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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】穿孔装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/12 20060101AFI20231218BHJP
   B26F 1/00 20060101ALI20231218BHJP
   B26D 7/08 20060101ALI20231218BHJP
   B26D 7/01 20060101ALI20231218BHJP
   H02G 3/02 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
H02G3/12
B26F1/00 Z
B26D7/08 A
B26D7/01 Z
H02G3/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020026552
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021035325
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2019149607
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500235777
【氏名又は名称】株式会社マーキス
(74)【代理人】
【識別番号】100090284
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 常雄
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 好徳
(72)【発明者】
【氏名】西田 伊織
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-094286(JP,A)
【文献】特開2010-221303(JP,A)
【文献】特開平10-058393(JP,A)
【文献】特開平10-239447(JP,A)
【文献】特開平09-225930(JP,A)
【文献】特開2000-292549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/00-3/04
3/08-3/20
B26D 7/00-11/00
B26F 1/00-3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁材(80)の裏側に配置される配線ボックス(82)を非接触で探知する探知手段(50UR,50UL,50D,150UR,150UL,150DR,150DL)と、
当該探知手段による探知後の穿孔時に当該壁材(80)に沿う移動を規制する移動規制手段(44A,44B,46A,46B,48A,48B,244A,244B,248A,248B)と、
当該配線ボックス(82)にアクセス可能な矩形の孔を当該壁材(80)に開ける穿孔手段(20,22,28,32,34,36,38,40)
とを有する穿孔装置であって、
当該配線ボックス(82)は、当該壁材(80)に向かう面の上側に第1の金属板(84)を、下側に第2の金属板(86)を有し、
当該探知手段は、当該第1及び第2の金属板(84,86)を同時に検出自在な複数の金属センサ(50UR,50UL,50D,150UR,150UL,150DR,150DL)と、当該金属センサを前端部に保持するセンサ保持手段(52)と、当該センサ保持手段(52)を当該壁材(80)に向けて常時付勢する第1の付勢手段(54)と、当該配線ボックス(82)の正面位置にあることを判定する判定手段(64,66,68)と、当該判定手段の判定結果を作業者に通知する通知手段(60C,56C)を具備し、
当該移動規制手段は、当該壁材に突き刺し可能な先端を有する2以上の穿刺手段(44A,44B,244A,244B)と、当該2以上の穿刺手段を当該壁材(80)に向けて常時付勢する第2の付勢手段(48A,48B,248A,248B)とを具備し、
当該穿孔手段は、当該壁材を先端面で切削可能な、矩形の4辺に配置される4枚の切削板(34,36,38,40)と、当該4枚の切削板を支持する切削板支持手段(28)と、当該切削板支持手段を介して当該4枚の切削板を振動させる振動モータ(20,22,32)とを具備する
ことを特徴とする穿孔装置。
【請求項2】
探知前の状態で、当該センサ保持手段の前端が、当該穿刺手段の当該先端より当該壁材(80)に近い位置に位置し、当該穿刺手段の当該先端が当該4枚の切削板の当該先端面より当該壁材(80)に近い位置に位置することを特徴とする請求項に記載の穿孔装置。
【請求項3】
当該穿刺手段(44A,44B,244A,244B)は、当該壁材(80)に食い込み可能な、1以上の針状ないし錐状に形成された先端を有することを特徴とする請求項またはに記載の穿孔装置。
【請求項4】
当該探知手段は、
当該第1及び第2の金属板の一方の横幅に相当する距離だけ横方向に離れて配置される第1及び第2の金属センサ(50UR,50UL)と、
当該第1及び第2の金属板の他方の横幅方向の中央に相当する位置に配置される第3の金属センサであって、当該第1の金属板と当該第2の金属板との間の距離に相当する距離だけ、当該第1及び第2の金属センサから上下方向に離れて配置される第3の金属センサ(50D)
とを具備し、
当該判定手段は、当該第1、第2及び第3の金属センサが金属検出状態を同時に示していることを判定する
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の穿孔装置。
【請求項5】
当該判定手段が、
当該第1及び第2の金属センサのセンサ出力を加算する加算手段(64)と、
当該第3の金属センサの出力を金属検出閾値TH1と比較することにより、当該第3の金属センサが当該金属検出状態か否かを判定する第1の比較手段(62)と、
当該加算手段の出力を中央判定閾値TH2と比較することにより、当該第1及び第2の金属センサが同時に当該金属検出状態にあるか否かを判定する第2の比較手段(66)と、
当該第1及び第2の比較手段の比較結果に従い、当該第1、第2及び第3の金属センサが同時に当該金属検出状態にある場合に、当該通知手段(60C,56C)に当該配線ボックスの正面の探知をユーザに通知させる制御手段(68)
とを有することを特徴とする請求項に記載の穿孔装置。
【請求項6】
当該判定手段が、
当該第1及び第2の金属センサのセンサ出力を加算する加算手段(64)と、
当該第1、第2及び第3の金属センサの出力を金属検出閾値TH1と比較することにより、当該第1、第2及び第3の金属センサのそれぞれが当該金属検出状態か否かを判定する比較手段と、
当該比較手段の比較結果に従い、当該第1、第2及び第3の金属センサが同時に当該金属検出状態にある場合に、前記通知手段(60C,56C)に当該配線ボックスの正面の探知をユーザに通知させる制御手段(68)
