(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/01 20060101AFI20231218BHJP
B23Q 1/00 20060101ALI20231218BHJP
B23Q 1/64 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B23Q1/01 G
B23Q1/01 W
B23Q1/00 S
B23Q1/64 B
(21)【出願番号】P 2022093673
(22)【出願日】2022-06-09
(62)【分割の表示】P 2018105205の分割
【原出願日】2018-05-31
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000150604
【氏名又は名称】株式会社ナガセインテグレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】新藤 良太
(72)【発明者】
【氏名】植村 圭二
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-340661(JP,A)
【文献】特開平2-53538(JP,A)
【文献】特開2008-296312(JP,A)
【文献】特開平3-229016(JP,A)
【文献】特開昭58-22634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/01
B23Q 1/00
B23Q 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを支持可能にしたテーブルが走行される一方向に延長されたテーブル走行部をベッドの前部に設け、同ベッドの前下部に前記テーブル走行部の長さ方向に沿って前記ベッドの湾曲度合いを調節する調節手段を設け
、
前記調節手段は、同一軸線上において対向して設けられた一対の雌ねじ部と、操作部の両端に設けられた雄ねじを前記雌ねじ部に螺合した調節部材とよりなる工作機械。
【請求項2】
前記調節手段を前記テーブル走行部の下側における長さ方向の中央に配置した請求項
1に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般の工作機械は、ベッドがその四隅の4箇所において床面などの設置面に対して支持される、いわゆる4点支持である。このような4点支持は、設置面に対して4点すべてを均等な力で支持させることが難しく、その高さ調整に手間がかかるものである。
【0003】
この問題に対処するために、特許文献1に開示された工作機械として、ベッドを床面などの設置面に対して3点支持できるようにした構成が提案されている。特許文献1の工作機械は、単純なボックス形状のベッドの下面の3箇所に設置面に対する支持点を設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ベッドの湾曲度合いを調節できる工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明においては、ワークを支持可能にしたテーブルが走行される一方向に延長されたテーブル走行部をベッドの前部に設け、同ベッドの前下部に前記テーブル走行部の長さ方向に沿って前記ベッドの湾曲度合いを調節する調節手段を設けた。
【0008】
従って、本発明によれば、ベッドの湾曲度合いを調節できる。このため、テーブル走行部の水平面に対する変形度合いや、傾き角度を調節部材によって容易に微調整することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ベッドの湾曲度合いを調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の工作機械を上方から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すように、第1実施形態の工作機械は、ベッド10のベッド本体11,そのベッド本体11の前部においてX軸方向(左右方向)に移動可能に支持されたテーブル12を備えている。また、工作機械は、前記ベッド本体11の上面の両側に固定された一対の支持部材14及びその支持部材14上にZ軸方向(前後方向)に移動可能に支持された加工ユニット15を備えている。前記支持部材14は、前記ベッド10の一部を構成する。加工ユニット15はY軸方向(上下方向)に移動可能にした回転砥石16を備えている。そして、前記テーブル12上にワークが支持されて、テーブル12がX軸方向に移動され、回転砥石16がZ軸方向及びX軸方向に移動されて、回転砥石16により、ワークに対して所要の加工が施される。
