(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】移動装置により発せられる電磁信号の指向のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/28 20090101AFI20231218BHJP
H04W 4/40 20180101ALI20231218BHJP
H04W 88/02 20090101ALI20231218BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20231218BHJP
H04W 92/18 20090101ALI20231218BHJP
【FI】
H04W16/28
H04W4/40
H04W88/02 140
H04W64/00 150
H04W92/18
(21)【出願番号】P 2021556658
(86)(22)【出願日】2020-03-09
(86)【国際出願番号】 IB2020052018
(87)【国際公開番号】W WO2020188400
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】102019000004009
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】501193001
【氏名又は名称】ポリテクニコ ディ ミラノ
【氏名又は名称原語表記】POLITECNICO DI MILANO
【住所又は居所原語表記】Piazza Leonardo da Vinci,3220133 MILANO-Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】スパニョリーニ,ウンベルト
(72)【発明者】
【氏名】ニコーリ,モニカ バルバラ
(72)【発明者】
【氏名】ブランビッラ,マッティア
(72)【発明者】
【氏名】サヴァレージ,セルジオ マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】パンツァーニ,ジュリオ
【審査官】望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-23049(JP,A)
【文献】特開2017-76958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-H04W99/00
H04B7/24-H04B7/26
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動車両(1)から目標装置(2)に向けて電磁信号を送るための方法(600,700)であって、
前記移動車両(1)は、通信システム(40)を備えており、
前記通信システム(40)は、放射システム(41)を備えており、
前記通信システム(40)は、前記放射システム(41)により、電磁信号を送受信して、
前記通信システム(40)は、
前記目標装置(2)との第1通信方向を定めるため、前記目標装置(2)とのアラインメントステップを実行するステップ(701)と、
データを送受信するため、前記第1通信方向に沿って前記放射システム(41)を向けることにより、前記目標装置(2)と通信するステップ(703)と、
前記目標装置(2)とのアラインメントを保つための後続のフェーズを実行するステップ(705~711)と、
前記後続のフェーズにおいて、前記移動車両(1)の少なくとも1つのセンサ(33)により測定されるデータに基づいて、前記移動車両(1)の位置と方向を決めるステップ(603)とを行うことを特徴としており、
前記センサ(33)は、前記センサ(33)から受け取る情報に基づいて、前記移動車両(1)の制御及び/又は運転補助機能を実行するように構成されている前記移動車両(1)の電子制御ユニット(31)と動作可能に接続されており、
前記通信システム(40)は、
前記目標装置(2)の放射システム(41
B)の未来位置と未来方向を示す、又は予測するように構成されている
ダイナミクス情報を受け取るステップ(705)
を行うことを特徴としており、
前記通信システム(40)はまた、
前記移動車両(1)の決められた前記位置と前記方向に基づいて、前記放射システム(41)の未来位置と未来方向を決めるステップ(603)と、
前記放射システム(41)の前記未来位置を前記目標装置(2)の前記放射システム(41
B)の前記未来位置と接続する第2通信方向(R
LOS(t))を決めるステップ(709)と
を行うことを特徴としており、
前記第2通信方向(R
LOS
(t))は、前記放射システム(41)の前記未来位置及び前記未来方向を前記ダイナミクス情報と組み合わせることにより決められて、
前記通信システム(40)は、
決められた前記第2通信方向(R
LOS(t))に基づいて、前記放射システム(41)により発せられる前記電磁信号を向けるステップ(709)とを行うことを特徴とする、方法(600,700)。
【請求項2】
前記移動車両(1)の前記放射システム(41)と前記目標装置(2)の前記放射システム(41
B)は、それぞれ、アンテナシステム(41,41
B)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法(600,700)。
【請求項3】
前記移動車両(1)の前記放射システム(41)と前記目標装置(2)の前記放射システム(41
B)は、それぞれ、光信号の発生器と光信号の検出器を備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法(600,700)。
【請求項4】
前記移動車両(1)の前記通信システム(40)は、
前記移動車両(1)の前記放射システム(41)の未来位置と未来方向を示す、又は予測するように構成されている追加情報を生じるステップと、
前記追加情報を前記目標装置(2)に向けて送るステップ(705)とを行うことを特徴とする、
請求項1に記載の方法(600,700)。
【請求項5】
前記情報は、
前記目標装置(2)の前記放射システム(41
B)の未来のダイナミクス(D
B)の関数のパラメータと、
前記目標装置(2)の前記放射システム(41
B)の前記未来のダイナミクス(D
B)を示すフィルタリング係数と、
前記センサ(33)から受け取る情報、及び前記センサ(33)の位置と前記目標装置(2)の前記放射システム(41
B)の位置に関する情報に基づいて、前記移動車両(1)の制御機能及び/又は運転補助を実行するように構成されている前記目標装置(2)の電子制御ユニット(31)と動作可能に接続されているセンサ(33)によって検出される1つ以上の測定値との間の少なくともいずれかを備えることを特徴とする、
請求項1に記載の方法(600,700)。
【請求項6】
前記通信システム(40)は、
アラインメントを保つフェーズにおいて、
前記移動車両(1)の少なくとも1つの線形速度測定値、及び少なくとも1つの角速度測定値を得るステップ(601)と、
前記移動車両(1)の前記放射システム(41)の少なくとも1つの線形速度測定値、及び少なくとも1つの角速度測定値を推定するステップ(603)とを行うことを特徴とする、
請求項1に記載の方法(600,700)。
【請求項7】
前記通信システム(40)は、
アラインメントを保つフェーズにおいて、
前記移動車両(1)の少なくとも1つのショックアブソーバの伸び測定値と、
前記移動車両(1)のステアリング角度の少なくとも1つの測定値と、
車両エンジン(1)により伝達されるトルクの少なくとも1つの測定値と、
車両ブレーキ装置(1)に対して作用する少なくとも1つの圧力測定値と、
前記移動車両(1)と前記目標装置(2)との間の距離の少なくとも1つの測定値との間の1つ以上を得るステップ(601)と、
前記移動車両(1)の前記放射システム(41)の少なくとも1つの線形速度測定値を推定するため、前記測定値の2つ以上を組み合わせるステップ(603)とを行うことを特徴とする、
請求項6に記載の方法(600,700)。
【請求項8】
前記移動車両(1)の少なくとも1つのセンサ(33)により測定されるデータに基づいて、前記放射システム(41)の未来位置と未来方向を決めるステップ(603)において、
前記移動車両(1)の特性パラメータであって、
前記特性パラメータは、前記移動車両(1)の質量、重心、輸送される荷重の重量、幾何学的特性の間の少なくともいずれかを備えており、
電磁信号の送信パラメータであって、
前記送信パラメータは、時間間隔、電磁信号のビームの指向角度と開口、電磁送信チャネルの変動の間の少なくともいずれかを備えており、
前記ステップ(603)は、前記測定されるデータを、前記特性パラメータ及び前記送信パラメータと組み合わせることを備えることを特徴とする、
請求項1に記載の方法(600,700)。
【請求項9】
前記移動車両(1)の少なくとも1つのセンサ(33)により測定されるデータに基づいて、前記放射システム(41)の未来位置と未来方向を決めるステップ(603)は、以下の数式に従って、前記移動車両(1)の前記放射システム(41)の少なくとも1つの線形速度(
【数1】
)を推定することを備えることを特徴とする、
請求項1に記載の方法(600,700)。
Mは、相対位置の間の差、及び前記移動車両(1)の質量中心と前記放射システム(41)の質量中心との間の方向を示す空間の値のベクトルである。
は、前記移動車両(1)の角速度のベクトルである。
は、前記移動車両(1)の線形速度のベクトルである。
【請求項10】
前記目標装置(2)とのアラインメントを保つステップは、連続通信時間周期(TFn)において周期的に繰り返される信号伝達時間ウィンドウ(T
S)の間、実行されることを特徴とする、
請求項1に記載の方法(600,700)。
【請求項11】
調整できる放射システム(41)を備える通信システム(40)であって、
前記通信システム(40)は、
車両(1,2)と接続するための拘束手段と、
前記車両(1,2)の少なくとも1つのセンサ(33)のデータが送られる通信回線と接続できる通信インターフェースとを備えており、
前記センサ(33)は、前記センサ(33)から受け取る情報に基づいて、前記車両(1)の制御及び/又は運転補助機能を実行するように構成されている前記車両(1)の電子制御ユニット(31)と動作可能に接続されており、
前記通信システム(40)は、
少なくとも1つの前記センサ(33)のデータを受け取るため、前記通信インターフェースと動作可能に接続されて
