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特許7403805スラブ式軌道補修用のテープロール、その製造方法及び、スラブ式軌道の補修型枠設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】スラブ式軌道補修用のテープロール、その製造方法及び、スラブ式軌道の補修型枠設置方法
(51)【国際特許分類】
   E01B 37/00 20060101AFI20231218BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
E01B37/00 C
E04G23/02 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020066689
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021161816
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】595006762
【氏名又は名称】株式会社アレン
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小尾 浩一
(72)【発明者】
【氏名】林 哲史
(72)【発明者】
【氏名】大木 靖則
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-167421(JP,A)
【文献】特開2015-168969(JP,A)
【文献】特開2020-041397(JP,A)
【文献】実開昭48-109605(JP,U)
【文献】特開2013-124272(JP,A)
【文献】実開平04-060529(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0158785(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 37/00
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブ式軌道の軌道スラブと路盤コンクリートとの間に設けられた填充層の側縁部に形成した空隙に液状の填充材を注入して補修するために、前記空隙を側方から塞ぐように表面を前記空隙に臨ませて前記路盤コンクリートの上面と前記軌道スラブの側面とに貼付されて断面L字形をなす型枠テープを巻いてなるスラブ式軌道補修用のテープロールであって、
前記型枠テープが、
幅方向に互いに区分されて長手方向に沿って延在する第1基材層及び第2基材層と、
前記第1基材層の表面の、前記第2基材層と相反する側の側端縁領域に沿って設けられた第1粘着剤層と、
前記第2基材層の裏面に設けられた第2粘着剤層とを有し、
前記第2基材層が前記第1基材層との境界線に沿って前記第1基材層の表側に折り重ねられた状態で前記第2基材層を内側にしてロール状に巻かれているテープロール。
【請求項2】
前記型枠テープが、所定の幅をもって前記幅方向に互いにオーバーラップするように結合された第1テープ基材と第2テープ基材とを含み、
前記第1基材層が、前記第1テープ基材及び、前記第2テープ基材の前記第1テープ基材とオーバーラップする部分を含む第1基材領域を含み、
前記第2基材層が、前記第2テープ基材の前記第1基材領域を除く第2基材領域を含む請求項1に記載のテープロール。
【請求項3】
前記第2テープ基材の前記第1基材領域が、前記路盤コンクリートの前記上面と前記軌道スラブの下面との間隔に対応する幅を有し、前記第1テープ基材に表面側から結合されている請求項2に記載のテープロール。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のテープロールの製造方法であって、
前記第1テープ基材及び前記第1テープ基材の表面に全体にわたって設けられた前記第1粘着剤層を有する第1テープを用意するステップと、
前記第2テープ基材及び前記第2テープ基材の裏面に全体にわたって設けられた前記第2粘着剤層を有する第2テープを用意するステップと、
前記第2テープと前記第1テープとを前記幅方向に互いにオーバーラップさせて前記第2粘着剤層と前記第1粘着剤層とを互いに粘着させ、前記第2テープの前記第2基材領域が前記第1基材領域の表側になるように前記第2テープを折り曲げ、前記第2基材層が前記第1基材層に折り重なった前記型枠テープを作成するステップと、
前記第2基材領域が前記第1基材領域の内側になるように前記型枠テープをロール状に巻くステップとを含む製造方法。
【請求項5】
スラブ式軌道の軌道スラブと路盤コンクリートとの間に設けられた填充層の側縁部に形成した空隙に液状の填充材を注入して補修するために、表面を前記空隙に臨ませて断面L字形にした型枠テープを用いて前記空隙を側方から塞ぐ前記スラブ式軌道の補修型枠設置方法であって、
幅方向に互いに区分されて長手方向に沿って延在する第1基材層及び第2基材層、前記第1基材層の表面の、前記第2基材層と相反する側の側端縁領域に沿って設けられた第1粘着剤層及び、前記第2基材層の裏面に設けられた第2粘着剤層を有する前記型枠テープを、前記第2基材層が前記第1基材層との境界線に沿って前記第1基材層の表側に折り重ねられた状態で前記第2基材層を内側にしてロール状に巻いてなるテープロールを用意するステップと、
前記テープロールを、前記境界線側の側縁が前記軌道スラブの側面に整合するように前記路盤コンクリート上に配置し、前記軌道スラブの前記側面に沿って回転させて前記型枠テープを引き出すステップと、
引き出した前記型枠テープの前記第1基材層の上に重なる前記第2基材層を展開し、前記第2基材層を、前記軌道スラブの下方にて前記路盤コンクリートの上面に前記第2粘着剤層を介して貼付するステップと、
前記第2基材層を前記路盤コンクリートの前記上面に貼付した後に、前記境界線を中心にして前記第1基材層を引き起こして前記型枠テープを断面L字形にし、前記第1基材層を前記軌道スラブの前記側面に前記第2粘着剤層を介して貼付するステップとを含む補修型枠設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ式軌道の填充層の補修の際に填充材を装填される空隙を塞ぐために用いられる型枠テープを巻いてなるスラブ式軌道補修用のテープロール、このテープロールの製造方法、型枠テープを用いたスラブ式軌道の補修型枠設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道用の軌道として、路盤コンクリートとその上方に配置されるコンクリート製の軌道スラブとの間にCAモルタル(セメントアスファルトモルタル)による填充層が設けられ、軌道スラブ上にレールが締結されたスラブ式軌道が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
