(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ブレーキ液圧制御装置
(51)【国際特許分類】
B60T 8/34 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
B60T8/34
(21)【出願番号】P 2019083956
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】岡田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】中野 良二
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-008675(JP,A)
【文献】特開2008-168837(JP,A)
【文献】特開2008-062848(JP,A)
【文献】国際公開第2018/109919(WO,A1)
【文献】特開2015-221600(JP,A)
【文献】特開2005-294481(JP,A)
【文献】特開2012-111351(JP,A)
【文献】特開2014-017335(JP,A)
【文献】特開2019-048594(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0250998(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ液の流路が形成されている基体(61)と、
前記流路に設けられているポンプ装置(31)の駆動源であるモータ(40)と、
前記モータ(40)を制御する制御装置(50)の制御基板(51)と、
前記モータ(40)を前記制御基板(51)に電気的に接続する端子(76)が立設されている
樹脂製のハウジング(63)と
前記基体(61)に立設され、前記流路を開閉する液圧調整バルブ(36)を駆動する駆動コイル(37)と、
を備えた車両用のブレーキ液圧制御装置(60)であって、
前記ハウジング(63)に立設されている前記端子(76)は、前記制御基板(51)に接続され、
前記ハウジング(63)には、貫通孔(74)が形成され、
前記基体(61)には、雌ネジ(62)が形成され、
当該ブレーキ液圧制御装置(60)は、前記ハウジング(63)の前記貫通孔(74)に挿入されて、前記基体(61)の前記雌ネジ(62)にねじ込まれ、前記ハウジング(63)を前記基体(61)に固定するボルト(90)を備え、
前記ハウジング(63)は、前記駆動コイル(37)の頂部の少なくとも一部を覆う壁部(73)を含み、
前記貫通孔(74)は、前記壁部(73)に形成されており、
前記ボルト(90)の頭部(90b)と前記基体(61)とが前記ハウジング(63)を挟持して前記基体(61)と前記ハウジング(63)とにより囲われる空間を形成し、当該空間内に前記モータ(40)及び前記駆動コイル(37)が収納され、
前記ボルト(90)によって前記ハウジング(63)が前記基体(61)に固定されている状態において、
前記ボルト(90)は、前記ハウジングの壁部(73)を前記駆動コイル(37)に向かって押圧して当該壁部(73)を弾性変形させ、前記駆動コイル(37)は、前記壁部(73)によって、前記基体(61)に向かって押圧されており、
前記制御基板(51)は、前記ボルト(90)の頭部(90b)と対向する位置に放熱部(53)を有し、
前記ボルト(90)の前記頭部(90b)が前記放熱部(53)に直接または緩衝材(95)を介して接して、前記制御基板(51)で発生する熱が前記放熱部(53)から前記ボルト(90)の前記頭部(90b)に伝達される構成である
ブレーキ液圧制御装置(60)。
【請求項2】
前記制御基板(51)の前記放熱部(53)と前記ボルト(90)の前記頭部(90b)とによって挟持された熱伝導性を有する緩衝材(95)を備え、
前記制御基板(51)で発生する熱が前記放熱部(53)から前記緩衝材(95)を介して前記ボルト(90)の前記頭部(90b)に伝達される構成である
請求項1に記載のブレーキ液圧制御装置(60)。
【請求項3】
前記制御基板(51)の前記放熱部(53)と前記ボルト(90)の前記頭部(90b)とが接触している
請求項1に記載のブレーキ液圧制御装置(60)。
【請求項4】
前記制御基板(51)の前記放熱部(53)は、金属製配線の表面にソルダーレジストが設けられていない部分である
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のブレーキ液圧制御装置(60)。
【請求項5】
前記制御基板(51)の前記放熱部(53)はグランド部(56)である
請求項4に記載のブレーキ液圧制御装置(60)。
【請求項6】
前記制御基板(51)は、前記放熱部(53)が設けられている面の反対面に実装された電子部品(52)を備え、
前記電子部品(52)は、前記放熱部(53)と対向する位置に実装されている
請求項4又は請求項5に記載のブレーキ液圧制御装置(60)。
【請求項7】
前記制御基板(51)は、前記ボルト(90)の前記頭部(90b)と対向する位置に実装された第1電子部品(52a)を備え、
