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特許7403837インサート成形品及びインサート成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】インサート成形品及びインサート成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/38 20060101AFI20231218BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20231218BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20231218BHJP
   B29C 45/27 20060101ALN20231218BHJP
【FI】
B60S1/38 D
B29C33/12
B29C45/14
B29C45/27
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021070946
(22)【出願日】2021-04-20
(65)【公開番号】P2022165560
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】591012200
【氏名又は名称】株式会社東海理機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高木 佳範
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-027038(JP,A)
【文献】特開2001-310687(JP,A)
【文献】特開2000-142267(JP,A)
【文献】特開2009-269486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00-1/68
B29C 33/12
B29C 45/14
B29C 45/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の金属部材が樹脂部材の内部に埋設されているインサート成形品であって、
前記金属部材は、前記金属部材を前記金属部材の板厚方向に貫通する貫通孔を有し、
前記樹脂部材は、前記樹脂部材の外面に、前記樹脂部材を成形する際に形成されたゲート痕を有し、
前記ゲート痕及び前記貫通孔の双方が、前記板厚方向に沿う共通の仮想平面上に位置しており
前記ゲート痕は、前記金属部材の端を覆う部分であって、且つ当該端の板厚方向において当該端とは異なる位置に設けられている、
インサート成形品。
【請求項2】
前記金属部材は、長尺板状であり、
前記貫通孔を第1貫通孔とするとき、
前記金属部材は、前記金属部材を前記板厚方向に貫通する第2貫通孔を有し、
前記第2貫通孔は、前記金属部材の長手方向において前記第1貫通孔とは異なる位置に設けられており、
前記仮想平面は、前記長手方向に直交する平面である、
請求項1に記載のインサート成形品。
【請求項3】
前記長手方向における前記金属部材の端部は、面取りされるとともに前記樹脂部材に埋設されている、
請求項2に記載のインサート成形品。
【請求項4】
前記金属部材は、
前記仮想平面に沿う第1方向に延在する第1部分と、
前記仮想平面に沿うとともに前記第1方向に交差する第2方向に延在する第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分との間に位置する屈曲部と、を有し、
前記貫通孔は、前記第1部分に設けられており、
前記ゲート痕は、前記樹脂部材の外面のうち、前記第1方向における前記第1部分の端を覆う部分に設けられている、
請求項2または請求項3に記載のインサート成形品。
【請求項5】
板状の金属部材を成形型内にインサートするとともに、キャビティ内に溶融樹脂を充填することにより、前記金属部材が樹脂部材の内部に埋設されているインサート成形品を製造する方法であって、
前記金属部材は、前記金属部材を前記金属部材の板厚方向に貫通する貫通孔を有するものであり、
前記成形型内に溶融樹脂を射出するゲートの位置を、前記板厚方向に沿うとともに前記貫通孔が位置する仮想平面上であり、前記金属部材の端を覆う部分であって、且つ当該端の板厚方向において当該端とは異なる位置に設定する、
