(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ウイルス感染及び活性抑制方法
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20231218BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20231218BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231218BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20231218BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20231218BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K31/713
A61K39/395 N
A61P31/22
C12N15/113 Z ZNA
(21)【出願番号】P 2021571026
(86)(22)【出願日】2020-06-01
(86)【国際出願番号】 KR2020007100
(87)【国際公開番号】W WO2020242278
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】10-2019-0064129
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509329800
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(73)【特許権者】
【識別番号】521371991
【氏名又は名称】インスティチュート フォア ベーシック サイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム,ビッ.ネリ
(72)【発明者】
【氏名】ヨ,ジンア
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドンワン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヨン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ス-ジン
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/216390(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0081664(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61K 48/00
A61K 39/395
A61K 31/713
A61K 31/7105
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス感染予防又はウイルス感染症治療用薬剤学的組成物であって、
(a)TENT4A
及びTENT4Bの一つ以上の抑制剤
;
(b)TENT4A、TENT4B及びZCCHC14の抑制剤;又は、
(c)ZCCHC14の抑制剤
を
含み、
前記抑制剤は、
TENT4A及びTENT4B;TENT4A、TENT4B及びZCCHC14;又は、ZCCHC14の発現を抑制するsiRNA又はshRNA、又は
TENT4A及びTENT4B;TENT4A、TENT4B及びZCCHC14;又は、ZCCHC14の
混合テーリング誘導活性を抑制する抗体又はその抗原結合断片であり、前記ウイルスは、ヘルペスウイルス科に属するウイルスである、薬剤学的組成物。
【請求項2】
前記ヘルペスウイルス科に属するウイルスは、イルトウイルス(Iltovirus)、マルディウイルス(Mardivirus)、スクータウイルス(Scutavirus)、単純ウイルス(Simplexvirus)、バリセロウイルス(Varicellovirus)、巨大細胞ウイルス(Cytomegalovirus)、ムロメガロウイルス(Muromegalovirus)、プロボスシウイルス(Proboscivirus)、ロゼオロウイルス(Roseolovirus)、リンフォクリプトウイルス(Lymphocryptovirus)、マカウイルス(Macavirus)、ペルカウイルス(Percavirus)及びラディノウイルス(Rhadinovirus)からなる群から選ばれるいずれか一つである、請求項1に記載の薬剤学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、大韓民国科学技術情報通信部の支援下に、課題番号1711079098によってなされたものであり、当該課題の研究管理専門機関は基礎科学研究院、研究事業名は「基礎科学研究院研究運営費支援」、研究課題名は「RNAによる細胞運命調節研究」、主管機関は基礎科学研究院、研究期間は2018.01.01.~2018.12.31.である。
【0002】
本特許出願は、2019年5月30日に大韓民国特許庁に提出された大韓民国特許出願第10-2019-0064129号に対して優先権を主張し、該特許出願の開示事項は本明細書に援用により組み込まれる。
【0003】
本発明は、ウイルスRNAに対する混合されたテーリングを誘導することにより、ウイルス感染及び感染症を予防又は治療する技術に関する。
【0004】
〔背景技術〕
B型肝炎は、血液及び血液生成物、汚染した針のような汚染した材料によって腸管外に、感染した又は媒介体(carrier)母体から性的にそして垂直的にそれらの子女から伝染されたウイルス性疾患である。世界保健機構(World Health Organization)によれば、20億以上の人々が全世界的に感染しており、毎年約4百万人が急性であり、毎年百万人が死亡し、そして350~400百万が慢性媒介体として推定される(World Health Organization:Geographic Prevalence of Hepatitis B Prevalence,2004.http://www.who.int/vaccines-surveillance/graphics/htmls/hepbprev.htm)。
【0005】
このウイルス、HBVは、二重鎖からなる肝親和性(hepatotropic)ウイルスであり、人及び人以外の霊長類のみを感染させる。ウイルス複製は主に肝で発生し、そして、これよりは少ないが、腎臓、膵臓、骨髄及び脾臓で起きる(Hepatitis B virus biology.Microbiol Mol Biol Rev.64:2000;51-68.)。ウイルス及び免疫標識は血液から探知可能であり、そして、特徴的な抗原-抗体パターンは、経時的に進化する。初めて探知可能なウイルス性標識はHBsAgであり、その次はB型肝炎e抗原(HBeAg)及びHBV DNAである。潜伏期(incubation period)において力価は高いことがあるが、しかし、HBV DNA及びHBeAgレベルは疾病の開始時期に低下し始め、臨床的に疾病の絶頂時期には探知不可であり得る(Hepatitis B virus infectionnatural history and clinical consequences.N Engl J Med..350:2004;1118-1129)。HBeAgは、血液内探知可能なウイルス性標識であり、そして活性ウイルス性複製と関連し、そのため、ウイルスロード(load)及び感染性が高い(Hepatitis B virus e antigenthe dangerous end game of hepatitis B virus.N Engl J Med.347:2002;208-210)。抗HBsAb及び抗HBcAb(IgG)の存在は、既に感染した個体において回復及び免疫性を示す。
【0006】
AASLD(American Association for the Study of Liver Diseases)及びEASL(European Association for the Study of the Liver)によれば、HBV慢性感染の現在推奨治療法は、インターフェロンアルファ(INFα)、PEG化されたインターフェロンアルファ-2a(Peg-IFN2a)、エンテカビル(entecavir)、及びテノホビル(tenofovir)を含む。ヌクレオシド及びヌクレオチド治療剤(therapies)、エンテカビル及びテノホビルは、ウイルスロードを減少させるのには成功的であるが、HBeAg血清変換(seroconversion)及びHBsAg損失率は、IFNα治療剤を用いて得られたそれによりは遥かに低い。ラミブジン(3TC)、テルビブジン(LdT)、及びアデホビル(adefovir)を含む類似のその他治療剤も利用されるが、全般的にヌクレオシド/ヌクレオチド治療剤では、抵抗の発生が治療効果を制限する。
【0007】
したがって、新しい抗ウイルス性治療剤を発見し開発することが当分野で必要である。
【0008】
一方、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)は、ヘルペスウイルスファミリーに属する偏在するウイルスである。前記ウイルスは、外皮(tegument)で囲まれたカプシドに含まれ、その表面上に糖タンパク質スパイクを伴う脂質二重層に囲まれた線形二重鎖デオキシリボ核酸(DNA)で構成される。このファミリーの他の構成員と同様に、HCMVは、潜伏期及び再活性化の特性を有する。HCMVは、多くの細胞で感染し、潜伏する能力を有する。
【0009】
免疫適格宿主において、大部分のHCMV感染は、少しの非特異的症状、例えば、疲労、倦怠感、中等度の熱、リンパ節病症、肝肥大又は肝酵素の若干の増加であって、無症状又はごく軽症である。しかしながら、異種親和性陰性単核球症は、以前に健康な個人の略10%で観察される。
【0010】
HCMV治療にも新しい戦略が要求されている。
【0011】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明者らは、TENT4A/BがウイルスRNA、より具体的にmRNAの混合されたテーリング(mixed tailing)に関与して、宿主細胞内におけるウイルスmRNAの分解を抑制するのに役立てるという事実を明らかにしたし、宿主細胞としての対象(subject)のTENT4A/B発現及び活性を抑制する場合に、混合されたテーリングを抑制することにより、ウイルスRNAのデアデニル化を促進し、ウイルスRNAの速い分解を促進できることを究明し、本発明を完成するに至った。
【0012】
したがって、本発明の目的は、ウイルス感染予防又はウイルス感染症治療用薬剤学的組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、ウイルス感染予防又はウイルス感染症治療用薬剤学的組成物のスクリーニング方法を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、ウイルス耐性細胞製造方法を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、RNA配列安定化方法を提供することにある。
【0016】
〔課題を解決するための手段〕
本発明の一態様によれば、本発明は、ウイルスRNAの混合されたテーリング(Mixed tailing)に関与するTENT4A及びTENT4Bのいずれか一つ以上の抑制剤を含むウイルス感染予防又はウイルス感染症治療用薬剤学的組成物であって、前記抑制剤は、TENT4A及びTENT4Bのいずれか一つ以上の発現を抑制するsiRNA又はshRNA、又はTENT4A及びTENT4Bのいずれか一つ以上の活性を抑制する抗体又はその抗原結合断片である、薬剤学的組成物を提供する。
【0017】
本発明者らは、TENT4A/BがウイルスRNA、より具体的にmRNAの混合されたテーリング(mixed tailing)に関与して、宿主細胞内におけるウイルスmRNAの分解を抑制するのに役立てるという事実を明らかにしたし、宿主細胞としての対象(subject)のTENT4A/B発現及び活性を抑制する場合に、混合されたテーリングを抑制することによって、ウイルスRNAのデアデニル化を促進し、ウイルスRNAの速い分解を促進できることを究明した。
【0018】