とを有することを特徴とする請求項に記載の穿孔装置。
【請求項7】
当該制御手段(68)は、当該第1、第2及び第3の金属センサが同時に金属検出状態にある場合に、当該通知手段(60C,56C)に当該加算手段(64)の出力に応じた強度で通知を出力させる
ことを特徴とする請求項またはに記載の穿孔装置。
【請求項8】
当該通知手段は、当該第1、第2及び第3の金属センサ(50UR,50UL,50D)のセンサ出力強度を表示する第1、第2及び第3の表示手段(56UR,56UL,56D)を有することを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の穿孔装置。
【請求項9】
当該探知手段は、
当該第1及び第2の金属板の一方の横幅に相当する距離だけ横方向に離れて配置される第1及び第2の金属センサ(150UR,150UL)と、
当該第1及び第2の金属板の他方の横幅に相当する距離だけ横方向に離れて配置される第3及び第4の金属センサ(150DR,150DL)であって、当該第1の金属板と当該第2の金属板との間の距離に相当する距離だけ、当該第1及び第2の金属センサから上下方向に離れて配置される第3及び第4の金属センサ(150DR,150DL)
とを具備し、
当該判定手段(164U,164D,166U,166D,168)は、当該第1、第2、第3及び第4の金属センサが金属検出状態を同時に示していることを判定する
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の穿孔装置。
【請求項10】
当該判定手段が、
当該第1及び第2の金属センサのセンサ出力を加算する第1の加算手段(164U)と、
当該第3及び第4の金属センサのセンサ出力を加算する第2の加算手段(164D)と、
当該第1及び第2の加算手段の出力を加算する第3の加算手段(165)と、
当該第1の加算手段の出力を閾値TH2と比較することにより、当該第1及び第2の金属センサの両方が当該金属検出状態にあるか否かを判定する第1の比較手段(166U)と、
当該第2の加算手段の出力を閾値TH2と比較することにより、当該第3及び第4の金属センサの両方が当該金属検出状態にあるか否かを判定する第2の比較手段(166D)と、
当該第1及び第2の比較手段の比較結果に従い、当該第1、第2、第3及び第4の金属センサが同時に当該金属検出状態にある場合に、当該通知手段(160C,156C)に当該配線ボックスの正面の探知をユーザに通知させる制御手段(168)
とを有することを特徴とする請求項に記載の穿孔装置。
【請求項11】
当該制御手段(168)は、当該第1、第2、第3及び第4の金属センサが同時に金属検出状態にある場合に、当該通知手段(160C,156C)に当該第3の加算手段(165)の出力に応じた強度で通知を出力させる
ことを特徴とする請求項10に記載の穿孔装置。
【請求項12】
当該判定手段が、
当該第1、第2、第3及び第4の金属センサのセンサ出力を加算する加算手段(164U,164D,165)と、
当該第1、第2、第3及び第4の金属センサの出力を金属検出閾値TH1と比較することにより、当該第1、第2、第3及び第4の金属センサのそれぞれが当該金属検出状態か否かを判定する比較手段と、
当該比較手段の比較結果に従い、当該第1、第2、第3及び第4の金属センサが同時に当該金属検出状態にある場合に、当該通知手段(160C,156C)に当該配線ボックスの正面の探知をユーザに通知させる制御手段(168)
とを有することを特徴とする請求項に記載の穿孔装置。
【請求項13】
当該制御手段(168)は、当該第1、第2、第3及び第4の金属センサが同時に金属検出状態にある場合に、当該通知手段(160C,156C)に当該加算手段(165)の出力に応じた強度で通知を出力させる
ことを特徴とする請求項12に記載の穿孔装置。
【請求項14】
当該通知手段は、当該第1、第2、第3及び第4の金属センサ(150UR,150UL,150DR,150DL)のセンサ出力強度を表示する第1、第2、第3及び第4の通知手段(156UR,156UL,156DR,156DL)を有することを特徴とする請求項から13のいずれか1項に記載の穿孔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁材の裏側に配置される配線ボックスに合わせて当該壁材に四角形状の孔を開ける穿孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅やビルなどにおいて、石膏ボード等の壁材の裏側には、電源線、通信線及び電話線等を配線しておくための配線ボックスが、壁材の施工前に設置されている。壁材の施工後に、壁材の裏側にある配線ボックスを壁材の表側から非接触で探知出来るようにする手段として、前面側(壁材側)の上下にアルミ箔等の金属板7、7を配置する構成が知られている(特許文献1)。
【0003】
この種の配線ボックスを壁材の表側から探知する従来の探知装置は、壁材に当接する前面の上部と下部に、配線ボックスに付加される金属板の間隔に相当する距離離れて金属センサを配置した構成からなる。ユーザは、この探知装置を壁材に密着させるようにして壁材に沿って上下及び左右に移動させる。その移動の間に、両金属センサが近くの金属を検知すると、探知装置は、発光素子及び/または発音素子で発光/発音する。
【0004】
作業者は、この種の探知装置で壁材裏側の配線ボックスを探知した後、壁材表面に配線ボックスの位置に印を付け、この印を目処に穿孔装置を壁材面に押し付けて、電源線または信号線を通すための開口を穿孔する。
【0005】
穿孔装置として、円筒刃で円形の孔を開ける構成や、小判形(長円形状)の孔を開ける構成が知られている(特許文献2)。配線ボックス内の上下には、壁材表面の装飾パネル板を嵌め込む金属製保持板を配線ボックスにネジ止めするためのネジ穴が設けられている。従って、壁材に開けたい孔(開口)は通常、配線ボックスの上下のネジ穴を見通せるようにする縦長の長方形となる。前者の構成の穿孔装置では、円形孔の一部が重なるように穿孔装置の位置を変えて、合計2回、穿孔作業をすることになり、後者の構成の穿孔装置では、1回の穿孔作業で済む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-143208号公報
【文献】特開2015-186289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来は、作業者は探知装置と穿孔装置を別々に用意し、別々に操作しなければならない。すなわち、探知作業と穿孔作業を一度に行えないので、作業効率が悪い。
【0008】
探知装置から穿孔装置に持ち替えること無しに探知から穿孔に移行できれば、作業効率が大幅に改善される。また、穿孔作業自体も、2つの円形孔を部分的に重複して開けるような2回の作業を必要とすると、効率が悪く、1回の作業で済むのが好ましい。更には、壁材に開ける孔の形状もシンプルな矩形であると、その後の配線作業が安全で容易になる。
