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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】流速制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/045 20060101AFI20231218BHJP
   F16L 55/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F16L55/045
F16L55/00 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020049282
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021148212
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】飛田 泰平
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-288480(JP,A)
【文献】実開昭53-046017(JP,U)
【文献】特開昭64-046615(JP,A)
【文献】特表2012-524224(JP,A)
【文献】特開2000-110681(JP,A)
【文献】特開平09-217969(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0038494(US,A1)
【文献】国際公開第2017/141331(WO,A1)
【文献】特開平08-327135(JP,A)
【文献】特開平08-200528(JP,A)
【文献】中国実用新案公告第85203748(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流から下流に流体が流れる配管内に設けられ、流体の流速を制御する流速制御装置であって、
回動によって、面方向が流体の流れる方向と略平行な第一状態及び該面方向が流体の流れる方向と交差する第二状態の間で状態切替可能な板状部材と、前記配管の内壁面に設けられ、前記板状部材を回動可能に支持する支持手段であって前記第二状態において該板状部材の上流側の端部が下流側の端部よりも該配管の中心軸側に位置するように支持する支持手段と、前記第一状態となる方向に前記板状部材を付勢する付勢手段と、を有する回動機構、
を備え、
前記板状部材は、前記配管の中心軸に向かう方向且つ下流から上流に向かう方向である傾斜方向に突出した突出片を有し、流体の流速に応じて前記第一状態と前記第二状態とが切り替えられることを特徴とする流速制御装置。
【請求項2】
前記板状部材は、前記第一状態において、少なくとも一部が前記配管の内壁面に当接していることを特徴とする請求項1に記載に記載の流速制御装置。
【請求項3】
前記回動機構は、前記第二状態における前記板状部材の流体の流れる方向に対する傾斜角度を規定するストッパーを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流速制御装置。
【請求項4】
前記回動機構を複数有し、
前記複数の回動機構は、流体の流れる方向において同一位置であって互いに干渉しない位置の前記配管の内壁面に配設されたことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の流速制御措置。
【請求項5】
前記複数の回動機構は、第一回動機構、第二回動機構、第三回動機構及び第四回動機構の4つであり、
前記第一回動機構と前記第二回動機構とが対向し、前記第三回動機構と前記第四回動機構とが対向するように配設されたことを特徴とする請求項4に記載の流速制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配管内を流れる流体の流速を制御する流速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体である空気を輸送する空気配管では、流速が速くなると空気を流れやすくする流速調節装置が配設されている構成のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、熱交換器等の蒸気使用機器に対しては、流体である蒸気が蒸気配管を通じて供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-240598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した蒸気配管では、送気時、高圧から低圧の方向に蒸気が流れると体積膨張によって配管内の流速が速くなり、ウォーターハンマーが発生する場合がある。そして、このウォーターハンマーによって、配管損傷が生じる虞がある。
