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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】鏡及び鏡の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47G 1/00 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
A47G1/00 C
A47G1/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023070841
(22)【出願日】2023-04-24
【審査請求日】2023-04-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522501786
【氏名又は名称】Chikiina合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】関口 祐介
(72)【発明者】
【氏名】関口 理恵
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2005-0054098(KR,A)
【文献】特開平02-189109(JP,A)
【文献】実開昭54-007792(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0258159(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一層と、第二層と、を重ねてなる鏡であって、
前記第一層は、可視光を透過する領域である第一透過部と、前記第一透過部と異なる領域において、可視光の透過を制限する第一不透過部とを同一面上に有し、
前記第一不透過部は、可視光を反射する第一反射部を含み、
前記第二層は、可視光を反射する領域である第二反射部と、前記第二反射部と異なる領域において、可視光の反射を制限する第二不反射部とを同一面上に有し、
前記第一透過部の真後ろに、前記第二反射部が位置するように固定する固定手段を有する鏡。
【請求項2】
前記第二不反射部は、可視光を透過する第二透過部を含む請求項1に記載の鏡。
【請求項3】
前記第一層は、透明な板材である第一板の上に設けられ、
前記第二層は、透明な板材である第二板の上に設けられ、
前記固定手段は、前記第一板の後方に前記第二板を保持するフレーム部である請求項1又は2に記載の鏡。
【請求項4】
前記フレーム部は、前記第二板を後方から照らす照明板をさらに保持する請求項3に記載の鏡。
【請求項5】
第一層と、第二層と、を重ねてなり、
前記第一層は、可視光を透過する領域である第一透過部と、前記第一透過部と異なる領域において、可視光の透過を制限する第一不透過部とを同一面上に有し、
前記第一不透過部は、可視光を反射する第一反射部を含み、
前記第二層は、可視光を反射する領域である第二反射部と、前記第二反射部と異なる領域において、可視光の反射を制限する第二不反射部とを同一面上に有し、
前記第一透過部の真後ろに、前記第二反射部が位置するように固定する固定手段を有する鏡の製造方法であって、
一面を鏡面とした前記第一層の一部を切削して前記第一透過部を形成する第一切削工程を含む鏡の製造方法。
【請求項6】
前記第一切削工程は、情報処理装置と、切削加工を行うCNC装置とによって行い、
前記情報処理装置にデザインデータを取得させるデータ取得工程と、
取得した前記デザインデータの明度に基づき、前記CNC装置が切削を行う切削領域を決定する切削範囲決定工程をさらに含み、
前記第一切削工程は、前記切削領域で前記第一層の切削を行う請求項5に記載の鏡の製造方法。
【請求項7】
前記切削領域は、前記デザインデータにおける明度が閾値以下の全ての領域である請求項6に記載の鏡の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たな意匠性を有する鏡及びその鏡の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記念日等の贈呈品として、鏡を送ることはよく行われている。