IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】親水化処理剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20231218BHJP
   C11D 1/12 20060101ALI20231218BHJP
   C11D 1/28 20060101ALI20231218BHJP
   C11D 1/62 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C09K3/00 R
C11D1/12
C11D1/28
C11D1/62
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019209423
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2020132853
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2019023593
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】野村 孝行
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆儀
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-214578(JP,A)
【文献】特表2005-508400(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102703233(CN,A)
【文献】特開平02-142898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C11D 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分岐型陰イオン界面活性剤、(B)ジ長鎖炭化水素型陽イオン界面活性剤、(C)多価金属イオン、及び水を含有する親水化処理剤組成物であって、
(A)が、内部オレフィンスルホン酸塩、第二級アルカンスルホン酸塩、及びジアルキルスルホコハク酸塩から選ばれる1種以上の分岐型陰イオン界面活性剤であり、
(B)が、炭素数6以上14以下の炭化水素基を2つ有する陽イオン界面活性剤であり、
(C)が、二価金属イオンであり、
(A)と(B)の合計に対する(B)のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下であり、
(A)と(B)の合計に対する(C)のモル比が、(C)/[(A)+(B)]で0.2以上4以下である、
親水化処理剤組成物。
【請求項2】
(A)を0.001質量%以上60質量%以下含有する、請求項記載の親水化処理剤組成物。
【請求項3】
硬質表面用である、請求項1又は2記載の親水化処理剤組成物。
【請求項4】
(B)が、下記一般式(B)で表される陽イオン界面活性剤である、請求項1~の何れか1項記載の親水化処理剤組成物。
【化1】

〔式中、R1b、R2b、R3b、及びR4bのうち、2つは炭素数6以上14以下の炭化水素基であり、残りの2つは炭素数1以上3以下の炭化水素基である。Xは対イオンである。〕
【請求項5】
(A)分岐型陰イオン界面活性剤、(B)ジ長鎖炭化水素型陽イオン界面活性剤、(C)多価金属イオン、及び水を含有し、(A)と(B)の合計に対する(B)のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下であり、(A)と(B)の合計に対する(C)のモル比が、(C)/[(A)+(B)]で0.2以上4以下である処理液を固体表面に接触させる、固体表面の親水化方法であって、
(A)が、内部オレフィンスルホン酸塩、第二級アルカンスルホン酸塩、及びジアルキルスルホコハク酸塩から選ばれる1種以上の分岐型陰イオン界面活性剤であり、
(B)が、炭素数6以上14以下の炭化水素基を2つ有する陽イオン界面活性剤であり、
(C)が、二価金属イオンである、
固体表面の親水化方法
【請求項6】
処理液が、(A)成分、(B)成分及び水を含有する組成物と、(C)成分及び水を含有する組成物とを混合して得られたものである、請求項記載の親水化方法。
【請求項7】
固体表面が、硬質物品の固体表面である、請求項5又は6記載の固体表面の親水化方法。
【請求項8】
処理液を固体表面に接触させた後、該固体表面を水ですすぐ、請求項の何れか1項に記載の固体表面の親水化方法。
【請求項9】
処理液が、請求項1~の何れか1項記載の親水化処理剤組成物と水とを混合して得られたものである、請求項の何れか1項記載の親水化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水化処理剤組成物、及び固体表面の親水化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体表面に防汚性や脱汚性を付与する方法としては、撥水化処理と親水化処理の相異なる方法が知られている。
撥水化処理は、ガラス、金属、繊維等の固体表面に撥水性を持たせる表面処理を行い、水に含まれる汚れを付着させないようにする技術である。例えば、衣類を洗濯後、柔軟仕上げ剤で処理したり、スキーウェア等に撥水剤をスプレーして防水効果を持たせたり、自動車の塗装面をワックス掛けしたりすることが広く行われている。
しかしながら、撥水化処理では、表面を完全に撥水化させることは難しく、度重なる水との接触により、水に含まれる汚れが固体表面に蓄積するため、十分な防汚効果を発揮することが難しく、ついた汚れが落ちにくくなるという脱汚効果の低下も生じうる。
【0003】
一方、固体表面の親水化処理、すなわち、固体表面の水に対する接触角を低下させ、固体表面を水に対して濡れ易くする処理をすると、当該処理後に固体表面に付着した汚れが洗浄時に落ち易くなったり、汚れの再汚染防止効果が期待できたりする他、ガラス・鏡等の防曇効果、帯電防止、熱交換器のアルミニウムフィンの着霜防止、浴槽及びトイレ表面等の防汚性、脱汚性等の付与が期待できる。
【0004】
固体表面の親水化処理剤及び方法としては、いくつかの提案がなされている。
例えば、特許文献1には、両性高分子電解質を含有する水性防汚組成物が開示されている。特許文献2には、界面活性剤及び特定のポリベタインを含有する洗浄用又は、すすぎ洗い用の組成物が開示されている。特許文献3には、特定のベタイン構造を有する重合性不飽和モノマーと特定の重合性不飽和モノマーとを共重合して得られるアクリル樹脂、親水性架橋重合体粒子及び架橋剤を含有する親水化処理剤組成物が開示されている。特許文献4には、両親媒性ブロックコポリマーを含む組成物を支持体に適用する段階を含み、両親媒性ブロオックコポリマーが特定の構造の親水性ブロックとエチレン性不飽和疎水性モノマーから形成される疎水性ブロックを含有する疎水性支持体の湿潤性/親水性を改良する方法が開示されている。特許文献5には、疎水性不飽和単量体由来の繰返し単位を含む不飽和単量体由来の重合体セグメントA-1と、スルホベタイン基を有する不飽和単量体由来の繰返し単位を含む不飽和単量体由来の重合体セグメントA-2とを有し、重合体セグメントA-1の含有量が0.05質量%以上、75質量%以下であるブロック重合体A、からなる親水化処理剤が開示されている。特許文献6には、ベタイン基を有する特定の構成単位(A)及びカチオン基を有する特定の構成単位(B)を含む共重合体からなる表面処理剤が開示されている。特許文献7には、炭素数17以上24以下の内部オレフィンスルホン酸塩からなる繊維用改質剤及びこれを含有する繊維製品用仕上げ剤組成物が開示されている。
【0005】
一方、シャンプー、身体、衣料などの洗浄に使用できる界面活性剤を含む組成物において、陰イオン界面活性剤と陽イオン界面活性剤とを組み合わせて配合することが行われている。特許文献8には、特定の1-ヒドロキシ-2-ピリドン化合物、アニオン界面活性剤、第4級窒素含有カチオン性化合物及び水難溶性油分を含有するシャンプー組成物が開示されている。特許文献9には、陰イオン性界面活性剤、特定の陽イオン性化合物、及び非イオン性界面活性剤を含む界面活性剤システムが開示されている。特許文献10には、(a)アルキルサルフェート又はアルキルエーテルサルフェートを含んで成る少なくとも1種の陰イオン界面活性剤、(b)炭化水素及び水素からなる群から選ばれる4つの置換基を有し、それらの置換基の少なくとも1つが炭化水素である第4級アンモニウム化合物を含んで成る少なくとも1種の陽イオン界面活性剤、並びに(c)水を含んで成る水性の自由流動性組成物であって、前記少なくとも1種の陰イオン界面活性剤と前記少なくとも1種の陽イオン界面活性剤が、前記組成物が少なくとも1回の凍結/解凍サイクルで非ニュートン的剪断減粘性及び安定な粘度を有するような合計量で存在する、水性の自由流動性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-181601号公報
【文献】特表2006-514150号公報
【文献】特開2012-25820号公報
【文献】特表2009-545642号公報
【文献】特開2015-105313号公報
【文献】特開2017-190381号公報
【文献】特開2018-66102号公報
【文献】特開平3-184908号公報
【文献】特表2005-508400号公報
【文献】特表2005-518389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
固体表面の親水化処理では、優れた親水化能力が得られるとともに、処理後の固体表面の仕上がり性がよいことが望まれる。例えば、ガラスなどの透明な材質からなる固体表面では、透明性を損なわずに親水化処理できることが望まれる。
【0008】
本発明は、硬質表面などの種々の固体表面に対して、優れた親水化能力を発揮し、且つ親水化処理後の固体表面の状態を損なわない親水化処理剤組成物及び固体表面の親水化方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(A)分岐型陰イオン界面活性剤、(B)ジ長鎖炭化水素型陽イオン界面活性剤、及び水を含有する親水化処理剤組成物であって、(A)と(B)の合計に対する(B)のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である、親水化処理剤組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、(A)分岐型陰イオン界面活性剤、(B)ジ長鎖炭化水素型陽イオン界面活性剤、及び水を含有し、(A)と(B)の合計に対する(B)のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である処理液を固体表面に接触させる、固体表面の親水化方法に関する。