RNAテーリング(3’末端に非テンプレート化されたヌクレオチド添加)は、最も広範囲で且つ保存された類型のRNA修飾である。末端ヌクレオチジルトランスフェラーゼ(terminal nucleotidyltransferases; TENT)とも知られた非カノニカル(Noncanonical)ポリ(A)ポリメラーゼは、転写後RNAの3’末端にヌクレオチドを統合して成熟、安定性及び活性を調節する。従来、本発明者らは、RNA3’末端を探索し、ポリ(A)テール長を測定するためのTAIL-seqという方法を開発した。TAIL-seq実験において脊椎動物mRNAsに対するウリジル化(uridylation)及びグアニル化(guanylation)のような非カノニカルなテーリングイベントを発見した。末端ウリジリルトランスフェラーゼ(TUT4及びTUT7)は、PABPC除去後にデアデニル化されたポリ(A)テール(~25ヌクレオチドよりも短い)をウリジル化させた。Uテール、特に、オリゴ-Uテールは、mRNA崩壊を促進する。逆に、グアニル化は、長いポリ(A)テールに対して発生し、mRNAを速いデアデニル化から保護する。2つの関連酵素TENT4A(PAPD7又はTUT5ともいう。)及びTENT4B(PAPD5又はTUT3ともいう。)は、間欠的な非アデノシン残基(最も一般にグアノシン)でmRNAポリ(A)テールを拡張し、‘混合されたテール(Mixed tails)’を生成する。この純粋でないポリ(A)テールは、CCR4-NOT(CNOT)複合体によるデアデニル化を妨害し、mRNAの安定性を向上させる。混合されたテーリング(Mixed tailing)は、新しい類型の転写後調節(post-transcriptional regulation)として作用するように提案された。
【0019】
本明細書における用語、“混合されたテーリング”は、ウイルス性RNA、より具体的にウイルス性mRNAのポリ(A)テール配列部分の一つ以上の配列が、グアニル化又はウリジル化され、グアニン又はウリジンのような他の核酸配列に置換される作用を意味する。本明細書において、上述の“混合されたテーリング”は、“混合テーリング”、“テーリング”などと簡略に記載されてよい。ウイルス性RNAのポリ(A)テール配列にグアニル化又はウリジル化が起きると、当該ポリ(A)テールのデアデニル化が抑制され、mRNAの分解は遅延される。
【0020】
本発明のTENT4A及びTENT4Bは、末端ヌクレオチジルトランスフェラーゼ(terminal nucleotidyltransferases)に属するノンカノニカルポリ(A)ポリメラーゼであり、本発明者らは、TENT4A及びTENT4BがウイルスmRNAのポリ(A)テールの混合されたテーリングに関与するということを初めて究明した。
【0021】
本発明の一具現例において、本発明のTENT4A及びTENT4Bは、ウイルス感染危険があるか、ウイルスに感染した状態である対象(subject)から由来したものである。本発明者らは、対象内に感染したウイルスmRNAは、対象から由来したTENT4A及びTENT4Bによって混合されたテーリングが誘導され得るということを究明した。
【0022】
本発明の一具現例において、本発明のウイルスは、TENT4A及びTENT4Bのいずれか一つ以上によってRNAテーリングが誘発されるウイルスである。より具体的に、本発明者らは、TENT4A及びTENT4B依存的調節のために、転写後調節要素(post-transcriptional regulatory element,PRE)、より具体的にCNGGNタイプのペンタループ(pentaloop)が重要な役割を果たすことを究明した。また、本発明者らは、HBV及びHCMVがいずれもペンタループを利用する類似の方式で作用し、TENT4A/Bを募集し、混合されたテーリングを誘発するということを究明した。本発明のHBV及びHCMVは、非常に異なる寿命周期と組織特異性を持つ別個のウイルス(ヘパドナウイルス科に属するウイルスとヘルペスウイルス科に属するウイルス)であって、遺伝子発現の利点のための同一の戦略を使用し、このような収斂進化とこのシス作用(cis-acting)要素の単純性は、このメカニズムが他のウイルスにおいて使用可能であるということを示す。
【0023】
本発明の一具体例において、本発明のウイルスは、ヘパドナウイルス科又はヘルペスウイルス科に属するウイルスである。
【0024】
本発明の一具現例において、本発明のヘパドナウイルス科に属するウイルスは、B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus)、地リスB型肝炎ウイルス(Ground Squirrel Hepatitis B)、ウッドチャックB型肝炎ウイルス(Woodchuck Hepatitis B)、アヒルB型肝炎ウイルス(Duck hepatitis B)及びサギB型肝炎ウイルス(Heron Hepatitis B)からなる群から選ばれるいずれか一つである。
【0025】
本発明の一具現例において、本発明のヘルペスウイルス科に属するウイルスは、イルトウイルス(Iltovirus)、マルディウイルス(Mardivirus)、スクータウイルス(Scutavirus)、単純ウイルス(Simplexvirus)、バリセロウイルス(Varicellovirus)、巨大細胞ウイルス(Cytomegalovirus)、ムロメガロウイルス(Muromegalovirus)、プロボスシウイルス(Proboscivirus)、ロゼオロウイルス(Roseolovirus)、リンフォクリプトウイルス(Lymphocryptovirus)、マカウイルス(Macavirus)、ペルカウイルス(Percavirus)及びラディノウイルス(Rhadinovirus)からなる群から選ばれるいずれか一つである。
【0026】
本発明で使われる用語、“siRNA”は、特定のmRNAの切断(cleavage)によってRNAi(RNA interference)現象を誘導し得る短い二重鎖RNAを意味する。標的遺伝子のmRNAと相同の配列を有するセンスRNA鎖と、これと相補的な配列を有するアンチセンスRNA鎖とで構成される。siRNAは、標的遺伝子の発現を抑制できるので、効率的な遺伝子ノックダウン方法として又は遺伝子治療の方法として提供可能である。
【0027】
siRNAは、RNA同士が対をなす二重鎖RNA部分が完全に対をなすものに限定されず、ミスマッチ(対応する塩基が相補的でない)、バルジ(一方の鎖に対応する塩基がない)などにより、対をなしていない部分が含まれてもよい。全体長は10~100塩基、好ましくは15~80塩基、より好ましくは20~70塩基である。siRNA末端構造は、標的遺伝子の発現をRNAi効果によって抑制できるものであれば、平滑(blunt)末端又は粘着(cohesive)末端のいずれであってもよい。粘着末端構造は、3’末端が突出した構造も、5’末端側が突出した構造も可能である。突出する塩基数は限定されない。また、siRNAは、標的遺伝子の発現抑制効果を維持できる範囲において、例えば、片側末端の突出部分に低分子RNA(例えば、tRNA、rRNA、ウイルスRNAのような天然のRNA分子又は人工のRNA分子)を含むことができる。siRNA末端構造は、両側に全て切断構造を有する必要はなく、二重鎖RNA一般の末端部位がリンカーRNAによって接続されたステップループ形の構造であってもよい。
【0028】
本発明で用いられるsiRNAは、それ自体でポリヌクレオチドペアリングを有する完全な形態、すなわち、試験管でsiRNAを直接合成した2形質転換過程を経て細胞中に導入される形態であるか、生体内に投与された後に、このような形態を有するように一つの単一鎖オリゴヌクレオチド断片とそれの逆方向(reverse)相補物とがスぺーサーによって分離された単一鎖ポリヌクレオチドから誘導され得る形態、例えば、siRNAが細胞内で発現するように製造されたsiRNA発現ベクター又はPCR誘導されたsiRNA発現カセットが形質転換又は感染(infection)過程を経て細胞中に導入される形態であってよい。siRNAを製造し、細胞又は動物に導入する方法の決定は、目的及び標的遺伝子産物の細胞生物学的機能によって変わってよい。
【0029】
本発明で使われる用語、“shRNA”は、siRNAの高価の生合成費用、低い細胞形質感染効率によるRNA干渉効果の短時間維持などの短所を克服するためのものであり、RNA重合酵素IIIのプロモーターからアデノウイルス、レンチウイルス及びプラスミド発現ベクターシステムを用いてこれを細胞内に導入して発現させることができ、このようなshRNAは、細胞内に存在するsiRNAプロセシング酵素(Dicer or Rnase III)によって正確な構造を有するsiRNAに転換され、目的遺伝子のサイレンシングを誘導することが広く知られている。
【0030】
本発明の一具現例において、本発明のsiRNAは、表1に例示的に示されているが、これに制限されるものではない。
【0031】
本発明のTENT4A及びTENT4Bのいずれか一つ以上の活性を抑制する抗体は、単一クローン抗体及びこれに対するキメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体を全て含むものであり、新規な抗体の他に、既に当該技術分野で公知された抗体も含まれてよい。前記抗体は、TENT4A及び/又はTENT4Bに特異的に結合する限り、2個の重鎖と2個の軽鎖の全長を有する完全な形態の他、抗体分子の機能的な断片も含む。抗体分子の機能的な断片とは、少なくとも抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2及びFvなどがある。
【0032】
本発明の実施例では次の抗体を用いているが、これに制限されるものではない:
抗TENT4A抗体(invitrogen,PA5-61302)、抗TENT4A抗体(Atlas Antibodies,HPA045487)、抗TENT4Aマウス抗体(labmade)、抗TENT4B抗体(invitrogen,PA5-60177)、抗TENT4B抗体(Atlas Antibodies,HPA042968)、抗TENT4Bマウス抗体(labmade)。
【0033】
本発明の組成物が薬剤学的組成物として使用される場合に、前記組成物中の有効成分の含有量は、疾患の症状、症状の進行程度、患者の状態などに応じて適切に調節可能であり、例えば、全組成物重量を基準に0.0001~99.9重量%含まれてよいが、これに限定されるものではない。前記含有量比は、溶媒を除去した乾燥量を基準にした値である。
【0034】
前記薬剤学的組成物は、薬学組成物の製造に一般に使用する適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができ、通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾールなどの経口用剤形、外用剤、坐剤又は滅菌注射溶液などの形態に剤形化して使用可能である。
【0035】
前記薬剤学的組成物を製剤化する場合には、通常の充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を用いて調製する。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、少なくとも一つの賦形剤及び/又は潤滑剤などを含むことができる。経口投与のための液状製剤には、懸濁剤、耐溶液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、通常使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他にも、種々の賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれてよい。
【0036】
前記薬学組成物の好ましい投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び期間によって異なるが、当業者によって適宜に選択されてよい。より好ましい効果のために、本発明の組成物の投与量は、有効成分を基準に1日0.1mg/kg~100mg/kgとすればよいが、これに制限されるものではない。投与は、1日に1回投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。本発明の組成物は、動物、好ましくは、ヒトを含む哺乳動物に様々な経路で投与されてもよい。投与の全ての方式は予想可能であり、例えば、経口、静脈、筋肉、皮下注射などによって投与されてよい。本発明の組成物の薬学的投与形態は、有効成分の薬学的許容可能な塩の形態で使用されてもよく、また、単独で或いは他の薬学的活性化合物との結合の他に適宜の組合せでも使用可能である。
【0037】
本発明の他の態様によれば、本発明は、次の段階を含むウイルス感染予防又はウイルス感染症治療用薬剤学的組成物のスクリーニング方法を提供する:
(a)宿主細胞(host cell)にウイルスを形質感染させる段階;
(b)薬物候補物質を宿主細胞に処理する段階;及び、
(c)薬物候補物質を処理した実験群からのRNAテーリングレベルを分析し、薬物候補物質無処理対照群からのRNAテーリングレベルと比較する段階;実験群からのRNAテーリングレベルが無処理対照群に比べて相対的に減少している場合に、有効な薬物候補物質として選定する。
【0038】
