(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】家畜輸送用コンテナ装置
(51)【国際特許分類】
B60P 1/43 20060101AFI20231218BHJP
B62D 33/04 20060101ALI20231218BHJP
B60P 1/64 20060101ALI20231218BHJP
B60P 3/04 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B60P1/43 B
B62D33/04 C
B60P1/64 A
B60P3/04
(21)【出願番号】P 2023122887
(22)【出願日】2023-07-27
【審査請求日】2023-07-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599111208
【氏名又は名称】新生自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大津 晃一
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-142723(JP,A)
【文献】実開昭61-150678(JP,U)
【文献】登録実用新案第3091251(JP,U)
【文献】特開2014-133604(JP,A)
【文献】実公昭50-038106(JP,Y1)
【文献】特開平06-087471(JP,A)
【文献】特開2004-001768(JP,A)
【文献】特開平06-115462(JP,A)
【文献】特開平05-201359(JP,A)
【文献】特開平03-281882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/43
B62D 33/04
B60P 1/64
B60P 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着され、家畜を収容して輸送するためのコンテナを備え、
前記コンテナは、
該コンテナの後端の下端縁部にヒンジを介して該後端を開閉し得るように設けられ、開いた状態において、前記車両に装着された該コンテナに対して家畜を歩かせて昇り降りさせるための歩行板として機能する矩形状の昇降用開閉扉と、
前記昇降用開閉扉を開閉する開閉装置とを備え、
前記開閉装置は、
前記下端縁部の左右の位置に設けられたリンク機構と、
前記コンテナの後端の上端縁部の左右に設けられ、前記リンク機構に付勢力を付与する付勢機構とを備え、
各リンク機構は、
前記下端縁部に設けられ、左右方向に延びる第1回転軸と、
前記下端縁部において、前記第1回転軸よりも上方に設けられ、左右方向に延びる第2回転軸と、
前記昇降用開閉扉に設けられ、左右方向に延びる第3回転軸と、
前記第1回転軸に対してその周りで一端が回転自在に設けられる第1アームと、
前記第3回転軸に対してその周りで一端が回転自在に設けられる第2アームと、
前記第1アームの他端と、前記第2アームの他端とを相互に回転自在に連結する第1連結軸と、
前記第2回転軸に対してその周りで回転自在に設けられ、第1連結孔及び第2連結孔を有し、
前記コンテナを前方に向かって左方から見た際に、該第1連結孔は該第2回転軸の右方にあり、該第2連結孔は、該第1連結孔に対し、該第2回転軸を中心とし
て反時計回りに所定角度離れて位置する三角リンク部材と、
一端が前記第1アームの中間部に対して回転自在に連結され、他端が前記三角リンク部材に対して前記第1連結孔を介して回転自在に連結される連結アームとを備え、
前記付勢機構は、
前記三角リンク部材
に対して、前記第2連結孔を介して
上方への付勢力を付与するものであり、
一端が前記三角リンク部材の前記第2連結孔に対して左右方向に延びる連結軸を介して回転自在に連結される牽引シャフトと、
前記コンテナの後端の上端縁部に設けられ、上端部が該上端縁部に固定され、下端部が前記牽引シャフトの他端に連結されて前記付勢力を生じさせるコイルばねとを備え、
