(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】異方導電性シート
(51)【国際特許分類】
H01R 11/01 20060101AFI20231218BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
H01R11/01 501H
H01B5/16
(21)【出願番号】P 2019042648
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 孝俊
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-186062(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066541(WO,A1)
【文献】特開2011-249591(JP,A)
【文献】特開2018-186061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/01
H01B 5/16
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向を貫通する貫通孔を有する絶縁層と、
前記貫通孔に配置され、前記厚み方向に対向する一方面および他方面のそれぞれが前記厚み方向一方側および他方側のそれぞれに露出する異方導電部とを備え、
前記貫通孔は、前記厚み方向他方側部分に区画される第1開口部、および、前記第1開口部に連通し、前記厚み方向一方側部分に区画される第2開口部を有し、
前記絶縁層は、前記第2開口部の厚み方向他方側部分を区画する他方側周側面、および、前記他方側周側面の厚み方向一端縁から厚み方向に直交する面方向外側に延びる延出面を有し、
前記異方導電部は、前記第1開口部に配置される第1導体部と、前記第2開口部に配置される第2導体部とを備え、
前記第1導体部は、前記面方向に延びる略平板形状に形成され、
前記第1導体部において、
他方面が、前記厚み方向他方側に露出し、
一方面の周端部が、前記絶縁層に接触し、
一方面において前記周端部の内側に位置する内側部が、前記第2導体部に接触し、
前記第2導体部は、前記他方側周側面に接触し、
前記第2導体部において、
前記他方面が、前記内側部および前記延出面に接触し、
前記一方面が、前記厚み方向一方側に露出し、
前記第1導体部の前記一方面の前記周端部は、前記第1開口部の厚み方向他方側端縁から外側に延びるとともに、前記第1導体部は、前記絶縁層の前記第1開口部に埋め込まれ、
前記絶縁層には、前記第2導体部の他方面の周端部と、前記第1導体部の一方面の周端部とに挟まれる挟まれ部が形成されていることを特徴とする、異方導電性シート。
【請求項2】
前記第1導体部の前記厚み方向他方面は、前記絶縁層の厚み方向他方面と面一であることを特徴とする、請求項1に記載の異方導電性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貫通孔を有する絶縁層と、貫通孔に配置され、厚み方向両側に露出する異方導電部とを備える異方導電性シートが知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の
図11で開示される異方導電性シートでは、異方導電部が、貫通孔内に配置される導体部と、導体部の厚み方向一方面に接触する第2めっき層とを備える。また、導体部は、平板状の中央部と、中央部の周端縁から、外側に向かうに従って厚み方向一方側に傾斜する傾斜部とを一体的に有する。傾斜部の外側部は、絶縁層に被覆されて固定されている。また、導体部の厚み方向一方面において、中央部、および、傾斜部の内側部が、第2めっき層に接触している。なお、第2めっき層は、ニッケルめっき層を含んでいる。
【0004】
特許文献1では、傾斜部の外側部が絶縁層に被覆されて固定されていることから、端子やプローブなどが厚み方向両側から異方導電部に対して加圧する場合でも、導体部が絶縁層から脱落することを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、異方導電性シートには、より一層優れた異方導電性が要求される。
【0007】
しかし、特許文献1に記載される異方導電性シートでは、第2めっき層は、無電解めっきにより形成されることから、厚みを厚くするには限界があり、そのため、異方導電部の異方導電性を十分に向上させることができないという不具合がある。
【0008】