前記第1電子部品(52a)の表面が前記放熱部(53)となっている
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のブレーキ液圧制御装置(60)。
【請求項8】
前記制御基板(51)は、前記ボルト(90)の前記頭部(90b)と対向する側の面に複数の電子部品(52)を備え、
これら複数の前記電子部品(52)のうちで発熱量が最も大きい前記電子部品(52)が、前記第1電子部品(52a)となっている
請求項7に記載のブレーキ液圧制御装置(60)。
【請求項9】
前記駆動コイル(37)は、前記壁部(73)に形成されている突起(75)によって、前記基体(61)に向かって押圧されている
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載のブレーキ液圧制御装置(60)。
【請求項10】
前記駆動コイル(37)を複数備え、
2つの前記駆動コイル(37)が1つの前記壁部(73)によって前記基体(61)に向かって押圧されている
請求項
1~請求項9のいずれか一項に記載のブレーキ液圧制御装置(60)。
【請求項11】
前記ボルト(90)は、1つの前記壁部(73)によって前記基体(61)に向かって押圧されている2つの前記駆動コイル(37)と、前記モータ(40)と、の間に配置されている
請求項10に記載のブレーキ液圧制御装置(60)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ブレーキシステムをアンチロックブレーキ動作させるためのブレーキ液圧制御装置が知られている。このブレーキ液圧制御装置は、車両の搭乗者がブレーキレバー等の入力部を操作している状態において、ブレーキ液回路内のブレーキ液の圧力を増減させて、車輪に発生する制動力を調整する。このようなブレーキ液圧制御装置のなかには、ブレーキ液回路の一部を構成する流路、ブレーキ液回路内のブレーキ液の増圧を行うポンプ装置、及び該ポンプ装置を制御する制御装置等をユニット化したものがある。
【0003】
具体的には、ユニット化されたブレーキ液圧制御装置は、ブレーキ液の流路が形成されている基体と、ブレーキ液の流路に設けられているポンプ装置を駆動するモータと、モータを制御する制御装置の制御基板と、制御基板を収納するハウジングと、を備えている。また、制御基板は、表面に銅等で形成された金属製配線と、該金属製配線に電気的に接続するように表面に実装された電子部品とを備えている。そして、該金属製配線及び電子部品等によって電子回路が構成されている。
【0004】
このようにユニット化されたブレーキ液圧制御装置においては、該ブレーキ液圧制御装置を安定的に動作させるために、制御基板が発する熱を外部に放出させる必要がある。このため、ユニット化された従来のブレーキ液圧制御装置には、ハウジング内に放熱部材を設け、制御基板の放熱性の向上を図ったものも提案されている(特許文献1参照)。具体的には、ハウジング内に設けられた放熱部材は、一端が制御基板の電子部品に接触し、他端が基体に接触している。すなわち、制御基板の放熱性の向上を図った従来のブレーキ液圧制御装置は、電子部品で発生する熱を放熱部材を介して基体に伝達し、電子部品で発生する熱を該基体から外部に放出する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
制御基板の放熱性の向上を図った従来のブレーキ液圧制御装置は、ハウジング内に、制御基板が発する熱を外部に放出させるための専用部品である放熱部材を設ける必要がある。このため、制御基板の放熱性の向上を図った従来のブレーキ液圧制御装置は、ハウジング内に放熱部材を配置するためのスペースを新たに確保する必要があるため、ブレーキ液圧制御装置が大型化してしまうという課題があった。
【0007】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、制御基板の放熱性を向上させることができ、制御基板の放熱性の向上を図った従来のブレーキ液圧制御装置よりも小型化することが可能な車両用のブレーキ液圧制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るブレーキ液圧制御装置は、ブレーキ液の流路が形成されている基体と、前記流路に設けられているポンプ装置の駆動源であるモータと、前記モータを制御する制御装置の制御基板と、前記モータを前記制御基板に電気的に接続する端子が立設されているハウジングと、を備えた車両用のブレーキ液圧制御装置であって、前記ハウジングに立設されている前記端子は、前記制御基板に接続され、前記ハウジングには、貫通孔が形成され、前記基体には、雌ネジが形成され、当該ブレーキ液圧制御装置は、前記ハウジングの前記貫通孔に挿入されて、前記基体の前記雌ネジにねじ込まれ、前記ハウジングを前記基体に固定するボルトを備え、前記制御基板は、前記ボルトの頭部と対向する位置に放熱部を有し、前記制御基板で発生する熱が前記放熱部から前記ボルトの前記頭部に伝達される構成となっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るブレーキ液圧制御装置は、ハウジングを基体に固定するボルトを用いて、制御基板で発生する熱を基体に伝達する。