(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】注出キャップ、及び二重容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/20 20060101AFI20231218BHJP
B65D 47/40 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B65D47/20 111
B65D47/40 200
(21)【出願番号】P 2020065140
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】立藏 亮
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-159942(JP,A)
【文献】特開2018-140830(JP,A)
【文献】特開2018-058594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
B65D 47/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物の収容空間を有する容器本体の口部に装着されるキャップ本体と、
前記キャップ本体の内側に位置し、前記口部の開口を覆う隔壁を有する中栓と、を備え、
前記キャップ本体は、前記口部を外側から取り囲む外周壁と、該外周壁の上部に一体に連なり内容物を注出する注出筒が設けられた頂壁とを有し、
前記中栓は、
前記隔壁に設けられ、前記収容空間と前記注出筒の内部を連通する連通口と、
一端が前記注出筒側に開口するとともに他端が前記収容空間側に開口する筒状壁と、
該筒状壁内に移動可能に設けられ、前記注出筒側から前記収容空間側への移動によって前記注出筒内に残存する内容物を前記筒状壁に向けて引き戻す移動弁体と
を有し、
前記注出筒の内部の流路面積は、前記筒状壁と前記移動弁体との間の隙間面積と、前記連通口の流路面積の和
の1.5倍以上である、注出キャップ。
【請求項2】
前記筒状壁は、前記隔壁に設けた貫通孔の縁部から収容空間に向けて延在する円筒部と、該円筒部の下部に設けた傾斜部とを有し、下端部には下端開口が形成されており、前記移動弁体は直径Dvの略球形状を有し、前記円筒部の内径と前記移動弁体の直径Dvとの差分をaとすると、前記下端開口の直径Dbは、
【数1】
の関係を満たす、請求項
1に記載の注出キャップ。
【請求項3】
前記移動弁体は略球形状を有し、該移動弁体の直径は3mm以上4mm以下である、請求項1
又は2に記載の注出キャップ。
【請求項4】
前記中栓と前記キャップ本体との間に位置し、前記連通口を開閉する逆止弁を備える、請求項1から
3のいずれか一項に記載の注出キャップ。
【請求項5】
減容変形可能な内層体と、該内層体を内側に配置した外層体とを有する二重構造の容器本体と、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の注出キャップと
を備えることを特徴とする二重容器。
【請求項6】
前記外層体は、ポリエチレンテレフタレートを主材とする合成樹脂で形成されている、請求項
5に記載の二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内容物の収容空間を有する容器本体の口部に装着されて内容物を注出させる注出キャップ、及びそれを用いた二重容器に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧水などの化粧料や、シャンプーやリンス或いは液体石鹸、また食品調味料などの内容物を収容する容器としては、例えば、このような液体状の内容物を収容する容器本体と、その口部に装着され、内容物を注出する注出筒(注出口)を有する注出キャップとを備える注出容器が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、容器本体の口部に装着されるキャップ本体(注出栓)と、キャップ本体の内側に位置して、口部の開口を覆う隔壁と、隔壁に設けた連通口(ゲート)を開閉する逆止弁と、を備える注出キャップが開示されている。特許文献1の注出キャップは、減容変形可能に設けられる内層体と、この内層体を内側に収めるとともに容器本体の外殻を形成する外層体とを備える二重構造の容器本体に装着される。そして、容器本体の外層体を押圧することにより、外層体と内層体との間の空気を介して内層体内を加圧し、これによって逆止弁を開放させて内容物を注出する。また外層体には、内層体との間に外気を取り込む貫通孔を設けていて、注出後、外層体が元の形状に復元する際は、この貫通孔から外気が取り込まれ、内層体は減容変形したままで外層体のみが復元する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような注出キャップにおいては、外層体に例えばポリエチレンテレフタレート(PET)のような容器用材料として比較的高い剛性を備える合成樹脂を用いる場合、内容物を注出するために容器本体の胴部を押圧する際の押圧力が高まるため、この点において改善の余地があった。