CAモルタルによる填充層が外部に露呈する外周部分は、経年劣化するうえ、填充層にしみ込んだ水分が凍結・融解を繰り返すことによる凍害によって劣化が早いため、当該外周部分は比較的短期間のうちに補修が必要となる。填充層の外周部分の補修は、建て付けた型枠内に補修材を流し込む型枠注入工法により行われている。補修に用いる填充材には主に樹脂材が用いられており、型枠には一般的に木製型枠が用いられている。
【0004】
ところが、木製型枠を用いる場合、運搬性や施工効率が悪く、取り扱いが煩雑であるうえ、安全性に欠けるといった問題があった。このような問題を解決し得る工法として、本出願人は、路盤コンクリートと軌道スラブとの間にできる空隙の外周部分に設置され、内部に気密室を画定する可撓材製の袋体と、袋体を横方向に貫通する填充材装填通路を画定し、気密室の流体圧によって縮径方向に弾性変形して填充材装填通路を閉塞する可撓材製の填充材注入用筒体とを有する補修型枠を提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-167421号公報
【文献】特開2015-168969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2記載の補修型枠は、路盤コンクリートと軌道スラブとの間に配置される可撓材製の袋体を固定するために、袋体を膨らませてその下面を路盤コンクリートの上面に押し付け、袋体の上面を軌道スラブの下面に押し付ける必要がある。そのため、型枠の設置作業及び撤去作業が煩雑である。また、路盤コンクリートと軌道スラブとの間にできる空隙の外周部分に型枠配置用のスペースが必要になり、この部分に補修材を填充することができない。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑み、填充層を補修する際に、補修型枠の適切な位置への設置を一層迅速且つ容易に行え、見栄えよく填充層を補修できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明のある実施形態は、スラブ式軌道の軌道スラブ(5)と路盤コンクリート(1)との間に設けられた填充層(3)の側縁部に形成した空隙(S)に液状の填充材を注入して補修するために、前記空隙を側方から塞ぐように表面を前記空隙に臨ませて前記路盤コンクリートの上面(1A)と前記軌道スラブの側面(5A)とに貼付されて断面L字形をなす型枠テープ(30)を巻いてなる前記スラブ式軌道補修用のテープロール(40)であって、前記型枠テープ(30)が、幅方向に互いに区分されて長手方向に沿って延在する第1基材層(45)及び第2基材層(46)と、前記第1基材層(45)の表面の、前記第2基材層(46)と相反する側の側端縁領域に沿って設けられた第1粘着剤層(38A)と、前記第2基材層(46)の裏面に設けられた第2粘着剤層(38B)とを有し、前記第2基材層(46)が前記第1基材層(45)との境界線(41)に沿って前記第1基材層(45)の表側に折り重ねられた状態で前記第2基材層(46)を内側にしてロール状に巻かれている。
【0009】
この構成によれば、テープロールを、境界線側の側縁が軌道スラブの側面に整合するように配置し、軌道スラブの側面に沿って回転させて型枠テープを引き出すことで、軌道スラブに対する所定の位置に容易に型枠テープを配置できる。続いて、引き出した型枠テープの第1基材層の上に重なる第2基材層を展開することで、型枠テープの第2基材層を、軌道スラブの下方にて路盤コンクリートの上面に第2粘着剤層を介して貼付することができる。更に、これに続いて、第1基材層を、境界線を中心にして引き起こして軌道スラブの側面に第2粘着剤層を介して貼付することで、型枠テープを断面L字形にして容易に所定の位置に設置することができる。また、補修型枠が型枠テープによって構成されるため、空隙の外周部分に補修材を填充できないスペースが発生しない。
【0010】
好ましくは、前記型枠テープ(30)が、所定の幅(W1)をもって前記幅方向に互いにオーバーラップするように結合された第1テープ基材(35A)と第2テープ基材(35B)とを含み、前記第1基材層(45)が、前記第1テープ基材(35A)及び、前記第2テープ基材(35B)の前記第1テープ基材(35A)とオーバーラップする部分を含む第1基材領域(35B1)を含み、前記第2基材層(46)が、前記第2テープ基材(35B)の前記第1基材領域(35B1)を除く第2基材領域(35B2)を含むとよい。
【0011】
この構成によれば、第1基材層が第1テープ基材及び第2テープ基材の第1基材領域を有するため、型枠テープの空隙に臨む部分の剛性が高くなり、空隙に注入される填充材の圧力を受けても変形し難い。
【0012】
好ましくは、前記第2テープ基材(35B)の前記第1基材領域(35B1)が、前記路盤コンクリートの前記上面(1A)と前記軌道スラブ(5)の下面(5B)との間隔(H)に対応する幅(W1)を有し、前記第1テープ基材(35A)に表面側から結合されているとよい。
【0013】
この構成によれば、型枠テープの空隙に臨む部分に第2テープ基材の第1基材領域が設けられるため、空隙に注入される填充材が型枠テープに付着し難く、型枠テープの撤去が容易である。
【0014】
また上記課題を解決するために、本発明のある実施形態は、上記構成のテープロールの製造方法であって、前記第1テープ基材(35A)及び前記第1テープ基材(35A)の表面に全体にわたって設けられた前記第1粘着剤層(38A)を有する第1テープ(32A)を用意するステップ(図10(A))と、前記第2テープ基材(35B)及び前記第2テープ基材(35B)の裏面に全体にわたって設けられた前記第2粘着剤層(38B)を有する第2テープ(32B)を用意するステップ(図10(A))と、前記第2テープ(32B)と前記第1テープ(32A)とを前記幅方向に互いにオーバーラップさせて前記第2粘着剤層(38B)と前記第1粘着剤層(38A)とを互いに粘着させ、前記第2テープ(32B)の前記第2基材領域(35B2)が前記第1基材領域(35B1)の表側になるように前記第2テープ(32B)を折り曲げ、前記第2基材層(46)が前記第1基材層(45)に折り重なった前記型枠テープ(30)を作成するステップ(図10(B)、(C))と、前記第2基材領域(35B2)が前記第1基材領域(35B1)の内側になるように前記型枠テープ(30)をロール状に巻くステップ(図10(D))とを含む。
