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  • 特許-コークス炉装入炭の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】コークス炉装入炭の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 57/04 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
C10B57/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018138260
(22)【出願日】2018-07-24
(65)【公開番号】P2020015792
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-03-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】今野 直幸
(72)【発明者】
【氏名】野口 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】安藤 真
(72)【発明者】
【氏名】江川 秀
(72)【発明者】
【氏名】和田 慎太
(72)【発明者】
【氏名】田中 繁三
(72)【発明者】
【氏名】安藤 雄亮
【合議体】
【審判長】塩見 篤史
【審判官】安積 高靖
【審判官】関根 裕
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-48284(JP,A)
【文献】特開平10-287882(JP,A)
【文献】国際公開第2006/121213(WO,A1)
【文献】特開2016-210865(JP,A)
【文献】特開昭56-143292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B57/04
C10B53/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕装置により粉砕された配合炭を粗粒炭と分級微粉炭とに分級し、前記分級微粉炭を塊成化した塊成炭と前記粗粒炭とからなるコークス炉装入炭を製造する、コークス炉装入炭の製造方法であって、
前記分級微粉炭に、乾式集塵機により回収された水分2%以下、粒度0.1mm以下の微粉炭を90質量%以上含む石炭集塵粉を20~30%混合し、
混合した前記分級微粉炭及び前記石炭集塵粉に、10~20%のバインダーと、蒸気及び水とを加えて混練した後、塊成機により圧縮成型して前記塊成炭を製造する、コークス炉装入炭の製造方法。
【請求項2】
前記塊成炭は、ブリケット状の塊成炭である、請求項1に記載のコークス炉装入炭の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉に装入されるコークス炉装入炭の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉操業に使用されるコークスは、複数の銘柄の石炭からなる原料炭をコークス炉に装入し乾留することで製造される。高炉操業に使用されるコークスは、高炉内の通気性を確保する役割を担っており、高炉に装入されたコークスにより形成された通気性を保持するためにコークス強度を向上させたいというニーズがある。
【0003】
コークス強度に影響を与える石炭の性状として、石炭の粘結性が挙げられる。良質な粘結炭は資源的に枯渇状態にあるのに対して、劣質な石炭は埋蔵量が多く豊富にある。そこで、劣質な石炭を用いて必要なコークス強度を有するコークスを製造するための技術が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、複数銘柄の原料炭を銘柄別に粉砕、配合し、目標コークス強度となるように配合炭を形成した後、該配合炭をコークス炉に装入し、乾留して高炉用コークスを製造する方法が開示されている。かかる方法では、最大長さが1.5mm以上の粗大イナート組織について、サイズ区分毎のコークスの表面破壊粉率および体積破壊粉率の影響度と、その組織の存在割合に基づき、配合炭を構成する各銘柄の石炭を粉砕する。このように、コークス強度の低下をもたらすサイズが最大長さで1.5mm以上の粗大イナート組織について、その組織のサイズによるコークス強度への影響度の違いを考慮し、効果的に粉砕することによって、粒径0.3mm以下の微粉炭の増加や、配合炭の嵩密度の低下をさせずに、極めて高い強度を有するコークスを製造することができる。
