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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】印判構成
(51)【国際特許分類】
   B41K 1/50 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
B41K1/50 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020077081
(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公開番号】P2021171993
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】230117259
【弁護士】
【氏名又は名称】綿貫 敬典
(72)【発明者】
【氏名】三矢 貴幸
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-132207(JP,A)
【文献】米国特許第08925454(US,B2)
【文献】特開2011-042139(JP,A)
【文献】特開2019-126994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41K 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字体を貼付けた枠体に対して、インキ吸蔵体を備えたカートリッジを離間位置に仮嵌合させておき、その後にカートリッジを印面の背面側から押し込み、印字体とインキ吸蔵体を密着させる本嵌合を行う2段嵌合式の印判構成であって、
前記枠体の背面側の端部が、前記カートリッジの端部よりもさらに背面側に延びていることを特徴とする印判構成。
【請求項2】
前記枠体側に背面方向に延びるガイド溝を設け、前記カートリッジ側にこのガイド溝に嵌合する突起を設けたことを特徴とする請求項1に記載の印判構成。
【請求項3】
前記カートリッジの背面側に、本嵌合時にカートリッジを押し込むアタッチメントを受ける凹部を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の印判構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2段嵌合式の印判構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多孔質材にサーマルヘッドを当接させて相対的に移動させながらサーマルヘッドの発熱素子を選択的に発熱させ、多孔質材に所望の印面を形成して印字体とする技術は、特許文献1に示されるように公知である。印字体はその枠とともにインキ吸蔵体が収納された枠体に押し込まれ、印字体とインキ吸蔵体を密着させてインキ吸蔵体からインキを多孔質の印字体に含浸させる。
【0003】
上記の印判構成では、印面を上向きとし、インキ吸蔵体を下側として作業が行われるため、サーマル加工が行なわれる前工程で誤って印字体を押し込んでしまう誤動作が発生することがあった。
【0004】
そこで特許文献2に示されるように、印字体を枠体に貼り付けたうえでサーマル加工を行う印判構成も知られている。このような印判構成においては、インキ吸蔵体を備えたカートリッジを離間位置に仮嵌合させておき、その後にカートリッジを印面の背面側(下面側)から押し込み、印字体とインキ吸蔵体を密着させる本嵌合を行う2段嵌合式が知られている。
【0005】
しかしこの場合にも、インキ吸蔵体を備えたカートリッジの端部が印字体を貼り付けた枠体の端部から突出しているため、サーマル加工の前工程で誤ってカートリッジを押し込んでしまうことがあった。その結果、インキ吸蔵体と印字体が前工程において早期に接触してしまい、インキが多孔質材に含浸された状態でサーマル加工を行うこととなるため、インキによって加工機の内部が汚れる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6528864号公報
【文献】米国特許第8925454号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、サーマル加工の前工程で誤ってカートリッジを押し込むことを防止した印判構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、印字体を貼付けた枠体に対して、インキ吸蔵体を備えたカートリッジを離間位置に仮嵌合させておき、その後にカートリッジを印面の背面側から押し込み、印字体とインキ吸蔵体を密着させる本嵌合を行う2段嵌合式の印判構成であって、前記枠体の背面側の端部が、前記カートリッジの端部よりもさらに背面側に延びていることを特徴とするものである。
【0009】
なお、前記枠体側に背面方向に延びるガイド溝を設け、前記カートリッジ側にこのガイド溝に嵌合する突起を設けた構造とすることが好ましい。
【0010】
また、前記カートリッジの背面側に、本嵌合時にカートリッジを押し込むアタッチメントを受ける凹部を形成した構造とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の印判構成は、印字体を貼付けた枠体の背面側の端部が、カートリッジの端部よりもさらに背面側に延びているため、サーマル加工の前工程でカートリッジが誤って押し込まれる危険性を解消することができる。カートリッジはサーマル加工の開始時に特殊なアタッチメントにより印字体を貼付けた枠体の内部に押し込まれるため、加工機の内部が汚れることがない。
【0012】
また、枠体側に背面方向に延びるガイド溝を設け、前記カートリッジ側にこのガイド溝に嵌合する突起を設けた構造とすれば、枠体に対してカートリッジを横方向にブレることなく押し込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の印判構成を備えた印判の本嵌合状態を示す上面斜視図である。
