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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】金属磁性粒子を含む複合磁性粒子
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/26 20060101AFI20231218BHJP
   H01F 1/20 20060101ALI20231218BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20231218BHJP
   B22F 1/052 20220101ALI20231218BHJP
   B22F 1/102 20220101ALI20231218BHJP
   B22F 1/16 20220101ALI20231218BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20231218BHJP
【FI】
H01F1/26
H01F1/20
H01F27/255
B22F1/052
B22F1/102 100
B22F1/16 100
B22F3/00 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019062218
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020161753
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】棚田 淳
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/084812(WO,A1)
【文献】特開2010-251697(JP,A)
【文献】特開2018-152543(JP,A)
【文献】特開2014-103265(JP,A)
【文献】特開2019-220609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/20-1/28、3/08、27/255
B22F 1/052、1/102、1/16、3/00
C22C 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂材料から成る第1樹脂部で被覆された第1金属磁性粒子と、
前記第1金属磁性粒子よりも小径の複数の第2金属磁性粒子と、
を備え、
前記複数の第2金属磁性粒子の各々は、前記第1樹脂部及び前記第1樹脂材料よりも分子量が大きい第2樹脂材料から成る第2樹脂部を介して前記第1金属磁性粒子に結着する、
複合磁性粒子。
【請求項2】
前記第2樹脂材料の分子量は、前記第1樹脂材料の分子量の2倍以上である、
請求項1に記載の複合磁性粒子。
【請求項3】
前記第1金属磁性粒子は、その全表面が前記第1樹脂部により覆われている、
請求項1又は請求項2に記載の複合磁性粒子。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の複合磁性粒子を含む磁性基体。
【請求項5】
第1金属磁性粒子の表面に第1樹脂材料から成る第1樹脂部を設けるコーティング工程と、
前記第1金属磁性粒子よりも小径の複数の第2金属磁性粒子の各々を、前記第1樹脂部及び前記第1樹脂材料よりも分子量が大きい第2樹脂材料から成る第2樹脂部を介して前記第1金属磁性粒子に結着させる結着工程と、
を備える複合磁性粒子の製造方法。
【請求項6】
前記結着工程は、
前記第1樹脂部の表面に前記第2樹脂部を設ける工程と、
前記第2樹脂部が設けられた前記第1金属磁性粒子と前記第2金属磁性粒子とを混合する工程と、
を備える、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記結着工程は、
前記第1樹脂部が設けられた前記第1金属磁性粒子と前記第2金属磁性粒子とを混合して混合粒子を得る工程と、
前記混合粒子と前記第2樹脂材料から成る樹脂組成物とを混合する工程と、
を備える、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第2樹脂材料の分子量は、前記第1樹脂材料の分子量の2倍以上である、
請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第2樹脂部100wt%に対する前記第1樹脂部の含有量は0.01wt%~0.1wt%である、
請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、金属磁性粒子を含む複合磁性粒子、かかる複合磁性粒子から形成された磁性基体を含む電子部品、及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタなどの電子部品においては、従来から様々な磁性材料が用いられている。インダクタは、典型的には、磁性材料からなる磁性基体と、当該磁性基体に埋設されたコイル導体と、当該コイル導体の端部に接続された外部電極とを有する。
【0003】
電子部品の磁性基体の材料として、金属磁性粒子の表面に樹脂製の絶縁膜が設けられた複合磁性粒子が用いられている。この種の磁性基体は、例えば、複合磁性粒子と結合材とを混練して得られたスラリーを型に流し込み、この型内でスラリーを加圧することにより作製される。
【0004】
インダクタ等の電子部品用の磁性基体は、高い透磁率を有することが求められており、従来から、磁性基体の透磁率を向上させるための提案がなされている。例えば、特開2018-041955号公報(特許文献1)には、磁性材料から形成されるコア粉末と、当該コア粉末の表面を被覆する樹脂層と、を有する複合磁性粒子が開示されている。この樹脂層は、高分子材料から成る単一の層であるため、絶縁機能、バインダー機能、及び硬化剤機能を提供する。特許文献1によれば、この樹脂層がコア粉末と直接接するように設けられているため、コア粉末として用いることができる磁性材料の制約がなくなるため、高透磁率を有するインダクタを提供することができるとされている。