【0006】
この発明は、高流速時には減速させるように流体の流速を制御してウォーターハンマーを軽減する流速制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって提供される流体の流速を制御する流速制御装置は、上流から下流に流体が流れる配管内に設けられ、回動機構を備える。回動機構は、回動によって、面方向が流体の流れる方向と略平行な第一状態及び該面方向が流体の流れる方向と交差する第二状態の間で状態切替可能な板状部材と、配管の内壁面に設けられ、板状部材を回動可能に支持する支持手段であって第二状態において板状部材の上流側の端部が下流側の端部よりも配管の中心軸側に位置するように支持する支持手段と、第一状態となる方向に前記板状部材を付勢する付勢手段と、を有する。また、板状部材は、配管の中心軸に向かう方向且つ下流から上流に向かう方向である傾斜方向に突出した突出片を有し、流体の流速に応じて第一状態と第二状態とが切り替えられる。
【0008】
上記板状部材は、第一状態において、少なくとも一部が配管の内壁面に当接していてもよい。
【0009】
上記回動機構は、第二状態における板状部材の流体の流れる方向に対する傾斜角度を規定するストッパーを有していてもよい。
【0010】
上記回動機構を複数有し、上記複数の回動機構は、流体の流れる方向において同一位置であって互いに干渉しない位置の配管の内壁面に配設されるようにしてもよい。
【0011】
上記複数の回動機構は、第一回動機構、第二回動機構、第三回動機構及び第四回動機構の4つであり、第一回動機構と第二回動機構とが対向し、第三回動機構と第四回動機構とが対向するように配設されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、流速制御装置を通過しようとする流体が低流速である場合においては板状部材が第一状態となって流路が拡大された状態となり、流速制御装置を通過しようとする流体が高流速である場合においては板状部材が第二状態となって流路が縮小された(絞られた)状態となる。したがって、高流速の流体は、流速制御装置を通過すると減速する。これにより、ウォーターハンマーを軽減でき、配管設備の長寿命化、配管設備を用いた蒸気使用機器等の装置の安定操業を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施形態に係る流速制御装置の縦断面図である。
図2図1のI-I線における横断面図である。
図3】この発明の実施形態に係る流速制御装置に含まれる第一回動機構の平面図である。
図4】この発明の実施形態に係る流速制御装置の縦断面図である。
図5図4のI′-I′線における横断面図である。
図6】この発明の別の実施形態に係る第一回動機構の縦断面図及び平面図である。
図7】この発明の別の実施形態に係る2つの流速制御装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照してこの発明の実施形態である流速制御装置について説明する。なお、この発明の構成は、実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は、この発明の実施形態に係る流速制御装置1の縦断面図である。図1は、流速制御装置1が配管100内に配設された状態を示している。また、図2は、図1のI-I線における横断面図である。図3は、流速制御装置1に含まれる第一回動機構20の平面図である。なお、図1は、低流速時における流速制御装置1の状態を示している。
【0016】
流速制御装置1は、上流から下流に流体が流れる配管100内に設けられ、流体の流速を制御する。流速制御装置1は、例えば、熱交換器等の蒸気使用機器に対して蒸気(流体)を供給する蒸気配管(配管)100内に配設される。蒸気は、図1において、上流の供給源(不図示)から、配管100内を矢印A方向(略水平方向)に流れ、流速制御装置1を通過して下流の蒸気使用機器(不図示)に供給される。すなわち、配管100内が流体の流路となる。
【0017】
流速制御装置1は、流速制御装置1を通過しようとする流体の流速に応じて、流路を拡大及び縮小することで流体の流速を制御する。具体的には、流速制御装置1を通過しようとする流体が低流速である場合(低流速時)、流路は拡大した状態となる。一方、流速制御装置1を通過しようとする流体が高流速である場合(高流速時)、流路は縮小された(絞られた)状態となる。この場合は流路が縮小しているので、高流速の流体は、流速制御装置1を通過すると減速することになる。なお、配管100は、流体の流れる方向である配管方向が略水平方向であるが、上記方向以外の配管であっても本発明の流速制御装置を適用可能である。