【0015】
この構成によれば、片面の全体にわたって粘着剤が設けられた汎用テープを用いて型枠テープを製造できるため、テープロールの製造コストの増大を抑制することができる。
【0016】
また上記課題を解決するために、本発明のある実施形態は、スラブ式軌道の軌道スラブ(5)と路盤コンクリート(1)との間に設けられた填充層(3)の側縁部に形成した空隙(S)に液状の填充材を注入して補修するために、表面を前記空隙に臨ませて断面L字形にした型枠テープ(30)を用いて前記空隙を側方から塞ぐ前記スラブ式軌道の補修型枠設置方法であって、幅方向に互いに区分されて長手方向に沿って延在する第1基材層(45)及び第2基材層(46)、前記第1基材層(45)の表面の、前記第2基材層(46)と相反する側の側端縁領域に沿って設けられた第1粘着剤層(38A)及び、前記第2基材層(46)の裏面に設けられた第2粘着剤層(38B)を有する前記型枠テープ(30)を、前記第2基材層(46)が前記第1基材層(45)との境界線(41)に沿って前記第1基材層(45)の表側に折り重ねられた状態で前記第2基材層(46)を内側にしてロール状に巻いてなるテープロール(40)を用意するステップ(図10)と、前記テープロール(40)を、前記境界線(41)側の側縁が前記軌道スラブの側面(5A)に整合するように前記路盤コンクリート(1)上に配置し、前記軌道スラブの前記側面(5A)に沿って回転させて前記型枠テープ(30)を引き出すステップ(図11(A)、(B))と、引き出した前記型枠テープ(30)の前記第1基材層(45)の上に重なる前記第2基材層(46)を展開し、前記第2基材層(46)を、前記軌道スラブ(5)の下方にて前記路盤コンクリートの上面(1A)に前記第2粘着剤層(38B)を介して貼付するステップ(図11(C))と、前記第2基材層(46)を前記路盤コンクリートの前記上面(1A)に貼付した後に、前記境界線(41)を中心にして前記第1基材層(45)を引き起こして前記型枠テープ(30)を断面L字形にし、前記第1基材層(45)を前記軌道スラブの前記側面(5A)に前記第2粘着剤層(38B)を介して貼付するステップ(図11(D))とを含む。
【0017】
この構成によれば、テープロールを、境界線側の側縁が軌道スラブの側面に整合するように配置し、軌道スラブの側面に沿って回転させて型枠テープを引き出すことで、軌道スラブに対する所定の位置に容易に型枠テープを配置できる。また、引き出した型枠テープの第1基材層の上に重なる第2基材層を展開することで、型枠テープの第2基材層を、軌道スラブの下方にて路盤コンクリートの上面に第2粘着剤層を介して貼付することができる。更に、第1基材層を、境界線を中心にして引き起こして軌道スラブの側面に第2粘着剤層を介して貼付することで、型枠テープを断面L字形にして容易に所定の位置に設置することができる。したがって、型枠テープを適切な位置へ迅速且つ容易に設置することができる。また、補修型枠が型枠テープによって構成されるため、空隙の外周部分に補修材を填充できないスペースが発生しない。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明によれば、填充層を補修する際に、補修型枠の適切な位置への設置を一層迅速且つ容易に行え、見栄えよく填充層を補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による型枠テープが用いられ、本発明による補修型枠設置方法が適用されるスラブ式軌道の概要を示す斜視図
図2】本発明による補修型枠の設置状態を示す斜視図
図3図2に示す補修型枠の組立状態を示す斜視図
図4図2中のIV-IV断面図
図5図2中のV-V断面図
図6】実施形態による補修型枠の組立手順の説明図
図7】実施形態による補修型枠の組立手順の説明図
図8】第1実施形態による型枠テープの詳細構成を示す模式的断面図
図9】第1実施形態によるスラブ式軌道補修用のテープロールの縦断面図
図10】第1実施形態による型枠テープの製造手順の説明図
図11】第1実施形態による型枠テープの設置手順の説明図
図12】第2実施形態による型枠テープの詳細構成を示す模式的断面図
図13】第2実施形態によるテープロールの下半の縦断面図
図14】第3実施形態による型枠テープの詳細構成を示す模式的断面図
図15】第3実施形態によるテープロールの下半の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0021】
まず、本発明による型枠テープ30が用いられる補修型枠20、本発明による補修型枠設置方法が適用されるスラブ式軌道の概要を、図1を参照して説明する。
【0022】
スラブ式軌道は、路盤コンクリート1上に形成されたCAモルタル(セメントアスファルトモルタル)による填充層3と、填充層3上に設置されたコンクリート製の軌道スラブ5とを有し、軌道スラブ5上に締結具7によってレール9が締結されている。軌道スラブ5は矩形板状(長方体形状)をしたプレキャスト製品である。填充層3の厚さは、50mm程度(30mm~100mm程度)である。スラブ式軌道では、複数個の軌道スラブ5がレール敷設方向に並べて配置される。
【0023】
軌道スラブ5の長手方向の両端部には位置決め用の凹部11が形成されている。路盤コンクリート1上には、凹部11と係合する円柱状あるいは半円柱状の位置決め用の突起部13が突出形成されている。
【0024】
突起部13は円柱状あるいは半円柱状をしている。凹部11は、平面視で略半円状をなし、突起部13の外径よりも50mm程度大きい内径を有する。凹部11と突起部13とは間隙をおいて同心円状に係合する。この間隙は、凹部11の内周面と突起部13の外周面との間に内径-外径差によって形成された平面視で円環状あるいは略半円環状の空間であり、路盤コンクリート1側(底部)に排水通路部15を残して円弧状填充層17によって埋められている。これにより、凹部11と突起部13とは円弧状填充層17と協働して路盤コンクリート1上における軌道スラブ5の横方向の移動を拘束(規制)する位置決め部として作用する。
