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特許7403966薄膜エッチング液組成物、及びそれを利用した金属パターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】薄膜エッチング液組成物、及びそれを利用した金属パターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20231218BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20231218BHJP
   H01L 29/49 20060101ALI20231218BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20231218BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20231218BHJP
   C23F 1/30 20060101ALI20231218BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20231218BHJP
   G02F 1/1343 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
H01L21/308 F
H01L29/58 G
H01L29/50 M
H01L21/28 E
C23F1/30
G02F1/1368
G02F1/1343
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019065751
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2019212897
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】10-2018-0062134
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】金 鎭 亨
(72)【発明者】
【氏名】鄭 周 煥
(72)【発明者】
【氏名】金 眞 淑
(72)【発明者】
【氏名】金 學 ▲チョル▼
(72)【発明者】
【氏名】李 秉 洙
(72)【発明者】
【氏名】金 昌 樹
(72)【発明者】
【氏名】鄭 正 植
(72)【発明者】
【氏名】金 童 基
(72)【発明者】
【氏名】金 相 泰
(72)【発明者】
【氏名】南 基 龍
(72)【発明者】
【氏名】朴 英 哲
(72)【発明者】
【氏名】沈 慶 輔
(72)【発明者】
【氏名】林 大 成
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲サン▼ ▲フン▼
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-167581(JP,A)
【文献】特開2017-092439(JP,A)
【文献】特開2009-144180(JP,A)
【文献】特開2009-007634(JP,A)
【文献】特開2004-238656(JP,A)
【文献】特開2014-078700(JP,A)
【文献】特開2011-017054(JP,A)
【文献】特開2007-049120(JP,A)
【文献】特表2005-530885(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0295626(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
H01L 29/423
H01L 29/417
H01L 21/28
C23F 1/30
G02F 1/1368
G02F 1/1343
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀を含む薄膜をエッチングする薄膜エッチング液組成物であって、
組成物の総重量に対して、
リン酸(A)43ないし46重量%と、
硝酸(B)5ないし8重量%と、
酢酸(C)10ないし17重量%と、
硝酸鉄(D)1ないし3重量%と、
リン酸塩(E)0.7ないし1.5重量%と、
脱イオン水(F)残量と、を含む薄膜エッチング液組成物。
【請求項2】
前記薄膜エッチング液組成物は、銀または銀合金からなる単層膜、または前記単層膜とインジウム含有金属酸化物膜とから構成される積層膜をエッチングするためのものであることを特徴とする請求項1に記載の薄膜エッチング液組成物。
【請求項3】
前記インジウム含有金属酸化物膜は、酸化スズインジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)、酸化スズ亜鉛インジウム(ITZO)及び酸化ガリウム亜鉛インジウム(IGZO)から選択される1種以上を含むことを特徴とする請求項2に記載の薄膜エッチング液組成物。
【請求項4】
前記銀合金は、銀、及びネオジム(Nd)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、タングステン(W)、プロトアクチニウム(Pa)及びチタン(Ti)から選択される1種以上を含むことを特徴とする請求項2に記載の薄膜エッチング液組成物。
【請求項5】
前記硝酸鉄は、硝酸第一鉄及び硝酸第二鉄のうちから選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜エッチング液組成物。
【請求項6】
前記リン酸塩は、第一リン酸ナトリウム(NaH2PO4)、第二リン酸ナトリウム(Na2HPO4)、第三リン酸ナトリウム(Na3PO4)、第一リン酸カリウム(KH2PO4)、第二リン酸カリウム(K2HPO4)、第1リン酸アンモニウム((NH4)H2PO4)、第二リン酸アンモニウム((NH42HPO4)及び第三リン酸アンモニウム((NH43PO4)から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜エッチング液組成物。
【請求項7】
40℃で、前記薄膜エッチング液組成物の粘度(cP)は、5.0ないし5.5であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜エッチング液組成物。
【請求項8】
前記薄膜エッチング液組成物は、組成物の総重量に対して、リン酸(A)45重量%と、硝酸(B)6.5重量%と、酢酸(C)15重量%と、硝酸鉄(D)2重量%と、リン酸塩(E)1重量%と、脱イオン水(F)残量と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の薄膜エッチング液組成物 。
【請求項9】
銀を含む導電膜が配置された基板を準備する段階と、
前記導電膜をエッチングしてパターンを形成する段階と、を含み、