【0009】
本発明は、探知作業と穿孔作業を一度に行える穿孔装置を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る穿孔装置は、壁材の裏側に配置される配線ボックスを非接触で探知する探知手段と、当該探知手段による探知後の穿孔時に当該壁材に沿う移動を規制する移動規制手段と、当該配線ボックスにアクセス可能な矩形の孔を当該壁材に開ける穿孔手段とを有する穿孔装置であって、当該配線ボックスは、当該壁材に向かう面の上側に第1の金属板を、下側に第2の金属板を有し、当該探知手段は、当該第1及び第2の金属板を同時に検出自在な複数の金属センサと、当該金属センサを前端部に保持するセンサ保持手段と、当該センサ保持手段を当該壁材に向けて常時付勢する第1の付勢手段と、当該配線ボックスの正面位置にあることを判定する判定手段と、当該判定手段の判定結果を作業者に通知する通知手段を具備し、当該移動規制手段は、当該壁材に突き刺し可能な先端を有する2以上の穿刺手段と、当該2以上の穿刺手段を当該壁材に向けて常時付勢する第2の付勢手段とを具備し、当該穿孔手段は、当該壁材を先端面で切削可能な、矩形の4辺に配置される4枚の切削板と、当該4枚の切削板を支持する切削板支持手段と、当該切削板支持手段を介して当該4枚の切削板を振動させる振動モータとを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、壁材の裏側に配置される配線ボックスを探知する作業と、配線ボックスにアクセスするため孔を開ける穿孔作業を一連で実行でき、作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例の側面図である。
図2】本実施例の探知穿孔ユニットの正面図である。
図3図2のA-A線で見た探知穿孔ユニットの中央断面図である。
図4】探知穿孔ユニットの平面図である。
図5】本実施例の処理回路構成例を示す概略構成ブロック図である。
図6】金属センサ出力の変化例である。
図7】探知時の、探知穿孔ユニットと配線ボックスの位置関係を示す断面図である。
図8】本実施例の金属センサ出力波形例と合成波形例である。
図9】探知穿孔ユニットを穿刺棒で壁材に係止した状態の縦断面図である。
図10】本実施例における壁材の切削の様子を示す模式図である。
図11】穿孔完了後の探知穿孔ユニットの縦断面図である。
図12】4つの金属センサを配置した探知穿孔ユニットの変更例の正面図である。
図13】実施例2の金属センサ出力の処理回路例の概略構成ブロック図である。
図14】移動規制手段の変更例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明に係る穿孔装置の一実施例の側面図である。本実施例の穿孔装置10は、作業者が手に持つ把持部12と、当該把持部12の先端に装着される探知穿孔ユニット14とからなる。把持部12の底部には電力源としてのバッテリ16が着脱可能である。把持部12の前側の人差指がかかる部分には、操作手段としてのレバー18が設けられている。詳細は後述するが、作業者がレバー18を把持部12に押し込むことで、探知穿孔ユニット14が穿孔動作を開始する。
【0015】
探知穿孔ユニット14は、壁材80の裏側に予め固定的に配置される配線ボックス82を非接触で探知する機能と、当該配線ボックス82にアクセスするための長方形の開口を壁材80に空ける機能を有する。壁材80は例えば、石膏ボードからなる。配線ボックス82の壁材80に対面する面の上側と下側のそれぞれに、壁材80を介して非接触で配線ボックス82を探知するためのアルミ箔84,86が付着されている。
【0016】
図2は、探知穿孔ユニット14の正面図を示し、図3は、図2のA?A線から見た探知穿孔ユニット14の断面図を示し、図4は、探知穿孔ユニット14の平面図を示す。
【0017】
探知穿孔ユニット14は、図1に示すように、把持部12に入り込む位置にモータ20を有する。モータ20の回転軸22が、探知穿孔ユニット14の主要機構部を収納する外装24に軸受け26を介して回転可能に支持されている。長方形の切削板支持板28の中央に軸受け30が固定され、回転軸22の先端部が、切削板支持板28の軸受け30により回転可能に取り付けられている。回転軸22の軸受け26,30の間には、偏心ウエイト32が固定されている。偏心ウエイト32により、回転軸22の軸心は回転速度に応じて横振れする。すなわち、モータ20は偏心ウエイト32により、回転軸が偏心して回転する振動モータとして機能する。偏心ウエイト32に相当する部材を内蔵する振動モータをモータ20として採用する場合、偏心ウエイト32は不要となる。
【0018】
切削板支持板28の4辺を構成する各側面には、切削板34,36,38,40がネジ止めされている。各切削板34,36,38,40は、前側の先端面から切削板支持板28に向かって切り込まれたスリット34A,36A,38A,40Aにより、部分的に複数の切削片に分離されている。図示する実施例では、短辺に位置する切削板34,38はスリット34A,38Aにより4つの切削片に分離され、長辺に位置する切削板36,40はスリット36A,40Aにより6つの切削片に分離されている。切削板34,36,38,40は、先端面を垂直にカットした金属板からなり、モータ20の回転と偏心ウエイト32による回転軸22の微小に横振れする回転により、壁材80を容易に且つ狭い切削幅で切削できる。これは、鋸刃による切断に比べ、切り屑の減少に繋がる。切削板34,36,38,40をスリット34A,36A,38A,40Aにより複数の切削片に分離しているので、個々の切削片が独立に横振れ可能になり、切削能力が向上する。これもまた、切り屑の減少に繋がる。
【0019】
切削板支持板28には、切削板支持板28の長辺方向(短辺に垂直な方向)で軸受け30の両側に開口42A,42Bを開けてある。開口42A,42Bのそれぞれに、配線ボックス82の探知後に穿孔装置10を壁材80に係止または固定する手段としての穿刺棒44A,44Bが貫通する。穿刺棒44A,44Bの先端は、壁材80に食い込める程度に錐状に尖った形状に形成されている。穿刺棒44A,44Bは、中空円筒の支持柱46A,46Bにより案内されて前後に移動可能であり、支持柱46A,46B内の圧縮バネ48A,48Bにより前方(の壁材80に向かう方向)に常時付勢されている。支持柱46A,46Bの下側は外装24にネジ込み等の手段で固定されている。穿刺棒44A,44Bは根元部分を太くしてあり、その太径の根元部分が、支持柱46A,46Bの、穿刺棒44A,44Bの根元部分以外の細径部分を挿通する開口の肩部に突き当たることにより、支持柱46A,46Bから抜けないように支持柱46A,46Bにより支持されている。
【0020】
穿刺棒44A,44Bは、先端に何も触れていない解放状態では、図3に示すように、穿刺棒44A,44Bの先端が切削板34,36,38,40の先端面より所定距離、前に位置する突出位置にある。他方、穿刺棒44A,44Bの先端が壁材80に圧縮バネ48A,48Bの伸長力に抗する所定以上の力で押し付けられているときには、穿刺棒44A,44Bの先端が壁材80に刺さった状態で切削板34,36,38,40の先端面より後退した引込み位置まで移動可能である。