【0012】
そこで、以下に、各部の構成を詳細に説明する。
はじめに、ベッド本体11及びその関連構成を説明する。
図1~
図3に示すように、ベッド本体11は、全体が鋳造によって一体形成され、ほぼ三角形状の底板部20,ほぼ三角形状の一対の斜辺部としての下部側板部21,ほぼ側面三角形状の一対の上部側板部22,前板部23,後板部24を備えている。両上部側板部22の上端には水平な上板部25が形成されるとともに、両上部側板部22の前面には立板部26が形成されている。
図6に示すように、前記前板部23の後部側には内側板部27が形成されている。そして、
図1に示すように、前記両上板部25間におけるベッド本体11の上面には開放部28が形成されている。
【0013】
図3に示すように、前記底板部20は前記斜辺部としての下部側板部21の形成により三角形状に形成されている。このため、底板部20には、前部側に三角形の2つの頂点部が形成されるとともに、後部側に三角形のひとつの頂点部が形成され、前部側の2つの頂点部に脚部としての前部脚31が、後部側の頂点部に脚部としての後部脚32が設けられている。一対の前部脚31は、1本のX軸方向の線上に位置し、後部脚32は両前部脚31間の中央を通るZ軸方向の線上に位置している。
図5に示すように、前部脚31は、斜面33を有する固定カム体34と、上下動可能にした脚部材35とを備え、脚部材35の上面には、前記斜面33と接する斜面36を有する可動カム体37が設けられている。脚部材35は、その前後の規制部39により、固定カム体34から外れないようになっている。脚部材35は床面などの設置面に設置されるものである。そして、調節ねじ38の回転に基づくねじの作用により、固定カム体34の斜面33に対して可動カム体37の斜面36が摺動して、カム作用により脚部材35が上下動される。その結果、前部脚31の高さが調節される。後部脚32の高さは固定である。
【0014】
図3,
図5及び
図6に示すように、前記後板部24は、下方側が前方に向かって後退するように傾斜している。前記底板部20の後端コーナ部は後板部24より後方に突出しており、その突出部に前記後部脚32が配置されている。底板部20の後端コーナ部と後板部24の外側面との間には、補強部としての一対の補強リブ41が一体形成されている。この両補強リブ41は側面三角形状に形成されるとともに、下方へ向かって相互に接近して収束するように傾斜されて、後部脚32の部分において一体化されている。前記下部側板部21の後端部29が補強リブ41の下端部まで延長されている。
【0015】
図1,
図2及び
図5に示すように、前記立板部26の前方において、両上部側板部22の前端間には上面及び両端面を開放したX軸方向に延在する樋形状のテーブル走行部43が形成され、前記両前部脚31がこのテーブル走行部43の両端部の幅方向中央の下方に位置している。テーブル走行部43の両端は端部材44によって閉塞されている。両端部材44間において、テーブル走行部43の前後の開口部には第1ガイドレール45が固定され、この第1ガイドレール45によってガイドされて前記テーブル12がX軸方向にスライド可能に支持されている。テーブル12はリニアモータ(図示しない)によってX軸方向に移動される。
【0016】
図1,
図2及び
図5に示すように、前記両上板部25の上面には前記開放部28の両側に位置する支持部材14がそれぞれ複数のボルト13によって固定されている。両支持部材14の前端上部には前方に突出するオーバーハング部51が形成されている。支持部材14の上面には、それぞれZ軸方向に延びる第2ガイドレール52が取り付けられている。この第2ガイドレール52は、前記オーバーハング部51を含む支持部材14のZ軸方向における全長にわたっている。
【0017】
図1及び
図2に示すように、前記第2ガイドレール52間の位置には前記開放部28内に位置する前記加工ユニット15の支持手段としてのユニットフレーム61がZ軸方向に移動可能に配置されている。このユニットフレーム61は、前記両第2ガイドレール52に支持された一対のスライダ62と、その両スライダ62間に架設固定された四角枠状の支持枠63を備え、その支持枠63の内側面には第3ガイドレール65が取り付けられている。そして、支持枠63は、リニアモータ66の駆動により、スライダ62とともに第2ガイドレール52に沿って前記開放部28内をZ軸方向に往復移動される。前記スライダ62の外側面には、湾曲部として外側に向かって円弧状に膨出する側部膨出部67が一体形成されている。前記支持枠63の内側面には複数の補強リブ68が一体形成されるとともに、後側面には湾曲部として円弧状に膨出する一対の後部膨出部69が一体形成されている。