【0006】
本開示は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、内容物を注出する際に容器本体の胴部に加える押圧力を低減することが可能な注出キャップ、及び二重容器を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の注出キャップは、
内容物の収容空間を有する容器本体の口部に装着されるキャップ本体と、
前記キャップ本体の内側に位置し、前記口部の開口を覆う隔壁を有する中栓と、を備え、
前記キャップ本体は、前記口部を外側から取り囲む外周壁と、該外周壁の上部に一体に連なり内容物を注出する注出筒が設けられた頂壁とを有し、
前記中栓は、
前記隔壁に設けられ、前記収容空間と前記注出筒の内部を連通する連通口と、
一端が前記注出筒側に開口するとともに他端が前記収容空間側に開口する筒状壁と、
該筒状壁内に移動可能に設けられ、前記注出筒側から前記収容空間側への移動によって前記注出筒内に残存する内容物を前記筒状壁に向けて引き戻す移動弁体と
を有し、
前記注出筒の内部の流路面積は、前記筒状壁と前記移動弁体との間の隙間面積と、前記連通口の流路面積の和の1.5倍以上であることを特徴とするものである。
【0009】
また、本開示の注出キャップは、上記構成において、前記筒状壁は、前記隔壁に設けた貫通孔の縁部から収容空間に向けて延在する円筒部と、該円筒部の下部に設けた傾斜部とを有し、下端部には下端開口が形成されており、前記移動弁体は直径Dvの略球形状を有し、前記円筒部の内径と前記移動弁体の直径Dvとの差分をaとすると、前記下端開口の直径Dbは、
【数1】
の関係を満たすことが好ましい。
【0010】
また、本開示の注出キャップは、上記構成において、前記移動弁体は略球形状を有し、該移動弁体の直径は3mm以上4mm以下であることが好ましい。
【0011】
また、本開示の注出キャップは、上記構成において、前記中栓と前記キャップ本体との間に位置し、前記連通口を開閉する逆止弁を備えることが好ましい。
【0012】
また、本開示の二重容器は、
減容変形可能な内層体と、該内層体を内側に配置した外層体とを有する二重構造の容器本体と、
上記いずれかに記載の注出キャップと
を備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本開示の二重容器は、上記構成において、前記外層体は、ポリエチレンテレフタレートを主材とする合成樹脂で形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、内容物を注出する際に容器本体の胴部に加える押圧力を低減することが可能な注出キャップ、及び二重容器を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一実施形態に係る注出キャップを、容器本体の口部に装着した状態を示す断面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る注出キャップの平面図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る注出キャップにおける、移動弁体の直径Dvと筒上壁下端部内径との関係の理論値(下限値)を示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る注出キャップにおいて、吐出回数と胴部押圧荷重との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本開示をより具体的に説明する。
【0017】
図1は、本開示の一実施形態である注出キャップ1を、二重容器である容器本体2に装着した状態を示す。注出キャップ1は、キャップ本体10、中栓20、移動弁体30、結合弁40、及び蓋体50で構成されている。また、容器本体2は、内層体3と外層体4とで構成されている。軸線Oは、注出キャップ1の中心軸線であり、容器本体2の中心軸線に一致している。なお、軸線Oに垂直な平面視において、連通口23の中心(軸線O)に対して注出筒14の中心が位置する側を注出キャップ1の「前」側とし、ヒンジ51が位置する側を「後」側としている。また、注出キャップ1の平面視(