【0021】
外装24は切削板34,36,38,40の中間から下部分を覆うように外縁部分で立ち上がって周壁を形成しており、外装24のこの周壁部分(切削板34,36,38,40)を周回する部分)と切削板34,36,38,40との間に、中空角柱形状のセンサ保持枠52が前後移動可能に配置されている。図2に示すように、センサ保持枠52の前端面の上側左右に2つの金属センサ50UR,50UL、下側中央に1つの金属センサ50Dがそれぞれ配置されている。センサ保持枠52の、切削板36,40に対面する位置には、回転軸22の回転に伴う切削板支持板28の回転運動自体を抑制する突起部分52a,52aを切削板36,40に沿って形成してある。すなわち、先端面が切削板36,40に平行でごく近くに位置する突起部分52a,52aをセンサ保持枠52に設けてある。
【0022】
金属センサ50UR,50UL,50Dは、探知穿孔ユニット14が配線ボックス82に正しく対面するときに、金属センサ50UR,50ULが配線ボックス80の上側のアルミ箔84を検出し、金属センサ50Dが下側のアルミ箔86を検出する位置関係で配置されている。すなわち、金属センサ50UR,50ULの間隔は、アルミ箔84,86の横幅相当であり、金属センサ50UR,50ULの中間と金属センサ50Dとの間の距離は、アルミ箔84,86間の距離相当である。金属センサ50UR,50UL,50Dは、金属センサ50Dが頂点となり、金属センサ50UR,50ULを底辺となる二等辺三角形を構成する位置関係で配置される。
【0023】
図3に示すように、センサ保持枠52の下端と外装24の内面との間には、センサ保持枠52を常時、前方向に付勢する複数の圧縮バネ54が配置されている。センサ保持枠52は、これらの圧縮バネ54により前方向に常時、付勢されている。圧縮バネ54は例えば、センサ保持枠52の4隅に配置される。センサ保持枠52が外装24から脱落しないように、センサ保持枠52の下側部分で外側に厚みをつけ、他方、外装24の立ち上がった部分の先端部分を内側に厚みをつけてある。これらの肩部分が相互に係合することにより、センサ保持枠52は、この位置以上に前方向に移動出来なくなる。この状態で、図3に示すように、センサ保持枠52の先端面が穿刺棒44A,44Bの先端よりも前に位置するように、センサ保持枠52の下部分の外面形状と、外装24の周壁部分の内面形状が設計されている。
【0024】
図4に示すように、探知穿孔ユニット14の上面には、壁材80の裏側に配置される配線ボックス82のアルミ箔84,86の探知状況を作業者に通知する表示手段としてLED(発光ダイオード)56UR,56UL,56C,56Dを配置してある。LED56UR,56UL,56Dは、対応する金属センサ50UR,50UL,50Dと同様の位置関係で配置され、LED56Cが、LED56UR,56ULの中間に配置されている。
【0025】
上右LED56URは、金属センサ50URが壁材80裏側のアルミ箔等の金属を検出したときに点灯する。上左LED56ULは、金属センサ50ULが壁材80裏側のアルミ箔等の金属を検出したときに点灯する。下LED56Dは、金属センサ50Dが壁材80裏側のアルミ箔等の金属を検出したときに点灯する。中央LED56Cは、金属センサ50UR,50UL,が同時にアルミ箔等の金属を検出したときに点灯する。配線ボックス82が探知穿孔ユニット14の正面に位置するとき、LED56C,56Dが同時に点灯する。金属センサ50UR,50ULの間隔よりアルミ箔84の横幅が大きければ、LED56UR,56ULも点灯するが、金属センサ50UR,50ULの間隔がアルミ箔84の横幅より小さいと、LED56UR,56ULが点灯しないこともありうる。
【0026】
図5は、本実施例の処理回路の概略構成ブロック図である。図5に示す回路は、金属センサ50UR,50UL,50Dのセンサ出力を処理する処理回路と、モータ20を駆動する回路からなる。
【0027】
図6は、金属センサ50UR,50UL,50Dをアルミ箔84,86と平行に移動させたときの、金属センサ50UR,50UL,50Dの出力特性図を示す。図6で、横軸は、水平方向(または垂直方向)の位置を示し、縦軸は、金属センサ50UR,50UL,50Dの出力を示す。ここでは、理解を容易にするために、金属センサ50UR,50UL,50Dは、金属を検出しないときに低レベル(図6ではゼロ値)で、金属に近くなるほどに高レベルになるセンサ出力特性を有するものとする。図6で、金属検出時のセンサ出力値Vmは、一般的には、金属センサ50UR,50UL,50Dと探知対象のアルミ箔84,86との距離、及び壁材80の素材に依存する。
【0028】
穿孔装置10により配線ボックス82を探知する動作を説明する。図7は、探知時に、探知穿孔ユニット14を壁材80に押し当てた状態の縦断面図を示す。
【0029】
図7に示すように、探知穿孔ユニット14を配線ボックス82の近辺で、穿刺棒44A,44Bの先端が壁材80に接しない程度に壁材80に軽く押し当て、壁材80に沿って上下左右に動かす。例えば、配線ボックス82が存在すると予想される近辺で探知穿孔ユニット14を壁材80に沿って上下に移動させ、LED56UR,56ULの一方が点灯し、かつ、LED56Dが点灯する位置を探す。この状態で、探知穿孔ユニット14は配線ボックス82に対して上下方向では正しい位置にあるが、水平方向(横方向)ではずれている。そこで、探知穿孔ユニット14を壁材80に沿って水平方向(横方向)に、LED56Cが点灯する位置まで移動させる。LED56C,56Dがともに点灯すると、探知穿孔ユニット14は配線ボックス82の正面に位置することになる。例えば、何れかの金属センサ50UR,50UL,50Dがアルミ箔84,86でなく釘を検出していたとき、上下方向または水平方向の移動で対応するLEDが消灯し、LED56Cも点灯しないので、目的の配線ボックスでないことが分かる。
【0030】
図8を参照して、探知時の金属センサ50UR,50UL,50Dの出力処理を説明する。図8は、探知穿孔ユニット14の水平移動に対する金属センサの出力波形例及び合成波形例であって、図8(a)は下金属センサ50Dの出力変化例を示し、図8(b)は、金属センサ50UR,50ULの出力変化例を示し、図8(c)は、金属センサ50UR,50ULの出力の和の変化例を示す。図8で、横軸は、穿孔装置10(探知穿孔ユニット14)を横方向に移動したときの水平位置を示し、縦軸は、金属センサ50UR,50UL,50Dの出力を示す。
【0031】
駆動回路60URは、上右の金属センサ50URの出力に従い、金属センサ50URの出力値が大きいほどより明るく点灯するように、上右LED56URを駆動する。ただし、駆動回路60URは、金属センサ50URのセンサ出力が所定値未満、例えば、後述する金属検出閾値TH1未満のときには、上右LED56URを消灯するようにしてもよい。駆動回路60UL,60Dは、駆動回路60URと同様に、それぞれ、金属センサ50UL,50Dの出力に従い、金属センサ50UL,50Dの出力値が大きいほどより明るく点灯するように、上右LED56UR及び下LED56Dを駆動する。