インサート成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形品及びインサート成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用ワイパを構成するワイパブレードが開示されている。このワイパブレードは、樹脂製のブレード本体と、金属板製の平板部材とを備えている。平板部材は、ブレード本体の内部に埋設されている。
【0003】
こうしたワイパブレードは、成形型内に平板部材をインサートした状態でキャビティ内に溶融樹脂を充填することにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-39743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうしたワイパブレードにおいては、キャビティ内に溶融樹脂を充填する際、キャビティ内を流れる溶融樹脂の流路が平板部材などの金属部材により2つに分断される。ここで、分断された2つの流路の一方と他方とで樹脂の流動圧力が乖離する場合、金属部材が正規の位置からずれるおそれがある。
【0006】
なお、こうした問題は、ワイパブレードに限定されるものではなく、樹脂部材の内部に板状の金属部材が埋設されているインサート成形品において同様にして生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのインサート成形品は、板状の金属部材が樹脂部材の内部に埋設されているインサート成形品であって、前記金属部材は、前記金属部材を前記金属部材の板厚方向に貫通する貫通孔を有し、前記樹脂部材は、前記樹脂部材の外面に、前記樹脂部材を成形する際に形成されたゲート痕を有し、前記ゲート痕及び前記貫通孔の双方が、前記板厚方向に沿う共通の仮想平面上に位置している。
【0008】
成形型のキャビティ内に溶融樹脂を充填する際、ゲートからキャビティ内に溶融樹脂が射出される。キャビティ内においては、ゲートに近い位置ほど溶融樹脂の流動圧力が大きい。そのため、金属部材のうちゲートに近い部分ほど、溶融樹脂の流動圧力によって位置ずれを起こしやすい。
【0009】
この点、上記構成によれば、ゲート痕及び貫通孔の双方が、金属部材の板厚方向に沿う共通の仮想平面上に位置している。そのため、ゲート痕と貫通孔とが共通の仮想平面上に位置していない構成に比べて、貫通孔がゲート痕に近くなる。換言すれば、金属部材のうち、より位置ずれが生じやすいゲートに近い部分に貫通孔が設定されている。そして、キャビティ内において金属部材によって分断された流路同士が貫通孔により連通される。そのため、分断された流路の一方と他方とで溶融樹脂の流動圧力が乖離することが抑制されるようになる。したがって、金属部材の位置ずれを抑制できる。
【0010】
上記インサート成形品において、前記金属部材は、長尺板状であり、前記貫通孔を第1貫通孔とするとき、前記金属部材は、前記金属部材を前記板厚方向に貫通する第2貫通孔を有し、前記第2貫通孔は、前記金属部材の長手方向において前記第1貫通孔とは異なる位置に設けられており、前記仮想平面は、前記長手方向に直交する平面であることが好ましい。
【0011】
同構成によれば、樹脂部材を成形する際に、金属部材の長手方向において第1貫通孔とは異なる位置、すなわちゲートとは異なる位置においても、金属部材によって分断された流路同士が第2貫通孔により連通される。そのため、ゲートとは異なる位置においても、分断された流路の一方と他方とで溶融樹脂の流動圧力が乖離することが抑制されるようになる。したがって、金属部材の位置ずれを一層抑制できる。
【0012】
上記インサート成形品において、前記長手方向における前記金属部材の端部は、面取りされるとともに前記樹脂部材に埋設されていることが好ましい。
同構成によれば、長手方向における金属部材の端部が面取りされていることにより、金属部材が成形型内で位置ずれした場合であっても樹脂部材から露出することを抑制できる。これにより、金属部材の上記端部を樹脂部材に埋設する上で、同端部を覆う樹脂部材の肉厚を薄く設定することができる。したがって、樹脂の使用量を低減できる。
【0013】
