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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】量子処理のための音響光学変調器構成
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/11 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
G02F1/11 505
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020570562
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 US2019042841
(87)【国際公開番号】W WO2020036707
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】62/702,111
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/515,508
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520159592
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ メリーランド, カレッジ パーク
(73)【特許権者】
【識別番号】520132894
【氏名又は名称】イオンキュー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】アミニ ジェイソン マジディ
(72)【発明者】
【氏名】ミツラヒ ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】フデック カイ
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドマン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】スー ユアン
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-507766(JP,A)
【文献】特表2014-517929(JP,A)
【文献】特表2008-502010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0141035(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子処理においてレーザビーム伝搬を制御するための方法であって、
第一のAOMによって、入射レーザビームから第一の高周波(RF)トーンに基づく第一の回折レーザビームと、第二のRFトーンに基づく第二の回折レーザビームとを生成するステップであって、前記第一の回折レーザビームと前記第二の回折レーザビームとは異なる角度で回折される、ステップと、
光学部品を介して、前記第一の回折レーザビームおよび前記第二の回折レーザビームを第二のAOMに集束させる、ステップと、
前記第二のAOMによって、前記第一の回折レーザビームおよび前記第二の回折レーザビームから、前記第一のRFトーンおよび第三のRFトーンに基づく第三の回折レーザビームと、前記第二のRFトーンおよび第四のRFトーンに基づく第四の回折レーザビームとを少なくとも生成するステップであって、前記第三の回折レーザビームと前記第四の回折レーザビームとは、トラップ内のイオン鎖内のそれぞれのイオンに入射するときに、実質的に平行になるように回折される、ステップと、
前記イオン内の量子情報を制御して、前記第三の回折レーザビームおよび前記第四の回折レーザビームに基づいて、量子処理を実行するステップと、
を含む、レーザビーム伝搬を制御するための方法。
【請求項2】
前記入射レーザビームの入射角と、前記第一の回折レーザビームおよび前記第二の回折レーザビームの前記第二のAOMへの集束は、ブラッグ角に基づく、請求項1に記載のレーザビーム伝搬を制御するための方法。
【請求項3】
前記第一のRFトーンは前記第三のRFトーンと同じであり、
前記第二のRFトーンは前記第四のRFトーンと同じであり、
前記第三の回折レーザビームと前記第四の回折レーザビームとは、それぞれの前記イオンで共伝搬する、
請求項1に記載のレーザビーム伝搬を制御するための方法。
【請求項4】
前記第一のRFトーンは前記第三のRFトーンとは異なり、
前記第二のRFトーンは前記第四のRFトーンとは異なり、
前記第三の回折レーザビームと前記第四の回折レーザビームとは、それぞれの前記イオンで実質的に共伝搬する、
請求項1に記載のレーザビーム伝搬を制御するための方法。
【請求項5】
前記第一のRFトーンに基づく第一のRF制御信号を生成するステップと、
前記第二のRFトーンに基づく第二のRF制御信号を生成するステップと、
前記第三のRFトーンに基づく第三のRF制御信号を生成するステップと、
前記第四のRFトーンに基づく第四のRF制御信号を生成するステップと、
前記第一のRF制御信号および前記第二のRF制御信号を前記第一のAOMに供給して、前記第一の回折レーザビームおよび前記第二の回折レーザビームを生成するステップと、
前記第三のRF制御信号および前記第四のRF制御信号を前記第二のAOMに供給して、前記第一の回折レーザビームおよび前記第二の回折レーザビームを生成するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載のレーザビーム伝搬を制御するための方法。
【請求項6】
前記第三の回折レーザビームおよび前記第四の回折レーザビームを少なくとも生成するステップは、前記第一のRFトーンおよび前記第四のRFトーンに基づく第五の回折レーザビームと、前記第二のRFトーンおよび前記第三のRFトーンに基づく第六の回折レーザビームを生成するステップを含み、
前記方法は、空間フィルタリングによって、前記第三の回折レーザビームおよび前記第四の回折レーザビームを前記第五の回折レーザビームおよび前記第六の回折レーザビームから絶縁するステップをさらに含む、請求項1に記載のレーザビーム伝搬を制御するための方法。
【請求項7】
前記第一のAOMおよび前記第二のAOMのそれぞれは、マルチチャネルAOMであり、
前記第一のAOMの各チャネルは、それぞれの第一のRFトーンおよび第二のRFトーンを有し、
前記第二のAOMの各チャネルは、それぞれの第三のRFトーンおよび第四のRFトーンを有する、
請求項1に記載のレーザビーム伝搬を制御するための方法。
【請求項8】
前記第一のAOMはマルチチャネルAOMであり、前記第二のAOMはシングルチャネルAOMであるか、あるいは
前記第一のAOMはシングルチャネルAOMであり、前記第二のAOMはマルチチャネルAOMである、
請求項1に記載のレーザビーム伝搬を制御するための方法。
【請求項9】
前記第一のAOMは大アパーチャAOMであり、前記第二のAOMはマルチチャネルAOMであり、
前記第一のRFトーンおよび前記第二のRFトーンは前記第一のAOMの全てのチャネルに共通であり、
前記第三のRFトーンおよび前記第四のRFトーンは前記第二のAOMのチャネルのそれぞれに個別に設定される、
請求項1に記載のレーザビーム伝搬を制御するための方法。
【請求項10】
前記第一のAOMはマルチチャネルAOMであり、前記第二のAOMは大アパーチャAOMであり、
前記第一のRFトーンおよび前記第二のRFトーンは前記第一のAOMのチャネルのそれぞれに対して個別に設定され、
前記第三のRFトーンおよび前記第四のRFトーンは前記第二のAOMの全てのチャネルに共通である、
請求項1に記載のレーザビーム伝搬を制御するための方法。
【請求項11】
量子処理においてレーザビーム伝搬を制御するための方法であって、
第一のAOMによって、入射レーザビームから第一の高周波(RF)トーンに基づく第一の回折レーザビームと、第二のRFトーンに基づく第二の回折レーザビームとを生成するステップであって、前記第一の回折レーザビームと前記第二の回折レーザビームとは異なる角度で回折される、ステップと、
光学部品を介して、前記第一の回折レーザビームおよび前記第二の回折レーザビームを、対向するブラッグ角経路に集束させて、第二のAOMに入れる、ステップと、
前記第二のAOMによって、前記第一の回折レーザビームおよび前記第二の回折レーザビームから、前記第一のRFトーンおよび第三のRFトーンに基づく第三の回折レーザビームと、前記第二のRFトーンおよび第三のRFトーンに基づく第四の回折レーザビームとを少なくとも生成するステップであって、前記第三の回折レーザビームと前記第四の回折レーザビームとは、トラップ内のイオン鎖内のそれぞれのイオンに入射するときに、実質的に平行になるように回折される、ステップと、
前記イオン内の量子情報を制御して、前記第三の回折レーザビームおよび前記第四の回折レーザビームに基づいて、量子処理を実行するステップと、
を含む、レーザビーム伝搬を制御するための方法。
【請求項12】
前記第一のAOMおよび前記第二のAOMのそれぞれは、マルチチャネルAOMであり、
前記第一のAOMの各チャネルは、それぞれの第一のRFトーンおよび第二のRFトーンを有し、
前記第二のAOMの各チャネルは、それぞれの第三のRFトーンを有する、
請求項11に記載のレーザビーム伝搬を制御するための方法。