【0005】
特許文献2には、粉砕処理した原料石炭を乾燥処理した後予め微粉炭と粗粉炭とに分別し、この分別した微粉炭に前記粉砕処理した原料石炭を混合し、この混合物にバインダーを添加して更に混合し、得られた混合物をそのまま又は塊成化した後、前記分別した粗粉炭と混合してコークス炉に装入することを特徴とする乾燥石炭のコ-クス炉への装炭方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-297385号公報
【文献】特開平11-116969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、コークス強度は、微粉炭を塊成化して塊成炭を成型する際に微粉炭に混合されるバインダーの混合割合に大きく影響される。微粉炭へのバインダーの混合割合(以下、「バインダー添加率」とする。)が大きいほど、コークス炉内に入るバインダー量が増えるため、コークス炉で製造されるコークス全体のコークス強度を向上させることができる。
【0008】
しかしながら、微粉炭へのバインダー添加率を高くし過ぎると、微粉炭から塊成炭を成型する塊成機のロールとバインダーによって結合された微粉炭とのグリップ力が高くなり、塊成機のロール負荷が高くなる。塊成機のロール負荷が高くなるとロールを回転させるためのモータの電流値(以下、「ロール電流値」とする。)が高くなり、許容値を超えてモータの故障に繋がる。このため、塊成機を安定して使用するためには、ロール電流値がモータの電流許容値を超えないようにバインダー添加率を調整する必要があるため、バインダー添加率を高めるには限界があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、塊成炭を成型する際の微粉炭へのバインダー添加率を高め、コークス強度を向上することが可能な、新規かつ改良されたコークス炉装入炭の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、粉砕装置により粉砕された配合炭を粗粒炭と分級微粉炭とに分級し、分級微粉炭を塊成化した塊成炭と粗粒炭とからなるコークス炉装入炭を製造する、コークス炉装入炭の製造方法であって、分級微粉炭に、乾式集塵機により回収された水分2%以下、粒度0.1mm以下の微粉炭を90質量%以上含む石炭集塵粉を20~30%混合し、混合した分級微粉炭及び石炭集塵粉に、10~20%のバインダーと、蒸気及び水とを加えて混練した後、塊成機により圧縮成型して塊成炭を製造する、コークス炉装入炭の製造方法が提供される。
【0011】
塊成炭は、ブリケット状の塊成炭であってもよい。
【0012】
本発明によれば、コークス炉装入炭から乾式集塵機により回収される石炭集塵粉を分級微粉炭に混合させることで、塊成機のロール負荷を向上させることなく分級微粉炭に添加するバインダー増加させることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、塊成炭を成型する際の微粉炭へのバインダー添加率を高めることが可能となり、当該塊成炭を用いて製造されるコークス強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るコークス炉装入炭製造工程を説明するための説明図である。
図2】同実施形態に係る塊成機の構成を示す概略説明図である。
図3】分級微粉炭への石炭集塵粉の混合有無による、バインダー添加率と塊成機のロール負荷との関係を示すグラフである。
図4】バインダー添加率とコークス強度DIの向上代との一関係例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
<1.コークス炉装入炭の製造工程>
まず、図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態に係るコークス炉装入炭を製造するコークス炉装入炭製造工程について説明する。図1は、本実施形態に係るコークス炉装入炭製造工程を説明するための説明図である。図2は、塊成機40の構成を示す概略説明図である。
【0017】
コークス炉へ装入されるコークス炉装入炭の製造では、図1に示すように、まず、粉砕装置10により、複数銘柄の原料炭をそれぞれ個別の粉砕粒度に粉砕する。各原料炭の粉砕粒度及び配合比率は、配合炭の粒度の設定値に基づき決定される。粉砕装置10により粉砕された各原料炭は、所定の配合比率で配合され、乾燥分級装置20に装入される。