【0018】
流速制御装置1は、4つの回動機構(第一回動機構20、第二回動機構21、第三回動機構22、第四回動機構23)等を備える。複数の回動機構20~23は、流体の流れる方向(矢印A方向)において同一位置であって互いに干渉しない位置に配設される。本実施形態では、図1,2に示すように、矢印A方向において同一位置の配管100の内壁面に、第一回動機構20と第二回動機構21とが対向し、第三回動機構22と第四回動機構23とが対向するように配設されている。より具体的には、第一回動機構20及び第二回動機構21を結ぶ線分と、第三回動機構22及び第四回動機構23を結ぶ線分とが直角に交わる位置に配設されている。なお、各回動機構20~23は、同一の構成であるので、第一回動機構20の構成のみ詳述する。
【0019】
図3に示すように、第一回動機構20は、邪魔板30、支持手段40、コイルスプリング50等を備える。第一回動機構20は、邪魔板30を回動させることで配管100の流路の拡縮を行う。
【0020】
邪魔板30は、ステンレス鋼等の金属製の板状部材であり、支持手段40によって回動可能に支持される。本実施形態では、邪魔板30は、回動によって、第一状態と第二状態との間で状態切替可能である。第一状態は、図1に示すように、邪魔板30の面方向が矢印A方向と平行な状態である。また、邪魔板30の一部は、図2に示すように、第一状態において配管100の内壁面に当接した状態となる。なお、邪魔板30は、第一状態において、面方向が矢印A方向と精密に平行である必要はなく略平行であればよい。
【0021】
第二状態は、図4に示すように、邪魔板30の面方向が矢印A方向と交差する状態である。具体的には、第二状態は、邪魔板30の上流側の端部が下流側の端部よりも配管50の中心軸側に位置する状態である。邪魔板30は、低流速時に第一状態となって配管100の流路を拡大し、高流速時に第二状態となって配管100の流路を縮小する(絞る)。なお、第二状態において、流体の流れる方向に対する邪魔板30の角度(傾斜角度)は、例えば20度である。
【0022】
支持手段40は、芯棒41及び固定板42等を備える。芯棒41は、邪魔板30の一端に形成された軸筒31、固定板42の一端に形成された軸筒43及びコイルスプリング50に挿通されている。固定板42は、溶接等によって配管50の内壁面に固定されている。
【0023】
また、邪魔板30は、軸筒31とは反対の他端に爪32が形成されている。爪32は、図1に示すように邪魔板30が第一状態において、配管100の中心軸に向かう方向且つ下流から上流に向かう方向である傾斜方向(矢印B方向)に突出した突出片である。邪魔板30の面方向に対する爪32の傾斜角度は、例えば50度である。爪32は、矢印A方向に交差する方向に突出しているので、流体の抵抗として作用する。そのため、爪32は、邪魔板30を第二状態とする方向の力を流体から受ける。したがって、爪32によって、邪魔板30(流体制御装置1)の上流側の流体の圧力と、下流側の流体の圧力との間で圧力損失が生じる。圧力損失は、流体の速度が速くなるほど大きくなる。この圧力損失を動力として、邪魔板30が第一状態から第二状態に回動する。ただし、低流速時、圧力損失は小さいので、邪魔板30は、コイルスプリング50の付勢力によって第一状態が維持される。一方、高流速時、圧力損失は大きくなるので、邪魔板30は、上記付勢力に抗して第一状態から第二状態に回動する。
【0024】
なお、爪32は、プレス加工等によって邪魔板30と一体形成されているが、特にこれに限定されるものではない。溶接等で爪を邪魔板に固定してもよい。
【0025】
コイルスプリング50は、ステンレス鋼等の金属製である。図3に示すように、コイルスプリング50の一端は、邪魔板30の上面に当接し、他端は固定板42の上面に当接する。すなわち、コイルスプリング50は、邪魔板30を第一状態となる方向に付勢する付勢手段である。なお、邪魔板を付勢する構成であれば、コイルスプリング50を用いた構成でなくてもよい。例えば、板バネを用いてもよい。
【0026】
次に、流速制御装置1の動作について図1,2及び図4,5を参照しつつ説明する。具体的には、低流速時及び高流速時での流速制御装置1の動作を説明する。本実施形態では、例えば、低流速時を流速0m/sec以上20m/sec未満とし、高流速時を流速20m/sec以上として説明する。なお、図4は、高流速時における流速制御装置1の状態を示している。図5は、図4のI′-I′線における横断面図である。
【0027】