RNAテーリングレベルは、グアニル化又はウリジル化によってポリ(A)テールに含まれたアデニンがグアニン又はウリジンのような他の核酸に置換された回数によって決定される。
【0039】
本発明における段階(a)及び(b)は、実行順序がいくら変わってもよい。
【0040】
試料をウイルス感染の宿主細胞に処理し、混合されたテーリングが抑制される場合に、当該試料を有効な薬物候補物質として選定することができる。
【0041】
本発明の薬物スクリーニング方法は、TENT4A/Bによる混合されたテーリング作動原理を利用するという点で、本発明の他の態様である薬剤学的組成物と共通する特性を有するので、薬剤学的組成物の詳細な説明記載内容を援用し、本明細書記載の過度な複雑性を避けるために重複記載を省略する。
【0042】
本発明の他の態様によれば、本発明は、生体から分離された細胞のTENT4A及びTENT4Bのいずれか一つ以上の発現をノックアウト(Knock-out)させる段階を含むウイルス耐性細胞製造方法を提供する。
【0043】
本発明のノックアウトは、従来知られた様々な遺伝子編集技術を様々に活用して導入でき、本明細書における実施例では、CRISPR-Casゲノム編集方法を用いたが(実施例6参照)、これに制限されるものではない。
【0044】
本発明の他の態様によれば、本発明は、次の一般式で表されたRNA配列で構成されたペンタループ構造を含むステムループ配列を、ターゲットRNA配列に挿入する段階を含む、RNA配列安定化方法を提供する:
[一般式]
5’-CNGGN-3’
前記Nは、それぞれ独立して、アデノシン(A)、ウラシル(U)、グアニン(G)及びシトシン(C)から選択されるいずれか一つである。
【0045】
本明細書における用語“ステムループ(Stem-Loop Structure)”構造は、単一鎖DNA又はRNAで起きる塩基対間の結合である。この構造をヘアピン(Hairpin)又はヘアピン構造(Hairpin Structure)ともいう。1本の2領域が互いに反対方向に読まれる時に塩基対が相互相補的であれば発生する。ステムループ構造の例は、
図12bに示したが、これに制限されるものではない。
【0046】
本発明の用語“ペンタ-ループ”とは、ステムループ構造上の塩基対間の結合を形成しない連結部位に5個の塩基が存在する単一鎖配列部位を意味する。本発明のステムループ構造はペンタ-ループ構造を含み、例示図は、
図13に示した。
【0047】
本発明の一具現例において、本発明のステムループ構造は、2-15塩基対間の結合を含む。より具体的に、例えば、2-14塩基対結合、2-13塩基対結合、2-12塩基対結合、2-11塩基対結合、2-10塩基対結合、3-10塩基対結合、3-9塩基対結合を含むが、これに制限されるものではない。塩基対間の結合は、アデニン-ウラシル結合又はシトシン-グアニン結合でよく、結合の種類が制限されない。
【0048】
本発明のステムループ構造をターゲットRNA配列に挿入することによって、ターゲットRNA配列がTENT4A/Bを用いて、混合されたテーリングを誘発する頻度を上げ、当該RNA配列の安定化を期することができる。
【0049】
【0050】
〔発明の効果〕
本発明の特徴及び利点を要約すると、次の通りである:
(a)本発明は、ウイルス感染予防又はウイルス感染症治療用薬剤学的組成物を提供する。
【0051】
(b)本発明は、ウイルス感染予防又はウイルス感染症治療用薬剤学的組成物のスクリーニング方法を提供する。
【0052】
(c)本発明は、ウイルス耐性細胞製造方法を提供する。
【0053】
(d)本発明は、所定のステムループ構造配列の導入によってRNA配列を安定化させる方法を提供する。
【0054】
(e)本発明の薬剤学的組成物を用いる場合に、ウイルス感染を効果的に予防及び治療することができる。
【0055】
(f)本発明のRNA配列安定化方法を用いる場合に、所望のRNA配列に対して混合されたテーリングを誘導して配列安定化を誘導することができる。
【0056】
〔図面の簡単な説明〕
〔
図1〕ウイルスRNAの広範囲な混合されたテールを示す。a,細胞及びウイルスmRNAのグアニル化テールの分率は、ポリ(A)テール長が25nt以上であるmRNAに対して計算された(n=2 TAIL-seq実験)。b,細胞RNA、HCMV RNA及びRNA2.7(VRNA2.7)のグアニル化テールの分率は、ポリ(A)テール長が25nt以上であるRNAに対して計算された(n=1 TAIL-seq実験)。c,細胞(灰色)及びHBV(黄色)mRNAの全体ポリ(A)テール長の分布。中央値は垂直の点線で表示され、中央値の長さは括弧中に示されている。d,細胞(灰色)、HCMV(黄色)及びVRNA2.7(橙色)RNAの全体ポリ(A)テール長の分布。中央値は垂直の点線で表示され、中央値の長さは括弧中に表されている。e,TENT4枯渇したHepG2.2.15細胞において25nt以上のポリ(A)テール長を有するHBV mRNAのグアニル化されたテールの分率(n=1 TAIL-seq実験)。f,TENT4枯渇した、HCMV感染したHFF細胞においてポリ(A)テール長が25nt以上であるHCMV RNAのグアニル化されたテールの分率(n=1 TAIL-seq実験)。g,TENT4枯渇したHepG2.2.15細胞でHBV mRNAレベルは、2個の個別プライマーセットを使用したRT-qPCRによって測定された。データは、平均±s.e.m.で表示される(n=3独立実験)。**P<0.01;両側学生のt-検定(Student’s t-test)。h,HBV mRNAの半減期は、2個の個別プライマーセットを使用したRT-qPCRによって測定された。データは、平均±s.e.m.で表示される(n=3独立実験)。GAPDH mRNAは、正規化に使用された。
【0057】
〔
図2〕HBV RNAは、HBVのPREを通じたTENT4の主要mRNA基質であることを裏付ける実験結果を示す。a,HBVゲノム(NCBI U95551.1)にわたるfCLIP-seqライブラリーの標準化された判読範囲。HBVのPRE領域は黄色で強調表示されている。HBV転写体及びそのそれぞれのコーディング配列領域は下に参考として示されている。入力(input)及びNMGライブラリーは、陰性対照群として用いられた。b,fCLIP-seqピーククラスターの豊富度(abundance,x軸)及び濃縮点数(enrichment score,y軸)の散布図(scatter plot)。HBV PREは赤色点で表されている。この分析では、サイズ一致の入力ライブラリー(size-matched input library)が陰性対照群として用いられた。
【0058】
〔
図3〕PREのステムループ構造は必須であるが、HBV mRNAのTENT4-依存性RNAテーリング(tailing)には十分でないことを示す図である。a,3’UTRにおいてPREの突然変異及び下位領域を保有するファイアフライルシフェラーゼレポーターコンストラクトの概略図。青色,La-結合モチーフ(motif);黄緑,ステムループアルファ;及び赤色*,点突然変異(point mutation)の領域。b,親(parental)HeLaT(灰色)及びTENT4 KO(赤色)細胞においてPREの下位領域を含有するレポーターのファイアフライルシフェラーゼ活性。データは平均±s.e.m.で表示される(n=7 PRE、PREα及びPREβに対する独立実験、n=6 他の全てのものに対する独立実験)。レニラ及び対照群ベクターの両方のルシファーレイズ活性とも正規化に用いられた。*P<0.01、**P<0.001;両側t-検定(two-sided t-test)。c,Hire-PAT分析によって測定されたレポーターRNAのポリ(A)テール長の分布。PREα及びPREβ配列を含有するレポーターコンストラクトは、TENT4枯渇後にHEK293T細胞に形質感染した。d,異所的に(ectopically)発現した野生型TENT4又は触媒的に不活性である突然変異を有する親細胞(parental)又はTENT4 KO細胞においてPREレポーターコンストラクトのファイアフライルシフェラーゼ活性。データは平均±s.e.m.で表示される(n=3独立実験)。レニラ及び対照群ベクターの両方とも正規化に用いられた。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001;両側学生のt-検定(two-sided Student’s t-test)。e,3’UTRにおいてWPREの下位領域を保有するファイアフライルシフェラーゼレポーターコンストラクトの概略図。f,TENT4 KO細胞においてWPREレポーターコンストラクトのファイアフライルシフェラーゼ活性。データは平均±s.e.m.で表示される(n=3Wβに対する独立実験、n=7 他の全てのものに対する独立実験)。レニラ及び対照群ベクターの両方のルシファーレイズ活性とも正規化に用いられた。*P<0.05、**P<0.01;両側学生のt-検定。g,HBV PRE、突然変異HBV PRE及びWPREのステムループ構造。h,TENT4 KO細胞においてaに示された突然変異PREレポーターコンストラクトのファイアフライルシフェラーゼ活性。データは平均±s.e.m.で表示される(n=4独立実験)。レニラ及び対照群ベクターの両方のルシファーレイズ活性とも正規化に用いられた。*P<0.05、**P<0.01;両側学生のt-検定。
【0059】
〔
図4〕HCMV RNA2.7のステムループ構造は、TENT4依存的調節の原因となるcis-作用(cis-acting)RNA要素であることを示す図である。a,RNA2.7形質感染したHEK293T細胞においてフォルムアルデヒド架橋結合(crosslinking)及び抗TENT4A抗体による免疫沈殿後に表示されたRNAのRT-qPCR。データは平均±s.e.m.で表示される(n=3独立実験)。NMGによる免疫沈殿は標準化に用いられた。**P<0.01、***P<0.001;両側学生のt-検定。b,3’UTRにおいてHCMV RNA2.7の下位領域及び突然変異を保有するファイアフライルシフェラーゼレポーターコンストラクトの概略図。黄緑はステムループ、赤色*は点突然変異(point mutation)。HCMV RNA2.7のステムループ構造及び突然変異は左側に示されている。1E mut(1E突然変異)コンストラクトにおいて、ループでは赤色ヌクレオチド及びループ基底のCは、表示された通りに突然変異される。FRG、断片。c~e,親細胞(parental)及びTENT4 KO細胞においてレポーターのファイアフライルシフェラーゼ活性。データは平均±s.e.m.で表示される。RNA2.7の下位領域を有するレポーター(n=3独立実験)(c)、RNA2.7の断片1(1-513)の部分欠失突然変異(n=3独立実験)(d)、及びコンストラクト1D、1E及び1Eのステムループ突然変異(n=3独立実験)(e)。レニラ及び対照群ベクターの両方のルシファーレイズ活性とも正規化に用いられた。*P<0.05、**P<0.01;両側学生のt-検定。
【0060】
〔
図5〕ZCCHC14を含む、SAMドメイン含有タンパク質は、ステムループ構造に結合し、HBV mRNAを調節するということを示す図である。a,HEK293T細胞溶解物(cell lysate)からSL2.7RNAプルダウン(pulldown)の質量分析(mass spectrometry analysis)(n=2質量分析実験)。SL2.7突然変異及び‘ビーズオンリー(bead only)’サンプルが陰性対照群として用いられた。タンパク質濃縮点数(enrichment score)は、突然変異データに対するSL2.7サンプルからのLFQ(label-free quantification、非標識定量)強度のlog2倍変化として計算された。スペクトル計数は、濃縮(enrichment)候補を濾過するために用いられた。b、上端(top)、推定上のRNA結合SAMドメインを有するタンパク質の系統樹(phylogenetic tree)。Sc(Saccharomyces cerevisiae)、Sp(Schizosaccharomyces pombe)、Ca(Candida albicans)、Ce(C.elegans)、Dm(Drosophila melanogaster)、Dr(Danio rerio)、Xl(Xenopus laevis)、Mm(Mus musculus)及びHs(Homo sapiens)。*は、系統樹に基づく手動の遺伝子名の割り当てを示す。UniProt IDは、方法セクションに羅列されている。下端(bottom)、SAMドメインを持つ3個のヒトタンパク質のドメイン構造。橙色、SAMドメイン;紫朱色、CCHCジンクフィンガー(zinc finger,ZnF)ドメイン。c,表示された抗体を用いたウェスタンブロット後に、HEK293T細胞からビオチン化されたSL2.7のプルダウン。*は、交差反応バンドを示す。d,ZCCHC14枯渇した及びSAMD4A/B枯渇したHepG2.2.15細胞においてHBV mRNAレベルは、2セットのプライマーを用いたRT-qPCRによって測定された。データは平均±s.e.m.で表示される(n=4独立実験)。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001;両側t-検定。cに対する切っていないプロット及びdのグラフに対するソースデータはオンラインで利用可能である。
