを浅く、土壌温度が低いほど深くしてもよい。すなわち、土壌温度が高いほど、農作物の出葉及び分けつが促進されることから、作物がよく育つため、土壌温度に応じて植付深さを調節することで農作物の品質を平準化できる。
【0084】
また、作土深に基づいて植付深さを決定してもよい。より具体的には、作土深が深いほど、植付深さを深く、作土深が浅いほど、植付深さを浅くしてもよい。すなわち、一般に、作土深が浅いと、根の育つ範囲が狭く気温や水分の変化の影響を受けやすいことから、農作物が育ちにくいため、植付深さを深くすることで農作物の品質を平準化できる。また、ステップS105において、肥沃度、作土深、土壌温度のいずれかの項目により、植付深さを決定し、その他の項目で上記の要領で決定された植付深さを増減するように補正してもよい。
【0085】
次に、取得された生育環境情報から苗取量を決定し、決定された植付深さとなるように、苗取量調節機構Kを制御する(ステップS106)。これにより、現在の植え付け地点における苗取量が調節される。このとき、制御装置Cは、生育環境情報の検出値が、農作物の生育に好ましいほど苗取量を増やし、好ましくないほど苗取量を減らす。
【0086】
より具体的には、肥沃度が低いほど苗取量を減らし、肥沃度が高いほど苗取量を増やすように決定する。すなわち、一般に、肥沃度が低いほど作物が育ちにくいため、苗取量を少なくすることで登熟歩合を高め、農作物の品質を平準化できる。
【0087】
また、土壌温度に基づいて苗取量を決定してもよい。より具体的には、土壌温度が高いほど苗取量を増やし、低いほど減らしてもよい。すなわち、土壌温度が高いほど、農作物の出葉及び分けつが促進されることから、作物がよく育つので、土壌温度に応じて苗取量を調節することで農作物の品質を平準化できる。
【0088】
また、作土深に基づいて苗取量を決定してもよい。より具体的には、作土深が深いほど、苗取量を多く、作土深が浅いほど、苗取量を少なくしてもよい。すなわち、一般に作土深が浅いと、根の育つ範囲が狭く気温や水分の変化の影響を受けやすいことから、農作物が育ちにくいため、苗取量を少なくすることで農作物の品質を平準化できる。また、ステップS106において、肥沃度、作土深、土壌温度のいずれかの項目により、苗取量を決定し、その他の項目で上記の要領で決定された苗取量を増減するように補正してもよい。
【0089】
次に、制御装置Cは、取得された現在の植え付け地点における生育環境情報を情報格納部c5に記録する(ステップS107)。図10(a)は、生育環境情報の記録方法を説明するための説明図であり、図10(b)は、生育環境情報が記録された生育環境情報記録データの内容を示すテーブル図である。
【0090】
図10(a)に示されるように、制御装置Cは、各植え付け地点における生育環境情報を整理して情報化するため、圃場情報から、圃場の領域Hを細分化した複数の区画P(X、Y)に分け、それぞれの区画を二次元座標で特定できるようにデータ化する。次に、ステップS101で取得された位置情報から、機体の現在位置(植え付け地点)が圃場のどの区画に属するのか判定する。すなわち、制御装置Cは、位置情報から圃場における機体の位置を算出可能に構成されている。次に、判定された区画と、ステップS102で取得された生育環境情報(肥沃度、作土深、土壌温度)を紐づけて記録する。これを繰り返すことによって、各区画P(X、Y)と対応する生育環境情報が順次記録され、圃場の領域H全体の生育環境情報を記録した生育環境情報記録データが作成される。なお、生育環境情報記録データは、圃場の位置と、その位置における生育環境情報が紐づけて記録された情報であればよく、測位装置ANが取得した位置情報から、制御装置Cが圃場の位置を判定し、その圃場の位置と対応する生育環境情報が参照できるよう情報化されたものであればよい。
【0091】
図9に戻り、制御装置Cは、生育環境情報を情報格納部c5に記録後(ステップS107)、作業終了か否か判定する(ステップS108)。作業終了でない場合、ステップS101に戻り、作業終了の場合、処理を終了する。このようにして、制御装置Cが、植え付け地点において圃場から取得した生育環境情報に基づき、苗取量、株間、植付深さ、施肥量をそれぞれ調節することにより、植え付け地点の生育環境に応じた苗の植え付けが可能となるため、農作物の品質を平準化できる。
【0092】
<13.第2の植付モード>
図11は、第2の植付モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
制御装置Cは、第2の植付モードが選択され、苗植付部b1による苗の植え付けが開始されると、第2植付モード制御部c3によって、以下の制御を行う。なお、第2の植付モードにおいては、圃場の領域H全体(あるいは一部)の生育環境情報を記録した生育環境情報記録データが情報格納部c5に格納されているものとする。
【0093】