【0025】
次に、本発明による補修型枠20の構成を、図2図5を参照して説明する。
【0026】
図2に示されるように、補修型枠20は、填充層3の外周部を補修する際に、填充層3の外周縁に側方に開放するように形成された空隙S(図4参照)に液状の填充材を注入するために用いられる。補修型枠20は、填充層3の側方に配置された下段の型枠テープ30と、これよりも高い位置に配置された上段の型枠テープ31と、填充材注入用の箱状型枠50と、填充材注入用の袋状型枠70を有する。
【0027】
填充材には、2液混合型の合成樹脂に、骨材及び硬化剤を混合したものが用いられる。合成樹脂は、ビニルエステル樹脂や、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等であってよい。填充材は、レール9上に移動可能に設けられた台車に搭載された専用の填充材供給装置によって供給される。具体的には、填充材供給装置は、第1液と第2液とを別々に骨材や硬化剤と混合し、別々のポンプによって圧送した後に、注入ノズルの手前に設けられたミキサーによって混合したうえで注入ノズルから供給する。他の実施形態では填充材にCAモルタルやその他の材料が用いられてもよい。
【0028】
下段の型枠テープ30は2本のテープ32(図8参照)を組み合わせて構成されている。型枠テープ30の詳細構成については後述する。上段の型枠テープ30は1本のテープ32により構成されている。これらの型枠テープ30、31に用いられるテープ32は、図4に示されるように、シート状の樹脂フィルム34、シート状の不織布36(不織布層)及び、樹脂フィルム34の不織布36側の面に塗布されたアクリル系等の粘着剤によって形成される粘着剤層38を有する3層構造をなしている。樹脂フィルム34及び不織布36は、テープ32における粘着剤を塗布するためのテープ基材35をなす。型枠テープ30、31は、使用前の状態ではロール状とされている。下段の型枠テープ30を巻いてなるテープロール40(図9参照)については後に詳述する。
【0029】
樹脂フィルム34は、ポリエステル系樹脂によって形成されたフィルム(ポリエステル系フィルム)からなる。樹脂フィルム34は、可撓性を有しており、これによって優れた形状追従性をテープ32に付与する一方、高い弾性率を有しており、これによって伸び難く、弛み難い特性をテープ32に付与している。
【0030】
不織布36は、高いせん断強度を有する繊維を薄いシート状に圧縮して形成したものであり、粘着剤によって樹脂フィルム34に一体に接合されることによって高いせん断強度をテープ32に付与している。また、不織布36は、樹脂フィルム34に比べて高い耐熱性を有しており、填充材が硬化時に発熱して高温になってもテープ32の伸びを抑制する。
【0031】
粘着剤層38は、アクリル系等の粘着剤によって形成され、コンクリート面に対し、所定の180度引き剥がし粘着力を有している。具体的には、粘着剤層38は、填充材の装填圧力(側圧)が作用したときに剥がれず、人の力で剥がれる程度の粘着力をテープ32に付与している。粘着剤層38は、テープ基材35(34、36)の全面にわたってシート状に塗布されており、それ自体で填充材の透過を防止する機能を有する。
【0032】
テープ32は無色又は薄い白色の透明あるいは半透明であり、テープ32が所定位置に設置された状態で、テープ32の外部から裏側が見えるようになっている。ここで、裏側が見えるとは、裏面から離れた部分まで見えることを意味するものではなく、テープ32の裏側に装填される填充材の液位が見えることを意味する。
【0033】
このようなテープ32として、例えば、日東電工株式会社製の接着テープ(製品名:HF-105P)を使用することができる。
【0034】
下段の型枠テープ30は、路盤コンクリート1の上面1Aと軌道スラブ5の側面5Aとに架け渡されるように貼付されてL字形をなし、空隙Sを側方から塞ぐことで、填充層3の外周部に填充材装填空間19を画定する。下段の型枠テープ30は、填充材装填空間19を画定する部分に対して下端部を軌道スラブ5の内側に屈曲させて路盤コンクリート1の上面1Aに貼付されている。下段の型枠テープ30は、軌道スラブ5の側面5Aに貼付された上部から弛みなく鉛直に垂下し、且つできるだけ小さな曲率半径をもって下端部が屈曲するように、上部及び下部の位置を調整して貼付されている。
【0035】
図2に示されるように、上段の型枠テープ31は、前後方向に互いに隣接する2つの軌道スラブ5の間隙を側方から塞ぐように、これらの軌道スラブ5を跨いで連続的に設置されている。すなわち、上段の型枠テープ31は、互いに隣接する2つの軌道スラブ5の側面5Aに架け渡されるように貼付されている。上段の型枠テープ31は、下段の型枠テープ30よりも短く、且つ幅狭である。
【0036】
図3に示されるように、下段の型枠テープ30には、前後方向において軌道スラブ5に対応する適宜な位置に、填充材を装填するための装填開口39をなす開口部が形成されている。図示例では、1つの軌道スラブ5に対して3つの装填開口39が形成されている。装填開口39は、填充層3に対応する位置、すなわち、填充材装填空間19における軌道スラブ5の側面5A側に形成されている。
【0037】
図2図3及び図5に示されるように、箱状型枠50は、発泡スチロールや発泡ウレタン等の発泡樹脂からなり、平面視で矩形をなす底壁52と底壁52の3辺から立ち上がる側壁54とを有している。箱状型枠50は、軌道スラブ5の側方に、平面視で装填開口39を取り囲むように配置される。箱状型枠50の軌道スラブ5側の面には、弾性を有するシール部材56が設けられている。箱状型枠50は、レール9に係止される止め金具58によって軌道スラブ5に圧接した状態で固定される。箱状型枠50は、軌道スラブ5の下面5Bよりも高い位置に上向きの填充材注入口60を形成すると共に、填充材注入口60と装填開口39との間に第1填充材注入通路62Aを画定する注入用型枠である。
【0038】