本発明は、異方導電部の絶縁層からの脱落を抑制できながら、異方導電性に優れる異方導電部を備える異方導電性シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(1)は、厚み方向を貫通する貫通孔を有する絶縁層と、前記貫通孔に配置され、前記厚み方向に対向する一方面および他方面のそれぞれが前記厚み方向一方側および他方側のそれぞれに露出する異方導電部とを備え、前記貫通孔は、前記厚み方向他方側部分に区画される第1開口部、および、前記第1開口部に連通し、前記厚み方向一方側部分に区画される第2開口部を有し、前記絶縁層は、前記第2開口部の厚み方向他方側部分を区画する他方側周側面、および、前記他方側周側面の厚み方向一端縁から厚み方向に直交する面方向外側に延びる延出面を有し、前記異方導電部は、前記第1開口部に配置される第1導体部と、前記第2開口部に配置される第2導体部とを備え、前記第1導体部は、前記面方向に延びる略平板形状に形成され、前記第1導体部において、他方面が、前記厚み方向他方側に露出し、一方面の周端部が、前記絶縁層に接触し、一方面において前記周端部の内側に位置する内側部が、前記第2導体部に接触し、前記第2導体部は、前記他方側周側面に接触し、前記第2導体部において、前記他方面が、前記内側部および前記延出面に接触し、前記一方面が、前記厚み方向一方側に露出する、異方導電性シートを含む。
【0010】
この異方導電性シートでは、第1導体部は、略平板形状に形成されるので、十分な厚みを確保し易く、そのため、異方導電部の異方導電性を確実に向上させることができる。
【0011】
また、第1導体部の周端部と、第2導体部において延出面に接触する部分とは、厚み方向において、絶縁層を挟んでいる。そのため、異方導電部の絶縁層からの脱落を抑制することができる。
【0012】
従って、この異方導電性シートは、異方導電部の絶縁層からの脱落の抑制と、異方導電部の優れた異方導電性とを両立することができる。
【0013】
本発明(2)は、前記第1導体部の前記厚み方向他方面は、前記絶縁層の厚み方向他方面と面一である、(1)に記載の異方導電性シートを含む。
【0014】
この異方導電性シートでは、第1導体部の厚み方向他方面は、絶縁層の厚み方向他方面と面一であるので、異方導電性シートの厚み方向他方面の平滑化を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の異方導電性シートは、異方導電部の絶縁層からの脱落の抑制と、異方導電部の優れた異方導電性とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の異方導電性シートの一実施形態の平面図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の異方導電性シートの一実施形態の断面図を示す。
【
図3】
図3A~
図3Fは、
図2に示す異方導電性シートの製造工程図であり、
図3Aが、基材シートを準備する工程、
図3Bが、第1導体部を配置する工程、
図3Cが、第1絶縁層を配置する工程、
図3Dが、第2導体部を配置する工程、
図3Eが、第2絶縁層を配置する工程、
図3Fが、基材シートを除去する工程を示す。
【
図4】
図4は、
図2に示す異方導電性シートの変形例(異方導電部が導体本体部および導体付属部を備える態様)の断面図を示す。
【
図5】
図5A~
図5は、
図3A~
図3Fに示す異方導電性シートの製造工程図の変形例であり、
図5Aが、基材シートを準備する工程、
図5Bが、第1絶縁層を配置する工程、
図5Cが、第1導体部を配置する工程、
図5Dが、第2絶縁層を配置する工程、
図5Eが、第2導体部を配置する工程、
図5Fが、第3絶縁層を配置する工程、
図5Gが、基材シートを除去する工程を示す。
【
図6】
図6は、
図2に示す異方導電性シートの変形例(周側面がテーパ面および縦面を含む態様)の断面図を示す。
【
図7】
図7は、
図2に示す異方導電性シートの変形例(周側面が縦面のみを含む態様)の断面図を示す。
【
図8】
図8は、
図2に示す異方導電性シートの変形例(第1導体層の第1他方面が、絶縁層の絶縁第2面より、厚み方向他方側に位置する態様)の断面図を示す。
【
図9】
図9は、
図6に示す異方導電性シートのさらなる変形例(周側面がテーパ面および縦面を含み、かつ、第1導体層の第1他方面が、絶縁層の絶縁第2面より、厚み方向他方側に位置する態様)の断面図を示す。
【
図10】
図10は、
図6に示す異方導電性シートのさらなる変形例(周側面が縦面のみを含み、かつ、第1導体層の第1他方面が、絶縁層の絶縁第2面より、厚み方向他方側に位置する態様)の断面図を示す。
【
図11】
図11は、
図2に示す異方導電性シートの変形例(第2導体部の周端部が露出する態様)の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<一実施形態>
本発明の異方導電性シートの一実施形態を