制御装置Cは、情報格納部c5から生育環境情報記録データを取得する(ステップS201)。次に、取得した生育環境情報記録データから、圃場の領域H全体(あるいは一部)の肥沃度、作土深、土壌温度の平均値をそれぞれ算出し、算出したそれぞれの平均値を肥沃度、作土深、土壌温度それぞれの基準値として設定する(ステップS202)。
【0094】
次に、生育環境情報取得手段によって、植え付け地点ごとに、現在の植え付け地点において測定・検出された生育環境情報(肥沃度、作土深、土壌温度)を取得する(ステップS203)。
【0095】
続いて、ステップS203において取得された生育環境情報(肥沃度、作土深、土壌温度)と、ステップS202において算出された肥沃度、作土深、土壌温度それぞれの基準値を比較し、株間を決定する(ステップS204)。これにより、現在の植え付け地点における株間が調節される。
【0096】
より具体的には、取得された土壌温度と、土壌温度の基準値を比較し、取得された土壌温度の方が基準値より高いほど、株間を所定の標準間隔(例えば、18cm)よりも狭くするよう決定し、取得された土壌温度の方が低いほど、株間を所定の標準間隔よりも広くするよう決定する。土壌温度が高いと、農作物の出葉及び分けつが促進されることから、作物がよく育つので、株間を狭くすることで品質を保ったまま収量を増加できる。
【0097】
また、取得された肥沃度と、肥沃度の基準値を比較し、取得された肥沃度の方が基準値より高いほど、株間を所定の標準間隔(例えば、18cm)よりも狭く、取得された肥沃度の方が低いほど、株間を所定の標準間隔よりも広くするよう決定してもよい。
【0098】
また、取得された作土深と、作土深の基準値を比較し、取得された作土深の方が基準値より深いほど、株間を所定の標準間隔よりも広く、取得された作土深の方が浅いほど、株間を所定の標準間隔よりも狭くするよう決定してもよい。また、ステップS204において、肥沃度、作土深、土壌温度のいずれかの項目により、株間を決定し、その他の項目で上記の要領で決定された株間を増減するように補正してもよい。
【0099】
次に、ステップS203において取得された生育環境情報(肥沃度、作土深、土壌温度)と、ステップS202において算出された肥沃度、作土深、土壌温度それぞれの基準値を比較し、施肥量を決定する(ステップS205)。これにより、現在の植え付け地点における施肥量が調節される。
【0100】
より具体的には、取得された土壌温度と、土壌温度の基準値を比較し、取得された土壌温度の方が基準値より高いほど、施肥量を所定の標準量よりも少なくするよう決定し、取得された土壌温度の方が低いほど、施肥量を所定の標準量よりも多くするよう決定する。
【0101】
また、取得された肥沃度と、肥沃度の基準値を比較し、取得された肥沃度の方が基準値より高いほど、施肥量を所定の標準量よりも少なく、取得された肥沃度の方が低いほど、多くするよう決定してもよい。
【0102】
また、取得された作土深と、作土深の基準値を比較し、取得された作土深の方が基準値より深いほど、施肥量を所定の標準量よりも少なく、取得された作土深の方が浅いほど、施肥量を所定の標準量よりも多くするよう決定してもよい。また、ステップS205において、肥沃度、作土深、土壌温度のいずれかの項目により、施肥量を決定し、その他の項目で上記の要領で決定された施肥量を増減するように補正してもよい。
【0103】
次に、ステップS203において取得された生育環境情報(肥沃度、作土深、土壌温度)と、ステップS202において算出された肥沃度、作土深、土壌温度それぞれの基準値を比較し、植付深さを決定する(ステップS206)。これにより、現在の植え付け地点における植付深さが調節される。
【0104】
より具体的には、取得された土壌温度と、基準値の土壌温度を比較し、取得された土壌温度の方が高いほど、植付深さを所定の標準深さ(例えば、3cm)よりも浅くするよう決定し、取得された土壌温度の方が低いほど、植付深さを所定の標準深さよりも深くするよう決定する。
【0105】
また、取得された肥沃度と、肥沃度の基準値を比較し、取得された肥沃度の方が高いほど、植付深さを所定の標準深さよりも浅く、取得された肥沃度の方が低いほど、植付深さを所定の標準深さよりも深くするよう決定してもよい。
【0106】
また、取得された作土深と、作土深の基準値を比較し、取得された作土深の方が深いほど、植付深さを所定の標準深さよりも浅く、取得された作土深の方が浅いほど、植付深さを所定の標準深さよりも深くするよう決定してもよい。また、ステップS206において、肥沃度、作土深、土壌温度のいずれかの項目により、植付深さを決定し、その他の項目で上記の要領で決定された植付深さを増減するように補正してもよい。
【0107】
続いて、ステップS203において取得された生育環境情報(肥沃度、作土深、土壌温度)と、ステップS202において算出された肥沃度、作土深、土壌温度それぞれの基準値を比較し、苗取量を決定する(ステップS207)。これにより、現在の植え付け地点における苗取量が調節される。
【0108】