図2参照)において、前後方向に対して垂直な方向(
図1における紙面に垂直方向)を左右方向としている。
【0018】
まず、容器本体2について説明する。容器本体2は、減容変形可能な内層体3と、内層体3を内側に収容する外層体4とを備える二重構造の容器である。本例の容器本体2は、内層体3と外層体4とを、個別に形成して組み付けるタイプでポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる内プリフォームを同じくPET樹脂からなる外プリフォームにセットし、ブロー成形することで成形している。なお、容器本体2はこれに限定されず、例えば内層体3と外層体4とを最初から積層させて形成するデラミ容器(積層剥離容器)であってもよい。また、図示は省略するが、内層体3と外層体4との間に、縦方向に延在して内層体3と外層体4とを部分的に接合する、1本或いは複数本の接着帯を設けてもよい。また、容器本体2は、必ずしも内層体3と外層体4とを備える二重構造の容器である必要はない。すなわち、本実施形態に係る注出キャップ1は二重容器用の注出キャップであるが、注出キャップ1は二重容器以外にも使用可能である。
【0019】
内層体3は、その内側に内容物を収容する収容空間Sと、この収容空間Sにつながる上部開口3aを備えている。
【0020】
外層体4は、円筒状の口部周壁4a(口部)に、図示を省略する復元自在な可撓性を有する胴部、及び胴部の下端を閉鎖する底部を連結したものである。口部周壁4aの外周面には雄ねじ部4bを設けている。また、口部周壁4aには、内層体3との相互間に空気を取り込むための貫通孔4cを設けている。なお、貫通孔4cを設けた口部周壁4aの外周面には、上下方向に雄ねじ部4bを切り欠く溝部を設けて、後述する通気路Tの一部を構成するようにしてもよい。
【0021】
次に、注出キャップ1に関し、キャップ本体10について説明する。キャップ本体10は、口部周壁4aを外側から取り囲む外周壁11を備えていて、外周壁11の内周面は、口部周壁4aの外周面に係合する。これにより、キャップ本体10が容器本体2に係合保持される。なお、本例では、外周壁11の内周面に、複数本の縦リブ12が一体に設けられている。複数本の縦リブ12の径方向内側端を通る仮想円の直径は、口部周壁4aの外周面に形成されている雄ねじ部4bの径方向外側端を通る仮想円の直径よりも小さくなっており、注出キャップ1が口部周壁4aに打栓される際には、雄ねじ部4bは複数本の縦リブ12を弾性変形させながら所定位置にまで移動する。そして、
図1に示すように、注出キャップ1が口部周壁4aに打栓されて当該口部周壁4aに保持された状態となると、雄ねじ部4bが複数本の縦リブ12に食い込んだ状態となって複数本の縦リブ12に雌ねじが転写される。なお、容器本体2の口部周壁4aに対して注出キャップ1を装着するための構造は上記に限定されず、例えば、通常のねじ結合またはアンダーカット結合でもよい。
【0022】
外周壁11の上部には、頂壁13が一体形成されている。頂壁13には、内容物を注出する注出筒14が設けられている。注出筒14の内側には注出口14aが区画形成されている。注出筒14は、注出キャップ1の中心軸線(軸線O)に対して前側に偏心している。
【0023】
また、頂壁13の下面には、同心二重配置となる一対の上部嵌合壁15が設けられている。更に、上部嵌合壁15より径方向外側には、頂壁13を貫通する外気導入孔16を設けている。本実施形態では、頂壁13の中央部分と外周部分との間に段差を設け(中央部分に対し外周部分は高さが低くなっている)、この段差に径方向外側に向けて開口するようにして外気導入孔16を設けている。このように構成することで、頂壁13上に溢れた内容物が、外気導入孔16に入り難くなる。本例の外気導入孔16は、
図2に示すように、軸線Oに対して注出筒14の逆側において、周方向の2箇所に形成されている。外気導入孔16の断面形状は、
図1、2に二点鎖線で示す。なお、外周壁11の下部内周面は口部周壁4aと気密に当接していて、口部周壁4aと外周壁11との間には、貫通孔4cに通じる通気路Tが設けられている。
【0024】
キャップ本体10の内側には、中栓20が設けられている。中栓20は、注出筒14と内層体3との間に位置するとともに、内層体3の上部開口3a(口部の開口)を覆う隔壁21を備えている。中栓20は、キャップ本体10の内側に嵌合保持されており、隔壁21は、頂壁13の下面に対向して配置されている。
【0025】
隔壁21には、一端が注出筒14側に開口するとともに他端が内層体3の収容空間S側に開口する筒状壁22が設けられている。本実施形態の筒状壁22は、