前記パターンを形成する段階は、
組成物総重量に対して、リン酸(A)43ないし46重量%と、硝酸(B)5ないし8重量%と、酢酸(C)10ないし17重量%と、硝酸鉄(D)1ないし3重量%と、リン酸塩(E)0.7ないし1.5重量%と、脱イオン水(F)残量と、を含む薄膜エッチング液組成物でエッチングする段階を含む導電膜パターン形成方法。
【請求項10】
(a)基板上に半導体層を形成する段階と、
(b)前記半導体層の上方にゲート電極を形成する段階と、
(c)前記ゲート電極の上方に、ソース電極及びドレイン電極を形成する段階と、
(d)前記ソース電極または前記ドレイン電極と電気的に連結され、銀を含む薄膜を形成する段階と、
(e)前記薄膜をエッチングし、画素電極を形成する段階と、を含み、
前記(e)段階において、前記画素電極を形成する段階は、
組成物の総重量に対して、リン酸(A)43ないし46重量%と、硝酸(B)5ないし8重量%と、酢酸(C)10ないし17重量%と、硝酸鉄(D)1ないし3重量%と、リン酸塩(E)0.7ないし1.5重量%と、脱イオン水(F)残量と、を含む薄膜エッチング液組成物でエッチングする段階を含むディスプレイ装置用アレイ基板の製造方法。
【請求項11】
前記ゲート電極、前記ソース電極及び前記ドレイン電極のうちの少なくとも一つは、アルミニウム(Al)を含むことを特徴とする請求項10に記載のディスプレイ装置用アレイ基板の製造方法。
【請求項12】
(f)前記基板の一方の縁の近傍にパッド部を形成する段階をさらに含み、前記パッド部は、アルミニウム(Al)を含むことを特徴とする請求項11に記載のディスプレイ装置用アレイ基板の製造方法。
【請求項13】
前記(f)段階は、前記(b)段階または前記(c)段階と同時に遂行されることを特徴とする請求項12に記載のディスプレイ装置用アレイ基板の製造方法。
【請求項14】
前記(e)段階を遂行する間、前記パッド部は、前記薄膜エッチング液組成物に露出されることを特徴とする請求項12に記載のディスプレイ装置用アレイ基板の製造方法。
【請求項15】
銀を含む薄膜をエッチングする薄膜エッチング液組成物であり、
前記薄膜エッチング組成物は、
リン酸43ないし46重量%と、
硝酸5ないし8重量%と、
酢酸10ないし17重量%と、
硝酸第二鉄(Fe(NO)1ないし3重量%と、
第一リン酸ナトリウム(NaHPO)0.7ないし1.5重量%と、
脱イオン水残量と、を含む薄膜エッチング液組成物。
【請求項16】
銀または銀合金からなる単層膜、または前記単層膜を含む積層膜をエッチングするための薄膜エッチング液組成物であって、
前記薄膜エッチング液組成物は、
リン酸43ないし46重量%と、
硝酸5ないし8重量%と、
酢酸10ないし17重量%と、
硝酸第二鉄(Fe(NO)1ないし3重量%と、
第一リン酸ナトリウム(NaHPO)0.7ないし1.5重量%と、
脱イオン水残量と、を含む薄膜エッチング液組成物。
【請求項17】
40℃で、前記薄膜エッチング液組成物の粘度(cP)は、5.0ないし5.5であることを特徴とする請求項15または16に記載の薄膜エッチング液組成物。
【請求項18】
前記積層膜は、前記単層膜とインジウム含有金属酸化物膜とから構成されことを特徴とする請求項16に記載の薄膜エッチング液組成物。
【請求項19】
前記インジウム含有金属酸化物膜は、酸化スズインジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)、酸化スズ亜鉛インジウム(ITZO)及び酸化ガリウム亜鉛インジウム(IGZO)から選択される1種以上を含むことを特徴とする請求18に記載の薄膜エッチング液組成物。
【請求項20】
銀合金は、銀、及びネオジム(Nd)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、タングステン(W)、プロトアクチニウム(Pa)及びチタン(Ti)から選択される1種以上を含むことを特徴とする請求項18に記載の薄膜エッチング液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜エッチング液組成物、及びそれを利用した金属パターン形成方法に係り、さらに詳細には、エッチングされた金属の再吸着を防止し、薄膜を均一にエッチングすることができる薄膜エッチング液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化時代に入るにつれ、大量情報を処理して表示するディスプレイ分野が急速に発展しており、それに応じて、多様なフラットパネル(平板)ディスプレイが開発されて脚光を浴びている。
【0003】
そのようなフラットパネルディスプレイ装置の例としては、液晶ディスプレイ装置(LCD:liquid crystal display device)、プラズマディスプレイ装置(PDP:plasma display panel device)、電界放出ディスプレイ装置(FED:field emission display device)、有機発光素子(OLED:organic light emitting diodes)などを挙げることができる。
【0004】
特に、該OLEDは、素子自体が光を発光することから、低電圧で駆動されうるので、携帯機器などの小型ディスプレイ市場に、いち早く適用されているだけではなく、ディスプレイの大画面化へのトレンドにしたがい、大型TV(television)などへの商用化を目前にしている状況にある。ディスプレイが大画面化されることで、配線などが長くなり、配線抵抗が増大するようになることに伴い、抵抗を低くし、表示装置の大型化及び高解像度の実現を可能にする方法が要求されている。
【0005】
抵抗増大による信号遅延といった問題を解決するためには、前記配線について最大限低い比抵抗を有する材料によって形成する必要がある。そのような努力の一環として、他の金属に比べて低比抵抗、高輝度、及び高伝導度を有している、銀(Ag:比抵抗約1.59μΩcm)の膜、銀合金の膜、または、銀膜や銀合金膜を含んだ積層膜を、カラーフィル
タの電極、配線及び反射膜などに適用することが検討されている。すなわち、銀を含む膜を適用することで、フラットパネルディスプレイ装置の大型化、高解像度及び低電力消費などを実現するための努力が傾けられている。そして、そのような材料に適用するためのエッチング液が要求されている。
【0006】
銀含有薄膜が基板に蒸着された場合、それをパターニングまたはエッチングするために、従来のエッチング液を使用する場合には、エッチングが不良であって、残渣が生じたり、工程時間が長くなったりするというような問題が引き起こされてしまうことがありうる。また、それとは逆に、銀が過度にエッチングされたり、不均一にエッチングされたりして、配線の浮き上がり現象や剥離現象が生じ、配線の側面プロファイルが不良になってしまうことがありうる。従って、そのような問題点を解決することができる、新たなエッチング液の開発が要求されているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-167581(KR10-2016-0108944A)