前記コイルばねによる付勢力は、前記昇降用開閉扉が開いた状態で最大で、該昇降用開閉扉が閉じた状態において最少であり、
前記昇降用開閉扉が閉じた状態における前記コイルばねによる前記付勢力の方向は、該昇降用開閉扉の板面に沿った方向であり、
前記ヒンジの上下方向位置は、前記第1回転軸と前記第2回転軸との間の位置であり、
前記昇降用開閉扉が閉じた状態において、前記第1回転軸、前記第2回転軸、前記第2連結孔、及び前記牽引シャフトは、この順で上方に向かって一直線に沿うように位置し、
前記昇降用開閉扉が閉じた状態において、前記第1アームと前記連結アームとの連結位置、及び前記第1連結孔は、この順で上方に向かって一直線に沿うように位置することを特徴とする請求項1に記載の家畜輸送用コンテナ装置。
【請求項2】
前記三角リンク部材の前記第2連結孔は、前記コイルばねの伸縮量を2段階で変更し得る2段孔であることを特徴とする請求項
1に記載の家畜輸送用コンテナ装置。
【請求項3】
前記コンテナを前記車両の平床荷台に着脱するコンテナ着脱装置を備え、
前記コンテナ着脱装置は、前記コンテナに対して着脱可能に取り付けられるフォークポケットを備えることを特徴とする請求項1に記載の家畜輸送用コンテナ装置。
【請求項4】
前記コンテナ着脱装置は、前記コンテナに取り付けられた前側及び後側の各フォークポケットに左右から挿入して該コンテナを支持し、該コンテナを昇降し得るように構成された4つのアウトリガーを備えることを特徴とする請求項
3に記載の家畜輸送用コンテナ装置。
【請求項5】
前記コンテナ着脱装置は、
前記コンテナの前側及び後側の各フォークポケットの左右端部に左右から挿入して固定される4つの固定部材と、
左側の前後の前記固定部材及び右側の前後の前記固定部材にそれぞれ接続され、クレーンにより昇降される左右の2つの天秤ワイヤを備えることを特徴とする請求項
3に記載の家畜輸送用コンテナ装置。
【請求項6】
前記コンテナは、その床から両側壁の下部にかけて1枚の鋼板で構成されることを特徴とする請求項1に記載の家畜輸送用コンテナ装置。
【請求項7】
前記コンテナは、下部の幅よりも大きい上部の幅を有することを特徴とする請求項1に記載の家畜輸送用コンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜を収容して運搬するために車両に設置される家畜輸送用コンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家畜を輸送するための車両としての家畜運搬車が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された家畜運搬車は、該家畜運搬車の後側下部に枢着された後扉の頂部両側にケーブルを内側から外側に通す滑車と、該滑車を通ったケーブルを後扉側において方向転換して左右に通す滑車とを備える。
【0003】
ケーブルは、その一端が家畜運搬車の後側上部に固定され、上記滑車に順次掛け回したうえで、家畜運搬車の後側上部に設けた滑車に掛け回され、さらにその先端がウィンチで巻き取られる。これによれば、ウィンチで後扉の両側を均等に引き上げることができるとされている。後扉は、開かれた状態で、家畜が昇降するための歩み板として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の家畜運搬車によれば、ウィンチで後扉である昇降用開閉扉を開閉しているので、開閉操作中にウィンチの故障やケーブルの切断などが生じた場合、急激に昇降用開閉扉が全開して、強い衝撃が生じる恐れがある。
【0006】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、昇降用開閉扉を安全に開閉操作できる家畜輸送用コンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の家畜輸送用コンテナ装置は、車両に装着され、家畜を収容して運搬するためのコンテナを備える。前記コンテナは、該コンテナの後端の下端縁部にヒンジを介して該後端を開閉し得るように設けられ、開いた状態において、前記車両に装着された該コンテナに対して家畜を歩かせて昇り降りさせるための歩行板として機能する矩形状の昇降用開閉扉と、前記昇降用開閉扉を開閉する開閉装置とを備える。