図1に示すように、隔壁21の中央部(容器本体2の軸線O上)から前側に偏心した(ずれた)位置に設けられている。筒状壁22は、隔壁21に設けた貫通孔22aの縁部から収容空間Sに向けて延在する円筒部22bと、円筒部22bの下部に設けた傾斜部22cと、を有する。筒状壁22の下端部には下端開口22dが形成されている。
【0026】
また、隔壁21には、この隔壁21を貫通する連通口23が設けられている。注出筒14や筒状壁22に対する連通口23の位置は、適宜変更可能である。
【0027】
また隔壁21は、連通口23より径方向外側において収容空間S側に屈曲する段部24を備えていて、段部24より径方向外側には、段部24との間で上向き開放の溝を形成する嵌合壁25が設けられている。そして隔壁21の下面には、外層体4との間で内層体3を挟み込む環状のシール壁26を設けている。なお、
図1に示すように隔壁21の外縁には、孔27が設けられており、外気導入孔16を通気路Tに連通可能としている。なお、外気導入孔16から通気路Tへの空気の導入構造は、連通可能な構造であれば特に限定されず、適宜設定可能である。本実施形態では、
図1に示すように、孔27は複数箇所に設けているが、この態様には限定されず、少なくとも1箇所に設けていればよい。
【0028】
筒状壁22内には、本実施形態では略球状となる移動弁体30が設けられている。移動弁体30は、注出筒14内に残存する内容物を該筒状壁22に向けて引き戻すための構成である。筒状壁22と移動弁体30との間には、容器本体2の姿勢変更に応じて移動弁体30が移動可能な程度の隙間が設けられている。移動弁体30は、容器本体2を起立姿勢(容器本体2の底部を水平な台の上に載置した状態の姿勢)にすることで、筒状壁22の傾斜部22cに着座する。これによって収容空間Sを封止(シール)することができる。
【0029】
キャップ本体10と中栓20との間には、連通口23を開閉する逆止弁43が設けられている。逆止弁43は、連通口23を覆い、通常時は隔壁21に着座して連通口23を閉鎖する。逆止弁43は、結合弁40の一部として、円筒状の環状壁41の径方向内側に一体に設けられている。逆止弁43は、円板状の弁体43aの外周縁の3箇所をアーム43bによって支持された構造を有する、いわゆる3点弁である。外層体4のスクイズによって内層体3内(収容空間S)の圧力が高まると、その圧力によって、弁体43aが
図1の上方に持ち上げられ、隔壁21から離間することによって逆止弁43は開放状態となる。外層体4のスクイズが解除されると、弁体43aは再び隔壁21に当接し、逆止弁43は閉塞する。
【0030】
なお、本実施形態においては、弁体43aを円板状部材で構成したが、この態様には限定されず、矩形形状等を有する部材であってもよい。また、逆止弁43は、必ずしも3点弁である必要はなく、2点弁や薄肉環状弁など、内層体3内の正圧によって開放される様々な弁を用いることができる。
【0031】
一方、環状壁41の径方向外側には、
図1に示すように、外気導入弁45が設けられている。外気導入弁45は、環状壁41の径方向外側に、円環状且つ薄肉の弁体として一体形成されている。
【0032】
そして、外層体4と内層体3との間の空間に負圧が発生すると、外気導入弁45は下方に向けて弾性変形する。これによって、外気導入弁45が開放され、スムーズに外気を外層体4と内層体3との間の空間に導入することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、逆止弁43及び外気導入弁45を環状壁41と一体に設けるように構成したが、この態様には限定されない。例えば、逆止弁43が第1環状壁に設けられると共に、外気導入弁45が第2環状壁に設けられるようにして両者を別体に構成してもよい。また、逆止弁43及び外気導入弁45は、環状壁41以外のものに固定されていてもよい。
【0034】
また、逆止弁43及び外気導入弁45は必須の構成ではなく、例えば収容空間S内に外気を導入可能な容器等においては省略可能である。
【0035】
図1に示すように、キャップ本体10と中栓20との間に結合弁40を取り付けた際、環状壁41の下部が段部24と嵌合壁25との間で嵌合保持され、環状壁41の上部が一対の上部嵌合壁15で嵌合保持されるようになっている。これにより、環状壁41の径方向内側には、連通口23と注出筒14とを連通させて内容物の流路を形成する内側空間K1が区画形成され、環状壁41の径方向外側には、外気導入孔16と孔27とを連通させて空気の流路を形成する外側空間K2が区画形成される。
【0036】
蓋体50は、
図1に示すように、ヒンジ51を介してキャップ本体10の外周壁11に連結していて、ヒンジ51で折り曲げることで、注出筒14及び外気導入孔16を覆い隠すことができる。より詳細には、蓋体50は、平板状の上壁52と、上壁52の縁部に連結するとともに外周壁11に連なる形状となる蓋体周壁53とを備えている。蓋体周壁53におけるヒンジ51の逆側(前側)には、径方向外側に突出する図示しない把持部が設けられている、利用者は、この把持部を把持して蓋体50を上方に持ち上げて開放したり、下方に押し下げて閉塞したりすることができる。