【文献】特開2017-092440(KR10-2017-0054908A)
【文献】特開2004-176115
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述のような問題点を含めて多くの問題点を解決するためのものであり、エッチングされた金属の再吸着を防止し、薄膜を均一にエッチングすることができる薄膜エッチング液組成物を提供することを目的とする。しかし、そのような課題は、例示的なものであり、それによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、組成物の総重量に対して、リン酸(A)43ないし46重量%と、硝酸(B)5ないし8重量%と、酢酸(C)10ないし17重量%と、硝酸鉄(D)1ないし3重量%と、リン酸塩(E)0.7ないし1.5重量%と、残量の脱イオン水(F)と、を含む薄膜エッチング液組成物が含まれる。
【0010】
本実施例によれば、前記薄膜エッチング液組成物は、銀(Ag)または銀合金からなる単層膜、または前記単層膜と、インジウム含有金属酸化物膜とから構成される積層膜をエッチングすることができる。
【0011】
本実施例によれば、前記インジウム含有金属酸化物膜は、酸化スズインジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)、酸化スズ亜鉛インジウム(ITZO)及び酸化ガリウム亜鉛インジウム(IGZO)から選択される1種以上を含んでもよい。
【0012】
本実施例によれば、前記銀合金は、銀、及びネオジム(Nd)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、タングステン(W)、プロトアクチニウム(Pa)及びチタン(Ti)から選択される1種以上を含んでもよい。
【0013】
本実施例によれば、前記硝酸鉄(Iron nitrate)は、硝酸第一鉄(硝酸鉄(II); ferrous nitrate; Fe(NO3)2)及び硝酸第二鉄(硝酸鉄(III) ; ferric nitrate; Fe(NO3)3)のうちから選択される1種以上でありうる。
【0014】
本実施例によれば、前記リン酸塩は、第一リン酸ナトリウム(NaH2PO4)、第二リン酸ナトリウム(Na2HPO4)、第三リン酸ナトリウム(Na3PO4)、第一リン酸カリウム(KH2PO4)、第二リン酸カリウム(K2HPO4)、第一リン酸アンモニウム((NH4)H2PO4)、第二リン酸アンモニウム((NH42HPO4)及び第三リン酸アンモニウム((NH43PO4)から選択される1種以上でありうる。
【0015】
本実施例によれば、40℃で、前記薄膜エッチング液組成物の粘度(cP)は、5.0ないし5.5でありうる。
【0016】
本実施例によれば、前記薄膜エッチング液組成物は、組成物総重量に対して、リン酸(A)45重量%と、硝酸(B)6.5重量%と、酢酸(C)15重量%と、硝酸鉄(D)2重量%と、リン酸塩(E)1重量%と、脱イオン水(F)残量と、を含んでもよい。
【0017】
本発明の他の観点によれば、銀を含む導電膜が配置された基板を準備する段階と、前記導電膜をエッチングしてパターンを形成する段階と、を含み、前記パターンを形成する段階は、組成物総重量に対して、リン酸(A)43ないし46重量%と、硝酸(B)5ないし8重量%と、酢酸(C)10ないし17重量%と、硝酸鉄(D)1ないし3重量%と、リン酸塩(E)0.7ないし1.5重量%と、脱イオン水(F)残量と、を含む薄膜エッチング液組成物でエッチングする段階を含んでもよい。
【0018】
本発明の他の観点によれば、(a)基板上に半導体層を形成する段階と、(b)前記半導体層上部にゲート電極を形成する段階と、(c)前記ゲート電極上部に、ソース電極及びドレイン電極を形成する段階と、(d)前記ソース電極または前記ドレイン電極と電気的に連結され、銀を含む薄膜を形成する段階と、(e)前記薄膜をエッチングし、画素電極を形成する段階と、を含み、前記(e)段階において、前記画素電極を形成する段階は、組成物総重量に対して、リン酸(A)43ないし46重量%と、硝酸(B)5ないし8重量%と、酢酸(C)10ないし17重量%と、硝酸鉄(D)1ないし3重量%と、リン酸塩(E)0.7ないし1.5重量%と、脱イオン水(F)残量と、を含む薄膜エッチング液組成物でエッチングする段階を含んでもよい。
【0019】
本実施例によれば、前記ゲート電極、前記ソース電極及び前記ドレイン電極のうち少なくとも一つは、アルミニウム(Al)を含んでもよい。
【0020】
本実施例によれば、(f)前記基板の一側にパッド部を形成する段階をさらに含み、前記パッド部は、アルミニウム(Al)を含んでもよい。
【0021】
本実施例によれば、前記(f)段階は、前記(b)段階または前記(c)段階と同時にも遂行される。
【0022】
本実施例によれば、前記(e)段階を遂行する間、前記パッド部は、前記薄膜エッチング液組成物に露出されうる。
【0023】
本発明のさらに他の観点によれば、銀を含む薄膜をエッチングする薄膜エッチング液組成物として、リン酸、硝酸、酢酸、硝酸第二鉄(Fe(NO33)及び第一リン酸ナトリウム(NaH2PO4)を含んでもよい。
【0024】
本実施例によれば、前記組成物は、前記リン酸約43ないし46重量%と、前記硝酸約5ないし8重量%と、前記酢酸約10ないし17重量%と、前記硝酸第二鉄(Fe(NO33)約1ないし3重量%と、前記第一リン酸ナトリウム(NaH2PO4)約0.7ないし1.5重量%と、脱イオン水の残量と、を含んでもよい。
【0025】
本実施例によれば、40℃で、前記薄膜エッチング液組成物の粘度(cP)は、5.0ないし5.5でありうる。
【0026】
本実施例によれば、前記薄膜は、銀または銀合金からなる単一膜、または前記単一膜とインジウム含有酸化膜とから構成される多層膜をエッチングすることができる。
【0027】
本実施例によれば、前記インジウム含有酸化膜は、酸化スズインジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)、酸化スズ亜鉛インジウム(ITZO)及び酸化ガリウム亜鉛インジウム(IGZO)から選択される1種以上を含んでもよい。
【0028】
本実施例によれば、銀合金は、銀、及びネオジム(Nd)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、タングステン(W)、プロトアクチニウム(Pa)及びチタン(Ti)から選択される1種以上を含んでもよい。
【0029】
前述のところ以外の他の側面、特徴、利点は、以下の発明を実施するための具体的な内容、特許請求範囲、及び図面から明確になるであろう。
【0030】
