(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】甑
(51)【国際特許分類】
A47J 27/16 20060101AFI20231218BHJP
A47J 27/04 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
A47J27/16 A
A47J27/04 D
(21)【出願番号】P 2020081078
(22)【出願日】2020-05-01
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000223931
【氏名又は名称】株式会社フジワラテクノアート
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大賀 直行
(72)【発明者】
【氏名】井上 俊雄
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3034195(JP,U)
【文献】特開昭52-015872(JP,A)
【文献】実開昭48-007582(JP,U)
【文献】国際公開第2018/131625(WO,A1)
【文献】米国特許第05756968(US,A)
【文献】中国実用新案第208755682(CN,U)
【文献】特表2009-507535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00-29/06
A23L 7/00-7/104、11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に静置した原料を蒸す甑であって、
空間を囲む側壁を有する甑本体と、
前記甑本体内に設置される内筒と、
前記内筒下部に原料を静置する原料静置部材と、
蒸気を供給するための蒸気供給口と、
前記内筒及び前記甑本体の上部かつ周方向において、前記内筒と前記甑本体との間の空隙を塞ぐ蓋と、
前記蓋の下部に形成され、前記内筒と前記甑本体との間に、前記蒸気供給口からの蒸気が溜まる蒸気溜り空間とを備えたことを特徴とする甑。
【請求項2】
前記蓋は、前記蒸気を通過させるために一部を開放している請求項1に記載の甑。
【請求項3】
前記内筒を前記甑本体内の定位置に設置するための水平位置決め部材及び垂直位置決め部材を備えている請求項1又は2に記載の甑。
【請求項4】
前記内筒と前記甑本体との間に断熱部材を介在させて、前記内筒と前記甑本体との間の熱伝導を抑えるようにしている請求項1から3のいずれかに記載の甑。
【請求項5】
前記内筒を前記甑本体内の定位置に設置するための水平位置決め部材及び垂直位置決め部材を備えており、前記内筒と前記甑本体との間に断熱部材を介在させて、前記内筒と前記甑本体との間の熱伝導を抑えるようにしており、前記甑本体と前記水平位置決め部材若しくは前記垂直位置決め部材との間、又は前記内筒と前記水平位置決め部材若しくは前記垂直位置決め部材との間に前記断熱部材が介在している請求項1又は2に記載の甑。
【請求項6】
前記蓋が断熱部材で形成されており、前記内筒と前記甑本体との間の熱伝導を抑えるようにしている請求項1から3のいずれかに記載の甑。
【請求項7】
前記蓋と前記内筒又は前記甑本体との間に断熱部材を介在させて、前記内筒と前記甑本体との間の熱伝導を抑えるようにしている請求項1から3のいずれかに記載の甑。
【請求項8】
前記断熱部材が樹脂である請求項4から7のいずれかに記載の甑。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、醸造食品の蒸し工程に用いられ、内部に静置した原料を蒸す甑に関する。
【背景技術】
【0002】
醸造食品の製造において、米、麦、大豆等の原料を蒸す機器として甑と呼ばれる機器が知られている。通常、甑は通気性の底面を有する筒状の容器を備えており、この容器内に原料を静置し、底面側から容器内に蒸気を供給し、原料を蒸すように構成している。
【0003】
容器は1枚板で壁面が構成されており、この構成では容器内外の温度差により容器内面に結露が生じ易く、結露部分に接した原料は他の部分に比べ柔らかく蒸し上り、正常に蒸しあがった原料と柔らかく蒸しあがった原料とでは、供給される蒸気の流れに違いが生じる結果、蒸し状態に差異が生じる要因となっていた。