図2】実施形態の印判構成を備えた印判の本嵌合状態を示す下面斜視図である。
図3】実施形態の印判構成を備えた印判の本嵌合状態を示す上面図である。
図4】実施形態の印判構成を備えた印判の本嵌合状態を示す断面図である。
図5】実施形態の印判構成を備えた印判の仮嵌合状態を示す断面図である。
図6】仮嵌合状態の要部を示す断面図である。
図7】本嵌合状態の要部を示す断面図である。
図8】仮嵌合状態のガイド溝を示す正面図である。
図9】本嵌合状態のガイド溝を示す正面図である。
図10】カートリッジが本嵌合位置まで押し上げられる様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は実施形態の印判構成を備えた印判の本嵌合状態を示す上面斜視図、図2はその下面斜視図、図3はその上面図、図4は断面図である。
【0015】
これらの図において10は樹脂製の枠体であり、上部枠体11とその下側の下部枠体12とから構成されている。この実施形態では枠体10は四角形であり、上部枠体11は正方形状であってその上部に正方形の印字体50が貼り付けられている。印字体50は多孔質材料からなるもので、図示の状態はサーマル加工が行われる前の印面が平坦な状態を示している。なお上部枠体11及び印字体50の形状は正方形に限られるものではなく、長方形、円形、楕円形等であってもよい。
【0016】
図4に示すように、上部枠体11は周囲に垂下する四角形の垂下壁13を備え、これらの垂下壁13の対向する2面には、内向きのフック14が突設されている。下部枠体12も四角枠状であって、その周囲に四角形の垂下壁15が形成されている。下部枠体12の上部には上部枠体11を取り付けるための段部16が形成されている。また下部枠体12の対向する2面には、上部枠体11のフック14を受ける凹部17が形成されている。このため上部枠体11と下部枠体12とは外れたりがたついたりすることのないように、強固に連結されている。
【0017】
下部枠体12の垂下壁15のうち、フック14を受ける凹部17が形成されていない2面の外面には、図3に示すように突起18が形成されており、キャップ19の両側から延びる一対の腕20の内側に形成された突起21が嵌まっている。キャップ19は枠体10の両側に設けられており、各図に示されるように両側に開くことができる。これらのキャップ19は印判を使用しないときに印字体50を保護するために閉じられる。
【0018】
下部枠体12の垂下壁15の内側には、インキ吸蔵体30を備えたカートリッジ31が嵌合されている。この実施形態ではインキ吸蔵体30は直方体形状の多孔質体であり、インクが吸蔵されている。
【0019】
図4に示すように、カートリッジ31は、インキ吸蔵体30を受ける中央の四角形の平板部32の周囲に、上方に延びる上部壁枠33と下方に延びる下部壁枠34とを一体に形成したものである。インキ吸蔵体30はカートリッジ31の平板部32の上部にセットされ、周囲を上部壁枠33により囲まれている。
【0020】
サーマル加工の前段階においては、カートリッジ31は印字体50を貼付けた枠体に対して、図5に示されるように離間位置に仮嵌合されている。この仮嵌合のために、カートリッジ31の下部壁枠34の外側には小突起35が形成されており、前記した下部枠体12の垂下壁15の内面上部は僅かに内側にオーバーハングさせた傾斜面36となっている。カートリッジ31の小突起35がこの傾斜面36に押し込まれることによって、カートリッジ31は図5の位置に仮保持されている。
【0021】
このとき、枠体10の背面側の端部37は、カートリッジ31の端部38よりもさらに背面側に延びている。換言すれば、図5の仮嵌合状態において、カートリッジ31の下側の端部38は下部枠体12の垂下壁15の下端よりも高い位置にあり、従来のように突出していない。このためサーマル加工の前段階において、カートリッジ31が誤って押し込まれることを抑制できる。
【0022】
カートリッジ31はサーマル加工の開始時に、図6に示すようにアタッチメント40によって押し込まれ、図4図7に示す本嵌合状態となる。本嵌合状態となるとインキ吸蔵体30が印字体50の背面に密着し、インクが徐々に印字体50に拡散して行く。しかしサーマル加工は短時間で完了するため、インクによって加工機の内部が汚れることがない。なお、カートリッジ31の下面にはアタッチメント40を受ける凹部41が形成されている。
【0023】
上記したアタッチメント40の仮嵌合位置から本嵌合位置への移動をガイドするため、図8図9に示されるように枠体10を構成する下部枠体12の垂下壁15に、一対のガイド溝60が形成されている。これらのガイド溝60は前記した突起18が形成された2面に形成されている。一方、カートリッジ31にはこれらのガイド溝60に嵌合する一対の突起39が設けられている。この構成によって、カートリッジ31はがたつくことなくスムーズに本嵌合位置まで押し上げられる。図10に本嵌合位置まで押し上げられた状態を示す。
【0024】
本嵌合位置まで押し上げられると、図4に示すようにカートリッジ31の下部壁枠34の外側に形成された小突起35は下部枠体12の垂下壁15の内面に形成された傾斜面36を乗り越え、本嵌合位置に安定保持される。
【0025】
以上に説明したように、本発明の印判構成によれば、サーマル加工の前工程で誤ってカートリッジ31が押し込まれることを防止することができる。
【符号の説明】
【0026】
10 枠体
11 上部枠体
12 下部枠体
13 上部枠体の垂下壁
14 フック
15 下部枠体の垂下壁
16 段部
17 凹部
18 突起
19 キャップ
20 腕
21 突起
30 インキ吸蔵体
31 カートリッジ
32 平板部
33 上部壁枠
34 下部壁枠
35 小突起
36 傾斜面
37 枠体の端部
38 カートリッジの端部
39 突起
40 アタッチメント
41 凹部
50 印字体
60 ガイド溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10