そのような一般的であって具体的な側面が、システム、方法、コンピュータプログラム、またはいかなるシステム、方法、コンピュータプログラムの組み合わせを使用して実施されいりる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一実施例によれば、エッチングされた金属の再吸着を防止し、薄膜を均一にエッチングすることができる薄膜エッチング液組成物を具現する。ここで、そのような効果によって本発明の範囲が限定されるものではないということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施例による薄膜エッチング液組成物を利用してエッチングされた銀薄膜を概略的に図示する断面図である。
図2】本発明の一実施例による薄膜エッチング液組成物を利用して銀薄膜をエッチングする過程を概略的に図示する概念図である。
図3】従来の薄膜エッチング液組成物を利用して銀薄膜をエッチングする過程を概略的に図示する概念図である。
図4】従来の薄膜エッチング液組成物を利用して銀薄膜をエッチングする過程を概略的に図示する概念図である。
図5】本発明の一実施例による薄膜エッチング液組成物を利用して薄膜をエッチングする概念図である。
図6】本発明の一実施例によるディスプレイ装置用アレイ基板の一部を概略的に図示する断面図である。
図7図7はエッチング液でエッチングした後、銀の残渣発生有無を測定したSEM(scanning electron microscope)写真である。
図8】エッチング液でエッチングした後、上部ITOチップ有無を測定したSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、多様な変換を加えることができ、さまざまな実施例を有することができるが、特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明にて詳細に説明する。本発明の効果、特徴、及びそれらを達成する方法は、図面と共に詳細に説明してある実施例を参照すれば、明確になるであろう。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、多様な形態に具現されうる。
【0034】
以下、添付された図面を参照し、本発明の実施例について詳細に説明するが、図面を参照して説明するとき、同一であるか、あるいは対応する構成要素には、同一の図面符号を付し、それについての重複説明は、省略する。
【0035】
以下の実施例において、第1、第2のような用語は、限定的な意味ではなく、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的に使用された。また、単数の表現は、文脈上明白に複数の場合を除外することを意味しない限り、複数の表現を含む。
【0036】
一方、「含む」または「有する」といった用語は、明細書上に記載された特徴または構成要素が存在するということを意味するものであり、1つ以上の他の特徴または構成要素が付加される可能性を、あらかじめ排除するものではない。また、膜、領域、構成要素などの部分が、他の部分の「上」または「上方」にあるとするとき、他の部分の「真上」または「すぐ上」にある場合だけではなく、その中間に、他の膜、領域、構成要素などが介在されている場合も含む。
【0037】
図面においては、説明の便宜のために、構成要素の大きさが誇張されていたり縮小されていたりする。例えば、図面に示された各構成の大きさ及び厚みは、説明の便宜のために任意に示されており、本発明は、必ずしも図示されたところに限定されるものではない。
【0038】
x軸、y軸及びz軸は、直交座標系上の3軸に限定されるものではなく、それを含む広義にも解釈される。例えば、x軸、y軸及びz軸は、互いに直交してもよく、互いに直交せずに、互いに異なる方向を指してもよい。
【0039】
ある実施例が異なって具現可能である場合、特定の工程の順序は、説明される順序と異なるように遂行されうる。例えば、連続して説明される2つの工程が実質的に同時に遂行されることや、説明される順序と逆の順序に進められることもありうる。
【0040】
図1は、本発明の一実施例による薄膜エッチング液組成物を利用して銀薄膜をエッチングする様子を模式的に示す断面図による概念図であり、図2は、本発明の一実施例による薄膜エッチング液組成物を利用して銀薄膜をエッチングする過程を概略的に図示する、一連の断面図(a)~(f)による概念図である。
【0041】
図1を参照すれば、基板S上にて、画素部PX及びパッド部PDの上に、それぞれ、画素電極10及びパッド電極20をパターニングにより形成することができる。基板Sは、耐久性及び耐熱性を備えた多様な材料が活用され、例えば、金属材、プラスチック材、ガラス材などが使用される。そのように、画素電極10及びパッド電極20を形成するためには、基板S上に導電層を形成し、該導電層を、エッチングを通じてパターニングすることによって形成することができる。
【0042】
具体的には、銀含有薄膜10’をパターニングする過程について図2を通して説明するならば、まず図2(a)に図示されているように、銀含有薄膜10’をパターニングする部分に、PR(photoresist)層30を形成することができる。本実施例において、PR層30が配置された部分は、残留パターンになって、PR層30が配置されていない部分は、除去される。また本実施例において、銀含有薄膜10’は、第1導電層11/第2導電層12/第3導電層13の積層構造を有することができ、例えば、第1導電層11/第2導電層12/第3導電層13は、ITO(indium tin oxide)/Ag/ITOでありうる。そのような銀含有薄膜10’は、例えば、有機発光装置の画素電極でありうるが、本発明は、必ずしもそれに限定されるものではない。
【0043】
PR層30を形成した後、図2(b)ないし図2(f)に図示されているように、第1導電層11及び第2導電層12を順次にエッチングすることができる。一実施例として、銀含有薄膜10’が、ITO/Ag/ITO積層構造として形成された場合、硝酸(HNO3)及びリン酸(H3PO4)を使用し、ITO層である第1導電層11を[反応式1]の化学反応を通じてエッチングすることができる。
【0044】
[反応式1]
In23+6HNO3→2In(NO33+6H+
SnO2+4HNO3→Sn(NO34+4H+
In23+2H3PO4→2In(PO4)+6H+
3SnO2+4H3PO4→Sn3(PO44+12H+
【0045】
その後、図2(c)ないし図2(f)に図示されているように、Ag層である第2導電層12をエッチングする過程を経ることができる。まず、図2(c)のように、第2導電層12は、[反応式2]の化学反応を通じて、銀イオン(Ag+)に酸化された後、銀イオン(Ag+)は、図2(d)及び図2(e)のように、[反応式3]の化学反応を通じてエッチングされる。
【0046】
[反応式2]