そして、本発明に係るブレーキ液圧制御装置は、制御基板で発生する熱を該基体から外部に放出する。このため、本発明に係るブレーキ液圧制御装置は、制御基板の放熱性を向上させることができる。また、本発明に係るブレーキ液圧制御装置は、制御基板が発する熱を外部に放出させるための専用部品をハウジング内に配置する必要がないので、制御基板の放熱性の向上を図った従来のブレーキ液圧制御装置よりも小型化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムが搭載される車両の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置のユニット化されている部分を側方から見た一部断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置のユニット化されている部分の一部を
図3の矢印A方向から観察した図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置の制御基板を
図3の矢印B方向から観察した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明について、図面を用いて説明する。
なお、以下では、本発明に係るブレーキ液圧制御装置が自動二輪車に採用される場合を説明するが、本発明に係るブレーキ液圧制御装置は自動二輪車以外の他の車両に採用されてもよい。自動二輪車の他の車両とは、例えば、エンジン及び電動モータのうちの少なくとも1つを駆動源とする自転車、自動三輪車、及び自動四輪車等である。なお、自転車とは、ペダルに付与される踏力によって路上を推進することが可能な乗物全般を意味している。つまり、自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。また、自動二輪車又は自動三輪車は、いわゆるモータサイクルを意味し、モータサイクルには、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。また、以下では、ブレーキ液圧制御装置が2系統の液圧回路を備えている場合を説明しているが、ブレーキ液圧制御装置の液圧回路の数は2系統に限定されない。ブレーキ液圧制御装置は、1系統のみの液圧回路を備えていてもよく、また、3系統以上の液圧回路を備えていてもよい。
【0012】
また、以下で説明する構成、動作等は、一例であり、本発明に係るブレーキ液圧制御装置は、そのような構成、動作等である場合に限定されない。また、各図においては、同一の又は類似する部材又は部分に対して、同一の符号を付している場合又は符号を付すことを省略している場合がある。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0013】
実施の形態.
以下に、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置を備えた車両用のブレーキシステムを説明する。
【0014】
<車両用ブレーキシステムの構成及び動作>
本実施の形態に係るブレーキシステムの構成及び動作について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムが搭載される車両の構成を示す図である。
図2は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの構成を示す図である。
【0015】
図1及び
図2に示されるように、ブレーキシステム10は、例えば自動二輪車である車両100に搭載される。車両100は、胴体1と、胴体1に旋回自在に保持されているハンドル2と、胴体1にハンドル2と共に旋回自在に保持されている前輪3と、胴体1に回動自在に保持されている後輪4と、を含む。
【0016】
ブレーキシステム10は、ブレーキレバー11と、ブレーキ液が充填されている第1液圧回路12と、ブレーキペダル13と、ブレーキ液が充填されている第2液圧回路14と、を含む。ブレーキレバー11は、ハンドル2に設けられており、使用者の手によって操作される。第1液圧回路12は、前輪3と共に回動するロータ3aに、ブレーキレバー11の操作量に応じたブレーキ力を生じさせるものである。ブレーキペダル13は、胴体1の下部に設けられており、使用者の足によって操作される。第2液圧回路14は、後輪4と共に回動するロータ4aに、ブレーキペダル13の操作量に応じたブレーキ力を生じさせるものである。
【0017】
なお、ブレーキレバー11及びブレーキペダル13は、ブレーキの入力部の一例である。例えば、ブレーキレバー11に換わるブレーキの入力部として、胴体1に設けられているブレーキペダル13とは別のブレーキペダルを採用してもよい。また例えば、ブレーキペダル13に換わるブレーキの入力部として、ハンドル2に設けられているブレーキレバー11とは別のブレーキレバーを採用してもよい。また、第1液圧回路12は、後輪4と共に回動するロータ4aに、ブレーキレバー11の操作量、又は、胴体1に設けられているブレーキペダル13とは別のブレーキペダルの操作量に応じたブレーキ力を生じさせるものであってもよい。また、第2液圧回路14は、前輪3と共に回動するロータ3aに、ブレーキペダル13の操作量、又は、ハンドル2に設けられているブレーキレバー11とは別のブレーキレバーの操作量に応じたブレーキ力を生じさせるものであってもよい。