【0005】
特許文献1には、磁性基体に2種類以上の平均粒子径を有する磁性粒子を使用することにより、磁性基体における磁性粒子の充填率(充填密度)を高め、これにより磁性基体の透磁率を向上させることも開示されている。2種類以上の平均粒子径が異なる金属磁性粒子を混合することによって磁性基体における磁性粒子の充填率(充填密度)を高めることは、特開2010-34102号公報(引用文献2)にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-041955号公報
【文献】特開2010-034102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
金属磁性粒子と当該金属磁性粒子の表面に設けられた樹脂膜とを含む複合磁性粒子は、ビーズミルやボールミルの各種ミルの混練機能を利用して作製することができる。具体的には、ミルの混練機能によって金属磁性粒子と樹脂組成物とを混合することにより、表面に樹脂膜が設けられた金属磁性粒子が得られる。しかしながら、粒径の異なる2種類以上の金属磁性粒子を樹脂組成物と混合すると、樹脂組成物がプライマーとして機能することで、粒径の小さな金属磁性粒子が凝集しやすいという問題がある。
【0008】
小径の金属磁性粒子が凝集している複合磁性粒子から磁性基体を作製すると、磁性基体内において金属磁性粒子の分布に偏りが生じる。具体的には、磁性基体内のある部分に径の小さな金属磁性粒子が偏在してしまう。また、この結果、磁性基体内の他の部分において径の大きな金属磁性粒子の存在比率が高まる。
【0009】
コイルへの電流印加時に発生する磁束は、径の大きな金属磁性粒子の存在比率が高い経路を選好して通過することになるため、磁性基体内で小径の金属磁性粒子が凝集していると、磁性基体内において磁束分布が不均一になる。このため、かかるコイル部品においてコイル導体に流れる直流電流が増えると、磁性基体内を通過する磁束の複数の磁路のうち平均粒径が大きな金属磁性粒子の存在比率が高い磁路から順に磁気飽和が起こる。
【0010】
このように、径の小さな金属磁性粒子が凝集している複合磁性粒子から形成された磁性基体をコイル部品に用いると、当該磁性基体内における磁束分布の不均一性に起因して局所的な磁気飽和が起こるため、コイルへ印加される直流電流を増加させるとインダクタンスが徐々に低下する。このため、径の小さな金属磁性粒子が凝集している複合磁性粒子から形成された磁性基体を備えるコイル部品においては、許容電流を高くすることが困難となる。
【0011】
また、金属磁性粒子が凝集すると、隣接する金属磁性粒子同士が電気的に接触しやすくなる。隣接する複数の金属磁性粒子同士が互いに電気的に接触するとその複数の金属磁性粒子が電磁気的には1つの径の大きな粒子となる。変動する磁場中にある金属粒子は、その径が大きいほど大きな渦電流が発生しやすくなる。よって、径の小さな金属磁性粒子が凝集している複合磁性粒子から形成された磁性基体をコイル部品に用いると、渦電流損失が大きくなるという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、上述した問題の少なくとも一部を解決又は緩和することである。より具体的な本発明の目的の一つは、金属磁性粒子の凝集が抑制された複合磁性粒子を提供することである。本発明の別の目的は、金属磁性粒子の凝集が抑制された複合磁性粒子から形成された磁性基体を備える電子部品を提供することである。本発明のさらに別の目的は、かかる複合磁性粒子及び電子部品の製造方法を提供することである。本発明のこれ以外の目的は、明細書全体の記載を通じて明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様による複合磁性粒子は、第1樹脂材料から成る第1樹脂部で被覆された第1金属磁性粒子と、前記第1金属磁性粒子よりも小径であり、前記第1樹脂材料よりも分子量が大きい第2樹脂材料から成る第2樹脂部を介して前記第1金属磁性粒子に結着する第2金属磁性粒子と、を備える。
【0014】
前記第1金属磁性粒子は、その全表面が前記第1樹脂部により覆われていてもよい。
【0015】
本発明の一態様による磁性基体は、上記の複合磁性粒子を含む。
【0016】
本発明の一態様による磁性基体は、第1樹脂材料から成る第1樹脂部で被覆された複数の第1金属磁性粒子と、前記複数の第1金属磁性粒子の平均粒径である第1平均粒径よりも小さな第2平均粒径を有する複数の第2金属磁性粒子と、を備え、前記第2金属磁性粒子の各々は、第2樹脂材料から成る第2樹脂部で被覆され、前記第1樹脂部及び前記第2樹脂部の少なくとも一方を介して前記複数の第1金属磁性粒子のうちの少なくとも一つの第1金属磁性粒子に結着し、前記磁性基体の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で2000倍の倍率にて測定した場合において、隣接する前記第1金属磁性粒子の組を観察した時、隣接する第1金属磁性粒子の間に前記第2金属磁性粒子が存在しない組の割合は15%以下である。
【0017】
本発明の一態様による電子部品は、上記の複合磁性粒子から形成された磁性基体を含む。当該電子部品は、前記磁性基体に設けられたコイルを備えてもよい。当該電子部品は、例えば、インダクタである。
【0018】
本発明の一態様による複合磁性粒子の製造方法は、第1金属磁性粒子の表面に第1樹脂材料から成る第1樹脂部を設けるコーティング工程と、前記第1金属磁性粒子よりも小径の第2金属磁性粒子を前記第1樹脂材料よりも分子量が大きい第2樹脂材料から成る第2樹脂部を介して前記第1金属磁性粒子に結着させる結着工程と、を備える。
【0019】
前記結着工程は、前記第1樹脂部の表面に前記第2樹脂部を設ける工程と、前記第2樹脂部が設けられた前記第1金属磁性粒子と前記第2金属磁性粒子とを混合する工程と、を備えてもよい。
【0020】