【0004】
このような背景の下、甑には安定した蒸しによる品質向上が求められていた。この点、特許文献1に記載の穀物原料の蒸煮方法では、蒸気の排気側を積極的に吸引することで原料の達温が早くなるようにし、かつ蒸気の短絡を防ぎ、蒸しむらをなくすようにしていた。特許文献2に記載の甑は、内壁にスチームパイプを捲回して内壁を加熱することで、容器内面に結露を発生させないようにして蒸煮環境を改善していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-3832号公報
【文献】特許第3722327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の穀物原料の蒸煮方法においては、蒸気の排気側を積極的に吸引するには送風機及びこれに接続する配管構造が必要になり、機器の構造が複雑になり価格も高くなることに加え、送風機の操作が必要であった。このことは、特許文献2に記載の甑においても同様であり、同甑においては、容器壁面を加熱する加熱手段が必要であり、機器の構造が複雑になり価格も高くなることに加え、加熱手段の操作が必要であった。
【0007】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、構造を複雑化させることなく、特別な操作を不要としながらも、安定した蒸しによる原料の品質向上を図ることができる甑を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の甑は、内部に静置した原料を蒸す甑であって、空間を囲む側壁を有する甑本体と、前記甑本体内に設置される内筒と、前記内筒下部に原料を静置する原料静置部材と、蒸気を供給するための蒸気供給口と、前記内筒及び前記甑本体の上部かつ周方向において、前記内筒と前記甑本体との間の空隙を塞ぐ蓋と、前記蓋の下部に形成され、前記内筒と前記甑本体との間に、前記蒸気供給口からの蒸気が溜まる蒸気溜り空間とを備えたことを特徴とする。
【0009】
前記本発明の甑によれば、蒸気溜り空間は蒸気が充満する高温空間となり、内筒と甑本体との間の熱伝導が抑えられ、内筒の外周全体に亘り熱の外部への移動を遮る断熱効果が得られる。このことにより、内筒内の全体において、内筒の内周面の結露が防止され、内筒の内周面における原料が吸水し柔らかくなることを防止でき、安定した蒸しによる原料の品質向上を図ることができる。
【0010】
さらに、前記の効果を得るために、内筒や甑本体の壁面を加熱する加熱手段を設けることは必須ではなく、これらの加熱手段を省いて甑の構造の簡素化を図ることができ、加熱手段の追加による特別な操作やメンテナンスも不要となる。また、蒸気溜り空間による断熱効果が得られることにより、甑本体の断熱材の仕様を下げることもできる。この場合も甑の構造の簡素化を図ることができる。
【0011】
あわせて、前記のような断熱効果により、蒸気使用量を削減でき省エネルギーを図ることもできる。
【0012】
前記本発明の甑においては、以下の各構成とすることが好ましい。前記蓋は、前記蒸気を通過させるために一部を開放していることが好ましい。この構成によれば、蓋の一部を開放することにより、蒸気溜り空間の空気が排気され蒸気で満たされるので、蒸気溜り空間の蒸気の充満度合いが高まり、蒸気溜り空間による断熱効果を高めることができる。
【0013】
前記内筒を前記甑本体内の定位置に設置するための水平位置決め部材及び垂直位置決め部材を備えていることが好ましい。この構成によれば、内筒を出し入れしても、同一の蒸気溜り空間をその都度容易かつ確実に形成でき、蒸気溜り空間による効果が安定して得られる。
【0014】
前記内筒と前記甑本体との間に断熱部材を介在させて、前記内筒と前記甑本体との間の熱伝導を抑えるようにしていることが好ましい。この構成によれば、内筒と甑本体との間に構造物を介在させた場合であっても、あわせて断熱部材を介在させることにより、介在させた構造物を介して、内筒側の熱が熱伝導により甑本体を経て外部へ移動することを抑えることができ、蒸気溜り空間による断熱効果が損なわれることを防止することができる。