おり、
前記通信システム(40)は、
前記目標装置(2)との第1通信方向を定めるため、前記目標装置(2)とのアラインメントステップを実行するステップ(701)と、
データを送受信するため、前記第1通信方向に沿って前記放射システム(41)を向けることにより、前記目標装置(2)と通信するステップ(703)と、
前記目標装置(2)とのアラインメントを保つための後続のフェーズを実行するステップ(705~711)と、
前記後続のフェーズにおいて、前記移動車両(1)の少なくとも1つのセンサ(33)により測定されるデータに基づいて、前記移動車両(1)の位置と方向を決めるステップ(603)とを行うように構成されており、
前記センサ(33)は、前記センサ(33)から受け取る情報に基づいて、前記移動車両(1)の制御及び/又は運転補助機能を実行するように構成されている前記移動車両(1)の電子制御ユニット(31)と動作可能に接続されており、
前記通信システム(40)は、
前記目標装置(2)の放射システム(41
B
)の未来位置と未来方向を示す、又は予測するように構成されているダイナミクス情報を受け取るステップ(705)と、
前記移動車両(1)の決められた前記位置と前記方向に基づいて、前記放射システム(41)の未来位置と未来方向を決めるステップ(603)と、
前記放射システム(41)の前記未来位置を前記目標装置(2)の前記放射システム(41B)の前記未来位置と接続する第2通信方向(R
LOS
(t))を決めるステップ(709)とを行うように構成されており、
前記第2通信方向(R
LOS
(t))は、前記放射システム(41)の前記未来位置及び前記未来方向を前記ダイナミクス情報と組み合わせることにより決められて、
前記通信システム(40)は、
決められた前記第2通信方向(R
LOS
(t))に基づいて、前記放射システム(41)により発せられる前記電磁信号を向けるステップ(709)とを行うように構成されている、通信システム(40)。
【請求項12】
通信システム(40)を備える車両(1,2)であって、
前記通信システム(40)は、
車両(1,2)と接続するための拘束手段と、
前記車両(1,2)の少なくとも1つのセンサ(33)のデータが送られる通信回線と接続できる通信インターフェースとを備えており、
前記センサ(33)は、前記センサ(33)から受け取る情報に基づいて、前記車両(1)の制御及び/又は運転補助機能を実行するように構成されている前記車両(1)の電子制御ユニット(31)と動作可能に接続されており、
前記通信システム(40)は、
少なくとも1つの前記センサ(33)のデータを受け取るため、前記通信インターフェースと動作可能に接続されており、
前記通信システム(40)は、
前記目標装置(2)との第1通信方向を定めるため、前記目標装置(2)とのアラインメントステップを実行するステップ(701)と、
データを送受信するため、前記第1通信方向に沿って前記放射システム(41)を向けることにより、前記目標装置(2)と通信するステップ(703)と、
前記目標装置(2)とのアラインメントを保つための後続のフェーズを実行するステップ(705~711)と、
前記後続のフェーズにおいて、前記移動車両(1)の少なくとも1つのセンサ(33)により測定されるデータに基づいて、前記移動車両(1)の位置と方向を決めるステップ(603)とを行うように構成されており、
前記センサ(33)は、前記センサ(33)から受け取る情報に基づいて、前記移動車両(1)の制御及び/又は運転補助機能を実行するように構成されている前記移動車両(1)の電子制御ユニット(31)と動作可能に接続されており、
前記通信システム(40)は、
前記目標装置(2)の放射システム(41
B
)の未来位置と未来方向を示す、又は予測するように構成されているダイナミクス情報を受け取るステップ(705)と、
前記移動車両(1)の決められた前記位置と前記方向に基づいて、前記放射システム(41)の未来位置と未来方向を決めるステップ(603)と、
前記放射システム(41)の前記未来位置を前記目標装置(2)の前記放射システム(41B)の前記未来位置と接続する第2通信方向(R
LOS
(t))を決めるステップ(709)とを行うように構成されており、
前記第2通信方向(R
LOS
(t))は、前記放射システム(41)の前記未来位置及び前記未来方向を前記ダイナミクス情報と組み合わせることにより決められて、
前記通信システム(40)は、
決められた前記第2通信方向(R
LOS
(t))に基づいて、前記放射システム(41)により発せられる前記電磁信号を向けるステップ(709)とを行うように構成されており、
前記車両(1,2)は、
前記車両(1,2)の動作と関連している慣性のデータを得るように構成されている少なくとも1つのセンサ(33)を備える車載電子システム(30)と、
電子制御ユニット(31)と、
前記センサ(33)を前記電子制御ユニット(31)と動作可能に接続する通信チャネル(35)とを備えており、
前記通信システム(40)は、前記センサ(33)により検出される前記慣性のデータの少なくとも一部を得るように、前記通信チャネル(35)及び前記電子制御ユニット(31)の少なくともいずれかと動作可能に接続されていることを特徴とする、車両(1,2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気通信の分野に関する。特に、本発明は、移動通信システムにおける電磁波のビームの形成のための方法及びシステムに関する。さらに詳細には、本発明の実施形態は、相互運動における放射システムによる電磁信号のやりとりに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気通信技術に基づいて、「5Gミリ波」と呼称される6GHzよりも大きな周波数を有する無線信号のようなミリメートル以下の波長(ミリ波)を含む電磁信号、及び光信号は、伝播方向における急激な減衰を受ける。これらの信号は、地球の大気(特に酸素)を構成する分子により吸収されて、含まれている厚さ及び/又は小さな密度を有する障害物(例えば布、プラスチックシート、生物など)により防がれ得ることが知られている。
【0003】
これらの信号の急激な減衰を補うため、好ましくは通信接続(すなわちリンク)の両端において、固定された指向性と大きなゲインを有する指向性アンテナを用いることが一般的である。移動システムにおいて、アンテナのアレイは、指向方向の動的補正を可能にするため、固定された指向性アンテナを交換するように決められる。アレイのアンテナに与えられる信号は、アレイのゲイン、すなわち最大電力値の空間方向を好ましい方向に向けて最大化するように、適切に処理される。アンテナ信号を処理するこのステップは、ビーム形成として知られており、一般的に、2つの装置の間において、効率的な通信ができるように、別のアンテナ、又はアンテナの別のアレイの方向におけるアンテナのアレイの送信電力を最大化することを目的としている。
【0004】
例えば、車両、スマートフォン、ロボットなどの移動装置の間における通信の場合、位置の変動は、関連している移動装置に取り付けられているアンテナのアレイの間のアラインメントを複雑にして、通信の遮断を引き起こし得る。通信の連続性を保証するため、2つのアンテナのアレイのリアラインメントを周期的に実行することが知られている。一般的に、リアラインメントは、移動装置の間の相互速度に比例する周波数により実行される。
【0005】
一部の既知の方法は、データの送信の前のそれぞれの送信タイムフレームにおいて実行されるアラインメントステップを想定する。アラインメントステップの間、2つのアンテナのアレイは、所定の数の方向に従って送られるトレーニング(又はプローブ)信号をやりとりして、最も小さな減衰を有する方向をデータ送信方向として選択するように、減衰を確認する。これらの方法の主要な制限は、アラインメントステップが、それぞれのタイムフレームの間、送信され得るデータの量を減らすこと、及びアラインメントのためのプローブ信号の送信に対する無視できないエネルギ消費を示すことである。
【0006】
この課題は、互いに通信する3つ以上の装置の場合、悪化する。実際には、この場合、対となる装置ごとに必要なアラインメントステップの継続時間は延びる。したがって、すべての装置の間の有用なデータのやりとりに利用できるタイムフレーム部分が減る。
【0007】
米国特許9723473号は、第1装置と第2装置の間のミリ波に基づく通信方法を開示している。この方法は、第1装置により実行されて、第2装置の未来位置を定めることと、第2装置の未来位置に対して、第1装置の第1ミリ波通信ユニットにより発せられるビームのアラインメントを行うことを想定する。
【0008】
一方、第2装置の推定位置は、初期位置と初期速度に基づいており、十分に正確なアラインメントが、第1装置のアンテナと第2装置のアンテナとの間で得られない。したがって、装置の間の効率的な通信は制限される。また、装置は、無線信号のアラインメントを実行できるように、第2装置との通信を実行するためのDSRC(狭域通信)モジュールを必要とする、又は他の装置に対して測定を実行し得るセンサを備える必要がある(例えば、センサが目標装置の距離と速度を測定する必要がある)。さらに、方法は、方向の変化を受ける車両の場合のように、相互傾斜補正を予期しない。
【0009】
米国公開特許2016/0118716号は、代替として、ビームのアラインメントのための方法を提案している。この方法は、慣性のシステムに対するアクセスにより、送受信機の方向を定めること、及び送受信機の方向に従って送信角度を補うことを想定する。また、方法は、送受信機装置の方向に基づいて、ビーム形成動作を修正することを想定する。
【0010】
できる限り効率的であるように、米国公開特許2016/0118716号に記載の方法は、送受信機の位置と方向を定めることができる専用のセンサを用いることを必要とするため、高価である。また、この方法は、ビーム形成のために必要な時間の問題を解決しない。実際には、米国公開特許2016/0118716号において、ビームを形成するステップは、最も小さな減衰を有する送信方向を定めるため、複数のプローブ信号を送信することを必要とするだけでなく、送受信機装置の回転を考慮して保つように、ビーム形成を修正する別のステップを想定する。
【0011】