【0018】
図1,
図2及び
図6に示すように、前記支持枠63内において、前記第3ガイドレール65には昇降枠71が昇降可能に支持されている。ユニットフレーム61には、モータ72の駆動によって回転されるボールねじ73がY軸方向線上において支持され、前記昇降枠71はボールねじ73の正逆回転により、昇降される。昇降枠71には、加工軸ユニットとしての砥石軸ユニット74が支持されており、この砥石軸ユニット74にはモータ75によって回転される砥石軸76が支持されている。砥石軸76の前端には、前記オーバーハング部51の前方に位置する前記回転砥石16が支持されている。
【0019】
本実施形態においては、前記第3ガイドレール65に支持されたユニットフレーム61,昇降枠71,砥石軸ユニット74などによって前記加工ユニット15が構成されている。そして、
図6に示すように、加工ユニット15が第2ガイドレール52に支持された状態において、加工ユニット15の重心αがベッド本体11の内部空間内に位置している。また、実施形態の工作機械の重心βが加工ユニット15の重心αより低いところに位置している。
【0020】
図3,
図4及び
図7に示すように、前記テーブル走行部43の長さ方向及び幅方向の中央部の直下において、ベッド本体11の下面には円弧状の凹部81が形成され、その両側部には一対の凸部82が形成されている。両凸部82の下面には受け部材83が固定され、この受け部材83には雌ねじ84が形成され、両雌ねじ84には雄ねじ部材85の両端部のねじ部が螺合されている。従って、雌ねじ84と雄ねじ部材85とによりターンバックルが構成されている。雄ねじ部材85のねじ部には緩み止めのためのダブルナットよりなるロックナット87が螺合されている。従って、雄ねじ部材85を回転させることにより、両受け部材83に接近または離間方向への力が作用し、その結果、ベッド本体11が変形して、第1ガイドレール45の真直度が調整される。
【0021】
前記上部側板部22,前板部23,後板部24,内側板部27及びテーブル走行部43には、それぞれ四角形,円形,三角形,台形や変形四角形などの形や大きさが様々の除肉部としての透孔91が透設されている。底板部20の下面には、複数の凹部90が形成されている。
【0022】
図6及び
図7に示すように、前記前板部23と内側板部27との間には、各一対のX軸方向において対称形状をなす補強部としての板状の第1補強フレーム92及び第2補強フレーム93が一体形成されている。第1補強フレーム92及び第2補強フレーム93は交差して一体化されている。第1補強フレーム92及び第2補強フレーム93の上下方向中間部には、除肉部としての四角形の透孔91が透設されている。第1補強フレーム92は前記テーブル走行部43の下面中央部と、前記上部側板部22及び底板部20交点部分の下端との間に介在されている。従って、この交点部分によって前部脚31及びその周辺部分が補強されており、この交点部分を含む第1補強フレーム92、ひいては第2補強フレーム93が補強部を構成している。第2補強フレーム93はテーブル走行部43の下面中央部と前記凹部81の部分における底板部20の内面側との間に介在されている。前記前板部23及び内側板部27の前記透孔91は、第1補強フレーム92及び第2補強フレーム93を除いた部分に形成されている。
【0023】
次に、以上のように構成された工作機械の作用を説明する。
本実施形態の工作機械においては、テーブル12上にワークが支持される。そして、回転砥石16が回転された状態で、昇降枠71が回転砥石16とともに第3ガイドレール65に沿ってY軸方向に移動されて高さ調整される。また、テーブル12が第1ガイドレール45に沿ってX軸方向に往復動されるとともに、砥石軸ユニット74が回転砥石16とともに第2ガイドレール52に沿ってZ軸方向に移動される。このため、回転砥石16により、ワークに対する研削加工が実行される。
【0024】
そして、本実施形態の工作機械は以下の効果がある。
(1)工作機械のベッド10の底板部20の底面の合計3箇所に前部脚31及び後部脚32を備えている。このため、本実施形態の工作機械は工場の床面などの設置面に3点支持より支持できる。つまり、設置面の平坦度に関わらず、工作機械を安定支持できる。この場合、前部脚31の調節ねじ38の操作により斜面33,36のカム作用によって前部脚31の脚部材35の高さを調整できて、工作機械の水平度及び高さを適切に維持できる。これに対し、4点支持構成のベッド場合は、脚部の高さの調整が面倒で、調整が不十分であると、重心移動が生じて、ワークの加工精度低下のおそれがある。3点支持の構成においては、このようなおそれは生じない。
【0025】