より具体的には、取得された土壌温度と、土壌温度の基準値を比較し、取得された土壌温度の方が基準値より高いほど、苗取量を所定の標準量よりも多くするよう決定し、取得された土壌温度の方が低いほど、苗取量を所定の標準量よりも少なくするよう決定する。
【0109】
また、取得された肥沃度と、肥沃度の基準値を比較し、取得された肥沃度の方が基準値より高いほど、苗取量を所定の標準量よりも少なく、低いほど多くするよう決定してもよい。
【0110】
また、取得された作土深と、基準値の作土深を比較し、取得された作土深の方が基準値より深いほど、苗取量を所定の標準量よりも多く、取得された作土深の方が浅いほど苗取量を少なくするよう決定してもよい。また、ステップS207において、肥沃度、作土深、土壌温度のいずれかの項目により、苗取量を決定し、その他の項目で上記の要領で決定された苗取量を増減するように補正してもよい。
【0111】
次に、制御装置Cは、作業終了か否か判定する(ステップS208)。作業終了でない場合、ステップS203に戻り、作業終了の場合、処理を終了する。このように構成された第2の植付モードにおいては、平均値から算出された基準値との比較に基づき、株間、施肥量、植付深さ、苗取量を決定・調節することで、農作物の品質をより好適に平準化することができる。また、一連の作業が完了するごとに(例えば、各年ごと)に、生育環境情報記録データのバックアップを作成することにより、前年度に作成した生育環境情報記録データを今年度の植え付け作業に使用したり、前年度と今年度の生育環境情報記録データを比較して、苗の植え付け作業を行うことが可能となる。
【0112】
<14.第3の植付モード>
図12は、第3の植付モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
制御装置Cは、第3の植付モードが選択され、苗植付部b1による苗の植え付けが開始されると、第3植付モード制御部c4によって、以下の制御を行う。
【0113】
まず、制御装置Cは、植え付け地点ごとに、生育環境情報取得手段によって、現在の植え付け地点において測定・検出された生育環境情報(肥沃度、作土深、土壌温度)を取得する(ステップS301)。
【0114】
次に、制御装置Cは、取得した生育環境情報(肥沃度、作土深、土壌温度)から、肥沃度が所定値以上か判定する。
【0115】
肥沃度が所定値より小さいとき、施肥量を決定・調節する(ステップS303)。このステップS303における処理の内容は、上記ステップS104と同様であるため説明を省略する。
【0116】
肥沃度が所定値以上のとき、株間を決定・調節する(ステップS304)。このステップS304における処理の内容は、上記ステップS103と同様であるため説明を省略する。
【0117】
ステップS303またはステップS304の後、植付深さを決定・調節し(ステップS305)、苗取量を決定・調節する(ステップS306)。このステップS305における処理の内容は、上記ステップS105と同様であり、ステップS306における処理の内容は、上記ステップS106と同様であるため説明を省略する。
【0118】
制御装置Cは、ステップS306の後、作業終了か否か判定し(ステップS307)。作業終了でない場合、ステップS301に戻り、作業終了の場合、処理を終了する。
【0119】
このように、肥沃度により、施肥量を調節するか株間を調節するかを選択する構成によれば、効率的な調節が可能となる。また、制御装置Cは、施肥装置h1の肥料の残量を取得可能に構成され、肥料の残量が所定量より少ないときは、施肥量を調節せず、株間を調節するよう構成されてもよい。また、施肥量を調節するか株間を調節するかを作業者が所定操作により適宜選択し、切替えできるよう構成されてもよい。
【0120】
<15.その他>
図13は、図1のファイナルケースa11の要部斜視図である。
図13に示されるように、オートデフ機能に用いる、フロントアクスルの動力伝達軸回転数を受信するポジションセンサs6を、ファイナルケースa11の伝達軸カバー中央部に取り付けることで、軸中央部を検知することで振動が抑えられ、より正確な回転数を受信することができる。さらに、オイルシールを内蔵したスペーサを組み付けることで、オイル汚れ、鉄粉汚れから保護し、検出精度を良好に維持できる。
【0121】
図14(a)は、図1の予備苗載置台a18の要部平面図であり、図14(b)は、図1の予備苗載置台a18の要部側面図である。
図14(a)、図14(b)に示されるように、予備苗載置台a18の下方に、苗取板を収納するための苗取板入れa19が設けられ、この苗取板入れa19は、予備苗載置台a18に対してボルト締めにて固定され、着脱自在に構成されている。苗取板入れa19は、左右外側と前後方向が開放され、苗取板の裏表を挟み込んで収納する構成であり、これにより、作業者は、苗取板を自由な方向から収納できる。
【0122】
