(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】電気化学蓄電デバイスの熱管理
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6556 20140101AFI20231218BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20231218BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20231218BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20231218BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20231218BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20231218BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20231218BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/613
H01M10/651
H01M10/6568
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/633
(21)【出願番号】P 2021546191
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 US2019055715
(87)【国際公開番号】W WO2020081372
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-02
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521162861
【氏名又は名称】エレクトリック パワー システムズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ダン, ランディ
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04292381(US,A)
【文献】特表2014-501024(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0342201(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0233564(US,A1)
【文献】特表2016-524281(JP,A)
【文献】特開2008-108648(JP,A)
【文献】特開2011-060755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6556
H01M 10/613
H01M 10/651
H01M 10/6568
H01M 10/615
H01M 10/625
H01M 10/633
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリシステムであって、前記バッテリシステムは、
内部空洞を有するシールされたケースと、
前記内部空洞の中に配置される内部電極スタックと、
第1の端子であって、前記第1の端子は、
第1の冷却剤入口と、
前記第1の冷却剤入口に結合される第1の流体導管と、
を備える、第1の端子と、
前記第1の流体導管および前記内部空洞と流体連通する第1の分注ポートと、
前記第1の分注ポート内に配置される第1の感熱プラグと
を備える、バッテリシステム。
【請求項2】
前記第1の流体導管に結合される第1の冷却剤出口をさらに備え、熱伝達流体が、前記第1の冷却剤入口、前記第1の流体導管、および前記第1の冷却剤出口を通して流動するように構成される、請求項1に記載のバッテリシステム。
【請求項3】
熱伝達流体が、通常動作条件下で、前記第1の流体導管の中で静的なままであるように構成される、請求項1に記載のバッテリシステム。
【請求項4】
前記熱伝達流体は、前記第1の分注ポートを通して前記シールされたケースの内部空洞の中に放出され、前記内部電極スタックに接触し、熱暴走事象を防止するように構成される、請求項3に記載のバッテリシステム。
【請求項5】
前記第1の感熱プラグは、ある温度閾値において融解し、前記熱暴走事象の間に、前記熱伝達流体を前記第1の分注ポートを通して放出するように構成される、請求項4に記載のバッテリシステム。
【請求項6】
第2の冷却剤入口と、前記第2の冷却剤入口に結合される第2の流体導管とを備える第2の端子をさらに備え、前記バッテリシステムは、前記第2の流体導管および前記内部空洞と流体連通する第2の分注ポートと、前記第2の分注ポート内に配置される第2の感熱プラグとをさらに備える、請求項1に記載のバッテリシステム。
【請求項7】
電極スタックアノードと、電極スタックカソードとをさらに備え、前記第1の端子は、前記電極スタックアノードに電気的に結合され、前記第2の端子は、前記電極スタックカソードに電気的に結合される、請求項6に記載のバッテリシステム。
【請求項8】
前記シールされたケースに結合される通気ポートをさらに備え、前記通気ポートは、熱暴走事象の間に、前記内部空洞の中の前記熱伝達流体から形成される蒸気を通気するように構成される、請求項2に記載のバッテリシステム。
【請求項9】
前記通気ポートに結合される圧力解放弁をさらに備える、請求項8に記載のバッテリシステム。
【請求項10】
前記熱伝達流体からの前記蒸気の温度が、前記熱暴走事象の間の前記内部電極スタックの電解質の引火点を下回る、請求項8に記載のバッテリシステム。
【請求項11】
バッテリ内の温度を制御する方法であって、前記方法は、
熱暴走における電極スタックに応答して第1の感熱弁を融解することであって、前記第1の感熱弁は、第1の端子の第1の分注ポートの中に配置され、前記第1の分注ポートは、前記第1の端子の中に配置される流体導管に結合される、ことと、
