(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】機材用の水準器
(51)【国際特許分類】
G01C 9/34 20060101AFI20231218BHJP
G01C 9/28 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
G01C9/34
G01C9/28
(21)【出願番号】P 2019220007
(22)【出願日】2019-12-05
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】510067038
【氏名又は名称】株式会社インタニヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】奥村 正己
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第19704368(DE,A1)
【文献】実開昭60-158863(JP,U)
【文献】特開2011-047812(JP,A)
【文献】米国特許第6502321(US,B1)
【文献】特開2019-174213(JP,A)
【文献】特開2011-64485(JP,A)
【文献】中国実用新案第207963862(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 9/00-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡を含み液体で内部が満たされた円筒形の水準器であって、
上面には、該気泡の位置で水平を確認するためのマーカーと、
底面には、該円筒形の円周に沿って下方向に凸設した円環状リブ部、及び該底面の中心から下方向に突設したネジ体と、
を備え
、
該
ネジ体が、該
円環状リブ部の内側にある凹状底面部と対面して固定する円盤部と、該円盤部の中心から下方向に突設したネジ部とから構成されると共に、
該円盤部の厚さは該円環状リブ部の高さよりも薄く形成した構成であって、
該円環状リブ部の下面を、該マーカーの水平となるように形成したことにより、該ネジ体を機材に螺嵌した際に該機材の水平を確認できるようにした
ことを特徴とする機材用の水準器。
【請求項2】
前記円筒形の側面に、螺嵌時に滑り止めとなる滑り止め部を形成した
ことを特徴とする請求項
1に記載の機材用の水準器。
【請求項3】
前記滑り止め部が、前記水準器の本体とは別体で構成される構成において、
該滑り止め部の下面が前記円環状リブ部の下面よりも高い位置となるように形成した
請求項
2に記載の機材用の水準器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水準器に関し、特に三脚やリグ等の撮影機材など様々な機材に装着する水準器に係る。
【背景技術】
【0002】
水平を確認するために様々な水準器が知られている。古くから液体の中に水泡を含み、その水泡が中心に来た時に水平を判断する方法が採られている。水準器は一般的な建築作業用などの他、カメラによる撮影時にも水平を確認するために用いられている。
【0003】
特に近年、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)用動画や、パノラマ画像、3次元画像を撮影する場合において、特に正確な水平を確認しながら撮影する必要性が高まっており、簡便に使用できる水準器が求められている。
【0004】
特許文献1には、三脚に装着することができる固定部材を有し、この固定部材に、撮影中心確認手段と、水平確認手段である水準器が取り付けられた構成が開示されており、三脚に取り付ける固定部材であるリグの側面に水準器が直接付属されたものが開示されている。水準器はリグと一体化された構成である。
【0005】
特許文献2には、測量用三脚の脚頭であって、その水平台の上面外周部に水準器を内蔵した構成が開示されている。本文献も水準器は直接付属したものであり、着脱することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-160815
【文献】実登3021356
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、撮影機材等の様々な機材に簡便に着脱可能であり、低コストかつ高精度な水準器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は次のような水準器を提供する。
本発明の第1の実施形態によると、気泡を含み液体で内部が満たされた円筒形の水準器であって、水準器上面には、気泡の位置で水平を確認するためのマーカーを備える。
一方、水準器底面には、円筒形の円周に沿って下方向に凸設した円環状リブ部、及び底面の中心から下方向に突設したネジ体とを備える。
円環状リブ部の下面を、マーカーの水平となるように形成したことにより、ネジ体を機材に螺嵌した際に取り付けた機材機材の水平を確認できるようにした機材用の水準器を提供する。
