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特許7403889光学式遠隔気流計測装置を用いた方法、及び風況観測システム
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  • 特許-光学式遠隔気流計測装置を用いた方法、及び風況観測システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】光学式遠隔気流計測装置を用いた方法、及び風況観測システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/95 20060101AFI20231218BHJP
   G01W 1/00 20060101ALI20231218BHJP
   G01W 1/08 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
G01S17/95
G01W1/00 A
G01W1/08 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023051530
(22)【出願日】2023-03-28
【審査請求日】2023-03-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和4年12月19日に、グランド再生可能エネルギー2022国際会議にて発表 (2)令和5年3月22日に、一般社団法人日本風力エネルギー学会発行の日本風力エネルギー学会論文集令和5年2月第46巻第4号(通巻第144号)にて発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500441552
【氏名又は名称】日本気象株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 啓朗
(72)【発明者】
【氏名】圓尾 太朗
(72)【発明者】
【氏名】町田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】高祖 研一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 武徳
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/208375(WO,A1)
【文献】特開2010-127840(JP,A)
【文献】特開昭62-219803(JP,A)
【文献】米国特許第07643135(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工飛行体を飛行させる第1ステップと、
光学式遠隔気流計測装置から射出したレーザー光を前記人工飛行体に当てる第2ステップと、
前記人工飛行体で反射した光を前記光学式遠隔気流計測装置で検出する第3ステップと、
前記人工飛行体を経緯儀の視野内に入れる第4ステップと、
を有しており、
前記第3ステップでは、前記人工飛行体は、前記光学式遠隔気流計測装置から得られる、方位角軸と仰角軸を有する二次元像に含まれており、
前記第4ステップでは、前記経緯儀の視野内に入っている前記人工飛行体に、前記レーザー光が当てられており、
更に、前記経緯儀により特定される前記人工飛行体の方位を真値として前記光学式遠隔気流計測装置で検知された前記人工飛行体のずれを把握するステップを有する方法。
【請求項2】
前記ずれを把握するステップは、前記光学式遠隔気流計測装置で検知される前記人工飛行体の仰角と、前記経緯儀の視野内に入った前記人工飛行体の仰角との相違量(以下「仰角相違量」)を取得する第5ステップを有している請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記ずれを把握するステップは、前記光学式遠隔気流計測装置で検知される前記人工飛行体の方位角と、前記経緯儀の視野内に入った前記人工飛行体の方位角との相違量(以下「方位角相違量」)を取得する第6ステップを有している請求項に記載の方法。
【請求項4】
更に、前記光学式遠隔気流計測装置から得られる、方位角軸と仰角軸を有する二次元像において、捉えられた前記人工飛行体の位置から前記仰角相違量および/または前記方位角相違量に相当する分だけシフトした位置における風況を取得する第7ステップを有している請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