【0061】
〔
図6〕細胞質ZCCHC14は、ステムループ構造でRNAを保護するためにTENT4を募集(recruit)することを示す図である。a,HBV mRNAのグアニル化されたテールの分率は、ZBHC14枯渇したHepG2.2.15細胞において25nt以上のポリ(A)テール長を有するmRNAに対して計算された。b、対照群(灰色)及びZCCHC14枯渇したHepG2.2.15細胞(赤色)においてHBV mRNAの全体ポリ(A)テール長の分布。中央値は垂直の点線で表示され、中央値は括弧中に示されている。c,ZCCHC14枯渇したHEK293T細胞においてHCMV RNA2.7 1E、HBV PREα、WHV WPRE(Wγ+Wα)及びそのそれぞれの突然変異(1E mut、α mut2及びWγ+Wα mut)を保有するレポーターのファイアフライルシフェラーゼ活性。データは平均±s.e.m.で表示される(n=4PREα及びα mut2に対する独立実験、n=3 他の全てのものに対する独立実験)。重要なことには、WPRE突然変異レポーター(Wγ+Wα mut)は、WPREαステムループ構造の全てにおいて点突然変異で構成される(補助
図6b)。レニラ及び対照群ベクターの両方のルシファーレイズ活性とも正規化に用いられた。*P<0.05;両側学生のt-検定。d,HepG2.2.15細胞において抗ZCCHC14抗体で免疫沈殿後に指示されたRNAのRT-qPCR。データは平均±s.e.m.で表示される(n=3独立実験)。正常ウサギIgGを使用した免疫沈殿は、標準化に使用された。*P<0.05;両側学生のt-検定。e,ZCCHC14タンパク質の局所化(localization)は、超遠心細胞分画法(subcellular fractionation)及びウェスタンブロッティングによりHeLaT細胞において検査された:細胞質(Cyto)、膜(Memb)及び核(Nuc)。GAPDH(細胞質)、GM130(ゴルジ)及びヒストンH3(核)は、分画マーカーとして用いられた。f,抗TENT4A及び抗TENT4Bによる免疫沈殿後にウェスタンブロットは、HeLaT細胞質抽出物においてTENT4A/BとZCCHC14との物理的相互作用を測定するために用いられた。細胞抽出物はRNase Aで処理された。GAPDHはローディング対照群として用いられた。g,提案されたモデル。HBV mRNA及びHCMV RNA2.7は、標的混合テーリング(targeted mixed tailing)を誘導するために、CNGGNペンタループを用いてTENT4-ZCCHC14複合体を募集し(recruit)、これは、後でウイルスRNAを細胞崩壊因子から保護する。
【0062】
〔
図7〕ウイルスRNAの広範囲な3’末端テール(3’ end tail)変形を示す図である。a,HBV mRNAは、HepG2.2.15細胞で高度に混合されたテール(G:グアニル化(guanylation)U:ウリジル化(uridylation)、C:シチジル化(cytidylation))である。各変形の分率は、その該当の末端(terminal)及び内部(internal)変形が含まれる。シチジル化及びウリジル化テールとウイルスmRNAの分率は、ポリ(A)テール長が25nt以上であるものに対して計算された(n=2 TAIL-seq実験)。b,HCMV RNAは、また、HCMV感染したHFF細胞において高度に混合されたテールである。HCMV RNA2.7(VRNA2.7)は、特に、実質的に混合されたテールである(n=1 TAIL-seq実験)。c,HCMV感染したHFF細胞において細胞(灰色)及びウイルス(黄色)mRNAのグアニル化テールの遺伝子レベル分析。d,RT-qPCRによるsiRNAノックダウン(knockdown)確認。e,TENT4枯渇した(depleted)HepG2.2.15細胞においてHBV mRNAの混合されたテールの分率減少。f,TENT4A/B発現は、HCMV感染したHFF細胞で誘導される。HCMV感染したHFF細胞において、TENT4A及びTENT4B RNAレベルは、RT-qPCR(n=1)によって測定された。g,TENT4枯渇したHCMV感染したHFF細胞において、HCMV RNA2.7の混合されたテールの分率における減少。h,HBV mRNAは、TENT4枯渇したHepG2.2.15細胞においてより短いポリ(A)テール長を示す。中央値は、垂直の点線で表示され、括弧中に示されている。i,HCMV感染したHFF細胞においてTENT4枯渇後のウイルスmRNAの全体ポリ(A)テール長の分布。j,TENT4枯渇後のHCMV RNA2.7のポリ(A)テール長の分布。k,HBV転写体及びその該当CDS領域が示されている。棒は、RT-qPCRアンプリコン(#1~3)の位置を示す。l,TENT4枯渇したHepG2.2.15細胞においてポリ(A)テール長にわたるHBV mRNAのテール変形。m,HCMV RNA2.7の半減期は、TENT4枯渇後に、HCMV感染したHFF細胞においてRT-qPCR(n=3独立実験)によって測定された。GAPDH mRNAは、正規化(normalization)に用いられた。平均が計算された。a~b、d~g、mのグラフデータは、ソースデータとして利用可能である。
【0063】
〔
図8〕TENT4A/B及びHBV mRNA相互作用の分析及び確認結果を示す図である。a,TENT4B結合RNA断片がHBVのPRE領域内(黄色で強調表示される。)で再び濃縮される(enriched)。HBVゲノム(NCBI:U95551.1)にわたるfCLIP-seqライブラリーの標準化された判読範囲(standardized read coverage)。X-軸スケールは、
図2aと同一である。b,抗TENT4A及び抗TENT4Bによる免疫沈殿(immunoprecipitation)後、RT-qPCRはHepG2.2.15細胞においてTENT4結合RNAの濃縮(enrichment)を測定するために用いられた(n=3独立実験)。正常マウスIgGを用いた免疫沈殿は、正規化に用いられた。平均は計算され、誤差棒はSEMを示す。**P<0.01、****P<0.0001;両側t検定(two-sided t test)。bのグラフデータはソースデータとして利用可能である。
【0064】
〔
図9〕PREレポーターのTENT4依存的調節を確認した結果を示す図である。a,ウェスタンブロッティングによるノックアウト(Knockout)確認。GAPDHはローディング対照群として用いられた。b,PREの下位領域を保有するファイアフライ(firefly)レポーターのRNAレベルは、RT-qPCRによって測定された(PRE:PREα:PREβ、n=4;αΔ1、n=2;αΔ2、n=1独立実験)。レニラ(renilla)及び対照群ベクター両方のmRNAレベルとも正規化に用いられた。平均は計算され、誤差棒はSEMを示す。*P<0.05;両側t検定(two-sided t test)。c,HEK293T細胞においてウェスタンブロッティングによるsiRNAノックダウン確認。GAPDHはローディング対照群として用いられた。d,TENT4枯渇したHEK293T細胞においてPREレポーターコンストラクトのファイアフライルシフェラーゼ(firefly luciferase)活性(PRE:PREα:PREβ、n=7;αΔ1、n=6;αΔ2、n=5独立的実験)。レニラ及び対照群ベクターの両方のルシファーレイズ活性とも正規化に用いられた。平均は計算され、誤差棒はSEMを示す。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001;両側t検定。e,KO細胞においてウェスタンブロッティングによる過発現確認。GAPDHはローディング対照群として用いられた。f,異所的に(ectopically)発現したTENT4野生型又は突然変異型を有するTENT4 KO細胞においてレスキュー実験(rescue experiment)に用いられたファイアフライレポーターのRNAレベル(n=3独立実験)は、RT-qPCR(n=3独立実験)によって測定された。レニラ及び対照群ベクターの両方のmRNAレベルとも正規化に用いられた。平均は計算され、誤差棒はSEMを示す。*P<0.05、**P<0.01;両側t検定。パネルa、c、eに対する切っていないブロット及びb、d、fにおけるグラフに対するデータは、ソースデータとして利用可能である。
【0065】
〔
図10〕RNA2.7レポーターのTENT4依存的調節の確認結果を示す。a,抗TENT4Aを用いた免疫沈殿は、RNA2.7形質感染したHEK293T細胞においてウェスタンブロッティングにより確認された。正常マウスIgG(Normal mouse IgG,NMG)は、陰性対照群として用いられた。RNA2.7転写体は、RT-qPCRアンプリコンの位置を示す棒と共に示されている。b~e,次を保有するファイアフライレポーターのRNAレベル。b,RNA2.7の下位領域(n=3独立実験)、c,RNA2.7の断片1(1~513)の欠失コンストラクト(n=3独立実験)、d,コンストラクト1D(314~413)、1E(414~513)及びステムループ(stem-loop)突然変異1E(n=3独立実験)、及びe,親細胞及びTENT4 KO細胞においてコンストラクト SL2.7(414~463)及び対照群(n=3独立実験)。レニラ及び対照群ベクターの両方のmRNAレベルとも正規化に用いられた。平均は計算され、誤差棒はSEMを示す。*P<0.05、**P<0.00.0;両側t検定。パネルaに対する切っていないブロット及びb~eにおけるグラフに対するデータは、ソースデータとして利用可能である。
【0066】
〔
図11〕ZCCHC14及びSAMD4A/Bノックダウンを確認した図である。RT-qPCR(n=4独立実験)及びHepG2.2.15細胞におけるウェスタンブロッティングによるsiRNAノックダウン確認。平均は計算され、誤差棒はSEMを示す。****P<0.0001;両側t検定。GAPDHはローディング対照群として使用される。
【0067】
〔
図12〕ZCCHC14ノックダウン、ステムループ依存的テール調節、及び免疫沈殿の確認結果を示す図である。a,ZCCHC14枯渇したHEK293T細胞においてウェスタンブロッティングによるsiRNAノックダウン確認。GAPDHはローディング対照群として用いられた。点線は、同一ゲル(gel)において不連続的なレーン(lane)を示す。b,WPREαのステムループ構造及びそのそれぞれの突然変異。c,Hire-PAT分析によって測定されたレポーターRNAのポリ(A)テール長の分布。レポーターコンストラクトは、ZCCHC14枯渇後、HEK293T細胞内に形質感染した。d,抗ZCCHC14を用いた免疫沈殿は、HepG2.2.15細胞においてウェスタンブロッティングにより確認された。正常ウサギIgG(Normal rabbit IgG,NRG)は、陰性対照群として用いられた。e,抗TENT4A及び抗TENT4Bを用いた免疫沈殿後のウェスタンブロッティングは、HepG2.2.15及び一次(primary)HFF細胞においてTENT4A/BとZCCHC14との物理的相互作用を測定するために用いられた。細胞抽出物は、RNase Aで処理された。正常マウスIgG(NMG)は陰性対照群として用いられた。*は、交差反応バンド(cross-reacting band)を示す。パネルa、d~eに対する切っていないブロットは、ソースデータとして利用可能である。
【0068】
〔
図13〕ペンタループを含むステムループ(stem-loop)構造を示す。
【0069】
本発明のステムループ構造をターゲットRNA配列に挿入する方法は、従来に公知の様々な方法によって行うことができ、特に制限されるものではない。
【0070】
〔発明を実施するための形態〕
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をさらに具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0071】
〔実施例〕
<実験方法>
<実施例1:TAIL-seqライブラリー準備及びデータ処理>