前記熱暴走における電極スタックに応答して第2の感熱弁を融解することであって、前記第2の感熱弁は、第2の端子の第2の分注ポートの中に配置され、前記第2の分注ポートは、前記第2の端子の中に配置される第2の流体導管に結合される、ことと
を含む、方法。
【請求項12】
第1の熱伝達流体を、前記第1の分注ポートを通して前記バッテリのシールされたケースの中に放出することであって、前記シールされたケースは、前記電極スタックを取り囲む、ことと、
第2の熱伝達流体を、前記第2の分注ポートを通して前記バッテリの前記シールされたケースの中に放出することと
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の感熱弁を融解することに先立って、前記第1の熱伝達流体を、前記第1の端子の第1の冷却剤入口を通して前記第1の端子の第1の流体導管の中に、および前記第1の端子の第1の冷却剤出口の外に流動させることと、前記第2の熱伝達流体を、前記第2の端子の第2の冷却剤入口を通して前記第2の端子の前記第2の流体導管の中に、および前記第2の端子の第2の冷却剤出口の外に流動させることとをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の熱伝達流体および前記第2の熱伝達流体が前記電極スタックの電解質に接触することに応答して、前記第1の熱伝達流体および前記第2の熱伝達流体を蒸発させることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
蒸発された熱伝達流体を通気孔の外に排出することをさらに含み、前記通気孔は、前記シールされたケースに結合され、前記シールされたケースの内部空洞と流体連通する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年10月15日に出願された「THERMAL MANAGEMENT OF ELECTROCHEMICAL STORAGE DEVICES」と題された米国仮出願第62/745,747号に対する優先権を主張し、その開示が、そのような開示が本開示と矛盾しない範囲で、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、概して、バッテリに関し、より具体的には、複数の電気化学電池または静電電池から成る二次バッテリに関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術の節において議論される主題は、単に、背景技術の節におけるその言及の結果として先行技術であると想定されるべきではない。同様に、背景技術の節において言及されるまたは背景技術の節の主題と関連付けられる問題は、先行技術において以前から認識されていると想定されるべきではない。背景技術の節における主題は、単に、それ自体が発明であり得る異なるアプローチを表している。
【0004】
二次バッテリは、荷電され、必要とされるときには電力または放出電荷のための静電位を提供することができる1つ以上の電気化学電池または静電電池から成るデバイス(以下では、集合的に「電池」と称される)である。電池は、基本的に、少なくとも1つの正電極と、少なくとも1つの負電極とから成る。そのような電池の1つの一般的な形態は、円筒形の金属缶の中または角柱ケースの中にパッケージ化される周知の二次電池である。そのような二次電池の中で使用される化学物質の実施例は、コバルト酸リチウム、リチウムマンガン、リン酸鉄リチウム、ニッケルカドミウム、ニッケル亜鉛、およびニッケル水素である。他のタイプの電池は、電解質、タンタル、セラミック、磁気の形態でもたらされることができるコンデンサを含み、一群の超およびウルトラコンデンサを含む。そのような電池は、持ち運び可能な電子機器のための低コストの再充電可能エネルギーを要求する増大し続ける消費者市場によって駆り立てられ、大量生産される。エネルギー密度は、電池の質量に対する電池の総利用可能エネルギーの尺度であり、通常、1キログラムあたりのワット時間(すなわち、Wh/kg)において測定される。電力密度は、電池の質量に対する電池の電力送達量の尺度であり、通常、1キログラムあたりのワット(すなわち、W/kg)において測定される。エネルギー密度およびコストは両方とも、Marcy Lowe、Saori Tokuoka、Tali Trigg、およびGary Gereffiによって編集された「Lithium-ion Batteries for Hybrid and All-Electric Vehicles: the U.S. Value Chain」(該教示は、参照により本明細書に援用される)に文書化されているように、走行用バッテリの価値の重大なメトリックである。
【0005】
所望の動作電圧レベルを達成するために、電池は、直列に電気的に接続され、典型的にはバッテリと称される電池のバッテリを形成する。所望の電流レベルを達成するために、電池は、並列に電気的に接続される。電池が、バッテリに組み立てられると、電池は、多くの場合、各電池に溶接、はんだ付け、または他の態様で締結されて所望の構成においてそれらをともに連結する金属帯板、ストラップ、ワイヤ、バスバー等を通してともに電気的に連結される。
【0006】
二次バッテリは、多くの場合、電気自動車を推進するために、走行用モータを駆動するために使用される。そのような車両は、電気自転車、オートバイ、自動車、バス、トラック、電車等を含む。そのような走行用バッテリは、通常、内部でともに連結され、ケースの中に配設され、組み立てられたバッテリを形成する、数百個または数千個、もしくはそれを上回る個々の電池を伴って、大型である。
【0007】