前記結着工程は、前記第1樹脂部が設けられた前記第1金属磁性粒子と前記第2金属磁性粒子とを混合して混合粒子を得る工程と、前記混合粒子と前記第2樹脂材料から成る樹脂組成物とを混合する工程と、を備えてもよい。
【0021】
前記第2樹脂材料の分子量は、前記第1樹脂材料の分子量の2倍以上であってもよい。
【0022】
前記第2樹脂部100wt%に対する前記第1樹脂部の含有量は0.01wt%~0.1wt%であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本明細書の開示によれば、金属磁性粒子の凝集が抑制された複合磁性粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態による複合磁性粒子を模式的に示す図である。
図2A】本発明の一実施形態による複合磁性粒子の製造工程の一部を模式的に示す図である。
図2B】本発明の一実施形態による複合磁性粒子の製造工程の一部を模式的に示す図である。
図2C】本発明の一実施形態による複合磁性粒子の製造工程の一部を模式的に示す図である。
図2D】本発明の一実施形態による複合磁性粒子の製造工程の一部を模式的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態によるコイル部品の斜視図である。
図4図3のコイル部品の断面をI-I線で切断した断面を模式的に示す図である。
図5図4の断面の一部を撮影した像を模式的に示す模式図である。
図6】本発明の別の実施形態によるコイル部品の斜視図である。
図7図6のコイル部品をII-II線で切断した断面を模式的に示す図である。
図8】本発明の別の実施形態によるコイル部品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1を参照して本発明の一実施形態による複合磁性粒子1を説明する。複合磁性粒子1は、後述する電子部品の磁性基体の材料として用いられ得る。本発明の一実施形態による複合磁性粒子1は、第1樹脂部3で被覆された第1金属磁性粒子2aと、第2樹脂部4を介して第1金属磁性粒子2aに結着する複数の第2金属磁性粒子2bと、を含む。
【0026】
一実施形態において、第1金属磁性粒子2a及び第2金属磁性粒子2bは、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、及びコバルト(Co)のうち少なくとも一つの元素を含む結晶質又は非晶質の金属又は合金から形成される。金属磁性粒子は、さらに、ケイ素(Si)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)のうち少なくとも一つの元素を含んでもよい。金属磁性粒子は、Fe及び不可避不純物から成る純鉄の粒子であってもよく、鉄(Fe)を含むFe基非晶質合金であってもよい。このFe基非晶質合金には、例えば、Fe-Si合金、Fe-Si-Al合金、Fe―Si-Cr-B合金、Fe-Si-B-C合金、及びFe-Si-P-B-C合金が含まれる。第1金属磁性粒子2a及び第2金属磁性粒子2bの表面には、合金または金属が酸化した酸化膜が付着していてもよい。第1金属磁性粒子2a及び第2金属磁性粒子2bの表面に酸化膜が付着している場合には、酸化膜の内側の酸化されていない領域において磁性が発現する。
【0027】
第1金属磁性粒子2aは、第2金属磁性粒子2bよりも大きな粒径を有する。一実施形態において、第1金属磁性粒子2aの粒径は5~100μm、比表面積比(BET値)は3m2/g以下とされる。一実施形態において、第2金属磁性粒子2bの粒径は、0.05~50μm、比表面積比(BET値)は15m2/g以下とされる。第1金属磁性粒子2a及び第2金属磁性粒子2bの形状は、例えば球形である。第1金属磁性粒子2a及び第2金属磁性粒子2bの形状は、球形に限られず、例えば扁平形状であってもよい。図示の実施形態において、複合磁性粒子1は、複数の第2金属磁性粒子2bを含む。この複数の第2金属磁性粒子2bは、第1樹脂部3が設けられた第1金属磁性粒子2aに第2樹脂部4を介して結着するため、複数の第2金属磁性粒子2bの凝集が起こりにくい。複数の第2金属磁性粒子2bのうち隣接する粒子同士は、互いから離隔していることが望ましい。隣接する第2金属磁性粒子2bの間に第2樹脂部4が介在している場合に、当該隣接する第2金属磁性粒子2b同士は互いに離隔していると判断されてもよい。複合磁性粒子1に含まれる第2金属磁性粒子2bの一部は、隣接する第2金属磁性粒子2bと直接(第2樹脂部4を介さずに)接していてもよい。
【0028】
一実施形態において、第1樹脂部3の厚さは100nm以下とされる。第1樹脂部3の厚さは、第1金属磁性粒子2aの粒径に応じて定められる。一実施形態において、第1金属磁性粒子2aの表面に設けられる第1樹脂部3は、第1樹脂材料から成る。第1樹脂材料は、第2樹脂部4の第2樹脂材料よりも分子量が小さな樹脂であり、加水分解性シリル基、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、又はメタクリル基のうちの少なくとも一つを有する。第1樹脂材料は、分子骨格中にSiを含んでいてもよい。第1樹脂部3は、第1金属磁性粒子2aの表面全体を覆うように設けられることが望ましい。第1樹脂材料として、第1金属磁性粒子2aの表面全体を覆うことができる程度の流動性を有する小さな分子量の樹脂材料を用いることが望ましい。第1樹脂材料の分子量と第2樹脂材料の分子量は、各々の平均分子量で比較されてもよい。第1樹脂材料の分子量と第2樹脂材料の分子量とを比較する場合には、それぞれの数平均分子量同士を比較してもよい。この場合、第1樹脂材料の数平均分子量は、第2樹脂材料の数平均分子量よりも小さい。第1樹脂材料の分子量と第2樹脂材料の分子量とを比較する場合には、それぞれの重量平均分子量同士を比較してもよい。この場合、第1樹脂材料の重量平均分子量は、第2樹脂材料の重量平均分子量よりも小さい。数平均分子量及び重量平均分子量の測定には、東ソー株式会社製のHLC-8220GPCを用いることができる。分析カラムとしては、東ソー株式会社製のGMHXL及びG3000HXLを用いることができる。分析カラムは、第1の樹脂及び第2の樹脂の種類及び分子量に合わせて、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)用途で充填剤の径が最適なものが選択される。数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によるポリスチレン(PS)換算値として表されてもよい。