上記インサート成形品において、前記金属部材は、前記仮想平面に沿う第1方向に延在する第1部分と、前記仮想平面に沿うとともに前記第1方向に交差する第2方向に延在する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に位置する屈曲部と、を有し、前記貫通孔は、前記第1部分に設けられており、前記ゲート痕は、前記樹脂部材の外面のうち、前記第1方向における前記第1部分の端を覆う部分に設けられていることが好ましい。
【0014】
同構成によれば、ゲート痕が、樹脂部材の外面のうち、第1部分の延在方向である第1方向の端を覆う部分に設けられている。そのため、貫通孔がゲート痕に近くなる。換言すれば、金属部材のうち、より位置ずれが生じやすい第1部分に貫通孔が設定されている。したがって、金属部材の位置ずれを一層抑制できる。
【0015】
上記課題を解決するためのインサート成形品の製造方法は、板状の金属部材を成形型内にインサートするとともに、キャビティ内に溶融樹脂を充填することにより、前記金属部材が樹脂部材の内部に埋設されているインサート成形品を製造する方法であって、前記金属部材は、前記金属部材を前記金属部材の板厚方向に貫通する貫通孔を有するものであり、前記成形型内に溶融樹脂を射出するゲートの位置を、前記板厚方向に沿うとともに前記貫通孔が位置する仮想平面上に設定する。
【0016】
成形型のキャビティ内に溶融樹脂を充填する際、ゲートからキャビティ内に溶融樹脂が射出される。キャビティ内においては、ゲートに近い位置ほど溶融樹脂の流動圧力が大きい。そのため、金属部材のうちゲートに近い部分ほど、溶融樹脂の流動圧力によって位置ずれを起こしやすい。
【0017】
この点、上記方法によれば、ゲートの位置を、金属部材の板厚方向に沿うとともに貫通孔が位置する仮想平面上に設定している。そのため、ゲートが、上記仮想平面上に位置していない構成に比べて、貫通孔がゲートに近くなる。換言すれば、金属部材のうち、より位置ずれが生じやすいゲートに近い部分に貫通孔が設定されている。そして、キャビティ内において金属部材によって分断された流路同士が貫通孔により連通される。そのため、分断された流路の一方と他方とで溶融樹脂の流動圧力が乖離することが抑制されるようになる。したがって、金属部材の位置ずれを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金属部材の位置ずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】車両用ワイパを示す分解斜視図。
図2】インサート成形品の一実施形態について、ヨークレバーを示す斜視図。
図3】同実施形態について、ヨークレバーを示す斜視図。
図4】同実施形態について、金属部材を示す斜視図。
図5】同実施形態について、金属部材を示す斜視図。
図6】成形型内に溶融樹脂が充填される様子を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1図6を参照して、インサート成形品及びインサート成形品の製造方法の一実施形態について説明する。なお、本実施形態では、ウインドガラスの払拭面に付着した雨水等を払拭するための車両用ワイパを構成するヨークレバーとして本発明を具体化している。
【0021】
<車両用ワイパの全体構成>
図1に示すように、車両用ワイパは、ワイパアーム10と、ワイパブレード20と、ワイパアーム10及びワイパブレード20を連結するための連結部材30とを備えている。
【0022】
ワイパアーム10の基端は、モータにより回動されるピボット軸に固定されている(いずれも図示略)。
ワイパアーム10には、先端が折り返されて形成された取付部11が設けられている。取付部11には、連結部材30によってワイパブレード20が連結される。
【0023】
ワイパブレード20は、払拭面を払拭するためのブレードラバー21と、ブレードラバー21に取り付けられるバッキング28と、ブレードラバー21を保持する長尺状のレバー22とを有している。
【0024】
なお、以降において、レバー22の長手方向を長手方向Lとして説明する。
また、長手方向Lと直交する方向であり、レバー22の幅方向を幅方向Wとして説明する。
【0025】
また、長手方向L及び幅方向Wの双方に直交する方向であり、レバー22の高さ方向を高さ方向Hとして説明する。