【0015】
前記内筒を前記甑本体内の定位置に設置するための水平位置決め部材及び垂直位置決め部材を備えており、前記内筒と前記甑本体との間に断熱部材を介在させて、前記内筒と前記甑本体との間の熱伝導を抑えるようにしており、前記甑本体と前記水平位置決め部材若しくは前記垂直位置決め部材との間、又は前記内筒と前記水平位置決め部材若しくは前記垂直位置決め部材との間に前記断熱部材が介在していることが好ましい。この構成によれば、内筒と甑本体との間に水平位置決め部材及び垂直位置決め部材を介在させた場合であっても、あわせて断熱部材を介在させることにより、水平位置決め部材や垂直位置決め部材を介して、内筒側の熱が熱伝導により甑本体を経て外部へ移動することを抑えることができ、蒸気溜り空間による断熱効果が損なわれることを防止することができる。
【0016】
前記蓋が断熱部材で形成されており、前記内筒と前記甑本体との間の熱伝導を抑えるようにしていることが好ましい。この構成によれば、蓋を介して内筒側の熱が熱伝導により、甑本体を経て外部へ移動することを抑えることができ、蒸気溜り空間による断熱効果が損なわれることを防止することができる。
【0017】
前記蓋と前記内筒又は前記甑本体との間に断熱部材を介在させて、前記内筒と前記甑本体との間の熱伝導を抑えるようにしていることが好ましい。この構成によっても、蓋を介して内筒側の熱が熱伝導により甑本体を経て外部へ移動することを抑えることができ、蒸気溜り空間による断熱効果が損なわれることを防止することができる。
【0018】
前記断熱部材が樹脂であることが好ましい。樹脂は熱伝導率が低く断熱性に優れており、成形による形状の自由度が高いことに加え、十分な耐久性を確保できるので、樹脂は本発明における断熱部材の材料に適している。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果は前記のとおりであり、要約すれば、本発明の甑は蒸気溜り空間を有していることにより、内筒と甑本体との間の熱伝導が抑えられ、内筒の外周全体に亘り熱の外部への移動を遮る断熱効果が得られる。このことにより、内筒内の全体において、内筒の内周面の結露発生を防止できるので、安定した蒸しによる原料の品質向上を図ることができるとともに、内筒や甑本体の壁面を加熱する加熱手段を省くこともでき、甑の構造の簡素化を図ることができ、加熱手段の追加による特別な操作やメンテナンスも不要となる。また、甑本体の断熱材の仕様を下げることもでき、この場合も甑の構造の簡素化を図ることができ、あわせて、前記のような断熱効果により、蒸気使用量を削減でき省エネルギーを図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】本発明の一実施形態に係る甑において、蓋を取り外した状態を示す斜視図。
【
図4】
図3に示した甑において、蓋を取り付けた状態を示す斜視図。
【
図5】本発明の一実施形態に係る甑において、水平位置決め部材を上側から見たときの拡大図。
【
図6】本発明の一実施形態に係る甑の上部側における分解斜視図。
【
図7】本発明の一実施形態に係る甑において、垂直位置決め部材近傍の拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る甑1の外観斜視図を示している。甑1は、醸造食品の製造工程において、米、麦、大豆等の原料の蒸し工程を実施するための機器であり、甑1を用いることにより、内部に静置した原料を蒸すことができる。最初に
図1を参照しながら、甑1の概要を説明する。
【0022】
図1は甑1の運転中の状態を示している。円筒状の側壁3を有する甑本体2の上部が甑布8で覆われている。甑布8は、甑本体2の全周に締め付けられたベルト9により甑本体2に固定されている。甑布8を使用することにより、空気の巻き込みを防止することができる。甑本体2は脚30により床上に支持されている。甑本体2には蒸気輸送管13が接続されており、甑本体2の内部に蒸気が供給される(矢印a)。この蒸気は蒸気供給管12を経て蒸気供給口11から噴出し甑本体2内を上昇する(矢印b)。このことにより、甑本体2内の原料が蒸され、蒸気は主に甑布8に形成された穴32を経て排気される(矢印c)。