図1~
図2を参照して説明する。
【0018】
図1~
図2に示すように、異方導電性シート1は、厚み方向に直交する面方向に延びる。異方導電性シート1は、厚み方向に互いに対向する一方面および他方面を有する。この異方導電性シート1は、次に説明する異方導電部3において厚み方向(異方)に導電性(電気伝導性)を有しており、後述する半導体素子やフレキシブルプリント配線板の導通検査に使用される検査用シートである。
【0019】
異方導電性シート1は、絶縁層2と、絶縁層2に配置される複数の異方導電部3とを備える。好ましくは、異方導電性シート1は、単数の絶縁層2と、複数の異方導電部3とのみを備える。
【0020】
絶縁層2は、面方向に延びるシート形状を有する。絶縁層2は、厚み方向一方面である絶縁第1面21と、絶縁第1面21と厚み方向他方側に対向する厚み方向他方面である絶縁第2面22とを有する。
【0021】
絶縁第1面21は、異方導電性シート1の厚み方向一方面を形成する。
【0022】
絶縁第2面22は、異方導電性シート1の厚み方向他方面を形成する。
【0023】
また、絶縁層2には、複数の貫通孔6が形成されている。
【0024】
複数の貫通孔6は、複数の異方導電部3に対応して設けられる。つまり、複数の貫通孔6は、複数の異方導電部3と1対1対応で形成されている。複数の貫通孔6のそれぞれは、絶縁層2の厚み方向を貫通する。貫通孔6は、第1開口部60および第2開口部70を備える。
【0025】
第1開口部60は、貫通孔6における厚み方向他方側部分(領域)に区画されている。第1開口部60は、後述する第1導体部4に対応する形状を有する。具体的には、第1開口部60は、断面視略矩形状を有する。第1開口部60は、絶縁第2面22から厚み方向一方側に向かって凹む形状を有する。具体的には、第1開口部60は、絶縁層2における第1周側面61および第1一方面62によって、区画されている。
【0026】
第1周側面61は、第1開口部60の面方向外側面を区画する。第1周側面61は、絶縁第2面22から厚み方向一方側に延びる略筒形状(具体的には、円筒形状)を有する。
【0027】
第1一方面62は、第1開口部60の厚み方向一方面を区画する。第1一方面62は、第1周側面61の厚み方向一端縁から面方向内側に向かって延びる。第1一方面62は、底面視略円環(リング)形状を有する。なお、第1一方面62の内側部分においては、第1開口部60が第2開口部70と連通する。第1一方面62は、第1周側面61と直交する。
【0028】
第2開口部70は、第1開口部60に連通しており、貫通孔6における厚み方向一方側部分(領域)に区画されている。つまり、第2開口部70は、第1開口部60の厚み方向一方側に位置する。第2開口部70は、後述する第2導体部5に対応する形状を一部に含む。第2開口部70は、絶縁層2の第2周側面8、延出面7および対向面37によって、区画されている。
【0029】
第2周側面8は、厚み方向に延びる形状を有する。第2周側面8は、厚み方向に投影したときに、例えば、第1周側面61の内側に配置されており、また、第1一方面62に包含される。第2周側面8は、厚み方向に投影したときに、複数(具体的には、3つ)に分割されている。複数の第2周側面8は、面方向に投影したときに、連続する一方、例えば、厚み方向に投影したときに、互いに間隔を隔てて位置する。
【0030】
具体的には、第2周側面8は、他方側周側面の一例としての第3周側面43、第4周側面44および第5周側面45を含む。第2周側面8は、好ましくは、第3周側面43、第4周側面44および第5周側面45のみを含む。第3周側面43は、第2開口部70の厚み方向他方側部分を区画する。
【0031】
第3周側面43は、第2周側面8における厚み方向他端部に位置する。第3周側面43は、第1一方面62の内端縁から厚み方向一方側に向かう形状を有する。第3周側面43は、テーパ面9を含む。第3周側面43は、好ましくは、テーパ面9のみを含む。
【0032】
テーパ面9は、例えば、面方向に沿う断面積(正断面積)が、第1一方面62の内端縁から厚み方向一方側に向かって次第に大きくなる略錐台形状(具体的には、略円錐台形状)を有する。つまり、テーパ面9は、厚み方向に沿う断面視において、厚み方向一方側に向かって、面方向において互いに対向する対向距離が次第に長くなる傾斜面である。
【0033】
テーパ面9と、第1一方面62とのなす角度αは、例えば、鋭角であり、好ましくは、75度以下、より好ましくは、60度以下であり、また、例えば、15度以上、好ましくは、30度以上である。
【0034】