【0018】
第1液圧回路12と第2液圧回路14とは、同じ構成になっている。このため、以下では、代表して、第1液圧回路12の構成を説明する。
第1液圧回路12は、ピストン(図示省略)を内蔵しているマスタシリンダ21と、マスタシリンダ21に付設されているリザーバ22と、胴体1に保持され、ブレーキパッド(図示省略)を有しているブレーキキャリパ23と、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)を動作させるホイールシリンダ24と、を含む。
【0019】
第1液圧回路12において、マスタシリンダ21及びホイールシリンダ24は、マスタシリンダ21と基体61に形成されているマスタシリンダポートMPとの間に接続される液管、基体61に形成されている主流路25、及び、ホイールシリンダ24と基体61に形成されているホイールシリンダポートWPとの間に接続される液管を介して連通する。また、基体61には、副流路26が形成されている。ホイールシリンダ24のブレーキ液は、その副流路26を介して、主流路25の途中部である主流路途中部25aに逃がされる。また、基体61には、増圧流路27が形成されている。マスタシリンダ21のブレーキ液は、その増圧流路27を介して、副流路26の途中部である副流路途中部26aに供給される。
【0020】
主流路25のうちの主流路途中部25aよりもホイールシリンダ24側の領域には、インレットバルブ28が設けられている。インレットバルブ28の開閉動作によって、主流路25におけるインレットバルブ28の設置箇所の流路部分が開閉され、この領域を流通するブレーキ液の流量が制御される。副流路26のうちの副流路途中部26aよりも上流側の領域には、上流側から順に、アウトレットバルブ29と、ブレーキ液を貯留するアキュムレータ30とが設けられている。アウトレットバルブ29の開閉動作によって、副流路26におけるアウトレットバルブ29の設置箇所の流路部分が開閉され、この領域を流通するブレーキ液の流量が制御される。また、副流路26のうちの副流路途中部26aよりも下流側の領域には、ポンプ装置31が設けられている。主流路25のうちの主流路途中部25aよりもマスタシリンダ21側の領域には、切換バルブ32が設けられている。切換バルブ32の開閉動作によって、主流路25における切換バルブ32の設置箇所の流路部分が開閉され、この領域を流通するブレーキ液の流量が制御される。増圧流路27には、増圧バルブ33が設けられている。増圧バルブ33の開閉動作によって、増圧流路27における増圧バルブ33の設置箇所の流路部分が開閉され、増圧流路27を流通するブレーキ液の流量が制御される。なお、以下では、インレットバルブ28、アウトレットバルブ29、切換バルブ32及び増圧バルブ33を区別せずに総称する場合、液圧調整バルブ36と称する。
【0021】
また、主流路25のうちの切換バルブ32よりもマスタシリンダ21側の領域には、マスタシリンダ21のブレーキ液の液圧を検出するためのマスタシリンダ液圧センサ34が設けられている。また、主流路25のうちのインレットバルブ28よりもホイールシリンダ24側の領域には、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を検出するためのホイールシリンダ液圧センサ35が設けられている。
【0022】
つまり、主流路25は、インレットバルブ28を介してマスタシリンダポートMP及びホイールシリンダポートWPを連通させるものである。また、副流路26は、ホイールシリンダ24のブレーキ液を、アウトレットバルブ29を介してマスタシリンダ21に逃がす流路の一部又は全てと定義される流路である。また、増圧流路27は、マスタシリンダ21のブレーキ液を、増圧バルブ33を介して副流路26のうちのポンプ装置31の上流側に供給する流路の一部又は全てと定義される流路である。
【0023】
インレットバルブ28は、例えば、非通電状態から通電状態になると、その設置個所でのブレーキ液の流通を開放から閉鎖に切り替える電磁バルブである。アウトレットバルブ29は、例えば、非通電状態から通電状態になると、その設置個所を介して副流路途中部26aへ向かうブレーキ液の流通を閉鎖から開放に切り替える電磁バルブである。切換バルブ32は、例えば、非通電状態から通電状態になると、その設置個所でのブレーキ液の流通を開放から閉鎖に切り替える電磁バルブである。増圧バルブ33は、例えば、非通電状態から通電状態になると、その設置個所を介して副流路途中部26aへ向かうブレーキ液の流通を閉鎖から開放に切り替える電磁バルブである。
【0024】
第1液圧回路12のポンプ装置31と、第2液圧回路14のポンプ装置31とは、共通のモータ40によって駆動される。
【0025】