ブレードラバー21は、例えばゴム製であり、長手方向Lに長い長尺状に形成されている。ブレードラバー21は、幅方向Wの両側に開口する一対の溝部21aを有している。一対の溝部21aは、長手方向Lに沿って延びている。
【0026】
バッキング28は、金属製板状であり、長手方向Lに長い長尺状に形成されている。バッキング28は、幅方向Wにおけるブレードラバー21の両側に形成された一対の溝部(図示略)に取り付けられる。バッキング28は、ワイパアーム10から受ける払拭面への押圧力を長手方向Lにおけるブレードラバー21の全体に分散させる。
【0027】
レバー22は、取付部11に連結される長尺状のメインレバー23と、メインレバー23の長手方向Lの両側に設けられたウイング24と、メインレバー23及びウイング24の双方に回動可能に連結されるヨークレバー25とを有している。
【0028】
長手方向Lにおけるメインレバー23の中央部23Aには、平面視矩形状の開口部26aと、開口部26aに連なる収容孔26が形成されている。収容孔26には、開口部26aから挿入された連結部材30が収容される。
【0029】
長手方向Lにおけるメインレバー23の中央部23Aの両側には、一対の腕部23Bが設けられている。腕部23Bは、高さ方向Hの一側(図1の上下方向における下側)に開口する溝形の断面形状を有している。腕部23Bには、ヨークレバー25の一部が収容される。
【0030】
ウイング24は、長手方向Lに長い長尺状である。ウイング24は、高さ方向Hの一側(図1の下側)に開口する溝形の断面形状を有している。ウイング24は、メインレバー23の腕部23Bに対して外面が連なるように設けられている。ウイング24には、ヨークレバー25の一部が収容される。
【0031】
長手方向Lにおけるウイング24の両端部のうち、メインレバー23とは反対側の端部には、ブレードラバー21を把持する把持部27が形成されている。把持部27は、高さ方向Hの一側(図1の下側)に突出するとともに、幅方向Wに対向する一対の把持片27aを有している。一対の把持片27aは、ブレードラバー21の一対の溝部21aに嵌合するように構成されている。
【0032】
<ヨークレバー25>
図1から図3に示すように、ヨークレバー25は、長手方向Lに長い長尺状である。ヨークレバー25は、長手方向Lにおけるヨークレバー25の中央を通るとともに、長手方向Lに直交する仮想平面(図示略)に対して対称な形状を有している。
【0033】
図2から図5に示すように、ヨークレバー25は、板状の金属部材50と、樹脂部材40とを有している。金属部材50は、インサート成形によって樹脂部材40の内部に埋設されている。なお、本実施形態では、金属部材50の全体が樹脂部材40の内部に埋設されている(図2及び図3参照)。
【0034】
<樹脂部材40>
図2及び図3に示すように、樹脂部材40は、長手方向L及び高さ方向Hに沿って延在する第1壁部41と、幅方向Wにおける第1壁部41の一方の端面41aから突出する第2壁部42とを有している。
【0035】
第1壁部41は、長手方向Lに長い長尺板状である。
第1壁部41は、複数の凹部43(図3参照)と、樹脂部材40を成形する際に形成されたゲート痕44とを有している。
【0036】
凹部43は、端面41aとは反対側の端面41bに3つ設けられている。凹部43同士は、互いに間隔をあけて長手方向Lに並んでいる。
ゲート痕44は、高さ方向Hにおける第1壁部41の他側(図2の上下方向における上側)の端面41cに設けられている。
【0037】
第2壁部42は、長手方向L及び幅方向Wに沿って延在している。第2壁部42は、長手方向Lに長い長尺板状である。
第2壁部42は、複数の凹部45(図2参照)を有している。また、第2壁部42の長手方向Lの両端には、ブレードラバー21を把持する把持部46が設けられている。
【0038】
凹部45は、幅方向Wにおける第2壁部42の端面42aに3つ設けられている。凹部45は、長手方向Lにおいて凹部43と対応する位置に設けられている。詳しくは、対応し合う凹部43及び凹部45同士は、幅方向Wに沿う同一軸線上に位置している。
【0039】