【0018】
乾燥分級装置20は、装入された石炭を乾燥させながら粗粒炭と微粉炭とに分級する。乾燥分級装置20は、例えば、乾燥分級室内に分散板を介してガスを噴出させ、乾燥分級室内に流動層を形成することにより、石炭の乾燥及び分級を行う。
【0019】
乾燥分級装置20による石炭の分級点は、適宜設定可能であるが、通常0.3mm以上3mm以下に設定される。分級点を0.3mm未満に設定すると、粗粒炭中に0.3mm程度の細かい石炭が混入し、コークス炉装入時に細かい石炭が発塵する。一方、分級点を3mm超に設定すると、コークス炉への搬送過程において塊成炭の中の数mm程度の粗い石炭が基点となって破壊することがある。これにより装入炭中の微粉炭の割合が増加し、コークス炉装入時に微粉が発塵する。このような発塵は、炉内のカーボン付着やタール中の微粉炭混入等の原因になるため、乾燥分級装置20による石炭の分級点は、0.3mm以上3mm以下に設定するのがよい。
【0020】
乾燥分級装置20により分級された粗粒炭と微粉炭のうち、粗粒炭は石炭塔50へ搬送され、微粉炭は混練機30に搬送される。なお、本発明では、乾燥分級装置20により分級された微粉炭を、分級微粉炭ともいう。
【0021】
混練機30は、乾燥分級装置20により分級された微粉炭(分級微粉炭)と、石炭塔50からコークス炉60への送炭過程にて発塵した微粉炭を回収した石炭集塵粉とを混合し、さらにバインダーと、蒸気及び水とを加えて混練する。石炭集塵粉は、乾式集塵機70により回収され、気流搬送設備80の配管内を流れる気体(例えば窒素)によって混練機30へ気流搬送される。混練機30にて石炭集塵粉、バインダー及び蒸気及び水と混練された分級微粉炭は、塊成炭の原料として塊成機40にて塊成化される。
【0022】
塊成機40は、石炭集塵粉、バインダー及び蒸気及び水と混練された分級微粉炭から塊成炭を成型する。塊成機40は、例えば図2に示すように、供給部41から一対のロール43、43間に供給された塊成炭の原料(混練機30によってバインダー等と混練された分級微粉炭)を成型し、ブリケット状の塊成炭5を製造する。このような塊成機40としては、例えばダブルロール型、打抜き型、押出し型、ペレタイザー等がある。塊成機40により成型された塊成炭5は、石炭塔50へ搬送される。
【0023】
乾燥分級装置20により分級された粗粒炭及び塊成炭は、石炭塔50に貯留される。石炭塔50に貯留された粗粒炭及び塊成炭は、石炭塔50に設けられたホッパー(図示せず。)からコークス炉60へ装入される。
【0024】
<2.塊成炭の製造>
上述のように、コークス炉装入炭となる塊成炭は、バインダーを添加した分級微粉炭を塊成機40により成型して製造される。分級微粉炭へのバインダー添加率はコークス強度に大きく影響し、バインダー添加率を高めるとコークス炉に入るバインダー量が増え、コークス強度を高めることができる。一方で、バインダー添加率を高くし過ぎると塊成機のロール負荷が高くなる。そこで、本願発明者は、鋭意検討した結果、乾式集塵機70により回収された石炭集塵粉を塊成炭の原料である分級微粉炭に混合することで、塊成時における塊成機40のロール負荷を増大させることなくバインダー添加率を高めることが可能であることを見出した。
【0025】
乾式集塵機70により回収された石炭集塵粉は、石炭塔50への送炭過程等で発塵した水分2%以下、粒度0.1mm以下の微粉炭を90質量%以上含む、乾燥微細粒粉炭である。石炭集塵粉は、分級微粉炭と粒度分布が大きく異なる。例えば、粒度0.1mm以下の微粉炭が含まれる割合は、分級微粉炭で50質量%程度であるのに対し、石炭集塵粉では95質量%程度であり、石炭集塵粉は分級微粉炭に比べより細かな粒度の微粉炭からなっている。また、水分も2%以下と低く、さらに嵩密度に関しても、分級微粉炭は0.63~0.85t/mであるのに対し、石炭集塵粉では0.43~0.68t/mと低く、石炭集塵粉は分級微粉炭に比べ圧密性が低い。石炭集塵粉を分級微粉炭に混合することで、分級微粉炭単体と比較して混合された微粉炭は圧密性が低下する。圧密性が低いと微粉粒子の周りに空隙が多く存在し、より多くのバインダーを添加できる。
【0026】
