IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ナガセインテグレックスの特許一覧

<>
  • 特許-工作機械 図1
  • 特許-工作機械 図2
  • 特許-工作機械 図3
  • 特許-工作機械 図4
  • 特許-工作機械 図5
  • 特許-工作機械 図6
  • 特許-工作機械 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20231218BHJP
   B23Q 1/58 20060101ALI20231218BHJP
   B23Q 5/28 20060101ALI20231218BHJP
   B23Q 5/54 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B23Q11/00 A
B23Q1/58 Z
B23Q5/28 B
B23Q5/54 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021124973
(22)【出願日】2021-07-30
(62)【分割の表示】P 2018025127の分割
【原出願日】2018-02-15
(65)【公開番号】P2021167066
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000150604
【氏名又は名称】株式会社ナガセインテグレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】板津 武志
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-075902(JP,A)
【文献】特開2015-190572(JP,A)
【文献】特開2015-163031(JP,A)
【文献】特開2000-158256(JP,A)
【文献】特開2013-110838(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0094917(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B23Q 1/00-1/76
B23Q 5/28、5/54
F16F 15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の脚部とその両脚部の上端間の架設部とを有するフレームと、ワークを加工するための工具をそれぞれ支持した2個の移動体を有し、前記各移動体をリニアモータによって前記架設部上において水平移動させるようにした工作機械において、
前記リニアモータは、前記架設部の前面に前記架設部の長さ方向に延在するように設置された一対のステータと、前記一対のステータに対応して前記各移動体にそれぞれ設けた一対のコイルユニットと、を有し、
前記架設部における前記ステータの間に、前記ステータの延在方向に延びるブレーキプレートを固定し、
前記各移動体に、前記ブレーキプレートを両側から押圧するブレーキパッドを設け、
電源から切り離された状態の前記コイルユニットのコイルを短絡させる短絡手段を設け、
前記短絡手段を、前記各移動体に対応する前記リニアモータのオン・オフを切換えるためのメインスイッチと連携するサブスイッチによって構成し、前記サブスイッチは前記メインスイッチが開かれたときに閉じられ、前記メインスイッチが閉じられたときに開かれるものであり、
前記2個の移動体のうち、いずれか一方の移動体に対応する前記メインスイッチが閉じられたときは他方の移動体に対応する前記メインスイッチくことができる工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば門形のフレームを有する工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械においては、加工機構部に対して外部からの振動が伝達されると、加工精度が低下する。このため、一般には振動の伝達系内に制振構成が設けられることが多い。例えば、特許文献1の技術においては、伝達系内に吸振のための弾性部材が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-257191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、弾性部材を備えた従来の制振機構においては、弾性部材の剛性が高いと吸振機能が十分ではなく、従って、振動吸収機能が十分ではないために、振動によって加工精度が低下しやすい。逆に弾性部材の剛性を低くして吸振機能を向上させると、その機械的剛性低下によって加工精度が低下しやすい。