【0037】
上記のように構成される注出キャップ1から内容物を吐出するに当たっては、
図1に示すように蓋体50を開き、容器本体2を起立姿勢から傾倒姿勢に姿勢変更して、外層体4の胴部を押圧する。これにより、筒状壁22内の移動弁体30は注出筒14側に移動し、また、内層体3と外層体4との間の空気を介して収容空間Sが加圧される。このとき、外層体4の貫通孔4cとキャップ本体10の外気導入孔16との間は、外気導入弁45で閉塞されている。
【0038】
収容空間Sが加圧されると、内容物が収容空間Sから逆止弁43の弁体43aを持ち上げて連通口23を通過し、弁体43aの周囲を回り込むようにして内側空間K1に流入し、当該内側空間K1を経由して注出筒14を通り、外界に注出される。また、内側空間K1の内容物が注出口14aから暴れて飛び散るのを抑制するために、キャップ本体10の頂壁13下面に整流リブ17を設けている。なお、整流リブ17は注出口14aに向けて間隔をあけて並列状態で複数設けていることが望ましい。
【0039】
本実施形態では、注出筒14の内側に区画形成された注出口14aの流路面積が、筒状壁22と移動弁体30との間の隙間面積と連通口23の流路面積の和よりも大きくなるように構成している。これによって、胴部の押圧によって加圧され、筒状壁22と移動弁体30との隙間領域及び連通口23を通過した収容空間S内の内容物が、注出口14aを通過する際に流路面積が拡大するので、内容物の流れが堰き止められることがない。従って、内容物がスムーズに注出口14aを通過するので、内容物を注出するための胴部の押圧力の増大を抑制することができる。なお、本願発明者が鋭意検討した結果、胴部の押圧力の増大を確実に抑制するためには、注出口14aの流路面積が、筒状壁22と移動弁体30との間の隙間面積と連通口23の流路面積の和の1.5倍以上であることが好ましい。
【0040】
ここで、注出口14aの流路面積は、注出口14aにおける内容物の流れに直交する方向の最小面積である。また、筒状壁22と移動弁体30との間の隙間面積は、筒状壁22の円筒部22bの内側と移動弁体30との隙間における、内容物の流れに直交する方向の最小面積である。また、連通口23の流路面積は、連通口23における内容物の流れに直交する方向の最小面積である。
【0041】
次に、胴部の押圧力の増大を抑制するための、筒状壁22の下端開口22dの大きさについて考察する。
【0042】
下端開口22から流入した内容物が、筒状壁22における円筒部22bの内側と移動弁体30との隙間を流れる。従って、移動弁体30の直径をDv、筒状壁22における円筒部22bの内径と移動弁体30の直径Dvとの差分をa、筒状壁22の下端開口22dの内径をDbとすると、容器本体2の胴部押圧時において、円筒部22bの内側と移動弁体30との隙間を流れることが可能な量の内容物が、下端開口22dを通じて供給されるとき、以下の数式(1)の関係が成り立つ。
【0043】
【0044】
上記の数式(1)の左辺は、下端開口22dの流路面積であり、右辺は、筒状壁22の円筒部22bの内側と移動弁体30との隙間の面積である。そして、下端開口22dの流路面積が、円筒部22bの内側と移動弁体30との隙間の面積以上であるとき、下端開口22dを通じて十分な量の内容物が筒状壁22内に供給されることを意味している。また、数式(1)を下端開口22dの内径Dbについて解くと、以下の数式(2)が得られる。
【0045】
【0046】
なお、筒状壁22における円筒部22bの内径と、移動弁体30の直径Dvとの差分aは、0.2[mm]程度が好ましい。上記差分aが0.2[mm]より小さくなると、移動弁体30の
図1における上下方向への動きが徐々に悪化する傾向がある。また、上記差分aが0.2[mm]より大幅に増大すると、移動弁体30が上下方向に直交する前後左右にも動くようになり、移動弁体30の動きが不安定となる場合がある。
【0047】
また、本実施形態では、移動弁体30の直径Dvは、φ3.1[mm]としている。上述のa=0.2[mm]を採用した場合、移動弁体30の直径Dvが3.0[mm]よりも小さいと、所定の押圧力に対する内容物の注出量が少なく、移動弁体30の直径Dvが4.0[mm]よりも大きいと、所定の押圧力に対する内容物の注出量が多すぎるからである。従って、移動弁体30の直径Dvは、3.0[mm]以上4.0[mm]以下であることが好ましい。
【0048】
図3には、以下の数式(2)で表される、下端開口22dの内径Dbの理論上の下限値、すなわち、