基体61と、基体61に設けられている各部材(インレットバルブ28、アウトレットバルブ29、アキュムレータ30、ポンプ装置31、切換バルブ32、増圧バルブ33、マスタシリンダ液圧センサ34、ホイールシリンダ液圧センサ35、モータ40等)と、制御装置(ECU)50と、によって、ブレーキ液圧制御装置60が構成される。
【0026】
制御装置50は、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。また、制御装置50は、基体61に取り付けられていてもよく、また、基体61以外の他の部材に取り付けられていてもよい。また、制御装置50の一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。なお、後述のように、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置60では、制御装置50の少なくとも一部が、制御基板51で構成されている。
【0027】
例えば、通常状態では、制御装置50によって、インレットバルブ28、アウトレットバルブ29、切換バルブ32、及び増圧バルブ33が非通電状態に制御される。その状態で、ブレーキレバー11が操作されると、第1液圧回路12において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が前輪3のロータ3aに押し付けられて、前輪3が制動される。また、ブレーキペダル13が操作されると、第2液圧回路14において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が後輪4のロータ4aに押し付けられて、後輪4が制動される。
【0028】
制御装置50には、各センサ(マスタシリンダ液圧センサ34、ホイールシリンダ液圧センサ35、車輪速センサ、加速度センサ等)の出力が入力される。制御装置50は、その出力に応じて、モータ40、各バルブ等の動作を司る指令を出力して、減圧制御動作、増圧制御動作等を実行する。
【0029】
例えば、制御装置50は、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧の過剰又は過剰の可能性が生じた場合に、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を減少させる動作を実行する。その際、制御装置50は、第1液圧回路12において、インレットバルブ28を通電状態に制御し、アウトレットバルブ29を通電状態に制御し、切換バルブ32を非通電状態に制御し、増圧バルブ33を非通電状態に制御しつつ、モータ40を駆動する。また、制御装置50は、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧の過剰又は過剰の可能性が生じた場合に、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を減少させる動作を実行する。その際、制御装置50は、第2液圧回路14において、インレットバルブ28を通電状態に制御し、アウトレットバルブ29を通電状態に制御し、切換バルブ32を非通電状態に制御し、増圧バルブ33を非通電状態に制御しつつ、モータ40を駆動する。
【0030】
また例えば、制御装置50は、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧の不足又は不足の可能性が生じた場合に、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を増加させる動作を実行する。その際、制御装置50は、第1液圧回路12において、インレットバルブ28を非通電状態に制御し、アウトレットバルブ29を非通電状態に制御し、切換バルブ32を通電状態に制御し、増圧バルブ33を通電状態に制御しつつ、モータ40を駆動する。また、制御装置50は、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧の不足又は不足の可能性が生じた場合に、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を増加させる動作を実行する。その際、制御装置50は、第2液圧回路14において、インレットバルブ28を非通電状態に制御し、アウトレットバルブ29を非通電状態に制御し、切換バルブ32を通電状態に制御し、増圧バルブ33を通電状態に制御しつつ、モータ40を駆動する。
【0031】
つまり、ブレーキ液圧制御装置60は、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を制御して、第1液圧回路12のアンチロックブレーキ動作を実行することが可能である。また、ブレーキ液圧制御装置60は、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を制御して、第2液圧回路14のアンチロックブレーキ動作を実行することが可能である。また、ブレーキ液圧制御装置60は、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を制御して、第1液圧回路12の自動増圧動作を実行することが可能である。また、ブレーキ液圧制御装置60は第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を制御して、第2液圧回路14の自動増圧動作を実行することが可能である。