【請求項13】
前記第一のAOMはマルチチャネルAOMであり、前記第二のAOMはシングルチャネルAOMであるか、あるいは
前記第一のAOMはシングルチャネルAOMであり、前記第二のAOMはマルチチャネルAOMである、
請求項11に記載のレーザビーム伝搬を制御するための方法。
【請求項14】
前記第一のAOMは大アパーチャAOMであり、前記第二のAOMはマルチチャネルAOMであり、
前記第一のRFトーンおよび前記第二のRFトーンは前記第一のAOMの全てのチャネルに共通であり、
前記第三のRFトーンは前記第二のAOMのチャネルのそれぞれに個別に設定される、
請求項11に記載のレーザビーム伝搬を制御するための方法。
【請求項15】
前記第一のAOMはマルチチャネルAOMであり、前記第二のAOMは大アパーチャAOMであり、
前記第一のRFトーンおよび前記第二のRFトーンは前記第一のAOMのチャネルのそれぞれに対して個別に設定され、
前記第三のRFトーンは前記第二のAOMの全てのチャネルに共通である、
請求項11に記載のレーザビーム伝搬を制御するための方法。
【請求項16】
量子処理においてレーザビーム伝搬を制御するための量子情報処理(QIP)システムであって、
レーザビームを生成するように構成された1つまたは複数の光源と、
前記レーザビームから、第一の高周波(RF)トーンに基づく第一の回折レーザビームと、第二のRFトーンに基づく第二の回折レーザビームとを生成するように構成された第一の音響光学変調器(AOM)であって、前記第一の回折レーザビームと前記第二の回折レーザビームとは異なる角度で回折される、第一のAOMと、
前記第一の回折レーザビームおよび前記第二の回折レーザビームを第二のAOMに集束させるように構成された光学部品と、
前記第一の回折レーザビームおよび前記第二の回折レーザビームから、前記第一のRFトーンおよび第三のRFトーンに基づく第三の回折レーザビームと、前記第二のRFトーンおよび第四のRFトーンに基づく第四の回折レーザビームとを生成するように構成された第二のAOMであって、前記第三の回折レーザビームと前記第四の回折レーザビームとは、トラップ内のイオン鎖内のそれぞれのイオンに入射するときに、実質的に平行になるように回折される、第二のAOMと、
前記第三の回折レーザビームおよび前記第四の回折レーザビームに基づいて量子処理を実行するように前記イオン中の量子情報を制御するように構成されたビームコントローラと、を含む、QIPシステム。
【請求項17】
前記第一のAOMおよび前記第二のAOMのそれぞれは、マルチチャネルAOMであり、
前記第一のAOMの各チャネルは、それぞれの第一のRFトーンおよび第二のRFトーンを有し、
前記第二のAOMの各チャネルは、それぞれの第三のRFトーンを有する、
請求項16に記載のQIPシステム。
【請求項18】
前記第一のAOMはマルチチャネルAOMであり、前記第二のAOMはシングルチャネルAOMであるか、あるいは
前記第一のAOMはシングルチャネルAOMであり、前記第二のAOMはマルチチャネルAOMである、
請求項16に記載のQIPシステム。
【請求項19】
前記第一のAOMは大アパーチャAOMであり、前記第二のAOMはマルチチャネルAOMであるか、あるいは
前記第一のAOMはマルチチャネルAOMであり、前記第二のAOMは大アパーチャAOMである、
請求項16に記載のQIPシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、2019年7月18日に出願された「量子処理のための音響光学変調器構成」と題する米国非仮特許出願第16/515,508号、および2018年7月23日に出願された「量子処理のための音響光学変調器構成」と題する米国仮特許出願第62/702,111号による優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(政府実施許諾権)
本発明は、IARPAによるアワード(Award)第W911NF1610082号の下で政府の支援を受けてなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本開示の態様は、一般に、量子システムに関し、より具体的には、量子システムにおける量子処理のための音響光学変調器(AOM)構成に関する。
【背景技術】
【0004】
トラップされた原子は、量子情報処理の主要な実装の1つである。原子ベースの量子ビットは、量子メモリとして、量子コンピュータやシミュレータの量子ゲートとして使用でき、量子通信ネットワークのノードとして機能することができる。
【0005】
しかしながら、原子およびイオンをベースとする量子コンピューティングは、量子ビットに格納された量子情報を操作するために、レーザ位相、周波数、振幅、および/または極性の正確な制御を必要とする。AOMは、多くの場合、位相、周波数、および振幅を制御するために使用される。AOMの特徴の1つは、制御されたレーザビームが制御されていない部分から偏向され、2つを分離できることである。欠点は、このたわみが周波数に依存することである。例えば、2つ以上の周波数がAOMに適用される場合、得られるビームは互いに発散する。このビームのファンを原子またはイオン上に再集束するには、複雑な光学系が必要であり、得られるビームは、共伝搬しない(例えば、それらが原子に到達する点で整列していないか、または実質的に平行でない)。得られるビームは、量子操作中の望ましくない自由度からの分離を制限する。この周波数依存性を除去または低減することにより、量子操作の制御を改善することができるであろう。
【0006】
さらに、光の偏光を細かく迅速に制御することにより、量子操作の体系性を減らすことができる。このような制御をするための主な方法は、偏光ドリフトに悩まされる電気光学変調器(EOM)である。このドリフトを低減または排除するであろうEOMの代替方法は、高品質な量子操作のための強力なツールを提供するであろう。
【0007】
したがって、原子またはイオン上へのビームのより良好な再集束を可能にする技術、およびドリフトを低減または排除するEOMの代替が望ましい。
【発明の概要】
【0008】
以下は、そのような態様の基本的な理解を提供するために、1つまたは複数の態様の簡略化された概要を提示する。この概要は、全ての企図された態様の広範な概観ではなく、あらゆる態様の主要または重要な要素を識別することも、一部または全部の態様の範囲を表現することも意図されていない。その目的は、後に提示されるより詳細な説明の前置きとして、1つまたは複数の態様のいくつかの概念を簡略化された形態で提示することである。
【0009】
本開示は、位相、周波数、AOMのペアによる構成を説明するが、この構成によって、振幅の制御を維持しながら、AOMの周波数依存性を低減または排除できる。また、AOMの偏光依存性を利用して、透過光の偏光を制御するための構成も説明する。
【0010】
本開示の態様では、量子処理において、レーザビーム伝搬を制御するための方法が記載される。この方法は、第一のAOMによって、入射レーザビームから第一の高周波(RF)トーンに基づく第一の回折レーザビームと、第二のRFトーンに基づく第二の回折レーザビームとを生成するステップであって、第一の回折レーザビームと第二の回折レーザビームとは異なる角度で回折される、ステップと、光学部品を介して、第一の回折レーザビームおよび第二の回折レーザビームを第二のAOMに集束させる、ステップと、第二のAOMによって、第一の回折レーザビームおよび第二の回折レーザビームから、第一のRFトーンおよび第三のRFトーンに基づく第三の回折レーザビームと、第二のRFトーンおよび第四のRFトーンに基づく第四の回折レーザビームとを少なくとも生成するステップであって、第三の回折レーザビームと第四の回折レーザビームとは、トラップ内のイオン鎖内のそれぞれのイオンに入射するときに、実質的に平行になるように回折される、ステップと、イオン内の量子情報を制御して、第三の回折レーザビームと第四の回折レーザビームとに基づいて量子処理を実行するステップと、を含む。
【0011】
本開示の別の態様では、量子処理において、レーザビーム伝搬を制御するための方法が記載される。この方法は、第一のAOMによって、入射レーザビームから第一の高周波(RF)トーンに基づく第一の回折レーザビームと、第二のRFトーンに基づく第二の回折レーザビームとを生成するステップであって、第一の回折レーザビームと第二の回折レーザビームとは異なる角度で回折される、ステップと、光学部品を介して、第一の回折レーザビームおよび第二の回折レーザビームを、対向するブラッグ角経路に集束させて、第二のAOMに入れるステップと、第二のAOMによって、第一の回折レーザビームおよび第二の回折レーザビームから、第一のRFトーンおよび第三のRFトーンに基づく第三の回折レーザビームと、第二のRFトーンおよび第三のRFトーンに基づく第四の回折レーザビームとを少なくとも生成するステップであって、第三の回折レーザビームと第四の回折レーザビームとは、トラップ内のイオン鎖内のそれぞれのイオンに入射するときに、実質的に平行になるように回折される、ステップと、イオン内の量子情報を制御して、第三の回折レーザビームと第四の回折レーザビームとに基づいて量子処理を実行するステップと、を含む。
【0012】
