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  • 特許-内燃機関の吸気ダクトの構造 図1
  • 特許-内燃機関の吸気ダクトの構造 図2
  • 特許-内燃機関の吸気ダクトの構造 図3
  • 特許-内燃機関の吸気ダクトの構造 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気ダクトの構造
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/12 20060101AFI20231218BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F02M35/12 H
F02M35/10 101E
F02M35/10 101G
F02M35/10 101N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020050526
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021148096
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】濱田 健佑
(72)【発明者】
【氏名】森本 和紀
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-198577(JP,A)
【文献】特開2002-106431(JP,A)
【文献】特開2006-306165(JP,A)
【文献】特開2009-144723(JP,A)
【文献】特開2009-293442(JP,A)
【文献】特開2011-012581(JP,A)
【文献】特開2019-085964(JP,A)
【文献】国際公開第2014/042229(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0107994(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10-35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に接続し当該内燃機関に供給するべき空気を取り入れる吸気ダクトの構造であって、
当該吸気ダクトの周壁における内燃機関の本体が所在する後方ないし下方を向く部位に、複数の開口を設け、その開口を周壁に比して音波がより通過しやすい多孔質材料を用いて閉塞したポーラス領域を設定するとともに、
当該吸気ダクトの周壁における内燃機関の本体が所在せず内燃機関から離反する方向を向く部位には、前記ポーラス領域を設定しない内燃機関の吸気ダクトの構造。
【請求項2】
前記ポーラス領域を前記吸気ダクトの入口付近から出口付近までの範囲に亘って設けている請求項1記載の吸気ダクトの構造。
【請求項3】
前記吸気ダクトが上下に二分される半割構造をなし、
前記ポーラス領域の開口を前記吸気ダクトの下方の半割体に開設するとともに、
前記吸気ダクトの上方の半割体と下方の半割体との合わせ面に前記多孔質材料の端部を挟持する請求項1または2記載の吸気ダクトの構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に接続し当該内燃機関に供給するべき空気を取り入れる吸気ダクト(インレットダクト)の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
動力源として車両に搭載される内燃機関の吸気通路には、吸気ダクト及びエアクリーナを接続している。内燃機関の気筒に供給するべき空気は、吸気ダクトの入口から吸気ダクト内に流入し、当該吸気ダクトを流通してエアクリーナに至る。そして、エアクリーナが内蔵しているフィルタを通過することにより、空気に混入した異物が濾過され除去される。しかる後、その清浄化された空気が、内燃機関の吸気通路及びスロットルバルブを通じて気筒に吸入される。
【0003】
吸気ダクトを単純な硬質の管とすると、吸気ダクトの入口から大きな吸気騒音が集中的に放たれてしまう。そこで、従来より、吸気ダクトの周壁の広範囲に亘って通気性を有し音波が通過しやすいポーラス領域(「低圧縮部42」)を設定し、当該ポーラス領域を通じて吸気騒音を放散させ、かつ当該ポーラス領域を通過する音波の振動エネルギを熱エネルギに変換することで、吸気騒音の緩和を図っている(例えば、下記特許文献を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-085964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸気ダクトの周壁の広範囲に亘ってポーラス領域を設定した結果、吸気ダクトの入口における吸気騒音は大きく軽減される。だが、その代償として、吸気ダクトの周壁の広範囲から吸気騒音が拡散することとなり、その騒音が車外に所在する人に知覚される懸念が生じる。
【0006】