【0011】
以下、(A)分岐型陰イオン界面活性剤を(A)成分、(B)ジ長鎖炭化水素型陽イオン界面活性剤を(B)成分として説明する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硬質表面などの種々の固体表面に対して、優れた親水化能力を発揮し、且つ親水化処理後の固体表面の状態を損なわない親水化処理剤組成物及び固体表面の親水化方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔親水化処理剤組成物〕
(A)成分は、分岐型陰イオン界面活性剤である。分岐型陰イオン界面活性剤は、疎水性部分である炭化水素基が分岐構造を有する陰イオン界面活性剤である。なお、本発明では、陰イオン界面活性剤が、親水性部分である陰イオン基に結合した炭素原子が2級又は3級炭素原子である炭化水素基を有する場合も、分岐構造を有する陰イオン界面活性剤であるとしてよい。
【0014】
(A)成分としては、炭素数10以上30以下の分岐鎖炭化水素基を有する陰イオン界面活性剤が挙げられる。
(A)成分としては、炭素数10以上30以下の分岐鎖炭化水素基と、硫酸エステル基又はスルホン酸基を有する陰イオン界面活性剤が挙げられる。
前記分岐鎖炭化水素基は、水酸基などの置換基又はCOO基などの連結基を含んでいてもよい。置換基又は連結基の炭素数は、上記分岐鎖炭化水素基の炭素数に算入しない。
硫酸エステル基及びスルホン酸基は、塩、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩となっていてもよい。
【0015】
(A)成分の分岐鎖炭化水素基の炭素数は、固体表面の親水化の観点で、好ましくは10以上、より好ましくは16以上、更に好ましくは18以上、そして、好ましくは30以下、より好ましくは28以下、更に好ましくは24以下、より更に好ましくは22以下である。
(A)成分の分岐鎖炭化水素基としては、分岐鎖アルキル基、分岐鎖アルケニル基、分岐鎖アルキル基を有するアリール基が挙げられる。
【0016】
(A)成分としては、下記一般式(A)で表される陰イオン界面活性剤が挙げられる。
【0017】
【化1】
【0018】
〔式中、R1a、R2aは、それぞれ独立して、置換基又は連結基を含んでいてもよい炭素数1以上28以下の炭化水素基を示す。Xは、SOM、COOM、及びOSOMから選ばれる基を示す。Mは、対イオンを示す。〕
【0019】
式(A)中、R1a、R2aの炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基が挙げられる。固体表面の親水化の観点で、アルキル基又はアルケニル基が好ましい。
1a、R2aの炭化水素基は、水酸基などの置換基又はCOO基などの連結基を含んでいてもよい。
1aとR2aの炭素数の合計は、固体表面の親水化の観点で、好ましくは9以上、より好ましくは15以上、更に好ましくは17以上、そして、好ましくは29以下、より好ましくは27以下、更に好ましくは23以下、より更に好ましくは21以下である。なお、置換基又は連結基の炭素数は、R1a、R2aの炭化水素基の炭素数には算入しない。
式(A)中、Xは、SOMが好ましい。
式(A)中、Mは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属(1/2原子)イオン、アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンが挙げられる。Mは、アルカリ金属イオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオンがより好ましく、カリウムイオンが更に好ましい。
【0020】
(A)成分としては、内部オレフィンスルホン酸塩(IOS)、第二級アルカンスルホン酸塩(SAS)、及びジアルキルスルホコハク酸塩(DASS)から選ばれる1種以上の分岐型陰イオン界面活性剤が挙げられる。
【0021】
(A)成分は、固体表面、例えば硬質表面の親水化の観点で、IOSが好ましい。IOSの炭素数は、10以上、更に16以上、更に18以上、そして、30以下、更に28以下、更に24以下、更に22以下が好ましい。この炭素数は酸型化合物換算の炭素数である。IOSの塩としては、固体表面の親水化の観点で、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属(1/2原子)塩、アンモニウム塩又は有機アンモニウム塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩が挙げられる。有機アンモニウム塩としては、炭素数2以上6以下のアルカノールアンモニウム塩が挙げられる。IOSの塩は、アルカリ金属塩が好ましく、カリウム塩がより好ましい。
【0022】
本発明のIOSは、二重結合がオレフィン鎖の内部(2位以上の位置)にある内部オレフィンをスルホン化、中和、及び加水分解すること等によって得ることができる。内部オレフィンをスルホン化すると、定量的にβ-サルトンが生成し、β-サルトンの一部は、γ-サルトン、オレフィンスルホン酸へと変化し、更にこれらは中和・加水分解工程においてヒドロキシアルカンスルホン酸塩(H体)と、オレフィンスルホン酸塩(O体)へと転換する(例えば、J. Am. Oil Chem. Soc. 69, 39(1992))。IOSは、これらの混合物であり、その主体は、スルホン酸基が炭素鎖(H体におけるヒドロキシアルカン鎖、又はO体におけるオレフィン鎖)の内部(2位以上の位置)に存在するスルホン酸塩である。IOSの炭素鎖におけるスルホン酸基の置換位置分布は、ガスクロマトグラフィー、核磁気共鳴スペクトル等の方法により定量できる。
【0023】
IOS中、スルホン酸基が前記炭素鎖の2位に存在するIOSの割合は、モル基準又は質量基準で、固体表面の親水化の観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、そして、好ましくは45%以下、より好ましくは30%以下である。
【0024】
IOS中、スルホン酸基が前記炭素鎖の1位に存在するIOSの割合は、モル基準又は質量基準で、固体表面の親水化の観点から、好ましくは0.2%以上、より好ましくは0.5%以上、更に好ましくは1.0%以上であり、そして、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下、より更に好ましくは3%以下である。
【0025】
本発明の親水化処理剤組成物は、(A)成分として、炭素数18以上22以下のIOSを含有することがより好ましい。
【0026】
IOS中、炭素数16以上24以下のIOSの割合は、固体表面の親水化の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは97質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下であり、100質量%であってもよい。
【0027】
IOSは、H体とO体とのモル比(H体/O体)が、固体表面の親水化の観点から、好ましくは50/50超、より好ましくは70/30超であり、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下である。
【0028】
SASは、親水性部分であるスルホン酸基に結合した炭素原子が2級炭素原子である炭化水素基を有する。SASの該炭化水素基の炭素数は、固体表面の親水化の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下である。
【0029】
DASSのアルキル基は、分岐鎖アルキル基が好ましい。DASSは2つのアルキル基を含むが、それぞれのアルキル基の炭素数は固体表面の親水化の観点から、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。DASSは、2つのCOO基を含むが、その炭素数は、DASSが有する分岐構造の炭素数には算入しない。
【0030】
(A)成分としては、固体表面の親水化及び固体表面の仕上がり性の観点から、炭素数10以上30以下の内部オレフィンスルホン酸塩、炭素数10以上22以下の第二級アルカンスルホン酸塩及びアルキル基の炭素数がそれぞれ6以上18以下であるジアルキルスルホコハク酸塩から選ばれる1種以上の分岐型陰イオン界面活性剤が好ましく、炭素数10以上30以下の内部オレフィンスルホン酸塩から選ばれる1種以上の分岐型陰イオン界面活性剤がより好ましい。
【0031】
本発明の親水化処理剤組成物は、固体表面の親水化及び固体表面の仕上がり性の観点から、(A)成分を、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下含有する。なお、(A)成分の質量%は、陰イオン基が未中和の化合物、すなわち酸型化合物に換算した量に基づくものとする(以下同様)。
【0032】
(B)成分は、ジ長鎖炭化水素型陽イオン界面活性剤である。ジ長鎖炭化水素型陽イオン界面活性剤は、1分子中に、2つの長鎖炭化水素基を有する陽イオン界面活性剤であってよい。(B)成分は、2つの長鎖炭化水素基からなる疎水基と、1つの親水基とを有する陽イオン界面活性剤が好ましい。(B)成分の長鎖炭化水素基の炭素数は、6以上14以下が好ましい。
【0033】
(B)成分としては、固体表面の親水化及び固体表面の仕上がり性の観点から、炭素数6以上14以下の炭化水素基を2つ有する陽イオン界面活性剤が挙げられる。
(B)成分としては、固体表面の親水化及び固体表面の仕上がり性の観点から、炭素数6以上14以下の炭化水素基〔以下、長鎖炭化水素基(B)ともいう〕を2つ有する第4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤が挙げられる。