本開示の別の態様では、量子処理においてレーザビーム伝搬を制御するための量子情報処理(QIP)システムが記載される。このQIPシステムは、レーザビームを生成するように構成された1つまたは複数の光源と、レーザビームから、第一のRFトーンに基づく第一の回折レーザビームと、第二のRFトーンに基づく第二の回折レーザビームとを生成するように構成された第一のAOMであって、第一の回折レーザビームと第二の回折レーザビームとは異なる角度で回折される、第一のAOMと、第一の回折レーザビームおよび第二の回折レーザビームを第二のAOMに集束させるように構成された光学部品と、第一の回折レーザビームおよび第二の回折レーザビームから、第一のRFトーンおよび第三のRFトーンに基づく第三の回折レーザビームと、第二のRFトーンおよび第四のRFトーンに基づく第四の回折レーザビームとを少なくとも生成するように構成された第二のAOMであって、第三の回折レーザビームと第四の回折レーザビームとは、トラップ内のイオン鎖内のそれぞれのイオンに入射するときに、実質的に平行になるように回折される、第二のAOMと、第三の回折レーザビームおよび第四の回折レーザビームに基づいて量子処理を実行するようにイオン中の量子情報を制御するように構成されたビームコントローラと、を含む。
【0013】
本開示のさらに別の態様では、量子処理における偏光制御のための方法が記載される。この方法は、AOMに入射レーザビームを提供するステップと、AOMによって、入射レーザビームから、AOMに印加されたRF信号に基づいて、非回折レーザビームおよび回折レーザビームを生成するステップであって、非回折レーザビームの偏光が入射レーザビームの偏光に対して回転される、ステップと、非回折レーザビームをトラップ内のイオン鎖のイオンに照射して、イオン内の量子情報を制御することによって、量子処理を実行するステップと、を含む。
【0014】
本明細書で説明される方法のそれぞれは、QIPシステムまたは装置において、およびコンピュータ可読媒体の一部として実装されてもよい。
【0015】
添付の図面は、いくつかの実施態様のみを示しており、したがって、範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】本開示の態様に従って、線状結晶または格子を形成する原子イオンのトラップを表すダイアグラムを示す。
図1B】本開示の態様に従って、状態を初期化するためのレーザ放射線の照射を示す低減エネルギー準位図の一例を表すダイアグラムである。
図1C】本開示の態様に従って、蛍光を介して量子ビット状態を検出するためのレーザ放射線の照射を示す低減エネルギー準位図の一例を表すダイアグラムである。
図2】回折レーザビームの周波数依存性の一例を表すダイアグラムである。
図3】本開示の態様に従って、シングルチャネル用の展開AOM構成の一例を表すダイアグラムを示す。
図4】本開示の態様に従って、マルチチャネルAOMを使用する展開AOM構成の例を表すダイアグラムを示す。
図5A】本開示の態様に従って、一方のAOMがマルチチャネルAOMであり、他方のAOMが大アパーチャAOMである展開AOM構成の例を表すダイアグラムである。
図5B】本開示の態様に従って、一方のAOMがマルチチャネルAOMであり、他方のAOMが大アパーチャAOMである展開AOM構成の例を表すダイアグラムである。
図6】本開示の態様に従って、展開AOM構成の別の例を表すダイアグラムである。
図7A】本開示の態様に従って、AOMを使用する偏光制御の例を表すダイアグラムである。
図7B】本開示の態様に従って、AOMを使用する偏光制御の例を表すダイアグラムである。
図7C】本開示の態様に従って、AOMを使用する偏光制御の例を表すダイアグラムである。
図8】本開示の態様に従って、コンピュータ装置の一例を表すダイアグラムである。
図9】本開示の態様に従う方法の例を示すフロー図である。
図10】本開示の態様に従う方法の例を示すフロー図である。
図11】本開示の態様に従う方法の例を示すフロー図である。
図12A】本開示の態様に従って、量子情報処理(QIP)システムの例を示すブロック図である。
図12B】本開示の態様に従って、並列化側波帯冷却に関連して使用される光学コントローラの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、様々な構成の説明として意図されており、本明細書で説明される概念が実施され得る唯一の構成を表すことを意図していない。詳細な説明は、様々な概念の完全な理解を提供する目的で、特定の詳細を含む。しかしながら、これらの概念は、これらの特定の詳細なしに実施されてもよいことは、当業者には明らかであろう。場合によっては、そのような概念を曖昧にすることを避けるために、周知の部品がブロック図の形態で示される。
【0018】
上述のように、トラップされた原子は、量子情報処理を実施するために使用されてもよい。原子ベースの量子ビットは、異なるタイプの装置として使用され得る。これらの装置には、量子メモリと、量子コンピュータおよびシミュレータにおける量子ゲートと、量子通信ネットワークのためのノードが含まれるが、これらに限定されない。トラップ原子イオンに基づく量子ビットは、非常に良好なコヒーレンス特性を有することができ、ほぼ100%の効率で準備して、測定することができ、光場およびマイクロ波場などの適切な外部制御場と、クーロン相互作用を変調することによって、互いに容易に絡み合うことができる。本開示で使用されるように、用語「原子イオン」、「原子」、「イオン化原子」、および「イオン」は、結晶、格子、または同様の配置もしくは構成を形成するために、トラップ内に閉じ込められることになる粒子、または実際に閉じ込められている粒子を記述するために互換的に使用することができる。本開示は、位相、周波数、および振幅の制御を維持しながら、AOMの周波数依存性を低減するのに役立つ特定の構成で量子処理においてAOMを使用するための方法またはプロセスおよび機器または装置の形態の技術を説明する。本開示は、透過光の偏光を制御するためにAOMの偏光依存性を使用するための方法またはプロセスおよび機器または装置の形態の技術も説明する。
【0019】
量子情報および計測目的に使用される典型的なイオントラップの幾何学的形状または構造は、線形高周波(RF)パウルトラップ(RFトラップまたは単にパウルトラップとも呼ばれる)であり、ここで、近くの電極層は、イオンの効果的な不均一な高調波閉じ込めにつながる静的および動的電位を保持する。RFパウルトラップは、電場を使用して、荷電粒子を特定の領域、位置、または場所にトラップするタイプ、または閉じ込めるタイプのトラップである。原子イオンがこのようなトラップの中で非常に低温までレーザ冷却されると、原子イオンは量子ビットの静止結晶(例えば、量子ビットの構造化配置)を形成し、クーロン斥力が外部閉じ込め力と釣り合う。十分なトラップ異方性のために、イオンは、閉じ込めの弱い方向に沿って線状結晶を形成することができ、これは、量子情報および計測学におけるアプリケーションに典型的に採用される配置である。
【0020】
原子およびイオン量子コンピューティングは、結晶または格子内の量子ビットに格納された量子情報を操作するために、レーザ位相、周波数、振幅、および極性(例えば、偏光)の正確な制御を必要とする。例えば、量子ビットを使用して異なる量子ゲートをイネーブルまたは実現するために使用されるレーザビームの特性(一般にゲートビームと呼ばれる)は、適切な量子操作を効果的に実行するために正確に制御される必要がある。以下に、このような量子ビットを用いて改良された量子処理のためにAOM構成を使用するための種々の技術に関する付加的な詳細を示す。
【0021】
図1Aは、例えば、(真空チャンバ内の電極を使用することによって)線形RFパウルトラップを使用する線状結晶110内の原子イオンのトラップを表す図100を示す。図1Aに示す例では、量子システムの真空チャンバは、N(N≧1)個の原子イッテルビウムイオン(例えば、171Ybイオン)をトラップするための1組の電極を含むことができ、これらのイオンは、線状結晶110内に閉じ込められており、レーザ冷却してほぼ静止させることができる。トラップされる原子イオンの数は、構成可能であり得る。原子は、171Ybの共鳴に同調されたレーザ放射で照射され、原子イオンの蛍光は、カメラ上に画像化される。一例では、原子イオンは、互いに約5マイクロメートル(μm)の距離115(例えば、3~7μmの範囲)だけ分離することができ、これは蛍光によって検証することができる。原子イオンの分離は、外部閉じ込め力とクーロン反発力との間のバランスによって決定される。
【0022】
個々のトラップ原子イオンの強い蛍光は、光子の効率的な循環に依存しているので、イオンの原子構造は、運動のレーザ冷却、量子ビット状態の初期化、および効率的な量子ビットの読み出しを可能にする強い閉じた光学遷移を有さなければならない。これにより、アルカリ土類(Be、Mg、Ca、Sr、Ba)および特定の遷移金属(Zn、Hg、Cd、Ybなど)など、外部電子が1つしかない単純な原子イオン以外の多くの原子イオン種が除外される可能性がある。これらの原子イオンの中で、量子ビットは、2つの安定な電子レベルによって表すことができ、多くの場合、2つの状態│↑>と│↓>、あるいは等価的に│1>と│0>を有する実効スピンによって特徴づけられる。図1Bおよび図1Cは、原子イオン171Ybについての低減されたエネルギー準位図120および150をそれぞれ示す。ここで、量子ビット準位│↑>と│↓>130は、基底電子状態における安定な超微細準位によって表され、周波数ω/2π=12.642812GHzだけ分離される。171Yb中の励起電子状態│e>および│e’>、140は、それ自体、より小さな超微細結合によって分割され、369.53nmの光波長に対応するエネルギーを有する光間隔によって基底状態から分離される。