【0029】
第2樹脂部4は、第1樹脂部3が設けられた第1金属磁性粒子2aの外表面に設けられる。第2樹脂部4は、第1樹脂部3に接するように設けられる。第2樹脂部4は、第2金属磁性粒子2bの一部又は全部を覆うように設けられる。第2金属磁性粒子2bは、その表面の全体が第2樹脂部4によって覆われていてもよい。第2金属磁性粒子2bは、その表面の一部が第2樹脂部4によって覆われていてもよい。第2金属磁性粒子2bは、第2樹脂部4により第1金属磁性粒子2aに結着する。
【0030】
一実施形態において、第2樹脂部4は、第1樹脂材料よりも分子量が大きな第2樹脂材料から成る。第2樹脂材料は、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂にフェノール樹脂を混合させた混合樹脂材料である。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、エポキシ当量が200~250、軟化点が50~100度、比重が1.15~1.30であり、フェノール樹脂は、OH当量が100~120、軟化点が60~110度である。また、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂とフェノール樹脂との配合比率は、例えば1:1とされる。第2樹脂材料として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂にフェノール樹脂を混合させた混合樹脂材料には限られない。第2樹脂材料として、第1樹脂材料よりも分子量が大きな任意の樹脂材料が用いられ得る。第2樹脂材料の分子量は、第1樹脂材料の分子量の2倍以上とすることができる。第2樹脂材料の軟化点は、第1樹脂材料の軟化点よりも50℃以上高い温度とされてもよい。
【0031】
複合磁性粒子1において、第2樹脂部4の100wt%に対する前記第1樹脂部の含有量は0.01wt%~10wt%である。
【0032】
第1金属磁性粒子2a及び第2金属磁性粒子2bの粒径をそれぞれD1、D2とすると、第1金属磁性粒子2aの粒径D1と第2金属磁性粒子2bの粒径D2との関係はD1/D2≧3を満たしてもよい。
【0033】
続いて、本発明の一実施形態による複合磁性粒子1の製造方法について図2A図2Cを参照して説明する。
【0034】
まず、複数の第1金属磁性粒子2aを準備する。次に、コーティング工程を行う。このコーティング工程では、複数の第1金属磁性粒子の各々の表面に第1樹脂材料から成る第1樹脂部3が形成される。より具体的には、複数の第1金属磁性粒子2aと第1樹脂材料を含む第1樹脂溶液とを混合容器に投入して攪拌することで、第1金属磁性粒子2aと第1樹脂材料とが混合された混合物を生成し、この混合物を混合容器から取り出して乾燥させる。これにより、図2Aに示すように第1樹脂部3が設けられた第1金属磁性粒子2aが得られる。このコーティング工程では、例えば、第1金属磁性粒子2aの100wt%に対して、0.01wt%~5wt%の第1樹脂材料が加えられる。第1樹脂溶液には、必要に応じて2-ブタノン等の希釈剤が加えられてもよい。
【0035】
次に、結着工程を行う。この結着工程では、この第1樹脂部3が設けられた第1金属磁性粒子2aに、第2樹脂材料から成る第2樹脂部4を介して第2金属磁性粒子2bを結着させる。より具体的には、第1樹脂部3が設けられた第1金属磁性粒子2aと第2樹脂材料を含む第2樹脂溶液とを混合容器内で攪拌することにより、図2Bに示すように、第1樹脂部3の表面に第2樹脂材料から成る第2樹脂部4が設けられる。この結着工程では、例えば、第1金属磁性粒子2aの100wt%に対して、1wt%~20wt%の第2樹脂材料が加えられる。第2樹脂溶液には、必要に応じて2-ブタノン等の希釈剤が加えられてもよい。
【0036】
次に、図2Cに示されているように混合容器内にさらに第2金属磁性粒子2bを投入し、第2樹脂部4が設けられた第1金属磁性粒子2aと第2金属磁性粒子2bとを攪拌することにより、図2Dに示されているように、第2樹脂部4を介して、第2金属磁性粒子2bを第1金属磁性粒子2aに結着させる。また、この攪拌処理により、第2金属磁性粒子2bの表面にも第2樹脂部4が設けられる。上記のように、第2樹脂部4は、第2金属磁性粒子2bの表面全体に設けられてもよく、第2金属磁性粒子2bの表面の一部に設けられてもよい。このようにして得られた混合物を混合容器から取り出して乾燥させることにより複合磁性粒子1が得られる。以上のようにして得られた複合磁性粒子1は、第1樹脂部3で被覆された第1金属磁性粒子2aと、この第1金属磁性粒子2aに第2樹脂部4を介して結着された第2金属磁性粒子2bと、を含む。この複合磁性粒子1は、篩通しをすることで顆粒状となる。この顆粒状の複合磁性粒子1は、後述するように電子部品の磁性基体用の磁性材料として用いられる。
【0037】
結着工程では、第2樹脂溶液の投入前に第1樹脂部3が設けられた第1金属磁性粒子2aと第2金属磁性粒子2bとを混合容器内で混合して混合粒子を生成し、この混合粒子に第2樹脂溶液とを混合してもよい。このようにして得られた混合物を混合容器から取り出して乾燥させることによっても複合磁性粒子1が得られる。
【0038】
上記の製造方法によれば、第1金属磁性粒子2a及び第2金属磁性粒子2bを含む複合磁性粒子1を作製する過程で、プライマーとして機能しやすい低分子量の第1樹脂部3を第1金属磁性粒子2aの表面に設けた後に、第1樹脂部3が設けられた第1金属磁性粒子2aと第2金属磁性粒子2bとが混合される。これにより、低分子量の第1樹脂材料のプライマー作用による第2金属磁性粒子2b同士の凝集を抑制することができる。