この際、非特許文献1のように、送る対象が喜ぶ文字や写真などのレリーフ加工を鏡に行うことによれば、実用性のある贈呈品として価値が高いものとなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】株式会社ギフトモール、[名入れ・写真彫刻]ミラーレリーフ(盾) ブロンズ Mサイズ(125×176mm)、ページ全体、[online]、掲載日不明、7-Colors 鶴岡ガラスアート工房、[2023年4月18日検索]、インターネット<URL:https://giftmall.co.jp/giftAdklz6/?gclid=CjwKCAjw5pShBhB_EiwAvmnNV4PZTtVRIhcjcEyduLqHr_5yKGpE183Fjm3xXv0AYURUTJLhQi2fzRoCyu8QAvD_BwE&gsf_pcid=911021%3A0%3A0>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、非特許文献1のような鏡において、レリーフが施される部分は鏡面が削られるため、その部分では光が反射されず鏡として作用しない。また、鏡にレリーフ加工を行うという都合上、反射する部分と透過する部分で二値化されるため、濃淡を表現しにくく、表現の幅が狭くなってしまうことに課題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、鏡としての使用感をさらに向上させ、表現の幅をさらに広げられる加工付きの鏡を提供すること、また容易にそのような鏡を製造する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、第一層と、第二層と、を有する鏡であって、前記第一層は、可視光を透過する第一透過部と、可視光の透過を制限する第一不透過部とを同一面上に有し、前記第一不透過部は、可視光を反射する第一鏡面部を含み、前記第二層は、可視光を反射する第二鏡面部と、可視光の反射を制限する第二不反射部とを同一面上に有し、前記第一透過部の真後ろに、前記第二鏡面部が位置するように固定する固定手段を有する。
これにより、贈呈品としての用途に適しながらも、反射可能な領域を拡げ、鏡としての使用感をさらに向上させ、表現の幅をさらに広げられる加工付きの鏡を提供することができる。
【0007】
好ましくは、前記第二不反射部は、可視光を透過する第二透過部を含む。
これにより、第一反射部や第二反射部の境界を強調し、意匠性の高い鏡を提供できるようになる。
【0008】
好ましくは、前記第一層は、透明な板材である第一板の上に設けられ、前記第二層は、透明な板材である第二板の上に設けられ、前記固定手段は、前記第一板の後方に前記第二板を保持するフレーム部である。
これにより、容易に第一層と第二層の順番を容易に変更することができるため、使用者は一の物品で様々な意匠性を楽しめるようになる。
【0009】
好ましくは、前記フレーム部は、前記第二板を後方から照らす照明板をさらに保持する。
照明板が後方から第一板及び第二板を照らすことにより、反射部と透過部の境界を強調して、意匠性を向上させることができる。
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、第一層と、第二層と、を有する鏡であって、前記第一層は、可視光を反射する第一鏡面部と、可視光を透過する第一透過部と、を同一面上に有し、前記第二層は、可視光を反射する第二鏡面部と、可視光を透過する第二透過部とを同一面上に有し、前記第一透過部の下に、前記第二鏡面部が位置するように固定されている鏡の製造方法であって、一面を鏡面とした前記第一板の一部を切削して前記第一透過部を形成する第一板切削工程と、一面を鏡面とした前記第二板の一部を切削して前記第二透過部を形成する第二板切削工程と、を含む。
これにより、贈呈品としての用途に適しながらも、反射可能な領域を拡げ鏡としての使用感をさらに向上させ、表現の幅をさらに広げられる加工付きの鏡を容易に提供することができる。
【0011】
好ましくは、前記第一切削工程及び前記第二切削工程は、情報処理装置と、切削加工を行うCNC装置とによって行い、前記情報処理装置にデザインデータを取得させるデータ取得工程と、取得した画像データの明度に基づき、CNC装置が切削を行う切削領域を決定する切削範囲決定工程をさらに含み、前記第一板切削工程は、前記切削領域で前記第一板の切削を行い、前記第二板切削工程は、前記第一板の切削領域と異なる領域で前記第二板の切削を行う。
これにより、所望のデザインデータを基にして簡単に鏡の製作ができるようになる。
【0012】
好ましくは、前記切削領域は、前記第一板の切削をする領域である第一切削領域を有し、前記第一切削領域は、前記デザインデータにおける明度が閾値以下の全ての領域である。
これにより、所望のデザインデータが浮かび上がるような意匠を有する鏡を簡単に製作できる。
【発明の効果】
【0013】
上記課題を解決する本発明は、鏡としての利便性をさらに向上させ、表現の幅をさらに広げられる加工付きの鏡を提供することができる。また、そのような鏡を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一の実施形態に係る、鏡の断面模式図である。
図2】本発明の第一の実施形態に係る、第一層及び第二層の正面図である。
図3】本発明の第一の実施形態に係る、鏡の分解斜視図である。