図1及び後に説明する
図2では、蒸気により甑布8が膨らんだ状態を図示している。蒸気が凝縮したドレンは、ドレン排出管31から排出させることができる(矢印d)。
【0023】
説明が一部重複するが、
図2を参照しながら甑1について、より具体的に説明する。
図2は、
図1に示した甑1の縦断面図である。甑本体2は円筒状の側壁3で空間を囲んでおり、側壁3の下部には円弧状の底部4が一体になっている。甑本体2の側壁3及び底部4の内部には断熱材5が介在している。甑本体2の内側には内筒6が設置され、内筒6の下部には原料静置部材7が設置されている。原料静置部材7は、原料10を静置でき蒸気が通過する部材であればよい。例えば多孔板でもよく、メッシュ部材や布でもよい。本実施形態では、原料静置部材7は多孔板である(
図3参照)。また、原料静置部材7は、内筒と分離された状態のものであってもよいし、内筒と一体になった状態のものであってもよく、適宜その仕様を変更可能である。
【0024】
甑本体2の下部には、蒸気供給管12が設置されており、蒸気供給管12の先端に蒸気供給口11が形成されている。ボイラ等の蒸気供給源(図示せず)からの蒸気が蒸気輸送管13で輸送され、蒸気供給管12を経て蒸気供給口11から噴出する。この蒸気は甑本体2の底部4で反射して上昇し(矢印e)、蒸気整流板14を通過して内筒6に供給される(矢印f)。蒸気整流板14は多孔板であり、蒸気が蒸気整流板14を通過することにより、原料静置部材7に向かう蒸気を均一に吹き上げることができる。原料静置部材7及び内筒6に供給された蒸気は、原料10内を通過して(矢印g)、原料10が蒸し上がる。原料10内を通過した蒸気は、主に甑布8の穴32を通過して排気される(矢印h)。
【0025】
図2~
図4を参照しながら、蒸気溜り空間15について説明する。
図3は、甑1の上部から蓋16を取り外した状態を示す斜視図である。
図4は、甑1の上部に蓋16を取り付けた状態を示す斜視図である。
図3及び
図4において、甑布8の図示は省略している。蓋16は着脱を容易にするため摘み17を設けている。
図3及び
図4に示した蓋16は、複数枚に分割されているが、これらが一体となった環状のものであってもよい。
【0026】
図4のように甑1の上部に蓋16を取り付けた状態においては、
図2に示したように、蓋16の下部において、蒸気溜り空間15が内筒6と甑本体2との間に形成されており、内筒6の外周を囲んでいる。蒸気溜り空間15は、蒸気供給口11からの蒸気が溜まる空間である(矢印i)。
【0027】
より具体的には、
図3のように蓋16を取り外した状態では、内筒6と甑本体2との間は開放されており、内筒6及び甑本体2の上部かつ周方向に空隙18が形成されている。内筒6の上部外周には複数の支持体19が固定されている。支持体19は甑本体2の上部内周に複数固定されていてもよい。支持体19上に蓋16を載置することにより、蓋16により空隙18が塞がれ、蒸気溜り空間15は閉じた空間となる。
【0028】
このため、
図2において、蒸気供給口11からの蒸気は(矢印j)、蓋16の下方に溜まり、蒸気溜り空間15内を滞留することになる。この構成では、蒸気溜り空間15内の空気は蒸気とともに、蓋16の周囲を経て蒸気溜り空間15から追い出され、蒸気溜り空間15は蒸気が充満する高温空間となる。このように、蒸気溜り空間15が高温空間であることで、内筒6と甑本体2との間の熱伝導が抑えられる。このことにより内筒6の内周面の結露が防止され、内筒6の内周面における原料10が吸水し柔らかくなることを防止でき、安定した蒸しによる原料10の品質向上を図ることができる。また内筒6の外周全体に亘り、熱の外部への移動を遮る断熱効果が得られ、内筒6内の全体において、安定した蒸しによる原料10の品質向上を図ることができる。あわせて、このような断熱効果により、蒸気使用量を削減でき、省エネルギーを図ることもできる。
【0029】
一方、前記の効果は蒸気溜り空間15を備えることによる効果であり、前記の効果を得るために、内筒6や甑本体2の壁面を加熱する加熱手段を設けることは必須ではなく、これらの加熱手段を省くこともできる。この場合、甑1は構造が特別に複雑化することはないので構造の簡素化を図ることができ、加熱手段の追加による特別な操作やメンテナンスも不要となる。