【0039】
また、分子量が大きな第2樹脂材料から成る第2樹脂部4により第2金属磁性粒子2bを第1金属磁性粒子2aに積極的に結着させるので、第2金属磁性粒子2b同士の凝集を抑制することができる。
【0040】
続いて、図3図5を参照して複合磁性粒子1から形成された磁性基体を備える電子部品について説明する。これらの図には、複合磁性粒子1から形成された磁性基体を備える電子部品の例としてインダクタ101が示されている。図3は、本発明の一実施形態によるインダクタ101の斜視図であり、図4は、図3のインダクタ101をI-I線で切断した断面を模式的に示す図であり、図5は、図4の断面の領域Aを撮影した像を示す模式図である。
【0041】
本明細書においては、文脈上別に解される場合を除き、インダクタ101の「長さ」方向、「幅」方向、及び「厚さ」方向はそれぞれ、図1の「L」方向、「W」方向、及び「T」方向とする。
【0042】
インダクタ101は、本発明を適用可能なコイル部品の一例である。本発明は、インダクタ以外にも、トランス、フィルタ、リアクトル、及びこれら以外の様々なコイル部品に適用され得る。本発明は、大電流が印可されるコイル部品及びそれ以外の電子部品に適用されることで、その効果がより顕著に発揮される。DC-DCコンバータに用いられるインダクタは、大電流が印可されるコイル部品の例である。本発明は、DC-DCコンバータ用のインダクタ以外にも、カップルドインダクタ、チョークコイル、及びこれら以外の様々な磁気結合型コイル部品にも適用することができる。後述するとおり、磁性基体10は高い透磁率及び高い絶縁性を有するため、インダクタ101は、電源系のインダクタとして特に優れた適性を有している。インダクタ101の用途は、本明細書で明示されるものには限定されない。
【0043】
図示のように、インダクタ101は、複合磁性粒子1から形成された磁性基体10と、この磁性基体10内に設けられたコイル導体25と、当該コイル導体25の一端と電気的に接続された外部電極21と、当該コイル導体25の他端と電気的に接続された外部電極22と、を備える。
【0044】
磁性基体10は、磁性材料から直方体形状に形成されている。本発明の一実施形態において、磁性基体10は、長さ寸法(L方向の寸法)が1.0mm~2.6mm、幅寸法(W方向の寸法)が0.5~2.1mm、高さ寸法(H方向の寸法)が0.5~1.0mmとなるように形成される。長さ方向の寸法は、0.3mm~1.6mmとされてもよい。磁性基体10の上面及び下面は、カバー層により覆われていてもよい。
【0045】
図示のインダクタ101は、回路基板102に実装されている。回路基板102には、ランド部103が設けられてもよい。インダクタ101が2つの外部電極21,22を備える場合には、これに対応して回路基板102には2つのランド部103が設けられる。インダクタ101は、外部電極21,22の各々と回路基板102の対応するランド部103とを接合することにより、当該回路基板102に実装されてもよい。回路基板102は、様々な電子機器に実装され得る。回路基板102が実装され得る電子機器には、スマートフォン、タブレット、ゲームコンソール、及びこれら以外の様々な電子機器が含まれる。よって、インダクタ101は、高密度に部品が実装される回路基板102に好適に用いられ得る。インダクタ101は、回路基板102の内部に埋め込まれる内蔵部品であってもよい。
【0046】
磁性基体10は、第1の主面10a、第2の主面10b、第1の端面10c、第2の端面10d、第1の側面10e、及び第2の側面10fを有する。磁性基体10は、これらの6つの面によってその外面が画定される。第1の主面10aと第2の主面10bとは互いに対向し、第1の端面10cと第2の端面10dとは互いに対向し、第1の側面10eと第2の側面10fとは互いに対向している。
【0047】
図1において第1の主面10aは磁性基体10の上側にあるため、第1の主面10aを「上面」と呼ぶことがある。同様に、第2の主面10bを「下面」と呼ぶことがある。インダクタ101は、第2の主面10bが回路基板102と対向するように配置されるので、第2の主面10bを「実装面」と呼ぶこともある。インダクタ101の上下方向に言及する際には、図1の上下方向を基準とする。
【0048】
外部電極21は、磁性基体10の第1の端面10cに設けられる。外部電極22は、磁性基体10の第2の端面10dに設けられる。各外部電極は、図示のように、磁性基体10の下面まで延伸してもよい。各外部電極の形状及び配置は、図示された例には限定されない。例えば、外部電極21,22はいずれも磁性基体10の下面10bに設けられてもよい。この場合、コイル導体25は、ビア導体を介して、磁性基体10の下面10bに設けられた外部電極21,22と接続される。外部電極21と外部電極22とは、長さ方向において互いから離間して配置されている。
【0049】
続いて、本発明の一実施形態によるインダクタ101の製造方法の例について説明する。以下では、圧縮成形プロセスによるインダクタ101製造方法を説明する。インダクタ101を圧縮成形プロセスにより製造する場合、当該インダクタ101の製造方法は、複合磁性粒子1と複合磁性粒子1を圧縮成形して成形体を形成する成形工程と、当該成形工程により得られた成形体を加熱する熱処理工程と、を備える。成型工程において、必要に応じてバインダーを添加してもよい。バインダーには、粒子同士を結合させる結合材、粒子の流動を良くするための潤滑剤、及び金型と成形体の分離を良くする離型剤が含まれ体もよい。
【0050】
成形工程においては、複合磁性粒子1を準備する。次に、成形金型に予め準備したコイル導体を設置し、このコイル導体が設置された成形金型内に上記複合磁性粒子1を入れ、成形圧力を加えることで、内部にコイル導体を含む成形体が得られる。成形工程は、温間成形によって行われてもよく、冷間成形によって行われてもよい。温間成形による場合には、第1樹脂材料及び第2樹脂材料及びバインダーの熱分解温度よりも低く軟磁性金属粒子の結晶化に影響を与えない温間で成形が行われる。例えば、温間成形においては、150°~400°の温間で成形が行われる。成形圧力は、例えば、40MPa~120MPaとされる。成形圧力は、所望の充填率を得るために適宜調整され得る。