前記長鎖炭化水素基(B)としては、炭素数6以上14以下の脂肪族炭化水素基〔以下、脂肪族炭化水素基(B1)ともいう〕、炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基〔以下、芳香族炭化水素基(B2)ともいう〕が挙げられる。
【0034】
脂肪族炭化水素基(B1)は、直鎖が好ましい。脂肪族炭化水素基(B1)としては、アルキル基、アルケニル基が挙げられる。アルキル基、アルケニル基は、直鎖が好ましい。脂肪族炭化水素基(B1)の炭素数の上限値は、固体表面の仕上がり性の観点で、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。脂肪族炭化水素基(B1)の炭素数は8が好ましい。
【0035】
芳香族炭化水素基(B2)としては、アラルキル基、アリール基が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル基、フェネチル基が挙げられ、好ましくはベンジル基である。アリール基は置換アリール基であってよい。置換アリール基の置換基が炭化水素基である場合はその炭素数は、アリール基の炭素数に算入する。アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基が挙げられる。芳香族炭化水素基(B2)の炭素数の上限値は、固体表面の仕上がり性の観点で、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。芳香族炭化水素基(B2)の炭素数は、7又は8が好ましく、7がより好ましい。
【0036】
長鎖炭化水素基(B)としては、アルキル基、アルケニル基、及びアラルキル基から選ばれる基が好ましい。
【0037】
(B)成分としては、固体表面の親水化及び固体表面の仕上がり性の観点から、炭素数6以上14以下のアルキル基、炭素数6以上14以下のアルケニル基、及び炭素数6以上14以下のアラルキル基から選ばれる基を2つ有する第4級アンモニウム塩が好ましい。
(B)成分としては、固体表面の親水化及び固体表面の仕上がり性の観点から、炭素数6以上14以下のアルキル基、炭素数6以上14以下のアルケニル基、及び炭素数6以上14以下のアラルキル基から選ばれる基を2つ有する第4級アンモニウム塩であって、炭素数6以上14以下のアルキル基、更に直鎖アルキル基を少なくとも1つ有する第4級アンモニウム塩がより好ましい。
【0038】
(B)としては、下記一般式(B)で表される陽イオン界面活性剤が好ましい。
【0039】
【化2】
【0040】
〔式中、R1b、R2b、R3b、及びR4bのうち、2つは炭素数6以上14以下の炭化水素基であり、残りの2つは炭素数1以上3以下の炭化水素基である。Xは対イオンである。〕
【0041】
一般式(B)中、R1b、R2b、R3b、及びR4bのうちの2つである、炭素数6以上14以下の炭化水素基は長鎖炭化水素基(B)であり、具体的な基や好ましい態様は前述の通りである。一般式(B)中、R1b、R2b、R3b、及びR4bのうち、少なくとも1つは炭素数6以上14以下のアルキル基、更に直鎖アルキル基であることが好ましい。
一般式(B)中、R1b、R2b、R3b、及びR4bのうちの残りの2つである、炭素数1以上3以下の炭化水素基としては、アルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基である。
一般式(B)中、Xは対イオンであり、具体的には、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭素数1以上3以下の脂肪酸イオン、及びハロゲン化物イオンから選ばれる1種以上の対イオンが挙げられる。これらの中でも、製造の容易性及び原料入手容易性の観点から、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、及びハロゲン化物イオンから選択される1種以上、より好ましくはハロゲン化物イオンである。ハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンが挙げられる。
【0042】
本発明の親水化処理剤組成物は、固体表面の親水化の観点で、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、そして、同様の観点で、0.8以下、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.4以下である。なお、(B)/[(A)+(B)]のモル比において、(A)成分のモル数は、陰イオン基が未中和の化合物、すなわち酸型化合物に換算した量に基づくものとする。
【0043】
本発明の親水化処理剤組成物は、固体表面の親水化の観点で、(C)多価金属イオン〔以下、(C)成分という〕を含有することが好ましい。
(C)成分の多価金属イオンは、二価以上三価以下の金属イオンが挙げられ、二価金属イオンが好ましい。
(C)成分は、(A)成分との共存下での固体表面の親水化の観点で、2族元素のイオンが好ましく、カルシウム(Ca)イオン及びマグネシウム(Mg)イオンから選ばれる1種以上がより好ましい。(C)成分は、Caイオンを含むことが好ましい。(C)成分は、CaイオンとMgイオンとを含むことがより好ましい。(C)成分が、CaイオンとMgイオンとを含む場合、Caイオン/Mgイオンのモル比は、好ましくは5/5以上、より好ましくは7/3以上、そして、好ましくは9/1以下である。
【0044】
本発明は、(A)分岐型陰イオン界面活性剤〔(A)成分〕、(B)ジ長鎖炭化水素型陽イオン界面活性剤、(C1)Caイオン及びMgイオンから選ばれる1種以上のイオン〔以下、(C1)成分という〕、並びに水を含有する親水化処理剤組成物であって、固体表面の親水化の観点で、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下であり、固体表面の親水化及び固体表面の仕上がり性の観点から、(A)成分と(C1)成分のモル比が、(C1)/(A)で0.2以上10以下である、親水化処理剤組成物を含む。本明細書の記載は(C)成分を(C1)成分に置き換えて、全てこの親水化処理剤組成物にも適用できる。
本発明は、(A1)IOS〔以下、(A1)成分という〕、(B)ジ長鎖炭化水素型陽イオン界面活性剤、(C1)Caイオン及びMgイオンから選ばれる1種以上のイオン〔以下、(C1)成分という〕、並びに水を含有する親水化処理剤組成物であって、固体表面の親水化の観点で、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下であり、固体表面の親水化及び固体表面の仕上がり性の観点から、(A1)成分と(C1)成分のモル比が、(C1)/(A1)で0.2以上10以下である、親水化処理剤組成物を含む。
本明細書の記載は、(A)成分を(A1)成分に置き換えて、また、(C)成分を(C1)成分に置き換えて、全てこれらの親水化処理剤組成物にも適用できる。
【0045】
(C)成分は、例えば、水溶性の多価金属塩を配合成分として用いることで本発明の親水化処理剤組成物に取り込まれたものであってもよい。また、組成物の原料として、(C)成分に相当する硬度成分を含む水を用いることで本発明の親水化処理剤組成物に取り込まれたものであってもよい。
【0046】
本発明の親水化処理剤組成物が(C)成分を含有する場合、(A)成分と(B)成分の合計に対する(C)成分のモル比は、(C)/[(A)+(B)]で、固体表面の親水化の観点で、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上、そして、固体表面の仕上がり性の観点で、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下である。なお、(C)/[(A)+(B)]のモル比において、(A)成分のモル数は、陰イオン基が未中和の化合物、すなわち酸型化合物に換算した量に基づくものとする。
【0047】
本発明の親水化処理剤組成物は、(A)成分、(B)成分の他に、(C)成分以外の更なる任意の成分として、(A)成分以外の陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、溶剤、油剤等を含有することができる。前記溶剤としては、ブチルジグリコール、ジプロピレングリコール、エタノール等が挙げられる。前記油剤としては、フェニルグリコール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0048】
本発明の親水化処理剤組成物は水を含有する。水は、通常、組成物の残部であり、全体を100質量%とするような量で含有される。本発明の親水化処理剤組成物は、液体組成物であることが好ましい。
【0049】
本発明の親水化処理剤組成物の20℃におけるpHは、固体表面の親水化及び固体表面の仕上がり性の観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、そして、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは9以下である。
【0050】
本発明の親水化処理剤組成物の20℃における粘度は、固体表面の親水化及び固体表面の仕上がり性の観点から、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは2mPa・s以上、そして、好ましくは10000mPa・s以下、より好ましくは5000mPa・s以下である。この粘度は、B型粘度計(東機産業株式会社製「TVB-10M」)を用いて、粘度に応じたローターおよび回転数で測定できる。粘度が低く、B型粘度計で測定が不可能な組成物については、レオメータ(アントンパール社製「Physica MCR301」を用いて、粘度に応じたコーンプレートで測定できる。
【0051】