【0005】
本発明の目的は、加工機構部に対して伝達される振動を適切に抑制できる工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明においては、ワークを加工するための工具をフレーム上に有するとともに、電磁石駆動手段によって移動体を前記フレーム上において移動させるようにした工作機械において、前記電磁石駆動手段のコイルを移動体に設け、電源から切り離された状態の前記コイルを短絡させる短絡手段を設けた。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フレームに作用する振動を適切に抑制できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の工作機械の斜視図。
図2図1の工作機械のリニアモータ部分の簡略図。
図3図1の工作機械の電気的構成を示す回路図。
図4】第2実施形態の工作機械を示す簡略図。
図5図4の工作機械の電気的構成を示す回路図。
図6】第3実施形態の工作機械の正面図。
図7図6の工作機械の連結手段の部分を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態の工作機械を図1図3の図面に基づいて説明する。
【0010】
図1に示すように、床面11上には、一対の平行なレール12が敷設され、両レール12間の床面11の固定位置にはテーブル13が設置されている。テーブル13上にワーク100がセットされる。
【0011】
レール12には、一対の脚部14と、両脚部14の上端間においてレール12と直交する方向に延びる架設部15とよりなる橋脚形状のフレーム16がレール12上を移動可能に支持されている。
【0012】
架設部15の前面には、その長さ方向に沿って延びるガイドレール(図示しない)が設置され、そのガイドレールにはそれぞれ第1移動体17及び第2移動体18が架設部15の延長方向、言い換えれば床面11上の前記レール12の延長方向とは直交する方向に沿って移動可能に支持されている。第1移動体17の前面には、第1工具19が昇降可能に搭載されている。第2移動体18の前面には、第2工具20が昇降可能に搭載されている。本実施形態において、第1,第2工具19,20は回転砥石によって構成され、それらの回転砥石は回転軸線の向きが異なる。そして、フレーム16のレール12上における一方向への移動、第1,第2移動体17,18の前記一方向とは直交する方向への移動及び第1,第2工具19,20の昇降をともないながら、第1工具19及び第2工具20によってテーブル13上に設置されたワーク100に対して所要の加工が施される。
【0013】
図2に示すように、フレーム16の架設部15の前面には、それぞれ電磁石駆動手段を構成するサーボモータとしてのリニアモータ31の一対のステータ33が架設部15の長さ方向に延在するように設置されている。両ステータ33は、複数の永久磁石35を列設して構成されている。従って、両ステータ33はそれぞれ磁界発生手段を構成している。
【0014】
第1移動体17及び第2移動体18には、前記リニアモータ31のステータ33にそれぞれ対応するコイルユニット36,37がそれぞれ一対ずつ支持されている。この各コイルユニット36,37は、図3に示すように、電磁石を構成する複数のコイル36a,37aをそれぞれ備えている。なお、図3においては、各一対のコイルユニット36,37のうち一方のみが図示されている。そして、コイルユニット36,37の各コイル36a,37aに一方向及びその逆方向の直線進行磁界が生じることにより、第1移動体17及び第2移動体18はステータ33の延長方向に一方向及びその逆方向に移動される。
【0015】
前記架設部15には、前記ステータ33の延長方向に延びるブレーキプレート61が固定されている。第1,第2移動体17,18にはブレーキパッド62が設けられている。そして、第1,第2移動体17,18の停止時には、ブレーキパッド62が作動されて、第1,第2移動体17,18が機械的制動状態にされる。ただし、ブレーキパッド62による制動時であっても、架設部15の微小振動は、第1,第2移動体17,18にはほとんど伝達されず、言い換えれば、この機械的制動によって架設部15の振動を抑えることは、ほとんどできない。
【0016】
図3に示すように、電源回路(図示しない)を含む制御装置41には三相の給電線42,43をそれぞれ介して前記コイルユニット36,37のコイル36a,37aが接続されている。
【0017】