2Ag+2HNO3→2Ag++2NO2+H2
【0047】
[反応式3]
Ag++H2PO4 -→AgH2PO4
【0048】
その後、図2(e)のように、ITO層である第3導電層13を、前記[反応式1]の化学反応を通じてエッチングすることができる。
【0049】
再び図1を参照すれば、画素部PX上には、画素電極10が位置することができ、画素電極10は、前述の図2の過程を通じてパターニングされたものでありうる。
【0050】
一実施例において、画素電極10は、銀(Ag)を含んでもよく、パッド電極20は、アルミニウム(Al)を含んでもよいが、本発明は、必ずしもそれらに限定されるものではない。本実施例においては、画素電極10は、第1導電層11/第2導電層12/第3導電層13の積層形態を有することができる。また、パッド電極20は、第1導電層21/第2導電層22/第3導電層23の積層形態を有することができる。一実施例において、第1導電層11と第3導電層13は、同一の物質を含んでもよく、第1導電層21と第3導電層23は、同一の物質を含んでもよい。
【0051】
具体的には、画素電極10は、(半)透明電極または反射型電極として形成されうる。(半)透明電極として形成されるときには、例えば、ITO、IZO、ZnO、In23、IGO(indium gallium oxide)またはAZO(aluminum doped zinc oxide)によって形成されうる。反射型電極として形成されるときには、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、及びそれらの化合物などによって形成された反射膜と、ITO、IZO、ZnO、In23、IGOまたはAZOによって形成された層と、を有することができる。ここで、本発明は、それらに限定されるものではなく、多様な材質によって形成され、その構造も、単層構造または積層構造でありうるというように、多様な変形が可能であるということは言うまでもない。一方、具体的には、パッド電極20は、例えば、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀、マグネシウム(Mg)、金(Au)、ニッケル(Ni)、ネオジム(Nd)、イリジウム(Ir)、クロム(Cr)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タングステン(W)、銅(Cu)のうちの1つ以上の物質によって、単層構造または積層構造をなすように形成される。
【0052】
図1に図示されているように、画素電極10をエッチングする間じゅう、パッド電極20が外部に露出されうる。ここで、画素電極10の上部には、PR層30が形成されているのでありうる。従来には、画素電極10をエッチングする間に、露出されたパッド電極20により、画素電極10に含まれていた金属イオンが還元されて、画素電極10上またはパッド電極20上に再吸着される場合が生じた。一実施例において、画素電極10がITO/Ag/ITOの積層構造で形成され、パッド電極20がTi/Al/Tiの積層構造で形成されている場合、画素電極10をエッチングする間、発生した銀イオン(Ag+)の一部は、アルミニウム(Al)がエッチング(イオンへの酸化及び溶解)される際に発生した電子を受けて、銀に還元される。その際、還元された銀粒子が、パッド電極20上または画素電極10上に吸着される。そのような銀粒子は、後続工程において、洗浄工程などを進める間、画素電極10内に転移され、銀粒子による、画素部PXの暗点不良、またはパッド部PDの接続不良といった問題点を引き起こしうるのであった。
【0053】
これに対し、本発明の一実施例による薄膜エッチング液組成物においては、銀イオン(Ag+)の還元を防止し、銀粒子の再吸着を基本的に防止することができる。
【0054】
本発明の一実施例による薄膜エッチング液組成物は、組成物の総重量に対して、リン酸(A)43ないし46重量%、硝酸(B)5ないし8重量%、酢酸(C)10ないし17重量%、硝酸鉄(D)1ないし3重量%、リン酸塩(E)0.7ないし1.5重量%、及び脱イオン水(F)残量を含む。
【0055】
(A)リン酸
本発明の薄膜エッチング液組成物に含まれるリン酸(H3PO4)は、主解離剤として使用される成分であり、一例として、該リン酸は、硝酸によって酸化された金属酸化物(例えば、インジウム酸化膜/銀/インジウム酸化膜)を解離させる役割を行う。
【0056】
前記リン酸は、本発明の薄膜エッチング液組成物総重量に対して、43ないし46重量%含まれうる。前記リン酸が43重量%未満で含まれる場合には、銀のエッチング速度の低下と、銀残渣の発生による不良とを引き起こしうる。一方、46重量%を超えて含まれる場合には、インジウム酸化膜のエッチング速度の低下を引き起こしうるのであり、それとは逆に、銀のエッチング速度は、過度に速くなってしまいうる。従って、それを、銀または銀合金(silver alloy)とインジウム酸化膜との積層膜に適用する場合、上下部のインジウム酸化膜でのチップ(tip)の発生、またはオーバーエッチング(over etch)の現象の発生により、後工程に問題を誘発しうることから、望ましくない。
【0057】
(B)硝酸
本発明の薄膜エッチング液組成物に含まれる硝酸(HNO3)は、主酸化剤として使用される成分であり、一例としては、インジウム酸化膜/銀/インジウム酸化膜といった銀含有薄膜を酸化させ、湿式エッチングを行う役割を行う。
【0058】
前記硝酸(B)は、本発明の薄膜エッチング液組成物総重量に対して、5ないし8重量%含まれうる。前記硝酸の含量が5重量%未満である場合、銀、銀合金またはインジウム酸化膜についてのエッチング速度の低下が発生し、それにより、基板内のエッチング均一性(uniformity)が不良になるので、汚点(stain)が生じる。前記硝酸の含量が8重量%を超える場合には、上下部のインジウム酸化膜のエッチング速度が加速化され、オーバーエッチング(過剰エッチング)の発生により、後続工程に問題が生じうる。
【0059】
(C)酢酸
本発明の薄膜エッチング液組成物に含まれる酢酸(CH3COOH)は、補助酸化剤として使用される成分であり、一例として、インジウム酸化膜/銀/インジウム酸化膜などの銀含有薄膜を酸化させ、湿式エッチングを行う役割を行う。
【0060】
前記酢酸は、本発明の薄膜エッチング液組成物の総重量に対して、10ないし17重量%含まれうる。前記酢酸の含量が10重量%未満である場合には、基板内におけるエッチング速度の不均一による汚点の発生という問題点がある。含量が17重量%を超える場合には、泡発生が引き起こされ、そのような泡が基板内に存在する場合、完全なエッチングがなされずに、後続工程に問題を引き起こしうる。
【0061】
(D)硝酸鉄
本発明の薄膜エッチング液組成物に含まれる硝酸鉄は、エッチング後に発生する銀イオン(Ag+)、またはコロイド形態の銀が、所望しない位置に再吸着され、暗点不良、または配線間の不必要な連結を作り、電気的ショート(短絡)が生じるということを防止する役割を行う。例えば、本実施例による硝酸鉄は、硝酸第1鉄及び硝酸第2鉄のうちから選択される1種以上の物質が使用される。