【0023】
これらの光学遷移の共鳴のすぐ下で同調されたレーザ放射によって、ドップラーレーザ冷却が、トラップの底部近くに原子イオンを閉じ込めることが可能になる。他のより洗練された形態のレーザ冷却は、原子イオンをトラップ内でほぼ静止させることができる。
【0024】
│↑>⇔│e>遷移と│↓>⇔│e’>遷移との両方で共鳴するバイクロマチックレーザビーム(例えば、光変調から生じる側波帯によって生成される2つのトーンを有するビーム)は、原子に照射されると、急速に状態│↓>に落ち込み、光場と相互作用しなくなり、本質的に100%の忠実度を有する量子ビットの初期化が可能になる(例えば、図1B参照)。
【0025】
│↑>⇔│e>遷移と共鳴する単一のレーザビームが照射されると、閉じた循環する光学遷移によって、│↑>状態のイオンは強く蛍光を発するが、その一方で、│↓>状態のイオンは、レーザ周波数がその共鳴から遠く離れているために、暗いままで留まる(例えば、図1C参照)。この蛍光のごく一部を収集することだけでも、ほぼ完全な効率または精度で原子量子ビット状態を検出することが可能になる。他の原子種も同様の初期化/検出スキームを有することができる。
【0026】
図1Bおよび図1Cでは、励起電子状態│e>および│e’>140からの全ての許容される遷移が、下向きの波状矢印として示されている一方、照射されたレーザ放射(上向き直線矢印として示されている)は、これらの遷移を駆動して、図1Bに示されているように状態│↓>に初期化し、図1Cに示されているように量子ビット状態の蛍光(│↑>=蛍光あり、│↓>=蛍光なし)を検出する。
【0027】
図1A図1Cに記載されたタイプの量子ビットを使用して量子処理を実行するには、量子ビット内の量子情報の位相、周波数、振幅、および/または偏光を制御するためにレーザビームを使用する必要がある。これを効率的に行うために、レーザビームを操作する方法において、いくつかの既存の制限を克服することが重要である。本開示では、「レーザ」、「レーザビーム」、「光ビーム」、および「ビーム」という用語は、交換可能に使用され得る。
【0028】
AOMは、レーザの周波数、位相、振幅、および/または偏光を操作または制御するために、原子およびイオン化原子に基づく量子計算アプリケーションで使用されてもよい装置であり、レーザは、原子中の量子情報を操作するために使用される。RF信号とレーザビームの両方をAOMに照射すると、RF信号がレーザビームの一部分にインプリント(「変調」)される。レーザビームのその一部分は、レーザビームの影響を受けていない部分からAOMによって偏向(「回折」)され、空間的に分離することができる。
【0029】
量子情報の必要な操作を生成するために、変調ビームのペアを、同じ原子に同時に照射する必要がしばしばある。AOMは、(上述したような単一のRF信号ではなく)2つ以上のRF信号の和を印加することによって、複数の操作されたレーザビームを生成することができる。このとき、各RF信号は、特定の周波数(例えば、f1、f2など)に関連付けられる。しかしながら、2つ以上のレーザビームが異なる周波数を有する場合、2つ以上の変調されたビームは、AOMによって回折された後には、重複しない。レーザビームは、両方のビームが原子またはイオンで重なり合うように、原子またはイオン上に「再集束」(または再結像)することができるが、2つのレーザビームが原子またはイオンに到達する方向は、一致しない(例えば、レーザビームが共伝搬していない)。2つのレーザビームの伝搬方向に、このような不整合があることで、量子状態の操作でエラーが生じることもある。
【0030】
図2は、上述のような回折レーザビームの周波数依存性の一例を表すダイアグラム200を示す。この例では、第一のRF信号(例えば、変調信号)は、周波数またはトーンf1に基づいてRF発生器210aによって生成され、第二のRF信号は、周波数またはトーンf2に基づいてRF発生器210bによって生成される。これらの2つの信号は、加算器215によって結合され、AOM220aに印加される。
【0031】
AOM220aは、入射レーザビーム225を受け取り、その一部は回折されない(例えば、〇次回折によって生成される非回折レーザビーム230)。一方、AOM220aによって回折される入射レーザビーム225の一部は、2つの変調レーザビームを生成する(例えば、トーンf1については回折レーザビーム235aと、トーンf2については回折レーザビーム235bで、一次回折によって生成された(より高次の)回折ビームは、両方とも空間的にフィルタリングされ得る)。2つの回折レーザビームは、トーンが異なるため異なる角度で回折し、共伝搬しない。したがって、この2つの回折レーザビームは、光学素子240(例えば、f1については集束レーザビーム245a、f2については集束レーザビーム245b)によって、量子処理のためにイオントラップ内に形成された格子または結晶内のそれぞれのイオンまたは原子250上に集束される必要がある。再集束されたレーザビームは、角度θによって示されるように、同じ伝搬方向でイオンまたは原子250に到達せず(例えば、共伝搬しない)、このたま、量子状態の操作でエラーが生じる可能性がある。
【0032】
図2のダイアグラム200に示される構成における制約のいくつかに対処するために、回折ビーム角度の周波数依存性を低減または除去し、2つ以上のシフト周波数を有するビームが重なり合うように、あるいは、ほぼ重なり合うようにするための2つの構成が、以下に記載される。これらの構成は、シングルビームシナリオおよびマルチビームシナリオの両方に適用することができる。回折ビーム角度の周波数依存性を低減または排除することは、特定のイオンまたは原子に到達するレーザビームが、同じまたは実質的に同じ伝搬方向を有する(例えば、共伝搬している)ことを伴い得る。
【0033】
図3は、本開示の態様に従って、シングルチャネル用の展開AOM構成の一例を表すダイアグラム300を示す。ダイアグラム300の構成は、共通ダブルパスAOM構成の「展開」されたバージョンに基づく。展開構成では、レンズまたは光学素子が、第一のAOMからの発散ビームを第二のAOMに再集束する。ダイアグラム300は、AOMのそれぞれに適用される2つのトーンを示しているが、2つを超えるトーンまたは周波数が使用されている場合にも同様のアプローチに従うことができる。
【0034】
折畳み構成では、単一のAOMが使用され、2回目のパスで回折レーザビームを同じAOMに戻って通すために、光学系が必要となる。2回目のパスをした回折レーザビームを当初のレーザビームから分離するためには、入射レーザビームは、レーザビームを最適な回折経路からずらすことによって、レーザビームを空間的に分離すること、あるいは1回目のパスをした回折レーザビームの偏光を回転させ、次いで、偏光選択を用いて、レーザビームを分離することを必要とする。どちらの方法でも、第一の場合には空間的分離が不完全であるために、また第二の場合には偏光制御が不完全であるために、名目上、回折のみのレーザビームに漏出する残留非回折光が存在する可能性がある。このことは、名目上、回折レーザビームへの非周波数シフト漏れに繋がる。また、AOMがオフになっているとき、光がダブルパスAOM構成から出るように導く。したがって、展開AOM構成を使用する利点の1つは、光漏洩によって生じるクロストークを回避し、オンオフ分離を向上させることである。また、いずれの方法でも、2回目のパスは、最適ではない。というのも、第一の方法ではレーザビームが不整合になるためであり、また第二の方法ではAOMが偏光に依存するからである。したがって、展開AOM構成の別のメリットまたは利点は、単一のAOMによるアプローチと比較して、電力効率が向上することである。すなわち、2つのAOMを有することによって、操作の全体的な電力効率を向上させる最適化を実行することが可能である。
【0035】
図3の例では、トーンf1およびf2に基づいて、2つのRF信号(例えば、変調信号)を生成し、AOM1 320aに供給する一方で、トーンf1’およびf2’に基づいて、2つの別のRF信号を生成し、AOM2 320bに供給する。
【0036】
AOM 320aは、ブラッグ角(θ)で入射レーザビーム325を受け取るが、その一部は回折されない(例えば、非回折レーザビーム330)。一方、AOM320aで回折される入射レーザビーム325の一部は、2つの変調レーザビーム(例えば、トーンf1について回折レーザビーム335aと、トーンf2について回折レーザビーム335b)を生成する。この2つの回折レーザビームは、異なる角度で回折し、共伝搬しない。したがって、2つの回折レーザビームは、光学素子340によって、AOM2 320bに集束させ(例えば、f1について集束レーザビーム345aと、f2について集束レーザビーム345b)、AOM2 302bに対してレーザビームのブラッグ角を合わせる必要がある。
【0037】