第4周側面44は、第2周側面8における厚み方向中間部に位置する。第4周側面44は、厚み方向に投影したときに、第3周側面43の外側に配置されており、より具体的には、第3周側面43の外端縁(具体的には、テーパ面9の厚み方向一端縁)に対して面方向外側に間隔を隔てて配置されている。第4周側面44は、厚み方向に延びる略筒形状(具体的には、円筒形状)を有する。第4周側面44は、テーパ面9に対して、傾斜する。また、第4周側面44は、断面視において、第1周側面61に平行し、また、第1一方面62に直交する。
【0035】
第5周側面45は、第2周側面8における厚み方向一端部に位置する。第5周側面45は、厚み方向に投影したときに、第3周側面43および第4周側面44の間に配置されており、具体的には、第3周側面43および第4周側面44と間隔が隔てられており、より具体的には、第3周側面43の外端縁(具体的には、テーパ面9の厚み方向一端縁)と、第4周側面44との間に位置する。第5周側面45は、厚み方向に延びる略筒形状(具体的には、円筒形状)を有する。第5周側面45は、断面視において、第4周側面44に平行する。
【0036】
延出面7は、第3周側面43および第4周側面44を面方向に連結する連結面である。具体的には、延出面7は、第3周側面43の厚み方向一端縁(具体的には、テーパ面9の面方向外端縁)から、面方向外側に延び、第4周側面44の厚み方向他端縁に至る形状を有する。延出面7は、平坦面である。延出面7は、平面視略円環(リング)形状を有する。延出面7は、厚み方向に投影したときに、例えば、第1一方面62に包含される。延出面7は、断面視において、テーパ面9に傾斜し、第1周側面61および第4周側面44に直交し、また、第1一方面62に平行する。
【0037】
対向面37は、延出面7の厚み方向一方側に間隔を隔てて対向配置されている。対向面37は、第4周側面44および第5周側面45を連結しており、具体的には、第4周側面44の厚み方向一端縁および第5周側面45の厚み方向他端縁を連結する。対向面37は、底面視略円環(リング)形状を有する。対向面37は、断面視において、第1一方面62および延出面7に平行し、第1周側面61、第4周側面44および第5周側面45に直交し、テーパ面9に傾斜する。
【0038】
絶縁層2は、第1一方面62、第3周側面43および延出面7によって仕切られる挟まれ部40を有する。挟まれ部40は、断面視略台形形状を含んでおり、略円環(リング)形状を有する。挟まれ部40は、その内側端部において、断面視略鋭角三角形状の尖り部46を含む。尖り部46は、テーパ面9に対向する領域であって、厚み方向に投影したときに、第1一方面62に重複するが、延出面7より内側にずれる。
【0039】
絶縁層2の材料として、例えば、ポリイミドなどの樹脂が挙げられる。
【0040】
絶縁層2の寸法は、その用途および応じて適宜設定される。絶縁層2の厚みは、例えば、5μm以上、例えば、100μm以下である。
【0041】
第1開口部60の面方向における最大長さL1は、断面視において面方向に対向する第1周側面61間の最大距離であり、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上、より好ましくは、20μm以上、さらに好ましくは、30μm以上であり、また、例えば、1,000μm以下である。また、第1開口部60の開口断面積は、例えば、50μm2以上、好ましくは、300μm2以上、より好ましくは、700μm2以上であり、また、例えば、800,000μm2以下である。
【0042】
第1開口部60の深さ(厚み方向長さ)Tは、第1周側面61の厚み方向長さであり、例えば、1μm以上、好ましくは、2μm以上、より好ましくは、3μm以上であり、また、例えば、25μm以下、好ましくは、18μm以下である。絶縁層2の厚みに対する第1開口部60の深さの比は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.2以上であり、また、例えば、0.9以下、好ましくは、0.8以下である。
【0043】
第3周側面43の厚み方向長さ(テーパ面9の厚み方向長さに相当)L2は、例えば、2μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、45μm以下、好ましくは、25μm以下である。第3周側面43の面方向長さ(テーパ面9の面方向長さに相当)L3は、例えば、2μm以上、好ましくは、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、45μm以下、好ましくは、25μm以下である。
【0044】
第4周側面44の厚み方向長さは、後述する第2導体部5の厚みと同一である。
【0045】
第5周側面45の厚み方向長さは、例えば、2μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、45μm以下、好ましくは、25μm以下である。
