(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】導電材、これを含む電極形成用スラリー、電極及びこれを用いて製造されるリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01B 5/00 20060101AFI20231218BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20231218BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20231218BHJP
H01B 1/04 20060101ALI20231218BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20231218BHJP
C01B 32/19 20170101ALI20231218BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20231218BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
H01B5/00 H
H01M4/13
H01M4/139
H01B1/04
H01B1/24 A
C01B32/19
H01M4/62 Z
H01B1/00 H
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022120650
(22)【出願日】2022-07-28
(62)【分割の表示】P 2020537186の分割
【原出願日】2019-01-28
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】10-2018-0009777
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】592127149
【氏名又は名称】韓国科学技術院
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】291,Daehak-ro Yuseong-gu,Daejeon 34141,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】テ・ゴン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スル・キ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・クン・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ソク・ウ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・モ・キム
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0217775(US,A1)
【文献】特開2016-219414(JP,A)
【文献】特開平11-297329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/00
H01M 4/13
H01M 4/139
H01B 1/04
H01B 1/24
C01B 32/19
H01M 4/62
H01B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折(X-Ray Diffraction;XRD)分析で取得されたデータグラフにおける最大ピークが2θの24.5゜から26゜の範囲で観察されるグラフェンフレークを含み、
前記グラフェンフレーク面の平均の長軸長さの面に垂直な方向へのグラフェンフレークの平均の厚さに対する縦横比(Aspect ratio)が500から50,000である導電材。
【請求項2】
前記グラフェンフレークの平均の厚さは、1nmから10nmであるものである、請求項1に記載の導電材。
【請求項3】
前記グラフェンフレークの2θの24.5゜から26゜の範囲における最大ピークの半値幅が0.5゜から5゜である、請求項1または2に記載の導電材。
【請求項4】
前記グラフェンフレークは、532nm波長のレーザを用いたラマン分光分析法により得られた1580±50cm
-1でのGバンドの最大ピーク強度に対する1360±50cm
-1でのDバンドの最大ピーク強度の比の平均値が0.06から0.5である、請求項1から3の何れか一項に記載の導電材。
【請求項5】
前記グラフェンフレークの酸素含有量は、5原子%から10原子%である、請求項1から4の何れか一項に記載の導電材。
【請求項6】
電極活物質;
バインダー;
分散媒;及び
請求項1から5の何れか一項に記載の導電材を含む電極形成用スラリー。
【請求項7】
前記導電材は、前記電極形成用スラリーで分散媒を除いた固形分100重量部に対し、0.05重量部から2.0重量部含まれている、請求項6に記載の電極形成用スラリー。
【請求項8】
前記電極形成用スラリーで前記分散媒を除いた固形分が、前記電極形成用スラリー100重量部に対して50重量部から65重量部含まれている場合、前記電極形成用スラリーの粘度は、24℃から26℃の温度条件で5,000cPsから35,000cPsである、請求項6または7に記載の電極形成用スラリー。
【請求項9】
電極集電体;及び
前記電極集電体上に形成される電極活物質層;を含み、
前記電極活物質層は、電極活物質及び請求項1から5の何れか一項に記載の導電材を含む電極。
【請求項10】
正極;負極;分離膜;及び電解質;を含み、
前記正極及び負極の少なくとも1つ以上は請求項9に記載の電極であるものであるリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年1月26日付韓国特許出願第2018-0009777号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、導電材及びこれを用いて製造されたリチウム二次電池に関し、より詳細には、分散性及び電気伝導性に優れたグラフェンフレーク(Graphene Flake)を含む導電材、これを含む電極形成用スラリー、電極及びこれを用いて製造されるリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術の開発と需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池の需要が急激に増加している。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度と電圧を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化されて広く用いられている。また、このような高容量リチウム二次電池用電極として、単位体積当たりのエネルギー密度がさらに高い高密度電極を製造するための方法に対する研究が活発に進められている。
【0004】
一般に、高密度電極は、数μmから数十μmのサイズを有する電極活物質粒子が含まれたスラリーを基材上に塗布し乾燥した後、圧延して合剤層を形成する工程を経て製造される。但し、圧延段階で加えられる高圧プレスにより電極活物質粒子の形態が変形されることがあり、粒子間の空間もまた減少するので、合剤層内に電解液の浸透性が低下し得る。