三対の凹部43,45のうち長手方向Lにおけるヨークレバー25の中央に位置するものは、メインレバー23における腕部23Bの内周面に設けられた一対の凸部(図示略)と係合するように構成されている。また、残りの二対の凹部43,45のうちの一方は、ウイング24の内周面に設けられた一対の凸部(図示略)と係合するように構成されている。これにより、ヨークレバー25に対して、メインレバー23及びウイング24が回動可能に連結される。
【0040】
把持部46は、高さ方向Hの一側(図2の上下方向における下側)に突出するとともに、幅方向Wに対向する一対の把持片46aを有している。一対の把持片46aは、ブレードラバー21の一対の溝部21aに嵌合するように構成されている。把持部27,46が溝部21aに対して嵌合することにより、ブレードラバー21がウイング24及びヨークレバー25に保持される。
【0041】
<金属部材50>
図4及び図5に示すように、金属部材50は、例えばステンレス鋼からなる金属板をプレス成形することにより製造されるものであり、長手方向Lに長い長尺状に形成されている。
【0042】
金属部材50は、長手方向L及び高さ方向Hに沿って延在する第1部分51と、長手方向L及び幅方向Wに沿って延在する第2部分52とを有している。なお、本実施形態では、高さ方向Hが本発明に係る第1方向に相当し、幅方向Wが本発明に係る第2方向に相当する。
【0043】
また、金属部材50は、第1部分51と第2部分52との間に位置する屈曲部53と、1つの第1貫通孔54A及び複数(本実施形態では3つ)の第2貫通孔54Bとを有している。第1部分51及び屈曲部53の一部は、第1壁部41に覆われている。また、第2部分52及び屈曲部53の一部は、第2壁部42に覆われている。
【0044】
第1部分51は、長手方向Lに長い長尺板状である。高さ方向Hにおける第1部分51の端部のうち屈曲部53とは反対側の端部は、樹脂部材40の端面41cに覆われている(図2及び図3参照)。
【0045】
第1貫通孔54Aは、第1部分51に設けられている。第1貫通孔54Aは、長手方向Lに長い長円形状であり、第1部分51を第1部分51の板厚方向である幅方向Wに貫通している。第1貫通孔54Aは、長手方向Lにおける第1部分51の中央よりも長手方向Lにおいてわずかにずれた位置に設けられている。
【0046】
図2及び図3に示すように、第1貫通孔54A及びゲート痕44の双方は、幅方向W及び高さ方向Hの双方に沿う共通の仮想平面V上に位置している。
図4及び図5に示すように、第2貫通孔54Bは、高さ方向Hにおける第1部分51の一側(図4の上下方向における下側)の端部から屈曲部53に跨って設けられている。第2貫通孔54Bは、長手方向Lに長い長円形状であり、第1部分51及び屈曲部53をそれぞれの板厚方向に貫通している。第2貫通孔54B同士は、互いに間隔をあけて長手方向Lに並んでいる。第2貫通孔54Bは、長手方向Lにおいて第1貫通孔54Aとは異なる位置に設けられている。
【0047】
図3に示すように、第2貫通孔54Bは、長手方向Lにおいて樹脂部材40の凹部43と対応する位置に設けられている。詳しくは、対応し合う凹部43及び第2貫通孔54B同士は、幅方向Wに隣り合っている。これにより、凹部43における樹脂部材40の肉厚が確保される。
【0048】
図4に示すように、第2部分52は、長手方向Lに長い長尺板状である。
第2部分52は、切欠部55と、固定部56とを有している。
切欠部55は、幅方向Wにおける第2部分52の端面52aに3つ設けられている。切欠部55同士は、互いに間隔をあけて長手方向Lに並んでいる。
【0049】
図2及び図3に示すように、切欠部55は、長手方向Lにおいて樹脂部材40の凹部45と対応する位置に設けられている。詳しくは、対応し合う凹部45及び切欠部55同士は、幅方向Wに隣り合っている。これにより、凹部45における樹脂部材40の肉厚が確保される。
【0050】
図4に示すように、固定部56は、第2部分52を高さ方向Hに貫通する孔であり、本実施形態では2つ設けられている。固定部56同士は、互いに間隔をあけて長手方向Lに並んでいる。固定部56が成形型60の支持部材(図示略)により係合されることで、成形型60内にインサートされた金属部材50がキャビティ63に対して位置決めされる(図6参照)。
【0051】
第2部分52の長手方向Lにおける両端部は、面取りされている。