光学式遠隔気流計測装置が設置されている第1観測地点において請求項に記載の方法を用いて第1の風況を取得する第71ステップと、
光学式遠隔気流計測装置が設置されている第2観測地点において請求項に記載の方法を用いて第2の風況を取得する第72ステップと、を有している方法。
【請求項6】
光学式遠隔気流計測装置と、経緯儀と、前記光学式遠隔気流計測装置から得られる方位角軸と仰角軸を有する二次元像中に捉えられる人工飛行体とを備えた風況観測システムであって、
前記光学式遠隔気流計測装置は、第1固定部と、該第1固定部に対して方位角方向および/または仰角方向に回転可能に固定されている第1回転部とを有しており、該第1回転部にはレーザー光射出部及び光検出部が備えられており、
前記経緯儀は、第2固定部と、該第2固定部に対して方位角方向および/または仰角方向に回転可能に固定されている第2回転部とを有しており、該第2回転部には前記人工飛行体を視野内に捉える望遠レンズ系が備えられており、
前記第1固定部と前記第2固定部は直接的又は間接的に固定関係にある風況観測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドップラーライダーに代表される光学式遠隔気流計測装置を用いた光軸補正や観測に関する方法、及び風況観測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、非特許文献1にはドップラーLiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)に代表される光学式の遠隔気流計測装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-187258号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】「日本気象株式会社ホームページ:ドップラーライダー(https://n-kishou.com/corp/service/observation/streamline/product.html)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドップラーライダーに代表される光学式遠隔気流計測装置は、大気中に含まれるエアロゾルにレーザー光を照射した際に発生する散乱光のドップラー効果による波長変移を観測することにより観測対象の相対的な移動速度を観測できる遠隔気流計測装置の一種である。光学式遠隔気流計測装置は、比較的高重量で大掛かりな部品で構成されているため、光軸に誤差が生じやすい。本発明は、光学式遠隔気流計測装置に起因する光軸誤差を補正することにより、より正確な風況観測を行なうことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した方法は、
[1]人工飛行体1を飛行させる第1ステップと、光学式遠隔気流計測装置2から射出したレーザー光を前記人工飛行体1に当てる第2ステップと、前記人工飛行体1で反射した光を前記光学式遠隔気流計測装置2で検出する第3ステップと、を有しているものである。
【0007】
[2]上記方法において、更に、前記人工飛行体1を経緯儀3の視野4内に入れる第4ステップを備えることが好ましい。
【0008】
[3]上記各方法において、更に、前記光学式遠隔気流計測装置2で検知される前記人工飛行体1の仰角θGDと、前記経緯儀3の視野4内に入った前記人工飛行体1の仰角θGTとの相違量(以下「仰角相違量」)を取得する第5ステップを備えることが好ましい。
【0009】
[4]上記各方法において、更に、前記光学式遠隔気流計測装置2で検知される前記人工飛行体1の方位角θHDと、前記経緯儀3の視野4内に入った前記人工飛行体1の方位角θHTとの相違量(以下「方位角相違量」)を取得する第6ステップを備えることが好ましい。
【0010】
[5]上記各方法において、更に、前記光学式遠隔気流計測装置2から得られる、方位角軸と仰角軸を有する二次元像において、捉えられた前記人工飛行体1の位置から前記仰角相違量および/または前記方位角相違量に相当する分だけシフトした位置における風況を取得する第7ステップを備えることが好ましい。
【0011】
[6]上記各方法において、光学式遠隔気流計測装置2が設置されている第1観測地点P1において上記[5]に記載の方法を用いて第1の風況を取得する第71ステップと、
光学式遠隔気流計測装置2が設置されている第2観測地点P2において上記[5]に記載の方法を用いて第2の風況を取得する第72ステップと、を備えることが好ましい。
【0012】