図2に示されるように、袋状型枠70は、ポリウレタンフィルム等の可撓材製の樹脂製シートによって構成された可撓性及び弾性を有する気密袋体である。袋状型枠70は、直径50mm程度の円形の断面形状を有して内部に気密室を画定しており、気密室に注入される空気等の気体によって膨らむバルーン構造の直線状の型枠である。袋状型枠70は、互いに隣接する2つの軌道スラブ5の間に挿入され、これらの軌道スラブ5の間に隙間なく配置される。袋状型枠70は、空気圧によって前後の軌道スラブ5に弾接することで摩擦によって固定される。袋状型枠70は、型枠テープ30、31から離間した位置に配置されることにより、型枠テープ30、31と協働して第2填充材注入通路62Bを画定する注入用型枠である。
【0039】
次に、本発明による補修型枠設置方法が適用される填充層補修工法の手順を、主に図6図8を参照して説明する。当該填充層補修工法では、以下に説明する作業工程がこの順に実行される。
【0040】
填充層補修工法では、まず、填充層3を外周囲から水平方向に所定の深さまで除去する除去工程を行う。除去工程は填充層3の側縁部に沿ってその全長にわたって行われ、この除去工程により、填充層3の外周部の路盤コンクリート1と軌道スラブ5との間に側方に開放する空隙S(図4及び図5参照)が形成される。
【0041】
次に、図6(A)に示されるように、路盤コンクリート1の上面1Aと軌道スラブ5の側面5Aとのうち、型枠テープ30が貼付される領域にプライマー72を塗布するプライマー塗布工程を行う。プライマー塗布工程は任意であり、行われなくてもよい。プライマー72には、型枠テープ30の粘着剤に適した材料のものを用いればよい。プライマー72には、例えば、コニシ株式会社製の商品名:ボンドG7700Nや、商品名:ボンドG17スプレーを用いることができる。
【0042】
図6(B)に示されるように、下段の型枠テープ30を、L字形をなして路盤コンクリート1の上面1Aと軌道スラブ5の側面5Aとに架け渡すように貼付する第1型枠テープ設置工程を行う。第1型枠テープ設置工程により、空隙Sの開放側の側部が閉塞されて填充層3の外周部に填充材装填空間19が画定される。また、これと並行して、上段の型枠テープ31を、互いに隣接する2つの軌道スラブ5の側面5Aに架け渡すように貼付する第2型枠テープ設置工程を行う。第2型枠テープ設置工程により、2つの軌道スラブ5の間隙の側部が閉塞される。
【0043】
図6(C)及び図3に示されるように、下段の型枠テープ30をカッター等によって切断して開口部を形成する第1型枠テープ切断工程を行う。型枠テープ切断工程により、填充材装填空間19における軌道スラブ5の側面5A側に填充材を装填するための装填開口39が形成される。装填開口39が型枠テープ30に形成された開口部からなるため、型枠テープ30を軌道スラブ5の全長にわたって設置した後に、所望の位置に開口部をつくって装填開口39を形成することができる。
【0044】
図2に示されるように、箱状型枠50を、軌道スラブ5の側方に、平面視で装填開口39を取り囲むように配置すると共に、袋状型枠70を、2つの軌道スラブ5の間に隙間なく配置する注入用型枠設置工程を行う。注入用型枠設置工程により、図2及び図5に示されるように、軌道スラブ5の下面5Bよりも高い位置にて上向きに開口する填充材注入口60を有し、填充材装填空間19に連通する填充材注入通路62が画定される。
【0045】
図5及び図7((D)~(F))に示されるように、填充材供給装置によって供給される填充材を填充材注入口60から填充材注入通路62に注入し、填充材を填充材装填空間19に装填する填充材装填工程を行う。填充材の注入は重力によって行われ、前後方向の一方から他方に向けて順に行われる。型枠テープ30が透明又は半透明であるため、填充材装填空間19における填充材の装填状態を視覚で確認することができ、装填状態を確認しながら填充材の注入及び注入する填充材注入口60の移動を行うことができる。そのため、填充材装填空間19に填充材を確実に装填することができる。これにより、従来の型枠を用いた場合のように脱型後に発見された空隙箇所に填充材を再注入する再補修作業が不要である。
【0046】
填充材の注入によって型枠テープ30には側圧が作用する。そのため、型枠テープ30が下端部を外側に向けて屈曲させて路盤コンクリート1の上面1Aに貼付されている場合には、型枠テープ30の路盤コンクリート1に対する粘着内端が外方へ後退し、型枠テープ30が弛んで填充材が膨らむ虞がある。これに対し本実施形態では、型枠テープ30が下端部を内側に向けて屈曲させているため、型枠テープ30が弛むことがない。また、型枠テープ30の下端部の上面に填充材の圧力が作用するため、型枠テープ30の下端部が路盤コンクリート1から剥がれることもない。
【0047】
填充材装填工程においては、図7(D)に示されるように、填充材装填空間19の上部にエア溜まりが生じることがある。この場合、図7(E)に示されるように、型枠テープ30における填充材装填空間19の上部に対応する位置にエア抜き孔74を穿設するエア抜き孔穿設工程を行う。エア抜き孔穿設工程により、型枠テープ30の裏側に溜まっているエアがエア抜き孔74から外部に排出され、填充材装填空間19の上部にも填充材が装填されるようになる。エア抜き孔74は、エアが所望の速度で抜けられるサイズの範囲においてできるだけ小さくするとよい。填充材装填空間19の上部に填充材が装填されると、填充材がエア抜き孔74から外部に漏れてくる。
【0048】
そのため、エア抜きが完了した後には、図7(F)に示されるように、型枠テープ30にテープ76を貼付してエア抜き孔74を閉塞するエア抜き孔閉塞工程を行う。テープ76にはテープ32を小さく切断したもの(テープ76)を用いることができる。テープ76を貼付する前に、エア抜き孔74から漏れた填充材を拭き取るとよい。エア抜き孔閉塞工程により、填充材の漏れが止まる。なお、エア抜き孔閉塞工程は任意である。すなわち、填充材には上記のように骨材が混合されており、型枠テープ30が不織布36を有している。そのため、填充材の漏れがしばらく続くと、骨材が不織布36に絡んでエア抜き孔74が目詰まりを起こす。これにより、填充材の漏れはいずれ止まる。
【0049】
このように、エア抜き孔穿設工程とエア抜き孔閉塞工程とを行うことにより、簡単且つ所望の位置にエア抜き孔74を穿設し、エア抜きが終わった後にテープ76の貼付によって簡単にエア抜き孔74を閉塞することができる。したがって、填充材装填空間19に確実に填充材を装填することができる。
【0050】