そのような電池の故障モードは、熱暴走としても公知である発熱事象を含む。この特徴は、航空機内、車両内等のある用途、または医療用途におけるそのような電池の使用を非常に危険にする。熱暴走の一般的な原因は、過充電、外部短絡、または内部短絡を含む。過充電および外部短絡は、ヒューズならびに過電圧接続解除デバイスの使用によって防止されることができる。しかしながら、そのようなデバイスは、電池に内在する実質的に大きいアノード/カソード間のインターフェースを横断して短絡を停止するための実践的な方法が存在しないため、内部短絡を防止することにおいて効果的がない。正の熱係数デバイスが、時として、便宜上および改善される安全性のために、電池の内側において配設されるが、正の熱係数デバイスは、それらがその回路の外側において常駐するため、依然として、アノードからカソードへの内部短絡を停止することが不可能である。機械的または電子的を問わず、回路遮断デバイスが、過充電に対して保護することができるが、それらがまた、アノードからカソードへの回路の外側にあるため、それらは、内部短絡に対して保護するためにいかなることを行うことも不可能である。
【0008】
熱事象は、各々が含有する多数の電池を前提として、前述の走行用バッテリに実質的な脅威をもたらす。熱事象の確率は、バッテリ内の他の電池への熱事象のカスケードに関する可能性がそうであるように、電池の数に伴って増加し、事象の全体的影響の可能性の増加をもたらす。故に、ある形態の熱暴走軽減が、バッテリの全体的安全性にとって有益である。
【0009】
電気的非導電性ハイドロフルオロエーテル流体中に浸漬される電池を有するという新規の解決策が、保守を要求するまたは故障し易いポンプまたは他の複雑な装置の必要性を伴わずに熱暴走を軽減させることが、米国公開第2009/0176148号A1に教示されている。この特許出願は、熱伝達流体で充填される容器の中へのバッテリの浸漬、および、熱伝達流体で少なくとも部分的に充填される熱交換器の含有を開示する。流体は、液体または気体であり、好ましくは、低沸点(例えば、80℃未満またはさらに50℃未満)を有するハイドロフルオロエーテル(HFE)等の熱伝達流体である。この流体の気化は、浸漬されるバッテリからの熱除去に寄与する。
【0010】
HFEは、例えば、商標名NOVECエンジニアリング流体(3M Company(St. Paul, Minn.)から入手可能)またはVERTREL特殊流体(DuPont(Wilmington, Del.)から入手可能)として入手可能である。特に、前述の特許内の実施形態に関して有用なHFEは、NOVEC 7100、NOVEC 7200、NOVEC 71 IPA、NOVEC 71DE、NOVEC 71DA、NOVEC 72DE、およびNOVEC 72DAを含み、全て3Mから入手可能である。上記に述べられる特許出願において説明されるように、該流体内に浸漬される電池は、流体の気化に起因して、熱暴走の状態に陥らない。流体中に電池を浸漬することは、電池の発火点を優に下回る温度における熱除去に効果的である。これは、通常そのような事象を誘発することが公知である標準的な慣行を使用した繰り返される短絡試行にもかかわらず、当てはまることが実証されている。
【0011】
バッテリの安全性を改良することに対するこのアプローチの欠点は、伝達流体としての気体および/または液体への依拠である。HFEは、特に、非常に易滑性の材料であり、バッテリパックケース内の気体または液体は、任意の開口部が、衝撃によってまたは直接的な浸透を通して等、ケース内に形成されることに応じて、逃散する傾向がある。いくつかの事例では、リザーバが、ケースを通した材料の経時的損失を軽減させるために追加され得る。リザーバは、経時的に逃散する冷却剤に対するバックアップを提供する。これはまた、必要とされるときにバッテリの中に付加的な冷却剤を提供する恩恵も追加している。
【0012】
これらのアプローチの両方に対する1つの欠点は、大規模な走行用バッテリにそのような解決策を実装するために要求される材料の質量にある。これらの設計を履行するために要求される流体の量は、バッテリ全体が、冷却剤で満ちており、説明される冷却剤プール内にさらにより多くの冷却剤の質量が有保されるため、相当なものである。HFEは、非常に重く、典型的には、水の質量密度の2倍である。バッテリは、典型的には、すでに、車両全体の質量の大きい部分を含むため、これは、走行用バッテリにとって非常に不利である。上記に記載されるように、重量エネルギー密度は、走行用バッテリの価値に対する重大なメトリックである。熱事象を停止させるための能力が存在するが、影響を及ぼされる電池または複数の電池は、依然として、熱事象を引き起こすための能力を留保する。熱が、除去されているが、電池は、内部的に影響を受けない。外部エネルギー源が、付加的なリザーバ内に貯蔵されるいかなる予備分も含めて、利用可能な冷却剤の冷却能力を超過する持続的過充電条件の場合におけるように、冷却剤が使い果たされた場合、電池は、次いで、熱事象状況に入り得る。先行技法は、電池を動作不可能にするまたは電池を「安全」にする方法に対処していない。
【0013】
そのような多くの材料の使用に対する別の欠点は、そのコストである。典型的には、HFEは、約米国$60/kgのコストがかかる。米国第2009/0176148号は、具体的には、比較実施例において使用される流体の量を開示していないが、これは、電池が浸漬されることを記載している。電池の浸漬は、電池体積の少なくとも20%であると想定される。実験内で使用されるA123電池は、1.7kg/lの密度を有し、HFEは、2kg/lの密度を有する。この査定に基づいて、A123電池を備える、エネルギーが100kWhの大型走行用バッテリを単に浸水させることは、951kgの質量を有し、223kgの冷却剤を要求する。これは、電池単独と比較すると、23%の質量オーバーヘッドである。冷却剤は、2018年価格において米国$13,425のコストがさらにかかり、米国$30,000の電池コストと比較すると、これは、電池単独と比較して、44%のコストオーバーヘッドである。上記に引用されるように、全体的コストは、走行バッテリの価値に対する重大なメトリックである。
【0014】