【0008】
前記開閉装置は、前記下端縁部の左右の位置に設けられたリンク機構と、前記コンテナの後端の上端縁部の左右に設けられ、前記リンク機構に付勢力を付与する付勢機構とを備える。
【0009】
各リンク機構は、前記下端縁部に設けられ、左右方向に延びる第1回転軸と、前記下端縁部において、前記第1回転軸よりも上方に設けられ、左右方向に延びる第2回転軸と、前記昇降用開閉扉に設けられ、左右方向に延びる第3回転軸と、前記第1回転軸に対してその周りで一端が回転自在に設けられる第1アームと、前記第3回転軸に対してその周りで一端が回転自在に設けられる第2アームと、前記第1アームの他端と、前記第2アームの他端とを相互に回転自在に連結する第1連結軸とを備える。
【0010】
また、各リンク機構は、さらに、前記第2回転軸に対してその周りで回転自在に設けられ、第1連結孔及び第2連結孔を有し、前記コンテナを前方に向かって左方から見た際に、該第1連結孔は該第2回転軸の右方にあり、該第2連結孔は、該第1連結孔に対し、該第2回転軸を中心として反時計回りに所定角度離れて位置する三角リンク部材と、一端が前記第1アームの中間部に対して回転自在に連結され、他端が前記三角リンク部材に対して前記第1連結孔を介して回転自在に連結される連結アームとを備える。
【0011】
前記付勢機構は、
前記三角リンク部材に対して、前記第2連結孔を介して上方への付勢力を付与するものであり、
一端が前記三角リンク部材の前記第2連結孔に対して左右方向に延びる連結軸を介して回転自在に連結される牽引シャフトと、
前記コンテナの後端の上端縁部に設けられ、上端部が該上端縁部に固定され、下端部が前記牽引シャフトの他端に連結されて前記付勢力を生じさせるコイルばねとを備え、
前記コイルばねによる付勢力は、前記昇降用開閉扉が開いた状態で最大で、該昇降用開閉扉が閉じた状態において最少であり、
前記昇降用開閉扉が閉じた状態における前記コイルばねによる付勢力の方向は、該昇降用開閉扉の板面に沿った方向であり、
前記ヒンジの上下方向位置は、前記第1回転軸と前記第2回転軸との間の位置であり、
前記昇降用開閉扉が閉じた状態において、前記第1回転軸、前記第2回転軸、前記第2連結孔、及び前記牽引シャフトは、この順で上方に向かって 一直線に沿うように位置し、 前記昇降用開閉扉が閉じた状態において、前記第1アームと前記連結アームとの連結位置、及び前記第1連結孔は、この順で上方に向かって一直線に沿うように位置する。
【0012】
本発明によれば、上記の連結機構と付勢機構を備えるので、昇降用開閉扉を安全に開閉操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る家畜輸送用コンテナ装置を車両に装着し、昇降用開閉扉を閉塞した様子を示す斜視図であり、コンテナ着脱装置としてアウトリガー等を用いる様子を示している。
【
図2】
図1の家畜輸送用コンテナ装置におけるリンク機構の部分を示す斜視図である。
【
図3】(a)~(c)は、
図1の家畜輸送用コンテナ装置におけるリンク機構7の構成と動作を示す図である。
【
図4】
図1の家畜輸送用コンテナ装置を車両に装着し、昇降用開閉扉を開いた様子を示す斜視図であり、コンテナ着脱装置として天秤ワイヤ等を用いている様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る家畜輸送用コンテナ装置を示す。同図に示すように、家畜輸送用コンテナ装置1は、牛などの家畜を収容するコンテナ2と、コンテナ2を車両3の平床荷台4に着脱する後述のコンテナ着脱装置とを備える。
【0015】