【0030】
さらに、
図2に示した甑1においては、前記の通り、甑本体2の側壁3及び底部4の内部には断熱材5が介在しているが、蒸気溜り空間15による断熱効果が得られることにより、断熱材5の仕様を下げることもできる。この場合も甑1の構造の簡素化を図ることができる。
【0031】
前記のような蓋16の周囲からの蒸気や空気の排気は、より具体的には
図4において、蓋16の内周部や外周部に隙間を設けたり、隣接する蓋16同士の継ぎ目に隙間を設ければ、これらの隙間から排気が可能になる(矢印k、l)。
【0032】
以下、蒸気溜り空間15について説明を補足する。
図2において、蓋16によって蒸気溜り空間15が密閉されているとすると、蒸気溜り空間15内の蒸気は外部に排気されないが空気も排気されにくくなり、蒸気溜り空間15の温度が蒸気温度まで達温するまでに時間を要する。蒸気溜り空間15による断熱効果を高めるには、蒸気溜り空間15の蒸気の充満度合いを高めることが効果的である。このため、蓋16は蒸気を通過させるために一部を開放していることが好ましい。蓋16の一部を開放するには、
図4で説明した蓋16の内周部や外周部に隙間を設けたり、隣接する蓋16同士の継ぎ目に隙間を設ける方法以外に、蓋16に孔やスリット等(図示せず)を設けてもよい。
【0033】
蓋16の一部を開放することにより、蒸気溜り空間15の空気が排気され、蒸気溜り空間15は蒸気が充満することになる。この場合、蓋16は一部が開放しているに過ぎず、蒸気供給口11から絶えず蒸気が供給されるので、蒸気溜り空間15に蒸気が溜まることには変わりはない。一方、蒸気溜り空間15から空気が排気されることにより、蒸気溜り空間15の蒸気の充満度合いが高まり、蒸気溜り空間15による断熱効果も高まることになる。
【0034】
以下、内筒6の設置構造について説明する。本実施形態においては、内筒6は、甑本体2とは独立した構造体であり、甑本体2に対して出し入れが可能である。このことにより、洗浄等のメンテナンスが容易になる。また、内筒6を甑本体2内の定位置に設置するための水平位置決め部材20(
図3、
図5及び
図6参照)及び垂直位置決め部材26(
図2、
図6及び
図7参照)を備えており、内筒6を出し入れしても、同一の蒸気溜り空間15をその都度容易かつ確実に形成でき、前記の蒸気溜り空間15による効果が安定して得られる。
【0035】
本実施形態においては、水平位置決め部材20は内筒6を直径方向で位置決めする位置決め部材であり、垂直位置決め部材26は内筒6を高さ方向で位置決めする位置決め部材である。
図3において、甑本体2の内周面に沿って複数の水平位置決め部材20が所定間隔で固定されている。
図5は水平位置決め部材20を上側から見たときの拡大図である。複数の水平位置決め部材20を備えていることにより、内筒6は直径方向で位置決めされ、直径方向での位置移動が規制される。
【0036】
より具体的には、
図5において、水平位置決め部材20は、本体21、伸縮体22及び押圧体23を備えている。内筒6には受け部材25が固定されており、受け部材25と押圧体23との間には断熱部材24が介在している。この構造では、水平位置決め部材20の配置位置において、内筒6が甑本体2へ向かう移動(矢印m)は規制される。同様の構造を内筒6及び甑本体2の全周に亘り設けることにより、内筒6は直径方向で位置決めされ、直径方向での位置移動が規制される。
【0037】
伸縮体22は、例えばねじであり、伸縮体22の本体21からの出代調整により、内筒6を確実に位置決めすることができ、これとは逆に位置決めを解除し、内筒6の出し入れを容易にすることもできる。
【0038】
図5の構造では、内筒6と水平位置決め部材20との間に断熱部材24が介在しているので、甑1の運転中において、水平位置決め部材20を通じて、内筒6と甑本体2との間の熱伝導を抑えることができる。このことにより、内筒6と甑本体2との間に、水平位置決め部材20のような構造物を介在させた場合であっても内筒6の内側への結露発生を防止することができる。
【0039】