【0051】
成形工程において成形体が得られた後に、当該製造方法は熱処理工程に進む。熱処理工程においては、成形工程により得られた成形体に対して熱処理が行われ、この熱処理により磁性基体が得られる。この熱処理により、複合磁性粒子1の表面に酸化膜が形成され、隣り合う複合磁性粒子1が酸化膜を介して結合する。熱処理は、第1および第2樹脂材料が熱硬化性樹脂の場合には、樹脂の硬化温度、例えば150℃から200℃にて30分から4時間行われる。第1樹脂材料及び第2樹脂材料が熱分解性樹脂の場合、熱処理工程は、成形工程により得られた成形体に対して脱脂処理を行う工程と、この脱脂処理が行われた成形体に対して酸化雰囲気にて加熱処理を行う工程と、を備える。第1樹脂材料が熱分解性樹脂の場合には、脱脂処理により、第1樹脂材料が除去される。同様に、第1樹脂材料が熱分解性樹脂の場合には脱脂処理により第2樹脂材料が除去される。また、バインダーが添加されている場合には、当該バインダーも脱脂処理により除去される。この脱脂処理は、加熱処理とは独立して行われてもよい。この熱処理工程における加熱時間は例えば20分間~120分間とされ、加熱温度は例えば600℃~900℃とされる。
【0052】
次に、上記のようにして得られた磁性基体10の両端部に導体ペーストを塗布することにより、外部電極21及び外部電極22を形成する。外部電極21及び外部電極22は、磁性基体内に設けられているコイル導体の一方の端部とそれぞれ電気的に接続するように設けられる。外部電極は、めっき層を含んでもよい。このめっき層は2層以上であってもよい。2層のめっき層は、Niめっき層と、当該Niめっき層の外側に設けられるSnめっき層と、を含んでもよい。以上により、インダクタ101が得られる。
【0053】
磁性基体10の断面の模式図が図5に示されている。図5は、磁性基体10の断面の領域Aを走査型電子顕微鏡(SEM)で2000倍の倍率にて撮影したSEM写真を模式的に示す図である。走査型電子顕微鏡としては、日本電子(株)製のJSM-6700Fが用いられ得る。領域Aは、磁性基体10内の任意の領域である。
【0054】
図示されているように、磁性基体10は、複数の第1磁性金属粒子2aと、複数の第2金属磁性粒子2bと、を含む。複数の第2金属磁性粒子2bの平均粒径は、複数の第1磁性金属粒子2aの平均粒径よりも小さい。磁性基体10に含まれる複合磁性粒子1に含まれる金属磁性粒子(例えば、第1金属磁性粒子2a及び第2金属磁性粒子2b)の平均粒径は、当該磁性基体をその厚さ方向(T方向)に沿って切断して断面を露出させ、当該断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により1000倍~3000倍の倍率で撮影した写真に基づいて粒度分布を求め、この粒度分布に基づいて定められる。例えば、SEM写真に基づいて求められた粒度分布の50%値を軟磁性金属粒子の平均粒径とすることができる。磁性基体10内の第1金属磁性粒子2aの平均粒径は10~30μmであり、第2金属磁性粒子2bの平均粒径は0.05~10μmである。第2金属磁性粒子2bは、SEM写真に基づいて粒度分布を作成した際に、2つ以上のピークを有していてもよい。つまり、第2金属磁性粒子2bは、互いに平均粒径の異なる2種類の金属磁性粒子を混合した混合粒子であってもよい。この混合粒子のうち、より小さな平均粒径を有する金属磁性粒子の粒径は、例えば、0.05~5μmとされ、その比表面積比(BET値)は50m2/g以下とされる。複合磁性材料1において、走査型電子顕微鏡(SEM)による10000~40000倍程度のSEM写真において、第1樹脂部3及び第2樹脂部4は、明度の違いに基づいて、第1金属磁性粒子2a及び第2金属磁性粒子2bから区別することができる。
【0055】
第1磁性金属粒子2aの各々は、第1樹脂部3で被覆されている。第2金属磁性粒子2bの各々は、第2樹脂部4で被覆されている。第2金属磁性粒子2bの各々は、第1樹脂部3及び第2樹脂部4の少なくとも一方を介して第1金属磁性粒子2aに結着している。第1金属磁性粒子2aとその周囲にある複数の第2金属磁性粒子2bとの間には、第1樹脂部3及び第2樹脂部4のうちの少なくとも一方が存在する。図5においては、第1金属磁性粒子2aとその周囲にある複数の第2金属磁性粒子2bとの間に第1樹脂部3及び第2樹脂部4が両方とも存在しているが、磁性基体10の作成時に(特に圧縮成形プロセスにおいて)第1樹脂部3及び第2樹脂部4が流動することにより、1金属磁性粒子2aとその周囲にある複数の第2金属磁性粒子2bとの間に第1樹脂部3及び第2樹脂部4の一方のみが存在することもある。図5においては、第1樹脂部3と第2樹脂部4との境界が明瞭に示されているが、実際のSEM像では、第1樹脂部3と第2樹脂部4との境界の一部は明瞭に視認できないこともある。
【0056】
図示のように、隣接する第1金属磁性粒子2aの間には、少なくとも一つの第2金属磁性粒子2bが存在することが望ましい。圧縮成型プロセスにおいて第1金属磁性粒子2a及び第2金属磁性粒子2bが流動すると、一部の隣接する第1金属磁性粒子2aの組において、その隣接する第1金属磁性粒子2aの間に第2金属磁性粒子2bが存在しないことがある。本発明の一実施形態においては、隣接する50組の第1金属磁性粒子2aの組を観察した時、隣接する第1金属磁性粒子2aの間に第2金属磁性粒子2bが存在しない組の割合は15%以下とされる。SEM写真を用いた断面観察において、隣接する第1金属磁性粒子2aの幾何学的な重心同士を結ぶ直線上に第2金属磁性粒子2bが存在しない場合に、隣接する第1金属磁性粒子2aの間に第2金属磁性粒子2bが存在しないと判定することができる。図5においては、視野のほぼ中央に配置されている第1金属磁性粒子2aの重心と、その第1金属磁性粒子2aに隣接する6つの第1金属磁性粒子2aのそれぞれの重心とを結ぶ仮想線が破線で示されている。この6本の仮想線の各々の上に第2金属磁性粒子2bが配置されているので、これらの隣接する第1金属磁性粒子2aの6つの組のそれぞれの間には第2金属磁性粒子2bが存在すると判定される。