低流速時、爪32によって、邪魔板30(流体制御装置1)の上流側の流体の圧力と下流側の流体の圧力との間の圧力損失が生じる。しかし、圧力損失は小さいので、圧力損失による邪魔板30を回動させる動力よりも、コイルスプリング50による付勢力の方が強い。そのため、邪魔板30は、図1,2に示すような第一状態となる。したがって、低流速時において流体の流路は拡大された状態となり、流体が流速制御装置1を通過しても流速はほとんど変化しない。なお、爪32は、流体の抵抗となるが、流体の流れを妨げるほどの大きな影響はない。
【0028】
また、流速制御装置1を通過しようとする流体が低流速から高流速に変化した場合、圧力損失は低流速時よりも大きくなり、圧力損失による邪魔板30を回動させる動力の方が、コイルスプリング50による付勢力よりも強くなる。そのため、邪魔板30は、付勢力に抗して第一状態から第二状態となるように回動し始める。そうすると、邪魔板30の面方向も、矢印A方向に交差する方向になるので、邪魔板30自体も流体の抵抗として作用することになる。そのため、さらに圧力損失が大きくなる。これにより、邪魔板30は、図4,5に示すような第二状態となる。そして、高流速時、邪魔板30は第二状態が維持される。したがって、高流速時において流体の流路は、低流速時よりも縮小された状態となる。そのため、高流速の流体は、流速制御装置1を通過することで減速して低流速になる。
【0029】
その後、流速制御装置1を通過しようとする流体が高流速から低流速に変化した場合、再び、圧力損失による邪魔板30を回動させる動力よりも、コイルスプリング50による付勢力の方が強くなる。したがって、邪魔板30は、回動して第二状態から第一状態となる。
【0030】
以上のように、流速制御装置を配管内に配設することで、低流速時においては邪魔板が第一状態となって流路が拡大された状態となり、高流速時においては邪魔板が第二状態となって流路が縮小された(絞られた)状態となる。したがって、高流速の流体は、流速制御装置を通過すると減速する。これにより、ウォーターハンマーを軽減でき、配管設備の長寿命化、配管設備を用いた蒸気使用機器等の装置の安定操業を図ることができる。
【0031】
また、圧力損失を動力として利用した構成であるので、アクチュエータ等を使用しない簡素な構成とすることができる。
【0032】
さらに、第一状態にある場合、邪魔板の一部が配管の内壁面に当接した状態となって、コイルスプリングと内壁面とで邪魔板が挟持された状態となるので、流路が拡大されている状態において邪魔板が振動等することが防止される。
【0033】
なお、上述の実施形態の流速制御装置は、4つの回動機構を備えているが、回動機構の数は、配管のサイズや流体の種類等に応じて任意の数を採用可能である。
【0034】
上述の実施形態の邪魔板のサイズ、形状及び傾斜角度、爪のサイズ、形状及び傾斜角度等は、流路の縮小量、付勢手段の付勢力等に応じて任意の構成を採用可能である。
【0035】
また、上述の実施形態の回動機構の構成に、邪魔板の傾斜角度を規定するストッパーを設けてもよい。例えば、図6(A)及び図6(B)に示すような棒状体のストッパー210がある。図6(A)は、第一回動機構200の縦断面図であり、図6(B)は、第一回動機構200の平面図である。第一回動機構200は、ストッパー210を除いて、上述の第一回動機構20と同様の構成である。
【0036】
ストッパー210の一端(固定端)は、溶接等によって固定板41の軸筒43に固定される。第一状態の場合、邪魔板30は、図6(A)における実線で示すように、ストッパー210の自由端に接触しない。一方、第二状態の場合、邪魔板30は、図6(A)の波線で示すように、ストッパー210の自由端に当接する。したがって、ストッパー210によって、邪魔板30がこれ以上回動することが制限される。これにより、邪魔板30の第二状態における傾斜角度を、確実に意図した角度に維持することができる。
【0037】
さらに、上述の実施形態では、1つの流速制御装置が配管内に配設されているが、特にこれに限定されるものではない。配管内に、複数の流速制御装置を配設してもよい。例えば、図7に示すように、2つの流速制御装置500,501を、配管100内に配設してもよい。流速制御装置501は、流速制御装置500の下流側に配設される。各流速制御装置500,501は、上述の流速制御装置1と同様の4つの回動機構を有する構成である。なお、各流速制御装置500,501が有する回動機構を、例えば1つずつとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
この発明は、蒸気使用機器に対して蒸気を供給する蒸気配管等の配管において流体の流速を制御するのに有用である。
【符号の説明】
【0039】
1 流速制御装置
20~23 回動機構
30 邪魔板(板状部材)
32 爪(突出片)
40 支持手段
50 コイルスプリング(付勢手段)
100 配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7