【0005】
前記のような問題を解決するため、電極の合剤層を形成する過程で、電極活物質粒子以外に、強度と電気伝導性に優れた導電材をともに用いている。電極の製造時に導電材を用いる場合、前記導電材が圧縮された電極活物質の間に分散されることで、活物質粒子の間に微細気孔を維持して電解液の浸透性を向上させることができる。また、導電材は、伝導性が高いため、電極内の抵抗を減少させることができる。最近は、導電材としてカーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン(Graphene)、カーボンブラック(Carbon Black)などを用いるための研究が進められている。
【0006】
微細炭素繊維の一種であるカーボンナノチューブは、直径1μm未満の太さのチューブ状炭素であって、その特異的構造に起因した高い導電性、引張強度及び耐熱性などによって使用が増加している傾向である。しかし、カーボンナノチューブは、相互間の強いファンデルワールス引力が作用して凝集し易いという問題点があるため、溶解性及び分散性が低い問題がある。このような問題点を解決するために、官能基をカーボンナノチューブの表面に導入する案などが考案されたことがあるが、副反応が発生し得るので、依然として導電材としての商用化が困難な実情である。
【0007】
グラフェンは、炭素原子が2次元上でsp2結合による六角形状に連結された配列をなしながら形成される層構造の半金属性物質である。グラフェンは、優れた電気伝導度を有するだけでなく、構造的、化学的安定性及び優れた熱伝導度を有する。また、相対的に軽い元素である炭素のみからなるため、1次元あるいは2次元のナノパターンを加工することが容易である。なによりも、前記グラフェンシートは廉価な材料であって、既存のナノ材料と比べる場合、優れた価格競争力を有している。
【0008】
このようなグラフェンの優れた特性により、グラファイトなどの炭素系素材からグラフェンをより効果的に量産することができる多様な方法が提案又は研究されてきた。
【0009】
例えば、グラファイト(Graphite)を分散材とともに粉砕させてグラフェンを製造する方法などが考案されたが、グラファイトが過度に粉砕され、取得しようとする大きさ及び形状のグラフェンを取得しにくく、使用することができる分散材の種類も制限的であるという問題点がある。
【0010】
したがって、分散性が高いながらもある程度の水準以上の電気伝導度を有するグラフェン、及びこれを用いた導電材の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0077606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記のような問題点を解決するためのものであって、電気伝導性に優れながらも分散性を画期的に改善することができるグラフェンフレーク(Graphene Flake)を含む導電材、これを含む電極形成用スラリー、電極及びこれを用いて製造されるリチウム二次電池を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一側面において、本発明は、X線回折(X-Ray Diffraction;XRD)分析で取得されたデータグラフにおける最大ピークが2θの24.5゜から26゜の範囲で観察されるグラフェンフレークを含み、前記グラフェンフレーク面の平均の長軸長さの面に垂直な方向へのグラフェンフレークの平均の厚さに対する縦横比(Aspect ratio)が500から50,000である導電材を提供する。
【0014】
このとき、前記グラフェンフレークの平均の厚さは、1nmから10nmであってもよい。
【0015】
一方、前記グラフェンフレークは、532nm波長のレーザを用いたラマン分光分析法により得られた1580±50cm-1でのGバンドの最大ピーク強度に対する1360±50cm-1でのDバンドの最大ピーク強度の比の平均値が0.06から0.5であってもよい。
【0016】
また他の側面において、本発明は、電極活物質;バインダー;分散媒;及び前記導電材を含む電極形成用スラリー、及びこれを用いて製造された電極及びリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明による導電材は、X線回折(X-Ray Diffraction;XRD)分析で取得されたデータグラフにおける最大ピークが2θの24.5゜から26゜の範囲で観察されるグラフェンフレークを含むため、剥離性及び結晶性に優れる。また、グラフェンフレークの面の長軸長さの面に垂直な方向へのグラフェンフレークの厚さに対する縦横比(Aspect ratio)が適正の水準を満たすグラフェンフレークを含み、分散性が高くて電極内に均一に位置することができるようになるので、電極内の電気伝導度を向上させることができる。
【0018】
また、前記導電材が含まれた電極形成用スラリーは、少量を用いる場合にも、電気伝導性はある程度の水準以上に維持されながらも、分散性及び粘度が高いため、電極接着力も向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例1及び比較例1、2で製造されたグラフェンフレークのX線回折(XRD)により取得されたデータグラフである。
【
図2】本発明の実施例1及び比較例1、2のグラフェンフレークのXPS分析により取得されたデータグラフである。
【
図3】本発明の実施例2~4及び比較例3~6による電極形成用スラリーのプレス密度による粉体抵抗の変化を観察したグラフである。
【
図4】本発明の実施例2~4及び比較例3~6による電極形成用スラリーを90゜で剥離する場合の接着力を測定したグラフである。
【
図5】本発明の製造例により製造された二次電池の45℃でのサイクルによる容量維持率(capacity retention%)を示したグラフである。
【
図6】本発明の製造例により製造された二次電池の60℃での、週(week)単位に測定された容量維持率(capacity retention%)及び抵抗増加率(resistance increase(%))を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に対する理解を助けるために、本発明をより詳細に説明する。
【0021】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために、用語の概念を適宜定義することができるとの原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0022】
本明細書で用いられる用語は、ただ例示的な実施形態を説明するために用いられたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0023】
本明細書において、「含む」、「備える」又は「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素又はこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであって、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素又はこれらの組み合わせなどの存在又は付加の可能性を予め排除するものではないと理解されなければならない。