AOM2 320bは、複数の出力経路を生成する。すなわち、AOM2 320bは、入射レーザビーム345aおよび245bの非回折部分355aおよび355bとともに、2つの入射レーザビーム(例えば、集束レーザビーム345aおよび集束レーザビーム345b)からの異なる伝搬方向に複数の回折レーザビームを生成する。例えば、トーンの組合せf2+f1’に基づいて回折レーザビーム360aを生成し、トーンの組合せf1+f2’に基づいて回折レーザビーム360bを生成する。ここで、これらの回折レーザビームのそれぞれは、異なる角度で回折する。また、AOM2320bによって生成されるのは、トーンの組合せf1+f1’に基づく回折レーザビーム365aと、トーンの組合せf2+f2’に基づく回折レーザビーム365b(図3において「365a、b」として示される)であり、これらのレーザビームは、他の回折レーザビームとは異なる角度で回折し、そのいずれもが、同じまたは実質的に同じ伝搬方向を有する(例えば、それらは重なり合うレーザビームである)。本開示では、実質的に、ほぼ、約、および同じという用語は、互いに0.1%、0.25%、0.5%、1%、2%、3%、5%、もしくは10%以内、または互いに1~10%の範囲内にある2つ以上の数または2つ以上のパラメータの値を指すことができる。回折レーザビーム365aおよび365bを、AOM2 320bによって生成された他の回折レーザビームから隔離または分離して、回折レーザビーム365aおよび365bを使用して、量子ビット370(例えば、イオントラップ内の原子またはイオン)の量子情報を操作することが可能である。すなわち、回折レーザビーム365aおよび365bは、量子ゲート操作を可能にするか、または実施するために使用される共伝搬または実質的に共伝搬ゲートビームである。
【0038】
この例では、f1’=f1およびf2’=f2である場合、AOM2 320bからの出力経路のうちの1つは、周波数シフト2*f1および2*f2を伴う2つの重なり合うビーム(例えば、回折レーザビーム365aおよび365b)を有する。「交差項」f2+f1によって生成された回折レーザビームは、異なる角度で回折し、f1+f1’=2*f1およびf2+f2’=2*f2レーザビーム(365aおよび365b)は、空間フィルタリングによって分離することができる。f1’およびf1(f2’およびf2)がわずかに異なるが、│f1’-f1│(│f2’-f2│)が│f1-f2│の一部である場合、f1’+f1およびf2’+f2レーザビームは、ほぼ重なり合うだけであるが、交差項(回折レーザビーム360aおよび360b)から十分に角度的に分離されたままであり、f1’+f1およびf2’+f2レーザビーム(365aおよび365b)を分離することができる。
【0039】
一例では、f1およびf1’(f2およびf2’)の値は約185MHz(215MHz)であり、差│f1’-f1│および│f2’-f2│は約1MHzである。
【0040】
図3に示す例からの変形例では、展開構成における両方のAOMがマルチチャネルAOMであり、各チャネルがf1、f2、f1’、およびf2’の独立したセットを受信する実装を含む。この構成によって、各チャネルが、条件f1=f1’およびf2=f2’を有することが可能になり、こうして、各チャネルからの2つ(またはそれ以上)のトーンについて出力ビームが完全に重なり合う。
【0041】
f1およびf2がそれぞれf1’およびf2’と同じでない場合、AOM1 320aまたはAOM2 320bがマルチチャネルAOMであり、他方が大アパーチャAOMなどのシングルチャネルAOMであり得る状況を有することが可能であり得る。例えば、一つの実装では、展開構成の第一のAOMを大アパーチャAOMとし、第二のAOMをマルチチャネルAOMとすることを含むことができる。この実装では、f1およびf2は、第一のAOMの全ての出力チャネル間で共通であり、f1’およびf2’は、第二のAOMの各チャネルで個別である。同様の実装では、展開構成の第一のAOMをマルチチャネルAOMとし、第二のAOMを大アパーチャAOMとすることができる。この実装では、f1およびf2は、第一のAOMの各出力チャネルで個別であり、f1’およびf2’は、第二のAOM内の全てのチャネル間で共通である。これらの実装の例は図4図6に関連して、以下に提供される。
【0042】
図4は、本開示の態様に従って、マルチチャネルAOMを使用する展開AOM構成の例を表すダイアグラム400を示す。この例では、入射レーザビーム405が回折光学素子(DOE)410に提供されて、レーザビーム415のファンを生成する。レーザビーム415は、光学素子417によってコリメートされ、コリメートされたレーザビーム425は、展開構成の第一のAOMであるAOM1 420aに提供される。AOM1 420aは、N個のチャネル(例えば、N>30)を有するマルチチャネルAOMである。ここで、Nは、操作または制御されるイオンセット470中のイオンの数と同じ整数か、またはおそらくそれよりも大きい整数である。
【0043】
AOM1 420aの各チャネルは、印加されるそれぞれのRF信号のペア(例えば、チャネル上に付与され、そのチャネルに対する個々のf1トーンおよびf2トーンに基づくRF信号のペア)を有することができる。AOM1 420aの各チャネルは、光学素子440によって集束されるf1、f2に基づいて回折レーザビーム435のペアを生成して、集束レーザビーム445を生成することができ、この集束レーザビームは、展開構成の第二のAOM、AOM2 420bに供給される。
【0044】
次いで、AOM2 420bは、チャネルごとに、複数の出力経路を生成することができ、そのうちの1つは、イオンセット470内のそれぞれのイオンで共伝搬するか、または実質的に共伝搬する回折レーザビーム465のペアを含む。これらのレーザビームは、AOM2 420bによっても生成される他のレーザビームから空間的に分離することができる。AOM1 420aと同様に、AOM2 420bの各チャネルは、印加されるそれぞれのRF信号のペア(例えば、チャネル上に付与され、そのチャネルに対する個々のf1’およびf2’トーンに基づくRF信号のペア)を有することができる。
【0045】
光学素子417および440は、それぞれ、単一の光学部品(例えば、レンズ)、または少なくとも1つの光学ステージを含み得る複数の光学部品(例えば、複数のレンズ)の組合せであり得る。
【0046】
ダイアグラム400は、説明するために提供され、限定するためではない。AOM1 420aおよびAOM2 420bによって生成される回折レーザビームは、一般に、チャネルに垂直な方向に、また、この例では、図4の平面外に生成されることが理解されるべきである。したがって、ダイアグラム400は、三次元展開AOM構成の二次元における概念的または概略的表現を捉えることを意図している。
【0047】
図5Aおよび図5Bは、それぞれ、本開示の態様に従って、一方のAOMがマルチチャネルAOMであり、他方のAOMが大アパーチャAOMである展開AOM構成の例を表すダイアグラム500aおよびダイアグラム500bを示す。図5Aのダイアグラム500aは、図4のダイアグラム400と実質的に類似しており、一つの相違点は、展開構成における第一のAOMであるAOM1 520aが、シングルチャネルで、大アパーチャAOMであることである。この例では、入射レーザビーム505、DOE510、レーザビームのファン515、光学素子517、コリメートされたレーザビーム525、大アパーチャAOM1 520a、回折レーザビーム535、光学素子540、集束レーザビーム545、マルチチャネルAOM2 520b、およびイオンセット570内のそれぞれのイオンで共伝搬または実質的に共伝搬する回折レーザビーム465のペアがある。
【0048】
大アパーチャAOM1 520aは、全ての入射レーザビームの共通トーンf1およびf2に基づいて動作し、マルチチャネルAOM2 520bは、各チャネルの個々のf1’およびf2’トーンに基づいて動作する。
【0049】
図5Bのダイアグラム500bは、図5Aにおけるダイアグラム500と実質的に類似しており、一つの相違点は、展開構成における第二のAOMであるAOM2 520bがシングルチャネルで、大アパーチャAOMであり、その一方で、第一のAOMであるAOM520aがマルチチャネルAOMであることである。この例では、マルチチャネルAOM1 520aは、各チャネルの個々のf1およびf2トーンに基づいて動作し、大アパーチャAOM2 520bは、全ての入射レーザビームの共通トーンf1’およびf2’に基づいて動作する。
【0050】
上記のダイアグラム400と同様に、ダイアグラム500aおよびダイアグラム500bは、説明するために提供され、限定するためではない。AOM1 520aおよびAOM2 520bによって生成される回折レーザビームは、一般に、チャネルに垂直な方向に、また、この例では、図5Aおよび図5Bの平面外に生成されることが理解されるべきである。したがって、ダイアグラム500aおよびダイアグラム500bは、三次元展開AOM構成の二次元における概念的または概略的表現を捉えることを意図している。
【0051】
図6は、本開示の態様に従って、展開AOM構成の別の例を表すダイアグラム600を示す。この例では、トーンf1およびf2に基づいて2つのRF信号(例えば、変調信号)を生成し、AOM1 620aに供給する一方、トーンf3に基づいて単一のRF信号を生成し、AOM2 620bに供給する。AOM620aは、ブラッグ角(θ)で入射レーザビーム625を受け取るが、その一部は回折されない(例えば、非回折レーザビーム630)。一方、AOM620aで回折される入射レーザビーム625の一部は、2つの変調レーザビーム(例えば、トーンf1について回折レーザビーム635a、トーンf2について回折レーザビーム635b)を生成する。この2つの回折レーザビームは、異なる角度で回折し、共伝搬しない。
【0052】