【0009】
本発明の第2の実施形態によると、上記のネジ体が次のように構成される。すなわち、円環状リブ部の内側にある凹状底面部と対面して固定する円盤部と、円盤部の中心から下方向に突設したネジ部とから構成される。そして、円盤部の厚さは円環状リブ部の高さよりも薄く形成して、機材に螺嵌しても円環状リブ部の下面だけが接するようにする。
【0010】
本発明の第3の実施形態によると、水準器の円筒形の側面に、螺嵌時に滑り止めとなる滑り止め部を形成し、回しやすく構成する。
【0011】
本発明の第4の実施形態によると、上記の滑り止め部が、水準器の本体とは別体で構成される構成において、滑り止め部の下面が円環状リブ部の下面よりも高い位置となるように形成し、機材に螺嵌しても円環状リブ部の下面だけが接するようにする。
【0012】
本発明の第5の実施形態によると、上記第2の実施形態における機材用の水準器で用いられる、ネジ体を単体で提供することができる。
【0013】
本発明の第6の実施形態によると、上記第4の実施形態における機材用の水準器で用いられる、滑り止め部を単体で提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、撮影機材等の機材にネジで簡便に着脱できる水準器を提供することができる。特に、円環状リブ部の下面を水平に加工して精度を確保しながら、ネジ体や滑り止め部は厳しい精度を要求せずに備えることができるので、低コスト化にも寄与する。
【0015】
撮影機材にすでに備えられているネジに螺嵌するので、水準器を取り付けることが予定されていない機材に取り付け、水平を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図8】本発明に係る水準器の装着例を示す説明図である。
【
図9】別実施例においてハウジングと滑り止め部を一体化して形成したハウジングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記に限定されるものではない。
本発明は、三脚やリグ等の撮影機材や、その他の様々な機材に装着する水準器を提供する。撮影機材にはISO規格により、3/8-16UNC(インチ)の大ネジ、1/4-20UNC(インチ)の小ネジの2種のネジ穴が規定されている。特にリグには、カメラやマイクなどを様々な位置に取り付けることができるように、多数のネジ穴が開けられている。
【0018】
本発明はこのネジ穴を活用して、水準器を随意の位置に螺嵌できるようにする。
図1は、水準器(1)の断面図、
図2は各部材の分解図、
図3は上方斜視図、
図4は平面図、
図5は側面図、
図6は底面図、
図7は下方斜視図である。
【0019】
水準器(1)は、樹脂や金属で成型されたハウジング(10)を有し、ハウジング(10)内の槽(11)にアルコール等の液体(12)と気泡(13)を含む円筒形で構成される。ハウジング(10)の上面は液体(12)及び気泡(13)を密閉するマーカー(14)で覆う。マーカー(14)は、ガラスや樹脂の透明板(15)と、透明板(15)の中心に気泡(13)の外周よりやや大径の円形に刻印された標線(16)とから成る。
【0020】
このようなハウジング(10)やマーカー(14)の構成は公知であり、本発明を実施するに当たって、このような円筒形の既製品を用いて製造コストを抑えることもできる。
【0021】
ハウジング(10)の底面部(100)には、円筒形の円周に沿って下方向に凸設した円環状リブ部(101)を形成している。
本実施例における円環状リブ部(101)は円筒形の側面からそのまま下方向に伸びているが、本発明においては円周と同心円の内側に形成していてもよい。
【0022】
本発明において寸法は限定されないが、使いやすさの点から、ハウジング(10)の高さは10mm、直径が27mmであるところ、円環状リブ部(101)の高さは1.2mmである。
【0023】
そして、底面部(100)の中心から下方向に突設したネジ体(20)を備えている。ネジ体(20)はハウジング(10)と一体的に形成されていてもよく、例えば樹脂の一体成型で製造することもできるし、ネジ部分だけをハウジングに溶接することもできる。
本実施例では、ネジ体(20)はハウジング(10)と別体で構成される。
【0024】
ネジ体(20)は、円環状リブ部(101)の内側にある底面部(100)の凹状部分(102)と対面して固定する円盤部(200)と、円盤部の中心から下方向に突設したネジ部(201)とから構成される。円盤部(200)も周縁を僅かに肉厚としたリブ(202)が形成されているが、これに限定されない。
【0025】
円盤部(200)の外径は、凹状部分(102)に嵌合し、接着固定する。
円盤部(200)の厚さを円環状リブ部(101)の高さよりも薄く、例えば0.9mmとしているので、ネジ部(201)を撮影機材に螺嵌しても円環状リブ部(101)の下面(103)だけが撮影機材の取り付け表面に接するように構成されている。