【0024】
導電材
本発明による導電材は、X線回折(X-Ray Diffraction;XRD)分析で取得されたデータグラフにおける最大ピークが2θの24.5゜から26゜の範囲で観察されるグラフェンフレークを含み、前記グラフェンフレーク面の平均の長軸長さの面に垂直な方向へのグラフェンフレークの平均の厚さに対する縦横比(Aspect ratio)が500から50,000である。
【0025】
一般に、導電材が含まれる二次電池用電極を製造するためには、導電材を含む電極形成用スラリーを製造した後、前記電極形成用スラリーを基材に塗布してから、乾燥及び圧延工程を経て電極を製造する。よって、導電材が前記電極形成用スラリーに均一に分散され、前記スラリーがある程度の水準の粘度を維持することができてこそ、基材の表面に均一に導電材が分散され電気伝導性を改善することができる。
【0026】
しかし、従来に導電材として用いられるグラフェン(Graphene)の場合、単一層(single layer)への剥離が十分できず、分散性及びこれを含む電極形成用スラリーの粘性も低下するという問題点があった。
【0027】
これに対して、本発明では、X線回折(X-Ray Diffraction;XRD)分析で取得されたデータグラフにおける最大ピークが2θ(2theta)の24.5゜から26゜の範囲で観察されるグラフェンフレークを本発明の導電材として用いた(
図1参照)。
【0028】
前記X線回折分析は、薄膜X線回折分析機(Rigaku Ultima IV)を用いて測定された結果から導出することができる。印加電圧を40kVとし、印加電流を40mAとすることができ、測定された2θの範囲は24゜から28゜であり、0.2゜間隔でスキャンして測定することができる。このとき、スリット(slit)は、可変発散スリット(variable divergence slit)2mmを用いることができる。
【0029】
図1に示されている通り、本発明によるグラフェンフレークは、2θの範囲が24.5゜から26゜であるとき、より好ましくは25゜から26゜付近で広い形態の最大ピーク(broad peak)を示す。本明細書で最大ピークとは、2θの範囲内で最も高い強度(intensity)値を有するピークと定義される。
【0030】
本発明のグラフェンフレークが前記2θの範囲内で最大ピークを有するのは、グラファイトから剥離されていた単層薄膜が再び積層されるとき、層間に吸着された分散剤や新たにできた気孔構造により、再び積層された単層薄膜間の層間間隔が増加したからである。よって、本発明によるグラフェンフレークは、十分剥離されて単一層の形態に形成されていることを確認することができる。
【0031】
一方、剥離が十分進められていないグラフェンフレークは、剥離前のグラファイトと同様に26.5゜付近で最大ピークが観測される。
【0032】
一方、前記グラフェンフレークは、X線回折分析機(Rigaku Ultima IV)により取得されたデータグラフで、2θの24.5゜から26゜の範囲における最大ピークの半値幅(Full Width at Half-Maximum;FWHM)が0.5゜から5゜であってもよい。
【0033】
本発明において、前記半値幅(FWHM)は、前記グラフェンフレークのX線回折で得られた2θ(theta)の24.5゜から26゜の範囲における最大ピーク強度の1/2位置でのピーク幅を数値化したものである。グラフェンフレークを製造する途中、グラファイトから剥離された薄膜が再び積層されるとしても、再び積層される層間間隔が一定でなければ、当該半値幅の数値が増加する。このとき、層間間隔が不均一に再び積層されるほど剥離の程度はさらに高くなるので、前記半値幅の数値が0.5゜から5゜であることが好ましい。
【0034】
一方、前記グラフェンフレークの面の長軸長さの面に垂直な方向へのグラフェンフレークの厚さに対する縦横比(Aspect ratio)が500から50,000、好ましくは1,000から50,000であってもよい。これは、本発明の前記グラフェンフレークが板状(plate)の形態で存在するとき、面をなす平均の長軸長さ(average lateral size)が5μmから50μmであり、前記グラフェンフレークの平均の厚さ(average thickness)が1nmから10nmであることに起因したものである。
【0035】
このとき、前記グラフェンフレークの長軸長さ及び厚さは、原子顕微鏡(AFM)で測定することができ、平均の長軸長さ及び平均の厚さは、AFM測定時に取得されたイメージから直接測量を介して統計的に算出することができる。例えば、数百個あるいは数千個のグラフェンフレークを観測した後、観測されたグラフェンフレークの長軸長さ及び厚さをそれぞれ測定してから、長さの順に上位一部及び下位一部を採集した。その後、採集された長軸長さ及び厚さについてそれぞれ平均を出してグラフェンフレークの平均の長軸長さ及び平均の厚さを測定することができる。
【0036】
当該縦横比が500未満である場合には、グラフェンフレークの剥離性が優れないため、電気伝導度の発現のための最小限の伝導性ネットワークの形成が困難であり、50,000を超過する場合には、グラフェンフレークの面積が広過ぎるため、電解イオンが活物質内に接近し難く、電解イオンの拡散(Diffusion)抵抗を増加させる可能性がある。
【0037】
一方、本発明のグラフェンフレークの場合、532nm波長のレーザを用いたラマン分光分析法により得られた1580±50cm-1でのGバンドの最大ピーク強度に対する1360±50cm-1でのDバンドの最大ピーク強度の比の平均値が0.06から0.5、より好ましくは0.06から0.4であってもよい。
【0038】
ラマン分光分析法は、グラフェンフレークの結晶性を分析する方法であって、グラフェンフレークの表面状態の分析に有用な方法である。ラマンスペクトルのうち波数1580±50cm-1付近の領域に存在するピークをGピークといい、これはグラフェンフレークのsp2結合を示すピークである。一方、ラマンスペクトルのうち波数1360±50cm-1付近の領域に存在するピークをDピークといい、これはグラフェンフレークのsp3結合を示すピークであって、グラファイト層状の六角網面に対するsp2結合が切れてsp3結合となる場合に増加する。よって、前記1580±50cm-1内のGバンドの最大ピーク強度に対する1360±50cm-1でのDバンドの最大ピーク強度の比を有する場合、固有の結晶性の破壊が最小化されながらも、顕著に剥離されたグラフェンフレークを提供することができる。
【0039】
また、前記グラフェンフレークの酸素含有量は、5原子%から10原子%、好ましくは5.5原子%から10原子%、より好ましくは6原子%から10原子%であるものであってもよい。グラフェンフレーク内の酸素含有量は、X線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy、XPS)で測定する。前記グラフェンフレークに酸素が含有されることは、グラファイトから剥離される過程で、前記グラフェンフレークの表面に酸素官能基を含んだ界面活性剤が吸着されることによるものである。一方、前記グラフェンフレークに酸素が前記範囲内で含有される場合、電気的斥力が発生するようになるので、電極形成用スラリー内でより均一に分散され得る。