【数4】
の曲線が示されている。そして、本実施形態では、数式(3)で示される理論上の下限値よりも大きいDbとして、φ1.5[mm]を採用している(
図3に●で示す)。この構成によって、本実施形態では、下端開口22dから十分な量の内容物が筒状壁22内に供給されるので、内容物を注出する際に胴部の押圧力の増大を抑制することができる。
【0049】
なお、所要量の内容物を注出した後は、外層体4の胴部への押圧を解除する。これによって収容空間S内の圧力が下がり、逆止弁43が連通口23を閉鎖するので、収容空間S内への外気の入り込みが防止できる。また、外層体4は、それ自身の復元力により元の形状に戻ろうとするため、内層体3と外層体4との相互間は負圧状態となり、これによって外気導入弁45が開き、外気導入孔16から外側空間K2、孔27、通気路Tを経て、貫通孔4cより空気が導入され、内層体3を減容変形させたまま外層体4が復元する。
【0050】
逆止弁43が連通口23を閉鎖すると、注出筒14及び内側空間K1内には内容物が残留したままになっているものの、容器本体2を元の起立姿勢に戻すと、移動弁体30は、それ自身の自重や収容空間S内の圧力低下によって内層体3の収容空間S側に移動する。これにより、筒状壁22における注出筒14側には、スペースが生じることになるため、注出筒14及び内側空間K1内に残留した内容物をこのスペース(筒状壁22内)に移動させることができ(サックバック機能)、注出筒14から外部への液だれを有効に防止することができる。
【0051】
本実施形態にあっては、注出筒14は、注出キャップ1の中心軸線(軸線O)に対して前側に偏心していることが好ましい。このような構成とすることで、容器本体2を前側に傾けて注出する際に、意図した位置に内容物を注出させ易くなる。
【0052】
また、本実施形態にあっては、筒状壁22が、連通口23よりも注出筒14に近接していることが好ましい。このような構成とすることで、移動弁体30によるサックバック機能をより発揮し易くなる。
【0053】
以上述べたように、本実施形態は、内容物の収容空間Sを有する容器本体2の口部(口部周壁4a)に装着されるキャップ本体10と、キャップ本体10の内側に位置し、口部の開口(上部開口3a)を覆う隔壁21を有する中栓20と、を備え、キャップ本体10は、口部を外側から取り囲む外周壁11と、外周壁11の上部に一体に連なり内容物を注出する注出筒14が設けられた頂壁13とを有し、中栓20は、隔壁21に設けられ、収容空間Sと注出筒14の内部を連通する連通口23と、一端が注出筒14側に開口するとともに他端が収容空間S側に開口する筒状壁22と、筒状壁22内に移動可能に設けられ、注出筒14側から収容空間S側への移動によって注出筒14内に残存する内容物を筒状壁22に向けて引き戻す移動弁体30とを有し、注出筒14の内部の流路面積は、筒状壁22と移動弁体30との間の隙間面積と、連通口23の流路面積の和よりも大きくなるように構成した。このような構成の採用によって、胴部の押圧によって加圧され、筒状壁22と移動弁体30との隙間領域及び連通口23を通過した収容空間S内の内容物が、注出口14aを通過する際に流路面積が拡大するので、流れが堰き止められることがない。従って、内容物がスムーズに注出口14aを通過するので、内容物を注出するための胴部の押圧力の増大を抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態では、注出筒14の内部の流路面積は、筒状壁22と移動弁体30との間の隙間面積と、連通口23の流路面積の和の1.5倍以上であるように構成した。このような構成の採用によって、内容物を注出するための胴部の押圧力の増大を確実に抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、筒状壁22は、隔壁21に設けた貫通孔22aの縁部から収容空間Sに向けて延在する円筒部22bと、円筒部22bの下部に設けた傾斜部22cとを有し、下端部には下端開口22dが形成されており、移動弁体30は直径Dvの略球形状を有し、円筒部22bの内径と移動弁体30の直径Dvとの差分をaとすると、下端開口22dの直径Dbは、
【数5】
の関係を満たすように構成した。このような構成の採用によって、下端開口22dから十分な量の内容物が筒状壁22内に供給されるので、内容物を注出する際に胴部の押圧力の増大を抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態では、移動弁体30は略球形状を有し、移動弁体30の直径は3mm以上4mm以下であるように構成した。このような構成の採用によって、容器本体2の胴部を所定の押圧力で押圧することによって、注出口14aから適切な量の内容物を注出することができる。