【0032】
作業者は、垂直に立てられた壁材80に沿って穿孔装置10(の探知穿孔ユニット14)を上下左右に移動させる。この移動により、金属センサ50UR,50ULの何れかがアルミ箔84を検出して、駆動回路60UR,60ULが上右LED56UR及び上左LED56ULの何れかまたは両方を点灯させ、金属センサ50Dがアルミ箔86を検出して駆動回路60UDが下LED56Dを点灯させる位置に到達する。配線ボックス82の位置が設計図上または施工上からある程度、予想出来る場合、その予想に従って穿孔装置10(の探知穿孔ユニット14)を移動させることで、配線ボックス82を大まかに探知出来る。この状態で、作業者は、穿孔装置10(探知穿孔ユニット14)が壁材80の裏側の配線ボックス82の位置をその上下方向について探知出来たことになるが、水平方向については上右LED56UR、上左LED56UL及び下LED56Dの点灯明るさに頼るしかない状態にある。
【0033】
本実施例は、金属センサ50UR,50ULのセンサ出力の和から、配線ボックス82の水平位置を精度良く探知できる。以下、その動作を詳細に説明する。
【0034】
下金属センサ50Dが配線ボックス82の下側のアルミ箔86を検出している状態であることを確認するために、比較回路62が、金属センサ50Dのセンサ出力を金属検出閾値TH1と比較する。比較回路62は、センサ出力が金属検出閾値TH1以上であると、出力を高(H)とし、それ以外では出力を低(L)とする。金属検出閾値TH1は、図8(a)に示すように、例えば、金属センサ50UR,50UL,50Dがアルミ箔84,86を検出しないときのセンサ出力と、アルミ箔84,86を検出したときのセンサ出力Vmとの中間値に設定される。すなわち、金属検出閾値TH1は、金属センサ50UR,50UL,50Dがアルミ箔84,86を検出する金属検出状態にあるか否かを識別する基準値である。比較回路62の出力Hは、金属センサ50Dが何れかのアルミ箔84,86と対面する金属検出状態であることを示す。
【0035】
図8(b)で、実線は金属センサ50ULのセンサ出力を示し、破線は金属センサ50URのセンサ出力を示す。金属センサ50ULと金属センサ50URが横方向(一般的には水平方向)で離れており、この横方向の間隔に応じて、金属センサ50UL,50URのセンサ出力が、図8(b)に実線と破線で示すように水平位置に対してずれる。金属センサ50ULと金属センサ50URの間隔を探知対象のアルミ箔84の横幅と同程度にすることにより、センサ出力の重なり部を狭くすることができ、水平位置探知の精度が向上する。
【0036】
加算器64は、金属センサ50UL,50URのセンサ出力を加算する。図8(c)は加算器64の出力を示す。図8(c)に示すように、加算器64は、穿孔装置10(の探知穿孔ユニット14)がアルミ箔84の中央位置、すなわち配線ボックス82の水平方向の中心位置に対面するとき、ピークを持つ。このピークの極大値(図示例では、ほぼ2Vm)の位置が、探知対象である配線ボックス82の中心(水平方向での中心)に相当する。
【0037】
比較回路66が加算器64の出力を中央判定閾値TH2と比較する。比較回路66は、加算器64の出力が中央判定閾値TH2以上であると、出力を高(H)とし、それ以外では出力を低(L)とする。中央判定閾値TH2は、金属センサ50UL,50URが同時に金属検出状態にあることを判定するための基準値であり、金属検出時センサ出力値Vmより大きく、且つ、加算器64のピーク値より低い値に設定される。中央判定閾値TH2が金属検出時センサ出力値Vmに近いほど、中央検出精度が低くなり、加算器64の出力のピーク値に近い程、中央検出精度が高くなる。中央判定閾値TH2が加算器64の出力のピーク値より大きいと、左右の中央を検出出来なくなる。そこで、中央判定閾値TH2は変更可能であるのが好ましい。この変更のための手段は、後述する。
【0038】
比較回路66の代わりに、金属センサ50ULのセンサ出力を金属検出閾値TH1と比較する比較回路と、金属センサ50URのセンサ出力を金属検出閾値TH1と比較する比較回路を設け、アンド回路68が、これら代替の比較回路の2値出力と比較回路62の2値出力の論理積を取るようにしてもよい。
【0039】
アンド回路68は、比較回路62,66の2値出力の論理積をとる。すなわち、アンド回路68は、比較回路62,66の出力が共に高(H)の場合にのみ、出力を高(H)にし、これ以外の場合には出力を低(L)にする。常開スイッチ70は、アンド回路68の出力が高(H)であるときに閉成(オン)状態になり、アンド回路68の出力が低(L)であるときには開放(オフ)状態になる。
【0040】
加算器64の出力は、スイッチ70を介して、中央LED56Cの駆動回路60Cに印加される。すなわち、穿孔装置10(探知穿孔ユニット14)が配線ボックス82の中心をほぼ検出できているとき(比較回路62,66の出力が共に高(H)のとき)にのみ、加算器64の出力が駆動回路60Cに印加される。駆動回路60Cは、スイッチ70を介して入力する加算器64の出力値に応じた輝度で、中央LED56Cを発光させる。中央LED56Cの点灯と発光輝度により、作業者は、穿孔装置10(探知穿孔ユニット14)が壁材80の裏側に位置する配線ボックス82の水平方向及び垂直方向の中央に対面していることを知ることができる。
【0041】
本実施例では、比較回路62、加算器64、比較回路66、アンド回路68及びスイッチ70からなる回路構成が、探知穿孔ユニット14が壁材80の裏側に位置する配線ボックス82の水平方向(横方向)及び垂直方向(上下方向)の両方でほぼ中央に対面している状態でのみ、中央LED56Cを点灯可能な状態にするので、配線ボックス82の水平方向の中央を精度良く探知出来る。垂直方向の探知精度はアルミ箔84,86の垂直方向の幅に依存するが、これは、アルミ箔84,86の垂直方向幅を小さくすることで改善出来る。
【0042】
選択スイッチ72は、金属検出閾値TH1として大きさの異なる2つの値TH1(L),TH1(H)の一方を選択して比較回路62に印加し、選択スイッチ74は、中央判定閾値TH2として大きさの異なる2つの値TH2(L),TH2(H)の一方を選択して比較回路66に印加する。操作手段としての閾値切替えダイヤル76により、選択スイッチ72,74を連動して切り替えることができる。すなわち、選択スイッチ72が低閾値TH1(L)を選択するとき、選択スイッチ74は低閾値TH2(L)を選択し、選択スイッチ72が高閾値TH1(H)を選択するとき、選択スイッチ74は高閾値TH2(H)を選択する。例えば、高閾値TH1(H)、TH2(H)を選択している状態で、壁材80の裏側の配線ボックス82を検出出来ないとき、閾値切替えダイヤル76により、低閾値TH1(L)、TH2(L)を選択するように選択スイッチ72,74を切り替えれば良い。もちろん、閾値TH1の大きさを変更する必要性が乏しい場合には、選択スイッチ72を省略しても良い。また、中央判定閾値TH2を金属検出閾値TH1と連動せずに複数の値のどれかに切り替えたい場合には、選択スイッチ74を単独で操作する操作手段を設ければ良い。