【0040】
本発明による導電材には、前記グラフェンフレーク以外にその他の導電性物質をさらに含んでもよい。例えば、グラファイト;カーボンブラック、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどの炭素系物質;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてもよい。市販されている導電材の具体的な例としては、アセチレンブラック系(シェブロンケミカルカンパニー(Chevron Chemical Company))やデンカブラック(デンカシンガポールプライベートリミテッド(Denka Singapore Private Limited)、ガルフオイルカンパニー(Gulf Oil Company)製品など)、ケッチェンブラック(Ketjenblack)、EC系(アルマックカンパニー(Armak Company)製品)、バルカン(Vulcan)XC-72(キャボットカンパニー(Cabot Company)製品)、及びスーパー(Super)P(ティムカル(Timcal)社製品)などがある。
【0041】
以下、導電材の製造方法に対して説明する。前記導電材は、(1)イオン溶液の製造段階、(2)グラファイト混合溶液の製造段階、及び(3)グラフェンフレークの取得段階を経て製造され得る。以下、各段階別に説明する。
【0042】
(1)イオン溶液の製造段階
前記イオン溶液は、有機溶媒、ナフタレン及びカリウム(K)を混合して製造することができる。
【0043】
前記ナフタレン及びカリウム(K)は、カリウム(K)錯体を形成するために用いられるものであって、カリウム(K)の電子がナフタレンに転移されながらイオン化され、有機溶媒分子と配位されてカリウム(K)錯体を形成する。前記カリウム(K)は、錯体を形成するために、前記イオン溶液内に0.1から2M濃度、好ましくは1から2M濃度で含まれてもよい。前記カリウム(K)が前記範囲で含まれる場合、混合されたグラファイトの層間にカリウム錯体の挿入反応が進められ得る。
【0044】
前記有機溶媒は、カリウム(K)錯体及び前記イオン溶液に添加されるグラファイトを分散させるためであるとともに、カリウム(K)錯体の構成要素として用いられるものであって、前記カリウム(K)錯体及びグラファイトと副反応を起こさない有機溶媒であれば制限なく用いられてよく、好ましくは非プロトン性有機溶媒を用いてもよい。
【0045】
例えば、前記有機溶媒は、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran:THF)、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide:DMF)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide:DMA)、n-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone:NMP)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone:MEK)、ピリジン、キノリン、キシレン、クロロホルム、アンモニア、トルエン、ベンゼン、ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide:DMSO)、プロピレンカーボネート(propylenecarbonate)などを含んでもよい。これらは、それぞれ単独で又は混合して用いられてもよい。より好ましくは、前記有機溶媒は、テトラヒドロフランを含んでもよい。
【0046】
(2)グラファイト混合溶液の製造段階
前記グラファイト混合溶液は、前記(1)段階を経て製造されたイオン溶液内にグラファイトを混合して製造される。
【0047】
より具体的に、アルゴン(Ar)雰囲気のグローブボックス(glove box)内に前記イオン溶液を25℃から40℃の温度条件で準備しておいた後、前記グラファイトを前記イオン溶液に30mg/mlから150mg/ml、好ましくは35mg/mlから150mg/ml、より好ましくは35mg/mlから145mg/ml範囲の濃度で添加した。
【0048】
このとき、使用可能なグラファイトには、天然黒鉛、人造黒鉛がある。前記グラファイトは、粉末及び塊、あるいは箔のように加工された形態で用いられてもよい。前記グラファイトは、イオン溶液内での溶解度及び粘度を考慮し、前記範囲の濃度で添加するものであって、実験条件によって添加されるグラファイトの濃度は変わり得る。
【0049】
前記イオン溶液にグラファイトが添加されると、前記イオン溶液に溶解されていたカリウム(K)錯体がグラファイトの層間に挿入され、層間のファンデルワールス結合が弱くなるようにしてグラファイトの剥離性を向上させることができる。
【0050】
(3)グラフェンフレークの取得段階
前記グラファイト混合溶液を撹拌させることで前記グラフェンフレークを取得することができる。前記撹拌は、スターリング(stirring)、超音波分散(sonication dispersion)、遠心分離などの工程などを全て含む。
【0051】
より具体的に、前記グラフェンフレークは、下記段階を経て取得されてもよい。
【0052】
まず、前記グラファイト混合溶液をグローブボックス内で5時間から10時間撹拌する。次いで、カリウム(K)錯体が層間に挿入されたグラファイトなどの固形分を除く残りの溶媒をイオン溶液から除去した後で、残りのナフタレンを溶解することができる非極性又は低極性の溶媒を用いて洗浄することができる。例えば、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran:THF)、シクロヘキサン(cyclohexane)を用いることができ、好ましくはシクロヘキサン(cyclohexane)で前記固形分を洗浄する。
【0053】
洗浄された固形分及びポリビニルピロリドン(PVP)をジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒に混合した後、水槽型超音波装備を用いて10分から60分間超音波分散(sonication dispersion)を介してグラファイトを単一層構造物に剥離させる。
【0054】
剥離された単一層構造物のみを分離させるために、遠心分離機(ハニル科学Combi-514R)を用いて2000rpmで30分から1時間の間遠心分離した後、上層部だけ分離する。
【0055】
分離された上層部物質を、遠心分離機(ハニル科学Combi-514R)を用いて10000rpmで30分から1時間の間さらに一度遠心分離した後、上層部に残された溶媒を除去してからグラフェンフレークを取得する。
【0056】
一方、前記グラフェンフレークは、0.5mg/mlから5mg/mlの濃度となるようにn-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒に注入した後、水槽型超音波装備を用いて5分から20分間超音波分散(sonication dispersion)を介して溶媒に分散された状態で準備しておくことができる。