施肥装置h1の繰出部h3は、後輪a5回転の動力を伝達し駆動するよう構成されてもよい。その伝達過程で差動機構が設けられてもよい。さらに、入力軸に、後輪a5回転の動力にモータの追加動力を付与するよう構成されてもよい。加えて、モータを正回転、逆回転することにより、差動出力軸を加減速する構成としてもよい。これにより、後輪回転の動力から一定のトルクを得られるため、モータの必要トルクが減る。電力消費量も抑えられる。
【0123】
<16.変形例1>
図15は、変形例に係る第2の植付モード時の制御の流れを示すフローチャートである。変形例に係る制御装置Cは、第2の植付モードが選択され、苗植付部b1による苗の植え付けが開始されると、第2植付モード制御部c3によって、以下の制御を行う。なお、第2の植付モードにおいては、圃場の領域H全体(あるいは一部)の生育環境情報を記録した生育環境情報記録データが情報格納部c5に格納されているものとする。
【0124】
制御装置Cは、植え付け地点ごとに、測位装置ANにより機体の現在の位置情報を取得し、これを現在の植え付け地点の位置を示す情報として記憶する(ステップS201´)。
【0125】
次に、生育環境情報取得手段によって、現在の植え付け地点において測定・検出された生育環境情報(肥沃度、作土深、土壌温度)を取得する(ステップS202´)。
【0126】
続いて、制御装置Cは、取得された現在の植え付け地点における生育環境情報を情報格納部c5に記録する(ステップS203´)。なお、このとき、生育環境情報記録データに既に同一の区画の生育環境情報が記録されている場合は、その情報を更新する。
【0127】
次に、制御装置Cは、情報格納部c5から生育環境情報記録データを取得する(ステップS204´)。次に、取得した生育環境情報記録データから、圃場の領域H全体(あるいは一部)の肥沃度、作土深、土壌温度の平均値をそれぞれ算出し、算出したそれぞれの平均値を肥沃度、作土深、土壌温度それぞれの基準値として設定する(ステップS205´)。
【0128】
続いて、株間の決定・調節(ステップS206´)、施肥量の決定・調節(ステップS207´)、植付深さの決定・調節(ステップS208´)、苗取量の決定・調節(ステップS209´)を行う。これらの一連の処理の内容は、上記ステップS204~S207と同様の内容であるため説明を省略する。
【0129】
次に、制御装置Cは、作業終了か否か判定する(ステップS210´)。作業終了でない場合、ステップS201´に戻り、作業終了の場合、処理を終了する。このように構成された変形例に係る第2の植付モードにおいては、リアルタイムで測定した生育環境情報を基準値にフィードバックしながら苗の植え付けを行うことができる。これにより、植え付け作業の進行・継続に応じて、基準値を最適化することができ、農作物の品質をより良好に平準化できる。また、植え付け作業開始時の基準値と、作業終了後の最終的な基準値を比較することで、追肥等の作業の際に、目安とすることができる。
【0130】
平均値から算出された基準値との比較に基づき、株間、施肥量、植付深さ、苗取量を決定・調節することで、農作物の品質をより好適に平準化することができる。
【0131】
<17.変形例2>
移植機1は、測位装置ANから得られる位置情報を利用し、目標走行ラインに沿ってステアリングハンドルd3を自動操舵する自動走行手段を設けてもよい。その場合、植え付け作業時に、作土深センサs4により、作土深を検出し、ある一定以上の作土深が検出されたとき、車速を落とすよう構成されてもよい。これにより、機体が深く沈んだ場合に抜け出しやすい。また、オートデフロックを作動するよう制御してもよい。さらに、音声出力部d10により、警告音を出力してもよい。また、電光表示部d8等により警告灯が光るようにしてもよい。また、機体が停止するよう制御してもよい。また、生育環境情報記録データを参照し、これらの処理を、検出された作土深が、生育環境情報記録データに記録された作土深よりも深い場合に行ってもよい。さらに、強制4駆が作動するようにしてもよい。また、作土深がある一定以上の箇所を回避した経路で走行するよう構成されてもよい。
【0132】
さらに、移植機1は、ステアリングハンドルd3を自動操舵して180度機体を自動旋回する自動旋回手段が設けられてもよい。その場合、自動旋回時に、生育環境情報記録データを参照し、作土深センサs4によって検出された作土深が、生育環境情報記録データに記録された作土深よりも深い場合に全輪(4輪)とも駆動状態にするよう構成されてもよい。これにより、旋回時のスリップを良好に防止できる。また、苗の植え付け時、作土深センサs4によって検出された作土深が、所定の作土深よりも深い場合に全輪(4輪)とも駆動状態にするよう構成されてもよい。
【符号の説明】
【0133】
1 移植機
A 走行車体
a1 メインフレーム
a2 エンジン
a3 動力伝達装置
a4 前輪
a5 後輪
a6 フロアステップ
a7 リアステップ
a8 エンジンカバー
a9 操縦席
a10 ミッションケース
a11 ファイナルケース
a12 後輪ギヤケース
a13 入力軸
a14 出力軸
a15 作業動力伝動経路
a16 トルクリミッタ
a17 作業機クラッチ
a18 予備苗載置台
a19 苗取板入れ