【0057】
第1樹脂材料が熱分解性樹脂の場合には、製造工程において第1樹脂材料が除去されることがある。この場合、磁性基体10には、第1樹脂部3が含まれないことがある。同様に、第2樹脂材料が熱分解性樹脂の場合には、製造工程において第2樹脂材料が除去されることがある。この場合、磁性基体10には、第2樹脂部4が含まれないことがある。よって、磁性基体10のSEM写真には第1樹脂部3及び第2樹脂部4が含まれないことがある。
【0058】
磁性基体10の断面において、第1金属磁性粒子2a及び第2金属磁性粒子2bの分布を観察するのに適した走査型電子顕微鏡の撮影倍率は、1000倍~3000倍の間である。磁性基体10の断面を観察する場合、走査型電子顕微鏡の撮影倍率は、1000倍~3000倍の間で適宜調整され得る。
【0059】
領域Aのうち、第1金属磁性粒子2a、第2金属磁性粒子2b、第1樹脂部3、及び第2樹脂部4以外に空隙を含んでもよい。この空隙には、第1樹脂部3及び第2樹脂部4以外の樹脂が充填されてもよい。空隙に充填される樹脂は、例えば絶縁性に優れた熱硬化性の樹脂である。磁性基体10用の熱硬化性樹脂として、ベンゾシクロブテン(BCB)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂(PI)、ポリフェニレンエーテルオキサイド樹脂(PPO)、ビスマレイミドトリアジンシアネートエステル樹脂、フマレート樹脂、ポリブタジエン樹脂、又はポリビニルベンジルエーテル樹脂が用いられ得る。
【0060】
続いて、図6及び図7を参照して、本発明の別の実施形態によるコイル部品について説明する。図示のように、本発明の一実施形態におけるコイル部品210は、磁性基体220と、磁性基体220内に設けられたコイル導体225と、磁性基体220内に設けられた絶縁板250と、4つの外部電極221~224と、を備える。
【0061】
本発明の一実施形態において、磁性基体220は、上記の複合磁性粒子1を含んでいる。磁性基体220は、第1の主面220a、第2の主面220b、第1の端面220c、第2の端面220d、第1の側面220e、及び第2の側面220fを有する。磁性基体220は、これらの6つの面によってその外面が画定される。
【0062】
絶縁板250は、絶縁材料から板状に形成された部材である。絶縁板250用の絶縁材料は磁性材料であってもよい。絶縁板250用の磁性材料は、例えば、結合材及び磁性粒子を含む複合磁性材料である。本発明の一実施形態において、絶縁板250は、磁性基体220よりも大きな抵抗値を有するように構成される。これにより、絶縁板250を薄くしても、コイル導体225aとコイル導体225bとの間の電気的絶縁を確保することができる。
【0063】
図示の実施形態において、コイル導体225は、絶縁板250の上面に形成されたコイル導体225aと、当該絶縁板250の下面に形成されたコイル導体225bと、を含む。コイル導体225aは、絶縁板250の上面に所定のパターンを有するように形成され、コイル導体25bは、絶縁板50の下面に所定のパターンを有するように形成される。コイル導体225a及びコイル導体225bの表面には絶縁膜が設けられてもよい。図示のコイル部品210においては、このコイル導体225aとコイル導体225bとが磁気結合する。コイル部品210においては、コイル導体25bを省略することができる。この場合、コイル部品210は、絶縁板250の上面に設けられたコイル導体225aを備えるが、絶縁板250の下面にはコイル導体は設けられない。コイル導体225は、様々な形状をとりえる。コイル導体225は、例えば、平面視において、スパイラル形状、ミアンダ形状、直線形状、又はこれらを組み合わせた形状を有する。
【0064】
コイル導体225aの一方の端部には、引出導体226aが設けられ、他方の端部には、引出導体227aが設けられている。コイル導体226aを介して外部電極221と電気的に接続され、引出導体227aを介して外部電極222と電気的に接続される。同様に、コイル導体225bの一方の端部には、引出導体226bが設けられ、他方の端部には、引出導体227bが設けられている。コイル導体225bの内部導体228bは、この引出導体226bを介して外部電極223と電気的に接続され、引出導体227bを介して外部電極224と電気的に接続される。
【0065】
図示の実施形態において、外部電極221は、コイル導体225aの一端と電気的に接続され、外部電極222は、当該コイル導体225aの他端と電気的に接続されている。外部電極223は、コイル導体225bの一端と電気的に接続され、外部電極224は、当該コイル導体225bの他端と電気的に接続されている。外部電極221及び外部電極223は、磁性基体220の第1の端面220cに設けられる。外部電極222及び外部電極224は、磁性基体220の第2の端面220dに設けられる。各外部電極は、図示のように、磁性基体220の上面220a及び下面220cまで延伸していてもよい。外部電極221~224の形状及び設置場所は適宜変更され得る。
【0066】
次に、インダクタ201の製造方法の例を説明する。まず磁性材料から板状に形成された絶縁板を準備する。次に、当該絶縁板の上面及び下面にフォトレジストを塗布し、続いて、当該絶縁板の上面及び下面の各々に導体パターンを露光・転写し、現像処理を行う。これにより、当該絶縁板の上面及び下面の各々に、コイル導体を形成するための開口パターンを有するレジストが形成される。絶縁板の上面に形成される導体パターンは、例えば、上述したコイル導体225aに対応する導体パターンであり、絶縁板の下面に形成される導体パターンは、例えば、上述したコイル導体225bに対応する導体パターンである。コイル構造体225a及びコイル導体225bは、2つ以上の層に形成された2つ以上のコイルパターンを例えばビア導体により電気的に互いに接続することで作成されてもよい。
【0067】