先行技術の前述の欠点に加えて、1つの主な欠陥は、それらが電池の外部でのみ稼働する方法である。米国公開第2009/0176148号A1に関する事例は、加熱の間に膨張しない円筒形の堅性硬質ケースである。広く使用される軟質パウチ電池に対しても、多くの場合にプラスチックまたは薄壁状可撓性金属を採用する角柱電池に対しても、言及は、行われていない。これらのケースは、先行技術の教示のいずれにも好都合に応答していない。主な理由は、ケース自体の固有の可撓性である。誘発された熱事象の間、内部的に発生される気体が、ケースを押進し、膨隆させる。電池の中の電極が、これらの気体によって満たされる間隙によって電池ケースから分離される。これは、内部熱発生源である電極と冷却剤が熱反応することを妨げる。冷却剤が熱事象に影響を及ぼすための能力が、実質的に妨害され、ケースは、依然として、熱暴走の状態に陥り得る。
【0015】
質量およびコストに対する最小限の影響を伴う、バッテリを過熱する影響を軽減するための方法ならびに構造が、望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許出願公開第2009/0176148号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
以下は、本教示の1つ以上の実施形態のいくつかの側面の基本的理解を提供するために、簡略化された概要を提示する。この概要は、広範囲にわたる概観ではなく、これは、本教示の重要なまたは重大な要素を識別することも、本開示の範囲を記述することも意図していない。むしろ、その主な目的は、単に、後に提示される詳細な説明に対する前置きとして、1つ以上の概念を簡略化された形態において提示することである。
【0018】
本教示のある実施形態では、バッテリシステムは、シールされたケースを備える1つ以上の電池を含むことができ、ケース内に配置されるものは、電極のセットと電解質とを備える電気化学電池である。シールされたケースは、少なくとも1つの圧力逃がし弁を含む。電極は、典型的には薄い分離器によって隔離される少なくとも1つのアノードと少なくとも1つのカソードとを備える。少なくとも1つのアノードは、電池のシールされたケースの内部および外部に存在する導電性かつ熱伝導性の負端子に接続される。少なくとも1つのカソードは、電池のシールされたケースの内部および外部に存在する導電性かつ熱伝導性の正端子に接続される。導電性かつ熱伝導性の端子の一方または両方は、従来の方式においてシステム内の電池の電気接続を可能にするための電気取付機構を含んでもよい。導電性かつ熱伝導性の端子の一方または両方は、端子の中および端子から外への冷却剤の通過のための少なくとも1つの冷却剤入口と少なくとも1つの冷却剤出口とを含んでもよい。導電性かつ熱伝導性の端子の一方または両方(以下において、「冷却端子」と称される)は、冷却端子を通した冷却剤の通過を可能にするための通路を内部的に備える。冷却端子は、電極に熱的に近接する少なくとも1つの感熱アクチュエータを含む。
【0019】
導電性ではなくかつ自然引火点を有していない低沸点を伴う具体的な非導電性のハイドロフルオロエーテルまたは類似する熱流体(以下において、「熱流体」と称される)が、冷却端子内に適用される。この流体は、静的であり得る、または、随意に、冷却端子を通して循環され得る。循環は、あるタイプのポンプ装置、熱流体から熱を除去するまたは熱流体に熱を添加するためのある方法を用いる熱交換器を使用して、従来の方法において管理されてもよい。通常の動作では、端子を通した冷却剤の通過は、冷却端子の温度を制御するための機構を提供する。冷却端子は、電池ケース内の電極に熱的に接続されるため、所望に応じて、電極を冷却または加熱するための直接的方法を提供する。このように電池温度を直接制御することによって、本システムは、ケース壁を通して電池を冷却または加熱する必要はない。これは、ケースが、プラスチック等の非熱伝導性材料から作製されることを可能にする。プラスチックの恩恵は、コストおよび断熱である。断熱は、バッテリシステムの中の緊密に充塞された電池にわたる、電池間の熱暴走伝搬を軽減させることに役立つ。
【0020】
本開示の別の恩恵は、これが熱暴走事象を管理する方法である。電池は、十分に加熱した場合、これは、冷却端子の中の少なくとも1つの感熱アクチュエータが、開放し、それによって、電極および電解質の上に直接浸水する熱流体を放出することを可能にする。熱流体は、相変化、気化によって電極を冷却し、圧力を増加させ、それによって、少なくとも1つの排気通気孔を通した換気を強制し、熱事象を放出および抑制する。電極が公称電圧の1.5倍および電流定格の8倍に過充電される過充電を通したポリマーパウチタイプのリチウム電池の実験を通して、注目に値する観察が、行われた。電解質気化プロセスの間(例えば、熱流体および電解質が両方とも、熱に起因して同時に気化しているとき)、2つの流体から結果として生じる水蒸気が、熱流体が電極の多孔性空洞の中に深く浸水するにつれて、密接に混合することが、観察されている。結果として生じる水蒸気混合物が、電解質より実質的に大量に存在する熱流体からこの特徴を継承し、冷たくて非可燃性のままであることが、観察されている。熱流体(この場合では、61℃の沸点を有する商業的に入手可能なNOVEC 7100)は、70℃を下回る非常に低電極温度を維持し、約150秒で電解質とともに沸騰する。この時間の後、電解質は、電池ケースの外側において安全に排出され、電極は、その後、不活性にされ、いかなる充電、放電、および電流を受入することも、またはいかなる熱を発生させることも不可能になる。これは、過充電または短絡あるいは他の外部刺激の原因が、任意の具体的な時間において止むことが常時確実であるとは限らないため、並外れて有益である。これは、持続的に入手可能な冷却剤または外部源の除去に依存しかつ電池を本質的に不活性にしない先行技術に優って有益である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本明細書によって本明細書に組み込まれかつ本明細書その一部を成す付随の図面は、本開示の実施形態を図示し、説明とともに、本発明の原理を解説する役割を果たす。図面では、同様の参照番号は、同様の部分を表す。
【0022】
【
図1】
図1は、例示的実施形態による、組み立てられたバッテリの平面図を図示する。
【0023】