【0057】
また、本実施形態では、中栓20とキャップ本体10との間に位置し、連通口23を開閉する逆止弁43を備えるように構成した。このような構成の採用によって、容器本体2の胴部の押圧を解除すると、収容空間S内の内圧が下がって逆止弁43が閉塞するため、外部から空気等が収容空間S内に流入することを抑制する。従って、内容物の酸化等を効果的に抑制することが出来る。
【0058】
また、本実施形態に係る二重容器は、減容変形可能な内層体3と、内層体3を内側に配置した外層体4とを有する二重構造の容器本体2と、上記のいずれかに記載の注出キャップ1とを備えるように構成した。このような構成の採用によって、胴部の押圧荷重が大きくなり易い二重構造を有する容器本体2を採用した場合であっても、注出時の胴部の押圧力の増大を抑制することが出来る。
【0059】
また、本実施形態では、外層体4は、ポリエチレンテレフタレートを主材とする合成樹脂で形成されるように構成した。このような構成の採用によって、胴部に比較的剛性が高いポリエチレンテレフタレートを採用した場合でもあっても、注出時の胴部の押圧力の増大を抑制することが出来る。
【0060】
本開示を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0061】
例えば、蓋体50は、ヒンジ51を設けずにキャップ本体10とは別体のものとし、ねじやアンダーカットでキャップ本体10に装着するように構成してもよい。また、移動弁体30の断面形状は、筒状壁22の断面形状に合わせて適宜変更することができる。
【0062】
また、本実施形態では、外層体4の材料にPET樹脂を用いたが、この態様には限定されず、胴部の押圧によって収容空間Sの内圧を高めることが可能な他の様々な合成樹脂等を用いてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、移動弁体30は、略球状弁体として形成されているが、この態様には限定されず、円筒部22b内で上下方向に移動可能な例えば円柱状の弁体であってもよい。
【実施例】
【0064】
本開示の効果を確かめるため、筒状壁22の下端部の内径Dbを変えた実施例1及び実施例2を試作した。実施例1は、Db=1.5[mm]であり、実施例2は、Db=0.55[mm]である。両実施例に共通する条件としては、容器本体2の内容量:450[mL]、円筒部22bの内径:φ3.3[mm]、移動弁体30の直径Dv:φ3.1[mm]、連通口23の内径Do:φ2.0[mm]、注出口14aの内径Ds:φ3.3[mm]である。注出口14aの流路面積は、8.55[mm2]であり、筒状壁22の円筒部22bと移動弁体30との間の隙間面積と前記連通口の流路面積の和:4.04[mm2]の1.5倍以上(約2.12倍)となっている。
【0065】
図4は、実施例1(内径Db:1.5[mm])と実施例2(内径Db:0.55[mm])について、横軸に、内容物の吐出回数、縦軸に胴部の押圧荷重[N]をプロットしている。1回の吐出において、内容物を45gずつ吐出させている。なお、
図3にも実施例1(●で表示)と実施例2(■で表示)に対応する内径Dbをプロットしている。
【0066】
図4の結果より、吐出回数:10回までは、実施例1の方が胴部の押圧力が小さく抑えられている。これは、実施例1の方は、下端開口22dから十分な量の内容物が筒状壁22内に供給されるので、比較的小さな押圧力によって所定量(1回あたり45g)の内容物を注出口14aから注出できるからであると考えられる。但し、吐出回数が10回を超えると、収容空間S内の内容物が少なくなるため、実施例1であっても押圧力を高めないと所定量の吐出が難しくなってくると考えられる。従って、実施例1では、収容空間S内の内容物が少なくなる前においては、所定量の内容物を注出させるための押圧力を抑制する効果があると考えられる。
【符号の説明】
【0067】
1:注出キャップ
2:容器本体
3:内層体
3a:上部開口(口部の開口)
4:外層体
4a:口部周壁(口部)
4b:雄ねじ部
4c:貫通孔
10:キャップ本体
11:外周壁
12:縦リブ
13:頂壁
14:注出筒
14a:注出口
15:上部嵌合壁
16:外気導入孔
17:整流リブ
20:中栓
21:隔壁
22:筒状壁
22a:貫通孔
22b:円筒部
22c:傾斜部
22d:下端開口
23:連通口
24:段部
25:嵌合壁
26:シール壁
27:孔
30:移動弁体
40:結合弁
41:環状壁
43:逆止弁
43a:弁体
43b:アーム
45:外気導入弁
50:蓋体
51:ヒンジ
52:上壁
53:蓋体周壁
K1:内側空間
K2:外側空間
O:注出キャップの軸線
S:収容空間
T:通気路