1つの填充材注入口60から填充材装填空間19への填充材の注入が完了した後には、図5に示されるように、填充材装填空間19と填充材注入通路62との連通部に堰板(図示省略)を挿入する堰板挿入工程を行う。堰板挿入工程により、填充材の硬化後に箱状型枠50を撤去する際に、箱状型枠50内の填充材注入通路62に溜まった状態で固まった填充材を容易に撤去することができる。また、袋状型枠70と型枠テープ30、31との間に形成される第2填充材注入通路62Bと填充材装填空間19との連通部にも同様に堰板を挿入する。
【0051】
填充材の硬化後、箱状型枠50及び袋状型枠70を撤去する注入用型枠撤去工程を行う。これと同時に、あるいは注入用型枠撤去工程の後、填充材注入通路62にて硬化した不要な填充材を撤去する不要填充材撤去工程を行う。注入用型枠撤去工程及び不要填充材撤去工程にて、不要な注入用の袋状型枠70及び不要な填充材を撤去することで、見栄えよく填充層3を補修することができる。また、補修型枠20が型枠テープ30、31によって構成されるため、空隙Sの外周部分に補修材を填充できないスペースが発生しない。そのため、型枠配置用のスペースに後から補修材を填充する必要がないうえ、見栄えもよい。
【0052】
その後、型枠テープ30、31を撤去する型枠テープ撤去工程を行う。なお、型枠テープ撤去工程は任意である。すなわち、型枠テープ30、31は路盤コンクリート1の上面1Aや軌道スラブ5の側面5A、填充材の硬化によって補修された填充層3の側縁から突出するものではないため、撤去せずにそのまま残してもよい。また、型枠テープ30を撤去する場合には、填充材に埋設された下端部は存置し、鉛直に延在する部分のみを撤去する。以上の工程により、填充層補修工法が完了する。
【0053】
このように、スラブ式軌道の填充層補修工法では、填充層3を外周囲から除去する除去工程、補修型枠20を設置する型枠設置工程(図6図3及び図2)、並びに、填充材を填充材装填空間19に装填する填充材注入工程(図7)を行う。これらの工程により、除去工程の後に補修型枠20が迅速且つ容易に設置される。したがって、除去工程の後、早期に填充材注入工程を行うことができる。あるいは、大量の型枠テープ30、31を現場に持ち込めるため、除去工程の後、比較的長い延長にわたって補修型枠20を設置して、填充材注入工程を比較的長い延長にわたって連続的にまとめて行うことができる。また、型枠テープ30はテープロール40としてロールの状態で搬入できることから、型枠材料の保管や運搬が簡単になる。
【0054】
次に、型枠テープ30及びテープロール40の詳細構成を、図8及び図9を参照して説明する。なお、これらの図やそれ以降の図では、テープ32や層を、厚みを増やして模式的に示している。
【0055】
図8に示されるように、型枠テープ30は、上側に配置される第1テープ32Aと下側に配置される第2テープ32Bとによって構成されている。以下では、型枠テープ30のうち、填充材の型枠面をなす側を表面といい、その反対側の面を裏面という。第1テープ32A及び第2テープ32Bについても同様とする。
【0056】
第1テープ32A及び第2テープ32Bはそれぞれ上記の構成を有している。すなわち、第1テープ32Aは、第1テープ基材35Aと、第1テープ基材35Aの表面に全体にわたって設けられた第1粘着剤層38Aとを有する。第2テープ32Bは、第2テープ基材35Bと、第2テープ基材35Bの裏面に全体にわたって設けられた第2粘着剤層38Bとを有する。第1テープ32A及び第2テープ32Bは、粘着剤層38(38A、38B)同士を粘着させることにより、所定の幅W1をもって幅方向に互いにオーバーラップするように結合されている。所定の幅W1は、路盤コンクリート1の上面1Aから軌道スラブ5の下面5Bまでの高さH1に、軌道スラブ5の下面5Bに形成された面取り部の高さH2を加算した高さHに適合する寸法である。すなわち、所定の幅W1は、路盤コンクリート1の上面1Aから軌道スラブ5の下面5Bまでの高さH1に対応する。
【0057】
第1テープ32Aは軌道スラブ5の側面5Aに貼付された上部から鉛直に垂下している。第1テープ32Aの下端は路盤コンクリート1の上面1Aに概ね一致している。第2テープ32Bは、第1テープ32Aにオーバーラップし、空隙Sを側方から塞ぐ上側部分と、上側部分の下端から水平に延出し、路盤コンクリート1の上面1Aに貼付された下側部分とを有している。第2テープ32Bの上端は空隙Sの上端に概ね一致している。
【0058】
第2テープ32Bの上側部分と下側部分とは屈曲線(境界線41)を介して連続しており、下側部分は填充材に埋設される。填充材の注入後に型枠テープ30を撤去する場合には、この屈曲線よりも上側の部分が撤去される。第2テープ32Bの屈曲線には、上側部分と下側部分との切断が容易なようにミシン目42(分断して設けられた短い切れ目の列)が形成されているとよい。
【0059】
このように、型枠テープ30は第2テープ32Bの屈曲線を境界線41として区分される。境界線41に対して上側の型枠テープ30の第1部分は、第1テープ32A及び、第2テープ32Bの第1テープ32Aとオーバーラップする部分を含む第1領域からなる。屈曲線に対して下側の型枠テープ30の第2部分は、第2テープ32Bの第1領域を除く第2領域からなる。型枠テープ30の第1部分では、表面の上端縁領域のみに粘着剤(第1粘着剤層38A)が露出し、この粘着剤が軌道スラブ5の側面5Aに粘着しており、表面の空隙Sに臨む部分には粘着剤が露出していない。型枠テープ30の第2部分では、下面(裏面)に粘着剤(第2粘着剤層38B)が露出し、この粘着剤が路盤コンクリート1の上面1Aに粘着しており、上面(表面)の空隙Sに臨む部分には粘着剤が露出していない。
【0060】
型枠テープ30の第1部分における粘着剤が露出しない部分は基材層と同等の機能を果たすだけであり、基材層とみなすことができる。したがって、型枠テープ30は、幅方向に互いに区分されて長手方向に延在する上側の第1基材層45及び下側の第2基材層46と、第1基材層45の表面の上端縁領域に沿って設けられた第1粘着剤層38Aと、第2基材層46の裏面に設けられた第2粘着剤層38Bとを有するといえる。
【0061】
第1基材層45は、第1テープ基材35A、第1粘着剤層38A(正確には、そのうちの第2粘着剤層38Bと粘着する部分)、第2テープ基材35Bの第1テープ基材35Aとオーバーラップする部分を含む第1基材領域35B1及びその裏面に設けられた第2粘着剤層38Bの第1基材部分38B1によって構成される。第2基材層46は、第2テープ基材35Bの第1基材領域35B1を除く第2基材領域35B2によって構成される。第2粘着剤層38Bの、第2基材層46の裏面に設けられた部分は第2基材部分38B2とする。