車両3としては、例えば、平床荷台4を有する4ナンバー(全幅が1700mm)の小型貨物車が該当する。コンテナ2は、その床から両側壁の少なくとも下部にかけて1枚の鋼板で構成され、下部の幅よりも、大きい上部の幅を有する。例えば、片側について、下部の幅よりも、上部の幅は100~150mm程度大きい。
【0016】
コンテナ2の平床荷台4と接する底面には、防錆力の向上と防傷対策として防錆塗装が塗布される。コンテナ2内部の床面には、輸送中や乗入れ時などに際して牛などの蹄(ひずめ)が確実にグリップするとともに、糞尿対策として耐水防腐機能を有する新開発の滑り止め塗料が塗布される。
【0017】
コンテナ2は、コンテナ2の後端の下端部にヒンジ5を介して該後端を開閉し得るように設けられた矩形状の昇降用開閉扉6と、昇降用開閉扉6を開閉する後述の開閉装置とを備える。昇降用開閉扉6は、開いた状態において、車両3に装着されたコンテナ2に対して家畜を歩かせて昇り降りさせるための歩行板として機能する。
【0018】
図1においては、昇降用開閉扉6が閉じている状態が示されている。昇降用開閉扉6はアルミ材で構成され、耐腐食性と軽量化が図られている。なお、
図1においては、コンテナ2の天井を覆うほろの図示を省略している。
【0019】
開閉装置は、コンテナ2の後端における下端縁部の左右の位置に設けられたリンク機構7と、コンテナ2の後端の上端縁部の左右に設けられ、リンク機構7に付勢力を付与する付勢機構8とを備える。
【0020】
図2は、リンク機構7の部分を示す。
図2に示すように、各リンク機構7は、コンテナ2後端の下端縁部に設けられ、左右方向に延びる第1回転軸9と、該下端縁部において、第1回転軸9よりも上方に設けられ、左右方向に延びる第2回転軸10と、昇降用開閉扉6に設けられ、左右方向に延びる第3回転軸11と、第1回転軸9に対してその周りで一端が回転自在に設けられる第1アーム12と、第3回転軸11に対してその周りで一端が回転自在に設けられる第2アーム13と、第1アーム12の他端と、第2アーム13の他端とを相互に回転自在に連結する第1連結軸14とを備える。第2アーム13の長さとしては、例えば、210~340mm程度のものが考えられる。
【0021】
また、各リンク機構7は、第2回転軸10に対してその周りで回転自在に設けられ、第1連結孔15及び第2連結孔16を有し、第2連結孔16は、第1連結孔15に対し、第2回転軸10を中心として、右方に向かって反時計回りに所定角度離れて位置する三角リンク部材17と、一端が第1アーム12の中間部に対して回転自在に連結され、他端が三角リンク部材17に対して第1連結孔15を介して回転自在に連結される連結アーム18とを備える。
【0022】
付勢機構8(
図1参照)は、三角リンク部材17を、第2連結孔16を介して上方に付勢するものである。付勢機構8は、一端が三角リンク部材17の第2連結孔16に対して左右方向に延びる連結軸を介して回転自在に連結される牽引シャフト19と、コンテナ2の後端の上端縁部に設けられ、上端部が該上端縁部に固定され、下端部が牽引シャフト19の他端に連結されるコイルばね20(
図1参照)とを備える。
【0023】
図3(a)~(c)は、左側のリンク機構7を左方側から見た図であり、リンク機構7の動作を示している。
図3(a)に示すように、三角リンク部材17の第2連結孔16は、コイルばね20の伸縮量を2段階で変更し得る2段孔である。すなわち、第2連結孔16は、2つの穴を連結したハート形の形状を有し、
図1及び
図3(a)のように昇降用開閉扉6が閉塞している状態において、2つの穴が上下方向に並ぶ姿勢となる。
【0024】
上述のコンテナ着脱装置は、
図1に示すように、コンテナ2に着脱可能な2つのフォークポケット21を備える。2つのフォークポケット21をコンテナ2に取り付けるために、コンテナ2の上述の1枚の鋼板で構成された下側部分22における両側壁の上端部には、前後方向に延び、かつ外側左右方向に凸状に膨出した(出張った)補強部材23が設けられる。
【0025】
各フォークポケット21は、左右の補強部材23に対して、左右の端部を確実に固定することにより取り付けられる。各フォークポケット21の取付けは、保有しているフォークリフトの爪の幅に適合するように、左右の補強部材23の前後方向における任意の位置に対して行われる。