2つの回折レーザビーム(635a、635b)は、光学素子640によって、対向するブラッグ角経路(θ)上に再集束され、AOM2 620bに入る。上述のように、AOM2 620bは、印加される単一トーンf3を有し、複数の回折レーザビームを生成する。f1ビーム(回折レーザビーム665a)は、マイナス一次に回折され、正味のf1-f3シフトを取得し、f2ビーム(回折レーザビーム665b)は、プラス一次に回折され、正味のf2+f3シフトを取得する。この2つのレーザビームは、重なり合うレーザビームである。また、生成されるのは、トーンf1に基づく回折レーザビーム655aと、トーンf2に基づく回折レーザビーム655bであり、両者は、重なり合うレーザビーム665aおよび665bから空間的にフィルタリングすることができる。
【0053】
上述の構成のいくつかとは異なり、この構成は、周波数またはトーンf1およびf2について、物理的に同調されなければならない。同調値からのf1およびf2の偏差が小さい場合、重なり合う出力レーザビーム(例えば、f1-f3およびf2+f3)は、わずかに発散する。次に、トーンf3を調整して、発散を最小限に抑えることができる。所与の周波数dに対してf1およびf2がf1+dおよびf2-dにシフトする特定の場合では、AOM1 620aからの出力ビームは、AOM2620bの軸の周りで対称的に収縮する(d>0に対して)こと、または拡大する(d<0に対して)ことになり、f3は、出力ビームと完全に重なり合うように調整することができる。
【0054】
上述の例と同様に、図6に示す構成は、2つのマルチチャネルAOM、または1つのマルチチャネルAOMおよび1つの大アパーチャAOMを使用して実施することができる。
【0055】
考慮を必要とする別の問題は、偏光の操作または制御である。光の偏光を細かく迅速に制御することにより、量子操作の体系性を減らすことができる。このような制御の主な方法は、偏光ドリフトに悩まされる電気光学変調器(EOM)である。このドリフトを低減または排除するであろうEOMの代替方法は、高品質な量子操作のための強力なツールを提供するであろう。以下に、EOMの代わりにAOMの偏光依存性を用いてレーザビーム偏光を制御する様々な態様について述べる。
【0056】
図7Aおよび図7Bは、それぞれ、本開示の態様に従って、AOMを使用する偏光制御の例を表すダイアグラム700aおよびダイアグラム700bを示す。量子ビットの量子制御には、小さな偏光調整(例えば、90°未満のわずかな回転)が時に必要である。このような小さな調整を実行する能力がなければ、量子ビット制御の効率が低下する可能性がある。小さな偏光回転は、電気光学変調器(EOM)で実行され得るが、これらはドリフトする傾向があり、量子処理に使用されるような紫外線(UV)レーザでは、順当に機能しない。電気光学効果に基づくポッケルスセルは、量子処理で必要とされる小さな偏光調整のタイプでは、順当に機能しない。図7Aおよび図7Bは、偏波制御のためのEOMの代わりに、AOMの使用を説明している。
【0057】
図7Aでは、入射光(例えば、入射レーザビーム725)の偏光は、線形であり、回折面に対して、ある角度を有する。AOM720がOFF(オフ)であると、出射非回折レーザビーム730は、入射レーザビーム725と同じ偏光を有する(端部にドットまたは円を有する線によって示されるように)。図7Bでは、AOM720がON(オン)(例えば、AOMにRF信号が印加された状態)で、入射光の一部が入射レーザビーム725から回折されて回折レーザビーム735を生成する。AOM材料に応じて、AOMは一方の投影偏光を他方よりも多く回折する。これは、投影の一方を優先的に抑制し、非回折レーザビーム730の偏光を回転させる(端部にドットまたは円がある線で示されているように)。回転量は、RF信号の入力電力を変化させることによって制御することができる。AOMベースの偏光制御は、レーザビームがイオンまたは原子に照射されて、イオンまたは原子に格納された量子情報を操作する前に、レーザビームに適用することができる。すなわち、本明細書に記載される偏光制御技法は、周波数、位相、振幅、および偏光の制御を提供するために、上述のAOM構成で適用されてもよい。例えば、偏光制御技法は、トラップ内のイオンまたは原子に入射されるべき共伝搬レーザビームに適用することができる。
【0058】
図7Cは、図7Aおよび図7BのAOM720が第一のAOM720であり、非回折レーザビームの全体的な電力を制御するための第二または上流のAOM720aもあるダイアグラム700を示す。一例では、上流AOM720aは、AOM720と同様の方法で動作することができる。
【0059】
量子処理のためのAOM構成について上述した様々な態様は、図2図7Cに関連して記載した関連する例を用いて、異なる装置またはシステムによる方法またはプロセスとして実施することができる。そのような方法、プロセス、装置、またはシステムのさらなる詳細は、以下でさらに説明される。
【0060】
ここで、図8を参照すると、本開示の態様による例示的なコンピュータ装置800が示されている。コンピュータ装置800は、例えば、単一の計算装置、複数の計算装置または分散計算システムを表し得る。コンピュータ装置800は、量子コンピュータ(例えば、量子情報処理(QIP)システム)、古典的コンピュータ、または量子および古典的計算機能の組合せとして構成されてもよい。例えば、コンピュータ装置800は、トラップされたイオン技術に基づく量子アルゴリズムを使用して情報を処理するために使用されてもよく、したがって、異なるタイプのAOM構成が量子処理のために使用され得る記載された技法のいくつかを実装してもよい。本明細書で説明される技法を実装することができるQIPシステムとしてのコンピュータ装置800の一般的な例が、図12Aおよび図12Bに表す例に示される。
【0061】
一例では、コンピュータ装置800は、本明細書で説明する特徴のうちの1つまたは複数に関連する処理機能を実行するためのプロセッサ810を含むことができる。例えば、プロセッサ810は、上述のAOM構成または実装のうちの1つまたは複数を使用することによって、イオンまたは原子に格納された量子情報を操作する態様を制御、調整、および/または実行するように構成され得る。プロセッサ810は、単一または複数のセットのプロセッサまたはマルチコアプロセッサを含んでもよい。さらに、プロセッサ810は、統合処理システムおよび/または分散処理システムとして実装されてもよい。プロセッサ810は、中央処理ユニット(CPU)、量子処理ユニット(QPU)、グラフィックス処理ユニット(GPU)、またはこれらのタイプのプロセッサの組合せを含むことができる。一態様では、プロセッサ810は、コンピュータ装置800の一般的なプロセッサを参照することができ、これは、さらに特定の機能を実行するために、追加のプロセッサ810を含むこともできる。プロセッサ810は、量子操作、アルゴリズム、またはシミュレーションを実行するために、1つまたは複数のトラップされたイオンを使用することを含むことができる。
【0062】
一例では、コンピュータ装置800は、本明細書に記載する機能を実行するためにプロセッサ810によって実行可能な命令を格納するメモリ820を含んでもよい。一実装では、例えば、メモリ820は、本明細書に記載する1つまたは複数の機能または操作を実行するためのコードまたは命令を格納するコンピュータ可読格納媒体に対応することができる。一例では、メモリ820は、図9図10、および図11に関連して以下で説明する方法900、1000、および1100の態様を実行するための命令を含み得る。プロセッサ810と同様に、コンピュータ装置800の一般的なメモリ820を参照することができ、これは、メモリ820は、より具体的な機能のために命令および/またはデータを格納するために、追加のメモリ820を含むこともできる。
【0063】
さらに、コンピュータ装置800は、本明細書で説明するように、ハードウェア、ソフトウェア、およびサービスを利用して、1人または複数の当事者との通信を確立し、維持することを提供する通信部品830を含むことができる。通信部品830は、コンピュータ装置800上の部品間でも、コンピュータ装置800と、外部装置、例えば、通信網を介して配置された装置および/またはコンピュータ装置800にシリアルまたはローカルに接続された装置との間でも通信を実行することができる。例えば、通信部品830は、1つまたは複数のバスを含むことができ、さらに、外部装置とインタフェースするために操作可能な送信機および受信機にそれぞれ関連する送信チェーン部品および受信チェーン部品を含むことができる。
【0064】
さらに、コンピュータ装置800は、データストア840を含むことができ、データストア840は、本明細書で説明する実装に関連して使用される情報、データベース、およびプログラムの大容量格納を提供するハードウェアおよび/またはソフトウェアの任意の適切な組合せとすることができる。例えば、データストア840は、オペレーティングシステム860(例えば、従来OS、または量子OS)のためのデータリポジトリであってもよい。一実施形態では、データストア840は、メモリ820を含むことができる。
【0065】