[7]上記課題を解決したシステムは、光学式遠隔気流計測装置2と、経緯儀3と、前記光学式遠隔気流計測装置2から得られる、方位角軸と仰角軸を有する二次元像中に捉えられる人工飛行体1とを備えた風況観測システムであって、前記光学式遠隔気流計測装置2は、第1固定部21と、該第1固定部21に対して方位角方向および/または仰角方向に回転可能に固定されている第1回転部22とを有しており、該第1回転部22にはレーザー光射出部27及び光検出部28が備えられており、前記経緯儀3は、第2固定部31と、該第2固定部31に対して方位角方向および/または仰角方向に回転可能に固定されている第2回転部32と、を有しており、該第2回転部32には前記人工飛行体1を視野内に捉える望遠レンズ系が備えられており、前記第1固定部21と前記第2固定部31は直接的又は間接的に固定関係にあるものである。
【0013】
[1]~[7]に付した各符号は便宜上付したものであり発明を限定するものではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、人工飛行体を飛行させる第1ステップと、光学式遠隔気流計測装置から射出したレーザー光を人工飛行体に当てる第2ステップと、人工飛行体で反射した光を光学式遠隔気流計測装置で検出する第3ステップとを備えていることにより、より正確な風況観測のための方法および風況観測システムを提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1にかかる方法に供する風況観測システムの一例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態1にかかる方法に供する風況観測システムを構成する人工飛行体と光学式遠隔気流計測装置と経緯儀を示す図である。
図3図1に示した経緯儀の視野を示すものである。
図4図1に示した光学式遠隔気流計測装置から得られる、方位角軸と仰角軸を有する二次元像である。
図5】横軸が方位角を示し、縦軸が、図1に示した経緯儀により観測される人工飛行体の方位角に対する仰角と光学式遠隔気流計測装置により観測される人工飛行体の仰角の相違量を示すグラフである。
図6図2に示した風況観測システムを用いた風況の観測形態例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態2にかかる風況観測システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる方法に供する風況観測システムの一例を示すものである。図1に記載されているように、風況観測システム(人工飛行体以外の要素)は、光学式遠隔気流計測装置2と、経緯儀3とから構成されている。光学式遠隔気流計測装置2は、大気中に含まれるエアロゾルにレーザー光を照射した際に発生する散乱光のドップラー効果による波長変移を観測することにより観測対象の相対的な移動速度と変位を観測できる遠隔気流計測装置である。光学式遠隔気流計測装置2としては、例えば、Lumibird社製Stream Line XRや、Vaisala社製WindCube Scan 400S等を用いることができる。光学式遠隔気流計測装置2はレーザー光射出部27及び、観測対象において散乱或いは反射してくる光を検出する光検出部28が備えられている。図1では、レーザー光射出部27と光検出部28を同軸に配置した例について記載したが、レーザー光射出部27と光検出部28の配置には特段の制限はなく、光学式遠隔気流計測装置2のいずれかの場所に配置されていればよい。
【0018】
経緯儀3は望遠レンズ系を有しており、望遠レンズ系の光軸を基準として視準した点または方角に対する角度を計測する測量器械であり、「トランシット」や「セオドライト」という名称で知られている。通常、測量の際には経緯儀3は専用の三脚の上に据え付けて用いる。本発明の実施の形態1では、経緯儀3は、三脚は用いずに光学式遠隔気流計測装置2の一部(図1に示すように例えば筐体25上)に取り付けることが好ましい。
【0019】
図2は、本発明の実施の形態1にかかる方法に供する風況観測システムを構成する人工飛行体1と光学式遠隔気流計測装置2と経緯儀3を示す図である。図2に示すように、光学式遠隔気流計測装置2と経緯儀3は人工飛行体1に向けられている。人工飛行体1は、人が搭乗するヘリコプターであってもよく、人が搭乗しない無人飛行機、例えばドローンを用いることもできる。
【0020】
図3は、経緯儀3の視野4を示すものであり、視野4内には人工飛行体1が入れられている。
【0021】