図4】本発明の第一の実施形態に係る、製作例の写真である。
図5】本発明の第一の実施形態に係る、製造方法のフローチャートである。
図6】本発明の第二の実施形態に係る、鏡の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて、本発明の各実施形態に係る鏡Xについて説明する。説明は、実施形態の構成、実施の方法、他の実施例の順に詳述する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。また、出願書類中の「略」は、その後に続く形状に面取りや丸め加工がなされていること、また形状を構成する要素がその構成の目的を阻害しない範囲内で変形や長さ変更されているものを含むことを意味する概念である。
また、本明細書において特に示した場合を除き、第一層1が外側を向く方向を「前」として説明を行う。
【0016】
≪第一の実施形態≫
本発明に係る鏡Xは、図1に示すように、第一層1と、第二層2と、を重ねてなり、第二層2の前に第一層1を重ねた状態で固定するための固定手段3を有する鏡である。
【0017】
第一層1は、第一板1Aの表面のうち、後面に設けられており、可視光を透過する第一透過部11と、可視光の透過を制限する第一不透過部12と、第一板1Aの周縁を取り囲むように設けられる第一周縁部13と、を同一面上に有する。
【0018】
第二層2は、第二板2Aの表面のうち、後面に設けられており、可視光の反射を制限する第二不反射部21と、可視光を反射する第二反射部22と、第二板2Aの周縁を取り囲むように設けられる第二周縁部23と、を同一面上に有する。
【0019】
第一板1A及び第二板2Aは、第一層1における第一透過部11の真後ろに第二反射部22が位置するように、固定手段3によって固定されていることによって、第一層1を上から見たときに第二反射部22が視認できるようにしている。
【0020】
また、第一板1A及び第二板2Aは、略直方体形状の透明なガラス板であって、形状と大きさが略同一に設けられている。ガラス板の色は、無色透明であることが好ましいが、色ガラスを用いることによって、さらに意匠性を高めていてもよい。
【0021】
第一透過部11は、第一層1において少なくとも前面から入射する可視光を透過可能に設ける部分である。実施形態においては第一不透過部12の間で、第一不透過部12が切削されて設けられる空隙の部分であるが、透明なコーティング剤を塗布することによって、第一不透過部12の側部を保護することとしてもよい。
【0022】
第一不透過部12は、第一層1において少なくとも第一透過部11よりも可視光の透過に制限を設ける部分である。実施形態において、第一不透過部12は、前面から入射する可視光を反射する第一反射部121である。これによって第二反射部22と併せて可視光を反射する面積を増やし、鏡としての使用性を高めることができる。なお、第一不透過部12は、インク等を塗布することによって不透過にしてもよく、第二反射部22と組み合わせる構成としてもよい。
【0023】
第一周縁部13は、第一層1において周縁を取り囲むように設けられる部分であって、実施形態においては、第一反射部121と同様に、前面から入射する可視光を反射できるように設けられている。
【0024】
第二不反射部21は、第二層2において少なくとも第二反射部22よりも可視光の反射を制限するように設ける部分である。実施形態においては、前面から入射する可視光を透過するように設けられている第二透過部211である。第二透過部211は、第二反射部22が切削されることで設けられる空隙の部分であるが、透明なコーティング剤を塗布することによって、第二反射部22の側部を保護することとしてもよい。第二透過部211に透過性を持たせることにより、第一反射部121及び第二反射部22の反射性を際立たせ、鏡Xの意匠性を高めることができる。また、第二板2Aの後方に設ける背景の変更することにより全体の色味を調整することができる。
なお、第二不反射部は、第一層1にインク等を塗布することによって非反射性にしてもよく、またインクと第二透過部211がある部分と組み合わせてもよい。
【0025】
第二反射部22は、第二層2において、少なくとも前面から入射する可視光を反射できるように設けられている部分である。第一反射部121に比較して、第二反射部22から反射される光は光路長が長いため、第二反射部22は第一反射部121よりも下側に暗く視認される。これにより、立体感を伴った陰影の表現ができる。
【0026】
第二周縁部23は、第二層2において周縁を取り囲むように設けられる部分であって、実施形態においては、第二反射部22と同様に、前面から入射する可視光を反射できるように設けられている。
【0027】
固定手段3は、実施形態においては第一板1A及び第二板2Aを同時に支持するフレーム部31である。