(2)ベッド本体11の底板部20が三角形状であるため、4点支持の四角形の従来の工作機械と比較してベッド本体11を小形化できる。従って、工作機械の軽量化が可能になる。従って、実施形態においては、底板部20をほぼ三角形状にするとともに、下部側板部21及び上部側板部22を三角形状にし、しかも、後板部24を下部側ほど前方に後退するように傾斜させたことにより、ベッド本体11の容積が小さくなって、さらに小形化及び軽量化される。このように、ベッド本体11を小形化できるため、ベッド本体11全体の剛性を向上させることができて、ワークに対する高い加工精度を得ることができる。加えて、ベッド本体11の各所には、必要強度を満たしつつ、凹部90及び透孔91が形成されているため、いっそうの軽量化が可能になる。従って、工作機械の設置場所の制約が少なくなり、移動や運搬も容易になる。
【0026】
(3)ベッド本体11を小形化して、ベッド本体11の容積を小さくし、さらに各部に凹部90及び透孔91が形成されているため、ベッド本体11の構成材料を少なくして、軽量化できる。このため、ベッド本体11の固有振動数を高くすることができる。従って、ベッド本体11の共振周波数が高くなって、加工精度が向上する。
【0027】
(4)ベッド本体11のテーブル走行部43を除いた部分がテーブル走行部43より幅狭形状に形成されている。しかも、そのベッド本体11は三角形状の下部側板部21の形成により後方に向かって収束するように幅狭になっている。従って、前記のように、ベッド本体11の小形軽量化を達成できて、高精度加工が可能になるとともに、ベッド本体11の下部側板部21の下側にスペースが形成されるため、このスペースを油圧配管や電線の設置のために利用できる。
【0028】
(5)テーブル走行部43の両端に対応して前部脚31が設けられているため、テーブル走行部43の後部側のベッド本体11がテーブル走行部43より幅狭形状であっても、テーブル走行部43の変形を抑制できて、高精度加工が可能になる。
【0029】
(6)テーブル走行部43の下部側が一体に交差するとともに、傾斜状の第1,第2補強フレーム92,93によって補強されているため、前記のようにテーブル走行部43の変形を抑制できて、高精度加工が可能になる。また、第1,第2補強フレーム92,93が傾斜するとともに、第1補強フレーム92の下端とベッド本体11の上部側板部22の下端位置とが合体しており、その合体部に前部脚31が位置している。また、第2補強フレーム93がベッド本体11の中央下部で収束して一体化されている。このため、テーブル走行部43に作用する加工圧力が第1,第2補強フレーム92,93に対してその圧縮方向への力として作用するため、テーブル走行部43の変形を有効に防止できる。
【0030】
(7)後部脚32がテーブル走行部43の長さ方向中央から後方に延長されたZ軸方向の線上に位置している。従って、後部脚32が砥石軸ユニット74を有するユニットフレーム61の移動域の直下に位置するため、ユニットフレーム61の移動が安定し、ワークの高精度加工に寄与できる。
【0031】
(8)ユニットフレーム61を第2ガイドレール52に支持するスライダ62には、横方向へ膨出する側部膨出部67が形成されているため、ユニットフレーム61の支持剛性が向上し、ワークの高精度加工に寄与できる。
【0032】
(9)ユニットフレーム61の支持枠63の内側に補強リブ68が形成されるとともに、後部側には後方へ膨出する後部膨出部69が形成されているため、前記と同様にユニットフレーム61の支持剛性が向上し、ワークの高精度加工に寄与できる。
【0033】
(10)ユニットフレーム61がその両側のスライダ62を介して第2ガイドレール52に支持されることにより、加工ユニット15がベッド本体11の上端の開放部28を介してベッド本体11の内部空間内に位置している。このため、工作機械の上端部分を形成する加工ユニット15を低位置に配置できて、工作機械全体の高さを低くできる。また、加工ユニット15の重心αの位置をベッド本体11内の低い位置に配置できるため、工作機械全体の高さを低くできることと相俟って、加工ユニット15の支持剛性が高くなり、加工ユニット15の振動を抑制して、ワークの加工精度を向上できる。
【0034】
(11)工作機械の重心βが前記加工ユニット15の重心αより低いところに位置しているため、工作機械として良好な設置安定性を得ることができる。従って、工作機械全体の振動を少なくして、ワークの加工精度の向上に寄与できる。
【0035】
(12)支持枠63の前端部が前方に突出して、オーバーハング部51が形成されているため、ワーク加工のために砥石軸ユニット74を前方へ移動させても、砥石軸76が片持ち状態になることはほとんどない。従って、砥石軸76を前方へ大きく移動させても、ワーク加工精度の低下を抑えることができる。