TAIL-seqは、従来公知の通りに行われた[3]。要約すると、~50μgのDNaseI(Takara,2270A)処理さた全RNA(>200nt)を使用し、Ribo-Zeroキット(Epicentre,MRZH11124(discontinued)for primary HFF library or Illumina,TruSeq Stranded Total RNA Library Prep Human/Mouse/Rat,20020596 for HepG2.2.15library)によってリボソームRNA(ribosomal RNA)を2回枯渇させた。rRNA枯渇したRNAを3’アダプターに連結させ、RNase T1(Ambion)によって部分的に断片化させた。断片化したRNAを、ストレプトアビジン(Invitrogen)でプルダウンし、5’リン酸化させ、6%ウレア-PAGEゲル(500~1,000nt)で精製した。精製されたRNAを5’アダプターに連結させ、逆転写させPCRで増幅させた。ライブラリーをPhiX control library v.3(Illumina)及びスパイクイン混合物と共にIlluminaプラットホーム(MiSeq)でペアエンドラン(paired-end run)(51×251サイクル)によってシーケンシングした。TAIL-seqシーケンシングデータは、受託番号GSE146600で国立生命工学情報センター(NCBI)遺伝子発現オムニバス(GEO)データベースに寄託された。TAIL-seq分析は、Tailseeker v.3.1.5[9]を用いて行われた。簡略に、Read 1を遺伝子識別に使用し、Read 2を使用して3’末端変形を検出し、ポリ(A)テールの長さを測定した。それぞれのTAIL-seqライブラリーに対して、Read 1はSTAR2.5.2b[0050]を有するヒトゲノムGRCh38及びbowtie2.2.6[51]を有するHBVゲノムNCBI U95551.1又はHCMVゲノムNCBI GU937742.2にマップされた。ポリ(A)テール長が25nt以上であるTAIL-seq断片のみが、以前と同様に[6]用いられた。Read 2のうち、末端又は内部モノ-グアニル化(又は-シチジル化、-ウリジル化)を有する3’末端10-mer配列を調査し、ポリ(A)テールの非アデノシン混入の分率(fraction)を推定した。
【0072】
<実施例2:fCLIP-seqライブラリー準備及びデータ処理>
fCLIP-seqは、やや調整し、以前に説明の通りに行われた[16、52]。簡単にいうと、2個の150mmディッシュ上のHepG2.2.15細胞を0.1%パラホルムアルデヒド(Pierce,28906)で架橋させ、収集し、溶解させた。それぞれの15μgの抗体(NMG,Santa Cruz,sc-2025;TENT4A,実験室作製;TENT4B,実験室作製)をタンパク質A及びGセファロースビーズ(1:1混合、総20μl、GE Healthcare,17-5138-01及び17-0618-01のそれぞれ)にコンジュゲートさせた。溶解物を抗体接合されたビーズと共に培養し、溶離液からRNAを精製した後、DNaseI処理及び洗浄を行った。その後、1μgの入力(input)RNA又は各サンプルからのRNAをライブラリーに対して製造した。rRNAは、Ribo-Zeroキット(Illumina,TruSeq Stranded Total RNA Library Prep Human/Mouse/Rat,20020596)によって2回枯渇させた。rRNA枯渇したRNAを3’アダプターに連結させ、6%ウレア-PAGEゲル(80~500nt、超音波処理によって断片化された50~470nt RNAに相応する。)によって精製させ、次いで5’リン酸化、5’アダプター連結、逆転写及びPCR増幅を行った。fCLIP-seqライブラリーは、PhiX control library v.3(Illumina)を用いてIlluminaプラットホーム(MiSeq)上でペアエンドラン(151×151サイクル)でシーケンシングした。fCLIP-seqシーケンシングデータは、受託番号GSE146597でNCBI GEOデータベースに保存された。
【0073】
各fCLIP-seqライブラリーに対してペアエンド判読値をpear v.0.9.10[53]で組み立て、STAR2.5.2b[50]によってヒトゲノムGRCh38を、bowtie2.2.6[51]によってHBVゲノムNCBI U95551.1をアラインした。fCLIP-seqライブラリーの原始判読カバレッジRaw read coverage)をbedtools v.2.26.0で計算した。細胞mRNAのfCLIP-seqピーククラスターは、共変量として、200nt(-z 200)のクラスターサイズ、内部正規化(-n)、ログ変換(-l)及びNMGライブラリーを有するPiranha v1.2.1[54]を用いて推定した。参考として、HBV PREは、約400ntにわたっている。ピーククラスターの濃縮スコアは、TENT4 fCLIP-seqライブラリー及びNMGライブラリーの判読値のlog2比によって計算された。入力ライブラリーは、この分析の陰性対照群(negative control)として用いられた[55]。判読範囲の技術的背景を説明するために、HBVゲノムに対するHodges-Lehmann推定が用いられた。具体的に、長さnのHBVゲノムが与えられると、次のセットの中央値(median)を計算する。
【0074】
{(Xi+Xj)/2:1≦i≦j≦n}
ここで、XiとXjはそれぞれ、位置iとjにおける原始判読カバレッジ(raw read coverage)である。その後、このHodges-Lehmann推定により原始判読カバレッジを正規化(normalized)し、ggplot2 Rパッケージを用いて視覚化した。
【0075】
<実施例3:細胞培養、形質感染及びアクチノマイシンD処理>
この研究に使用された全ての細胞株は、マイコプラズマ陰性を試験した。HeLaTはTUT4遺伝子においてヌル(null)突然変異を有するHeLa(ソウル大学C.-H.Chungから提供される。)から由来した。HeLaT及びHEK293T(ソウル大学校S.Kimから提供される。)細胞は、ATCC(STRプロファイリング)によって認証された。HepG2.2.15、HeLaT及びHEK293T細胞を、10% FBS(Welgene,S001-01)を含有するDMEM(Welgene,LM001-05)で成長させた。プライマリHFF(ATCC SCRC-1041)細胞を10% FBS(HyClone)、GlutaMAX-1(Gibco)及びペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)を含有するDMEM(HyClone)で成長させた。形質感染前に、プライマリHFFを抗生剤のない培地で成長させた。
【0076】
組合せノックダウン(combinatorial knockdown)の場合に、標的遺伝子に対して同一量の低分子干渉RNA(small-interfering RNA)又はGAPmerを混合し、最終濃度を、次に説明の通りにした。TENT4A及びTENT4Bノックダウンの場合に、0、2及び4日にリポフェクタミンRNAiMAX(Invitrogen)によってHepG2.2.15細胞を100nM siRNAで形質感染させ、6日に収集した。ZCCHC14、SAMD4A及びSAMD4Bノックダウンに対しては、HepG2.2.15細胞を0日及び2日にリポフェクタミンRNAiMAX(Invitrogen)による100nM siRNA又はGAPmerによって形質感染させ、4日に収集した。HEK293T細胞は、0日に、リポフェクタミン3000によってRNA免疫沈殿のためのRNA2.7発現pCKベクターで形質感染させ、2日に収集した。プライマリHFF細胞は、0日及び2日にDharmaFECT 1(Dharmacon)によって20nM siRNAで形質感染させ、5日に収集した。siRNAの配列情報は表1に提示されている。
【0077】
【0078】
本発明者らは、HepG2.2.15におけるより良いノックダウン効率のために、ON-TARGETplus SMARTpool(Dharmacon)からTENT4Aに対するsiRNAとAntisense LNA GapmeR Standard(Qiagen,339511 LG00236046-DDA)からのSAMD4Aに対するGAPmerを購入した。アクチノマイシンD(Sigma,A9415、4μg ml-1)をHepG2.2.15細胞に添加して転写を遮断し、表示された時間に細胞を収集した。
【0079】
<実施例4:HCMV感染>
感染性HCMV粒子は、電気穿孔法(electroporation)(Invitrogen,Neon)によってHCMV Toledo BAC DNA(プリンストン大学T.Shenkから提供される。)を、プライマリHFF細胞内に形質感染させることによって製造した。100%細胞変性効果(cytopathic effect)が観察される時に、細胞培養上澄液を収集し、遠心分離して細胞残骸物を除去し、-80℃で1ml分割量(aliquots)で保存した。ウイルスストックを滴定するために、カバーガラスで成長したプライマリHFFに、希釈されたウイルスストックを1時間間接種し、接種24時間後に3.7%ホルムアルデヒドで固定させた。細胞を0.1%トリトンX-100を用いて透過化させ(permeabilized)、ブロッキングバッファー(リン酸緩衝食塩水中2%ウシ血清アルブミン)と共に培養し、HCMV IE1抗体(MAB810R;Millipore)で染色した後、FITC接合された抗マウス抗体(115-095-146;Jackson Laboratories)及びDAPI含有溶液(H1200;Vector Laboratory)でマウンティングした。HCMV IE1陽性細胞の数を数え、総細胞に対するIE1陽性細胞の比を計算することによってMOI(the Multiplicity of infection)を決定した。HCMV感染の場合、プライマリHFF細胞を、1時間、無血清DMEMに希釈されたHCMV(MOI,2)と共に培養し、PBSで洗浄し、追加培養のためにDMEMで培養した。
【0080】
<実施例5:プラスミド構築>
FLAGタグ以外は、前述した野生型TENT4A及びTENT4B異型体(それぞれ792及び666aa)[6]を使用した。触媒死滅突然変異体に対する点突然変異が導入された(それぞれ、TENT4Aの場合にD352A、TENT4Bの場合にD326A)。PREレポーターコンストラクトでは、PRE(1,154-1,687bp)、PREα(1,154-1,351bp)、PREβ(1,352-1,687bp)、αΔ1(1,276-1,351bp)及びαΔ2(1,154-1,275bp)がHepG2.2.15相補的DNAで増幅され、pmirGLO-3XmiR-1ベクター[6]においてファイアフライルシフェラーゼmRNA配列の3’UTR領域に導入された。La結合モチーフ及びステムループαに対する点突然変異は、以前に記載された突然変異体[30]と同一であった。α-mut1、α-mut2及びα-mut3は、PCR指定突然変異誘発によって生成された。WPREレポーターコンストラクトでは、WPRE(1,095-1,670bp)、Wγ+Wα(1,095-1,507bp)、Wα+Wβ(1,300-1,670bp)、Wγ(1,093-1,299bp)、Wα(1,300-1,507bp)、Wβ(1,508-1,670bp)は、pLenti-CMVベクター(Addgene,17492)から増幅され、pmirGLO-3Xmir-1ベクターにおいてファイアフライルシフェラーゼの3’UTRに導入された。WPREαのCNGGNペンタループに対する点突然変異は、PRE突然変異体と類似の方式でデザインされた。RNA2.7コンストラクトでは、FRG1(1-513bp)、FRG2(414-913bp)、FRG3(814-1,313bp)、FRG4(1,214-1,713bp)、FRG5(1,614-2,113bp)、FRG6(2,014-2,513bp)、1ΔA(1-513bp,Δ1-100bp)、1ΔB(1-513bp,Δ101-200bp)、1ΔC(1-513bp,Δ201-300bp)、1ΔD(1-513bp,Δ301-400bp)、1ΔE(1-513bp,Δ401-513bp)、1D(301-400bp)、1E(401-513bp)及びSL2.7(414-463bp)は、HCMV感染したプライマリHFF cDNAから増幅され、pmirGLO-3Xmir-1ベクターから3’UTR領域に導入された。1E及びSL2.7突然変異コンストラクトは、PRE突然変異体と同じ方式で生成された。RNA免疫沈殿のために、RNA2.7(1-2,513bp)をpmirGLO-3Xmir-1ベクターから増幅させ、pCKベクターでサブクローニングした。
【0081】
<実施例6:TENT4A及びTENT4Bノックアウト細胞製造>