フレーム部31は、第一板1A及び第二板2Aの側面を支持するフレーム本体311と、第一板1Aを前面で保持する保持部312と、第二板2Aを後面で抑える抑え部313と、を有する。
【0028】
フレーム本体311は、内周を第一板1A及び第二板2Aと略同一形状とした枠体であって、第一板1A及び第二板2Aを同時に篏合して支持できるように設けている。
【0029】
保持部312は、フレーム本体311の前側に設けられ、内周側に延在する部材であって、第一板1Aの前面と当接して、第一板1Aの前方向の移動を規制するように保持する。
【0030】
抑え部313は、フレーム本体311の内周面と接続し、後方に向けて突出して設けられる可撓性を有する金属板状の部材である。抑え部313は、変形した状態を保持することが可能であり、フレーム本体311に第一板1A及び第二板2Aを篏合した状態でフレーム本体311の内側方向に変形することによって、第二板2Aないしその他の板体の後方向の移動を規制する。
【0031】
実施形態においては、第一層1と、第二層2と、の間に、前後方向に光を透過する透明板4が挿入して設けられている。これによって、第二反射部22から反射される光の光路長が長くなり、第二反射部22をさらに暗く見えるようにして陰影をより強く付け、また第一反射部121と第二反射部22との距離を大きくすることで、立体感をより際立たせるようにしている。
【0032】
実施形態においては、第二層2の後方に、前方に向けて光を照射する照明板5が設けられる。照明板5は、第一板1A及び第二板2Aと略同一の面の形状・大きさで設けられ、略全面で光を照射できるようにしている。照明板5は、スイッチによって点灯と消灯を自在に切り替えられ、好ましくは照度を調整することができる。
照明板5によって第二透過部211ないし第一透過部11から光が漏れ出し、第二反射部22及び第一反射部121との境界をより際立たせる。
【0033】
以下に、図2図4を参照して第一の実施形態についてさらに具体的に詳述する。図2(a)、図2(b)は、それぞれ第一層1及び第二層2を前側から見た図を表し、図3は、固定手段に固定する様子を表す模式斜視図であり、図4は第一の実施形態の一例に係る実製品の写真を表している。
【0034】
図2に示すように、第一板1Aの後面に設けられる第一層1には、所定のデザインとなるように第一透過部11と第一反射部121とが形成され、第一板1Aの周縁を取り囲むように第一周縁部13が設けられている。図面の例において第一層1は、第一周縁部13に取り囲まれる領域において、船の船体部分及び窓が第一反射部121となり、それ以外の領域全てが第一透過部11となるように形成される。
【0035】
同様に、第二板2Aの後面に設けられる第二層2には、所定のデザインとなるように第二透過部211と第二反射部22とが形成されており、第二板2Aの周縁を取り囲むように第二周縁部23が設けられている。図面の例において第二層2は、第二周縁部23に取り囲まれる領域において、船の窓を除いた施設部分及び背景の一部が第二反射部22となり、それ以外の領域全てが第二透過部211となるように形成されている。
【0036】
第一周縁部13と第二周縁部23の形状は略同一になるように設けられており、第一周縁部13は、保持部312が内周側に向けて延在する領域と当接する部位に位置することで、第一反射部121及び第一透過部11の表面を保護している。
【0037】
このように、第一反射部121と、第二反射部22は、重ね合わせることによって一つのデザインとなるように形成される。これによって絵柄に立体感が生まれ、表現の幅を拡げられる。また、第二反射部22が形成される領域は、重ねた際に第一反射部121と重複しない領域であることが好ましく、これによってより立体感を強調するとともに、反射面同士の反射を防いで鏡としての使用性を向上させることができる。
【0038】
図3に示すように、第一板1A及び第二板2Aは、透明板4を間に挟んでフレーム本体311に内挿して嵌め込みされる。このとき、固定手段3のうち抑え部313が任意に屈曲変形可能であることによって取り外しを容易にすることができ、第一板1A、第二板2A及び透明板4の順番を任意に変更して、一つの物品で様々な意匠性を創出することができる。
【0039】
図3に示すように、第二板2Aの後方には、照明板5が当接して設けられており、照明板5の後方で屈曲した抑え部313が抑えることによって、照明板5よりも前側に位置する板材をまとめて抑えている。
【0040】
実施形態において、照明板5の後方には、フレーム部31を立たせた状態で支持する立設部314が設けられている。一方、立設部314は、照明板5と略同一形状の板材であり、これを照明板5の後方に配置するようにしてもよい。
【0041】