【0026】
また、コンテナ着脱装置は、コンテナ2の前側及び後側の各フォークポケット21に左右から挿入して該コンテナを支持し、かつコンテナ2を昇降し得るように構成された4つのアウトリガー24を備えてもよい。アウトリガー24としては、例えば、電動油圧式のアクチュエータで駆動するものを使用することができる。
図1では、アウトリガー24を使用する様子が示されている。
【0027】
図4は、コンテナ着脱装置の別の例を示す。
図4に示すように、このコンテナ着脱装置は、コンテナ2の前側及び後側の各フォークポケット21の左右端部に左右から挿入して固定される4つの固定部材25と、左側の前後の固定部材25及び右側の前後の固定部材25にそれぞれ接続され、簡易クレーンや天井クレーンにより昇降される左右の2つの天秤ワイヤ26を備える。なお、
図4においては、コンテナ2の天井を覆うほろの図示を省略している。
【0028】
この構成において、牛を車両3により輸送する際には、まず、車両3に、昇降用開閉扉6が閉じた状態のコンテナ2を装着する。この装着に先立ち、コンテナ2にはフォークポケット21が取り付けられている。コンテナ2の装着は、フォークリフトを用いて行うことができる。なお、後述のように、アウトリガー24、又は天秤ワイヤ26とクレーンを用いて行うこともできる。
【0029】
コンテナ2の装着にフォークリフトを用いる場合には、フォークリフトの爪をコンテナ2のフォークポケット21に挿入して、コンテナ2をフォークリフトで持ち上げ、コンテナ2の下に車両3の平床荷台4を位置させ、フォークリフトでコンテナ2を平床荷台4上の所定位置に下降させて載置する。そして、フォークポケット21を取り外し、車両3の両側のサイドゲート27を上げてコンテナ2を平床荷台4上にしっかりと固定する。
【0030】
このとき、
図3(a)のように、昇降用開閉扉6が閉じているので、コイルばね20は最も短くなっており、三角リンク部材17に付与する牽引力は最も小さい。また、昇降用開閉扉6が、第2アーム13、第1アーム12、連結アーム18、及び第1連結孔15を介して三角リンク部材17に付与するモーメントも最小である。
【0031】
したがって、昇降用開閉扉6を開くために、作業者は、容易に昇降用開閉扉6を開方向に傾けて、昇降用開閉扉6の開放を開始することができる。このとき、昇降用開閉扉6自体が重い場合や、付属品等で昇降用開閉扉6の先端部が重い場合には、第2連結孔16における牽引シャフト19との連結軸の位置を第2連結孔16の2つの穴のうちの下方の穴に設定し、第2連結孔16に働くコイルばね20からの牽引力を強めに設定してもよい。
【0032】
昇降用開閉扉6の開放を開始すると、開放の度合いが大きくなるに従い、三角リンク部材17も第2回転軸10を中心とする傾きが大きくなってゆき、これに伴って、コイルばね20は長く引きのばされてゆく。また、昇降用開閉扉6が、第2アーム13、第1アーム12、連結アーム18、及び第1連結孔15を介して三角リンク部材17に付与するモーメントも大きくなってゆく。
【0033】
そして、
図3(b)のように、昇降用開閉扉6がほぼ水平になるときには、昇降用開閉扉6が三角リンク部材17に付与するモーメントは、ほぼ最大となる。また、コイルばね20の長さも大きくなるので、コイルばね20が三角リンク部材17に付与する牽引力(第2回転軸10を中心とするモーメント)も大きくなる。
【0034】
さらに昇降用開閉扉6の開放度が進み、
図3(c)のように、昇降用開閉扉6の上端部が地面に接して昇降用開閉扉6の開放が終了するころには、コイルばね20の牽引力は最大となり、コイルばね20が三角リンク部材17に付与するモーメントも依然として大きい。
【0035】
このように、昇降用開閉扉6の開閉時には、ほぼ、昇降用開閉扉6の開放度が大きくなることに応じて上昇する昇降用開閉扉6からリンク機構7に付与されるモーメントは、コイルばね20が牽引シャフト19を介してリンク機構7に付与する逆向きのモーメントと常にほぼ均衡する。したがって、作業者は、容易に、昇降用開閉扉6を開閉操作することができる。