【
図2】
図2は、バッテリの中の温度を制御する方法を図示する。
【0024】
【
図3】
図3は、例示的実施形態による、熱暴走事象を防止する方法を図示する。
【0025】
【
図4】
図4は、例示的実施形態による、
図1からのバッテリ端子を有するバッテリシステムの断面の詳細図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の説明は、種々の例示的実施形態にすぎず、本開示の範囲、可用性、または構成をいかようにも限定することを意図していない。むしろ、以下の説明は、ベストモードを含む種々の実施形態を実装するための便宜的な例証を提供することを意図している。明白になるように、種々の変更が、添付の請求項の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態において説明される要素の機能および配列に成され得る。例えば、方法またはプロセス説明のいずれかにおいて列挙されるステップは、任意の順序において実行されてもよく、必ずしも提示される順序に限定されない。また、製造機能またはステップの多くが、1人以上の第三者に外部委託されてもよい、または、1人以上の第三者によって実施されてもよい。さらに、単一の実施形態に対するいかなる参照も、複数の実施形態を含み、1つより多い成分またはステップに対するいかなる参照も、単一の実施形態またはステップを含み得る。また、「取り付けられる」、「固定される」、「接続される」、または同等物のいかなる参照も、恒久的、除去可能、一時的、部分的、完全、および/または任意の他の可能性として考えられる付属選択肢を含み得る。本明細書で使用される場合、用語「結合される」、「結合する」、またはそれらの任意の他の変形例は、物理的接続、電気接続、磁気接続、光学接続、通信接続、機能接続、および/または任意の他の接続を網羅することを意図している。
【0027】
簡潔にするために、機械システムの構築、管理、動作、測定、最適化、および/または制御のための従来の技法、ならびに機械電力の伝達、変調、制御、および/または使用のための従来の技法が、本明細書では詳細に説明されない場合がある。さらに、本明細書に含有される種々の図面に示される接続線は、種々の要素間の例示的な機能関係および/または物理的結合を表すことを意図する。多くの代替物または付加的な機能関係もしくは物理的接続が、モジュール式構造内に存在し得ることに留意されたい。
【0028】
前述から、本開示の1つの重要かつ主な目的が、電気化学電池または電池の群の熱暴走を防止するための新規の方法の提供にあることが、読者に明白となる。本開示は、電池の温度に基づく自動化応答機構を有する利点を有し、先行技術と比較して、質量および経済的影響を低減した。
【0029】
ここで
図1を参照すると、提案されるバッテリ解決策は、リチウムイオン電池の構築の分野において公知の従来の様式において有機電解質(描写せず)で浸潤される1つ以上の内部電極スタック2を格納することが可能である、シールされたケース1を備える。シールされたケース1は、電池のための機械的支持を提供することおよび完全にシールされるための能力を有することが可能な多種多様な材料から作製されてもよい。アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリプロピレン(PP)、およびポリエチレン(PE)を含む種々の構造的プラスチックが、それらの断熱性質のために好ましいが、リチウムイオンバッテリの構築において一般的に使用されるアルミニウムおよび鋼鉄を含む金属化マイラおよび金属もまた、適した材料である。
【0030】
シールされたケース1はまた、圧力解放弁11を伴う少なくとも1つの通気ポート10と、少なくとも1つの正端子4と、少なくとも1つの負端子5とを特徴とする。少なくとも1つの正端子4は、電極スタックカソード3に電気的に接続される。少なくとも1つの負端子5は、電極スタックアノード8に電気的に接続される。そのような電池は、直列に、または並列に、もしくは直接および並列の組み合わせにおいて接続されてもよい。少なくとも1つの正端子4または少なくとも1つの負端子5のいずれかのうちの少なくとも一方は、少なくとも1つの冷却剤入口6と、少なくとも1つの冷却剤出口7と、少なくとも1つの分注ポート9とを備える。簡略化の目的のために、この点以降、本説明は、本開示の例示的実施形態として、少なくとも1つの正端子4のみを使用する。しかしながら、一方の端子が、冷却剤入口6と、冷却剤出口7と、分注ポート9とを備え得、他方の端子も、これらの特徴を含み得る、または本開示の機能性を損なうことなくこれらの特徴を欠く従来の端子であり得ることを明確にすることが、重要である。
【0031】
分注ポート9および冷却剤出口7は、他方を伴わずに利用され、依然として、本開示の範囲内にあり得る。例えば、バッテリ端子は、冷却剤入口6と、分注ポート9とを備えてもよい。したがって、熱伝達流体は、バッテリ端子内で静的であり、分注ポート9を通して放出され、熱暴走事象を防止してもよい。別の例示的実施形態では、バッテリ端子は、冷却剤入口6と、冷却剤出口7とを備えてもよい。したがって、冷却剤は、冷却剤入口6を通して、冷却回路を通して、冷却剤出口7の外に絶えず流動し、バッテリシステム内の電池の内部温度を調整してもよい。
【0032】
圧力解放弁11は、通常動作条件下でシールされる。これは、通常動作条件下では、気体または液体をシールされたケース1の中または外に出し入れしない。これは、電解質の乾燥または外部汚染物質の進入を防止し得る。圧力解放弁11は、シールされたケース1の内側における圧力が、指定される圧力レベルを超過した場合、気体をシールされたケース1から外に解放する。圧力解放弁11のアクティブ化の圧力レベルは、バッテリのサイズに従って変動するが、一般的に、比較的に低く、大部分の用途において、1PSIGを上回り、約200PSIG未満である。
【0033】