米国特許10080146号において、無線通信装置のセンサは、装置の位置、動作、及び回転のようなデータを与える。センサのデータを用いて、無線通信システムにおける送受信のためのアンテナのビームを制御するため、装置の空間データを計算して、このデータを用いることができる。
【0012】
一方、米国特許10080146号に記載の方法は、ビーム形成に適用されるアンテナの重みが、移動通信装置の未来位置をネットワークノードの位置と接続する方向の推定に基づいて、計算されるため、精密な制限を有する。一方、通信装置は、電話又はPCであってもよく、動作における実寸法、及び慣性の寸法を有する。また、運動学的基準の欠如は、運動学的基準がシステムと一体であったとしても、装置の動作を正確に再構成する可能性を妨げて(例えば、一定の速度で移動する加速度計を考慮して、測定値から、装置の有効な変位を定めることができない)、ミリ波による通信システムにおいて、無視できない誤差に達する。したがって、推定方向は、移動通信装置のアンテナをネットワークノードに接続する方向と一致しない可能性がある。
【0013】
最後に、米国公開特許2018/042066号は、レーダ、レーダによって用いられる周波数帯の少なくとも一部を用いるために構成されている通信装置、及びレーダを用いることによって、目標の位置を得るように構成されている取得装置を備える無線通信のための装置を開示している。また、この装置は、通信装置の交信距離及び目標軌道に基づいて、目標との通信の開始時間を決めるために構成されているコントローラを備える。コントローラは、データが通信時間で送信されるように、通信装置を管理する。
【0014】
米国公開特許2018/042066号によって提案されている方法は、上述の他の公知の方法に対して、上述と同じ制限及び欠点にさらされる。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服することである。
【0016】
本発明の目的は、大まかに、互いに相対移動する移動装置、特に車両の間において、効率的な通信ができる方法及び関連する通信システムを提供することである。
【0017】
特に、本発明の目的は、ミリメートル以下の波長を含む電磁波により、効率的な通信ができる方法及び関連するシステムを提供することである。
【0018】
特に、本発明の目的は、同時送信に対して利用できるタイムフレームを効率的に用いるミリメートル以下の波長により、通信ができる方法及び関連するシステムを提供して、放射システム(例えば、アンテナ又は光学通信システム)により送信されるビームの良好なアラインメントを保証することである。
【0019】
本発明のこれらの目的と他の目的は、添付の請求項の特徴を組み込む装置により達成される。この特徴は、明細書の不可欠な部分を形成する。
【0020】
本発明は、目標装置に向けて移動する車両により、電磁信号を送るための方法に関する。特に、移動車両は、通信システムを備える。この通信システムは、放射システムを備える。通信システムは、この放射システムにより、ミリメートル波長を有する電磁信号を送受信する。
有利であるように、通信システムは、
目標装置との第1通信方向を定めるため、目標装置とのアラインメントステップを実行するステップと、
データを送受信するため、第1通信方向に沿って放射システムを向けることにより、目標装置と通信するステップと、
目標装置とのアラインメントを保つための後続のステップを実行するステップと、
後続のステップにおいて、少なくとも1つの車両のセンサにより測定されるデータに基づいて、放射システムの未来位置と未来方向を決めるステップとを行うことを特徴としており、
センサは、センサから受け取る情報に基づいて、車両の運転制御及び/又は運転補助機能を実行するように構成されている車両の電子制御ユニットと動作可能に接続されており、
通信システムは、
必ずしも放射システムを用いる必要がない一方、好ましくは放射システムにより、目標装置の放射システムの未来位置と未来方向を示す、又は予測するように構成されている情報を受け取るステップと、
放射システムの未来位置を目標装置の放射システムの未来位置と接続する第2通信方向を決めるステップと、
決められた通信方向に基づいて、放射システムにより発せられる電磁信号を向けるステップとを行う。
【0021】
ある実施形態において、車両の放射システムと目標装置の放射システムは、それぞれ、アンテナシステム、例えばミリメートル波アンテナのアレイを備える。加えて、又は代替として、車両の放射システムと目標装置の放射システムは、それぞれ、光信号発生器と光信号検出器を備える。
【0022】
この方法により、両方の装置によって想定される位置と方向を予め推定することができると共に、それぞれの装置のアンテナによって想定される位置と方向、すなわち、送信するための電磁信号の発信元と目標を推定することができる。特に、第1装置及び第2装置から1つ以上のセンサによって受け取られる情報により、発信元と目標のアンテナの位置及び方向を正確に予測することができる。したがって、最適な送信を得るように、電磁信号の放射を向ける、すなわち、電磁信号のビーム形成を行う、及び/又は放射システムを向けることができる。特に、第2装置と関連している放射システムの位置において送られる電磁信号の波面を得ることができる。放射システムの方向を知ることにより、最大受信能力が予め決められた通信方向に沿って保証され得る。
【0023】
車両に搭載されている1つ以上のセンサによって与えられて、制御ユニットにより処理されていない又は処理されている形態のデータへのアクセス、特に、車両と目標装置の間の情報のやりとりにより、両方の装置のダイナミクスの予測、特に両方の放射システムの正確な位置と方向が得られる。
【0024】
方法は、車両に搭載されているセンサによって与えられるデータへのアクセスにより、通信システムの放射システムの有効なアラインメントの検証を必ずしも必要としない開ループ方向補正とみなされる。
【0025】
ある実施形態において、車両の通信システムは、車両の放射システムの未来位置と未来方向を示す、又は予測するように構成されている追加情報を生じるステップと、好ましくは放射システムにより、追加情報を目標装置に向けて送るステップとを行う。
【0026】
ある実施形態において、情報は、目標装置の放射システムの未来のダイナミクスの関数のパラメータと、目標装置の放射システムの未来のダイナミクスを示すフィルタリング係数と、センサから受け取る情報、及びセンサの位置と目標装置の放射システムの位置に関する情報に基づいて、制御機能及び/又は車両を運転するための補助を実行するように構成されている目標装置の電子制御ユニットと動作可能に接続されているセンサによって検出される1つ以上の測定値との間から少なくともいずれかを備える。
【0027】
この方法により、含有量のダイナミクス情報によって、短期間送信により伝達できる、及び/又はこの送信を行うために必要な電力を減少できるような第2装置の放射システムの未来位置と未来方向を極めて正確に予測することができる。また、これにより、同じダイナミクス計算アルゴリズムが、両方のアンテナの位置と方向を予測するため、用いられ得る。
【0028】
ある実施形態において、通信システムは、アラインメントを保つステップにおいて、車両の少なくとも1つの線形速度測定値、及び少なくとも1つの角速度測定値を得るステップと、車両の放射システムの少なくとも1つの線形速度測定値、及び少なくとも1つの角速度測定値を推定するステップとを行う。
【0029】
好ましくは、アラインメントを保つステップにおいて、通信システムは、
車両のショックアブソーバの少なくとも1つの伸び測定値と、
車両の少なくとも1つのステアリング角度の測定値と、
車両のエンジンにより伝達されるトルクの少なくとも1つの測定値と、
車両ブレーキ装置に対して作用する少なくとも1つの圧力の測定値と、
車両と目標装置との間の距離の少なくとも1つの測定値との間から1つ以上を得るステップと、
車両の放射システムの少なくとも1つの線形速度の測定値を推定するため、車両の線形加速度の少なくとも1つの測定値、及び/又は車両の角速度の少なくとも1つの測定値と共に、測定値の1つ以上を組み合わせるステップとを行う。
【0030】
センサによって与えられるこのデータを得ることにより、情報が正確なダイナミクスで得られて、特に信頼性のある動的計算アルゴリズムにより、アンテナの位置と方向の予測が得られる。
【0031】
ある実施形態において、少なくとも1つの車両のセンサにより測定されるデータに基づいて、放射システムの未来位置と未来方向を決めるステップにおいて、車両の特性パラメータであって、特性パラメータは、車両の質量、重心、輸送される荷重の重量、幾何学的特性の間から少なくともいずれかを備えており、電磁信号の送信パラメータであって、送信パラメータは、時間間隔、電磁信号のビームの指向角度と開口角度、電磁送信チャネルの変動の内の少なくともいずれかを備えており、未来位置と未来方向を決めるステップは、測定されるデータを、特性パラメータ及び送信パラメータと組み合わせることを想定する。
【0032】
このように、通信システムによって計算される、さらに正確な方向と位置の予測を得ることができる。
【0033】
ある実施形態において、少なくとも1つの車両のセンサにより測定されるデータに基づいて、放射システムの未来位置と未来方向を決めるステップは、以下の数1に従って、車両の放射システムの少なくとも1つの線形速度を推定することを想定する。
【数1】
Mは、相対位置の間の差、及び車両の質量中心と放射システムの質量中心との間の方向を示す空間の値のベクトルである。
は、車両の角速度のベクトルである。
は、車両の線形速度のベクトルである。
【0034】
このように、車両に関連する一方、放射システムに関連しないセンサにより測定されるデータから始めて、放射システムの位置と方向を、簡単に、素早く、且つ効率的に定めることができる。
【0035】
ある実施形態において、目標装置とのアラインメントを保つステップは、連続通信時間周期において周期的に繰り返される信号伝達タイムフレームの間、実行される。
【0036】
この方法により、方向の予測の高い精度、及び全体通信時間周期に対する相対位置を保証することができると同時に、周波数と、動的予測を行うために必要なエネルギとを制限する。動的予測は、周波数により更新される必要がある。また、アラインメントの時間間隔は、従来技術の教示に記載のアラインメントを行うために必要な時間より実質的に小さい。
【0037】
本発明の異なる態様は、方向付けできる放射システムを備える通信システムに関する。
通信システムは、