本発明の親水化処理剤組成物は、硬質表面、布表面、皮膚表面、毛髪表面などの種々の固体表面を対象とすることができる。本発明の親水化処理剤組成物は、硬質表面用であることが好ましい。硬質表面としては、プラスチック、セラミックス、金属、木、ガラス、ゴム、炭素材料などの材質からなる硬質表面が挙げられる。硬質表面は、硬質物品の表面、例えば、前記材質からなる硬質物品の表面であってよい。プラスチックとしては、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、メラミン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS、FRP(繊維強化プラスチック)などが挙げられる。金属としては、ステンレス等の合金、アルミニウム、自動車用鉄鋼等の鉄などが挙げられる。ゴムとしては天然ゴム、ジエン系合成ゴムなどが挙げられる。木としては、フローリング等に使用される木材などが挙げられる。フローリング等に使用される木材は、表面処理されたものであってよい。布は、織布、不織布いずれでもよく、固体表面の親水化及び固体表面の仕上がり性の観点から、織布が好ましい。布は、合成繊維製が好ましい。布は、疎水性繊維製が好ましい。一例として、布は、繊維製品の製造材料となる。
【0052】
本発明の親水化処理剤組成物及び本発明の親水化方法により親水化された固体表面は、防曇性、防汚性、脱汚性、吸水性などが向上したものであってよい。また、本発明の親水化処理剤組成物及び本発明の親水化方法により親水化された固体表面は、透明性、平滑性など、その材質が本来持ち合わせている表面状態が維持されたものとなる。例えば、無色透明のガラスであれば、透過性が維持されたものとなる。
【0053】
本発明の親水化処理剤組成物は、防曇剤組成物であってよい。すなわち、本発明は、(A)成分、(B)成分、及び水を含有する防曇剤組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である、防曇剤組成物を提供する。
本発明の親水化処理剤組成物は、防汚処理剤組成物であってよい。すなわち、本発明は、(A)成分、(B)成分、及び水を含有する防汚処理剤組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である、防汚処理剤組成物を提供する。
本発明の親水化処理剤組成物は、脱汚処理剤組成物であってよい。すなわち、本発明は、(A)成分、(B)成分、及び水を含有する脱汚処理剤組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である、脱汚処理剤組成物を提供する。
本発明の親水化処理剤組成物は、吸水性付与剤組成物であってよい。すなわち、本発明は、(A)成分、(B)成分、及び水を含有する吸水性付与剤組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である、吸水性付与剤組成物を提供する。
これらの組成物には、本発明の親水化処理剤組成物で述べた事項を適宜適用することができる。これらの組成物は、(C)成分を含有することが好ましい。また、これらの組成物における好ましい態様、例えば(A)成分、(B)成分、(C)成分及びこれらの含有量なども、本発明の親水化処理剤組成物と同じである。
【0054】
本発明は、(A)成分と、(B)成分と、水とを、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下となるように混合する、親水化処理剤組成物の製造方法を提供する。
本発明の親水化処理剤組成物が(C)成分を含有する場合、(A)成分、(B)成分及び水を含有し、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である組成物と、(C)成分及び水を含有する組成物とを、好ましくは(A)成分と(B)成分の合計に対する(C)成分のモル比が、(C)/[(A)+(B)]で0.2以上4以下となるように、混合する親水化処理剤組成物の製造方法が提供される。
本発明の親水化処理剤組成物が(C)成分を含有する場合、(A)成分、(B)成分及び水を含有し、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である組成物と、(C)成分を含み硬度が4°dH以上100°dH以下の水とを、好ましくは(A)成分と(B)成分の合計に対する(C)成分のモル比が、(C)/[(A)+(B)]で0.2以上4以下となるように、混合する親水化処理剤組成物の製造方法が提供される。
これらの製造方法は、本発明の親水化処理剤組成物の製造方法として好適である。
これらの製造方法には、本発明の親水化処理剤組成物で述べた事項を適宜適用することができる。
【0055】
ここで、本明細書における硬度(°dH)とは、水中におけるカルシウム及びマグネシウムの濃度を、CaCO換算濃度で1mg/L(ppm)=約0.056°dH(1°dH=17.8ppm)で表したものを指す。
この硬度のためのカルシウム及びマグネシウムの濃度は、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を使用したキレート滴定法で求められる。
本明細書における水の硬度の具体的な測定方法を下記に示す。
【0056】
<水の硬度の測定方法>
〔試薬〕
・0.01mol/l EDTA・2Na溶液:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの0.01mol/l水溶液(滴定用溶液、0.01 M EDTA-Na2、シグマアルドリッチ(SIGMA-ALDRICH)社製)
・Universal BT指示薬(製品名:Universal BT、(株)同仁化学研究所製)
・硬度測定用アンモニア緩衝液(塩化アンモニウム67.5gを28w/v%アンモニア水570mlに溶解し、脱イオン水で全量を1000mlとした溶液)
〔硬度の測定〕
(1)試料となる水20mlをホールピペットでコニカルビーカーに採取する。
(2)硬度測定用アンモニア緩衝液2ml添加する。
(3)Universal BT指示薬を0.5ml添加する。添加後の溶液が赤紫色であることを確認する。
(4)コニカルビーカーをよく振り混ぜながら、ビュレットから0.01mol/l EDTA・2Na溶液を滴下し、試料となる水が青色に変色した時点を滴定の終点とする。
(5)全硬度は下記の算出式で求める。
硬度(°dH)=T×0.01×F×56.0774×100/A
T:0.01mol/l EDTA・2Na溶液の滴定量(mL)
A:サンプル容量(20mL、試料となる水の容量)
F:0.01mol/l EDTA・2Na溶液のファクター
【0057】
本発明は、(A)成分、(B)成分、及び水を含有する組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である組成物の、親水化処理剤としての使用を含む。また、本発明は、(A)成分、(B)成分、及び水を含有する組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である組成物の、固体表面の親水化への使用を含む。これらの使用には、本発明の親水化処理剤組成物で述べた事項を適宜適用することができる。これらの使用に係る組成物は(C)成分を含有することが好ましい。例えば、これらの使用における(A)成分、(B)成分、(C)成分の具体例や組成物中の含有量などの好ましい態様は、本発明の親水化処理剤組成物と同じである。
【0058】
〔固体表面の親水化方法〕
本発明は、(A)成分、(B)成分、及び水を含有し、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である処理液(以下、本発明の処理液という場合もある)を固体表面に接触させる、固体表面の親水化方法を提供する。(A)成分、(B)成分、固体表面は、本発明の親水化処理剤組成物で述べたものと同じである。本発明の処理液は(C)成分を含有することが好ましい。本発明の固体表面の親水化方法には、本発明の親水化処理剤組成物で述べた事項を適宜適用することができる。例えば、本発明の固体表面の親水化方法における(A)成分、(B)成分の具体例や処理液中の含有量などの好ましい態様は、本発明の親水化処理剤組成物(ただし必要に応じて親水化処理剤組成物を処理液と置き換える)と同じである。
本発明の処理液は、本発明の親水化処理剤組成物であってもよく、また、本発明の親水化処理剤組成物と水とを混合して得られたものであってよい。
本発明の固体表面の親水化方法は、固体表面が、硬質物品の固体表面であることが好ましい。
【0059】
本発明は、(A)成分と(B)成分が所定のモル比で共存して硬質表面などの固体表面に適用されると、当該固体表面の状態を損なわずに優れた親水性を付与できることを見出したものである。
本発明では、固体表面を処理する工程のいずれかで(A)成分と(B)成分とが所定のモル比で共存して固体表面に適用される状況が生じればよい。例えば、(A)成分、(B)成分、及び水を含有し、(B)/[(A)+(B)]のモル比が0.1未満である組成物を固体表面に接触させた後、(A)成分が固体表面に残存した状態又は(A)成分を含む前記組成物が固体表面と接触した状態で、(B)成分を含む水を、(B)/[(A)+(B)]が0.1以上0.8以下となるように供給して本発明の処理液を形成させて、該処理液を固体表面に接触させてもよい。
【0060】
本発明の処理液は水を含む液体組成物であり、取扱いの安定性の観点から、水溶液又は水分散液であることが好ましい。
【0061】
固体表面に接触させる本発明の処理液は、固体表面の親水化及び固体表面の仕上がり性の観点から、本発明の(A)成分を、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下含有する。本発明の親水化処理剤組成物が(A)成分をこの範囲で含有する場合、そのまま本発明の処理液として用いることができる。
【0062】
本発明の親水化方法では、固体表面の親水化及び固体表面の仕上がり性の観点から、本発明の処理液を、固体表面に、好ましくは0.1秒以上、より好ましくは0.5秒以上、更に好ましくは1秒以上、そして、好ましくは90分以下、より好ましくは60分以下、更に好ましくは30分以下、接触させる。
【0063】
固体表面に接触させる本発明の処理液の温度は、処理液の親水化性能を高める観点、および処理方法の容易性の観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。
【0064】
また、本発明の親水化方法では、固体表面の親水化及び固体表面の仕上がり性の観点から、本発明の処理液を固体表面に接触させた後、好ましくは10秒以上、より好ましくは1分以上、更に好ましくは2分以上、そして、好ましくは30分以下、より好ましくは15分以下、更に好ましくは10分以下、放置してもよい。放置する温度は、好ましくは0℃以上80℃以下である。