コンピュータ装置800は、また、コンピュータ装置800のユーザから入力を受信するように操作可能であり、さらにユーザに提示するための出力を生成するように、または異なるシステムに(直接的または間接的に)提供するように操作可能なユーザインタフェース部品850を含むことができる。ユーザインタフェース部品850は、1つまたは複数の入力装置を含むことができる。入力装置には、キーボード、ナンバーパッド、マウス、タッチ感応ディスプレイ、デジタイザ、ナビゲーションキー、ファンクションキー、マイクロフォン、音声認識部品、ユーザからの入力を受信することができる任意の他の機構、またはそれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。さらに、ユーザインタフェース部品850は、1つまたは出力装置を含むことができる。出力装置には、ディスプレイ、スピーカ、触覚フィードバック機構、プリンタ、ユーザに出力を提示することができる任意の他の機構、またはそれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
一実装では、ユーザインタフェース部品850は、オペレーティングシステム860の操作に対応するメッセージを送信および/または受信することができる。さらに、プロセッサ810は、オペレーティングシステム860および/またはアプリケーションまたはプログラムを実行することができ、メモリ820またはデータストア840は、それらを格納することができる。
【0067】
コンピュータ装置800がクラウドベースのインフラ解決策の一部として実装される場合、ユーザインタフェース部品850を使用して、クラウドベースのインフラ解決策のユーザがコンピュータ装置800とリモートで対話できるようにすることが可能になる。
【0068】
図9は、本開示の態様による量子処理におけるレーザビーム伝搬を制御するための方法900の一例を示すフロー図である。一態様では、方法900は、上述のコンピュータ装置800のようなコンピュータシステム(例えば、コンピュータシステムの動作の一部として)で実行されてもよく、ここで、例えば、方法900の機能を実行または制御するために、プロセッサ810、メモリ820、データストア840、および/またはオペレーティングシステム860が使用されてもよい。同様に、方法900の機能は、QIPシステム1200およびその部品(例えば、光学コントローラ1220およびそのサブ部品)などのQIPシステムの1つまたは複数の部品によって実行または制御されてもよく、これについては、図12Aおよび図12Bに関連して以下でより詳細に説明する。方法900の態様は、少なくとも図3図5BのAOM構成または実装に関連して説明され得る。
【0069】
910において、方法900は、第一のAOMによって、入射レーザビームから第一のRFトーンに基づく第一の回折レーザビームと、第二のRFトーンに基づく第二の回折レーザビームとを生成するステップを含み、第一の回折レーザビームと第二の回折レーザビームとは、異なる角度で回折される。
【0070】
920において、方法900は、光学構成を介して、第一の回折レーザビームおよび第二の回折レーザビームを第二のAOMに集束させるステップを含む。
【0071】
930において、方法900は、第二のAOMによって、第一の回折レーザビームおよび第二の回折レーザビームから、第一のRFトーンおよび第三のRFトーンに基づく第三の回折レーザビームと、第二のRFトーンおよび第四のRFトーンに基づく第四の回折レーザビームとを少なくとも生成するステップを含み、第三の回折レーザビームと第四の回折レーザビームとは、トラップ内のイオン鎖のそれぞれのイオンに入射するときに、実質的に平行になるように回折される。
【0072】
940において、方法900は、イオン内の量子情報を制御して、第三の回折レーザビームおよび第四の回折レーザビームに基づいて量子処理を実行するステップを含む。
【0073】
方法900の態様において、第一のRFトーンは、第三のRFトーンと同じであり、第二のRFトーンは、第四のRFトーンと同じであり、第三の回折レーザビームと第四の回折レーザビームとは、それぞれのイオンにおいて共伝搬する。
【0074】
方法900の態様において、第一のRFトーンは、第三のRFトーンとは異なり、第二のRFトーンは、第四のRFトーンとは異なり、第三の回折レーザビームおよび第四の回折レーザビームは、それぞれのイオンで実質的に共伝搬する。
【0075】
本方法900の態様において、本方法は、第一のRFトーンに基づいて第一のRF制御信号を生成するステップと、第二のRFトーンに基づく第二のRF制御信号を生成するステップと、第三のRFトーンに基づく第三のRF制御信号を生成するステップと、第四のRFトーンに基づく第四のRF制御信号を生成するステップと、第一のRF制御信号および第二のRF制御信号を第一のAOMに供給して、第一の回折レーザビームおよび第二の回折レーザビームを生成するステップと、第三のRF制御信号および第四のRF制御信号を第二のAOMに供給して、第一の回折レーザビームおよび第二の回折レーザビームを生成するステップと、を含む。
【0076】
本方法900の態様において、第三の回折レーザビームおよび第四の回折レーザビームを少なくとも生成するステップは、第一のRFトーンおよび第四のRFトーンに基づく第五の回折レーザビームと、第二のRFトーンおよび第三のRFトーンに基づく第六の回折レーザビームとを生成するステップを含み、この方法は、空間フィルタリングによって、第三の回折レーザビームおよび第四の回折レーザビームを第五の回折レーザビームおよび第六の回折レーザビームから絶縁するステップをさらに含む。
【0077】
方法900の態様において、第一のAOMおよび第二のAOMのそれぞれは、マルチチャネルAOMであり、第一のAOMの各チャネルは、それぞれの第一のRFトーンおよび第二のRFトーンを有し、第二のAOMの各チャネルは、それぞれの第三のRFトーンおよび第四のRFトーンを有する。
【0078】
方法900の態様において、第一のAOMはマルチチャネルAOMであり、第二のAOMはシングルチャネルAOMであり、または第一のAOMはシングルチャネルAOMであり、第二のAOMはマルチチャネルAOMである。
【0079】
方法900の態様において、第一のAOMは、大アパーチャAOMであり、第二のAOMは、マルチチャネルAOMであり、第一のRFトーンおよび第二のRFトーンは、第一のAOMの全てのチャネルに共通であり、第三のRFトーンおよび第四のRFトーンは、第二のAOMのチャネルのそれぞれに個別に設定される。
【0080】
方法900の態様において、第一のAOMは、マルチチャネルAOMであり、第二のAOMは、大アパーチャAOMであり、第一のRFトーンおよび第二のRFトーンは、第一のAOMのチャネルのそれぞれに対して個別に設定され、第三のRFトーンおよび第四のRFトーンは、第二のAOMの全てのチャネルに対して共通である。
【0081】
図10は、本開示の態様による量子処理におけるレーザビーム伝搬を制御するための方法1000の一例を示すフロー図である。一態様では、方法1000は、例えば、プロセッサ810、メモリ820、データストア840、および/またはオペレーティングシステム860が、方法1000の機能を実行または制御するために使用され得る、上述のコンピュータ装置800などのコンピュータシステムにおいて(例えば、コンピュータシステムの動作の一部として)実行され得る。同様に、方法1000の機能は、QIPシステム1200およびその部品(例えば、光学コントローラ1220およびそのサブ部品)のようなQIPシステムの1つまたは複数の部品によって実行または制御されてもよく、これについては、図12Aおよび図12Bに関連して以下でより詳細に説明する。方法1000の態様は、少なくとも図6のAOM構成または実装に関連して説明することができる。
【0082】
1010において、方法1000は、第一のAOMによって、入射レーザビームから、第一のRFトーンに基づく第一の回折レーザビームと、第二のRFトーンに基づく第二の回折レーザビームとを生成するステップを含み、第一の回折レーザビームと第二の回折レーザビームとは異なる角度で回折される。
【0083】
1020において、方法1000は、光学部品を介して、第一の回折レーザビームおよび第二の回折レーザビームを、対向するブラッグ角経路に集束させて、第二のAOMに入れるステップを含む。
【0084】
1030において、方法1000は、第二のAOMによって、第一の回折レーザビームおよび第二の回折レーザビームから、第一のRFトーンおよび第三のRFトーンに基づく第三の回折レーザビームと、第二のRFトーンおよび第三のRFトーンに基づく第四の回折レーザビームとを少なくとも生成するステップを含み、第三の回折レーザビームと第四の回折レーザビームとは、トラップ内のイオン鎖のそれぞれのイオンに入射するときに、実質的に平行になるように回折される。
【0085】
1040において、方法1000は、イオン内の量子情報を制御して、第三の回折レーザビームおよび第四の回折レーザビームに基づいて量子処理を実行するステップを含む。
【0086】
方法1000の態様において、第一のAOMおよび第二のAOMのそれぞれは、マルチチャネルAOMであり、第一のAOMの各チャネルは、それぞれの第一のRFトーンおよび第二のRFトーンを有し、第二のAOMの各チャネルは、それぞれの第三のRFトーンを有する。
【0087】
方法1000の態様において、第一のAOMはマルチチャネルAOMであり、第二のAOMはシングルチャネルAOMであり、または第一のAOMはシングルチャネルAOMであり、第二のAOMはマルチチャネルAOMである。
【0088】