当業者に周知の方法によって1つ以上の内部電極スタック2に接続される少なくとも1つの正端子4は、それらの間の電気接続だけではなく、熱的接続も提供する。例示的実施形態では、少なくとも1つの正端子4に内在するものは、熱伝達流体が少なくとも1つの冷却剤入口6から中に流入して少なくとも1つの冷却剤出口7を通して外に流出することを可能にするための通路である。少なくとも1つの冷却剤入口6および少なくとも1つの冷却剤出口7は、十分な流体が、少なくとも1つの正端子4、電極スタックカソード3、および1つ以上の内部電極スタック2上に所望の冷却または加熱効果を提供するように通過することを可能にするように定寸される。
【0034】
例示的実施形態では、少なくとも1つの冷却剤入口6および少なくとも1つの冷却剤出口7は、冷却回路に接続される。例えば、冷却回路は、非導電性の管類、ポンプ、放熱部、リザーバ、フィルタ等を備えてもよい。また、熱伝達流体を循環させるための任意の適したシステムも、使用されてもよい。本システムの中に分注される熱伝達流体は、電池間でのまたは電池を横断した短絡を引き起こさないように、非導電性である。冷却回路は、全ての電池の少なくとも1つの正端子4を通して流体を押進することによって、電池を加温または冷却するために、熱伝達流体を加熱および冷却するための従来の様式において採用される。(例えば、80℃未満またはさらに70℃未満の)低沸点を有するハイドロフルオロエーテル(HFE)等の非導電性の熱伝達流体が、冷却回路内に分注される。熱伝達流体のこの性質は、これが電池の高動作温度範囲に近い温度において沸騰し始めることである。材料クラスの実施例は、電子構成要素を洗浄するために商業的に使用される高フッ素化化合物である。適した冷却剤の商業的実施例は、商標名HFE-7100、HFE-7200、および他のものとして販売される3MTM NovecTMエンジニアリング流体製品群を含む。HFE-7100は、61℃の沸点を有し、これは、65℃のピーク動作温度範囲を有する多くの商業的電気化学電池と非常に互換性がある。
【0035】
少なくとも1つの分注ポート9は、少なくとも1つの正端子4に内在する通路に接続され、生じ得る任意の熱事象を抑制するために十分な流体が空洞のサイズに対して通過することを可能にするように定寸されてもよい。少なくとも1つの分注ポート9は、過度の熱に敏感でありかつ過度の熱によってアクティブ化される感熱プラグ12を備えてもよい。感熱プラグ12は、所望の温度において融解する金属から作製されてもよい。適した金属は、鉛、ビスマス、およびスズの合金を含み、一般的には、ウッド合金、ローズ合金、ならびにリポウィッツ合金のような名称で公知である、低融解点を伴う共晶または易融合金を含む。そのような金属は、周知であり、消火散水器弁において広範囲にわたって使用され、熱によって誘起される(シールプラグを解放するために合金が十分に軟化する時点)まで、加圧された水がパイプから退出することを防止する。感熱プラグ12は、代替として、周知でもありかつ消火散水器弁内で広範囲に使用される感熱ガラスバルブを備えてもよい。合金と同様に、ガラスバルブは、これが熱くなる際の熱膨張の結果として破損し、それによって、冷却剤を制限するシールを開放し、シールされたケース1内の冷却剤を放出し、冷却剤を電極スタック2に分注するように設計される。少なくとも1つの分注ポート9のサイズおよび場所は、内部空洞の具体的な幾何学形状によって決定され、内部空洞の上部、底部、または側面、もしくはそれらの任意の組み合わせに位置してもよい。
【0036】
本開示の第1の冷却方法は、バッテリが通常動作条件にあると見なす。通常の動作では、例示的定義による熱伝達流体が、本システム内の各電池の少なくとも1つの正端子4を通して圧送される。熱伝達流体に熱を添加するまたは熱伝達流体から熱を除去するプロセスを通して、少なくとも1つの正端子4は、電極スタックカソード3を冷却/加熱し、1つ以上の内部電極スタック2は、熱伝導を通して加熱または冷却される。
【0037】
本開示の第2の冷却方法は、バッテリが、少なくとも1つの電池が過熱している故障条件にあると見なす。この冷却方法のためのプロセスは、1つ以上の内部電極スタック2内の過度の温度によって誘起される。この過度の熱は、感熱プラグ12をアクティブ化し、それによって、熱伝達流体を少なくとも1つの分注ポート9を通して放出する。熱伝達流体は、それによって、シールされたケース1の中に放出され、個別の空洞に浸水し、1つ以上の内部電極スタック2と直接接触する。この時点で、熱伝達流体は、1つ以上の内部電極スタック2を冷却し始める。1つ以上の内部電極スタック2の温度が、安定し得、これは、熱事象を軽減させ得る。1つ以上の内部電極スタック2の温度が増加し続ける場合、これは、最終的には、熱伝達流体の沸点を超過する。熱伝達流体の沸点は、1つ以上の内部電極スタック2の中で採用される電解質化学物質の発火点を優に下回るように選定される。例えば、熱伝達流体HFE-7100は、61℃の沸点を有し、これは、65℃のピーク動作温度範囲を有する多くの商業的電気化学電池と非常に互換性がある。シールされたケース1の中に浸水したHFE-7100は、1つ以上の内部電極スタック2の温度の増加が流体の61℃の沸点をはるかに上回るように超過することを妨害する。1つ以上の内部電極スタック2が熱くなるにつれて、電解質は、蒸気として沸騰する。この蒸気は、通常、非常に可燃性であり、リチウムイオン電池を悪化させることが公知である周知の熱暴走プロセスを開始することができる。通常、非常に可燃性の電解質蒸気は、引火点を有しておらずかつ完全に非可燃性である沸騰する熱伝達流体の蒸気と混成する。冷却回路によって給送される熱伝達流体は、典型的には電池の重量比5~10%のみを表す電解質より大量に存在する。混成された蒸気は、非可燃性であり、熱伝達流体の低沸点によって冷たいままである。圧力が急速に高まるにつれて、圧力解放弁11が、アクティブ化され、少なくとも1つの通気ポート10が、その圧力下で通気し、混成された蒸気を大気中に解放する。熱伝達流体の低温度の沸騰および結果として生じる蒸気の解放のプロセスは、少なくとも1つ以上の電極スタック2を冷却し、それらが熱暴走事象を起こすように発火する、火をおこす、もしくは任意の炎の源となる温度を達成しないように保つ。
【0038】