【0057】
電極形成用スラリー
以下、電極形成用スラリーに対して説明する。電極形成用スラリーは、電極活物質、バインダー、分散媒及び前記導電材を含む。前記導電材は、前述した内容と同一であるので、具体的な説明を省略する。
【0058】
一方、前記導電材は、電極形成用スラリーで分散媒を除いた固形分100重量部に対し、0.05重量部から2.0重量部、好ましくは0.3重量部から1.5重量部、より好ましくは0.5重量部から1.3重量部で含まれてもよい。前記導電材が前記範囲内に含まれる場合、導電性が向上され得ながらも、ある程度の水準以上の粘度を維持することができる。
【0059】
前記電極形成用スラリーにおいて、電極活物質は、通常、二次電池の正極又は負極活物質として用いられるものであってもよい。
【0060】
具体的には、前記電極形成用スラリーが正極形成用である場合、前記電極活物質は、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物であって、具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル又はアルミニウムのような1種以上の金属とリチウムを含むリチウム複合金属酸化物を含んでもよい。
【0061】
より具体的に、前記リチウム複合金属酸化物は、リチウム-マンガン系酸化物(例えば、LiMnO2、LiMn2O4など)、リチウム-コバルト系酸化物(例えば、LiCoO2など)、リチウム-ニッケル系酸化物(例えば、LiNiO2など)、リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物(例えば、LiNi1-Y1MnY1O2(ここで、0<Y1<1)、LiMn2-z1Niz1O4(ここで、0<Z1<2)など)、リチウム-ニッケル-コバルト系酸化物(例えば、LiNi1-Y2CoY2O2(ここで、0<Y2<1)など)、リチウム-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、LiCo1-Y3MnY3O2(ここで、0<Y3<1)、LiMn2-z2Coz2O4(ここで、0<Z2<2)など)、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、Li(Nip1Coq1Mnr1)O2(ここで、0<p1<1、0<q1<1、0<r1<1、p1+q1+r1=1)又はLi(Nip2Coq2Mnr2)O4(ここで、0<p2<2、0<q2<2、0<r2<2、p2+q2+r2=2)など)、又はリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物(例えば、Li(Nip3Coq3Mnr3MS1)O2(ここで、Mは、Al、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg及びMoからなる群から選択され、p3、q3、r3及びs1はそれぞれ独立した元素の原子分率であって、0<p3<1、0<q3<1、0<r3<1、0<s1<1、p3+q3+r3+s1=1である)など)などが挙げられ、これらのうちいずれか1つまたは2つ以上の化合物が含まれてもよい。
【0062】
この中でも、電池の容量特性及び安定性を高めることができるとの点から、前記リチウム複合金属酸化物は、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(例えば、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O2、又はLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O2など)、又はリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えば、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2など)などであってもよく、リチウム複合金属酸化物を形成する構成元素の種類及び含量比の制御による改善効果の顕著さを考慮するとき、前記リチウム複合金属酸化物は、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O2、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O2又はLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O2などであってもよく、これらのうちいずれか1つ又は2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0063】
前記電極形成用スラリーが負極形成用である場合、前記電極活物質は、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物であって、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金又はAl合金などの、リチウムとの合金化が可能な金属質化合物;SiOx(0<x=2)、SnO2、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープ及び脱ドープすることができる金属酸化物;又はSi-C複合体又はSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などの負極活物質であってもよく、これらのうちいずれか1つ又は2つ以上の混合物が用いられてもよい。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が用いられてもよい。また、炭素材料は、低結晶炭素及び高結晶性炭素などがいずれも用いられてよい。低結晶性炭素には軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソ相ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソ炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、メソ相ピッチ(Mesophase pitches)、及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0064】
前記電極活物質は、電極形成用スラリーで分散媒を除いた固形分100重量部に対して95.5重量部から99重量部、好ましくは96重量部から98.7重量部、より好ましくは97重量部から98重量部で含まれてもよい。電極活物質の含量が前記範囲内に含まれる場合、ある程度の水準以上の容量を維持することができ、バインダー及び導電材がある程度の水準以上含有されて電極集電体に対する接着力及び導電性が改善され得る。
【0065】
前記バインダーは、電極活物質、導電材及び電極集電体間の結合に助けとなる成分である。例えば、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体を挙げることができる。