図4及び図5に示すように、屈曲部53は、4つの膨出部57を有している。膨出部57同士は、互いに間隔をあけて長手方向Lに並んでいる。膨出部57は、屈曲部53を内側に向けて膨出して形成されている。膨出部57により、ヨークレバー25を成形する際に、溶融樹脂の流動圧によって金属部材50が変形することが抑制される。
【0052】
<ヨークレバー25の製造方法>
まず、金属部材50の2つの固定部56を成形型60の支持部材(図示略)の先端に係合させた状態で、第1型61と第2型62とを型締めする。これにより、成形型60内にインサートされた金属部材50がキャビティ63に対して位置決めされる。
【0053】
続いて、図6に示すように、キャビティ63内に溶融樹脂Rを射出して充填する。なお、図6では、キャビティ63内における溶融樹脂Rの流れを矢印にて示している。
このようにしてキャビティ63内に溶融樹脂Rを充填することにより、金属部材50が樹脂部材40の内部に埋設されたヨークレバー25が製造される。
【0054】
本実施形態の作用について説明する。
図6に示すように、成形型60のキャビティ63内に溶融樹脂Rを充填する際、ゲート64からキャビティ63内に溶融樹脂Rが射出される。キャビティ63内においては、ゲート64に近い位置ほど溶融樹脂Rの流動圧力が大きい。そのため、金属部材50のうちゲート64に近い部分ほど、溶融樹脂Rの流動圧力によって位置ずれを起こしやすい。
【0055】
この点、本実施形態の構成によれば、ゲート痕44及び第1貫通孔54Aの双方が、金属部材50の板厚方向である幅方向Wに沿う共通の仮想平面V上に位置している。そのため、ゲート痕44と第1貫通孔54Aとが共通の仮想平面V上に位置していない構成に比べて、第1貫通孔54Aがゲート痕44に近くなる。換言すれば、金属部材50のうち、より位置ずれが生じやすいゲート64に近い部分に第1貫通孔54Aが設定されている。そして、キャビティ63内において金属部材50によって分断された流路同士が第1貫通孔54Aにより連通される。そのため、分断された流路の一方と他方とで溶融樹脂Rの流動圧力が乖離することが抑制されるようになる。
【0056】
本実施形態の効果について説明する。
(1)金属部材50は、金属部材50を幅方向Wに貫通する第1貫通孔54Aを有している。樹脂部材40は、樹脂部材40の外面に、樹脂部材40を成形する際に形成されたゲート痕44を有している。ゲート痕44及び第1貫通孔54Aの双方が、幅方向Wに沿う共通の仮想平面V上に位置している。
【0057】
こうした構成によれば、上述した作用を奏する。したがって、金属部材50の位置ずれを抑制できる。
(2)金属部材50は、長尺板状である。金属部材50は、金属部材50を板厚方向に貫通する第2貫通孔54Bを有している。第2貫通孔54Bは、長手方向Lにおいて第1貫通孔54Aとは異なる位置に設けられている。
【0058】
こうした構成によれば、樹脂部材40を成形する際に、金属部材50の長手方向Lにおいて第1貫通孔54Aとは異なる位置、すなわちゲート64とは異なる位置においても、金属部材50によって分断された流路同士が第2貫通孔54Bにより連通される。そのため、ゲート64とは異なる位置においても、分断された流路の一方と他方とで溶融樹脂Rの流動圧力が乖離することが抑制されるようになる。したがって、金属部材50の位置ずれを一層抑制できる。
【0059】
(3)長手方向Lにおける金属部材50の端部は、面取りされるとともに樹脂部材40に埋設されている。
こうした構成によれば、長手方向Lにおける金属部材50の端部が面取りされていることにより、金属部材50が成形型60内で位置ずれした場合であっても樹脂部材40から露出することを抑制できる。これにより、金属部材50の上記端部を樹脂部材40に埋設する上で、同端部を覆う樹脂部材40の肉厚を薄く設定することができる。したがって、樹脂の使用量を低減できる。
【0060】
(4)金属部材50は、仮想平面Vに沿う高さ方向Hに延在する第1部分51と、仮想平面Vに沿うとともに高さ方向Hに直交する幅方向Wに延在する第2部分52と、第1部分51と第2部分52との間に位置する屈曲部53とを有している。第1貫通孔54Aは、第1部分51に設けられている。ゲート痕44は、樹脂部材40の外面のうち、高さ方向Hにおける第1部分51の端を覆う部分である端面41cに設けられている。
【0061】