車両と接続するための拘束手段と、
少なくとも1つの車両のセンサのデータが送られる通信回線と接続できる通信インターフェースとを備えており、
このセンサは、センサから受け取る情報に基づいて、車両の運転制御及び/又は運転補助機能を実行するように構成されている車両の電子制御ユニットと動作可能に接続されており、
通信システムは、
少なくとも1つのセンサのデータを受け取るため、通信インターフェースと動作可能に接続されていると共に、上述の方法を実行するように構成されている電子ユニットを備える。
【0038】
本発明の異なる態様は、請求項11に記載の通信システムを備える車両に関する。車両は、車両の動作と関連している慣性のデータを得るように構成されている少なくとも1つのセンサを備える電子車載システムと、電子制御ユニットと、センサを電子制御ユニットと動作可能に接続する通信チャネルとを備える。有利であるように、通信システムは、センサにより検出される慣性のデータの少なくとも一部を得るため、通信チャネル及び電子制御ユニットの間から少なくともいずれかと動作可能に接続されている。
【0039】
本発明の別の特徴と利点が、添付図面の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明は、以下の一部の実施例を参照して説明されて、説明的且つ非限定的な目的に対して提供されて、添付図面において示す。これらの図面は、本発明の異なる態様と実施形態を示す。必要に応じて、異なる図面において、同じ構造、部品、材料、及び/又は要素を図示する符号は、同じ符号によって示す。
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に記載の互いに通信するように構成されている1対の車両を示す。
【
図3】
図3は、
図1の車両によって用いられるアンテナのアレイを示す。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に記載の車両のダイナミクスを予測するための手順のフロー図を示す。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に記載の電磁信号の方向付けと送信のための手順のフロー図を示す。
【
図8】
図8は、
図7の手順に記載の
図1の車両の間の通信に関連しているアクティビティ図を示す。
【
図9A】
図9Aは、車両自体のピッチング動作の間の2つの異なる時間と位置における車両の側面図を示す。
【
図9B】
図9Bは、車両自体のヨー動作の間の2つの異なる時間と位置における車両の上方から見た図を示す。
【
図9C】
図9Cは、車両自体のローリング動作の間の2つの異なる時間と位置における車両の正面図を示す。
【
図10A】
図10Aは、2つの車両が非直線経路を移動する2次元設定の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、種々の変更と別の構成の影響を受けやすい一方、ある好ましい実施形態を図示して、以下に詳細を説明する。いずれの場合でも、発明を、図示する特定の実施形態に制限する意図がないより、むしろ発明が、請求項に定める発明の範囲内にあるすべての変更、別の構成、同等の構成に及ぶことを意図することが留意される。
【0042】
「例えば」、「など」、「又は」を用いることは、特に示さない限り、限定のない非排他的な代替を示す。「含む」を用いることは、特に記載されない限り、「含む一方、限定されない」ことを意味する。
【0043】
図面を参照して、設定が考えられる。この設定において、通信は、2つの車両1,2の間(又はV2V通信若しくは車両間)の電磁信号、例えば無線信号又は光学信号により定められる。
【0044】
以下に考えられる実施例において、車両1,2は、2つの四輪道路車両である。一方、この車両は、例えば一輪、二輪、又は三輪以上を有する別の種類であってもよい。非限定的な方法において、車両1が、車載電子システム30を備え、また通信システム40を備えることが考えられる。この構造は、車両2において、複製される。
【0045】
図2に示す車載電子システム30は、エンジンの動作、及び車両の複数の動作パラメータの観察を最適化するように構成されている。
【0046】
目的に対して、車載電子システム30は、電子制御ユニット又はECU(エンジン制御ユニット)31、1つ以上のセンサ33、1つ以上のユーザインターフェース(図示せず。例えば、車載コンピュータ及び/又は「インフォテインメント」ユニット)、場合によって追加のサブシステム及び/又は処理ユニット(図示せず。例えば、ABS、ESC、処理ユニットなど)、及び補助的な部品(図示せず。例えば、部品の電力供給のための電気回路)を備える。
【0047】
車載電子システム30の部品は、例えば、FlexRay、CAN(コントローラエリアネットワーク)、及び/又はLIN(ローカルインターコネクトネットワーク)型の接続チャネル、好ましくは通信BUS35(バイナリユニットシステム)によって、互いに動作可能に接続されている。ECU31は、上述の接続チャネルによって、センサのデータを受け取り、車両の制御機能を実行するため、センサのデータを用いる。
【0048】
特に、センサ33は、1つ以上の慣性センサ、例えば線形型及び/又は角度型の1つ以上の加速度計及び/又はジャイロスコープを備える。この1つ以上の慣性センサは、車両1又は2の動作に関連して対応する測定値、又は慣性のデータを与える。1つ以上の慣性センサは、車両1又は2に搭載されている。ある実施形態において、それぞれの車両1,2は、少なくとも2つの加速度計と垂直ジャイロスコープを有する慣性測定ユニット又はIMUを備える。好ましくは、IMUは、3つの加速度計と3つのジャイロスコープを備える。例えば、IMUは、車載電子システム30と関連している電子安定制御サブシステム又はESCに設けられている。
【0049】
好ましくは、センサ33は、サスペンションの少なくとも1つの伸びセンサ、及び/又は車両のシャシ若しくはボディと関連している少なくとも1つの垂直加速度計、少なくとも1つのステアリングセンサ、及び少なくとも1つのブレーキ圧センサを備える。
【0050】
好ましい実施形態において、センサ33は、地理的位置又はセンサの検出範囲内の一般的な物体(例えば、別の車両)からの位置又は距離を決めることができる1つ以上の要素を備える。例えば、センサ33は、
衛星測位センサ(GPS、GLONASS、Galileo、BDSなど)、
超音波センサ、
レーダ、
ライダ、
及びフォトカメラ/テレビカメラの間から1つ以上を備えてもよい。
【0051】
好ましくは、車載電子システム30のセンサ33は、それぞれ、包括的でない方法において、
ステアリング角度センサ、
ブレーキ圧センサ、
注入センサ、
燃料計、
レインセンサ、
衝突センサ、
温度センサ、
空気圧センサ、
エンジンセンサ(オイル、冷却剤など)の間から1つ以上を備える。
【0052】
例えば、上述の1つ以上のセンサ33は、
アンチロックブレーキ(ABS)サブシステム、
トラクションコントロール(TC)サブシステム、
サスペンション電子制御サブシステムのような1つ以上の車載電子システム30のサブシステムに設けられている。
これらのサブシステムは、それぞれ、専用のセンサ33のサブグループを備える。
【0053】
考えられる通信システム40上を通過するとき、通信システム40は、電磁信号、特に6GHz以上の周波数を有する無線信号をやりとりするように構成されている。非限定的な方法において、無線信号に特有の周波数は、28GHz、60GHz、90GHz、120GHz、300GHzまでの周波数を備える。この周波数の無線信号は、大きな減衰により特徴づけられており、効率的な通信を保証するため、目標の受信機に向けて照射される無線信号のビームの方向付けを必要とする。それぞれの通信システム40は、相互接続される放射システム、考えられる実施例において、アンテナ41、送受信モジュール43、及びビームトラッキング装置(BTD)45を備える。
【0054】
以下の本明細書において、必要に応じ、車両2の放射システム、すなわちアンテナは、車両1のアンテナ41と異なるように、符号41Bにより示す。同様に、アンテナ41Bと関連している動作パラメータは、アンテナ41と関連している動作パラメータと区別するため、下付き文字Bによる印を付けられている。
【0055】
考えられる実施形態において、アンテナ41は、電子的に発せられる無線信号のビームを形成(専門用語の「ビーム形成」(BF)という用語により共通して示す動作)するように構成されているアンテナである。
図3に示すように、多くの考えられる実施形態の間のある実施形態として、アンテナ41は、円筒状のアレイのアンテナであり、すなわち伸長に沿う放射状配列に従って円筒状支持体413の外側面に配置されている複数のアンテナ、例えばパッチアンテナ又はマイクロストリップアンテナ411を備える。好ましくは、アンテナ41は、改善された送信効率を保証するため、引き伸ばされた視野を保証する位置に配置されている。考えられる実施例において、アンテナ41は、車両1又は2のルーフから車両1,2の外部の環境に向けて横方向に突出する。
【0056】
それぞれの送受信モジュール43は、無線信号をコード化及びデコード化するように構成されている無線モジュール431、アンテナによって発せられる無線信号のビームの無線信号の方向を制御するように、それぞれのマイクロストリップアンテナ411によって発せられる信号の位相と振幅を調節するように構成されているビーム形成モジュール433、及び送信するための無線信号に対して、ビーム形成モジュール433に適用される位相調節と振幅値を計算するように構成されているビーム形成(BF)制御モジュール(以下、BF制御モジュール435)を備える。BF制御モジュール435は、ビーム形成モジュール433と動作可能に接続されている。また、BF制御モジュール435は、BTD45と、場合によって、データ及び/又は警報のやりとりのため、無線モジュール431と動作可能に接続されている。
【0057】
それ以外には、無線モジュール431は、デコード化される信号を受信して、またコード化された信号を送信するため、ビーム形成モジュール433と動作可能に接続されており、コード化されるデータをやりとりして、受信されてデコード化されたデータを送信するため、車両1,2の車載電子システム30と接続されている。
【0058】