【0046】
延出面7の面方向長さ(延出長さ)L4は、例えば、3μm以上、好ましくは、7μm以上、より好ましくは、15μm以上、さらに好ましくは、30μm以上であり、また、例えば、1,000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
【0047】
第2開口部70の深さ(厚み方向長さ)は、複数の第2周側面8の厚み方向長さの合計であり、つまり、第3周側面43の厚み方向長さ、第4周側面44の厚み方向長さ、および、第5周側面45の厚み方向長さの合計である。第2開口部70の深さ(厚み方向長さ)は、例えば、3μm以上、例えば、100μm以下である。絶縁層2の厚みに対する第2開口部70の深さの比は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.2以上であり、また、例えば、0.9以下、好ましくは、0.8以下である。
【0048】
絶縁層2の寸法が上記した範囲にあれば、異方導電部の異方導電性が向上する。
【0049】
複数の異方導電部3のそれぞれは、複数の貫通孔6のそれぞれに配置されている。異方導電部3は、第1開口部60と、第2開口部70の一部とに充填されており、それらに対応する形状を有する。
【0050】
異方導電部3は、第1開口部60に配置される第1導体部4と、第2開口部70に配置される第2導体部5とを備える。好ましくは、この異方導電部3は、第1導体部4および第2導体部5のみを備える。
【0051】
第1導体部4は、第1開口部60の全部に充填されている。これにより、第1導体部4は、第1開口部60と同一形状を有する。具体的には、第1導体部4は、面方向に延びる略平板形状を有する。第1導体部4は、厚み方向一方面である第1面31と、第1面31と厚み方向他方側に対向する他方面である第2面32と、第1面31の周端縁および第2面32の周端縁を連結する第3面33とを一体的に有する。
【0052】
第1面31は、面方向に沿う平坦面である。第1面31は、周端部12と、周端部12の内側に位置する内側部11とに区画される。
【0053】
周端部12は、絶縁層2の第1一方面62に面する。具体的には、周端部12は、第1面31において、第1一方面62に接触する領域である。周端部12は、平面視において、第1一方面62と同一形状を有する。
【0054】
内側部11は、第1面31において、周端部12より内側に位置する領域である。内側部11は、後述する第2導体部5に接触する。
【0055】
第2面32は、第1面31に平行する平坦面である。第2面32は、絶縁層2から露出する。第2面32は、異方導電部3において厚み方向他方側に露出する厚み方向他方面の一例である。具体的には、第2面32は、絶縁層2の絶縁第2面22から、厚み方向他方側に向かって露出する。また、第2面32は、絶縁第2面22と面一である。第2面32の外端縁は、絶縁第2面22の内端縁と連続する。
【0056】
第3面33は、第1導体部4の側面(周側面)である。第3面33は、第1周側面61に接触する。第3面33は、厚み方向に沿って延びており、断面視において、ストレート形状を有する。
【0057】
この第1導体部4では、第1面31の周端部12と、第3面33とが、絶縁層2に接触する。なお、第1面31の周端部12は、挟まれ部40と接触する。
【0058】
一方、第2面32の全面は、絶縁層2から露出している。
【0059】
第2導体部5は、第2開口部70に配置されている。具体的には、第2導体部5は、第2開口部70の厚み方向他方側部分を充填している。第2導体部5は、厚み方向一方側に向かって開放される略ハット形状を有する。
【0060】
第2導体部5は、略同一厚みで延びる形状を有しており、厚み方向一方面である第4面34と、第4面34と厚み方向他方側に対向する他方面である第5面35と、第4面34の周端縁および第5面35の周端縁を連結する第6面36とを一体的に有する。
【0061】
第5面35は、第1導体部4の内側部11と、絶縁層2の第3周側面43および延出面7とに接触する。第5面35において、絶縁層2において第3周側面43および延出面7に接触する部分は、挟まれ部40を、第1導体部4の第1面31の周端部12とともに、厚み方向に挟む(サンドイッチ構造を形成する)。
【0062】
第4面34の周端部は、絶縁層2の対向面37に接触する。
【0063】
一方、第4面34において周端部の内側部分は、厚み方向一方側に露出しており、異方導電部3において厚み方向一方側に露出する厚み方向一方面の一例である。第4面34は、第5面35と面方向にわたって同一間隔(厚み方向距離)が隔てられている。
【0064】
第6面36は、第4周側面44に接触する。第6面36は、厚み方向に沿って延びる略筒形状(具体的には、円筒形状)を有する。