立設部314は、一端が最後方に位置する板材と接続され、後方に向けて突出するような薄板部材であって、他端が地面と当接することでフレーム部31を立設させる。
【0042】
以下、図6を用いて、本実施形態に係る鏡Xの製造方法について詳述する。鏡Xは、所定のデザインを基に鏡を製造する製造者と、によって製造される。
【0043】
製造者は、製造のために、情報処理装置C1とCNC装置C2とを用いる。
情報処理装置C1は、ハードウェア構成として、処理部C11と、記憶部C12と、通信部C13と、を備える。情報処理装置C1において、処理部C11は、CPU等の1又は2以上のプロセッサを含み、管理プログラム、その他のアプリケーションを実行することで、動作処理全体を制御する。記憶部C12は、HDD、ROM、RAM等であって、本発明に係る管理プログラム及び、デザインデータ等、製造に使用する種々のデータを記憶する。通信部C13は、ネットワークとの通信制御を実行して、情報処理装置C1を動作させるために必要な入力や、CNC装置C2の動作に係る出力を行う。
【0044】
CNC装置C2は、情報処理装置C1からの動作信号を基に、鏡に切削加工を行う装置である。実施形態において、CNC装置C2はファイバーレーザー等のレーザー加工機であり、板材の反射面に裏側からレーザーを照射することで所定範囲を切削する機能を有する。
【0045】
まず、製造者は、データ取得工程S1として、任意のデザインデータを記憶部C12に取り込む。デザインデータは、ビットマップデータあるいはベクタデータである。デザインデータは、通信部C13を介して、ネットワークを通じたデジタルデータとして依頼者から取得することが好ましい。
【0046】
次に、製造者は、切削範囲決定工程S2として、情報処理装置C1を用いて、CNC装置C2が切削をする範囲である切削領域と、切削を行わず鏡面を保持する鏡面領域と、を決定する。切削領域は、第一板1Aの第一層1に切削をするための第一切削領域と、第二板2Aの第二層2に切削を行うための第二切削領域を含む。また、鏡面領域は、第一板1Aの第一層1において鏡面を保持する第一鏡面領域と、第二板2Aの第二層2において鏡面を保持する第二鏡面領域を含む。このとき、第一切削領域と第一鏡面領域の関係及び第二切削領域と第二鏡面領域の関係は互いに相補的な領域となる。
【0047】
切削範囲決定工程S2として、まず製造者は、デザインデータの加工処理を行う。このとき製造者はデザインデータを左右反転させ、デザインデータの明度を基にグレースケールへの変換を行う。
左右反転処理を行うことによって、裏側から切削加工を行っても、前方から見たときに反転しないデザインとすることができる。
【0048】
切削範囲決定工程S2として、製造者は切削領域を決定する。実施形態においては、加工後のデザインデータにおいて、明度が閾値以下の全ての領域を第一切削領域とし、明度が閾値以上の全ての領域を第二切削領域とする。
その後製造者は、第一切削領域と第二切削領域のデータをCNC装置C2に送信する。
【0049】
次に製造者は、第一切削工程S3として、第一層1を全て鏡面とした第一板1Aの後方からレーザーを照射し、第一切削領域に対応する領域を切削し、この領域を第一透過部11とする。
【0050】
次に製造者は、第二切削工程S4として、第二層2を全て鏡面とした第二板2Aの後方からレーザーを照射し、第二切削領域に対応する領域を切削し、この領域を第二透過部211とする。
なお、第一切削工程S3と、第二切削工程S4との順番は逆にしてもよい。
【0051】
最後に製造者は、固定工程S5として、前面から第一板1A、透明板4、第二板2A、照明板5の順番に板材を重ね、重ねた状態でフレーム本体311に嵌め込む。その後製造者は、抑え部313を内側に向けて屈曲することで複数の板をフレーム部31の内部で保持する。
【0052】
実施形態において、第一切削領域と第二鏡面領域の関係は相補的となるため、第一透過部11と第二反射部22の関係も相補的になる。これにより、第一透過部11の全面から第二反射部22が視認できるため、鏡Xの前面全てが鏡となり使用性能が向上する。
【0053】
変更例として、切削範囲決定工程S2では、明度が第一の閾値以下の部分を第一切削領域とし、第一の閾値以上又は第二の閾値以下の部分を第二切削領域としてもよい。ただし、第一の閾値の明度が第二の閾値の明度よりも大きくなるようにする。
【0054】
これによれば、デザインデータのうち、第一の明度よりも明度が大きい領域では第一層1に第一反射部121が形成され、第一の明度と第二の明度との間の明度の領域では第二層2のみに第二反射部22が形成される。また、第二の閾値の明度よりも明度が小さい領域では、第一透過部11と第二透過部211が重なり可視光が反射されずに透過する領域となる。これにより鏡Xの立体感をより強め、意匠性をさらに向上させることができる。
【0055】