制御装置41とコイルユニット36,37のコイル36a,37aとの間において、給電線42,43にはそれぞれ電源スイッチとしての第1,第2スイッチ44,45のメイン端子46.47がそれぞれ設けられている。そのメイン端子46,47には第1,第2スイッチ44,45のメイン接点48,49がそれぞれ開閉可能に対向している。第1,第2スイッチ44,45は手動操作されるものであって、メイン接点48,49は、第1,第2スイッチ44,45のオン操作によって閉じられる。
【0018】
前記スイッチ44,45とコイルユニット36,37との間において、給電線42,43には分岐線51,50の一端が接続され、両分岐線51,50の他端には三相を短絡させる短絡部53,52となっている。両分岐線51,50には、サブ端子55,54がそれぞれ設けられている。サブ端子55,54には第1,第2スイッチ44,45のサブ接点57,56がそれぞれ開閉可能に対向している。このサブ接点57,56は、第1,第2スイッチ44,45のオンによって開放される。すなわち、サブ接点57,56は、メイン接点48,49が開放されたときに閉じられる。本実施形態においては、前記短絡部53,52,サブ端子55,54及びサブ接点57,56により短絡手段が構成されている。
【0019】
次に、以上のように構成された工作機械の作用を説明する。
第1スイッチ44がオンされると、第1移動体17のコイルユニット36における複数のコイル36aに対して直線進行磁界を励起するための電圧が付与される。また、第2スイッチ45がオンされると、第2移動体18のコイルユニット37における複数のコイル37aに対して直線進行磁界を励起するための電圧が付与される。このため、第1移動体17及び第2移動体18の一方または双方が所要の方向に移動されて、第1工具19または第2工具20がワーク100を加工する。
【0020】
例えば、ワーク100の加工のために、第1スイッチ44がオンされるとともに、第2スイッチ45がオフされた状態においては、第2スイッチ45のサブ接点56が閉じた状態にある。この状態においては、第1移動体17のコイルユニット36のコイル36aに対して所要の駆動電流が供給される。このため、第1移動体17が所要の速度で所要位置に向かって移動されて、第1工具19によってワーク100に対する加工が実行される。
【0021】
このときには、前記のように、第2スイッチ45がオフされて、第2スイッチ45のメイン接点49が開放されるとともに、第2スイッチ45のサブ接点56が閉じた状態にあり、第2コイルユニット37のコイル37aが制御装置41の電源から切り離された状態で短絡状態に設定されている。
【0022】
そして、この状態において、外部からフレーム16の架設部15に対して振動が付与されて、リニアモータ31の永久磁石35を有するステータ33が振動されようとすると、第2コイルユニット37のコイル37aが電気的に短絡状態にあるため、コイル37aに起電力が生じる。従って、磁界を介してステータ33と第2移動体18のコイルユニット37とが拘束される。このため、第2移動体18の質量負荷に起因して、フレーム16の振動に対してブレーキが作用される。このため、フレーム16の振動が抑制される。
【0023】
逆に、第2スイッチ45がオンされるとともに、第1スイッチ44がオフされた状態においては、第1スイッチ44のサブ接点57が閉じた状態にある。この状態においては、第2移動体18側である第2移動体18のコイルユニット37のコイル37aに対して所要の駆動電流が供給される。このため、第2移動体18が所要の速度で所要位置に向かって移動されて、第2工具20によってワーク100に対する加工が実行される。
【0024】
このときには、第1スイッチ44のサブ接点57が閉じた状態にあり、第1コイルユニット36のコイル36aが給電回路の電源から切り離された状態で短絡状態に設定されている。
【0025】
この状態において、この状態において、外部からフレーム16の架設部15に対して振動が付与されて、リニアモータ31の永久磁石35を有するステータ33が振動されようとすると、コイル36aが電気的に短絡状態にあるため、第1コイルユニット36のコイル36aに起電力が生じる。従って、磁界を介してステータ33と第1移動体17のコイルユニット36とが拘束される。このため、第1移動体17の質量負荷に起因して、フレーム16の振動に対してブレーキが作用される。このため、フレーム16の振動が抑制される。
【0026】
以上のように、一方の移動体17,18が稼動状態にあるときに、他方の移動休止状態の移動体18,17とリニアモータ31との間の磁気力により、フレーム16の振動が抑制される。
【0027】
従って、本実施形態においては、以下の効果がある。
(1)リニアモータ31の磁気力に起因した拘束力により、フレーム16の振動が抑制されるため、工作機械の外部からの振動などによる加工機構部の振動を抑制できて、ワーク100に対する加工精度を向上できる。
【0028】