【0043】
金属検出閾値TH1をセンサ出力Vmに近い値にすると、壁材80が厚い場合等、配線ボックス82が壁材80の裏側の深い位置に設置される場合にこれを見逃す可能性が高くなる。これを防ぐために、本実施例は、金属検出閾値TH1の大きさを選択可能としている。実際、壁材80として使用される石膏ボードは厚みが15mmと17mmの2種類なので、本実施例では、金属検出閾値TH1として、2つの値TH1(H)とTH1(L)を選択出来るようにしている。
【0044】
アルミ箔84,86の検出をLEDの点灯と輝度で作業者に通知しているが、トーン音の周波数/音量で作業者に通知する方式に代えても良く、更には、両者を併用しても良い。
【0045】
図5に示す回路では、中央LED56Cは、加算器64の出力強度に応じた輝度で発光する。これにより、作業者は、中央LED56Cの発光強度を目安に、配線ボックス82の水平方向中央を精度良く判断出来る。
【0046】
このような、水平方向の探知精度を要求しない場合、スイッチ70を省略し、駆動回路60Cが、アンド回路68の出力が高(H)のときに中央LED56Cを点灯させ、アンド回路68の出力が低(L)のときに消灯させるようにしても良い。この構成でも、探知穿孔ユニット14の横移動の間の中央LED56Cの点灯の様子から、利用者は、配線ボックス82の水平方向中央を推測出来る。
【0047】
このようにして配線ボックス82を探知穿孔ユニット14の正面で探知できると、作業者は、圧縮バネ54の伸長力に抗して、図9に示すように穿刺棒44A,44Bが壁材80に突き刺さる位置まで、探知穿孔ユニット14を壁材80に押し当てる。このとき、センサ保持枠52は、先端面が壁材80に接した状態で外枠24に収容される位置に後退する。穿刺棒44A,44Bが壁材80に突き刺さることにより、探知穿孔ユニット14は壁材80に対して横移動しないように壁材80に係止ないし固定され、モータ20の回転によっても探知穿孔ユニット14が回転移動しにくくなる。図9は、穿刺棒44A,44Bの先端が壁材80に突き刺さることで探知穿孔ユニット14が壁材80に係止された状態の縦断面図を示す。
【0048】
図9に示す位置から、作業者が更に、壁材80に垂直に穿孔装置10を押し付けると、圧縮バネ54,48A,48Bの伸長力に抗して、センサ保持枠52及び穿刺棒44A,44Bが後退し、終には、切削板34,36,38,40の先端面が壁材80に接触する。
【0049】
図9に示す位置から切削板34,36,38,40の先端面が壁材80に接触するまでの間に、作業者は、レバー18を人差指で押し込む。この操作により、駆動回路78が、バッテリ16の出力電力に従いモータ20を回転駆動する。モータ20は回転軸22を回転させるが、偏心ウエイト32により、回転軸22はその先端が横方向にブレながら回転する。ブレ量は回転軸の回転数並びに偏心ウエイト32の偏心度及び重さ等に依存する。このブレは軸受け30を介して切削板支持板28に伝達され、切削板34,36,38,40に周期的で微小な横方向の振動と先端の面ブレを生じさせる。
【0050】
切削板34,36,38,40の先端面が壁材80に接しているとき、図10に示すように、切削板34,36,38,40の先端面のエッジが壁材80を切削する。図10は、切削板34,36,38,40の横方向振動及び先端の面ブレによる壁材80の切削の様子を示す模式図である。図10で、破線は横移動及び面ブレした位置の切削板34,36,38,40を示す。切削幅は面ブレ幅相当になり、モータ20の回転数及び偏心ウエイト32の調整により、切削幅を小さくすることが可能となる。また、スリット34A,36A,38A,40Aにより面ブレが切削片単位になるので、スリットを設けない場合に比べ、切削能力が向上する。
【0051】
作業者は、切削板34,36,38,40が壁材80を貫通したことを感触で知ることが可能であり、この段階で、穿孔装置10(探知穿孔ユニット14)を壁材に向けて押し付けるのを終了し、壁材80から引き戻す。図11は、切削板34,36,38,40が壁材80を貫通した状態での、探知穿孔ユニット14及び壁材80の断面図を示す。
【0052】
上述したように、穿孔装置10により、配線ボックス82の探知から壁材80に配線ボックス82へのアクセスのための矩形孔を開ける穿孔までを、単一の装置により一連の作業で終わらせることができ、作業効率が格段に向上する。1回の穿孔作業で矩形孔を開けることができ、その後の、壁材表面の装飾パネル等との配線作業も容易になる。鋸刃でなく切削板の振動で孔を開けるので、切り屑が少なくなり、穿孔作業だけでなくその後の現場掃除の容易になる。
【実施例2】
【0053】
図12は、探知穿孔ユニットの変更例114の正面図を示す。図12に示す探知穿孔ユニット114では、センサ保持枠12の上側には、金属センサ50UR,50ULと同様の位置に金属センサ150UR,150ULを配置し、下側には、金属センサ50Dに代えて、金属センサ150UR,150ULと同じ距離離して2つの金属センサ150DR,150DLを配置してある。金属センサ150UR,150ULは、金属センサ50UR,50ULと同じ位置関係で配置され、同じ機能を有するが、理解を容易にするために異なる符号を付してある。金属センサ150UR,150UL,150DR,150DLは、金属に対して金属センサ50UR,50UL,50Dと同じ特性を有する。このように矩形の4隅に金属センサを配置することで、壁材80の裏側に隠れる配線ボックス82が水平・垂直ラインから傾いている場合にも、その方向を含めて中心を精度良く探知出来る。
【0054】
図13は、金属センサ150UR,150UL,150DR,150DLの出力を処理する回路例を示す。
【0055】
上右LED156URは、上右LED56URと同様に、上右の金属センサ150URの金属検知状況を示し、上左LED156ULは、上左LED56ULと同様に上左の金属センサ150ULの金属検知状況を示す。下右LED156DRは、下右の金属センサ150DRの金属検知状況を示し、下左LED156DLは、下左の金属センサ150DLの金属検知状況を示す。LED156UR,156UL,156DR,156DLは、対応する金属センサ150UR,150UL,150DR,150DLと同じ位置関係の4隅に配置され、中央LED156Cは、これらLED156UR,156UL,156DR,156DLで構成される四角形の中央に配置される。中央LED156Cは、詳細は後述するが、探知穿孔ユニット114が壁材80の裏側の配線ボックス82の正面に対面する位置で点灯する。
【0056】