図5の水平位置決め部材20の構造は一例であり、同様の効果が得られるものであれば、他の構造であってもよい。また、水平位置決め部材20と断熱部材24の位置関係についても、
図5のものに限るものではない。
図5の構造では、内筒6と水平位置決め部材20との間に断熱部材24が介在しているが、適宜構造を変更してもよく、甑本体2と水平位置決め部材20との間に断熱部材24を介在させてもよい。
【0040】
断熱部材24の材料は特に限定されないが、樹脂が好ましい。樹脂は熱伝導率が低く断熱性に優れており、成形による形状の自由度が高いことに加え、十分な耐久性を確保できるからである。
【0041】
また、
図5の水平位置決め部材20は、甑本体2の内周面に固定されていたが、内筒6の外周面に固定しても同様の効果が得られる。
【0042】
以下、内筒6を高さ方向で位置決めする垂直位置決め部材について説明する。
図6は、甑1の上部側における分解斜視図である。図示の便宜のため、
図3に示した蓋16の図示は省略している。
図6において、甑本体2の内周面に沿って複数の垂直位置決め部材26が所定間隔で固定されている。
【0043】
図7は垂直位置決め部材26近傍の拡大斜視図である。垂直位置決め部材26上に断熱部材27が固定されている。断熱部材27上に内筒受部材29の端部及び角部が載置される。特に内筒受部材29の端部は、断熱部材27に形成された溝28に係合する。
【0044】
図6において、内筒受部材29上には、原料静置部材7及び内筒6が載置される。この構成によれば、
図2に示したように、垂直位置決め部材26上に、断熱部材27及び内筒受部材29を介して原料静置部材7及び内筒6が支持される。すなわち、垂直位置決め部材26を備えていることにより、高さ方向で位置決めされ、内筒6及び原料静置部材7の高さ方向での位置移動が規制される。
【0045】
断熱部材27の効果は、
図5の水平位置決め部材20における断熱部材24の効果と同様である。すなわち、
図2の構造では、内筒6と垂直位置決め部材26との間に、断熱部材27が介在しているので、甑1の運転中において、位置決め部材26を介して、内筒6と甑本体2との間の熱伝導を抑えることができる。このことにより、内筒6と甑本体2との間に、垂直位置決め部材26のような構造物を介在させた場合であっても、内筒6の内側への結露発生を防止することができる。
【0046】
図6では、内筒受部材29は板材を格子状に組み立てたものであるが、他の構造であってもよい。
図7の垂直位置決め部材26の取付構造についても一例であり、同様の効果が得られるものであれば、他の構造であってもよく、内筒受部材29の構造に合わせて適宜変更すればよい。
【0047】
また、垂直位置決め部材26と断熱部材27の位置関係についても、
図2、
図6及び
図7のものに限るものではない。
図2、
図6及び
図7の構造では、内筒6と垂直位置決め部材26との間に断熱部材27が介在しているが、適宜構造を変更してもよく、垂直位置決め部材26と甑本体2との間に断熱部材27を介在させてもよい。また、断熱部材27の材料は、断熱部材24と同様に特に限定されるものではないが、樹脂が好ましい。
【0048】
本実施形態においては、
図3及び
図4の蓋16を断熱部材で形成して、内筒6と甑本体2との間の熱伝導を抑えるようにしている。また、蓋16は金属で構成し、蓋16と内筒6又は甑本体2との間の少なくとも一方に断熱部材を介在させて、内筒6と甑本体2との間の熱伝導を抑えるようにしてもよい。これらの構成によれば、甑1の運転中において、蓋16を介して、内筒6と甑本体2との間の熱伝導を抑えることができ、内筒6の内側に結露が発生することを防止することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、これらの例に限るものではなく、適宜変更したものであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 甑
2 甑本体
3 甑本体の側壁
4 甑本体の底部
6 内筒
7 原料静置部材
8 甑布
10 原料
11 蒸気供給口
16 蓋
15 蒸気溜り空間
20 水平位置決め部材
24,27 断熱部材
26 垂直位置決め部材