【0026】
本発明はこのように円環状リブ部(101)を設け、この下面(103)をマーカー(14)の標示に対して水平となるように加工することで、底面部(100)全体を研磨したりする必要がなく、容易に低コストで高精度な水準器(1)を実現することができる。
【0027】
そして、円盤部(200)の厚みを上記のように薄くしているので、ネジ部(201)を螺嵌して締め付けた時にもネジ体(20)の精度に係わらず、円環状リブ部(101)の下面(103)の精度に依存して正確な水平を標示することができる。
このことは、ネジ体(20)の製造コストを抑える点でも有利である。
【0028】
本構成はネジ体とハウジングを一体的に形成した場合も全く同様である。底面部(100)には凹状部分を設け、中心からネジ部を突設する構成において、円環状リブ部が凹状部分よりも下方向に突出していればよい。
【0029】
図8は、本発明に係る水準器の装着例を示す説明図である。リグ(4)には図示されるように多数の大ネジ穴(40)、小ネジ穴(41)が設けられており、さらにカメラを取り付けるためのボルト(42)も有する。
このようなリグ(4)は上部平板部(43)と下部平板部(44)の平行や、上部平板部(43)と縦平板部(45)の垂直が正しく確保されている。
【0030】
そこで、カメラを下部平板部(44)に取り付けた上で、本発明に係る水準器(1)を上部平板部(43)の部位、特にカメラの直上方などに取り付けることで、見やすく正確な水平の標示を行うことができる。
【0031】
次に、本発明は、水準器(1)の円筒形の側面(104)に、螺嵌時に滑り止めとなる滑り止め部(30)を形成し、回しやすく構成することができる。
滑り止め部(30)は樹脂成型されたハウジング(10)の側面に凹凸のローレット加工を行ってもよいが、本実施例では市販の水準器にネジ体を取り付けるため、さらに回しやすくするための滑り止め部(30)を別体で構成している。
【0032】
滑り止め部(30)の外表面(300)に凹状のローレット部(301)を円周方向と直角に断続的に設ける。ローレット部(301)の幅は2.7mmとしており、回しやすさと意匠性を高めている。
【0033】
さらに、滑り止め部(30)の下面(302)が円環状リブ部(101)の下面(103)よりも高い位置となるように形成する。
このような構成も、ネジ部(201)を螺嵌して締め付けた時に滑り止め部(30)の精度に係わらず、円環状リブ部(101)の下面(103)の精度に依存して正確な水平を標示することに寄与し、同時に、滑り止め部(30)の製造コストを抑える点でも有利である。
【0034】
本発明の各寸法は任意に変更可能である。
例えば、ハウジング(10)の直径は、上記実施例の27mmの他、10mm以上40mm以内の任意の直径が好適である。例えば、直径16mmにあっては高さ6mm、直径18mmにあっては高さ7mm、直径23.5mmにあっては高さ8.5mmなどのサイズが適する。
【0035】
また、ネジ体におけるネジ径は撮影機材においては上記大ネジ、小ネジが特に好適であるが、本発明は例えば測量機材、計測機材など任意の機材用として提供することができるので、それらの機材に適合するネジ径とすることができる。
例えば、6mm、8mmなどのネジ径とすることも自由である。
【0036】
本発明は、上記水準器(1)に用いる為のネジ体(20)を単体で提供してもよい。また、ネジ体の構成は次の通りとしてもよい。
図9は、ハウジングと滑り止め部を一体化して形成したハウジング(50)の断面図であり、内部機構は省略している。本実施例ではネジ体(60)をハウジング(50)に固定して用いる。
【0037】
ネジ体(60)は、円環状リブ部(501)の内側にある底面部(500)の凹状部分(502)と対面して固定する円盤部(600)と、円盤部の中心から下方向に突設したネジ部(601)とから構成される。ネジ部(601)は中空になっている。
【0038】
そして、ハウジング(50)の底面部(500)の中心には小凸部(503)が形成されており、上記ネジ部(601)の中空部(602)が係合し、固定時に同心となりやすく形成している。
このようなネジ体を備えた水準器、又はネジ体単体として提供することができる。
【0039】
また、本発明は、上記水準器(1)で用いられる、滑り止め部(30)を単体で提供してもよい。この時、水準器はネジ部と別体、一体のいずれでもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 水準器
10 ハウジング
100 底面部
101 円環状リブ部
102 凹状部分
103 下面
104 側面
11 槽
12 液体
13 気泡
14 マーカー
15 透明板
16 標線
20 ネジ体
200 円盤部
201 ネジ部
202 リブ
30 滑り止め部
300 外表面
301 ローレット部
302 下面
4 リグ
40 大ネジ穴
41 小ネジ穴
42 ボルト
43 上部平板部
44 下部平板部
45 縦平板部