図4に示すように、本発明のある実施形態において、ビーム形成モジュール433は、互いに直列に接続される2つのユニットを備える。第1ビーム形成ユニット436は、無線モジュール431によって制御されて、従来技術において知られている方法で、ビームのアラインメントを計算するように構成されている。ビーム形成モジュール433はまた、以下に説明するように、BF制御モジュール435によって制御される第2(動的補正)ユニット437を備える。この構造は、通信システム40が、従来技術において知られている方法に従って、ビーム形成を動作するように構成されている無線モジュール431と第1ビーム形成ユニット436を含む非再構成可能な専用装置を備える場合を示す。
【0059】
BTD45は、車載電子システム30と動作可能に接続されている。ある実施形態において、BTD45は、車載電子システム30のBUS35と関連しているインターフェースモジュール451を備える。例えば、インターフェースモジュール451は、BTD45をBUS35と動作可能に接続するように構成されている。したがって、BTD45は、実行される通信プロトコルに従って、BUS35と接続されている他の要素とデータをやりとりし得る。代替として、インターフェースモジュール451は、BUS35を通過するデータの「スニフィング」を行うように構成され得る。すなわち、インターフェースモジュール451は、BUS35からデータ/情報を得るように構成されている一方、BUS35から分離されている。また、代替として、インターフェースモジュール451は、BTD45を、車載電子システム30に設けられているECU31及び/又は別の処理ユニットと動作可能に直接接続するように構成され得る。好ましくは、BTD45は、非限定的な方法において、処理ユニット(図示せず。例えば、プロセッサ、マイクロプロセッサ、DSP、ASIC、FPGA)と、揮発性及び/又はスタティックなメモリユニットとを備える。
【0060】
また、BUS35は、センサ33によって与えられる信号が、同期送信(すなわち、測定信号が同じ瞬間の時間に得られる)又は非同期送信(測定信号が、同じ瞬間の時間に得られないため、同時でない)されることを想定する。インターフェースモジュール451は、読み込みのとき(すなわち、それぞれのセンサ33がそれぞれの測定を行うとき)、それぞれのセンサ33によって生じる信号を得ることを想定する。好ましくは、BTD45は、例えば補間により、それぞれのセンサ33によって与えられる信号の一時的なアラインメントを行うために必要な事前のフィルタリングを行うことを想定する。代替として、時間的なリアラインメントは、ECU31によって行われる。また、BTD45は、一時的に正しい(すなわち、アラインメントが行われている、又は互いに同期されている)センサ33によって行われるデータにアクセスする。
【0061】
任意に、通信システム40は、BTD45と動作可能に接続されている追加のセンサを備える。このセンサ、例えば、ジャイロスコープ及び/又は加速度計のような慣性型のセンサは、車両1,2の剛体に対する局部振動の影響を測定して補正するため、有利であるように、アンテナ41に配置されている。
【0062】
本発明の実施形態に記載の方法において、それぞれの通信システム40は、空間内のアンテナ41,41Bの動作、特に、それぞれの車両1,2の動作を効率的且つ正確に決めるため、センサ33によって与えられる少なくとも一部のデータを用いるように構成されている。
【0063】
また、以下に詳細に説明するように、センサ33によって行われる測定は、アンテナ41の位置を予測して、且つアンテナ41のビームを制御するため、車両に設けられている通信システム40によって利用される。特に、通信システムは、無線信号の特に効率的なやりとりができる2つのアンテナ41,41Bの間の見通し線において、通信チャンネルを形成する。
【0064】
[予測の手順]
本発明の実施形態に従って、予測の手順600は、移動車両1のダイナミクスを予測するため、実行される。すなわち、車両1とそれぞれの通信システム40の未来位置と未来方向、特にダイナミクスDとアンテナ41の未来位置と未来方向を推定することができる。必然的に、以下に説明する予測の手順は、第2の車両2によって実行され得る。
【0065】
本明細書において、「ダイナミクス」という用語は、経時的な物体の動作の変遷を示すように用いられる。特に、アンテナのダイナミクスDは、通信システム40のアンテナ41の空間における位置と角度の方向の経時的な動向を示す。
【0066】
図1及び
図5を参照して、車両1の挙動は、車両のデカルト型座標系R
V1によって説明される。この座標系R
V1は、原点P
V1及び3つの角度、すなわちヨー角とピッチ角とロール角によって定められる。ヨー角とピッチ角とロール角は、まとめて、ベクトルΘ
V1によって示す。好ましくは、原点P
V1は、車両1の質量中心又は重心に対応する。
【0067】
考えられる実施例において、車両1は、それぞれの原点PV1を通過する3つの軸、すなわち縦軸X1、横軸Y1、及び垂直軸Z1によって定められる3次元空間において移動及び回転できる剛体として考えられ得る。この前提において、縦軸X1周りの回転の角度は、ロール角θr1と呼称される。横軸Y1周りの回転の角度は、ピッチ角θb1と呼称される。垂直軸Z1周りの回転の角度は、ヨー角θi1と呼称される。
【0068】
それ以外には、車両1のアンテナ41の動作を説明するため、原点PCA及び3つの角度、すなわちロール角θrAとヨー角θiAとピッチ角θbAによって定められるデカルト型のアンテナ座標系RCAについて記載している。ロール角θrAとヨー角θiAとピッチ角θbAは、まとめて、ベクトルΘCAによって示す。好ましくは、原点PCAは、アンテナ41の質量中心又は重心に対応する。
【0069】
同様に、車両2の挙動を説明するため、PV2を原点とする車両のデカルト座標系RV2について記載している。一方、アンテナ41Bの挙動を説明するため、PCBを原点とするアンテナのデカルト座標系RCBについて記載している。
【0070】
考えられる実施例において、アンテナ41は、それぞれの車両に固く接続されている。したがって、座標系R
V1,R
CAの原点と角度の間において、以下の数2を定めることができる。
【数2】
Mは、好ましくは経時的に一定であるベクトルを示す。また、Aは、車両1とアンテナ41の質量中心の間の相対位置と相対方向の差を示す好ましくは一定の角度の値のベクトルを示す。有利であるように、ベクトルM,Aに含まれる値は、BTD45に設けられている、又は別に動作可能に接続されているメモリユニット(図示せず)に保存される。例えば乗員とその位置による車両の荷重変化により、原点P
V1の座標が移動し得る。関連している補正により、ベクトルM(t),A(t)は、車両の変化した動的条件に対して構成され得る。
【0071】
この前提において、手順は、最初に、それぞれの車両1のセンサ33によって検出される少なくとも一部の測定値が得られること(
図6のフロー図のブロック601)を想定する。ある実施形態において、通信システム40のBTD45は、車両1の車載電子システム30のBUS35及び/又はECU31との接続を通して、このデータを得るように構成されている。
【0072】
特に、センサ33によって検出される物理的な大きさの測定値は、
場合により、車載電子システム30のECU31及び/又は別の処理ユニットによって処理される。また、この物理的な大きさの測定値により、車両1の線形速度
【数3】
と角速度
が決まり得る。
【0073】
必要ではない一方、好ましくは、通信システム40、特にBTD45は、センサ33によって検出される測定値を得るように構成されている。このセンサ33により、車両1の速度は縦軸X1の方向に沿って決められ得る。また、通信システム40、特にBTD45は、車両1の1つ以上の角速度、さらに好ましくは車両1の線形加速度を得るように構成されている。このセンサ33により、車両1の線形速度と角速度を正確に決めることができる。
【0074】
有利であるように、手順600は、車載電子システム30のセンサ33の間に設けられている速度センサによって、車両1の長手方向、すなわち縦軸X1の方向における速度を直接得ること(ブロック601a)を想定する。例えば、長手方向の速度は、車両自体を制御するため、車両1に設けられている車輪速度センサ、速度計、及び/又はピトー管によって検出される測定値によって、直接得られてもよい。
【0075】
同様に、車両1の角速度
【数4】
は、好ましくは、センサ33に設けられているジャイロスコープによって与えられる測定値を得ることによって得られる(ブロック601b)。
代替として、アンテナ41の角速度
は、存在する場合、通信システム40に設けられているジャイロスコープによって得られてもよい。第3の代替において、ロール角速度とヨー角速度は、センサ33によって与えられる測定値により、間接的に推定され得る。センサ33は、横軸Y
1と垂直軸Z
1に沿う車両1の線形加速度、及び/又は車両1のサスペンションの伸びを測定する。
【0076】
それ以外には、車両1の車載電子システム30は、少なくとも地上車の場合、横方向と垂直方向に沿って速度を直接測定するように構成されているセンサ33を備えない。
【0077】
したがって、手順600は、サスペンションの伸びセンサ及び/又はセンサ33の間に設けられている垂直加速度計によって与えられる加速度の測定値を得て(ブロック601c)、垂直軸Z1の方向において、車両1の垂直速度を決めるように伸びセンサと垂直加速度計を組み合わせることを想定する。同様に、手順600は、横軸Y1の方向における車両1の横速度を決めるように、車載電子システム30のセンサ33によって検出される測定値、例えば縦加速度、横加速度、ヨー角速度、及び/又は長手方向の速度を得て、且つ組み合わせることによって、得ること(ブロック601d)を想定する。
【0078】
また、手順600は、可能な場合、ステアリング角度、ブレーキ圧、及び/又は車両1のエンジンによって駆動輪に向けて伝達されるトルクなどのECU31によって処理されるデータのように、センサ33によって与えられる別のデータを得ることを想定し得る。このデータにより、走行条件に関わらず、ブロック601c,601dにおいて説明される車両1の垂直速度と横速度を組み合わせて、車両1の垂直速度及び/又は横速度の正確な推定が得られる。特に、実速度又は加速度の値を計算するため、異なるセンサによって与えられる測定値の数字が大きいほど、推定値の精度が向上する一方、同時に、推定を行うために必要な時間及び/又は計算電力が大きくなる。