【0065】
本発明の親水化方法は、本発明の処理液を、固体表面に接触させた後、好ましくは前記の通り放置した後、該固体表面を水ですすぐことができる。本発明の処理液を用いると、処理後の固体表面をすすいでも親水化効果が維持される。そのため、すすぎを行うことが望ましい対象物では、より有利な効果がもたらされる。すすいだ後は、固体表面を乾燥させることができる。すすぎには、本発明の処理液を調製する際に用いた水と同程度の硬度の水を用いるのが好ましい。例えば、すすぎには、硬度が4°dH以上100°dH以下の水を用いることができる。
【0066】
固体表面と本発明の処理液の接触方法は、特に限定されない。例えば、次の(i)~(iii)の方法等が挙げられる。
(i)本発明の処理液に固体を浸漬させる方法
(ii)本発明の処理液を固体表面に噴霧又は塗布する方法
(iii)本発明の処理液で常法に従い固体表面を洗浄する方法
前記(i)の方法において、浸漬する時間は、本発明の処理液の親水化性能を高める観点及び経済性の観点から、好ましくは0.5分以上、より好ましくは1分以上であり、そして、好ましくは60分以下、より好ましくは50分以下である。
前記(ii)の方法において、本発明の処理液を固体表面に噴霧又は塗布する方法は、固体表面の広さ(面積)等に応じて適宜選択できる。本発明の処理液を固体表面にスプレー等で噴霧した後、乾燥する方法が好ましい。必要に応じて、噴霧した後、水ですすいでもよい。また、噴霧した後、スポンジ等を用いて薄く塗りのばしてもよい。
固体表面に噴霧又は塗布する本発明の処理液の量は、例えば、本発明の(A)成分の含有量が0.1質量%の本発明の処理液の場合、好ましくは10cmあたり0.01mL以上1mL以下である。
前記(iii)の方法において、本発明の処理液は、本発明の(A)成分及び(B)成分を含有する洗浄剤組成物の形態で使用し、固体表面と接触させることが好ましい。かかる洗浄剤組成物の形態とする場合、取扱いの安全性、及び固体表面の損傷防止の観点から、そのpHは4以上が好ましく、そして、10以下が好ましく、8以下がより好ましい。
界面活性剤としては、前述したものを使用することができる。
【0067】
本発明の固体表面の親水化方法は、例えば、
(A)成分と、(B)成分と、水とを、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下となるように混合して処理液を調製すること、並びに
前記処理液を固体表面に接触させること
を含むものであってよい。
【0068】
また、本発明の固体表面の親水化方法は、例えば、
(A)成分及び(B)成分を含有する組成物と、(C)成分を含有する組成物と、水とを、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下となるように、好ましくは(A)成分と(B)成分の合計に対する(C)成分のモル比が、(C)/[(A)+(B)]で0.2以上4以下となるように、混合して処理液を調製すること、並びに前記処理液を固体表面に接触させることを含むものであってよい。処理液の調製に用いる水は、(A)成分及び(B)成分を含有する組成物並びに(C)成分を含有する組成物の一方又は両方に含有されていてもよい。好ましくは、(A)成分、(B)成分及び水を含有する組成物と、(C)成分及び水を含有する組成物とを混合して処理液を調製する。
【0069】
これらの方法は、任意に、前記処理液を接触させた前記固体表面を水ですすぐことを含んでいてもよい。
【0070】
本発明の固体表面の親水化方法は、固体表面に防曇性を付与するものであってよい。すなわち、本発明は、(A)成分、(B)成分、及び水を含有し、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である処理液を固体表面に接触させる、固体表面の防曇処理方法を提供する。
本発明の固体表面の親水化方法は、固体表面に防汚性を付与するものであってよい。すなわち、本発明は、(A)成分、(B)成分、及び水を含有し、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である処理液を固体表面に接触させる、固体表面の防汚処理方法を提供する。
本発明の固体表面の親水化方法は、固体表面に脱汚性を付与するものであってよい。すなわち、本発明は、(A)成分、(B)成分、及び水を含有し、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である処理液を固体表面に接触させる、固体表面の脱汚処理方法を提供する。
本発明の固体表面の親水化方法は、固体表面に吸水性を付与するものであってよい。すなわち、本発明は、(A)成分、(B)成分、及び水を含有し、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である処理液を固体表面に接触させる、固体表面への吸水性付与方法を提供する。
これらの方法には、本発明の親水化処理剤組成物及び固体表面の親水化方法で述べた事項を適宜適用することができる。これらの方法でも前記処理液は(C)成分を含有することが好ましい。また、これらの組成物における好ましい態様、例えば(A)成分、(B)成分、(C)成分及びこれらの含有量並びに処理液の好ましい態様なども、本発明の親水化処理剤組成物及び固体表面の親水化方法と同じである。
【0071】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の親水化処理剤組成物、親水化処理剤組成物の製造方法、使用、及び固体表面の親水化方法を開示する。
【0072】
<1>
(A)分岐型陰イオン界面活性剤〔以下、(A)成分ともいう〕、(B)ジ長鎖炭化水素型陽イオン界面活性剤〔以下、(B)成分ともいう〕、及び水を含有する親水化処理剤組成物であって、(A)と(B)の合計に対する(B)のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である、親水化処理剤組成物。
【0073】
<2>
(A)成分が、炭素数10以上30以下の分岐鎖炭化水素基を有する陰イオン界面活性剤である、<1>に記載の親水化処理剤組成物。
<3>
(A)成分が、炭素数10以上30以下の分岐鎖炭化水素基と、硫酸エステル基又はスルホン酸基を有する陰イオン界面活性剤である、<1>又は<2>に記載の親水化処理剤組成物。
<4>
前記分岐鎖炭化水素基の炭素数が、16以上である、<2>又は<3>に記載の親水化処理剤組成物。
<5>
前記分岐鎖炭化水素基の炭素数が、18以上である、<2>~<4>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<6>
前記分岐鎖炭化水素基の炭素数が、30以下である、<2>~<5>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<7>
前記分岐鎖炭化水素基の炭素数が、28以下である、<2>~<6>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<8>
前記分岐鎖炭化水素基の炭素数が、24以下である、<2>~<7>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<9>
前記分岐鎖炭化水素基の炭素数が、22以下である、<2>~<8>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<10>
前記分岐鎖炭化水素基が、分岐鎖アルキル基、分岐鎖アルケニル基、又は分岐鎖アルキル基を有するアリール基である、<2>~<9>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0074】
<11>
(A)成分が、下記一般式(A)で表される陰イオン界面活性剤である、<1>~<10>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0075】
【化3】
【0076】
〔式中、R1a、R2aは、それぞれ独立して、置換基又は連結基を含んでいてもよい炭素数1以上28以下の炭化水素基を示す。Xは、SOM、COOM、及びOSOMから選ばれる基を示す。Mは、対イオンを示す。〕
<12>
式(A)中、R1a、R2aが、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基である、<11>に記載の親水化処理剤組成物。
<13>
式(A)中、R1a、R2aが、アルキル基、又はアルケニル基である、<11>又は<12>に記載の親水化処理剤組成物。
<14>
式(A)中、R1aとR2aの炭素数の合計が9以上である、<11>~<13>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<15>
式(A)中、R1aとR2aの炭素数の合計が15以上である、<11>~<14>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<16>
式(A)中、R1aとR2aの炭素数の合計が17以上である、<11>~<15>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<17>
式(A)中、R1aとR2aの炭素数の合計が29以下である、<11>~<16>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<18>
式(A)中、R1aとR2aの炭素数の合計が27以下である、<11>~<17>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<19>
式(A)中、R1aとR2aの炭素数の合計が23以下である、<11>~<18>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<20>
式(A)中、R1aとR2aの炭素数の合計が21以下である、<11>~<19>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<21>
式(A)中、Xが、SOMである、<11>~<20>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0077】
<22>