駆動回路160UR,160UL,160DR,160DLはそれぞれ、金属センサ150UR,150UL,150DR,150DLの出力に従い、金属センサ150UR,150UL,150DR,150DLの出力値が大きいほどより明るく点灯するように、LED156UR,156UL,156DR,156DLを駆動する。駆動回路160UR,160UL,160DR,160DLの動作は、駆動回路60UR,60ULと同じである。
【0057】
駆動回路160UR,160UL,160DR,160DLは、入力するセンサ出力が金属検出閾値TH1以上であるときに、対応する金属センサ150UR,150UL,150DR,150DLのセンサ出力レベルに応じた輝度でLED156UR,156UL,156DR,156DLを点灯させるようにしてもよい。これにより、金属センサ150UR,150UL,150DR,150DLが釘などの微小な金属部材を検出したときに、LED156UR,156UL,156DR,156DLが点灯してしまうことを防止出来る。
【0058】
作業者が、一般に垂直に立てられた壁材80に沿って探知穿孔ユニット114を上下左右に移動させる。この移動により、金属センサ150UR,150ULの何れかがアルミ箔84または86を検出して、駆動回路160UR,160ULが上右LED156UR及び上左LED156ULの何れかまたは両方を点灯させる。同様に、金属センサ150DR,150DLの何れかがアルミ箔84または86を検出して、駆動回路160DR,160DLが下右LED156DR及び下左LED156DLの何れかまたは両方を点灯させる。上右LED156UR及び上左LED156ULの一方または両方が点灯し、且つ、下右LED156DR及び下左LED156DLの一方または両方が点灯した状態で、探知穿孔ユニット114は壁材80の裏側の配線ボックス82を大まかに探知出来たことになる。
【0059】
加算器164Uは、金属センサ150UR,150ULのセンサ出力を加算または合成する。加算器164Uの出力は、探知穿孔ユニット114の水平移動に対して、加算器64の出力(図8(c))と同様に、探知穿孔ユニット114がアルミ箔84の中央位置、すなわち配線ボックス82の水平方向の中心位置に対面するとき、ピークを持つ。このピークの極大値(図示例では、ほぼ2Vm)の位置が、探知対象である配線ボックス82の中心(水平方向での中心)に相当する。
【0060】
比較回路166Uが加算器164Uの出力を中央判定閾値TH2と比較する。比較回路166Uは、加算器164Uの出力が中央判定閾値TH2以上であると、出力を高(H)とし、それ以外では出力を低(L)とする。中央判定閾値TH2は、実施例1と同様に、金属検出時センサ出力値Vmより大きく、且つ、加算器164Uのピーク値より低い値に設定される。
【0061】
比較回路166U,166Dの代わりに、金属センサ150UR,150UL,150DR,150DLのセンサ出力を金属検出閾値TH1と比較する4つの比較回路を設け、アンド回路168が、これら代替の4つの比較回路の2値出力の論理積を取るようにしてもよい。
【0062】
加算器164Dは、金属センサ150DR,150DLのセンサ出力を加算する。加算器164Dの出力は、探知穿孔ユニット114の水平移動に対して、加算器64,164Uの出力と同様に、探知穿孔ユニット114がアルミ箔86の中央位置、すなわち配線ボックス82の水平方向の中心位置に対面するとき、ピークを持つ。このピークの極大値(図示例では、ほぼ2Vm)の位置が、探知対象である配線ボックス82の中心(水平方向での中心)に相当する。比較回路166Dが加算器164Dの出力を中央判定閾値TH2と比較する。比較回路166Dは、加算器164Dの出力が中央判定閾値TH2以上であると、出力を高(H)とし、それ以外では出力を低(L)とする。
【0063】
加算器165は、加算器164U,164Dの出力を加算する。加算器165の出力は、4つの金属センサ150UR,150UL,150DR,150DLが全て金属を検出しているときに、最も大きく、ほぼ4Vmになる。
【0064】
アンド回路168は、比較回路166U,166Dの2値出力の論理積をとる。すなわち、アンド回路168は、比較回路166U,166Dの出力が共に高(H)の場合にのみ、出力を高(H)にし、これ以外の場合には出力を低(L)にする。常開スイッチ170は、アンド回路168の出力が高(H)であるときに閉成(オン)状態になり、アンド回路168の出力が低(L)であるときには開放(オフ)状態になる。
【0065】
加算器165の出力は、スイッチ170を介して、中央LED156Cの駆動回路160Cに印加される。すなわち、探知穿孔ユニット114が配線ボックス82の中心をほぼ検出できているとき(比較回路166U,166Dの出力が共に高(H)のとき)にのみ、加算器165の出力が駆動回路160Cに印加される。駆動回路160Cは、スイッチ170を介して入力する加算器165の出力値に応じた輝度で、中央LED156Cを発光させる。中央LED156Cの点灯と発光輝度により、作業者は、探知穿孔ユニット114が壁材80の裏側に位置する配線ボックス82の水平方向及び垂直方向の中央に対面していることを知ることができる。
【0066】
加算器165の出力が一定レベル以上の場合にスイッチ170を閉成するようにしてもよいが、配線ボックス82の中心を検出したときの加算器165の出力レベルは、壁材80の厚みや材質に影響されやすく、閾値を決定しづらい。加算器164U,164Dの利用環境による出力レベル変化は、加算器165のそれよりも小さいので、図13に示す回路構成の方が、幅広い環境に対応しやすくなる。
【0067】
図12及び図13に示す構成では、上側の金属センサと下側の金属センサのそれぞれでアルミ箔84,86を検出するので、例えば、水平・垂直ラインから傾いて配置された配線ボックス82の中心も容易に探知出来る。
【0068】
選択スイッチ174は、中央判定閾値TH2として大きさの異なる2つの値TH2(L),TH2(H)の一方を選択して比較回路166U,166Dに印加する。利用者は、操作手段としての閾値切替えダイヤル176により、選択スイッチ174を切り替えることができる。例えば、高閾値TH2(H)を選択している状態で、壁材80の裏側の配線ボックス82を検出出来ないとき、閾値切替えダイヤル176により、低閾値TH2(L)を選択するように選択スイッチ174を切り替えれば良い。
【0069】
アルミ箔84,86の検出をLEDの点灯と輝度で作業者に通知しているが、トーン音の周波数/音量でユーザに通知する方式に代えても良く、更には、両者を併用しても良い。
【0070】
図13に示す回路構成では、中央LED156Cは、加算器165の出力強度に応じた輝度で発光する。これにより、探知穿孔ユニット114の穿孔装置の利用者は、中央LED156Cの発光強度を目安に、配線ボックス82の水平方向中央を精度良く判断出来る。
【0071】
これほどの水平方向の探知精度を要求しない場合、加算器165及びスイッチ170を省略し、駆動回路160Cが、アンド回路168の出力が高(H)のときに中央LED156Cを点灯させ、アンド回路168の出力が低(L)のときに消灯させるようにしても良い。この構成でも、探知穿孔ユニット114の横移動の間の中央LED156Cの点灯の様子から、作業者は、配線ボックス82の水平方向中央を推測出来る。