【0079】
したがって、異なる実施形態において、車両1のアンテナ41のダイナミクスDを計算するため、異なる大きさのデータが、センサ33の異なるセットから生じて、用いられ得る。
【0080】
手順はまた、走行条件に対する車両1の特に横方向に沿う線形速度
【数5】
及び角速度
の推定の精度とロバスト性をさらに増加するように、例えばIEEE2018 European Control Conference(ECC)(2018年、リマソル)941~946ページにおいて公開されたO.Galluppi、M.Corno、及びS.M.Savaresiらの「高性能自動車のための混合運動学的物体の横滑り角推定器」の論文に記載されている車両1の質量及び/又は幾何学的特性のような車両1の特性パラメータを用いること(選択的ブロック601e)を想定し得る。この場合、パラメータは、BTD45に設けられているメモリ領域(図示せず)に保存され得る、又は車載電子システム30のECU31及び/又は別の処理ユニットによって得られる。
【0081】
例えば、BTD35は、いずれかのデータが、センサ33の一部又はESCサブシステムのようないずれかのサブシステムによって、車両1のECU31及び/又は別の処理ユニットに送られるたび、又はいずれかのデータがBUS35に送られるたび、センサ33によって取られる測定値を得られる。有利であるように、BTD45はまた、それぞれのデータと関連している相対時間情報、例えばそれぞれのデータを得るための瞬間の時間を検出する。有利であるように、センサ33によって検出される測定値は、車両1の動作の正確な予測ができる適切な時間間隔により、BTD45によって周期的に得られる。例えば、時間周期は、検出された車両1の速度、及び/又はステアリング、ブレーキ頻度などのような方向の変化量を示すデータに応じる。また、センサ33によって検出される測定値は、BTD45によって非同期的に得られる。さらに、予測の手順600は、別の通信システムとの無線信号のやりとりが開始されるときだけ、実行され得る。
【0082】
当業者に対して明らかであるように、センサ33によって与えられる測定値は、車両1の質量中心と関連している座標系RV1を参照する。この座標系RV1は、アンテナ41、すなわち方向付けされる無線信号の発信元と関連している座標系RCAと異なる。すなわち、出願人は、効率的な無線通信が得られるように、車両1の質量中心よりもアンテナ41が参照されるため、センサ33によって与えられる測定値が処理される必要があることを定めている。
【0083】
したがって、本発明の実施形態において、アルゴリズムは、アンテナ41のダイナミクスDを予測するため、アンテナ41、すなわち原点PCA及びベクトルΘCAに含まれる角度のダイナミクスを経時的に計算するように実行される。特に、BTD45Aは、未来時間間隔[t0;t0+Δt]内において、アンテナ41のダイナミクスDを予測するように構成されている。t0は、センサ33によって与えられるデータが得られる瞬間の時間を示す。また、Δtの最大値は、BTD45の計算能力と所望のアンテナ41の指向精度に応じる。このように、瞬間t0におけるアンテナ41の座標系に対して、アンテナ41の未来方向の変化と移動の予測を得ることができる。この予測は、デッドレコニングの名称によって知られている方法により、実行され得る。
【0084】
この方法の第1の実施形態において、上述のように得られる車両1の線形速度
【数6】
と角速度
は、未来時間間隔[t0;t0+Δt]における車両1の位置と方向の変化を得るため、積分される。
第1に、方向の変化は、方向と角速度の間の運動学的関連性を説明する微分方程式
【数7】
を積分することにより、得られる。
R
θ(ΔΘ
V1(t))は、適切な運動学的行列である。この数7の積分から、座標系R
V1の方向の変化ΔΘ
V1(t+Δt)を得ることができる。
第2に、座標系R
V1の運動は、運動学的行列R
P(ΔΘ
V1(t))により適切に再射影される線形速度
【数8】
を積分することにより、計算される。
【数9】
数2により、予め得られる移動の変化ΔP
V1(t+Δt)と方向の変化ΔΘ
V1(t+Δt)を理解して、未来時間間隔[t0;t0+Δt]の一般的な瞬間tにおける車両1のアンテナ41の移動の変化の予測ΔP
CA(t)と方向の変化の予測ΔΘ
CA(t)を計算することができる。
【0085】
第2の別の実施形態において、車両1が剛体である近似を考慮して、原点P
CAの速度と角速度は、以下の数10により導かれ得る。
【数10】
すなわち、アンテナ41の原点P
CAの線形速度
【数11】
は、車両1の原点P
V1を参照する車両の線形速度
と、車両1の角速度
の寄与の和から生じる。角速度
をベクトルMとかけることにより、アンテナ41の原点P
CAに変換される。数7と数9を適用することにより、アンテナ41と関連している線形速度と角速度の積分によって、未来時間間隔[t0;t0+Δt]に含まれる一般的な瞬間tにおけるアンテナ41の位置の変化ΔP
CA(t)と方向の変化ΔΘ
CA(t)が得られる。
【0086】
ある実施形態において、未来時間間隔[t0;t0+Δt]において想定されるアンテナ41のダイナミクスDは、少なくとも一時的に保存される(ブロック605)。特に、アンテナ41のダイナミクスDの予測は、時間に基づくパラメータ関数、及び/又は未来時間間隔[t0;t0+Δt]に含まれる連続的な瞬間の時間t1,t2,…tm(mは自然数に属する)において計算されるアンテナ41の位置と方向の値若しくは一連の値として保存され得る。
【0087】
予測の手順600を終了するとき、通信システム40、特にBTD45は、未来時間間隔[t0;t0+Δt]におけるアンテナ41のダイナミクスDの利用できる予測、又は同様に、未来時間間隔[t0;t0+Δt]におけるアンテナ41の未来位置と未来方向の予測を有する。
【0088】
異なる実施形態において、アンテナ41の移動の変化ΔPCA(t)と方向の変化ΔΘCA(t)は、当業者に知られている他のデッドレコニングの技術を適用することにより、得られる。一方、センサへのアクセス、車両のパラメータ、及び車両の情報は、自律航法アルゴリズムの実行のための制御システムの要求に対して、適切な精度により、アンテナ41の移動の変化ΔPCA(t)と方向の変化ΔΘCA(t)の予測を得るために請求されている方法の特有の適格な態様である。
【0089】
明らかであるように、上述の手順600は、車両2の通信システム40Bにより、同じ方法で実行され得る。
【0090】
[指向の手順]
本発明の実施形態に従って、
図7及び
図8を特に参照して、見通し線における通信チャンネルを定めて保つように、2つの移動車両1,2のアンテナ41,41
Bの指向の手順700を示す。有利であるように、指向の手順700は、車両1,2の通信システム40により実行される。
【0091】
初期通信時間周期又はタイムフレームTF0において、ビームアラインメントステップ(ブロック701)又はBAは、従来技術と同じ方法で行われる。例えば、通信システム40の一部が、場合によって、空間内で異方的に発せられた無線信号を検出するとき、通信システムは、アラインメントステップを開始する。このアラインメントステップにおいて、知られている方法で、2つの車両の2つの通信システムは、異なる送信方向により、一連のプローブビームをやりとりして、最も小さな減衰を感知する送信方向を定める。
【0092】
アラインメントステップが完了するとき、アンテナ41,41Bによって発せられる無線信号は、時間の残存部分TDαに対して、通信システムが、アラインメントステップの間において選択される方向に沿って向けられる無線信号によりデータをやりとりすること(ブロック703)によって、実際の通信を始めるように、互いに向けられる。
【0093】
連続的なタイムフレームTFn(nは自然数に属する)において、信号間隔TSがある。ビーム形成は、アンテナ41,41Bの間の見通し線の通信チャンネルを保つため、未来時間間隔[t0;t0+Δt]におけるアンテナ41,41Bの移動と方向の予測に基づいて行われる。好ましくは、未来時間間隔[t0;t0+Δt]の期間Δtは、タイムフレームTFnの期間に対応する、又は別にタイムフレームTFnの期間を備える。したがって、アンテナ41,41Bの位置と方向の予測により、通信チャンネルは、タイムフレームTFnの全期間に対して、アンテナ41,41Bの間の見通し線に保たれる。
【0094】
例えば、それぞれのタイムフレームTF
nにおいて、それぞれの車両の通信システム40は、(
図5において、黒い太線により示す)見通し線R
LOS(t)、すなわち2つのアンテナ41,41
BをつなげるLOSと一致する半直線のそれぞれの通信方向を定める。この半直線に沿って、アンテナ41,41
Bの間において、やりとりされる無線信号が方向付けされる。
【0095】
詳しくは、手順は、未来時間間隔[t0;t0+Δt]に関して、他の車両2のアンテナ41Bに関連しているダイナミクス情報IBを受信すること(ブロック705)を想定する。同時に、車両1のアンテナ41に関連しているダイナミクス情報Iは、他の車両2に送信される。
【0096】
車両2から送信されて、車両1によって受信される一般的なダイナミクス情報I
Bは、例として、以下を備える。
a. 未来時間間隔[t0;t0+Δt]に含まれる1つ以上の連続的な瞬間の時間t
1,t
2,…t
m(mは自然数に属する)に対応するBTD45によって処理されるアンテナ41
Bの線形速度
【数12】
と角速度
の値。例えば、タイムフレームTF
nにおいて想定される少なくとも1つの線形速度
と角速度
の値。
b. データを受信する車両が、時間間隔[t0;t0+Δt]に含まれるいずれかの未来時間間隔においてデータを送信する車両のアンテナの位置と方向を推定できるダイナミクスのデータ。例えば、このダイナミクスのデータは、アンテナのダイナミクスが未来時間間隔[t0;t0+Δt]の間において定められ得るパラメータ、アンテナのダイナミクスを定めるように用いられ得るフィルタリング係数、又は車両の形状に対するセンサとアンテナの位置の情報と共に、車両に搭載されているセンサによって検出される1つ以上の測定値を備える。
【0097】
他の車両に送信される車両1のアンテナ41に関連しているダイナミクス情報Iは、ダイナミクス情報IBに対して開示される類似の情報を備える。
【0098】