【0062】
(E)リン酸塩
本発明の薄膜エッチング液組成物に含まれるリン酸塩は、湿式エッチング時、薄膜のパターンに対する臨界寸法バイアス(CD bias;Critical Dimension bias、微小寸法の偏差)を低下させ、エッチングが均一に進められるようにエッチング速度を調節する。例えば、該リン酸塩は、第一リン酸ナトリウム(NaH2PO4;リン酸二水素ナトリウム)、第二リン酸ナトリウム(Na2HPO4;リン酸水素二ナトリウム)、第三リン酸ナトリウム(Na3PO4;リン酸三ナトリウム)、第一リン酸カリウム(KH2PO4;リン酸二水素カリウム)、第二リン酸カリウム(K2HPO4;リン酸水素二カリウム)、第一リン酸アンモニウム((NH4)H2PO4;リン酸水素二アンモニウム)、第二リン酸アンモニウム((NH42HPO4リン酸水素二アンモニウム)及び第三リン酸アンモニウム((NH43PO4リン酸三アンモニウム)から選択される1種以上の物質が使用される。
【0063】
(F)脱イオン水
本発明の薄膜エッチング液組成物に含まれる脱イオン水は、特別に限定されるものではなく、半導体工程用としての、比抵抗値が18MΩ/cm以上であるものを使用することが
望ましい。そのような脱イオン水は、本発明の薄膜エッチング液組成物のトータル100重量%に対する残量として含まれうる。したがって、例えば、約20重量%以上または約25重量%以上であって、約40重量%以下または約35重量%以下の量で含まれうる。
【0064】
本発明の薄膜エッチング液組成物は、前述の成分以外に、エッチング調節剤、界面活性剤、金属イオン封鎖剤、腐食防止剤、pH調節剤、及びそれらに限られない他の添加剤から選択される1種以上を追加して含んでもよい。前記添加剤は、本発明の範囲内において、本発明の効果をさらに良好なものにさせるために、当該分野で一般的に使用する添加剤から選択して使用することができる。また、本発明の薄膜エッチング液組成物を構成する成分は、半導体工程用の純度を有することが望ましい。
【0065】
本実施例による薄膜エッチング液組成物は、銀、銀合金からなる単層膜、または前記単層膜と、インジウム含有金属酸化物膜とから構成される積層膜をエッチングすることができる。本実施例において、インジウム含有金属酸化物膜は、酸化スズインジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)、酸化スズ亜鉛インジウム(ITZO)及び酸化ガリウム亜鉛インジウム(IGZO)から選択される1種以上の物質によって形成されうる。また、銀合金は、銀、及びネオジム(Nd)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、タングステン(W)、プロトアクチニウム(Pa)及びチタン(Ti)から選択される1種以上を含んでもよい。
【0066】
図3を参照すれば、前述のように、基板S上において、画素電極10をエッチングしてパターニングする間じゅう、パッド電極20が外部に露出される。例えば、画素電極10が銀を含み、パッド電極20がアルミニウム(Al)を含む場合、以下の式のような化学反応が起こる。
【0067】
Agエッチング時: 2Ag+2HNO3→2Ag++2NO2+H2
Ag++H2PO4 -→AgH2PO4
Alエッチング時: Al+3AgH2PO4→3Ag+Al(H2PO43
【0068】
すなわち、銀を含む画素電極10が、エッチング液によって、例えば硝酸によってエッチングされて銀イオン(Ag+)になり、銀イオン(Ag+)は、画素電極10がエッチングされる間じゅう、外部に露出されている、パッド電極20に含まれたアルミニウム(Al)によって、還元されて銀粒子として析出される。析出された銀粒子は、パッド電極20の側部及び上部に吸着された後、後続の工程としての洗浄工程などを進める間に、噴射される洗浄液(C)により、パッド電極20から離れ出て、画素電極10内に転移される。そのように、画素電極10に転移された銀粒子により、画素部PXの暗点不良またはパッド部PDの接続不良などの問題点が引き起こされる。
【0069】
これに対し、本発明の一実施例による薄膜エッチング液組成物においては、図5に図示されているように、硝酸鉄が銀イオン(Ag+)イオンと配位結合することで、銀粒子に還元されることを原則的に防止することができる。本実施例においては、該硝酸鉄としては、硝酸第二鉄(Fe(NO33)を利用することができるが、本発明は、必ずしもそれに限定されるものではない。また、本発明の一実施例による薄膜エッチング液組成物においては、該硝酸鉄の重量に対するリン酸の含量を低くすることで、パッド電極20のダメージを低減させられる。
【0070】
一方、図4を参照すれば、従来には、薄膜エッチング液組成物を利用するエッチング装置50が、地面Gからおよそ5゜ほどの傾斜θを有し、エッチングの進行時、エッチング液ESが下部に流れ落ちることで下部の液膜が厚くなり、エッチング装置の下端部50Bに位置した基板Sにおいて、薄膜のディッピング(dipping)という現象が生じる。この結果、エッチング装置の上端部50Aにおいては、銀含有薄膜10’の側面にて、銀粒子(P)の凝集現象により、エッチングが減速化されるのに対し、エッチング装置の下端部50Bに位置した基板S上の薄膜は、ディッピング現象により、エッチングの加速化が起こり、エッチング量増加によるオーバーエッチングが起こるという問題点があった。そのようなエッチング液ESの不均衡は、形成される薄膜のパターンについての、エッチング装置50の上部及び下部での臨界寸法(CD)の偏差を誘発する原因になった。
【0071】
そのために、本発明の一実施例においては、エッチング液の流れを円滑にさせるために、粘度が最も高いリン酸の含量を低くした薄膜エッチング液組成物を提供する。すなわち、該リン酸は、銀の主たる解離剤であり、リン酸含量を減少させたときには、銀薄膜に非エッチング(unetch)が起こり、エッチング液としての機能が脆弱になるという問題がある。従って、リン酸を減らすためには、リン酸を代替することができる新規成分の確保が必要である。そのために、本発明の一実施例による薄膜エッチング液組成物においては、リン酸代替の解離剤として硝酸鉄を含有させることで、リン酸の含量を低減させることができる。リン酸の含量が少なくなった本実施例の薄膜エッチング液組成物においては、高粘度のリン酸の含量が低くなることにより、エッチング液自体の粘度を改善させる効果がある。すなわち、本実施例による薄膜エッチング液組成物は、40℃において、前記薄膜エッチング液組成物の粘度(cP)は、5.0ないし5.5でありうる。そのような特性の変化は、エッチング液のフローを円滑にさせ、前述のエッチング装置の下端部50Bに位置した基板Sでの薄膜ディッピングの現象を改善させることができる。