TENT4A及びTENT4Bの除去のために、CRISPR-Casゲノム編集は、T7エンドヌクレアーゼI(NEB,M0302)がSurveyorヌクレアーゼの代わりに用いられたマイナー適用により、以前に記述された通り[56]に行われた。24ウェルプレート上の6E4HeLaT細胞を、まず、TENT4Aに対し、シングルガイドRNA(single-guide RNA)(agccacgttgtgcttccgcg,PAM配列はGGG)を有する300ng pSpCas9(BB)-2A-GFP-px458プラスミド(Addgene no.48138)と共に、Metafectene(Biontex,T020)を用いて形質感染させた。このHeLaT親細胞はHeLaから由来し、TUT4遺伝子にヌル突然変異を含有する。ノックアウトを確認するための単一細胞スクリーニング及びサンガーシーケンシング(Sanger sequencing)後に、親体及び変更されたゲノム配列が表2に列挙され、挿入された配列は、太字及び下線で表示した。
【0082】
【0083】
TENT4Aノックアウト細胞を用いて、TENT4BをTENT4Bに対してsgRNA(gacatcgacctagtggtgtt,PAM配列はTGG)でさらに除去した。変更されたゲノム配列は、表2にさらに列挙されており、挿入及び欠失した配列はそれぞれ、赤色及び点線で表示した。
【0084】
<実施例7:TENT4A及びTENT4B抗体準備>
マウスをTENT4A抗原(792aa異型体からの126-571aa,NCBI NP_008930.2)又はTENT4B抗原(666aa異型体からの106-533aa,NCBI XP_006721308.1)で兔役させ、死滅させた。収集された脾臓細胞をSp2/O骨髄腫と融合させ、高親和度抗体を生成するハイブリドーマ細胞を選択した。マウスにハイブリドーマ細胞を腹腔内注射した後、腹水を得(Youngin Frontier Inc.)、免疫沈殿実験に使用した。
【0085】
<実施例8:ウェスタンブロット>
HepG2.2.15細胞をRIPA緩衝液(20mM Tris-HCl(pH7.5)、150mM NaCl、1mM EDTA、10% NP-40(Sigma,74385)、1%ナトリウムデオキシコレート(Sigma,D6750)、1% SDS(Ambion,AM9823))に溶解させた。他の細胞を緩衝液D(200mM KCl、10mM Tris-HCl(pH8.0)、0.2mM EDTA、0.1%トリトンX-100(Promega,H5142)に溶解させた。略60μgの溶解物をladder(Thermo,26616及び26619)と共に10%又は8~16%(Novex)SDS-PAGEゲルにローディングした。メタノール活性化ポリビニリデンジフルオリド膜(Millipore)に移した後、膜を、5%脱脂乳(skim milk)を含有するPBS-Tでブロッキングし、一次抗体で標識し、PBS-Tで3回洗浄した。抗マウス又は抗ウサギHRP接合された二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を培養し、PBS-Tで3回洗浄した。化学発光は、West Pico又はFemto Luminol試薬(Thermo)で行われ、信号は、ChemiDoc XRS+ System(BioRad)によって検出された。抗TENT4A(1:500,Invitrogen,PA5-61302;1:250-500,Atlas Antibodies,HPA045487)、抗TENT4B(1:500,Invitrogen,PA5-60177;1:500,Atlas Antibodies、HPA042968;1:500、実験室作製)、抗ZCCHC14(1:1,000-2,000,Bethyl Laboratories,A303-096A)、抗GAPDH(1:1,000-2,000,Santa Cruz,sc32233)、抗SAMD4B(1:500,Invitrogen,PA5-53490)、抗GM130(1:500,BD Bioscience,610822)及び抗ヒストンH3(1:2,000,Cell signaling,4499)を1次抗体として使用した。
【0086】
<実施例9:RT-qPCR>
全RNAは、Trizol試薬(Invitrogen,15596018)又はMaxwell16LEV simplyRNA Tissueキット(Promega,AS1280)を用いて抽出し、DNaseIで処理し、RNeasy MinElute Cleanupキット(Qiagen)で精製し、RevertAid逆転写酵素(Thermo)及びルシフェラーゼ検定サンプルに対するoligo dT、又は他のサンプルに対するランダムヘキサマー(Invitrogen)で逆転写した。mRNAレベルは、SYBR Green分析(Thermo)及びStepOnePlus実時間PCRシステム(Applied Biosystems)又はQuantStudio 3(Applied Biosystems)で測定した。RT-qPCRプライマーの目録は、表3に提示されている。
【0087】
【0088】
<実施例10:RNA免疫沈殿>
HepG2.2.15細胞を使用したTENT4A及びTENT4B免疫沈殿では、1枚の150mm皿からの細胞を収集し、溶解緩衝液(20mM HEPES(pH7.0~7.6)(Sigma,H0887)、4% NP-40、100mM KCl、0.1mM EDTA、10%グリセロール、1mM DTT、20Uml-1 RNase抑制剤(Ambion,AM2696)、1xプロテアーゼ抑制剤(Calbiochem,535140)で氷上で溶解させ、遠心分離した。それぞれの0.375μgの抗体(NMG,Santa Cruz,sc-2025;抗TENT4A,実験室作製;抗TENT4B,実験室作製)をタンパク質A及びGセファロースビーズに接合させた(1:1混合、総10μl)。溶解物を、抗体接合されたビーズと共にインキュベーションした後、洗浄緩衝剤(2% NP-40の他に同一の溶解緩衝剤)で洗浄した。正規化に使用されるスパイクインとして10ngのファイアフライルシフェラーゼmRNAをサンプルに添加した後、RNAをTRIzol試薬で精製し、DNaseIで処理し、RT-qPCRに使用した。類似の方法が、HepG2.2.15細胞を使用したZCCHC14免疫沈殿のために用いられ、また、溶解中にTurbo DNaseI(Ambion,AM2239)で処理し、それぞれ10μgの抗体(一般ウサギIgG(Cell signaling,2729S)及び抗ZCCHC14(Bethyl Laboratories,A303-096A))を使用した。HEK293T細胞(1枚の100mm皿)を用いたTENT4A免疫沈殿では、類似の方法が、それぞれの6μgの抗体(NMG及び抗TENT4A)と共に使用され、また、細胞は収集前に架橋結合した(0.1%パラホルムアルデヒド)。
【0089】
<実施例11:共同免疫沈降>
類似の段階がRNA免疫沈殿におけると同様に用いられたが、Turbo DNaseI及びRNase A(Thermo,EN0531)が添加された。簡単にいうと、5個の150mm皿からのHepG2.2.15細胞を溶解させ、それぞれの17.5μgの抗体(NMG、抗TENT4A、抗TENT4B)を免疫沈殿に使用し、これはタンパク質A及びGセファロースビーズ(1:1混合、総25μl)にコンジュゲーションされた。2枚の150mmディッシュからのプライマリHFF細胞を溶解させ、それぞれ6μgの抗体(NMG、抗TENT4A、抗TENT4B)を免疫沈殿に使用し、これはタンパク質A及びGセファロースビーズ(1:1混合、総20μl)に接合された。RNase Aを溶解物に添加して0.2~0.3μg/μlの最終濃度にした。共免疫沈降実験のために、HeLaT細胞の1及び1/3 150mmディッシュからの細胞質抽出物を、次に説明する通りに細胞外分別法によって得た後、それぞれの18μgの抗体(NMG、抗TENT4A、抗TENT4B)と共に免疫沈殿に使用した。
【0090】
<実施例12:ルシフェラーゼ分析及び形質感染>
24ウェルプレート上の1E5HeLaT細胞を0日にリポフェクタミン3000によってルシフェラーゼレポーター分析のために200ng pmirGLOプラスミドで形質感染させ、2日に収集した。回復実験のために、24ウェルプレート上の1.5E5HeLaT親細胞及びTENT4 KO細胞を50ngのpmirGLOプラスミドと共に20ngのヌルベクター又はTENT4A/B(1:1混合)プラスミドでリポフェクタミン3000によって0日に形質感染させ、2日に収集した。HEK293T細胞は0日に100nM siRNAで形質感染させ、24ウェルプレート上の1.5E5細胞をリポフェクタミン3000によって100又は200ngのpmirGLOプラスミドと共に2日に100nM siRNAでさらに形質感染させた。4日にHEK293T細胞を収集した。ルシフェラーゼ分析のために、細胞を溶解させ、メーカーの指示に従ってデュアルルシフェラーゼレポーター分析システム(Promega)で分析した。
【0091】
<実施例13:細胞内分画>
2E6HeLaT細胞を収集し、冷たいPBSで洗浄した。細胞質分画を得るために、細胞を200μlの細胞質溶解緩衝剤(0.2μg/μl digitonin(Sigma,D141)、150mM NaCl、50mM HEPES(pH7.0~7.6)、0.1mM EDTA、1mM DTT、20U ml-1 RNase抑制剤、1xプロテアーゼ抑制剤、1xホスファターゼ抑制剤)で溶解させた。2,000相対遠心力(relative centifugal force)で遠心分離後に、4℃で5分間、上澄液を収集し、細胞質分画として使用した。膜及び核分画では、細胞内タンパク質分別キット(Thermo Scientific,78840)をメーカーの指針に従って使用した。
【0092】
<実施例14:Hire-PAT分析>
毛細管電気泳動データのHire-PAT分析及び信号処理は、以前に記載された通り[3,57]、全RNAが酵母ポリ(A)ポリメラーゼ(Thermo Scientific,74225Z25KU)によってG/Iテールになるようにマイナーアダプテーションで行われた。ファイアフライルシフェラーゼ遺伝子のポリ(A)部位は、サンガーシーケンシングにより確認され、フォワードPCRプライマーは表4に表した。
【0093】
【0094】
<実施例15:系統発生学的分析>
推定ステムループ結合タンパク質を確認するために、Drosophila Smaug(UniProtKB Q23972)及びヒトSAMD4A/B(UniProtKB Q9UPU9及びQ5PRF9)のRNA結合SAMドメインの相同体は、10のE値臨界値と一緒にUniProt BLASTを用いてサーチし、ギャッピングされなかった[58]。分析に用いられたタンパク質配列:UniProtKB Q08831(S.cerevisiae)、UniProtKB Q9P6R7(S.pombe)、UniProtKB Q5AI80(C.albicans)、UniProtKB O76699(C.elegans)、UniProtKB Q23972(D.melanogaster)、UniProtKB E7F85E7FBA1、A0A0R4IUM4(D.rerio)、UniProtKB Q6GLT9、Q5FWP2、A0A1L8GL36(X.laevis)、UniProtKB Q8CBY1、Q80XS6、Q8VIG0(M.musculus)及びUniProtKB Q9UPU9、Q5PRF9、Q8WYQ9(H.sapiens)。基本パラメータを有するMUSCLE v.3.8.31[59]を、生成された17個のタンパク質配列の多重配列整列に使用した。系統発生樹(phylogenetic tree)は、PhyML v.3.1/3.0aLRT[60]を用いて再構成し、Phylogeny.frプラットホーム[62]においてTreeDyn v.198.3[61]を用いて視覚化した。再構成された系統発生樹の縁と葉は再調整され、視覚化のために手動でルーティングされた(rooted)。
【0095】
<実施例16:RNAプルダウン分析>
RNA2.7ステムループ(SL2.7)及びステムループ突然変異体(SL2.7突然変異)の3’TEG(tetraethylene glycol spacer)-ビオチン化RNAを合成し(Bioneer Inc.)、配列は表5に記載した。
【0096】
【0097】
セット1に対するストレプトアビジンM-270ビーズ(Thermo Scientific,65305)及びセット2に対するストレプトアビジン磁性ビーズ(NEB,S1420S)をプルダウンバッファー(50mM Tris(pH8.0)、150mM NaCl、5%グリセロール、1mM DTT、100U ml-1 RNase抑制剤、1xプロテアーゼ抑制剤)で2回洗浄した。次いで、SL2.7の10μgのオリゴヌクレオチド又はその突然変異体を、4℃で一晩、プルダウン緩衝剤中のストレプトアビジンビーズにコンジュゲーションさせた後、プルダウン緩衝剤で洗浄した。4枚の150mm皿からのHEK293T細胞を収集し、1.5mlプルダウン緩衝液で溶解させた後、超音波処理した。遠心分離後に、上澄液をビーズと共にインキュベーションし、洗浄バッファーNo.1(50mMトリス(pH8.0)、300mM NaCl、5%グリセロール)、洗浄緩衝液番号2(50mMトリス(pH8.0)、150mM NaCl、5%グリセロール、0.1%トリトンX-100)及びプルダウン緩衝剤で洗浄した。溶離のために、ビーズを1,600r.p.mで60μlの溶離緩衝剤(100mM(pH7.5)、4% SDS、100mM DTT)と共に65℃で10分間に熱混合器で培養した。次いで、10及び50μlの溶出液を、それぞれ、ウェスタンブロッティング及び質量分析に使用した。