【0065】
これにより、第2導体部5は、第1導体部4における第1面31の内側部11と、絶縁層2における第3周側面43、延出面7、第4周側面44および対向面37とに接触する。
【0066】
異方導電部3の材料は、特に限定されず、例えば、銅、クロム、ニッケル、金などの金属が挙げられる。これらは、単独使用または併用することができる。第1導体部4の材料として、好ましくは、銅が挙げられる。第2導体部5の材料として、好ましくは、ニッケル、金が挙げられる。なお、第1導体部4および第2導体部5のそれぞれは、厚み方向に複数の層が積層された積層体であってもよい。
【0067】
異方導電部3の寸法は、その用途および応じて適宜設定される。異方導電部3の厚みは、内側部11における第1導体部4の厚みTと、内側部11に面する第2導体部5の厚みとの合計として、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、50μm以下である。第2面32および第4面23間の距離は、例えば、10μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、500μm以下である。
【0068】
第1導体部4の寸法は、第1開口部60の寸法と同一の寸法を有する。第2面32の面積(第1導体部4の底面積)は、第1開口部60の開口断面積と同一である。なお、異方導電部3の厚みに対する第1導体部4の厚みTの割合は、例えば、20%以上、好ましくは、40%以上であり、また、例えば、90%以下、好ましくは、70%以下である。
【0069】
第2導体部5の厚みは、例えば、2μm以上、好ましくは、3μm以上であり、また、例えば、25μm以下、好ましくは、18μm以下である。異方導電部3の厚みに対する第2導体部5の厚みの割合は、例えば、10%以上、好ましくは、30%以上であり、また、例えば、80%以下、好ましくは、60%以下である。第1導体部4の厚みTに対する第2導体部5の厚みの比は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.2以上であり、また、例えば、5以下、好ましくは、2以下である。
【0070】
異方導電部3の寸法が上記した範囲にあれば、異方導電部3の異方導電性が向上する。
【0071】
【0072】
まず、
図3Aに示すように、基材シート20を準備する。
【0073】
基材シート20は、面方向に延びるシート形状を有する。基材シート20は、例えば、ステンレスなどの金属からなる金属層(図示せず)と、金属層の厚み方向一方面に配置され、例えば、ポリイミドなどの樹脂からなる樹脂層とを備える。
【0074】
次いで、
図3Bに示すように、複数の第1導体部4(
図1参照)を基材シート20の厚み方向一方面に配置する。例えば、アディティブ法やサブトラクティブ法などのパターンニング法により、複数の第1導体部4を、基材シート20の厚み方向一方面に、面方向に互いに間隔を隔てて形成する。
【0075】
次いで、
図3Cに示すように、第1絶縁層23を、基材シート20の厚み方向一方面に、複数の第1導体部4の内側部11を露出するように、配置する。
【0076】
第1絶縁層23は、絶縁層2(
図2参照)の厚み方向他方側部分に相当する。第1絶縁層23は、第1周側面61、第1一方面62、第3周側面43および延出面7を形成する。
【0077】
第1絶縁層23を形成するには、例えば、感光性の樹脂のワニスを、基材シート20の一方面に、複数の第1導体部4の第1面31および第3面33を被覆するように塗布し、続いて、露光および現像により、複数の第3周側面43を形成する。これにより、複数の内側部11を露出する第1絶縁層23を形成する。
【0078】
次いで、
図3Dに示すように、第2導体部5を、第1絶縁層23の第3周側面43および延出面7と、第1導体部4の内側部11とに配置する。
【0079】
複数の第2導体部5を配置する方法としては、例えば、上記した金属を含有するめっき浴を用いるめっき、例えば、上記した金属からなる粒子を含有するペースト組成物の塗布などが挙げられ、好ましくは、めっき、より好ましくは、電解めっきが挙げられる。
【0080】
これにより、複数の第2導体部5のそれぞれを、複数の第1導体部4のそれぞれに対応するように、配置する。
【0081】
次いで、
図3Eに示すように、第2絶縁層24を、第1絶縁層23の延出面7に、第2導体部5の第4面34の周端部および第6面36を接触するように、配置する。
【0082】
第2絶縁層24は、絶縁層2(
図2参照)の厚み方向一方側部分に相当する。第2絶縁層24は、第4周側面44、対向面37および第5周側面45を形成する。
【0083】
第2絶縁層24の形成方法は、第1絶縁層23のそれと同様である。