(A)成分が、内部オレフィンスルホン酸塩(以下IOSともいう)、第二級アルカンスルホン酸塩、及びジアルキルスルホコハク酸塩から選ばれる1種以上の分岐型陰イオン界面活性剤である、<1>~<21>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<23>
(A)成分が、炭素数10以上30以下のIOS、炭素数10以上22以下の第二級アルカンスルホン酸塩及びアルキル基の炭素数がそれぞれ6以上18以下であるジアルキルスルホコハク酸塩から選ばれる1種以上の分岐型陰イオン界面活性剤である、<1>~<22>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0078】
<24>
(A)成分が、IOSから選ばれる1種以上の分岐型陰イオン界面活性剤である、<1>~<23>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<25>
(A)成分が、炭素数10以上30以下のIOSから選ばれる1種以上の分岐型陰イオン界面活性剤である、<1>~<24>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<26>
IOSの炭素数が、10以上である、<22>~<25>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<27>
IOSの炭素数が、16以上である、<22>~<26>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<28>
IOSの炭素数が、18以上である、<22>~<27>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<29>
IOSの炭素数が、30以下である、<22>~<28>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<30>
IOSの炭素数が、28以下である、<22>~<29>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<31>
IOSの炭素数が、24以下である、<22>~<30>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<32>
IOSの炭素数が、22以下である、<22>~<31>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0079】
<33>
IOS中、スルホン酸基がIOSの炭素鎖の2位に存在するIOSの割合が、モル基準又は質量基準で、5%以上である、<22>~<32>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<34>
IOS中、スルホン酸基がIOSの炭素鎖の2位に存在するIOSの割合が、モル基準又は質量基準で、10%以上である、<22>~<33>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<35>
IOS中、スルホン酸基がIOSの炭素鎖の2位に存在するIOSの割合が、モル基準又は質量基準で、45%以下である、<22>~<34>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<36>
IOS中、スルホン酸基がIOSの炭素鎖の2位に存在するIOSの割合が、モル基準又は質量基準で、30%以下である、<22>~<35>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0080】
<37>
IOS中、スルホン酸基がIOSの炭素鎖の1位に存在するIOSの割合が、モル基準又は質量基準で、0.2%以上である、<22>~<36>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<38>
IOS中、スルホン酸基がIOSの炭素鎖の1位に存在するIOSの割合が、モル基準又は質量基準で、0.5%以上である、<22>~<37>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<39>
IOS中、スルホン酸基がIOSの炭素鎖の1位に存在するIOSの割合が、モル基準又は質量基準で、1.0%以上である、<22>~<38>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<40>
IOS中、スルホン酸基がIOSの炭素鎖の1位に存在するIOSの割合が、モル基準又は質量基準で、20%以下である、<22>~<39>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<41>
IOS中、スルホン酸基がIOSの炭素鎖の1位に存在するIOSの割合が、モル基準又は質量基準で、10%以下である、<22>~<40>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<42>
IOS中、スルホン酸基がIOSの炭素鎖の1位に存在するIOSの割合が、モル基準又は質量基準で、5%以下である、<22>~<41>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<43>
IOS中、スルホン酸基がIOSの炭素鎖の1位に存在するIOSの割合が、モル基準又は質量基準で、3%以下である、<22>~<42>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0081】
<44>
IOS中、炭素数16以上24以下のIOSの割合が、50質量%以上である、<22>~<43>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<45>
IOS中、炭素数16以上24以下のIOSの割合が、70質量%以上である、<22>~<44>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<46>
IOS中、炭素数16以上24以下のIOSの割合が、80質量%以上である、<22>~<45>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<47>
IOS中、炭素数16以上24以下のIOSの割合が、90質量%以上である、<22>~<46>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<48>
IOS中、炭素数16以上24以下のIOSの割合が、95質量%以上である、<22>~<47>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<49>
IOS中、炭素数16以上24以下のIOSの割合が、97質量%以上である、<22>~<48>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<50>
IOS中、炭素数16以上24以下のIOSの割合が、100質量%以下である、<22>~<49>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<51>
IOS中、炭素数16以上24以下のIOSの割合が、100質量%である、<22>~<50>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0082】
<52>
IOSがヒドロキシアルカンスルホン酸塩(以下H体ともいう)とオレフィンスルホン酸塩(以下O体ともいう)とを含み、H体とO体とのモル比(H体/O体)が、50/50超である、<22>~<51>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<53>
IOSのH体とO体とのモル比(H体/O体)が、70/30超である、<52>に記載の親水化処理剤組成物。
<54>
IOSのH体とO体とのモル比(H体/O体)が、95/5以下である、<52>又は<53>に記載の親水化処理剤組成物。
<55>
IOSのH体とO体とのモル比(H体/O体)が、90/10以下である、<52>~<54>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0083】
<56>
(A)成分を0.001質量%以上60質量%以下含有する、<1>~<55>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<57>
(A)成分を、0.005質量%以上含有する、<1>~<56>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<58>
(A)成分を、0.01質量%以上含有する、<1>~<57>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<59>
(A)成分を、40質量%以下含有する、<1>~<58>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<60>
(A)成分を、25質量%以下含有する、<1>~<59>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<61>
(A)成分を、10質量%以下含有する、<1>~<60>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<62>
(A)成分を、5質量%以下含有する、<1>~<61>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0084】
<63>
(B)成分が、1分子中に、2つの長鎖炭化水素基を有する陽イオン界面活性剤である、<1>~<62>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<64>
(B)成分が、2つの長鎖炭化水素基からなる疎水基と、1つの親水基とを有する陽イオン界面活性剤である、<1>~<63>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<65>
前記長鎖炭化水素基の炭素数が、6以上14以下である、<63>又は<64>に記載の親水化処理剤組成物。