D 操縦部
d1 フロントカバー
d2 ステアリング装置
d3 ステアリングハンドル
d4 変速操作レバー
d5 副変速レバー
d6 操作表示部
d7 入力部
d8 電光表示部
d9 液晶表示部
d10 音声出力部

B 作業装置
b1 苗植付部
b2 昇降機構
b3 リンクベースフレーム
b4 平行リンク機構
b5 昇降シリンダ
b6 植付伝動軸
b7 植付伝動ケース
b8 苗取出案内枠
b9 苗取出口
b10 苗載台
b11 苗植付装置
b12 仕切突条部
b13 苗送りベルト
b14 苗植付爪
b15 分岐伝動部
b16 植付用部分クラッチ
b17 チェーン
b18 苗送り駆動カム
b19 苗送りアーム
b20 回転軸
b21 リンク
b22 苗送り用部分クラッチ
b23 苗送り駆動ローラ

C 制御装置

G 株間調節機構
g1 第1株間変速部
g2 第2株間変速部
g3 第1変速ロッド
g4 第1シフタ
g5 第1変速ギヤ
g6 第2変速ロッド
g7 第2シフタ
g8 第2変速ギヤ

H 施肥量調節機構
h1 施肥装置
h2 肥料ホッパー
h3 繰出部
h4 施肥ホース
h5 繰出回動シャフト
h6 ボールナット
h7 ボールナット保持プレート
h8 揺動支点ピン
h9 ガイド用長孔
h10 揺動アーム
h11 一方向クラッチ機構
h12 揺動伝動アーム

J 植付深さ調節機構
j1 センターフロート
j2 サイドフロート

K 苗取量調節機構
k1 苗取量調節レバー
k2 自動操作部
k3 スライド孔
k4 スライドピン

s1 高さ検出センサ
s2 迎角制御センサ
s3 肥沃度センサ
s4 作土深センサ
s5 土壌温度センサ
s6 ポジションセンサ

AC1 苗取量アクチュエータ
AC2 第1株間アクチュエータ
AC3 第2株間アクチュエータ
AC4 施肥量調節モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15