【0098】
<実施例17:液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析機(LC-MS/MS)分析>
SDSを含有する免疫沈殿されたタンパク質サンプルは、濾過補助サンプル製造消化に適用された。簡略に、タンパク質サンプルをまず還元させ、変性ABC緩衝剤(50mM重炭酸アンモニウム(ABC)中8Mウレア)でアルキル化させた。アルキル化したサンプルを、あらかじめ調整された30kDa MWCOアミコンフィルター(ミリポア、UFC5030)に入れ、14,000gで30分間遠心分離した。200μlの8Mウレア又は50mM ABC緩衝液で連続洗浄を行い、14,000gで15分間遠心分離してフィルターユニットからSDSを除去した。次いで、タンパク質サンプルを37℃で2%(w/w)トリプシンで一晩消化させた。生成されたペプチドサンプルを、C18ジッパーティップ洗浄(Millipore,Z720070)及びLC-MS/MS分析に適用した。3μm Jupiter C18粒子(Phenomenex)が内蔵された自体包装された長い毛細管カラム(内径100cm×75μm)及びトラップカラム(内径3cm×150μm)をペプチド分離に使用した。300nl/minの流速及び100分間に、95%溶媒A(0.1%ギ酸含有水)~40%の溶媒B(0.1%ギ酸含有アセトニトリル)の範囲の線形勾配を、Orbitrap Fusion Lumos質量分析機(Thermo Scientific)と結合しているnanoACQUITY UPLC(Waters)上に適用し、これは、次のパラメータを用いて作用された:前駆体スキャン範囲のm/z300~1,800、前駆体隔離ウィンドウ1.4Th、高エネルギー衝突解離(HCD)に対する正規化した衝突エネルギーの30%、動的排除期間30秒、及びfull MS又はMS/MSスキャンdpに対するm/z200における60,000又は75,000解像度、それぞれ。
【0099】
質量分析原始データファイルは、基本設定(初期又はメインサーチのそれぞれに対する前駆体イオン質量公差の20又は6ppm、及び切片イオン質量に対する0.5Da)においてヒトUniprotデータベース[58](v.12/5/2018)に対してMaxQuantの内蔵Andromeda検索エンジン[65]を用いてMaxQuant(v.1.5.3.30)で処理した。酵素特異性は、トリプシン/Pに設定され、最大で2個の欠落した分裂が許容された。システインカルバミドメチル化及びメチオニン酸化はそれぞれ、固定及び可変変形として選択された。タンパク質及びペプチドレベルの両方において1% FDRが要求された。質量分析プロテオミクスデータは、データセット識別子PXD018061及び10.6019/PXD018061と共に、PRIDE[66]パートナー保存所を通じてProteomeXchangeコンソーシアムに保存された。SL2.7コンストラクトに対するスプリアス又は非特異的結合を説明するために‘ビーズオンリー(only)’及び突然変異コンストラクトから得た結果を技術的背景と見なし、タンパク質スペクトル数増加のためのカストマイズされた統計テストをデザインした。SL2.7コンストラクトからタンパク質pに対して確認されたスペクトル個数の数をNpにし、背景構築物からの個数をMpにする。Np≧1である各タンパク質pに対して、濃縮の統計的有意性(又は、P値)が計算された:
【0100】
【0101】
ここで、
【0102】
【0103】
であり、B(k;n,p)は、Pの成功確率であって、n回の試みでk個の成功を得る二項分布である。最後に、P値は、Benjamini-Hochberg方法で調整された。技術的背景(‘ビーズオンリー’又は突然変異体)を使用する時に、調整されたP<0.01であるタンパク質は統計的に有意であると見なされた。セット1又はセット2データセットにおいて統計的に有意なタンパク質が、後続タンパク質強度分析のために考慮された。結測値を処理するために、データセットの最小0でない強度値が代置された。次いで、タンパク質濃縮点数を突然変異データに対するSL2.7のタンパク質強度のlog2倍変化として計算した。
【0104】
<結果>
<1.HBVとHCMVは、混合されたテーリング道具を逆利用する。>
ウイルスRNAテーリングを調査し特性化するために、まず、TAIL-seqを2種のウイルス感染モデルに適用した:HBV DNAと統合されたHepG2.2.15細胞及びHCMVに感染したプライマリヒト包皮繊維芽細胞(primary human foreskin fibroblast;HFF)。HepG2.2.15細胞は、肝芽細胞腫細胞株HepG2から由来し、HBV粒子の生産及び組立を支援するときに、HBVの寿命周期を研究するのに使用した。HepG2.2.15細胞に対するTAIL-seqデータは、ウイルスRNAに対して非常に高いグアニル化頻度を示した(
図1a、
図7a)。混合テーリング頻度(G、U及びC計数)は、また、細胞RNAよりもウイルスRNAにおいて実質的により高かった(
図7a)。また、HCMV感染したHFF細胞に対するTAIL-seqデータは、HCMV RNAに対して高いグアニル化及び混合テーリング頻度を示した(
図1b及び
図7b)。変形は、主に、HCMVの4個の豊富で且つ保存された長い非コーディングRNAの一つであるRNA2.7(
図7c,VRNA2.7)に起因した。HBV及びHCMV RNAはいずれも細胞mRNAよりもテールが非常に長く(
図1c、
図1d)、これは、このようなウイルスRNAは細胞mRNAに比べて、遅い全体(net)デアデニル化を経由し得ることを示す。
【0105】
ウイルス混合テーリングが宿主対応物と同じ酵素によって媒介されかを調べるために、TENT4A及びTENT4Bを枯渇させた。HBV mRNA及びHCMV RNA2.7のグアニル化及び混合されたテーリング頻度は、TENT4A及びTENT4B枯渇した細胞において減少した(
図1e、
図1f及び
図7d~
図7g)。TENT4A及びTENT4Bのノックダウンは、また、ウイルスRNAのポリ(A)テールが短くなり(
図7h~
図7j)、TENT4酵素がウイルスRNAテールの延長に寄与するということを示した。一様に、HBV mRNAは、TENT4枯渇後に下向き調節及び不安定化され(
図1g、
図1h及び
図7k)、これは、HBVがTENT4を使用してmRNAを安定化させることを示す。注目すべき点は、TENT4がない時に補償メカニズムの可能性を除いて、オリゴ-ウリジル化(
図7l)のようなテール変形が増加しないという点である。高度に安定したHCMV RNA2.7は、実験時間ウィンドウ(experimental time window)範囲内でRNA半減期において有意の変化を示しておらず(
図7m、P>0.05;両側学生のt検定)、これは、デアデニル化に続く追加のダウンストリームメカニズムを示唆し、これはRNA2.7崩壊を遮断する。
【0106】
<2.HBV RNAはHepG2.2.15細胞においてTENT4の主要基質である。>
TENT4募集のメカニズムを説明するために、HepG2.2.15細胞においてフォルムアルデヒド媒介架橋結合及び免疫沈殿シーケンシング(fCLIP-seq)を行った(
図2)。フォルムアルデヒドベースの架橋は、RNA-タンパク質相互作用が一時的で且つ構造依存的である時にも、RNA-タンパク質相互作用を効果的で且つ強力にキャプチャーする。正常マウスIgG(NMG)、TENT4A抗体又はTENT4B抗体を使用して入力(input)溶解物及び免疫沈殿物で4個のライブラリーを製造した。入力及びNMGライブラリーは、背景を推定するためのサイズマッチングされた対照群として用いられた。HBVゲノムにわたって標準化された判読範囲は、TENT4A及びTENT4B抗体の両方を使用してHBVゲノムから実質的に豊富なピークを確認した(
図2a)が、これは、HBV RNA上のTENT4の相互作用部位を示す。TENT4B抗体に対する独立した実験は、類似の結果を示した(
図8a)。
【0107】
HBV RNAは、3.2キロベースの円形(circular)DNAゲノムから生成される。5個の重複ウイルス転写体は、共通3’末端配列(~700塩基対)と単一ポリアデニル化部位を共有する(
図2a)。TENT4結合判読値は、1,154~1,687に達する3’末端領域が豊富である(
図2a)。この領域は、転写後調節要素(PRE)に該当し、RNA核放出及び安定化を向上させるものとよく知られている。WPRE(woodchuck hepatitis virus)のPREは、異所性遺伝子発現及びレンチウイルス遺伝子伝達を増加させるのに広く用いられてきた。La、PTB、GAPDH及びZC3H18のようないくつかのRNA結合タンパク質がPREと相互作用すると報告されているが、それらの相互作用の機能的重要性は不明である。本発明のfCLIP-seq実験においてHBVのPREは、ヒト転写体の他の推定されたピーククラスターと比較して最も高い濃縮点数を示した(
図2b)。免疫沈殿及び以降の逆転写(RT-qPCR)を用いた定量的PCRによって、TENT4A、TENT4B及びHBV mRNA間の相互作用を確認した(
図8b)。要するに、これらの結果は、HBV mRNAがHepG2.2.15細胞においてTENT4の主要基質であり、TENT4がHBV mRNAとPRE領域を通じて相互作用するということを立証する。
【0108】
<3.HBV RNAのステムループαは、TENT4依存的テール調節に必要である。>
TENT4によって認識されるcis作用RNA要素を確認するために、3’非翻訳領域(UTR)においてPREの異なる下位領域を有するレポーターを生成した(
図3a)。PREは、PREα(1154-1351)とPREβ(1352-1687)の2種の下位要素で構成される(
図3a)。また、TENT4A及びTENT4B依存性をテストするために、TENT4A及びTENT4Bノックアウト(KO)細胞を生成した(
図9a)。
【0109】
ルシフェラーゼタンパク質及びRNAレベルは、レポーターに完全なPRE又はPREαが装着された場合にのみ、TENT4依存的方式で有意に上向き調節された(
図3b及び
図9b)。TENT4が枯渇したヒト胚腎臓293T(HEK293T)細胞において類似の結果が得られ(
図9c、
図9d)、PREαがTENT4依存的安定化に必要であるということを確認した。Hier-PAT分析によるポリ(A)テール長測定の結果、TENT4枯渇がPREα構造物においてポリ(A)テールを短縮させたが、PREβ構造物ではそうでなかった(
図3c)。
【0110】
TENT4がPREα-依存的方式でテール変形を通じて直接作用するということを表示す。また、ノックアウト細胞において、タンパク質及びRNAレベルの両方においてPRE及びPREαレポーター発現は異所的に(ectopically)発現したTENT4によってレスキューされた(
図3d、
図9e及び
図9f)。触媒的に非活性である突然変異体が活性を復元できなかった。したがって、PREαを含有するmRNAの上向き調節にはTENT4の触媒活性が必要である。
【0111】
PREの機械的な保存を調べるために、HBVのPREと同種であるWHV(woodchuck hepatitis virus)セグメント(WPRE)を使用した(
図3e)。HBVのPREとは違い、WPREは次の3つの下位要素で構成される:WPREγ、WPREα及びWPREβ。WPREα及びWPREβは、WHVとHBVとの間に保存されるのに対し、WPREγは、独特で且つHBVのPREに比べてWPREのより大きい活性を担当するものと考えられる。WPREα(Wα)を有する全てのコンストラクトは、TENT4依存的上向き調節を示した(
図3f)が、これは、TENT4媒介メカニズムはWHVで保存されることを提案する。
【0112】
WPREγ(Wγ)とWPREα(Wα)の組合せは、シナジー効果(
図3f)を導出し、これはWPREγがWHVのTENT4媒介調節に対するエンハンサーとして作用できることを示唆する。
【0113】
PREαにおいて核心モチーフを特定するために追加の点突然変異が導入された(