【0036】
このようにして昇降用開閉扉6を開き、昇降用開閉扉6上を歩行させて牛などの家畜をコンテナ2収容することができる。この後、上記と逆の動作で昇降用開閉扉6を閉じ、車両3によりコンテナ2が目的地に到着すると、上記と同様にして昇降用開閉扉6を開放し、家畜をコンテナ2から導出し、同様にして昇降用開閉扉6を閉塞し、上記コンテナ2の装着手順と逆の手順でコンテナ2を車両3の平床荷台4から取り外す。これにより、家畜の輸送が完了する。
【0037】
一方、コンテナ着脱装置が上述のアウトリガー24を備える場合には、車両3の平床荷台4に対するコンテナ2の脱着(装着及び取外し)を、上述のフォークリフトを用いる場合の手順に代えて、次の手順で行うことができる。
【0038】
すなわち、昇降用開閉扉6が閉塞された状態のコンテナ2に取り付けられた前後のフォークポケット21に対し、
図1において矢印で示すように、4つのアウトリガー24を左右から挿入してコンテナ2をアウトリガー24で支持する。次に、支持されたコンテナ2の下に車両3の平床荷台4を位置させ、4つのアウトリガー24でコンテナ2を下降させ、4つのアウトリガー24を取り外すことによりコンテナ2を平床荷台4上に載置する。
【0039】
そして、車両3の両側のサイドゲート27を上げてコンテナ2を平床荷台4に対して確実に固定し、フォークポケット21を取り外すことにより装着を行うことができる。
【0040】
また、これと逆の手順により、コンテナ2を平床荷台4から取り外すことができる。この場合、取外し後は、コンテナ2をそのまま4つのアウトリガー24により支持した状態で保管しておくことができる。
【0041】
また、
図4のように、コンテナ着脱装置が上述の4つの固定部材25及び左右の天秤ワイヤ26を備える場合には、車両3の平床荷台4への脱着を、上述の手順に代えて、次の手順により行うことができる。
【0042】
すなわち、昇降用開閉扉6が閉塞された状態のコンテナ2に取り付けられている前後のフォークポケット21に対し、
図4に示すように、左右から固定部材25を挿入して固定し、左右の固定部材25に左右の天秤ワイヤ26を接続し、クレーン28で吊上げ天秤29を介して、左右の天秤ワイヤ26を上昇させることによりコンテナ2を持ち上げる。
【0043】
次に、持ち上げられたコンテナ2の下に車両3の平床荷台4を位置させ、クレーン28で左右の天秤ワイヤ26を下降させて平床荷台4上にコンテナ2を載置する。そして、各固定部材25、天秤ワイヤ26及びフォークポケット21を取り外し、車両3の両側のサイドゲート27を上げてコンテナ2を平床荷台4上に固定することによりコンテナ2を装着することができる。また、逆の手順により、コンテナ2を平床荷台4から取り外すことができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、家畜輸送用コンテナ装置1は、昇降用開閉扉6を開閉する開閉装置がリンク機構7と付勢機構8を備え、付勢機構8が、昇降用開閉扉6の開放度に応じて変化する昇降用開閉扉6のリンク機構7に付与するモーメントをほぼ打ち消す。このため、開閉操作中に急激に昇降用開閉扉6が開いて衝撃を生じさせる恐れなく、容易かつ安全に昇降用開閉扉6を開閉操作することができる。
【0045】
また、リンク機構7を昇降用開閉扉6の両脇下端部にコンパクトに構成するとともに、付勢機構8も昇降用開閉扉6の両脇にコンパクトに構成することができる。したがって、車両運行時における家畜輸送用コンテナ装置1の開閉装置の後方への突出量を最小限に抑えることができる。
【0046】
また、付勢機構8は、牽引シャフト19とコイルばね20で構成されるので、家畜輸送用コンテナ装置1の開閉装置をより安全かつコンパクトに構成することができる。
【0047】