【実施例3】
【0072】
金属センサとして、金属を検出していないときに大出力で、金属を検出すると出力値が小さくなるものがある。
【0073】
実施例1に対しては、金属センサ50UR,50UL,50Dが、そのような特性を有する場合、金属検出閾値TH1及び中央判定閾値TH2と比較回路62,66の動作を次にように変更すれば良い。
【0074】
金属センサ50UR,50UL,50Dの、金属を検出していないときの出力をV0、金属を検出しているときの出力をVm(<V0)とする。加算器64の出力は、金属センサ50UR,50ULがいずれも金属を検出していないとき、2V0、金属センサ50UR,50ULの一方のみが金属を検出しているとき、V0+Vm、金属センサ50UR,50ULの両方が同時に金属を検出しているとき、最大でほぼ2Vmとなる。従って、金属検出閾値TH1を2V0とV0+Vmの中間値、好ましくは2V0に近い値とし、中央判定閾値TH2をV0+Vmと2Vmの中間値、好ましくはV0+Vmに近い値とすればよい。
【0075】
比較回路62は、金属センサ50Dの出力が金属検出閾値TH1以上のとき、出力を低(L)とし、金属センサ50Dの出力が金属検出閾値TH1を下回ると、出力を(H)とする。比較回路66は、加算器64の出力が閾値TH2以上のとき、出力を低(L)とし、加算器64の出力が中央判定閾値TH2を下回ると、出力を高(H)とする。アンド回路68及びスイッチ70の動作は、実施例1と同様である。
【0076】
駆動回路60UR,60UL,60UD,60Cは、入力信号に対して、実施例1とは逆の特性でLED56UR,56UL,56D,56Cを駆動する。すなわち、駆動回路60UR,60UL,60UDは、入力値と金属非検出時のセンサ出力V0との差値が大きくなるほど、LED56UR,56UL,56Dをより明るく点灯させる。駆動回路60Cは、入力値と金属非検出時の加算器出力2V0との差値が大きくなるほど、LED56Cをより明るく点灯させる。
【0077】
実施例2において、金属センサ150UR,150UL,150DR,150DLとして、金属を検出していないときに大出力で、金属を検出すると出力値が小さくなる特性のものを採用した場合も、中央判定閾値TH2と比較回路166U,166Dの動作を、同様に変更すればよいので、詳細な説明は省略する。
【実施例4】
【0078】
上記実施例では、センサ保持枠52及び穿刺棒44A,44Bのどちらも、探査穿孔ユニット14,114を壁材80に押し付けることで外装24内に後退するようになっているが、探査の間には、センサ保持枠52の後退を抑止し、所定の操作で後退抑止を解除出来るストッパを設けても良い。例えば、レバー18の操作により、当該ストッパによる移動規制を解除するように構成する。
【実施例5】
【0079】
切削時に壁材80に沿う穿孔装置の移動を規制する移動規制手段の変更例を説明する。図14は、移動規制手段の変更例の断面図であって、(a)は探知時の穿刺棒の位置を示し、(b)は穿孔中の穿刺棒の位置を示す。符号244A,244Bはそれぞれ、穿刺棒44A,44Bの代替例となる穿刺棒を示し、符号248A,248Bはそれぞれ圧縮バネ48A,48Bの代替となる圧縮バネを示す。
【0080】
図14に示す変更例では、穿刺棒244A,244Bがより深く壁材80に入り込めるように、穿刺棒244A,244Bの先端部分を浅い頂角の針状ないし錐状に形成してある。壁材80としては通常、12mm厚または15mm厚の石膏ボードが多く利用される。このような石膏ボードに対しては、例えば、穿刺棒244A,244Bの先端部分を、長さ15乃至20mmに対して直径5mm程度の円錐形状に形成する。併せて、圧縮バネ248A,248Bのバネ強度を、壁材80の穿孔時に壁材80に食い込めるような力で穿刺棒244A、244Bを壁材80に向け付勢する程度に調整する。
【0081】
また、穿刺棒244A,244Bは、軸ブレを起こさないか起こし難い剛性の高い素材からなる。これにより、穿孔しつつ穿刺棒244A,244Bを壁材80に押し付けた際に、振動モータ(モータ20、回転軸22、偏心ウエイト32)による振動に関わらず穿刺棒244A,244Bは壁材80の同じ位置で安定的に差し込まれる。これにより、切削板34,36,38,40による穿孔の際に、穿刺棒244A,244Bは、壁材80の相対的に面方向の移動を効果的に抑制ないし規制できる。
【0082】
このように穿刺棒の先端部分を針状乃至錐状に形成して壁材に食い込みやすくすることで、穿孔時の振動によっても壁材80の面方向への移動を効果的に規制できる。すなわち、穿孔時に穿孔装置を持つ手に及ぶ振動を軽減でき、作業員の手持ち作業を容易なものにすることができる。
【実施例6】
【0083】
穿刺棒44A,44B,244A,244Bに代えて、棒材の先端面に剣山のように複数の微小な錐を立てた構造の穿刺棒を採用しても、実施例4と同様に、穿孔時の際の、壁材80の面方向への移動を効果的に規制できる。
【0084】
以上、特定の説明用の実施例を参照して本発明を説明したが、特許請求の範囲に規定される本発明の技術的範囲を逸脱しないで、上述の実施例に種々の変更・修整を施しうることは、本発明の属する分野の技術者にとって自明であり、このような変更・修整も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
10:穿孔装置
12:把持部
14:探知穿孔ユニット
16:バッテリ
18:レバー
20:モータ
22:回転軸
24:外装
26:軸受け
28:切削板支持板
30:軸受け
32:偏心ウエイト
34,36,38,40:切削板
34A,36A,38A,40A:スリット
42A,42B:開口
44A,44B:穿刺棒
46A,46B:支持柱
48A,48B:圧縮バネ
50UR,50UL,50D:金属センサ
52:センサ保持枠
54:圧縮バネ
56UR:上右LED(発光ダイオード)
56UL:上左LED
56C:中央LED
56D:下LED
60UR,60UL,60C:駆動回路
62,66:比較回路
64:加算器
68:アンド回路
70:常開スイッチ
72,74:選択スイッチ
76:閾値切替えダイヤル
80:壁材
82:配線ボックス
84,86:アルミ箔
114:探知穿孔ユニット
150UR,150UL,150DR,150DL:金属センサ
156UR:上右LED(発光ダイオード)
156UL:上左LED
156C:中央LED
156DR:下右LED
156DL:下左LED
160UR,160UL,160DR,160DL,160C:駆動回路
164U,164D,165:加算器
166U,166D:比較回路
168:アンド回路
170:常開スイッチ
174:選択スイッチ
176:閾値切替えダイヤル
244A,244B:穿刺棒
248A,248B:圧縮バネ
図1
図2
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