図4は、光学式遠隔気流計測装置2のレーザー光射出部27から出力された光が、観測対象から戻ってくる光から得られる、方位角軸と仰角軸を有する二次元像である。
【0022】
以下、本発明の実施の形態1にかかる方法について説明する。
<第1ステップ>
人工飛行体1を風況観測の目的空域に飛行させるステップである。人工飛行体1は、観測対象である特定地点においてホバリングさせることが好ましい。
【0023】
<第2ステップ>
光学式遠隔気流計測装置2から射出したレーザー光を人工飛行体1に当てるステップである。レーザー光は、人工飛行体1の全体に当ててもよいし、人工飛行体1の一部に当ててもよい。レーザー光は、連続的照射であってもよいし、パルス照射であってもよい。
【0024】
<第3ステップ>
人工飛行体1で反射した光4を光学式遠隔気流計測装置2で検出するステップである。検出の結果は、例えば、方位角軸と仰角軸を有する二次元像、例えば光の強度分布図であってもよいしキャリア対雑音比分布図(CNR)として取得してもよい。
【0025】
従来、光学式遠隔気流計測装置2の使用形態として様々な手法が用いられているが、光学式遠隔気流計測装置2から射出したレーザー光3を人工飛行体1に当てるという技術はなく、もちろん、人工飛行体1で反射した光4(レーザー光3の反射光)を光学式遠隔気流計測装置2で検出するという技術もない。本発明の実施の形態1にかかる方法においては、光学式遠隔気流計測装置2から得られる人工飛行体1由来の新たな情報を、風況観測の位置的正確性の向上のために利用されることが期待される。以下、風況観測の一層好ましい付加的ステップについて説明する。
【0026】
<第4ステップ>
人工飛行体1を経緯儀3の視野4内に入れるステップである。人工飛行体1の少なくとも一部が経緯儀3の視野4内に入っていればよい。図3に示すように、人工飛行体1の中心を経緯儀3の視野4の中心となるようにしてもよいし、人工飛行体1の特定部位(例えば右アームの端部)が経緯儀3の視野4の中心となるようにしてもよい。
【0027】
第4ステップの実行は、第3ステップにおける光学式遠隔気流計測装置2で検出された情報の利用例の一つであり、これにより、人工飛行体1と光学式遠隔気流計測装置2と経緯儀3の相対的関係を特定することが可能となり、正確な風況観測を提供することができるものである。光学式遠隔気流計測装置2の光検出部28の設置位置と経緯儀3の望遠レンズ系の設置位置の高低差は少ないほうが好ましく、高低差は、好ましくは100cm以内、より好ましくは60cm以内、さらに好ましくは30cm以内である。
【0028】
<第5ステップ>
光学式遠隔気流計測装置2で検知される人工飛行体1の仰角θGDと、経緯儀3の視野4内に入った人工飛行体1の仰角θGTとの相違量(以下「仰角相違量」)を取得するステップを備えることが好ましい。第5ステップの主旨は仰角相違量を取得することにあるので、仰角θGDおよび仰角θGTの絶対的な値を取得する必要は必ずしもなく、基準となる方向からの相対値により相違量を決定してもよい。経緯儀3により特定される方位は真値として取り扱えるため、この第5ステップにより、光学式遠隔気流計測装置2で検知される人工飛行体1の仰角θGDが真値θGTからどの程度ずれているかを把握することができる。
【0029】
図5は、経緯儀3により観測される人工飛行体1の仰角θGTと光学式遠隔気流計測装置2により観測される人工飛行体1の仰角θGDの相違量を示すグラフであり、横軸が方位角、縦軸が仰角相違量を示すものである。なお図5中の■印は人工飛行体1の位置、●印は人工飛行体1とは異なる方位角にある基準マストの位置をそれぞれ示している。
【0030】
<第6ステップ>
光学式遠隔気流計測装置2で検知される人工飛行体1の方位角θHD(図示せず)と、経緯儀3の視野4内に入った人工飛行体1の方位角θHT(図示せず)との相違量(以下「方位角相違量」)を取得するステップを備えることが好ましい。第6ステップの主旨は方位角相違量を取得することにあるので、方位θHDおよび方位角θHTの絶対的な値を取得する必要は必ずしもなく、基準となる方向からの相対値により相違量を決定してもよい。経緯儀3により特定される方位は真値として取り扱えるため、この第6ステップにより、光学式遠隔気流計測装置2で検知される人工飛行体1の方位角θHDが真値θHTからどの程度ずれているかを把握することができる。
【0031】
<第7ステップ>
光学式遠隔気流計測装置2から得られる、方位角軸と仰角軸を有する二次元像において、捉えられた人工飛行体1の位置から仰角相違量および/または方位角相違量に相当する分だけシフトした位置における風況を取得するステップである。
【0032】