方法1000の態様において、第一のAOMは、大アパーチャAOMであり、第二のAOMは、マルチチャネルAOMであり、第一のRFトーンおよび第二のRFトーンは、第一のAOMの全てのチャネルに共通であり、第三のRFトーンは、第二のAOMのチャネルのそれぞれに個別に設定される。
【0089】
方法1000の態様において、第一のAOMはマルチチャネルAOMであり、第二のAOMは大アパーチャAOMであり、第一のRFトーンおよび第二のRFトーンは、第一のAOMのチャネルのそれぞれに対して個別に設定され、第三のRFトーンは、第二のAOMの全てのチャネルに共通である。
【0090】
図11は、本開示の態様による量子処理における偏光制御のための方法1100の一例を示すフロー図である。一態様では、方法1100は、例えば、プロセッサ810、メモリ820、データストア840、および/またはオペレーティングシステム860が、方法1100の機能を実行または制御するために使用され得る、上述のコンピュータ装置800などのコンピュータシステムにおいて(例えば、コンピュータシステムの運用の一部として)実行され得る。同様に、方法1100の機能は、図12Aおよび12Bに関連して以下でより詳細に説明されるQIPシステム1200およびそのコンポーネント(たとえば、光学コントローラ1220およびそのサブコンポーネント)などのQIPシステムの1つまたは複数のコンポーネントによって実行または制御されてもよい。方法1100の態様は、少なくとも図7Aおよび図7BにおけるAOM構成または実装に関連して説明され得る。
【0091】
1110において、方法1100は、AOMに入射レーザビームを提供するステップを含む。
【0092】
1120において、方法1100は、AOMによって入射レーザビームから、AOMに印加された制御RF信号に基づいて、非回折レーザビームおよび回折レーザビームを生成するステップを含み、非回折レーザビームの偏光が入射レーザビームの偏光に対して回転される。
【0093】
1130において、方法1100は、非回折レーザビームをトラップ内のイオン鎖のイオンに照射して、イオン内の量子情報を制御することによって、量子処理を実行するステップを含む。
【0094】
方法1100の別の態様では、方法1100は、AOMから上流に第二のAOMを提供することによって、非回折レーザビームの全体的な電力を制御するステップを含むことができる。例えば、図7Cのダイアグラム700は、図7Aおよび図7BのAOM720が第一のAOM720であり、非回折レーザビームの全体的な電力を制御するための第二または上流のAOM720aもあることを示す。
【0095】
方法1100の別の態様では、回折レーザビームは、一次回折レーザビームであり、方法1100は、AOMから上流に第二のAOMを設け、一次回折レーザビームを第二のAOMに照射することによって、非回折レーザビームの全体的な電力を制御するステップをさらに含む。
【0096】
方法1100のさらに別の態様では、方法1100は、AOMから上流に第二のAOMを設け、偏光制御が存在しても第二のAOMの全体的な電力を安定に維持するように、第二のAOMへの高周波(RF)電力を制御することによって、非回折レーザビームの全体的な電力を制御するステップを含むことができる。
【0097】
図12Aは、本開示の態様に従うQIPシステム1200の一例を示すブロック図である。QIPシステム1200は、量子計算システム、コンピュータ装置、トラップイオン量子コンピュータなどと呼ばれることもある。一態様では、QIPシステム1200は、図8のコンピュータ装置800の量子コンピュータ実装の部分に対応し得る。
【0098】
QIPシステム1200は、原子種(例えば、中性原子のフラックス)を、光学コントローラ1220(例えば、図12Bを参照)によって一旦イオン化される(例えば、光イオン化される)と、原子種をトラップするイオントラップ1270を有するチャンバ1250に提供するソース1260を含むことができる。光学コントローラ1220内の光源1230は、原子種のイオン化、原子イオンの制御(例えば、位相制御)、光学コントローラ1220内の撮像システム1240内で動作する画像処理アルゴリズムによって監視し、追跡することができる原子イオンの蛍光のために、および/または本開示で説明するAOM構成および操作のいくつかを実行するために使用することができる1つまたは複数のレーザ源を含むことができる。一態様では、光源1230は、光学コントローラ1220とは別個に実装され得る。
【0099】
撮像システム1240は、イオントラップに提供されている間、またはイオントラップ1270に提供された後に、原子イオンを監視するための高分解能撮像装置(例えば、CCDカメラ)を含んでもよい。一態様では、撮像システム1240は、光学コントローラ1220とは別個に実装することができるが、画像処理アルゴリズムを使用して原子イオンを検出し、識別し、ラベル付けするための蛍光の使用は、光学コントローラ1220と調整する必要がある場合もある。別の態様では、撮像システム1240は、イオンによって散乱される光子を誘導するために使用され得る撮像光学系を含み得、光子は、測定時に、イオンの位置および/または量子ビットの量子状態などの情報を得るために使用され得る。光子は、例えば、撮像装置および/または光電子増倍管などの単一の光子検出器を含む、異なるタイプの検出器に向けることができる。光子は、光ファイバおよび/または他のタイプの光導波路を使用して検出器に向けることができる。
【0100】
QIPシステム1200は、また、QIPシステム1200の他の部分(図示せず)とともに動作して、単一量子ビット演算または多重量子ビット演算および拡張量子計算を含む量子アルゴリズムまたは量子操作を実行することができるアルゴリズム部品1210も含むことができる。そのように、アルゴリズム部品1210は、量子アルゴリズムまたは量子操作の実装を可能にするために、QIPシステム1200の様々な部品(例えば、光学コントローラ1220)に命令を提供してもよい。一例では、アルゴリズム部品1210は、本明細書で説明する様々なAOM構成に関連する動作の性能を実行し、調整し、および/または命令することができる。
【0101】
図12Bは、光学コントローラ1220の少なくとも一部分を示す。この例では、光学コントローラ1220は、ビームコントローラ1221と、光源1230と、撮像システム1240と、AOM構成1237とを含むことができ、AOM構成は、AOMのうちの1つまたは複数と、DOEおよびレンズまたはレンズアセンブリを含む光学部品とを含むことができる。点線によって示すように、光源1230、撮像システム1240、およびAOM構成1237のうちの1つまたは複数は、光学コントローラ1220とは別個であるが、光学コントローラ1220と通信するように実装され得る。撮像システム1240は、CCD1241(または同様の撮像装置またはカメラ)と、画像処理アルゴリズム部品1242とを含む。光源1230は、変調器1225と、複数のレーザ源1235a、…、1235bとを含み、レーザ源は、(例えば、量子ビット情報の操作のためのレーザビームまたはゲートビームを生成するために)上述の機能のうちの1つまたは複数のために使用され得る。一態様では、変調器1225は、本明細書で説明したRF発生器(たとえば、図2のRF発生器210aおよび210b)のうちの1つまたは複数を実装することができる。
【0102】
ビームコントローラ1221は、量子処理のためのAOM構成のために、本明細書に記載される種々の態様を実施するように構成される。ビームコントローラ1221は、異なるトーンに基づいてRF制御信号の生成および印加に関連する様々な態様を制御するためのトーン生成部品1224を有するAOM構成制御部品1222と、適切なRF制御信号を生成することによって偏光を細かに迅速に制御するためにAOMを使用することに関連する様々な態様を制御するための偏光部品1226とを含んでもよい。一実装では、AOM構成制御部品1222は、ビームコントローラ1221とは別個であるが、ビームコントローラ1221と通信するように実装され得る。
【0103】
光学コントローラ1220の様々な部品は、本開示で説明される各種機能、例えば、図9図10、および図11の方法900、方法1000、および方法1100を実行するために、個別に、または組み合わせて動作し得る。さらに、光学コントローラ1220の様々な部品は、本開示で説明される各種機能、例えば、図9図10、および図11の方法900、方法1000、および方法1100を実行するために、QIPシステム1200の部品のうちの1つまたは複数とともに動作し得る。
【0104】
上記の例は、一般に、2つの周波数またはトーンを使用することに基づくが、これらの例で使用されるものと同様の技法は、3つ以上の周波数またはトーンが使用される場合にも適用されることを理解されたい。上述の技術は、ゲートビームだけでなく、例えば、回折レーザビームの分離が必要とされる場合のドップラー冷却および同様の動作に使用される連続波にも使用することができることも理解されたい。
【0105】
本開示は、図示された実施形態に従って提供されたが、当業者は、実施形態にバリエーションがあり得、それらのバリエーションも本開示の範囲内にあることを容易に認識するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、当業者は多くの修正を行うことができる。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B