【0072】
以上では、薄膜エッチング液組成物についてのみ主に説明したが、本発明は、それらに限定されるものではない。例えば、そのような薄膜エッチング液組成物を利用し、金属パターンを形成する方法、及びディスプレイ装置用アレイ基板の製造方法も、本発明の範囲に属するものである。
【0073】
本発明の他の一実施例による金属パターン形成方法は、基板上に銀を含む導電膜を塗布する段階、及び導電膜をエッチングしてパターンを形成する段階を含む。ここで、該パターンを形成する段階は、前述の実施例の薄膜エッチング液組成物を利用することができる。
【0074】
なお、本発明のさらに他の一実施例によるディスプレイ装置用アレイ基板の製造方法は、基板上に半導体層を形成する段階(a)、半導体層の上方にゲート電極を形成する段階(b)、ゲート電極の上方に、ソース電極及びドレイン電極を形成する段階(c)、ソース電極またはドレイン電極と電気的に連結された、銀を含む薄膜を形成する段階(d)、及び前記薄膜をエッチングして、画素電極を形成する段階(e)を含む。ここで、該画素電極を形成する段階(e)にて、画素電極10は、前述の実施例による薄膜エッチング液組成物でもってエッチングすることで形成することができる。
【0075】
図6は、本発明の一実施例によるディスプレイ装置用アレイ基板の一部を、概略的に図示する断面図である。
【0076】
図6を参照すれば、ディスプレイ装置用アレイ基板の各種構成要素は、基板50上に形成される。基板50は、透明な素材、例えば、ガラス材、プラスチック材または金属材によって形成されうる。
【0077】
基板50上には、バッファ層(51)、ゲート絶縁膜53、層間絶縁膜55、保護膜58といった共通層が、基板50の全面に形成されうるのであり、チャネル領域52a、ソースコンタクト領域52b及びドレインコンタクト領域52cを含むパターニングされた半導体層52が形成され、そのようなパターニングされた半導体層52と共に、薄膜トランジスタの構成要素になるゲート電極54、ソース電極56及びドレイン電極57が形成されうる。
【0078】
また、そのような薄膜トランジスタを覆い、その上面がほぼ平坦な平坦化膜59が基板50の全面に形成されうる。そのような平坦化膜59上には、パターニングされた画素電極61、基板50の全面にほぼ対応する対向電極63、そして画素電極61と対向電極63との間に介在され、発光層を含む多層構造の中間層62を含む有機発光素子(OLED)が位置するように形成される。ここで、中間層62は、図示されたところと異なるように、一部の層は、基板50の全面にほぼ対応する共通層でありうるのであり、他の一部の層は、画素電極61に対応するようにパターニングされたパターン層であるうるということは言うまでもない。画素電極61は、ビアホールを介して、薄膜トランジスタに電気的に連結される。ここで、画素電極61のエッジを覆い、各画素領域を区画形成する開口を有する画素区画形成膜60が基板50の全面にほぼ対応するように、平坦化膜59上に形成されうるということは言うまでもない。
【0079】
本実施例において、半導体層は、酸化物半導体層またはポリシリコン層でありうるのであり、ゲート電極またはソース電極、及びドレイン電極のうちの少なくとも一つは、アルミニウム(Al)を含んでもよい。
【0080】
本実施例において、基板の一側に、パッド部を形成する段階(f)をさらに含み、パッド電極は、アルミニウム(Al)を含んでもよい。従って、パッド部を形成する段階(f)は、ゲート電極を形成する段階(b)、またはソース電極及びドレイン電極を形成する段階(c)と同時に遂行されてもよい。
【0081】
なお、本実施例において、パッド部を形成する段階(f)を遂行する間、該パッド電極は、外部に露出される。
【0082】
図7は、エッチング液でエッチングした後、銀の残渣発生有無を測定したSEM(scanning electron microscope)写真であり、図8は、エッチング液でエッチングした後、上部ITOチップ有無を測定したSEM写真である。
【0083】
図7を参照すれば、図7(a)は、従来のエッチング液でエッチングした電極であり、図7(b)は、本発明の一実施例による薄膜エッチング液組成物でエッチングした電極である。図7に図示されているように、従来のエッチング液でエッチングした電極は、銀の残渣が発生し、電極に吸着されたことが分かる。そのように再吸着された銀粒子は、画素内暗点などの不良を引き起こす。一方、本発明の一実施例による薄膜エッチング液組成物でエッチングした電極は、銀残渣が発生していないということが分かる。本実施例による薄膜エッチング液組成物は、硝酸鉄により、銀イオン(Ag+)の還元を防止して、銀の析出を基本的に防止することができる。
【0084】
図8を参照すれば、図8(a)は、従来のエッチング液でエッチングした電極であり、図8(b)は、本発明の一実施例による薄膜エッチング液組成物でエッチングした電極である。図8では、ITO/Ag/ITOの積層構造に形成された電極を例として挙げている。図8に図示されているように、従来のエッチング液でエッチングした電極は、上部ITOにチップ不良が生じる一方、本実施例による薄膜エッチング液組成物でエッチングした電極は、上部ITOにチップ不良が生じないということが分かる。
【0085】
なお、下記の表1は、本発明の一実施例による薄膜エッチング液組成物の評価結果を示した表であり、表2は、比較例による薄膜エッチング液組成物の評価結果を示した表である。
【0086】
【表1】
【0087】
表1には、本発明による実施例1ないし9の薄膜エッチング液組成物を開示している。各実施例の組成は、組成物の総重量に対して、リン酸43ないし46重量%、硝酸5ないし8重量%、酢酸10ないし17重量%、硝酸鉄1ないし3重量%、リン酸塩0.7ないし1.5重量%、及び、脱イオン水(残量)を含んで製造された。本実施例においては、硝酸鉄として、硝酸第二鉄(Fe(NO33;硝酸鉄(III);Iron(III) nitrate)を使用し、リン酸塩として、第一リン酸ナトリウム(りん酸二水素ナトリウム;Sodium phosphate monobasic)を使用した。
【0088】
本発明による実施例1ないし9の薄膜エッチング液組成物を評価した結果を、表1に併せて示している。この表1を参照すれば知られるように、銀エッチング量、銀再吸着、上部ITOチップのそれぞれについて、優秀な評価結果を示した。そのうちでも、特に、組成物の総重量に対して、リン酸45重量%、硝酸6.5重量%、酢酸15重量%、硝酸第二鉄2重量%、及び第一リン酸ナトリウム1重量%を含む組成比を有する薄膜エッチング液組成物が、銀エッチング量、銀再吸着及び上部ITOチップの全ての測定項目において、特に優秀な評価結果を示した。
【0089】
【表2】
【0090】