【0084】
第1絶縁層23および第2絶縁層24によって、第2開口部70が形成される。
【0085】
これによって、第1開口部60および第2開口部70を有する複数の貫通孔6を有し、第1絶縁層23および第2絶縁層24を備える絶縁層2が形成される。
【0086】
なお、第1絶縁層23および第2絶縁層24の境界は、
図3Eに示すように、明確に観察されてもよく、また、
図2に示すように、不明瞭であって、観察されなくてもよい。
【0087】
これによって、絶縁層2と、複数の異方導電部3とを備える異方導電性シート1を、基材シート20の厚み方向一方面に製造する。
【0088】
その後、
図3Fに示すように、基材シート20を除去する。例えば、エッチングなどによって、金属層および樹脂層を、厚み方向他方側から順次除去する。
【0089】
これにより、第2面32および絶縁第2面22が、厚み方向他方側に露出する。
【0090】
これによって、絶縁層2と複数の異方導電部3とを備える異方導電性シート1を製造する。
【0091】
次に、異方導電性シート1を用いて導通検査を実施する方法を、
図3Eを参照して説明する。
【0092】
まず、
図3Fの仮想線で示すように、異方導電性シート1の厚み方向一方側に、複数の第1端子41を配置する。併せて、異方導電性シート1の厚み方向他方側に、複数の第2端子42を配置する。
【0093】
複数の第1端子41としては、例えば、被検査用端子、具体的には、半導体素子の端子、フレキシブルプリント配線板の端子などが挙げられる。複数の第2端子42としては、例えば、検査用端子などが挙げられ、具体的には、テスタープローブなどが挙げられる。
【0094】
続いて、
図3Fの実線で示すように、複数の第1端子41のそれぞれの先端、および、複数の第2端子42のそれぞれの先端を、異方導電部3の複数の第4面34の内側部分のそれぞれ、および、複数の第2面32のそれぞれに接触させる。その後、第2端子42が備えられる検査装置(具体的には、テスター)の駆動に基づいて、第1端子41が備えられる半導体素子やフレキシブルプリント配線板を導通検査する。
【0095】
そして、この異方導電性シート1では、第1導体部4は、略平板形状に形成されるので、十分な厚みTを確保し易く、そのため、異方導電部3の異方導電性を確実に向上させることができる。
【0096】
また、第1導体部4の周端部と、第2導体部5において延出面7に接触する部分とは、厚み方向において、絶縁層2の挟まれ部40を挟んでいる。そのため、異方導電部3の絶縁層2からの脱落を抑制することができる。
【0097】
従って、この異方導電性シート1は、異方導電部3の絶縁層2からの脱落の抑制と、異方導電部3の優れた異方導電性とを両立することができる。
【0098】
<変形例>
変形例において、一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0099】
図4に示すように、第2導体部5は、導体付属部52をさらに備えることができる。つまり、
図4の変形例における第2導体部5は、導体本体部51および導体付属部52を備える。
【0100】
図4の変形例における導体本体部51は、一実施形態の第2導体部5に相当する。この変形例では、導体本体部51は、第2導体部5の厚み方向他方側部分に相当する。
【0101】
導体補助部52は、導体本体部51の厚み方向一方面に配置されている。導体補助部52は、第2導体部5の厚み方向一方側部分に相当する。導体補助部52は、第5周側面45に接触している。導体補助部52の厚み方向一方面は、第2導体部5の第4面34に相当する。導体補助部52の厚みは、例えば、0.01μm以上、また、1μm以下である。
【0102】
また、この異方導電性シート1は、第3導体部48をさらに備える。
【0103】
第3導体部48は、第1導体部4の第2面32と、第1導体部4の周囲(外側近傍)に位置する絶縁層2の絶縁第2面22とに接触している。第3導体部48は、底面視において、第1導体部4を包含しており、第1導体部4よりやや大きい寸法(面方向長さ)を有する。
【0104】
第3導体部48の材料および厚みは、導体補助部52のそれらと同様である。
【0105】
一実施形態の製造方法では、2つの絶縁層(第1絶縁層23および第2絶縁層24)から絶縁層2を形成しているが、例えば、
図5A~
図5Gに示すように、3つの絶縁層(第3絶縁層25、第4絶縁層26および第5絶縁層27)から絶縁層2を形成することもできる。
【0106】
この変形例では、
図5Aに示すように、まず、基材シート20を準備し、次いで、
図5Bに示すように、第3絶縁層25を、基材シート20の厚み方向一方面に配置する。第3絶縁層25を、第1導体部4の逆パターンで、基材シート20の厚み方向一方面に形成する。第3絶縁層25は、絶縁層2(