【0066】
通常、前記バインダーは、電極形成用スラリーで分散媒を除いた固形分100重量部に対して0.8重量部から3.0重量部、好ましくは1.0重量部から2.5重量部、より好ましくは1.0重量部から2.2重量部で含まれてもよい。前記バインダーが前記範囲内に含まれれば、電極活物質の間、電極活物質と導電材の間の接着力を向上させることができ、ひいては電極集電体との結合力を向上させることができる。
【0067】
前記分散媒は、当該技術分野で一般に用いられる溶媒であってもよく、NMP(N-メチル-2-ピロリジン)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)及びアセトン(acetone)などの有機溶媒又は水などを用いてもよく、これらのうち1種単独又は2種以上の混合溶媒が用いられてもよい。前記分散媒は、電極形成用スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮し、前記電極活物質、導電材及びバインダーを溶解又は分散させるために用いられる。例えば、電極活物質、導電材、及び選択的にバインダーを含む固形分の濃度が40重量%から80重量%、好ましくは40重量%から70重量%、より好ましくは50重量%から65重量%となるように含まれてもよい。
【0068】
一方、前記電極形成用スラリーで前記分散媒を除いた固形分が、前記電極形成用スラリー100重量部に対して50重量部から65重量部含まれている場合、前記電極形成用スラリーの粘度は、24℃から26℃の温度条件で5,000cPsから35,000cPs、好ましくは10,000cPsから35,000cPs、より好ましくは10,000cPsから30,000cPsであるものであってもよい。前記電極形成用スラリーの粘度が前記範囲内である場合、分散媒を除いた固形分が一定に分散されながらも、電極集電体に前記電極形成用スラリーを塗布する時に均一な厚さで塗布され得る。
【0069】
電極
以下、電極に対して説明する。
【0070】
本発明の電極は、電極集電体及び前記電極集電体上に形成される電極活物質層を含む。より具体的に、前記電極活物質層は、電極活物質及び前記導電材を含む。
【0071】
前記電極は、正極又は負極であってもよく、より具体的には正極であってもよい。前記電極活物質及び前記導電材は、前述した内容と同一なので、具体的な説明を省略する。
【0072】
例えば、前記電極は、前記電極形成用スラリーを用いて電極活物質層を形成することを除いては、通常の方法により製造され得る。
【0073】
具体的に、前記電極は、前記電極形成用スラリーを電極集電体に塗布して乾燥するか、又は、前記電極形成用スラリーを別途の支持体上にキャスティングした後、該支持体から剥離して得られたフィルムを電極集電体上にラミネーションすることで製造され得る。
【0074】
前記電極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば特に制限されない。例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、又はアルミニウムやステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用されてもよい。また、前記電極集電体は、通常3μmから500μmの厚さを有してもよく、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で使用されてもよい。
【0075】
リチウム二次電池
次に、本発明によるリチウム二次電池に対して説明する。
【0076】
前記リチウム二次電池は、具体的に、正極、前記正極と対向して位置する負極、前記正極と負極との間に介在される分離膜及び電解質を含み、前記正極及び負極の少なくとも一つ以上は、前記導電材を含む電極形成用スラリーにより製造されたものであってもよい。一方、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、分離膜からなる電極組立体を収納する電池容器、及び前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含んでもよい。一方、前記正極及び負極に対しては前述した内容と同一なので、具体的な説明を省略する。
【0077】
前記分離膜は、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、リチウム二次電池において分離膜として用いられるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に、電解質のイオン移動に対して抵抗が低いながらも、電解液含浸能に優れたものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム、又はこれらの2層以上の積層構造体が使用されてもよい。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されてもよい。また、耐熱性又は機械的強度の確保のために、セラミックス成分又は高分子物質が含まれたコーティングされた分離膜が使用されてもよく、選択的に単層又は多層構造で使用されてもよい。
【0078】
前記電解質としては、リチウム二次電池の製造時に通常用いられる有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などを挙げることができる。
【0079】
具体的に、前記電解質は、非水系有機溶媒及びリチウム塩を含んでもよい。
【0080】
前記非水系有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動することができる媒質の役割を担うことができるものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的に、前記非水系有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)又はテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethyl carbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(RはC2~C20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含んでもよい)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されてもよい。この中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の直鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1から約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液の性能が優れて示され得る。