本開示の別の側面は、この安全な様式における電解質の沸騰が有限事象であることである。非常に迅速に、電解質は、1つ以上の内部電極スタック2およびシールされたケース1から完全に排出され、これを1つ以上の内部電極スタック2から安全に除去し、それによって、電池を不活性にする。結果として生じる不活性電池は、迅速に全ての電解質がない状態にされ、もはや、熱を引き起こし得る内部エネルギーを吸収することも不可能になり、熱を引き起こし得るエネルギーを排出することも不可能になるため、その後、損傷を引き起こすことが不可能になる。電池は、次いで、受動的に冷却され、もはや安全性に対していかなる脅威ももたらさない。
【0039】
本開示はまた、要求される冷却剤の量がバッテリシステムの一部のみに対して定寸されるため、実質的な質量低減ももたらす。これは、電池間の空間を比較的に大量の熱伝達流体で浸水させることを伴うバッテリシステム内の電池の群を冷却するための技法とは際立って対照的である。新規のアプローチは、大型バッテリの中でどの時点においても潜在的な熱事象をもたらす内部短絡を1つより多い電池が受ける非常に低い確率の利点を利用する。現代の電池の故障率は、0.1ppm、すなわち、10e-7である。これは、多数の電池を伴うバッテリシステムにおいて長い時間周期を前提として1つの電池が熱事象を被る確率であるが、見込みは、同時に熱事象を受ける2つのそのような電池に関して、10e-14まで低下する。したがって、2つの電池がそのようなシステムにおいて同時に同一の結末を受けることは、事実上不可能である。本開示は、具体的に事象の場所に標的化される非常に少量の熱伝達流体を用いて単一の電池の熱事象を緩和するための能力を有するため、先行技術に優る改良である最適化された解決策を提供する。
【0040】
本開示の別の側面は、縮小されたバッテリ体積である。電池の分離は、熱伝搬を軽減させるための一般的慣行である。但し、そのような分離は、信頼できるものであるために些細なものではなく、より大きくてより重いバッテリをもたらす。本開示はまた、電池の分離が非常に小さくなり得るという点で、さらにバッテリの体積および質量を低減させる。説明されるように、各空洞の中に1つより多い電池を設置することもまた、可能性として考えられる。1つの電池のみが、熱事象を受ける可能性が高いが、他の電池も、共有空洞の全体を通して分注される熱伝達流体に起因して、最小限に影響を及ぼされる。
【0041】
したがって、例示的実施形態では、バッテリは、相変化気化流体によって安全防護される熱暴走抑制システムを備え、バッテリを安全防護する流体の付加的体積は、バッテリの総電池体積の1~10%である。より好ましくは、電池を安全防護する流体の付加的体積は、バッテリの総電池体積の1~5%である。別の例示的実施形態では、電池を安全防護する流体の付加的体積は、バッテリの総電池体積の3~5%である。
【0042】
したがって、例示的実施形態では、バッテリは、相変化気化流体によって安全防護される熱暴走抑制システムを備え、バッテリを安全防護する流体の付加的質量は、バッテリを安全防護する流体が存在しない場合、バッテリの質量の1~10%である。より好ましくは、電池を安全防護する流体の付加的質量は、バッテリを安全防護する流体が存在しない場合、バッテリの質量の1~5%である。別の例示的実施形態では、電池を安全防護する流体の付加的質量は、バッテリを安全防護する流体が存在しない場合、バッテリの質量の3~5%である。最大の質量および体積の節約が、数百個もの内部空洞を備える大型システム内に存在する。
【0043】
ここで
図2を参照すると、例示的実施形態による、バッテリの中の温度を制御する方法200および/または熱暴走を防止する方法が、図示される。方法200は、バッテリの第1の端子内の第1の冷却回路の中に第1の熱伝達流体を配置すること(ステップ202)を含む。第1の熱伝達流体は、静的または動的(すなわち、第1の冷却回路を通して流動する)であってもよい。第1の端子は、正端子(例えば、少なくとも1つの正端子4)であってもよい。方法200は、バッテリの第2の端子内の第2の冷却回路の中に第2の熱伝達流体を配置すること(ステップ204)をさらに含んでもよい。第2の熱伝達流体は、第1の熱伝達流体であってもよい。第2の熱伝達流体は、第1の熱伝達流体と同一であってもよい、または、第1の熱伝達流体と異なってもよい。第1の冷却回路および第2の冷却回路は、流体的に結合されてもよい。第2の熱伝達流体は、静的または動的(すなわち、第2の冷却回路を通して流動する)であってもよい。第2の端子は、負端子(例えば、少なくとも1つの負端子5)であってもよい。
【0044】
本方法は、第1の端子の第1の分注ポートの中に配置される第1の感熱弁を加熱すること(ステップ206)、および/または、第2の端子の第2の分注ポートの中に配置される第2の感熱弁を加熱すること(ステップ208)をさらに含んでもよい。熱が、バッテリのシールされたケース内の内部電極スタックの中の電池から発生され得る。電池は、熱暴走事象を被り、第1の感熱弁を融解するために十分な熱を発生させ得る。本方法は、第1の分注ポートを通してバッテリのシールされたケースの中に第1の熱伝達流体を放出すること(ステップ210)、および/または、第2の分注ポートを通してバッテリのシールされたケースの中に第2の熱伝達流体を放出すること(ステップ212)をさらに含んでもよい。第1の熱伝達流体および/または第2の熱伝達流体は、熱暴走事象を被っている電池を浸漬し得、かつ/または、隣接する電池へのカスケードを防止し得る。本方法は、第1の熱伝達流体および/または第2の熱伝達流体の蒸気を、圧力解放弁を通して通気させること(ステップ214)をさらに含んでもよい。圧力解放弁は、シールされたケースの通気ポートに結合されてもよい。圧力解放弁は、熱暴走事象から発生される蒸気の圧力と、第1の熱伝達流体および/または第2の熱伝達流体の加熱とに応答して解放してもよい。
【0045】
ここで