次に、めっき処理により、当該開口パターンの各々を導電性金属で充填する。続いて、エッチングにより上記絶縁板からレジストを除去することで、当該絶縁板の上面及び下面の各々にコイル導体が形成される。
【0068】
次に、上記コイル導体が形成された絶縁板の両面に、磁性基体を形成する。この磁性基体は、前述した磁性基体220に対応する。磁性基体を形成するために、まずは磁性体シートが作製される。磁性体シートは、複合磁性粒子1の粒子群とバインダーとを加熱しながら混練して混合樹脂組成物を作成し、この混合樹脂組成物をシート形状の成形金型に入れて冷却することで作成される。バインダーとして、例えば、第2樹脂材料よりも小さな平均分子量を有する樹脂を用いることができる。バインダーの添加は省略してもよい。バインダーを用いない場合には、第2樹脂材料がバインダーとして機能する。第2樹脂材料よりも分子量の小さな樹脂をバインダーとして用いることで混合樹脂組成物の流動性が高くなり、混合樹脂組成物を成形金型に充填しやすくなる。次に、このように作成された一組の磁性体シートの間に上記のコイル導体を配置して加熱しながら加圧することで積層体を作成する。次に、この積層体に対して、樹脂の硬化温度、例えば150℃から200℃にて30分から4時間熱処理を行う。これにより、内部にコイル導体を有する磁性基体が得られる。この磁性基体の外表面の所定の位置に外部電極を設けることでインダクタ201が作成される。
【0069】
続いて、図8を参照して、本発明の別の実施形態によるコイル部品301について説明する。本発明の一実施形態によるインダクタ301は、巻線型のインダクタである。図示のように、コイル部品301は、ドラムコア310と、巻線320と、第1の外部電極331aと、第2の外部電極332aと、を備えている。ドラムコア310は、巻芯311と、当該巻芯311の一方の端部に設けられた直方体形状のフランジ312aと、当該巻芯311の他方の端部に設けられた直方体形状のフランジ312bとを有する。巻芯311には、巻線320が巻回されている。巻線320は、導電性に優れた金属材料から成る導線の周囲を絶縁被膜で被覆することにより構成される。第1の外部電極331aは、フランジ312aの下面に沿って設けられており、第2の外部電極332aは、フランジ312bの下面に沿って設けられている。
【0070】
ドラムコア310は、上記の複合磁性粒子1を含む磁性材料から成る。例えば、ドラムコア310は、上述した複合磁性粒子1を潤滑剤と混合し、この混合材料を成形金型のキャビティに充填してプレス成形することにより圧粉体を作製し、この圧粉体を燒結することにより作製される。ドラムコア310は、上述した磁性材料又は非磁性材料の粉末を樹脂、ガラス、又は絶縁性酸化物(例えば、Ni-Znフェライトやシリカ)と混合し、この混合材料を成形して硬化又は焼結することによっても作製できる。インダクタ301は、ドラムコア310の周りに巻線320を巻回し、この巻線320の一端を第1の外部電極331aに接続し、他端を第2の外部電極332aに接続することで作製される。
【0071】
次に、上記の実施形態による作用効果について説明する。上記の一実施形態においては、第1金属磁性粒子2a及び第2金属磁性粒子2bを含む複合磁性粒子1を作製する過程で、プライマーとして機能しやすい低分子量の第1樹脂材料から成る第1樹脂部3が設けられた第1金属磁性粒子2aに第2金属磁性粒子2bを結着させている。これにより、低分子量の第1樹脂材料のプライマー作用による第2金属磁性粒子2b同士の凝集を抑制することができる。また、分子量が大きな第2樹脂材料から成る第2樹脂部4により第2金属磁性粒子2bを第1金属磁性粒子2aに積極的に結着させるので、第2金属磁性粒子2b同士の凝集を抑制することができる。
【0072】
上記の一実施形態では、第1樹脂部3が設けられた第1金属磁性粒子2aと第2樹脂材料を含む第2樹脂溶液とを混合容器内で攪拌した後に当該混合容器に第2金属磁性粒子2bを投入することにより、第2金属磁性粒子2bは、高分子量の第2樹脂材料を含む樹脂溶液中で混合される。これにより、第2金属磁性粒子2b同士の凝集を防止することができる。
【0073】
上記の一実施形態では、第1樹脂部3が設けられた第1金属磁性粒子2aと第2金属磁性粒子2bとを混合容器内で混合して混合粒子を生成し、この混合粒子と第2樹脂溶液とが混合される。この混合粒子を生成する工程で、第2金属磁性粒子2bの第1金属磁性粒子2aへの結着が促される。よって、第2金属磁性粒子2b同士での凝集を抑制することができる。
【0074】
上記の一実施形態においては、第1金属磁性粒子2aの周囲に第2金属磁性粒子2bを存在させることで、磁性基体における金属磁性粒子の充填率を高くできる。また、第1金属磁性粒子2aの周囲に第2金属磁性粒子2bが存在することで、磁性基体10内における第1金属磁性粒子2aの偏在を抑制することができる。つまり、磁性基体10内に第1金属磁性粒子2aを均等に分散させることができる。コイル導体25に流れる直流電流が増えると、磁性基体内を通過する磁束の複数の磁路のうち粒径が大きな第1金属磁性粒子2aの存在比率が高い磁路から順に磁気飽和が起こる。第1金属磁性粒子2aの偏在を抑制することにより、局所的な磁気飽和の発生を抑制することができる。
【0075】
上記の実施形態におけるインダクタ101は、磁性基体10における金属磁性粒子の充填率を高くすることができるので、その分だけ磁性基体10内の空隙を少なくすることができる。特に、上記の実施形態における磁性基体10の吸水率を2.0%未満とすることができ、1.0%未満とすることもできる。
【0076】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0077】
1 複合磁性粒子
2a 第1金属磁性粒子
2b 第2金属磁性粒子
3 第1樹脂部
4 第2樹脂部
10、220、310 磁性基体
25、225 コイル導体
101、210、301 コイル部品
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8