【0062】
このように第1基材層45が第1テープ基材35A及び第2テープ基材35Bの第1基材領域35B1を有するため、型枠テープ30の空隙Sに臨む部分の剛性が高くなり、空隙Sに注入される填充材の圧力を受けても変形し難くなる。
【0063】
図9は、貼付状態でL字形断面をなすこの型枠テープ30を巻いてなるスラブ式軌道補修用のテープロール40の縦断面図である。テープロール40は、円筒形状の芯材44と、芯材44の外周にロール状に巻かれた型枠テープ30とを有している。芯材44は図示しないハンドスティックの先端に設けられたシャフトによって回転可能に取り付けられる。型枠テープ30は、第2基材層46が境界線41に沿って第1基材層45の表側に折り重ねられた状態で第2基材層46を内側にしてロール状に巻かれている。したがって、型枠テープ30の最も外周側に、第1基材層45(詳細には、第1テープ32Aの第1テープ基材35A)が配置され、最も内周側に、第2粘着剤層38B(詳細には、第2テープ32Bの第2テープ基材35Bのうちの第2基材領域35B2)が配置される。
【0064】
より詳細には、型枠テープ30の最も外周側に第1テープ基材35Aが配置され、その内側には、軌道スラブ5の側面5Aへ貼付されるべき第1粘着剤層38Aが配置される。第1粘着剤層38Aの内側には第2粘着剤層38Bの第1基材部分38B1が配置され、その内側には第2テープ基材35Bの第1基材領域35B1が配置される。更にその内側には第1基材領域35B1に境界線41を介して連続する第2テープ基材35Bの第2基材領域35B2が折り重ねられ、その内側には、路盤コンクリート1の上面1Aに貼付されるべき第2粘着剤層38Bの第2基材部分38B2が配置される。
【0065】
次に、このように構成されたテープロール40の製造方法を、図10を参照して説明する。
【0066】
まず、図10(A)に示されるように、第1テープ基材35Aの表面に全体にわたって第1粘着剤層38Aが設けられた第1テープ32Aと、第2テープ基材35Bの裏面に全体にわたって第2粘着剤層38Bが設けられた第2テープ32Bとを用意する。
【0067】
次に、図10(B)に示されるように、第2テープ32Bと第1テープ32Aとを幅方向に互いにオーバーラップさせて第2粘着剤層38Bと第1粘着剤層38Aとを互いに粘着させ、第2テープ32Bと第1テープ32Aとを互いに結合させる。そして、図10(C)に示されるように、第2テープ32Bの第2基材領域35B2が第1基材領域35B1の表側に重なるように第2テープ32Bを折り曲げる。これにより、第2テープ基材35Bの第2基材領域35B2(すなわち第2基材層46)が第1基材領域35B1(すなわち第1基材層45)に折り重なった型枠テープ30が作成される。なお、図10(C)に示される第2テープ32Bを折り返す手順を先に行い、図10(B)に示される第2テープ32Bと第1テープ32Aとを互いに結合させる手順を後に行ってもよい。
【0068】
最後に、図10(D)に示されるように、第2テープ基材35Bの第2基材領域35B2(すなわち第2基材層46)が第1基材領域35B1(すなわち第1基材層45)の内側になるように型枠テープ30をロール状に巻く。これにより、図9に示されるテープロール40が製造される。
【0069】
このようにしてテープロール40を製造することにより、片面の全体にわたって粘着剤が設けられた汎用テープを用いて型枠テープ30を製造できるため、テープロール40の製造コストの増大を抑制することができる。
【0070】
次に、第1型枠テープ設置工程におけるテープロール40を用いた型枠テープ30の設置方法を、図11を参照して説明する。
【0071】
まず、図11(A)に示されるように、テープロール40を、境界線41側の側縁が軌道スラブ5の側面5Aに整合するように路盤コンクリート1上に配置する。テープロール40の幅方向の位置合わせは、軌道スラブ5の側面5Aに当接させることで行われる。なお、テープロール40の最も外周側には第1テープ32Aの第1テープ基材35Aが配置されているため、型枠テープ30は路盤コンクリート1の上面1Aに付着しない。
【0072】
次に、図11(B)に示されるように、型枠テープ30の長手方向先端を路盤コンクリート1の上面1Aに押し付けて固定した状態でテープロール40を軌道スラブ5の側面5Aに沿って回転させて型枠テープ30を引き出す。これにより、軌道スラブ5に対する所定、具体的には、軌道スラブ5の側面5Aの直下に型枠テープ30の境界線41が来る位置に容易に型枠テープ30を配置することができる。この状態では、引き出した型枠テープ30の第1基材層45の上に第2基材層46が折り重なっている。
【0073】
続けて、図11(C)に示されるように、型枠テープ30の第1基材層45の上に重なる第2基材層46を矢印で示すように展開し、第2基材層46を、軌道スラブ5の下方にて路盤コンクリート1の上面1Aに第2粘着剤層38Bを介して貼付する。この作業は作業者が手で行ってもよく、スティックの先端にコテを設けた道具を用いて行ってもよい。コテの底面にはスポンジなどの弾力性がある部材が設けられるとよい。
【0074】
最後に、図11(D)に示されるように、第2基材層46を路盤コンクリート1の上面1Aに貼付した後に、境界線41を中心にして第1基材層45を引き起こして型枠テープ30を断面L字形にし、第1基材層45を軌道スラブ5の側面5Aに第2粘着剤層38Bを介して貼付する。これにより、型枠テープ30が空隙Sを側方から塞ぐように表面を空隙Sに臨ませて路盤コンクリート1の上面1Aと軌道スラブ5の側面5Aとに貼付され、断面L字形になる。
【0075】
テープロール40を用いてこのように型枠テープ30を設置することにより、型枠テープ30を断面L字形にして容易に所定の位置に設置することができる。
【0076】
次に、本発明による補修型枠20及びテープロール40の第2実施形態の構成を、図12及び図13を参照して説明する。なお、上記実施形態と同一又は同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。以下の他の実施形態においても同様とする。
【0077】