また、2以上の閾値を設定する場合、第一板1Aや第二板2Aと同様の構成の板材をさらに1以上設け、それぞれの板材に対応した明度の範囲毎に切削領域を設定してもよい。このとき、全ての鏡面領域で反射する部分が相補的になるようにしてもよく、一部に重ねた板の全体を光が透過する領域を有していてもよい。これにより、さらに意匠性の高い鏡を提供できる。
【0056】
以上で述べた閾値の設定方法は一例であって、明度の代わりに彩度や色相、色成分、HEX値などの種々のパラメータを用いてもよい。また、例えば明度が第一の閾値以下の部分を第一切削領域とし、第二の閾値以下の部分を第二切削領域として、反射部同士が重なるようにしてもよい。
【0057】
なお、本発明を使用する使用者は、立設部314を後方向に広げ、フレーム部31を所望の位置に載置する。そして、鏡として本物品を使用する場合は第一反射部121及び第二反射部22に注目して目視し、記念品として本物品を使用する場合には第一透過部11に注目して目視することで、二つの見方をすることができる。
【0058】
また、使用者は照明板5を操作することによって、後面から第一板1A及び第二板2Aを照らしてもよい。これにより、透過部と反射部の境界が顕著に映り、新たな意匠性を得られる。さらに、使用者は固定手段3から第一板1A及び第二板2Aを取り外し、順番を変更してもよい。すなわち、第一板1Aを第二板2Aとし、第二板2Aを第一板1Aとして扱ってもよい。これにより一物品で様々な意匠性を楽しめる。
【0059】
《第二の実施形態》
以下、図6を用いて、第二の実施形態に係る鏡Xについて詳述する。第一の実施形態と同じ構成については同様の符号を用いて説明を省略し、一部の構成を第一の実施形態と組み合わせたものとしてもよい。
【0060】
鏡Xは、図6に示すように、第一層1と、第二層2と、を重ねてなり、第二層2の前に第一層1を重ねた状態で固定するための固定手段3を有する鏡である。また、第一層1の前面には、透明板4が設けられている。
【0061】
第一層1は、第一板1Aの表面のうち、前面に設けられており、可視光を透過する第一透過部11と、可視光を反射する第一反射部121と、第一板1Aの周縁を取り囲むように設けられる第一周縁部13と、を同一面上に有する。
【0062】
第二層2は、第二板2Aの表面のうち、前面に設けられており、可視光を透過する第二透過部211と、可視光を反射する第二反射部22と、第二板2Aの周縁を取り囲むように設けられる第二周縁部23と、を同一面上に有する。
【0063】
実施形態において第一透過部11及び第二透過部211は、それぞれ第一反射部121及び第二反射部22を覆う透明なコーティング剤である。一方、第一周縁部13と、第二周縁部23には、マスキング等によりコーティング剤の塗布を防いでもよい。
【0064】
第一周縁部13及び第二周縁部23は、第一板1A及び固定手段3と間の濡れ性が高い部材で設けていることが好ましく、第一板1Aや透過部や反射部と同じ素材で設けられていてもよい。
【0065】
固定手段3は、接着剤である接着部32であり、第一周縁部13及び第二周縁部23の前側に塗布されている。すなわち、固定手段3は第一周縁部13と透明板4とを接続し、また、第二周縁部23と第一板1Aとを接続して固定する。
【0066】
実施形態では、第一板1Aや第二板2Aや透明板4は、可撓性を有する薄板として設けてもよい。この場合、第二板2Aの後面には平面の基材と接着する接着部32がさらに設けられていることが好ましく、これにより、厚紙や壁などに鏡Xを貼り付け可能となる。
【符号の説明】
【0067】
X 鏡
1 第一層
11 第一透過部
12 第一不透過部
121 第一反射部
13 第一周縁部
1A 第一板
2 第二層
21 第二不反射部
211 第二透過部
22 第二反射部
23 第二周縁部
2A 第二板
3 固定手段
31 フレーム部
311 フレーム本体
312 保持部
313 抑え部
314 立設部
32 接着部
4 透明板
5 照明板
C1 情報処理装置
C2 CNC装置
【要約】
【課題】
鏡としての使用感をさらに向上させ、表現の幅をさらに広げられる加工付きの鏡を提供すること、また容易にそのような鏡を製造する方法の提供を目的とする。
【解決手段】
上記課題を解決する本願発明は、第一層1と、第二層2と、を重ねてなる鏡Xであって、第一層1は、可視光を透過する第一透過部11と、可視光の透過を制限する第一不透過部12とを同一面上に有し、第一不透過部12は、可視光を反射する第一鏡面部121を含み、第二層2は、可視光を反射する第二鏡面部22と、可視光の反射を制限する第二不反射部21とを同一面上に有し、第一透過部11の真後ろに、第二鏡面部22が位置するように固定する固定手段3を有する鏡である。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6