図2参照)における絶縁第2面22および第1周側面61を形成する。
【0107】
次いで、
図5Cに示すように、第1導体部4を、基材シート2において第3絶縁層25から露出する厚み方向一方面(露出面)に形成し、次いで、
図5Dに示すように、第4絶縁層26を、第3絶縁層25および第1導体部4に対して配置する。
【0108】
第3絶縁層25および第4絶縁層26は、上記した変形例における第1絶縁層23(
図3C参照)に相当し、具体的には、第1絶縁層23と同一の形状を有する。第4絶縁層26は、第1一方面62、第3周側面43および延出面7を形成する。
【0109】
次いで、
図5Eに示すように、第2導体部5を形成し、続いて、
図5Fに示すように、第5絶縁層27を形成する。第5絶縁層27は、上記した変形例における第2絶縁層24(
図3E参照)に相当し、具体的には、第2絶縁層24と同一の形状を有する。第5絶縁層27は、第4周側面44、対向面37および第5周側面45を形成する。これにより、第3絶縁層25、第4絶縁層26および第5絶縁層27からなる絶縁層2を形成する。
【0110】
その後、
図5Gに示すように、基材シート20を除去する。
【0111】
図6に示すように、この変形例では、第3周側面43は、テーパ面9と、縦面10とを含む。
【0112】
テーパ面9は、第3周側面43における厚み方向他方側部分に相当する。
【0113】
縦面10は、テーパ面9の厚み方向一方側に配置される。つまり、縦面10は、第3周側面43における厚み方向一方側部分に相当する。具体的には、縦面10は、テーパ面9の厚み方向一端縁から、厚み方向一方側に延び、延出面7に連続する。縦面10は、厚み方向に延びる略筒形状(具体的には、テーパ面9の錐台形状と軸線を共有する略円筒形状または略角筒形状)を有する。縦面10は、断面視において、ストレート面である。具体的には、断面視において、面方向に対向する2つの縦面10の対向距離は、同一である。
【0114】
一方、
図7に示すように、この変形例では、第2周側面43は、テーパ面9を含まず、縦面10を含む。具体的には、第2周側面43は、縦面10のみを含む。
【0115】
また、一実施形態では、第1導体部4の第2面32は、絶縁層2の絶縁第2面22と面一であったが、
図8に示すように、絶縁層2の絶縁第2面22より、厚み方向他方側に位置してもよい。
【0116】
この変形例では、
図8に示すように、第1導体部4は、その厚み方向他方側部分が、面方向に投影したときに、絶縁層2の絶縁第2面22から厚み方向他方側に突出している。具体的には、第1導体部4の第3面33は、その厚み方向一方側部分が絶縁層2に被覆される一方、その厚み方向他方側部分が絶縁層2から露出する。
【0117】
なお、
図8に示す変形例より、
図2に示す一実施形態、
図6および
図7に示す変形例が、好適である。
図2に示す一実施形態、
図6および
図7に示す変形例は、第2面32が絶縁第2面22と面一であるので、第2面32が絶縁第2面22より厚み方向一方側に突出する
図8に示す変形例より、異方導電性シート1の厚み方向他方面の平滑化を図ることができる。
【0118】
図9に示すように、第2周側面43が、テーパ面9および縦面10を含み、かつ、第2面32が絶縁第2面22より厚み方向一方側に突出することもできる。
【0119】
図10に示すように、第2周側面43が、テーパ面9を含まず、縦面10のみを含み、かつ、第2面32が絶縁第2面22より厚み方向一方側に突出することもできる。
【0120】
さらには、
図11に示すように、第2導体部5の第4面34の周端部が、厚み方向一方側に露出することもできる。
【0121】
第2導体部5の第6面36は、絶縁層2の第4周側面44と間隔が隔てられる。
【0122】
第2周側面8は、第5周側面45を含まず、第3周側面43および第4周側面44のみを備える。第4周側面44の厚み方向一端縁は、絶縁第1面21に連続する。
【0123】
また、
図6~
図11のそれぞれの変形例において、仮想線で示すように、導体補助部52および/または第3導体部48がさらに設けられてもよい。
【0124】
また、一実施形態では、第1導体部4は、平面視において、第2導体部5より大きいが、例えば、図示しないが、同一寸法またはそれより小さい寸法を有することができる。なお、この変形例でも、絶縁層2は、挟まれ部40を有する。
【符号の説明】
【0125】
1 異方導電性シート
2 絶縁層
3 異方導電部
4 第1導体部
5 第2導体部
6 開口部
7 延出面
8 周側面
9 テーパ面
11 内側部分
12 周端部
22 絶縁第2面
31 第1面(第1導体層)
32 第2面(第1導体層)
43 第2周側面(周側面の一例)