【0081】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において用いられるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特に制限なく用いられ得る。具体的に、前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiIまたはLiB(C2O4)2などが使用されてもよい。前記リチウム塩の濃度は、0.1Mから2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0082】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池の容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。
【0083】
これにより、本発明の他の一具現例によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及びこれを含む電池パックが提供される。
【0084】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのいずれか1つ以上の中大型デバイスの電源として用いられ得る。
【0085】
以下、具体的な実施例を介して本発明をより具体的に説明する。但し、下記実施例は、本発明の理解を助けるための例示であるだけで、本発明の範囲を限定するものではない。本記載の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者において明白なことであり、このような変形及び修正が特許請求の範囲に属するのは当然のことである。
【0086】
[グラフェンフレークの製造及びグラフェンの準備]
1.実施例1:グラフェンフレークの製造
テトラヒドロフラン溶媒20mlにナフタレン2.56gを添加し、カリウム(K)を1モル濃度で溶解させてイオン溶液を製造した後、グローブボックス内に入れてから、グラファイトを100mg/mlとなるように混合させてグラファイト混合溶液を製造した。その後、30℃で前記グラファイト混合溶液を6時間、磁力撹拌機を用いて100rpmから200rpmで撹拌した。次いで、撹拌されたグラファイト混合溶液からイオン溶液を除去した後、残った固形分をシクロヘキサンで洗浄した。洗浄された固形分1g、ポリビニルピロリドン(PVP)1gを1Lのジメチルスルホキシド(DMSO)に入れた後、30分間水槽型超音波装備(Branson Ultrasonic bath)を用いて超音波分散(sonication dispersion)させた。その後、超音波分散が完了した物質を、遠心分離機(ハニル科学Combi-514R)を用いて2000rpmで1時間遠心分離した後、上層部だけ分離し、分離された上層部物質を、遠心分離機(ハニル科学Combi-514R)を用いて10000rpmで1時間さらに一度遠心分離した後、上層部に残された溶媒を除去し、グラフェンフレークを取得する。
【0087】
2.比較例1
前記実施例1のグラフェンフレークの代わりに、商用グラフェンとしてBTR-(GN-01)を準備した。
【0088】
3.比較例2
前記実施例1のグラフェンフレークの代わりに、商用グラフェンとしてSuper C-PAS1003を準備した。
【0089】
[電極形成用スラリーの製造]
1.実施例2
(1)導電材分散組成物の製造
前記実施例1により製造されたグラフェンフレーク3gに、前記グラフェンフレークが0.5mg/mlから5mg/mlの濃度となるようにn-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒を混合した後、水槽型超音波装備(Branson Ultrasonic bath)を用いて5分から20分間超音波分散(sonication dispersion)を介して溶媒に分散させ、導電材分散組成物を製造した。
【0090】
(2)正極形成用スラリーの製造
前記導電材分散組成物に、正極活物質としてLiNi0.6Mn0.2Co0.2O2を250g、及びPVDF(ポリビニリデンフルオライド)バインダーを2.5g添加した後、混合して正極形成用スラリーを製造した。前記グラフェンフレークは、前記正極形成用スラリーで溶媒を除いた固形分100重量部に対して1.17重量部で含まれている。
【0091】
2.実施例3
導電材分散組成物の製造時、前記実施例1により製造されたグラフェンフレークを3.3gで混合したことを除いては、前記実施例2と同一の方法で導電材分散組成物及び正極形成用スラリーを製造した。前記グラフェンフレークは、前記正極形成用スラリーで溶媒を除いた固形分100重量部に対して1.29重量部で含まれている。
【0092】
3.実施例4
導電材分散組成物の製造時、前記実施例1により製造されたグラフェンフレークを2.7gで混合したことを除いては、前記実施例2と同一の方法で導電材分散組成物及び電極形成用スラリーを製造した。前記グラフェンフレークは、前記正極形成用スラリーで溶媒を除いた固形分100重量部に対して1.06重量部で含まれている。
【0093】
4.比較例3
導電材分散組成物の製造時、前記実施例2で用いられるグラフェンフレークの代わりに、商用グラフェン(BTR-(GN-01))3gを使用したことを除いては、前記実施例2と同一の方法で導電材分散組成物及び正極形成用スラリーを製造した。前記商用グラフェン(BTR-(GN-01))は、前記正極形成用スラリーで溶媒を除いた固形分100重量部に対して1.17重量部で含まれている。
【0094】
5.比較例4
導電材分散組成物の製造時、前記実施例2で用いられるグラフェンフレークの代わりに、商用グラフェン(Super C-PAS1003)3gを使用したことを除いては、前記実施例2と同一の方法で導電材分散組成物及び電極(正極)形成用スラリーを製造した。前記商用グラフェン(Super C-PAS1003)は、前記正極形成用スラリーで溶媒を除いた固形分100重量部に対して1.17重量部で含まれている。
【0095】
6.比較例5
導電材分散組成物の製造時、前記実施例2で用いられるグラフェンフレークの代わりにカーボンナノチューブ3gを使用したことを除いては、前記実施例2と同一の方法で導電材分散組成物及び正極形成用スラリーを製造した。前記カーボンナノチューブは、前記正極形成用スラリーで溶媒を除いた固形分100重量部に対して1.17重量部で含まれている。
【0096】
7.比較例6
前記実施例2で、グラフェンフレークの代わりにカーボンブラック3gを使用したことを除いては、前記実施例2と同一の方法で導電材分散組成物及び電極(正極)形成用スラリーを製造した。前記カーボンブラックは、前記正極形成用スラリーで溶媒を除いた固形分100重量部に対して1.17重量部で含まれている。
【0097】
[製造例]電極(正極)及びリチウム二次電池の製造
1.正極の製造
前記実施例2~4及び比較例3~6で製造した正極形成用スラリーを630mg/25cm2のローディング量でアルミニウム集電体に塗布した後、130℃で乾燥してから圧延し、正極を製造した。
【0098】
2.リチウム二次電池の製造
負極活物質である天然黒鉛、カーボンブラック導電材及びPVDF(ポリビニリデンフルオライド)バインダーを、85:10:5の重量比で混合した後、N-メチルピロリドン溶媒を添加して負極形成用スラリーを製造し、これを銅集電体に塗布して負極を製造した。
【0099】