【0036】
(13)ベッド本体11の前板部23が下部側ほど後方へ後退するように傾斜している。従って、ベッド本体11の前側に位置する作業者のつま先などの下肢が前板部23と干渉しにくく、作業がしやすいものとなる。
【0037】
(14)工作機械の躯体がベッド本体11,支持部材14,支持枠63,スライダ62,ユニットフレーム61などの複数の部材によりユニット構成になっているため、それらの成形が容易である。また、各部材の組付けの位置関係を調整することにより、X軸、Y軸及びZ軸に移動される部材の移動精度を正確なものに設定できる。
【0038】
(15)後部脚32の上部側を補強リブ41によって補強しているため、後板部24の下部側が前方に傾斜していても、後部脚32の部分の強度及び剛性を確保できる。
(16)ベッド本体11の前端部の下部中央にターンバックル状の調節部材86が設けられている。そして、ロックナット87を緩めて、調節部材86を回転操作することにより、ねじの作用により、ベッド本体11の前下部における中心を中心とした湾曲度合いを調節できる。このため、テーブル走行部43の水平面に対する変形度合いや、傾き角度を調節部材86によって容易に微調整できて、テーブル12の移動精度を向上でき、ひいてはワークの加工精度を向上できる。
【0039】
(17)ベッド本体11の各部に凹部90や透孔91が形成されているため、この凹部90や透孔91を介して工作機械の内部と外部との間の空気の流通がスムーズになる。このため、工作機械の内外の温度差を抑えることができ、温度歪を小さくできて、ワークの加工精度を向上できる。また、透孔91を介して工作機械の内部の状況を確認したり、点検したり、清掃したりすることが可能になるため、メンテナンス性を向上できる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
図8及び
図9に示すように、ベッド本体11の中央下部の凹部81内の両側には、それぞれ斜面96を有する一対の固定楔部材95が固定されている。ベッド本体11には調節ねじ97が固定位置において回転可能に支持されている。この調節ねじ97には、両側面に斜面98を有する可動楔部材99がその雌ねじ100において螺合されている。そして、可動楔部材99の両側面の斜面98が固定楔部材95の斜面96に圧接している。
【0041】
従って、調節ねじ97が回転操作されることにより、ねじの作用により、可動楔部材99がZ軸方向の一方または他方へ移動して、楔作用により、固定楔部材95に対して同固定楔部材95の拡開方向またはその逆方向へ移動される。このため、ベッド本体11の撓み量が調節されて、第1ガイドレール45の真直度が調節される。
【0042】
(変更例)
本発明は前記第1,第2実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様で具体化することも可能である。
【0043】
・ターンバックル状の調節部材86の設置位置を、例えば、ベッド本体11の後部側などの位置に変更すること。
・ターンバックル状の調節部材86の設置数を変更すること。例えば、ベッド本体11の前下部における中央位置に加えて、ベッド本体11の下部における後部位置や両側位置にも設けること。あるいは、ベッド本体11の上下方向中間位置や、上部位置に設けること。
【0044】
・前記実施形態においては、工具として回転砥石を設けたが、その回転砥石に代えて、ドリル,フライス,エンドミル,ホブなど、別の種類の工具を設けること。
・除肉部としての凹部90及び透孔91のうちの一方を省略すること。
【0045】
・斜辺部としての下部側板部21を省略し、斜辺部を構成するように、上部側板部22を実施形態の下部側板部21と同様に下部側に後退する傾斜状にすること。
・ベッド本体11と支持部材14とを一体化すること。
【0046】
・ベッド本体11の変形量を調節するための調節手段として、ベッド本体11に同一軸線上において一対の雄ねじを突設し、両雄ねじ間には、その両雄ねじに螺合するナット状の雌ねじを設けて、その雌ねじにより両雄ねじ間を接近・離間させるように構成すること。
【0047】
(他の技術的思想)
前記実施形態及び変更例から把握される技術的思想を以下に列記する。
(A)ベッドの前部の上部に、ワークを支持可能なテーブルが走行されるテーブル走行部を設け、ベッドの底面の3箇所には、ベッドの設置のための脚部を設け、前部側の一対の脚部をテーブル走行部の長さ方向の両端部に配置し、前記テーブル走行部の長さを、その後部側のベッドの幅より長く形成した工作機械。
【0048】
以上のように構成すれば、ベッドを小形化できる。