なお、表2には、比較例1ないし10の薄膜エッチング液組成物を開示している。各比較例の組成は、リン酸、硝酸、酢酸、硝酸鉄及びリン酸塩のうち少なくとも1つ以上の成分について、本発明の一実施例による薄膜エッチング液組成物の組成範囲を外れるように製造されたものである。比較例1ないし10の薄膜エッチング液組成物を評価した結果をも、表2に併せて示している。表2を参照すれば知られるように、銀エッチング量、銀再吸着、及び上部ITOチップのそれぞれについて、良好または不良な評価を示した。
【0091】
本発明の一実施例による薄膜エッチング液組成物においては、硝酸鉄(Iron nitrate)が、銀イオン(Ag+)と配位結合して銀粒子に還元されることを原則的に防止することができる。本実施例においては、該硝酸鉄は、硝酸第二鉄(Fe(NO33;硝酸鉄(III))を利用することができるが、本発明は、必ずしもそれに限定されるものではない。また、本発明の一実施例による薄膜エッチング液組成物においては、硝酸鉄の重量に対するリン酸の含量を低くし、パッド電極のダメージを低減させる。
【0092】
また、本発明の一実施例による薄膜エッチング液組成物においては、リン酸の作用を代替することのできる解離剤として、硝酸鉄を、比較的少量ながらも確実に含有させることで、リン酸の含量を低減させることができる。リン酸の含量が少なくなった本実施例の薄膜エッチング液組成物においては、高粘度のリン酸含量が少なくなることにより、エッチング液自体の粘度を改善する効果がある。すなわち、本実施例による薄膜エッチング液組成物であると、40℃での粘度(cP)は、5.0ないし5.5でありうる。このような粘度の低減により、エッチング液のフローを円滑にさせ、前述の下端ディッピング現象を改善させることができる。
【0093】
本発明は、図面に図示された実施例を参照して説明したが、それらは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野において当業者であるならば、それらから多様な変形、及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解するであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決められるものである。
【0094】
好ましい一実施形態においては、下記のとおりである。
【0095】
特には有機発光表示装置にて、下記A1~A3を前提とする。
【0096】
A1 画素電極を、反射率及び導電度に優れる銀またはその合金の層を主体とする導電膜により形成する。
特には、銀またはその合金による金属層の上下または上方に、これより薄いITOのキャッピング層を積層させることで、耐食性などを向上させる。
【0097】
A2 基板の周縁部の接続パッドを、アルミニウムまたはその合金の層を主体とする導電膜により形成する。
信号線、駆動電圧線、発光制御線などに用いる配線を周縁部に引き出すことで、外部機器との接続のための接続パッドを形成する。これらの配線及び接続パッドは、導電度及び延性に優れるアルミニウムを主体とする導電層により形成される。
特には、アルミニウムまたはその合金による金属層の上下または上方に、これより薄いチタン(Ti)のキャッピング層を積層させることで、耐食性などを向上させる。
【0098】
A3 画素電極を形成するパターニングのためには、銀を含む導電膜のパターンを、高い精度を確保してエッチングを行なうべく、リン酸、硝酸及び酢酸を含むエッチング液を用いる(特許文献1~3)。
銀を主体とする薄膜、特には、銀、及びITOなどの導電性金属酸化物からなる積層膜を高精度でパターニングするためには、このようなエッチング液を用いる必要がある。
【0099】
本件発明者らは、次のような問題点を新たに発見した。
【0100】
銀を含む導電層をパターニングする際、アルミニウムを含む層がエッチング液に露出していると、銀イオンとして溶出したものが、銀粒子として析出して基板上に付着することがある。そのような場合、暗点(dark spot)や、配線の短絡(short circuit)の原因となりうる。
【0101】
そこで、本件発明者は、特には、下記B1~B2のとおりとすることで、上記問題点を解決可能であることを見出した。
【0102】
B1 エッチング液に、硝酸鉄(Iron nitrate)、特には、硝酸第一鉄(硝酸鉄(II))を含有させる。
これにより、図5に模式的に示すように、銀イオンの還元を抑制または防止する。
【0103】
B2 特に好ましくは、下記のとおりの非常に狭い特定の組成、及び、含量範囲(重量%)を有する水溶液を用いる。
リン酸42~45%、硝酸5~8%、酢酸10~17%、硝酸第一鉄(硝酸鉄(II))1~3%、第一リン酸ナトリウム(りん酸二水素ナトリウム)1%。
【0104】
なお、上記の説明、特には実施例に関して、下記C1~C5の説明を補足する。
【0105】
C1 粘度の測定
粘度の測定は、例えば、二重円筒型のブルックフィールド式粘度計(英弘精機株式会社の精密回転粘度計RST-CC)、及び、その低粘度用の二重円筒スピンドル(CCT-DG)を用いて、温度を正確に40℃に制御しつつ行なうことができる。
【0106】
C2 エッチングの条件
エッチングは、本願図4に示す形式の湿式エッチング装置を用い、傾斜角度5゜、チャンバー内及びエッチング液の温度を40℃に制御して行なうことができる。本願のエッチング液を用いる際の、適した温度条件は、例えば30~45℃、特には35~42℃である。
【0107】
C3 Agエッチング量の評価
図8に示すような、画素電極の縁の近傍を拡大した走査電子顕微鏡(SEM)写真から、画素電極を構成する積層膜中における銀層のサイドエッチングの量を、10箇所で測定し、その平均を求めた。0.1μm未満を非常に優秀(◎)、0.1μmと0.2μmとの間である場合に優秀(○)、0.2μmと0.3μmとの間である場合に良好(△)であるとした。
【0108】
C4 Ag再吸着の評価
図7に示すように、接続パッド部を拡大した走査電子顕微鏡(SEM)写真から、それぞれの寸法が約150μm×900μmである6個の接続パッド上の銀粒子の総数を数えた。
【0109】
C5 上部ITOチップの評価
図8に示すような、画素電極の縁の近傍を拡大した走査電子顕微鏡(SEM)写真から、上部ITO膜からのバリ状の突起(チップ)が、有意に存在するかどうかを目視判定した。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の、薄膜エッチング液組成物、及びそれを利用した金属パターン形成方法は、例えば、ディスプレイ関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0111】
10 画素電極
10’ 銀含有薄膜
11,21 第1導電層
12,22 第2導電層
13,23 第3導電層
20 パッド電極
30 PR層
S 基板
PD パッド部
PX 画素部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8