<66>
(B)成分が、炭素数6以上14以下の炭化水素基〔以下、長鎖炭化水素基(B)ともいう〕を2つ有する第4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤である、<1>~<65>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0085】
<67>
前記長鎖炭化水素基(B)が、炭素数6以上14以下の脂肪族炭化水素基〔以下、脂肪族炭化水素基(B1)ともいう〕、及び炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基〔以下、芳香族炭化水素基(B2)ともいう〕から選ばれる炭化水素基である、<1>~<66>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<68>
脂肪族炭化水素基(B1)が、直鎖である、<67>に記載の親水化処理剤組成物。
<69>
脂肪族炭化水素基(B1)が、アルキル基、及びアルケニル基から選ばれる炭化水素基である、<67>又は<68>に記載の親水化処理剤組成物。
<70>
アルキル基、及びアルケニル基から選ばれる炭化水素基が、直鎖である、<69>に記載の親水化処理剤組成物。
<71>
脂肪族炭化水素基(B1)の炭素数が12以下である、<67>~<70>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<72>
脂肪族炭化水素基(B1)の炭素数が10以下である、<67>~<71>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<73>
脂肪族炭化水素基(B1)の炭素数が8以下である、<67>~<72>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<74>
脂肪族炭化水素基(B1)の炭素数が8である、<67>~<73>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0086】
<75>
芳香族炭化水素基(B2)が、アラルキル基、及びアリール基から選ばれる炭化水素基である、<67>~<74>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<76>
アラルキル基が、ベンジル基、及びフェネチル基から選ばれる炭化水素基である、<75>に記載の親水化処理剤組成物。
<77>
アラルキル基が、ベンジル基である、<75>又は<76>に記載の親水化処理剤組成物。
<78>
アリール基が、フェニル基、トリル基、及びキシリル基から選ばれる炭化水素基である、<75>~<77>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<79>
芳香族炭化水素基(B2)の炭素数が、12以下である、<75>~<78>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<80>
芳香族炭化水素基(B2)の炭素数が、10以下である、<75>~<79>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<81>
芳香族炭化水素基(B2)の炭素数が、8以下である、<75>~<80>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<82>
芳香族炭化水素基(B2)の炭素数が、7又は8である、<75>~<81>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<83>
芳香族炭化水素基(B2)の炭素数が、8である、<75>~<82>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0087】
<84>
長鎖炭化水素基(B)が、アルキル基、アルケニル基、及びアラルキル基から選ばれる炭化水素基である、<66>~<83>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<85>
(B)成分が、炭素数6以上14以下のアルキル基、炭素数6以上14以下のアルケニル基、及び炭素数6以上14以下のアラルキル基から選ばれる基を2つ有する第4級アンモニウム塩であって、炭素数6以上14以下の直鎖アルキル基を少なくとも1つ有する第4級アンモニウム塩である、<1>~<84>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0088】
<86>
(B)成分が、下記一般式(B)で表される陽イオン界面活性剤である、<1>~<85>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0089】
【化4】
【0090】
〔式中、R1b、R2b、R3b、及びR4bのうち、2つは炭素数6以上14以下の炭化水素基であり、残りの2つは炭素数1以上3以下の炭化水素基である。Xは対イオンである。〕
<87>
一般式(B)中、R1b、R2b、R3b、及びR4bのうち、少なくとも1つが炭素数6以上14以下のアルキル基である、<86>に記載の親水化処理剤組成物。
<88>
一般式(B)中、R1b、R2b、R3b、及びR4bのうち、少なくとも1つが炭素数6以上14以下の直鎖アルキル基である、<86>又は<87に記載の親水化処理剤組成物。
<89>
一般式(B)中、R1b、R2b、R3b、及びR4bのうち、2つがメチル基である、<86>~<88>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0091】
<90>
(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で、0.2以上である、<1>~<89>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<91>
前記モル比(B)/[(A)+(B)]が0.3以上である、<90>に記載の親水化処理剤組成物。
<92>
前記モル比(B)/[(A)+(B)]が0.7以下である、<90>又は<91>に記載の親水化処理剤組成物。
<93>
前記モル比(B)/[(A)+(B)]が0.6以下である、<90>~<92>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<94>
前記モル比(B)/[(A)+(B)]が0.5以下である、<90>~<93>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<95>
前記モル比(B)/[(A)+(B)]が0.4以下である、<90>~<94>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0092】
<96>
(C)多価金属イオン〔以下、(C)成分という〕を含有する、<1>~<95>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<97>
(C)成分が、二価以上三価以下の金属イオンである、<96>に記載の親水化処理剤組成物。
<98>
(C)成分が、二価金属イオンである、<96>又は<97>に記載の親水化処理剤組成物。
<99>
(C)成分が、2族元素のイオンである、<96>~<98>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0093】
<100>
(C)成分が、カルシウム(Ca)イオン及びマグネシウム(Mg)イオンから選ばれる1種以上である、<96>~<99>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<101>
(C)成分が、Caイオンを含む、<96>~<100>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<102>
(C)成分が、CaイオンとMgイオンとを含む、<96>~<101>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<103>
Caイオン/Mgイオンのモル比が、5/5以上である、<102>に記載の親水化処理剤組成物。
<104>
Caイオン/Mgイオンのモル比が、7/3以上である、<102>又は<103>に記載の親水化処理剤組成物。
<105>
Caイオン/Mgイオンのモル比が、9/1以下である、<102>~<104>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0094】
<106>
(A)成分と(B)成分の合計に対する(C)成分のモル比が、(C)/[(A)+(B)]で0.2以上4以下である、<96>~<105>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<107>
前記モル比(C)/[(A)+(B)]が0.3以上である、<106>に記載の親水化処理剤組成物。
<108>
前記モル比(C)/[(A)+(B)]が0.4以上である、<106>又は<107>に記載の親水化処理剤組成物。
<109>
前記モル比(C)/[(A)+(B)]が3以下である、<106>~<108>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<110>
前記モル比(C)/[(A)+(B)]が2以下である、<106>~<109>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0095】
<111>
硬質表面用である、<1>~<110>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
<112>
防曇剤組成物、又は吸水性付与剤組成物である、<1>~<111>の何れか1項に記載の親水化処理剤組成物。
【0096】
<113>
(A)分岐型陰イオン界面活性剤〔以下、(A)成分ともいう〕と、(B)ジ長鎖炭化水素型陽イオン界面活性剤〔以下、(B)成分ともいう〕と、水とを、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下となるように混合する、親水化処理剤組成物の製造方法。