(2)第1,第2移動体17,18を移動させるためのリニアモータ31の磁気力を利用して制振作用を得るようになっているため、制振のための機構を設ける必要がなく、構成が簡単である。
【0029】
(第2実施形態)
第2実施形態の工作機械を図4及び図5に基づいて説明する。
本実施形態においては、図4及び図5に示すように、前記第1実施形態のリニアモータ31に加えて、制振専用リニアモータ70が設けられている。制振専用リニアモータ70のステータ28は短いものでよく、質量体を構成する移動体25のコイルユニット29は前記実施形態と同様な構成である。移動体25には質量負荷の大部分を構成するウェイト30が設けられている。コイルユニット29のコイル29aは、短絡部63を構成する給電線43を介して短絡されている。リニアモータ31のコイルユニット36,37のための前記実施形態における第1,第2スイッチ44,45のサブ端子55,54及びサブ接点57,56は設けられていない。そして、フレーム16の振動に対して制振専用リニアモータ70の作用によって前記実施形態と同様に制振作用が発揮される。
【0030】
第2実施形態においては、以下の効果がある。
(3)制振専用リニアモータ70が設けられているため、リニアモータ31及び第1,第2移動体17,18がどのような状態であっても、例えば、第1,第2移動体17,18の双方が稼働中であっても、制振作用を発揮することができる。
【0031】
(第3実施形態)
第3実施形態の工作機械を図6及び図7に基づいて説明する。
本実施形態においては、図6及び図7に示すように、フレーム16における架設部15の上面中央に制振装置71が搭載されている。この制振装置71は、前記架設部15に固定されたフレームケース72を備え、そのフレームケース72の内上面に絶縁材よりなる可撓ワイヤ73を介して導電部材としての銅やアルミニウム等の導電板74が吊下されている。導電板74の上面には鉄などの重量材よりなるウェイト75が固定されている。そのウェイト75と対向するように、架設部15の上面には永久磁石などよりなる磁石76が固定されている。
【0032】
そして、フレーム16に振動が伝達されると、磁石76にも振動が伝達される。このため、磁石76と導電板74との間に、渦電流に起因した磁界が生じるため、その磁界を介して磁石76,すなわちフレーム16とウェイト75とが拘束される。結果として、ウェイト75の質量によってフレーム16の振動が抑制されて、高精度加工に寄与する。
【0033】
従って、本実施形態においては、以下の効果がある。
(4)フレーム16に制振装置71を設けることにより、フレーム16の振動を抑制できる。このため、工具を支持する移動体は、リニアモータに限らず、油圧駆動装置など、どのような駆動手段を用いてもよい。
【0034】
(変更例)
本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様で具体化してもよい。
【0035】
・前記第1,第2実施形態においては、電磁駆動手段としてリニアモータを用いたが、回転型のサーボモータ,パルスモータなどの他の電磁駆動手段を用いること。
・リニアモータ31や制振専用リニアモータ70のステータ33,28の永久磁石35を電磁石に変更すること。
【0036】
・前記各実施形態においては、工具を回転砥石としたが、回転砥石に代えて、ドリル,エンドミルなどの他の工具を用いること。
・工具を移動させるためのリニアモータ,すなわち電磁駆動手段を1または3以上設けること。
【0037】
図3に示すサブ接点57,56をメイン接点49,48と連係させることなく、単独で切換えられるように構成すること。
・フレーム16を移動させることなく、テーブル13をレール上に支持してレール上を移動させる構成にしたり、フレーム16及びテーブル13の双方をレール上において移動させる構成にしたりすること。
【0038】
・フレーム16及び移動体17,18の双方にステータ及びコイルユニットをそれぞれ設けること。従って、この構成においては、磁界発生手段がフレーム16及び移動体17,18の双方に設けられる。
【0039】
・本発明を、門形のフレーム16に代えて、ベッド上の複数のコラムにそれぞれリニアモータによって動作される移動体を昇降可能に支持すること。このような構成においては、ひとつのコラム側のブレーキ作用によって工作機械全体の振動を抑制できる。
【符号の説明】
【0040】
14…脚部、15…架設部、16…フレーム、17…第1移動体、18…第2移動体、19…第1工具、20…第2工具、31…リニアモータ、36a…コイル、37a…コイル、44…第1スイッチ、45…第2スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7