予測の手順600は、アンテナ41のダイナミクスDを定めるように、すなわち、未来時間間隔[t0;t0+Δt]におけるアンテナ41の位置と方向の予測により、特に進行中のタイムフレームTFnにおいて、実行される(ブロック707)。有利であるように、手順600は、ダイナミクス情報の受信及び送信と並行して実行され得る。
【0099】
その後、受信されるダイナミクス情報は、未来時間間隔[t0;t0+Δt]、特に進行中のタイムフレームTFnにおいて、アンテナ41Bに対するアンテナ41の最適な指向を決めるように、予測の手順600により得られるアンテナ41のダイナミクスの予測D、すなわちアンテナ41の未来位置及び未来方向と組み合わされる(ブロック709)。この組み合わせの結果は、通信方向RLOS(t)である。この通信方向RLOS(t)に沿って、アンテナ41によって発せられる無線信号は、アラインメントされる。すなわち、通信方向RLOS(t)は、アンテナ41によって発せられる信号のビーム形成を定めるように利用される。好ましい実施形態において、BTD45は、受信されるダイナミクス情報IBをアンテナ41のダイナミクスDの推定と組み合わせるように構成されている。
【0100】
有利であるように、通信方向RLOS(t)は、対応するアンテナ41の座標系RCAに対して定められる。特に、通信方向RLOS(t)の原点は、アンテナ41の原点PCAに対応する一方、通信方向RLOS(t)の空間における方向は、アンテナ41Bの角度位置に応じる方位角φaA(t)と仰角φeA(t)によって定められ得る。
【0101】
したがって、未来時間間隔[t0;t0+Δt]に含まれる一般的な瞬間の時間tにおいて、通信方向R
LOS(t)を定める方位角φ
aA(t)と仰角φ
eA(t)は、アンテナ41,41
Bの移動と方向の変化の関数として説明される。
【数13】
φ
LOS,A(t)は、方位角φ
aA(t)と仰角φ
eA(t)を備えるベクトルである。
【0102】
特に、BTD45は、未来時間間隔[t0;t0+Δt]に含まれる少なくとも1つの瞬間の時間において、特に進行中のタイムフレームTF
nにおいて、それぞれのベクトルφ
LOS,A(t)を計算するように構成され得る。
a) 1つ以上の同じ瞬間の時間t
1,t
2,…t
m、例えばタイムフレームTF
nの最初の瞬間の時間、中間の瞬間の時間、及び/又は最後の瞬間の時間において、対応するBTD45によって処理される両方のアンテナ41,41
Bの線形速度
【数14】
と角速度
を組み合わせることによる計算。
b) 1つ以上の同じ瞬間の時間t
1,t
2,…t
m、例えばタイムフレームTF
nの最初の瞬間の時間、中間の瞬間の時間、及び/又は最後の瞬間の時間において、車載電子システム30のセンサ33によって検出される測定値、又はそれぞれのアンテナ41のダイナミクスDと共に受信されるダイナミクス情報I
Bに含まれるダイナミクスのデータを組み合わせることによる計算。
【0103】
有利であるように、センサによって得られるデータの信頼性/量/ノイズの間の1つ以上の指標、車載センサの取得システムの同時発生のレベル、無線信号に対して構成される通信標準などに基づいて、数字と1つ以上の別の瞬間の時間t1,t2,…tmを選択することができる。
【0104】
好ましい実施形態において、BTD45はまた、それぞれの通信方向RLOS(t)又はベクトルφLOS,A(t)を処理するため、車両1,2の間の距離Dist(t)を考慮するように構成されている。例えば、車両1,2の間の距離Dist(t)は、受信されるダイナミクス情報IBに含まれるGNSSシステム、レーダ、ライダ、超音波センサ、及び他のセンサのような車両自体の1つ以上の車載センサ33によって得られるデータにより、計算を行う車両のBTD45によって推定され得る。加えて、又は代替として、距離Dist(t)は、例えば、フォトカメラ及びテレビカメラのような計算を行う車両の他のセンサ33によって与えられる画像及び/又はビデオクリップに含まれる情報を処理することにより推定され得る。また、加えて、又は代替として、距離Dist(t)は、センサ33の助けなしに、他の車両とやりとりされる無線信号の到達時間(TOA)又は飛行時間(TOF)を決める計算を行う車両の通信システム40だけから推定され得る。
【0105】
処理の結果、特にベクトルφLOS,A(t)は、通信方向RLOS(t)に沿ってアンテナ41を指向するように用いられる(ブロック711)。
【0106】
特に、BTD45は、ベクトルφLOS,A(t)をBF制御モジュール435に与えるように構成されている。代替として、BTD45は、計算されるベクトルφLOS,A(t)に基づいて、1つ以上の指向指示を生じて、この指示をそれぞれのBF制御モジュール435に与えるように構成されている。ベクトルφLOS,A(t)又は指向指示を受け取った後、BF制御モジュール435は、補正指示を生じて、補正指示をビーム形成モジュール433に送る。このビーム形成モジュール433は、補正を、無線モジュール431によってコード化されて、アンテナ41によって送信される信号に適用する。
【0107】
送受信モジュール43が
図4に示す構成を有する場合、BTD45によって与えられるベクトルφ
LOS,A(t)又は指向指示は、BF制御モジュール435によって再処理されて、従来技術において共通して用いられるベースバンド等価モデルの複素数によって表される第1ビーム形成ユニット436によって生じる公称のビーム形成a
nの補正として、対応するビーム形成モジュール433の第2ビーム形成ユニット437に送られる。
【数15】
すなわち、アンテナ41に設けられているn番目のマイクロストリップアンテナ311の最初の手順(ビームアラインメント)の後、決められるビーム形成。
【0108】
第2のビーム形成ユニット437は、それぞれのアンテナ41の一般的なn番目のマイクロストリップアンテナ411に対するビーム形成係数bf
nにより、ビーム指向方向の補正を定める。例えば、ビーム形成係数bf
nは、複素数によって表される。
【数16】
第2のビーム形成ユニット437は、経時的に変化する複素係数b
n(t)によって、公称のビーム形成a
nを変更する。
【数17】
当業者に対して明らかであるように、
図4を参照して説明されている実施形態により、送受信モジュールが専用の電子回路又は個別化されない電子回路を備えて用いられる場合、アンテナ41によって発せられる無線信号のビームの最適化された指向が実行され得る。この電子回路は、無線モジュール431と第1ビーム形成ユニット436をまとめる。
【0109】
したがって、アンテナ41は、他のアンテナ41Bに対して正確に向けられる。また、アンテナ41Bは、他のアンテナ41に対して正確に向けられる。したがって、2つの車両1,2の通信システム40は、残存タイムフレームTFnの一部TDβに対して、無線信号により、データをやりとりできる(ブロック713)。
【0110】
説明されている指向の手順700により、それぞれの車両の通信システム40は、他の車両に取り付けられているアンテナ41の有効な現在位置に対して実質的に向けられる無線信号のビームを発し得る。
【0111】
当業者によって理解されるように、信号ウィンドウTSは、車両1,2の両方の通信システム40がダイナミクス情報I,IBの単一の送信を行うように、アラインメント時間間隔TBAよりも実質的に小さい。この単一の送信の後、車両1,2の両方の通信システム40は、無線信号の最適な方向付けを行い得る。このため、データの送信に割り当てられるタイムフレームの一部TDβは、最初に対する連続的なタイムフレームの間、従来のアラインメントステップが複数のプローブ信号の送信により行われる場合、タイムフレームの残存部分TDαよりも実質的に大きい。
【0112】
任意に、方法は、所定の数のタイムフレームの後、少なくとも別のアラインメントステップ(BA)を繰り返すことを想定する。このタイムフレームにおいて、通信システムは、関連するアンテナ41,41Bのダイナミクス情報D,DBのやりとりにより、アラインメントを保つ。好ましくは、別のアラインメントステップは、5から100までのタイムフレームに含まれる番号の後、周期的に繰り返される。通信システムは、関連するアンテナ41,41Bのダイナミクス情報D,DBのやりとりにより、アラインメントを保つ。さらに好ましくは、アラインメントステップが繰り返される頻度は、装置のダイナミクスの推定の精度、及び/又は受信される信号の品質に応じて、例えば、ノイズ信号又はSNRの比率に関して評価されて、通信システム40によって決められる。このように、時間の経過と共に増加して、ビーム形成の精度を減少し得る誤差の蓄積による寄与を周期的にリセットすることができる。
【0113】
[実施例]
例として、本発明の実施形態に記載の方法の実行の一部の実施例は、第1車両1が第2車両2に続く
図4,5,9A~9C,10A,10Bに示す設定に基づいて、以下に示す。簡単化のため、この実施例は、説明されている座標系の方向の変化ΔΘ
CA(t)を考慮する。一方、類似の手順により、移動の変化ΔP
CA(t)を含む分析を拡げることができる。
【0114】
車両1,2の動作の間、ロール角θr1,θr2、ピッチ角θb1,θb2、ヨー角θi1,θi2の値は、それぞれの車両1,2の辿る経路、路面条件、種々のひずみ、及び動作自体のような種々の要因により、経時的に変化する。
【0115】
車両1を考慮すると、一般的な瞬間tにおける車両1のピッチ角Δθ
b1の変化は、以下の数18によって近似され得る。
【数18】
【数19】
は、車両1の標準状態(例えば、初期位置、又は車両1の前の測定の瞬間における位置)において考えられる、垂直軸Z
1に沿って測定される水平面Sに対する原点P
V1の(地面Sに対する)高さを示す。
h
1(t)は、車両1に対応する瞬間の時間tにおける横軸Y
1周りの回転、すなわち車両1のピッチの間、縦軸X
1に沿う車両1の長手方向の端部(
図9Aの実施例における車両の「ノーズ」)の水平面Sに対する高さを示す。
l
L1は、車両1の長手方向の(すなわち軸X
1に沿う)拡がりを示す。
【0116】
同様に、瞬間tにおける車両1のヨー角Δθ
i1の変化は、以下の数20によって近似され得る。
【数20】
【数21】
は、標準状態(例えば、初期位置、又は車両1の前の測定の瞬間における位置)において、横軸Y
1に沿って測定される車両1の原点P
V1と横方向端部(
図9Bの実施例における車両の「側面」)との間の距離を示す。
j
1(t)は、瞬間の時間tにおいて検出されて、垂直軸Z
1周りの車両1の回転、すなわち車両1のヨーによって変更される、標準状態における車両1の横方向端部と横軸Y