<114>
(A)成分、(B)成分及び水を含有し、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である組成物と、(C)多価金属イオン〔以下、(C)成分ともいう〕及び水を含有する組成物とを、混合する親水化処理剤組成物の製造方法。
<115>
(A)成分と(B)成分の合計に対する(C)成分のモル比が、(C)/[(A)+(B)]で0.2以上4以下である、<114>に記載の親水化処理剤組成物の製造方法。
<116>
水の硬度が4°dH以上100°dH以下である、<115>に記載の親水化処理剤組成物の製造方法。
<117>
(A)成分、(B)成分及び水を含有し、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である組成物と、(C)成分を含み硬度が4°dH以上100°dH以下の水とを、(A)成分と(B)成分の合計に対する(C)成分のモル比が、(C)/[(A)+(B)]で0.2以上4以下となるように、混合する、親水化処理剤組成物の製造方法。
【0097】
<118>
(A)分岐型陰イオン界面活性剤〔以下、(A)成分ともいう〕、(B)ジ長鎖炭化水素型陽イオン界面活性剤〔以下、(B)成分ともいう〕、及び水を含有する組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である組成物の、親水化処理剤としての使用。
<119>
(A)成分、(B)成分、及び水を含有する組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である組成物の、固体表面の親水化への使用。
【0098】
<120>
(A)分岐型陰イオン界面活性剤〔以下、(A)成分ともいう〕、(B)ジ長鎖炭化水素型陽イオン界面活性剤〔以下、(B)成分ともいう〕、及び水を含有し、(A)成分と(B)成分の合計に対する(B)成分のモル比が、(B)/[(A)+(B)]で0.1以上0.8以下である処理液〔以下、処理液(I)ともいう〕を固体表面に接触させる、固体表面の親水化方法。
<121>
固体表面が、硬質物品の固体表面である、<120>に記載の固体表面の親水化方法。<122>
処理液(I)を固体表面に接触させた後、該固体表面を水ですすぐ、<120>又は<121>に記載の固体表面の親水化方法。
<123>
処理液(I)が、<1>~<112>の何れか1項記載の親水化処理剤組成物と水とを混合して得られたものである、<120>~<122>の何れか1項に記載の固体表面の親水化方法。
<124>
処理液(I)が、(C)多価金属イオン〔以下、(C)成分ともいう〕を含有する、<120>~<123>の何れか1項に記載の固体表面の親水化方法。
<125>
(C)成分が、二価金属イオンである、<124>に記載の固体表面の親水化方法。
<126>
(A)成分と(B)成分の合計に対する(C)成分のモル比が、(C)/[(A)+(B)]で0.2以上4以下である、<124>又は<125>に記載の固体表面の親水化方法。
<127>
処理液(I)が、(A)成分、(B)成分及び水を含有する組成物と、(C)成分及び水を含有する組成物とを混合して得られたものである、<124>~<126>の何れか1項に記載の固体表面の親水化方法。
【実施例
【0099】
[製造例1](C18-IOS-Kの製造)
攪拌装置付きフラスコに、1-オクタデカノール(花王社製「カルコール 8098」)7000gと、触媒としてγ-アルミナ(Strem Chemicals Inc.製)700gとを仕込み、攪拌下、280℃にて、系内に窒素(7000mL/min.)を流通させながら反応を行い、粗内部オレフィンを得た。前記粗内部オレフィンを、148-158℃、0.5mmHgで蒸留することで、オレフィン純度100%の炭素数18の内部オレフィンを得た。前記内部オレフィンを、薄膜式スルホン化反応器(内径14mmφ、長さ4m)に入れ、反応器外部ジャケットに20℃の冷却水を通液する条件下で、SO濃度2.8容量%の三酸化硫黄ガスを用いてスルホン化反応を行った。反応モル比(SO/内部オレフィン)は、1.09に設定した。
得られたスルホン化物を、理論酸価に対し1.2モル倍に相当する水酸化カリウム水溶液へ添加し、攪拌しながら30℃で1時間中和した。中和物をオートクレーブ中で160℃、1時間加熱することで加水分解を行い、内部オレフィンスルホン酸カリウム塩の粗生成物を得た。
分液漏斗に、前記粗生成物300gと、エタノール300mLとを入れ、1回あたり石油エーテル300mLを加えて油溶性の不純物を抽出除去した。この際、エタノールの添加により油水界面に析出した芒硝等の成分も、油水分離操作により水相から分離除去し、この操作を3回おこなった。水相側を蒸発乾固して、炭素数18の内部オレフィンスルホン酸カリウム塩(C18-IOS-K)を得た。
前記C18-IOS-Kのスルホン酸基の存在位置のモル及び質量分布は、1位:1.6%、2位:25.1%、3位~9位:73.3%であった。H体とO体とのモル比(H体/O体)は、80/20であった。
【0100】
[製造例2](C16-IOS-Kの製造)
製造例1において、1-オクタデカノールに代えて、1-ヘキサデカノールを用いた以外は同様にして、炭素数16の内部オレフィンスルホン酸カリウム塩(C16-IOS-K)を得た。前記C16-IOS-Kのスルホン酸基の存在位置のモル及び質量分布は、1位:0.5%、2位:19.9%、3位~9位:79.6%であった。H体とO体とのモル比(H体/O体)は、80/20であった。
【0101】
[製造例3](硬水原液の調製)
塩化カルシウム(CaCl、富士フイルム和光純薬社製、和光一級)83.32g、塩化マグネシウム六水和物(MgCl・6HO、富士フイルム和光純薬社製、和光一級)36.99g、及び、溶液量が1Lとなるようにイオン交換水を混合して、5000°dH硬水を得た。CaとMgとのモル比(Ca/Mg)は、8/2である。各試験の硬水は、この5000°dH硬水を原液として適宜イオン交換水で希釈して用いた。
【0102】
〔実施例1~14及び比較例1~2〕
(1)親水化処理剤組成物の調製
下記(A)成分又は(A’)成分と、(B)成分又は(B’)成分とを所定濃度及び所定モル比になるようにイオン交換水中に溶解させた。その混合物に、製造例3の硬水原液を、(C)成分であるCaイオンとMgイオンが、所定のモル比となるように添加した。混合物を、液温25℃、70rpmの条件で15分間撹拌して、表1の親水化処理剤組成物を得た。得られた親水化処理剤組成物は、いずれも(A)成分又は(A’)成分と、(B)成分又は(B’)成分の合計濃度が1000ppmであった。なお、表1では、(A’)成分を(A)成分として、(B’)成分を(B)成分としてモル比を示した。
【0103】
<(A)成分>
・C18-IOS-K:製造例1で製造した炭素数18の内部オレフィンスルホン酸カリウム塩
・C16-IOS-K:製造例2で製造した炭素数16の内部オレフィンスルホン酸カリウム塩
・SAS:アルカン(炭素数15)スルホン酸ナトリウム塩(花王社製「ラテムル PS」)
・DASS:ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩(東京化成工業社製「ビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩、Bis(2-ethylhexyl)Sulfosuccinate Sodiumu salt」)
【0104】
<(A’)成分>
・ES:ポリオキシエチレン(平均付加モル数2)直鎖アルキル(炭素数12)エーテル硫酸ナトリウム塩(花王社製「エマール 270J」)
【0105】
<(B)成分>
・DC8DMAB:ジオクチルジメチルアンモニウムブロミド(東京化成工業社製「ジメチルジオクチルアンモニウムブロミド、Dimethyldioctylammonium Bromide」)
・C8BAC:オクチルジメチルベンザルコニウムクロリド
【0106】
(2)評価
(2-1)親水表面化の評価
親水化処理剤組成物500mlに、テストピース全体を浸漬し、液温25℃、70rpmの条件で15分間撹拌して親水化処理を行った。硬水原液とイオン交換水とから、親水化処理剤組成物と同じ濃度で(C)成分を含むすすぎ用硬水を調製した。すすぎ用硬水500mlにテストピース全体を浸漬し、液温25℃、70rpm、1分間すすいだ。このすすぎは2回行った。すすいだ後のテストピースを、1晩室温で乾燥させた。
乾燥後のテストピースの処理部分表面のイオン交換水に対する静止接触角を、自動接触角計「DM-501」(協和界面科学社製)を用いて、イオン交換水添加量1μL、添加30秒後の条件にて測定した。測定は1枚のテストピースを用いて行い、任意の3~5箇所の測定値の平均値を用いた。接触角が小さいほど、親水化性能に優れる。結果を表1に示す。
【0107】
テストピースは、以下のものを用いた。
・モデルスキン:ビューラックス社製 バイオスキン プレート♯WHITE
・ポリプロピレン:エンジニアリングテストサービス社製 PP
・ポリエステル:エンジニアリングテストサービス社製 PETP
・ステンレス:エンジニアリングテストサービス社製 SUS430
・ガラス:あけぼの商会社製 ガラス板(四辺角削り加工)
【0108】
(2-2)テストピース(ガラスおよびポリエステル)の仕上がり性の評価
前記(2-1)で親水表面化の評価を行ったテストピースのガラスおよびポリエステルについて、自動分光光度計U-2910(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、600nmにおける透過率を測定した。透過率の測定は、任意の5箇所について行い、その平均値を採用した。透過率(平均値)を、無処理のテストピースの透過率を100%(基準)とする相対値として、表1に示した。表中の透過率の数字が大きいほど、ガラスおよびポリエステル本来の透明度が損なわれずに、仕上がり性が良いことを意味する。
【0109】
(2-3)処方安定性
前記(1)で親水化処理剤組成物を調製する際、(A)成分又は(A’)成分と、(B)成分又は(B’)成分とを所定濃度になるようにイオン交換水中に溶解させたときの状態を目視観察し、以下の基準で処方安定性を評価した。結果を表1に示す。
〇:流動性があり、且つ顕著な析出物が無い。
×:流動性に乏しく、且つ析出物が発生し親水化処理に供するのが困難である。
【0110】
【表1】