図3を参照すると、例示的実施形態による、バッテリの中の温度を制御する方法300が、図示される。方法300は、バッテリの第1の端子内の第1の冷却回路の中に第1の熱伝達流体を配置すること(ステップ302)を含む。第1の端子は、正端子(例えば、少なくとも1つの正端子4)であってもよい。方法300は、バッテリの第2の端子内の第2の冷却回路の中に第2の熱伝達流体を配置すること(ステップ304)をさらに含んでもよい。第2の熱伝達流体は、第1の熱伝達流体であってもよい。第2の熱伝達流体は、第1の熱伝達流体と同一であってもよい、または、第1の熱伝達流体と異なってもよい。第1の冷却回路および第2の冷却回路は、流体的に結合されてもよい。第2の端子は、負端子(例えば、少なくとも1つの負端子5)であってもよい。
【0046】
方法300は、第1の熱伝達流体を、第1の冷却剤入口を通して第1の冷却剤出口の外に流動させること(ステップ306)をさらに含む。第1の冷却剤入口は、バッテリの第1の端子上に配置され、第1の冷却回路と流体連通してもよい。同様に、第1の冷却剤出口も、バッテリの第1の端子上に配置され、第1の冷却回路と流体連通してもよい。本方法は、第2の熱伝達流体を、第2の冷却剤入口および第2の冷却剤出口を通して流動させること(ステップ308)をさらに含んでもよい。第2の冷却剤入口は、バッテリの第2の端子上に配置され、第2の冷却回路と流体連通してもよい。同様に、第2の冷却剤出口も、バッテリの第2の端子上に配置され、第1の冷却回路と流体連通してもよい。例示的実施形態では、第1の冷却剤出口は、第2の冷却剤入口と流体連通し、これは、単一の熱伝達流体が両方の端子を通して流動することを可能にし得る。
【0047】
ここで
図4を参照すると、例示的実施形態による、
図1からのバッテリ端子を有するバッテリシステムの断面の詳細図が、図示される。バッテリシステムは、シールされたケース1と、正端子4とを備える。正端子4は、冷却剤入口6と、冷却剤出口7と、分注ポート9と、感熱プラグ12とを備える。正端子4は、冷却剤入口6と冷却剤出口7との間に延在する流体導管13をさらに備えてもよい。分注ポート9は、流体導管13とシールされたケース1の内側とに流体的に結合されてもよい。感熱プラグ12は、分注ポート9の中に配置されてもよい。感熱プラグ12は、通常動作の間、冷却導管13の中に配置される熱伝達流体から、シールされるケース1をシールしてもよい。種々の実施形態では、冷却導管13の中の熱伝達流体は、通常動作において受動的である(例えば、流体は、冷却導管13の中で静的である)。種々の実施形態では、冷却導管13の中の熱伝達流体は、通常動作において能動的である(例えば、流体は、冷却導管13を通して流動する)。
【0048】
バッテリシステムが、本明細書に開示される。本バッテリシステムは、内部空洞を有するシールされたケースと、内部空洞の中に配置される内部電極スタックと、第1の冷却剤入口と第1の冷却剤出口と第1の冷却剤入口および第1の冷却剤出口に結合される第1の流体導管とを備える第1の端子とを備えてもよい。
【0049】
種々の実施形態では、本バッテリシステムは、第1の冷却剤入口、第1の流体導管、および第1の冷却剤出口を通して流動するように構成される熱伝達流体をさらに備える。本バッテリシステムは、流体導管に結合される第1の分注ポートをさらに備えてもよく、熱伝達流体は、第1の分注ポートを通してシールされたケースの内部空洞の中に放出され、内部電極スタックに接触し、熱暴走事象を防止するように構成される。本バッテリシステムは、ある温度閾値において融解し、熱暴走事象の間に熱伝達流体を第1の分注ポートを通して放出するように構成される第1の感熱プラグをさらに備えてもよい。第1の端子は、動作の間、本バッテリシステムを能動的に冷却するように構成されてもよい。
【0050】
本開示の原理が、種々の実施形態において示されているが、(特に、具体的な環境および動作要件のために適合される)構造、配列、比率、要素、材料、および成分の多くの修正が、本開示の原理および範囲から逸脱することなく、使用され得る。これらおよび他の変更または修正は、本開示の範囲内に含まれ、以下の請求項において表現され得ることが意図される。
【0051】
本開示は、種々の実施形態を参照して説明されている。しかしながら、当業者は、種々の修正および変更が本開示の範囲から逸脱することなく成されることができることを理解する。故に、本明細書は、制限的な意味ではなく、例証的な意味で見なされるべきであり、そのような修正は全て、本開示の範囲内に含まれることが意図される。同様に、恩恵、他の利点、および問題に対する解決策も、種々の実施形態に関して上記に説明されている。
【0052】
しかしながら、恩恵、利点、問題に対する解決策、および、任意の恩恵、利点、または解決策を生じさせるまたはそれらをより顕著な状態にさせ得る任意の要素は、請求項のいずれかまたは全ての重要な、要求される、あるいは不可欠な特徴または要素として解釈されるべきではない。本明細書で使用される場合、用語「comprises(~を備える)」、「comprising(~を備える)」、またはそれらの任意の他の変形例は、要素の列挙を含むプロセス、方法、物品、または装置が、それらの要素のみを含まないが、明示的に列挙されていないまたはそのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有ではない他の要素を含み得るように、非排他的含有を網羅することが意図される。
【0053】
「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」または「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」に類似する文言が、本請求項または本明細書において使用されるとき、語句は、以下、すなわち、1.Aのうちの少なくとも1つ、2.Bのうちの少なくとも1つ、3.Cのうちの少なくとも1つ、4.Aのうちの少なくとも1つおよびBのうちの少なくとも1つ、5.Bのうちの少なくとも1つおよびCのうちの少なくとも1つ、6.Aのうちの少なくとも1つおよびCのうちの少なくとも1つ、または7.Aのうちの少なくとも1つ、およびBのうちの少なくとも1つ、およびCのうちの少なくとも1つ、のうちのいずれかを意味することが意図される。