前記のように製造された正極と負極の間に多孔性ポリエチレンの分離膜を介在して電極組立体を製造し、前記電極組立体をケース内部に位置させた後、ケース内部に電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。この際、電解液は、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート(EC/DMC/EMCの混合体積比=3/4/3)からなる有機溶媒に1.0M濃度のリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)を溶解させて製造した。
【0100】
[実験例]
1.実験例1:X線回折分析
前記実施例1で製造されたグラフェンフレーク及び比較例1、2のグラフェンを粉砕し、X線回折分析機(Bruker AXS D4-Endeavor XRD)で測定した。印加電圧を40kVとして印加電流を40mAとし、測定した2θ(2theta)の範囲は24゜から28゜であり、0.2゜の間隔でスキャンして測定した。このとき、スリット(slit)は可変発散スリット6mmを使用し、PMMAホルダーによるバックグラウンドノイズ(background noise)をなくすためにサイズが大きなPMMAホルダー(直径=20mm)を使用した。25.44゜でのピーク強度の割合は、EVAプログラム(Bruke社製)を用いて測定した。また、前記実施例1で製造されたグラフェンフレーク及び比較例1、2のグラフェンの結晶性を確認し、X線回折(XRD)により取得されたデータグラフ(
図1参照)において、2θの24゜から28゜範囲で最大ピークが表れた位置(゜)及び最大ピークの半値幅(Full Width at Half-Maximum;FWHM)をそれぞれ下記表1に示した。
【0101】
【0102】
図1は、本発明による実施例1のグラフェンフレーク及び比較例1、2のグラフェンのX線回折(XRD)により取得されたデータグラフである。実施例1は、25.44゜で広いピーク(broad peak)が観察され、比較例1、2は、26.51゜で狭いピーク(narrow peak)が観察されることを確認することができる。
【0103】
2.実験例2:縦横比の分析
前記実施例1のグラフェンフレーク及び比較例1、2のグラフェンの平均の長軸長さ(average lateral size)及び平均の厚さ(average thickness)を測定した。先ず、実施例1のグラフェンフレークが分散された実施例2の導電材分散組成物、比較例1、2のグラフェンが分散された比較例3、4の導電材分散組成物をシリコンウェハに落とした後、この際、原子顕微鏡(AFM)を用いて観測されるグラフェンフレークの長さ及び厚さをそれぞれ測定し、長い順に上位50個及び下位50個を採集してこれらの平均を出し、平均の長軸長さ及び平均の厚さを計算した後、測定された平均の長軸長さの平均の厚さに対する縦横比(Aspect ratio)を測定して下記表2に示した。
【0104】
【0105】
前記表2に示されている通り、実施例の縦横比が、比較例と比べるとき、顕著に大きいことを確認することができる。
【0106】
3.実験例3:ラマン分光分析
前記実施例1のグラフェンフレーク及び比較例1、2のグラフェンの532nm波長のレーザを用いたラマン分光分析法により得られた1575cm-1から1600cm-1でのGバンドの最大ピーク強度(IG)に対する、1340cm-1から1360cm-1でのDバンドの最大ピーク強度(ID)の比(ID/IG)から平均値を求めて下記表3に示した。
【0107】
【0108】
前記表3に示されている通り、比較例と比べるとき、ID/IG値が比較例1に比べてさらに高いことを確認することができる。
【0109】
4.実験例4:XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析
前記実施例1のグラフェンフレーク及び比較例1、2のグラフェンのXPS分析法により得られた構成原子の原子%を下記表4に示した。
図2は、本発明による実施例1のグラフェンフレーク及び比較例1、2のグラフェンのX線光電子分光法(XRD)により取得されたデータグラフである。
【0110】
【0111】
前記表4及び
図2に示されている通り、実施例1のグラフェンフレークは、比較例によるグラフェンフレークに比べて酸素原子%がさらに高いことを確認することができる。
【0112】
5.実験例5:電極形成用スラリーの粉体抵抗の測定
前記実施例2~4及び比較例3~6で製造された電極形成用スラリーのプレス密度による粉体抵抗の変化を測定し、その結果を
図3に示した。
【0113】
前記粉体抵抗は、製造したそれぞれの電極形成用スラリーを乾燥した後、グラインディング(grinding)してから、粉体抵抗測定器(HPRM-A2、ハンテック社製)を用いてプレス密度を変化しながら測定した。
【0114】
【0115】
同一の含量が含まれている実施例の場合、比較例5以外の全ての比較例に比べて粉体抵抗が顕著に低いことを確認することができる。但し、比較例5の場合、実施例に比べて粉体抵抗がさらに低いが、下記で測定される接着力、電池容量維持率の特性はさらに劣ることを確認することができる。
【0116】
6.実験例6:電極形成用スラリーの接着力の測定
前記実施例2~4、比較例3~6で製造された前記電極形成用スラリー(アルミニウムホイル、Al foil)を基材に塗布して製造した後、100mm/minの速度で乾燥したスラリーを90゜となるように引っ張りながら、落ちるまでにかかる力(gf)を測定して接着力を測定した。これによる結果を表6及び
図4に示した。
【0117】
【0118】
前記表6に示されている通り、実施例により製造される電極形成用スラリーの接着力が、比較例によるものよりさらに優れることを確認することができる。
【0119】
7.実験例7:リチウム二次電池の高温サイクル容量維持率の評価
前記製造例で製造されたリチウム二次電池を、45℃、SOC 50%で、10Cで充電及び放電を行うことを1サイクル基準とし、1800サイクルとなる(300、600、900、1800)までサイクル容量維持率を測定した。測定された容量維持率を下記表7及び
図5に示した。
【0120】
【0121】
前記表7及び
図5に示されている通り、実施例の場合、容量維持率が比較例に比べてさらに高いことを確認することができる。一方、比較例5の場合、同量を添加した実施例2に比べてサイクル数が高くなるに伴って容量維持率がさらに減少することを確認することができる。
【0122】
8.実験例8:リチウム二次電池の高温サイクル容量維持率の評価
前記製造例で製造されたリチウム二次電池に対し、60℃でSOC 100%で充電した後、週(week)単位として5週になるまで電池の容量維持率及び抵抗増加率を測定した。測定された容量維持率及び抵抗増加率を下記表8及び
図6に示した。
図6で、容量維持率は上部にあるグラフから確認することができ、抵抗増加率は下部にあるグラフから確認することができる。
【0123】
【0124】
前記表8及び
図6に示されている通り、実施例によるリチウム二次電池の容量維持率はさらに高く、抵抗増加率は低いことを確認することができる。一方、比較例5と同量で添加した実施例2の場合、容量維持率はさらに高く、抵抗増加率は低いことを確認することができる。