こうした構成によれば、ゲート痕44が、樹脂部材40の外面のうち、第1部分51の延在方向である高さ方向Hの端を覆う部分である端面41cに設けられている。そのため、第1貫通孔54Aがゲート痕44に近くなる。換言すれば、金属部材50のうち、より位置ずれが生じやすい第1部分51に第1貫通孔54Aが設定されている。したがって、金属部材50の位置ずれを一層抑制できる。
【0062】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・ヨークレバー25の形状は、本実施形態で例示したものに限定されない。例えば、ヨークレバー25は、長手方向Lにおけるヨークレバー25の中央を通るとともに、長手方向Lに直交する仮想平面に対して対称な形状でなくてもよい。
【0063】
・凹部43,45の数、形状、及び配置は、本実施形態で例示したものに限定されず、適宜変更することができる。この場合、第2貫通孔54B及び切欠部55の数、形状、及び配置も凹部43,45の変更に伴って適宜変更すればよい。
【0064】
・膨出部57の数は、本実施形態で例示したように4つに限定されず、3つ以下でもよいし、5つ以上であってもよい。
・膨出部57は、本実施形態で例示したように長手方向Lに間隔をあけて設けられるものに限定されず、例えば、屈曲部53の長手方向Lの全体に亘って設けられるものであってもよい。
【0065】
・膨出部57は、省略することができる。
・固定部56の数、形状、及び配置は、本実施形態で例示したものに限定されず、適宜変更することができる。例えば、固定部56は、本実施形態で例示したような第2部分52を板厚方向に貫通する孔に限定されず、第2部分52の板厚方向の両面にそれぞれ設けられた凹部であってもよい。
【0066】
・切欠部55は、省略することができる。
・第1貫通孔54A及び第2貫通孔54Bの形状は、長手方向Lに長い長円形状に限定されず、円形状や矩形状などに適宜変更してもよい。
【0067】
・第2貫通孔54Bは、凹部43と対応する位置に設けられるものに限定されず、その配置を適宜変更してもよい。
・第2貫通孔54Bは、本実施形態では第1部分51及び屈曲部53に跨るように設けられたものを例示したが、第1部分51のみに設けられるものであってもよいし、第2部分52のみに設けられるものであってもよい。
【0068】
・第2貫通孔54Bは、省略することができる。
・金属部材50の全体が樹脂部材40に覆われるものでなくてもよい。例えば、長手方向Lにおける金属部材50の両端部が樹脂部材40により覆われていないものであってもよい。この場合、上記端部の面取り工程を省略することができる。また、この場合、固定部を上記端部に設けるようにしてもよい。
【0069】
・第2部分52は、本実施形態で例示したような幅方向Wに沿って延在するものに限定されず、例えば、仮想平面Vに沿うとともに高さ方向Hに交差する方向に沿って延在するものであってもよい。
【0070】
・本発明に係るインサート成形品は、本実施形態で例示したようなヨークレバー25に限定されず、例えば、金属部材50が樹脂部材40の内部に埋設されているインサート成形品であれば、本発明を適用することができる。この場合、樹脂部材40から凹部43,45及び把持部46を省略することができる。
【0071】
・金属部材50は、平板状であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
H…高さ方向
L…長手方向
R…溶融樹脂
V…仮想平面
W…幅方向
10…ワイパアーム
11…取付部
20…ワイパブレード
21…ブレードラバー
21a…溝部
22…レバー
23…メインレバー
23A…中央部
23B…腕部
24…ウイング
25…ヨークレバー
26…収容孔
26a…開口部
27…把持部
27a…把持片
28…バッキング
30…連結部材
40…樹脂部材
41…第1壁部
41a…端面
41b…端面
41c…端面
42…第2壁部
42a…端面
43…凹部
44…ゲート痕
45…凹部
46…把持部
46a…把持片
50…金属部材
51…第1部分
52…第2部分
52a…端面
53…屈曲部
54A…第1貫通孔
54B…第2貫通孔
55…切欠部
56…固定部
57…膨出部
60…成形型
61…第1型
62…第2型
63…キャビティ
64…ゲート
図1
図2
図3
図4
図5
図6