また、三角リンク部材17の第2連結孔16として、コイルばね20の伸縮量を2段階で変更し得る2段孔を採用したので、昇降用開閉扉6自体が重い場合や、付属品等で昇降用開閉扉6の先端部が重い場合でも、強いコイルばね20に交換するまでもなく、2段孔のうちの下方のものを選択することにより、対応することができる。
【0048】
また、コンテナ2を車両3の平床荷台4に着脱するコンテナ着脱装置を備えるので、平床荷台4を備える車両を保有していれば、家畜輸送専用の車両がなくても、低コストで簡便かつ支障なく、家畜を輸送することができる。
【0049】
また、コンテナ着脱装置として、コンテナ2には着脱可能なフォークポケット21が設けられるので、フォークリフトを利用することにより、コンテナ2の平床荷台4に対する着脱を容易に行うことができる。
【0050】
また、コンテナ着脱装置が、上述のフォークポケット21に挿入してコンテナ2を昇降するアウトリガー24を備える場合には、コンテナ2の平床荷台4に対する着脱を、アウトリガー24を用いて容易に行うとともに、コンテナ2をアウトリガー24で支持した状態で保管することができる。
【0051】
また、コンテナ着脱装置が、各フォークポケット21に挿入して固定される上述の固定部材25と、固定部材25に接続され、クレーン28により昇降される上述の天秤ワイヤ26を備える場合には、コンテナ2の平床荷台4に対する着脱を、クレーン28利用して容易に行うことができる。
【0052】
また、コンテナ2の下側部分22は、床から両側壁の下部にかけて1枚の鋼板で構成され、座屈やねじれに強いものとして形成される。このため、車両3の平床荷台4の下を補強する必要なく、コンテナ2を平床荷台4にそのまま支障なく載置して装着することができる。したがって、平床荷台4の下に補強部材を配置する必要がないので、平床荷台4までの高さを変えずにコンテナ2を平床荷台4上に搭載することができる。
【0053】
また、コンテナ2は、下部の幅が平床荷台4の幅と同等の幅を有するが、その幅よりも上部の幅が大きいので、コンテナ2からの牛の搬出時におけるコンテナ2内での牛の方向転換を容易に行うことができる。
【0054】
すなわち、小型貨物車の平床荷台4の幅は狭く、牛の搭載空間は窮屈であるが、コンテナ2の下部の床における牛の足の付け根の幅に相当する幅よりもその上の牛のボディが占有する部分の幅を広げることができる。これにより、コンテナ2からの牛の搬出時におけるコンテナ2内での牛の方向転換を容易に行うことができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、付勢機構8における牽引シャフト19には、その長さを調整する長さ調整手段を設けてもよい。また、昇降用開閉扉6の閉じた状態を固定するロック機構を設けてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…家畜輸送用コンテナ装置、2…コンテナ、3…車両、4…平床荷台、5…ヒンジ、6…昇降用開閉扉、7…リンク機構、8…付勢機構、9…第1回転軸、10…第2回転軸、11…第3回転軸、12…第1アーム、13…第2アーム、14…第1連結軸、15…第1連結孔、16…第2連結孔、17…三角リンク部材、18…連結アーム、19…牽引シャフト、20…コイルばね、21…フォークポケット、22…下側部分、23…補強部材、24…アウトリガー、25…固定部材、26…天秤ワイヤ、27…サイドゲート、28…クレーン、29…吊上げ天秤。
【要約】
【課題】昇降用開閉扉を安全に開閉操作できる家畜輸送用コンテナ装置を提供する。
【解決手段】家畜輸送用コンテナ装置1は、車両3に装着され、家畜を収容して運搬するためのコンテナ2を備える。コンテナ2は、その後端の下端縁部に該後端を開閉し得るように設けられ、開いた状態において、車両3に装着されたコンテナ2に対して家畜を歩かせて昇り降りさせるための歩行板として機能する矩形状の昇降用開閉扉6と、昇降用開閉扉6を開閉する開閉装置とを備える。該開閉装置は、コンテナ2後端の下端縁部の左右に設けられたリンク機構7と、コンテナ2後端の上端縁部の左右に設けられ、リンク機構7に付勢力を付与する付勢機構8とを備える。
【選択図】
図1