本願発明者は、塊成時における塊成機40のロール負荷を増大させることなくバインダー添加率を高めるため、石炭集塵粉が混合された分級微粉炭、バインダー、及び、蒸気及び水の混練条件を検討した。その結果、分級微粉炭に、水分2%以下、粒度0.1mm以下の微粉炭を90質量%以上含む石炭集塵粉を20~30%混合し、混合した分級微粉炭及び石炭集塵粉に、10~20%のバインダーと、蒸気及び水とを加えて混練した後、塊成機により圧縮成型することで、塊成機40のロール負荷を増大させることなく塊成炭を製造できることを見出した。
【0027】
石炭集塵粉を分級微粉炭に混合して微粉炭の圧密性を低下させることで、適正な塊成炭を成型するためにバインダー添加率を高めることができる。バインダー添加率が高まる結果、コークス強度も向上させることができる。分級微粉炭と石炭集塵粉との混合微粉炭へのバインダー添加率は、塊成機40のロール43、43へのロール負荷上限値に基づき設定され、例えばロール電流値がモータの電流許容値を超えないように設定される。また、石炭集塵粉が混合された分級微粉炭とバインダーとの混練においては、これらの親和性を高めるため、蒸気及び水が加えられる。
【0028】
具体的には、分級微粉炭と石炭集塵粉との混合微粉炭を100質量%としたとき、石炭集塵粉の割合を20~30質量%とし、バインダーを混合微粉炭に対して10~20質量%添加する。このとき、蒸気を混合微粉炭に対して1~2質量%加えることでバインダーの粘性を下げて分散させることができる。さらに、水を混合微粉炭に対して1~4質量%加えて混練することで、微粉炭とバインダーとの親和性を高めることができる。
【0029】
図3に、分級微粉炭への石炭集塵粉の混合有無による、バインダー添加率と塊成機のロール負荷との関係を示す。図3において、石炭集塵粉なしの場合は、分級微粉炭のみを塊成したときの塊成機のロール電流値を示しており、石炭集塵粉ありの場合は、分級微粉炭に20質量%の割合で石炭集塵粉を混合したときの塊成機のロール電流値を示している。かかる検証で用いた塊成機のモータの電流許容値は70Aであった。なお、図3に示すバインダー添加率は、分級微粉炭に対する値である。
【0030】
図3に示すように、分級微粉炭への石炭集塵粉の混合有無によらず、バインダー添加率を高めるとロール電流値が上昇している。石炭集塵粉なしの場合は、バインダー添加率が9.8%となったときモータの電流許容値に到達した。一方、石炭集塵粉ありの場合は、バインダー添加率が20%超となってからモータの電流許容値に到達した。このように、分級微粉炭に石炭集塵粉を混合させることで、バインダー添加率を10%以上に設定することができる。
【0031】
また、図4に、コークス炉装入炭に対するバインダー添加率とコークス強度DIの向上代との一関係例を示す。コークス強度DIは、JIS-K2151に記載のドラム強度が使用される。ドラム強度は、所定量のコークス(10kg)を直径1500mm×長さ1500mmの円筒形ドラム内に装入し、15rpmで30回転あるいは150回転させた後、50mm、25mm、15mm、6mmの篩で篩い分け、篩上質量の装入質量に対する百分率で、各回転に対する強度を表すものである。一般的には150回転後の15mm篩上重量百分率(15mm)指数が広く用いられ、DI150 15と表記する。
【0032】
図4に示すようにコークス強度DIの向上代は、図3に示した石炭集塵粉ありの場合と石炭集塵粉なしの場合とについて、バインダー添加率に対するコークス強度DIを算出し、算出されたコークス強度DIの差分を表している。なお、図4のバインダー添加率は、分級微粉炭と石炭集塵粉との混合微粉炭に対する値である。図4に示すように、バインダー添加率とコークス強度DIの向上代との間には正の相関があり、バインダー添加率を高めることで、コークス強度DIを高めることが可能となることがわかる。
【0033】
これより、分級微粉炭に石炭微粉炭を混合することで、バインダー添加率を高め、コークス強度を向上させることができることがわかる。したがって、品位の低いより安価な石炭を使用する場合にも、分級微粉炭に石炭集塵粉を混合し、バインダーを混合微粉炭に対して10~20質量%添加するとともに蒸気及び水を添加して混練した原料から塊成炭を成型することで、コークス強度の高いコークスを製造することが可能となる。
【0034】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0035】
5 塊成炭
10 粉砕装置
20 乾燥分級装置
30 混練機
40 塊成機
41 供給部
43 ロール
50 石炭塔
60 コークス炉
70 乾式集塵機
80 気流搬送設備
図1
図2
図3
図4