以上の問題に着目してなされた本発明は、車外に放たれて人に知覚される騒音をより一層低減させることを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、内燃機関に接続し当該内燃機関に供給するべき空気を取り入れる吸気ダクトの構造であって、当該吸気ダクトの周壁における内燃機関の本体が所在する後方ないし下方を向く部位に、複数の開口を設け、その開口を周壁に比して音波がより通過しやすい多孔質材料を用いて閉塞したポーラス領域を設定するとともに、当該吸気ダクトの周壁における内燃機関の本体が所在せず内燃機関から離反する方向を向く部位には、前記ポーラス領域を設定しない内燃機関の吸気ダクトの構造を構成した。好ましくは、前記ポーラス領域を、前記吸気ダクトの入口付近から出口付近までの範囲に亘って設ける。また、前記吸気ダクトを上下に二分される半割構造をなすものとし、前記ポーラス領域の開口を前記吸気ダクトの下方の半割体に開設するとともに、前記吸気ダクトの上方の半割体と下方の半割体との合わせ面に前記多孔質材料の端部を挟持するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内燃機関が搭載される車両にあって、車外に放たれて人に知覚される騒音をより一層低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の内燃機関及びその吸気ダクトを示す正面図。
図2】同実施形態の内燃機関及びその吸気ダクトを示す側面図。
図3】同実施形態の吸気ダクトの端面図。
図4】同実施形態の吸気ダクトの下方の半割体の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の車両用内燃機関2を車両の前方から見た正面図である。図2は、同内燃機関2を車両の左側方(車両に搭乗した運転者にとっては、右方)から見た側面図である。なお、図1及び図2において、吸気ダクト1に網点を付して表している。図3は、本実施形態の吸気ダクト1を切断した端面図である。図4は、同吸気ダクト1の要素である下方の半割体12の平面図である。
【0011】
周知の通り、吸気ダクト1は、エアクリーナを介して内燃機関2の吸気通路に接続し、内燃機関2に供給するべき空気を取り入れ、当該吸気ダクト1を介してエアクリーナまで導く配管である。図1図2及び図4に示すように、本実施形態における吸気ダクト1は、その入口15が左側方に開口し、そこから右側方かつ斜め下方に向かって延伸した後、屈曲ないし湾曲して後方に開口した出口16を内燃機関2のエアクリーナに接続するものである。吸気ダクト1の後方及び下方には、内燃機関2の本体が控えている。一方で、吸気ダクト1の前方及び上方には、内燃機関2本体の部材は存在していない。
【0012】
図3に示すように、吸気ダクト1は、上下に二分される半割構造をなす管状の基体11、12と、その基体11、12に開設した開口13を閉塞する布状または薄膜状の多孔質材料14とを要素とする。基体を構成する上方の半割体11、下方の半割体12はともに、通気性に乏しいかまたは全く通気性を有しない密実な周壁を備えている。上方の半割体11及び下方の半割体12はそれぞれ、例えば硬質樹脂製の成形品である。
【0013】
上方の半割体11の周壁には、これを貫通する開口13を穿っていない。対して、図2ないし図4に示すように、下方の半割体12の周壁には、これを貫通する多数の開口13を穿ち設けている。各開口13は、六角形状または六角形を切断したような形状をなし、それらをハニカム様に配置してある。
【0014】
多孔質材料14は、下方の半割体12の内周面に沿うように敷設する。そして、図3に示すように、この多孔質材料14により、下方の半割体12に穿った開口13を閉塞している。多孔質材料14は、例えば樹脂製の不織布その他の繊維成形体や、目の細かい金属製の網(メッシュ)等である。多孔質材料14の端部は、上方の半割体11と下方の半割体12との合わせ面に挟持させる。
【0015】
本実施形態の吸気ダクト1を内燃機関2に接続して配設したとき、その周壁に穿った開口13は、内燃機関2の本体が所在する後方ないし下方を向いている。開口13を閉塞している多孔質材料14は、周壁に比して通気性がより高く、音波がより多く通過しやすい。内燃機関2の運転時に発生する吸気騒音は、主として、周壁の開口13及び多孔質材料14を通じて吸気ダクト1の内部から外部に放散される。その吸気騒音は、内燃機関2の本体側、即ち吸気ダクト1から後方ないし下方へと向かい、吸気ダクト1から前方ないし上方には直接には伝搬しない。吸気ダクト1の周壁における開口13を開設していない部位は、吸気ダクト1の内部から外部に吸気騒音が放たれることを抑制する遮音壁として機能する。
【0016】
本実施形態では、内燃機関2に接続し当該内燃機関2に供給するべき空気を取り入れる吸気ダクト1の構造であって、当該吸気ダクト1の周壁における内燃機関2に向かう方向(後方ないし下方)を向く部位に、複数の開口13を設け、その開口13を周壁に比して音波がより通過しやすい多孔質材料14を用いて閉塞したポーラス領域を設定するとともに、当該吸気ダクト1の周壁における内燃機関2から離反する方向(前方ないし上方)を向く部位には、前記ポーラス領域を設定しない内燃機関2の吸気ダクト1の構造を構成した。
【0017】
本実施形態によれば、吸気ダクト1の入口15に吸気騒音が集中することを回避しながら、吸気ダクト1から車外に直接吸気騒音が伝わることを抑制し、車外において人に知覚される騒音のレベルを一層低下させることが可能となる。
【0018】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。各部の具体的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0019】
1…吸気ダクト
13…開口
14…多孔質材料
2…内燃機関
図1
図2
図3
図4