図3a)。PREαは、La結合モチーフ及びステムループアルファ(SLα)を含有し、両方ともRNA放出及び安定性に必要なものとして報告された。最近の突然変異誘発研究は、SLαのLa結合部位及び頂端(apical)ループ配列がDHQ-1媒介HBV遺伝子発現に必須であることを示した。注目すべき点は、SLαは、A螺旋領域が側面にある単一突出G残基としてCNGG(N)ファミリーループ構造を本質的に採択するCAGGUペンタループを含んでいるという点である(
図3g、左側)。SLαの構造は、WHVにおいても進化的に保存されている(
図3g、右側)。このような要素がTENT4依存的調節に必要か否かをテストするために、SLαの頂点シーケンスとモチーフを妨害するPREα突然変異体レポーター(
図3a)を生成した(
図3g、矢印)。La結合モチーフ(α mut1)の突然変異誘発は、TENT4依存性に影響を及ぼさなかったし、SLα突然変異(α mut2)と二重突然変異(α mut3)はPREα機能を中断させた(
図3h)。したがって、PREαのステムループ(SLα)は、TENT4による転写後調節に必須な要素である。
【0114】
<4.HCMV RNA2.7はTENT4依存的調節のための類似のステムループを保有する。>
HBV mRNAに加え、HCMV RNA2.7(VRNA2.7)は、また、混合されたテーリングを進行する(
図1b、
図1d及び
図7b)。TENT4A抗体を使用したRNA免疫沈殿実験に続いてRT-qPCRは、TENT4AがHEK293T細胞において異所的に発現するRNA2.7と相互作用することを示し(
図4a及び
図10a)、TENT4AとRNA2.7間の相互作用にウイルス因子が必要でないということを示唆する。TENT4相互作用を担当するRNA2.7の機能的ドメインを確認するために、RNA2.7の部分的に重なる断片を含むレポーターを生成した(
図4b,FRG1-6)。初めの2つのレポーター(FRG1及びFRG2)のタンパク質及びRNAレベルは、TENT4 KO細胞と比較して、親細胞において有意に高かった(
図4c及び
図10b)。したがって、cis要素は5’末端近傍に存在する。FRG1の部分的欠失は、1E断片(414-513)のみがTENT4依存的強化効果を付与することが明らかにされた(
図4d、
図4e、
図10c、及び
図10d)。1Eドメインは、PREα及びWPREαのSLαのCNGG(N)ファミリーループ形態と類似のステムループ構造(
図4b、右側下端)を保有する(
図3g)。1Eのステムループに対する点突然変異(1E mut)は、TENT4の調節を中断させた(
図4e及び
図10d)。ステムループ(以降、L2.7と称される414-463)を含む、より小さい50nt切断断片は、FRG1及び1Eと類似の活性を有する(
図10e)。HBV PRE及びWPREのSLαは、RNAの3’末端近傍にあるが、HCMV RNA2.7のSL2.7は5’末端近傍にあり、これは、ペンタループが位置独立的方式で機能し得ることを示唆する。
【0115】
要するに、本発明は、TENT4依存的調節におけるSLα類似構造の機能的重要性を立証する。
【0116】
<5.細胞質ZCCHC14はステムループ構造に結合し、TENT4と相互作用する。>
CNGGNペンタループは、初めに酵母Vts1pの滅菌アルファモチーフ(SAM)ドメインに結合するSmaug認識要素として特性化されたし、Drosophila Smaugは転写後抑制を仲裁する[32-36]。Schwalbeらは、構造的類似性に基づいてHBV SLαペンタループがSAMドメインとタンパク質の結合部位の役割を担うことができると提案した。しかし、TENT4はSAMドメイン[31]を含有しなく、組換えTENT4を使用した我らのテーリング分析は、PRE-インビトロに対する注目すべき親和力を検出できなかったが、これはRNA相互作用補助因子を示す。
【0117】
SLα及びSL2.7を認識する潜在的な補助因子を探すために、ビオチン化された合成SL2.7及びHEK293T細胞抽出物でRNAプルダウンを行った(
図5a)。ループ突然変異体を陰性対照群とした。質量分析法は、顕著に濃縮された6個のタンパク質、すなわち、TENT4A、TENT4B、K0355、SAMD4A、SAMD4B及びZCCHC14を示した(
図5a)。特に、Smaug類似SAMドメインを有する3種のヒトタンパク質がこの目録に含まれている:Smaugの2個の相同体(SAMD4A及びSAMD4B)及びZCCHC14(
図5b)。ZCCHC14の特異的濃縮はRNAプルダウン及びウェスタンブロッティングによりさらに確認された(
図5c)。K0355(又はKIAA0355)にはSAMドメインがなく、SAMD4B37と相互作用することが報告され、K0355がペンタループと直接相互作用しなく済むことを示す。どのSAMドメインタンパク質がTENT4依存的調節を担当するかを確認するために、HBV生成HepG2.2.15細胞を再検討した。ZCCHC14のノックダウンは、SAMD4タンパク質のノックダウンにおいてHBV RNAレベルを減少させなかった(
図5d及び
図11)。一様に、最近、ゲノムワイドCRISPRスクリーンは、ZCCHC14をHBVの表面抗原生産のための必須宿主因子として報告した。
【0118】
ZCCHC14の作用メカニズムを理解するために、ZCCHC14枯渇したHepG2.2.15細胞においてTAIL-seq実験を行った。HBV mRNAのグアニル化頻度が減少し(
図6a)、ポリ(A)テールはZCCHC14ノックダウンにおいて実質的に短縮され(
図6b)、HBV RNA混合されたテールにおいてZCCHC14の重要な役割を立証した。一様に、ZCCHC14枯渇は、CNGGNステムループ(RNA2.7 1E、PREα、Wγ+Wα)を保有しているレポーターからルシフェラーゼ発現を減少させた(
図6c)。対照的に、それぞれのペンタループ突然変異体(1E mut、α mut2、Wγ+Wα mut)は、ZCCHC14ノックダウン後に有意の変化を示さず(P>0.05;両側学生のt検定)(
図6c)、これは、ZCCHC14の機能がCNGGNモチーフに依存するということを示す。本発明者らは、また、Hire-PAT分析を行い、レポーターmRNAsのポリ(A)テール長がCNGGNモチーフ依存した方式でZCCHC14枯渇細胞において減少することを確認した(
図12a~
図12c)。
【0119】
ZCCHC14抗体を使用したRNA免疫沈殿は、HepG2.2.15細胞においてZCCHC14とHBV転写体間の相互作用を裏付けた(
図6d及び
図12d)。さらに、HepG2.2.15及びプライマリHFF細胞の両方において、ZCCHC14はRNase処理に関係なくTENT4A及びTENT4Bと共同免疫沈殿され(
図12e)、これは、ZCCHC14とTENT4間のRNA非依存的相互作用を示す。最後に、本発明者らは、ZCCHC14が主として細胞質に限定され(
図6e)、ZCCHC14がHeLaT細胞の細胞質分画を使用してTENT4A及びTENT4Bと共同免疫沈殿するということを発見した(
図6f)。要するに、本発明は、ZCCHC14が主に細胞質においてTENT4と相互作用してデアデニル化からSLα類似要素を含むウイルス転写体を不注意して保護することを示す。
【0120】
本発明者らは、ウイルス性遺伝子発現においてターゲッティングされ混合されたテーリングのメカニズムを明らかにした(
図6g)。HBV mRNA及びHCMV RNA2.7は、ZCCHC14及びTENT4を募集するのに重要なCNGGNペンタループと共にcis作用要素を含む。TENT4による混合テールは、CNOTデアデニラーゼ複合体に対抗してウイルスRNAを保護する。極めて異なる寿命周期と組織特異性を有するこれら2つの別個のウイルス(ヘパドナウイルス科に属するウイルスとヘルペスウイルス科に属するウイルス)は、遺伝子発現の利点のための同一戦略を提示したことが興味深い。このような収斂進化とこのcis作用要素の単純性は、このメカニズムが別のウイルスにおいても利用可能であることを示唆する。
【0121】
混合されたテーリング作動方式の他に、TENT4Bは、核TRAMP複合体(酵母においてTrf4-Air1/2-Mtr4及びヒトにおいてTENT4B-ZCCHC7-hMTR4)の成分として作用し、異常転写体の分解又は切断及び成熟に関与するか、核におけるスモールノンコーディングRNA(small noncoding RNAs)のトリミング及び成熟に関与する[5,39-43]。本発明者らは、混合テーリングがTRAMPコンプレックスと区別されるモジュールとしてmRNA安定性に寄与するということを、以前に示した。hMTR4及びZCCHC7のノックダウンがHBVタンパク質及びmRNAレベルに影響を及ぼさないということを考慮すれば、TENT4はHBV調節においてTRAMP複合体と独立して作用するものと考えられる。ZCCHC14の細胞質局在化(cytoplasmic localization)は、また、TENT4-ZCCHC14複合体が核TRAMP複合体と別個のサブセルラー区画において作動するということを示唆するが、たとえTENT4-ZCCHC14複合体のマイナーフラクションが核において作動する可能性を排除しない。
【0122】
混合されたテーリングは、HBV遺伝子発現に特に重要であると考えられる。5つのmRNA種のうち4種(X以外のpgRNA、Precore、PreS1及びPreS2/S)は、SLαステムループを含み、TENT4酵素が枯渇すれば半減期が実質的に減少する。現在の治療オプションにはnucleos(t)ide類似体とインターフェロンアルファが含まれるが、治療効果が少なく、しばしば非効率的であるため、HBV感染は毎年全世界的に約8千万人が死亡する主要医療負担として残っている。ウイルス性タンパク質、特に、免疫回避を誘導するウイルス性S抗原(HBsAg)の生産を遮断することによって機能的治療を達成することができる。ウイルス性混合テールの発見及びウイルス遺伝子発現にTENT4及びZCCHC14の関与は、新しい部類の抗HBV薬物の発達に対するメカニズム的な洞察力を提供することができる。TENT4作動方式をターゲッティングする潜在的副作用を避けるために、TENT4タンパク質とそのパートナーの内因性機能と作用メカニズムを理解することが重要である。
【0123】
CNGGNペンタループとRNA結合SAMタンパク質間の物理的相互作用は、高度に保存され広く使用される機能的モジュールであると確認された。ミバエ(fruit fly)おいてSmaugはnanos mRNAのCUGGCループでヘアピンを認識して適時のmRNA分解を誘導する。これは、前後軸(anterior-posterior axis)の設定に必須である。酵母において、Vts1pは、標的化されたmRNA分解のためにCNGG(N)ペンタループを有するmRNAに結合する。脊椎動物は、3個のRNA結合SAMタンパク質を有し、この相互作用モジュールの使用を拡張したものと見なされる。Smaugの脊椎動物オルソログ(ortholog)の一つであるSAMD4Bは、nanos1 mRNAを標的とし、哺乳類神経発達過程において必須である。Smaugの他の脊椎動物オルソログであるSAMD4Aは、ペンタループ含有レポーターの翻訳を抑制し、細胞質病巣の形成と関連がある。ここで、本発明者らは、同一のメカニズムを、特にウイルス性RNAの利益のために、脊椎動物特異的タンパク質ZCCHC14を通じて反対目的に利用可能であることを示した。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【
図1】ウイルスRNAの広範囲な混合されたテールを示す。
【
図2】HBV RNAは、HBVのPREを通じたTENT4の主要mRNA基質であることを裏付ける実験結果を示す。
【
図3】PREのステムループ構造は必須であるが、HBV mRNAのTENT4-依存性RNAテーリング(tailing)には十分でないことを示す図である。
【
図4】HCMV RNA2.7のステムループ構造は、TENT4依存的調節の原因となるcis-作用(cis-acting)RNA要素であることを示す図である。
【
図5】ZCCHC14を含む、SAMドメイン含有タンパク質は、ステムループ構造に結合し、HBV mRNAを調節するということを示す図である。
【
図6】細胞質ZCCHC14は、ステムループ構造でRNAを保護するためにTENT4を募集(recruit)することを示す図である。
【
図7】ウイルスRNAの広範囲な3’末端テール(3’ end tail)変形を示す図である。
【
図8】TENT4A/B及びHBV mRNA相互作用の分析及び確認結果を示す図である。
【
図9】PREレポーターのTENT4依存的調節を確認した結果を示す図である。
【
図10】RNA2.7レポーターのTENT4依存的調節の確認結果を示す。
【
図11】ZCCHC14及びSAMD4A/Bノックダウンを確認した図である。
【
図12】ZCCHC14ノックダウン、ステムループ依存的テール調節、及び免疫沈殿の確認結果を示す図である。
【
図13】ペンタループを含むステムループ(stem-loop)構造を示す。
【配列表】