1における長手方向端部の位置との間の測定される距離に対応する。
l
L1は、車両1の長手方向の(すなわち軸X
1に沿う)拡がりを示す。
【0117】
最後に、瞬間tにおける車両1のロール角Δθ
r1の変化は、以下の数22によって近似され得る。
【数22】
【数23】
は、車両1の標準状態(例えば、初期位置、又は車両1の前の測定の瞬間における位置)において考えられる、垂直軸Z
1に沿って測定される水平面Sに対する原点P
V1の(
図9Cに示すように、
の場合において、地面Sに対する)高さを示す。
k
1(t)は、瞬間の時間tにおいて検出されて、縦軸X
1周りの車両1の回転、すなわち車両1のロールによって変更される、横軸Y
1に沿う標準状態における車両1の横方向端部と水平面Sと間の測定される距離に対応する。
l
T1は、車両1の横方向の(すなわち軸Y
1に沿う)拡がりを示す。
【0118】
当業者に対して明らかであるように、車両2の場合、同じ結果が得られる。
【0119】
ロール、ヨー、及びピッチは、車両1,2のアンテナ41,41Bの空間における位置と方向を変えるように、車両1,2の間の無線信号のやりとりに影響を与え得る。
【0120】
それぞれの車両1,2において、BTD45は、センサ33によって与えられるデータに基づいて、車両とアンテナ41のヨー角、ピッチ角、及びロール角の変化を定める。
【0121】
図1,5に示す車両1,2が直線経路を移動する場合、両方の車両のピッチ角の変化がゼロ、すなわちΔθ
b1=Δθ
b2=0である。この条件において、車両1の見通し線角
【数24】
は、以下の数25によって与えられる。
【数25】
車両1の見通し線角
【数26】
は、アンテナ41の原点P
CAに対して対応する見通し線角
に変換される。類似の結果が車両2に対して得られる。
【0122】
代替として、例えば、車両1,2が、(
図10A,10Bに示す)上り坂勾配と下り坂勾配を有する経路をたどる場合、及び/又はブレーキ、振動、及び車両1,2の配置の変化のため、車両1,2が、ゼロと異なるピッチ角の変化Δθ
b1,Δθ
b2を有するとき、写角Ψ
LOS,Z1-2(t)は、以下の数27のように修正される。
【数27】
この数27は、ブレーキによる振動が、一般的にメートルのオーダである車両1,2の間の距離に対してミリメートル/センチメートルのオーダであるとき、無視され得ることを考慮して近似される。
【数28】
車両1の見通し線角
【数29】
は、アンテナ41の原点P
CAに対して対応する見通し線角
に変換される。類似の結果が車両2に対して得られる。
【0123】
同様に、縦軸X
1に対する見通し角Ψ
LOS,X1-2(t)のヨーの影響は、以下の数30によって定められ得る平衡状態から以下の数31によって定められる動的状態に向けて変化する。
【数30】
【数31】
車両1の見通し線角
【数32】
は、アンテナ41の原点P
CAに対して対応する見通し線角
に変換される。
【0124】
したがって、車両1において、BTD45
Aは、見通し線角
【数33】
の予測を得るように、角度の変化Δθ
b,A(t),Δθ
i,A(t),Δθ
r,A(t)によって表されるアンテナ41の位置の予測を、角度の変化Δθ
b,B(t),Δθ
i,B(t),Δθ
r,B(t)によって表されるアンテナ41
Bの位置の予測と組み合わせて、通信方向の方位角φ
aA(t)と仰角φ
eA(t)を備えるR
LOS(t)を定める。
【0125】
したがって、BF制御モジュール435Aは、タイムフレームTFnに対して、BTD45Aによって与えられるベクトルφLOS,A(t)に基づいて、係数b(t)を計算する。この係数は、BTDが新しいベクトルφLOS,A(t)を与えるとき、後続の信号ウィンドウTSの終了時に更新される。
【0126】
したがって、ビーム形成モジュール433Aは、ビーム形成を進めて、通信のラインRLOS(t)に沿って無線信号を送信するように、アンテナ41のマイクロストリップアンテナ411を確認する。
【0127】
同時に、車両2の通信システム40Bは、通信方向RLOS,B(t)に沿ってアンテナ41Bによって発せられる無線信号のビーム形成を得るまで、上述と同じ動作を行う。
【0128】
このようにして考えられる本発明は、複数の変更と変形の影響を受けやすい。すべての変更と変形は、本発明の概念の範囲に含まれる。
【0129】
例えば、手順600,700を含む方法は、極座標系のような異なる座標系を用いて実行され得る。
【0130】
車両1,2の1つのアンテナの存在だけが参照されている一方、車両に2つ以上のアンテナが設けられてもよく、すべてのアンテナ又はサブセットによって発せられる無線信号を方向付けるように、本発明に記載の方法を実行してもよい。
【0131】
また、本発明に記載の方法は、それぞれの動作ユニットに設けられているアンテナを制御するように構成されている。この場合、BTD45は、上述の処理に基づいて、ビーム形成を行うことなく、アンテナの位置を方向付けるため、アンテナの動作ユニットを作動させるように構成されている。また、アンテナの方向を機械的に且つビーム形成により制御するように、本発明の実施形態に記載の方法を用いてもよい。
【0132】
本発明に記載の方法が、例えばギガヘルツGHzとテラヘルツTHzのオーダのような異なる周波数帯域における関連の放射システムによる電磁波の指向送信に対して適用できることは、当業者に対して明らかである。この異なる周波数帯域において、受信モードと送信モードの両方で放射システムのように動作するアンテナ41,41Bによって放射システムを示す。より大きな周波数において、光学通信システム又は光学ワイヤレスシステムによって、電磁信号の発生を示す。放射システム41,41Bは、光学信号の1つ以上の発生器(例えば、変調を有するレーザ、可視光スペクトルのLEDシステムなど)、及び対応する1つ以上の光信号検出器(例えば、1つ以上のフォトダイオード)を備える。この場合、光発生器によって発せられるビームは、BTD45によって定められる指向にしたがって、光信号に対して関連する偏向システム(例えば、鏡)によって偏向される。
【0133】
必然的に、通信システム40又は少なくとも放射システム41が車両1に非剛体的に結合されている別の実施形態、及び/又は車両に与えられる荷重(例えば、場合によって移動し得る乗員及び物品)による車両及びそれぞれの放射システムの重心の経時的な変化を考慮する別の実施形態を提供してもよい。両方の場合、距離ベクトルMと角度ベクトルAは、時間と共に変化して、例えば、放射システム41の振動を測定するように構成されているセンサ33によって、ECU31により処理される情報にアクセスすることによって、又は他の追加のセンサによって与えられる測定値を処理することによって得られる。
【0134】
ある実施形態において、予測の手順600は、車載電子システム30のセンサ33の間に設けられているジャイロスコープと、通信システム40のジャイロスコープとの両方を用いることを想定し得る。この場合、与えられるデータは、より好ましい信号対雑音比、及び信頼性のある角速度
【数34】
を得るように互いに組み合わせられる。
【0135】
また、BTD45が、それぞれのECU31及び/又は別の車載電子システム30の処理ユニットに接続されて、他の目的、例えば車両の動作の補助及び/又は自動化のため、ECU31、及び/又は対応する車載電子システム30の別の処理ユニットによって既に処理されている垂直方向及び/又は横方向の速度の情報にアクセスするように構成されている別の実施形態を実行してもよい。
【0136】
別の実施形態において、線形速度に関して、それぞれのBTD45は、車両の線形速度を推定するように、(少なくとも2つのレセプタ要素を備える)車両のディファレンシャルGPSセンサを用いるため、設けられている。一方、ディファレンシャルGPSセンサの速度の測定値は、知られているように、例えばトンネル、地下道、又は地下駐車場の場合、必ずしも利用できない。したがって、このディファレンシャルGPSを用いることは、線形速度を得るようにデータが得られる他のセンサに加えてのみ好ましい。
【0137】
また、1つ以上の線形速度
【数35】
、例えばそれぞれの車両1,2の横軸Y
1,Y
2に沿う速度の推定は、エルゼビアの2017年10月の「Control Engineering Practice」の67巻1~12ページにおいて公開されたDonald Selmanaj、Matteo Corno、Giulio Panzani、及びSergio M.Savaresiらの「車両の横滑り推定。運動学に基づいた方法」の論文に記載されている車両1,2に関連している情報を含むことにより、改善され得る。特に、BTD45は、車載電子システム30との通信によってのみ、情報を得られる。
【0138】
代替として、又は加えて、BTD45は、放射システム41のダイナミクスの予測において、特に、放射システム41の線形速度をより正確に定めるため、ビームの穴、所望のビットレート、送信電力、受信感度などの放射システム41の特性パラメータのような、通信システム40の特性パラメータを用いるように構成され得る。
【0139】
本明細書が2つの車両を参照するだけである一方、本発明の実施形態が他の種類の車両、道路車両、船舶、航空宇宙船に適用できることは明らかである。同様に、本明細書に記載されている方法とシステムにより得られる無線信号の方向付けはまた、異なる種類の車両の間の通信の場合、実行され得る。
【0140】
また、通信方法及び通信システムV2Vが説明されている一方、本発明に記載の方法が、インフラストラクチャ又は「V2I」(例えば、通信ネットワークの基地局)、及び/又はより一般的にIoT装置、スマートフォン、タブレット、コンピュータ、又は「V2X」のような適切な放射送受信システム(ミリメートル波アンテナ、光無線システムなど)を備える他の装置に接続される固定されたアンテナ又は放射送受信システムのような車両と異なる目標装置に対する車両の間の異なる通信システムに対して構成され得ることは、当業者に対して明らかである。
【0141】
最後に、方法の1つ以上のステップが、異なる順番で、及び/又は並行して行われ得ることと同様に、すべての詳細は、技術的に同等な他の要素によって置き換えられ得る。
【0142】
実際には、用いられる材質、及び付随する形状と大きさは、この理由から、添付の請求項の保護の範囲から逸脱することなく、要件に従ういずれかのものであってもよい。