(B)後部側の前記脚部を前記テーブル走行部の長さ方向の中央の後方に配置した前記技術的思想(A)項に記載の工作機械。
【0049】
以上のように構成すれば、工作機械を床面などの設置面に安定状態で設置できる。
(C)ベッドの一部に、同一軸線上において対向して設けられた一対の雌ねじ部と、操作部の両端に設けられた雄ねじを前記雌ねじ部に螺合した調節部材とよりなる調節手段を設けた工作機械。
【0050】
このように構成すれば、調節手段によってベッドを変形させて、テーブルの移動域の水平度や真直度などを調節できる。なお、この構成においては、脚の4点支持など、実施形態以外の他の構成の工作機械にも適用可能である。
【0051】
(D)前記ベッドの一部には、固定楔部材と、その固定楔部材と係合する可動楔部材とを設け、前記両楔部材の楔作用によってベッドの変形度合いを調節するようにした前記技術的思想(C)項に記載の工作機械。
【0052】
このように構成すれば、両楔部材の楔作用によってテーブルの移動域の水平度や真直度などを調節できる。
(E)ベッドの前部に一方向に延在するテーブル走行部を設け、前記調節手段を前記テーブル走行部における長さ方向の中央に対応して配置した工作機械。
【0053】
このように構成すれば、テーブル走行部の水平度や真直度などを正確に調節できる。
なお、分割当初の技術分野、背景技術、発明が解決しようとする課題、課題解決手段及び効果は以下のとおりである。
本発明は、ベッドを床面などの設置面に対して3点支持できるようにした工作機械に関するものである。
一般の工作機械は、ベッドがその四隅の4箇所において床面などの設置面に対して支持される、いわゆる4点支持である。このような4点支持は、設置面に対して4点すべてを均等な力で支持させることが難しく、その高さ調整に手間がかかるものである。
この問題に対処するために、特許文献1に開示された工作機械として、ベッドを床面などの設置面に対して3点支持できるようにした構成が提案されている。特許文献1の工作機械は、単純なボックス形状のベッドの下面の3箇所に設置面に対する支持点を設けたものである。
特許文献1に記載の工作機械においては、3点支持であっても、ベッドは単純なボックス形状をなしている。そして、ベッドは、十分な強度や安定性を確保するものを鋳造で構成する必要があるため、大重量になることを回避困難であるばかりでなく、ベッド全体の剛性が低下する。この剛性低下は、ワークに対する加工精度の低下につながる。そして、このようにボックス形状のベッドは、3点で支持すると、不安定になりやすい。また、ベッドは、容積が大きく大重量であるため、固有振動数が低くなり、従って、加工精度に悪影響を与える共振周波数が低くなる結果となる。このように、共振周波数が低くなると、振動の振幅が大きくなって、加工精度の低下が招来される。
本発明の目的は、3点支持構成のベッドにより、ワークに対する加工精度を向上できるようにした工作機械を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明においては、ベッドの底面の3箇所にそのベッドの設置のための脚部を備え、前記ベッドにはベッドの底面を三角形状にするための斜辺部を形成したことを特徴とする。
従って、本発明によれば、工作機械を工場の床面などの設置面に3点支持より支持できる。従って、設置面の平坦度に関わらず、工作機械を安定支持できる。そして、ベッドの底面が三角形状に形成されているため、4点支持の従来の工作機械と比較してベッドを小形化及び軽量化することが可能になる。このようにベッドを小形化できるため、ベッドの剛性が向上し、ワークに対する加工精度を上げることが可能になる。また、ベッドを小形化できるため、工作機械の設置場所の制約が少なくなり、その工作機械の移動や運搬も容易になる。ベッドを軽量化することにより、ベッドの固有振動数を高くすることができる。このため、ベッドの共振周波数が高くなって、加工精度が向上する。
本発明によれば、3点支持構成のベッドにより、ワークに対する加工精度を向上できるという効果を発揮する。
【符号の説明】
【0054】
10…ベッド、11…ベッド本体、12…テーブル、14…支持部材、15…加工ユニット、16…回転砥石、20…底板部20…下部側板部、22…上部側板部、23…前板部、24…後板部、25…上板部、26…立板部、27…内側板部、28…開放部、31…前部脚、32…後部脚、43…テーブル走行部、51…オーバーハング部、61…ユニットフレーム、67…側部膨張部、68…補強リブ、69…後部膨張部、73…ボールねじ、74…砥石軸ユニット、77…回転砥石、84…雌ねじ、85…雄ねじ部材、86…調節部材、91…透孔、92…第1補強フレーム、93…第2補強フレーム。