図4は、光学式遠隔気流計測装置2から得られる、方位角軸と仰角軸を有する二次元像であり、ここではキャリア対雑音比分布図(CNR)を示している。図4の中央付近に、横軸方向に3つ連続している色の濃いピクセルを看取できるが、これが人工飛行体1の像である。図4中、横軸239.610°、縦軸2.920°の地点が光学式遠隔気流計測装置2側から見た人工飛行体1の右端の部分に相当しているが、ここには上記図5に示す相違量に相当する誤差が含まれる。したがって、キャリア対雑音比分布図(CNR)において人工飛行体1の位置から仰角相違量および/または方位角相違量に相当する分だけシフトした位置における風況を取得することにより真の仰角、真の方位角を特定することができるのである。より具体的には、図5で人工飛行体1の位置を示す■印は、仰角方向に約マイナス0.15度分の誤差があるため、キャリア対雑音比分布図(CNR)を仰角方向に約プラス0.15度分、補正する必要がある。
【0033】
<第71ステップ、第72ステップ>
上記第7ステップの実行により、誤差が補正された方位角および/または仰角を得ることができるのであるが、1つの観測地点に基づく風況観測値は、光学式遠隔気流計測装置2のレーザー光照射方向の1次元的な速度成分であるため、観測対象であるエアロゾルが遠ざかる速度あるいは近づいてくる速度成分のみしか取得できない。そこで、複数の観測地点において上記第7ステップを実行すれば、観測対象地点の風況をベクトルとして算出することができる。
【0034】
図6は、風況観測システムの観測形態例を示す図である。図6に示すように、海岸線の陸上の異なる第1観測地点P1および第2観測地点P2に、本発明の実施の形態1における風況観測システムを設置する。観測方法としては、光学式遠隔気流計測装置2が設置されている第1観測地点P1における上記第7ステップの実行、すなわち第1の風況を取得する第71ステップと、光学式遠隔気流計測装置2が設置されている第2観測地点P2における上記第7ステップの実行、すなわち第2の風況を取得する第72ステップと、を備えることにより、風況をベクトルとして取得することができる。第1観測地点P1および第2観測地点P2の一方または両方は、海上にあってもよい。
【0035】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2にかかる方法に供する風況観測システムの一例を示すものであるが人工飛行体1の描画は省略している。その他実施の形態1と重複する構成或いは符号については説明を省略する。図7に示すように、光学式遠隔気流計測装置2は、第1固定部21と、第1固定部21に対して方位角方向および/または仰角方向に回転可能に固定されている第1回転部22とを有しており、第1回転部22にはレーザー光射出部27及び光検出部28が備えられている。経緯儀3は、第2固定部31と、第2固定部31に対して方位角方向および/または仰角方向に回転可能に固定されている第2回転部32とを有しており、第2回転部32には人工飛行体1を視野内に捉える望遠レンズ系が備えられている。第1固定部21と第2固定部31とは互いに固定関係にあるものである。このような構成により、経緯儀3を基準とした光学式遠隔気流計測装置2の方位角方向および/または仰角方向の誤差を補正することができる。図7は、第2固定部31が第1固定部21に直接固定されている例について示したものであるが、例えば、第2固定部31が図1に示した筐体25等、他のものを介して第1固定部21に間接的に固定されていても同様に実施可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 人工飛行体
2 光学式遠隔気流計測装置
21 第1固定部
22 第1回転部
25 筐体
27 レーザー光射出部
28 光検出部
3 経緯儀
31 第2固定部
32 第2回転部
4 視野
θGD 光学式遠隔気流計測装置で検知される人工飛行体の仰角
θGT 経緯儀の視野内に入った人工飛行体の仰角
θHD 光学式遠隔気流計測装置で検知される人工飛行体の方位角
θHT 経緯儀の視野内に入った人工飛行体の方位角
P1 第1観測地点
P2 第2観測地点
【要約】
【課題】光軸誤差の少ない風況観測を行なうことを目的とする。
【解決手段】人工飛行体1を飛行させる第1ステップと、光学式遠隔気流計測装置2から射出したレーザー光を前記人工飛行体1に当てる第2ステップと、前記人工飛行体1で反射した光を前記光学式遠隔気流計測装置2で検出する第3ステップとを実行する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7