図12に示されるように、本実施形態の型枠テープ30は1本の第3テープ32Cによって構成されている。第3テープ32Cは第3テープ基材35Cを有している。第3テープ基材35Cは、幅方向に互いに区分されて長手方向に沿って延在する第1基材層45と第2基材層46とを有している。第1基材層45と第2基材層46とは互いに連続しており、それらの境界線41はL字形断面の屈曲線である。この境界線41がロール状に巻かれる際の折り線になる。
【0078】
第1基材層45の表面の上端縁領域には長手方向に沿う第1粘着剤層38Aが設けられている。第1基材層45は、第1粘着剤層38Aによって軌道スラブ5の側面5Aに貼付される。第2基材層46の裏面には全体にわたって第2粘着剤層38Bが設けられている。第2基材層46は、第2粘着剤層38Bによって路盤コンクリート1の上面1Aに貼付される。
【0079】
第1基材層45は軌道スラブ5の側面5Aに貼付された上部から鉛直に垂下している。第1基材層45の下端(境界線41)は路盤コンクリート1の上面1Aに概ね一致している。第1基材層45の第1粘着剤層38Aが設けられていない部分の幅W2は、路盤コンクリート1の上面1Aから軌道スラブ5の下面5Bまでの高さH1に対応する寸法である。
【0080】
図13に示されるように、テープロール40の状態では、型枠テープ30は、第2基材層46が境界線41に沿って第1基材層45の表側に折り重ねられた状態で第2基材層46を内側にしてロール状に巻かれている。したがって、型枠テープ30の最も外周側に第1基材層45が配置され、最も内周側に第2粘着剤層38Bが配置される。
【0081】
より詳細には、型枠テープ30の最も外周側に第1基材層45が配置される。第1基材層45の内側には、第1基材層45に連続して折り返された第2基材層46と、第2基材層46と相反する側の側端縁領域に位置する、軌道スラブ5の側面5Aへ貼付されるべき第1粘着剤層38Aとが配置される。第2基材層46の内側には、路盤コンクリート1の上面1Aに貼付されるべき第2粘着剤層38Bが配置される。
【0082】
型枠テープ30やテープロール40がこのように構成されていても、図11を参照して説明した型枠テープ30の設置方法を行うことができる。また本実施形態では、テープロール40の状態において、型枠テープ30の厚さが第1実施形態よりも薄く、巻き重ねられる型枠テープ30の隙間も小さくなる。
【0083】
次に、本発明による補修型枠20及びテープロール40の第3実施形態の構成を、図14及び図15を参照して説明する。
【0084】
図14に示されるように、本実施形態の型枠テープ30は、粘着剤層38によって互いに結合された2本の第1テープ基材35A及び第2テープ基材35Bによって構成されている。第1テープ基材35A及び第2テープ基材35Bは互いに一部をオーバーラップさせている。粘着剤層38は第1テープ基材35Aに対しては表面に第2テープ基材35Bに対しては裏面にそれらの全体にわたって設けられている。
【0085】
第1テープ基材35Aのオーバーラップ側の端縁がL字形断面の屈曲線であり、この屈曲線がロール状に巻かれる際の折り線であり、且つ第1基材層45と第2基材層46との境界線41をなす。第1基材層45は、第1テープ基材35Aと、粘着剤層38及び第2テープ基材35Bのそれぞれの第1テープ基材35Aとオーバーラップする部分とにより構成される。第2基材層46は、第2テープ基材35Bの第1テープ基材35Aから延出する部分である。
【0086】
第1基材層45の上延領域、具体的には第1テープ基材35Aの第2テープ基材35Bから延出する部分の表面には、粘着剤層38の一部によって構成される第1粘着剤層38Aが設けられ、第1粘着剤層38Aが軌道スラブ5の側面5Aに粘着される。第2基材層46の裏面には、粘着剤層38の一部によって構成される第2粘着剤層38Bが設けられ、第2粘着剤層38Bが路盤コンクリート1の上面1Aに粘着される。
【0087】
図15に示されるように、テープロール40の状態では、型枠テープ30は、第2基材層46が境界線41に沿って第1基材層45の表側に折り重ねられた状態で第2基材層46を内側にしてロール状に巻かれている。したがって、型枠テープ30の最も外周側に第1基材層45が配置され、最も内周側に第2粘着剤層38Bが配置される。
【0088】
より詳細には、型枠テープ30の最も外周側に第1基材層45が配置され、その内側には、第1粘着剤層38Aを含む粘着剤層38が配置される。その内側には、第2テープ基材35Bの第1テープ基材35Aとオーバーラップする部分が、更にその内側にはこれに連続し且つ折り返された第2基材層46(第2テープ基材35Bの一部)が配置される。更にその内側に第2粘着剤層38Bが配置される。
【0089】
型枠テープ30やテープロール40がこのように構成されていても、図11を参照して説明した型枠テープ30の設置方法を行うことができる。
【0090】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0091】
例えば、上記の型枠テープ30はテープ基材35として不織布36を有しているが、不織布36を有する代わりに織布を有していてもよく、不織布36や織布を有していなくてもよい。また、補修型枠20が、第1填充材注入通路62Aを画定する箱状型枠50を備えずに、第2填充材注入通路62Bを画定する袋状型枠70だけを備えていてもよい。更に、第2填充材注入通路62Bを画定する注入用型枠として、袋状型枠70の代わりに堰板状の型枠が用いられてもよい。
【0092】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 路盤コンクリート
1A 上面
3 填充層
5 軌道スラブ
5A 側面
5B 下面
30 下段の型枠テープ
31 上段の型枠テープ
32 テープ
32A 第1テープ
32B 第2テープ
32C 第3テープ
34 樹脂フィルム(テープ基材)
35 テープ基材
35A 第1テープ基材
35B 第2テープ基材
35B1 第1基材領域
35B2 第2基材領域
35C 第3テープ基材
36 不織布(テープ基材)
38 粘着剤層
38A 第1粘着剤層
38B 第2粘着剤層
38B1 第1基材部分
38B2第2基材部分
40 テープロール
41 境界線
45 第1基材層
46 第2基材層
H 路盤コンクリート1の上面1Aから軌道スラブ5の下面5Bまでの高さ
S 空隙
W1、W2 所定の幅
図1
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