【0032】
<ブレーキ液圧制御装置の構成>
ブレーキ液圧制御装置60は、基体61、モータ40、及び制御装置50の制御基板51がユニット化されている。なお、本実施の形態においては、基体61に設けられているモータ40以外の各部材(液圧調整バルブ36、マスタシリンダ液圧センサ34、ホイールシリンダ液圧センサ35等)も、基体61及び制御基板51とユニット化している。以下では、ブレーキ液圧制御装置60のユニット化されている部分の構成について説明していく。
【0033】
図3は、本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置のユニット化されている部分を側方から見た一部断面図である。
図4は、本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置のユニット化されている部分の一部を
図3の矢印A方向から観察した図である。
図5は、本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置の制御基板を
図3の矢印B方向から観察した図である。なお、
図4は、
図3に示すブレーキ液圧制御装置60からハウジング63の蓋部80及び制御基板51を取り外したものを、
図3の矢印A方向に観察した図となっている。また、
図4には、制御基板51の放熱部53の位置を、想像線である二点鎖線で示している。また、
図5には、ボルト90の頭部90bの位置を、想像線である二点鎖線で示している。
【0034】
基体61は、例えばアルミニウム等の金属で形成されており、例えば略直方体の形状をしている。この基体61の一面には、後述のハウジング63が取り付けられている。なお、基体61の各面は、段差部を含んでいてもよく、また、曲面部を含んでいてもよい。
【0035】
図3に示すように、基体61には、モータ40が取り付けられている。このモータ40の出力軸41には、モータ40の出力軸41と共に回転する偏心体42が取り付けられている。偏心体42が回転すると、偏心体42の外周面に押し付けられているポンプ装置31のプランジャが往復動することで、ブレーキ液がポンプ装置31の吸込側から吐出側に搬送される。また、モータ40は、出力軸41が設けられている側とは反対側の端部に、端子43を備えている。端子43は、後述のように、ハウジング63の端子76を介して、制御基板51に電気的に接続される。なお、モータ40を取り付ける部材は、基体61に限定されない。例えば、モータ40を後述のハウジング63の本体部70に取り付けてもよい。
【0036】
ハウジング63は、例えば樹脂で形成されており、例えば略直方体の形状をしている。ハウジング63は、制御基板51を収納している。なお、ハウジング63の各面は、段差部を含んでいてもよく、また、曲面部を含んでいてもよい。このハウジング63は、本体部70及び蓋部80を備えている。
【0037】
本体部70は、基体61に取り付けられる部材である。この本体部70は、該本体部70の外周部を構成する例えば額縁形状の枠部71と、該枠部71の内周部の一部を塞ぐ壁部とを備えている。本実施の形態では、本体部70の壁部として、壁部72及び壁部73を備えている。壁部72は、枠部71の対向する2辺を接続するように、枠部71の内周部に設けられている。壁部73は、枠部71における壁部72に接続されていない1辺と壁部72とを接続するように、枠部71の内周部に設けられている。なお、本実施の形態では、本体部70は、2つの壁部72を備えている。
【0038】
本体部70には、ボルト90が挿入される貫通孔74が形成されている。なお、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置60は2つのボルト90を備えているため、本体部70には2つの貫通孔74が形成されている。また、基体61には、ボルト90の数に対応して、2つの雌ネジ62が形成されている。貫通孔74に挿入されたボルト90の雄ネジ部90aが基体61の雌ネジ62にねじ込まれることにより、ボルト90の頭部90bと基体61との間に本体部70が挟持され、基体61にハウジング63の本体部70が固定されている。なお、本実施の形態では、ボルト90として、ボルト91及びボルト92を備えている。そして、これら2本のボルト90で、基体61にハウジング63の本体部70を固定する構成となっている。また、基体61とハウジング63の本体部70とは、接着剤でも固定されている。
【0039】
図3に示すように、基体61とハウジング63とが固定された状態においては、モータ40は、基体61とハウジング63とで囲まれる空間内に配置されている。より詳しくは、モータ40における端子43を除く部分は、基体61と、ハウジング63の本体部70の枠部71と、ハウジング63の本体部70の壁部72及び壁部73とで囲まれる空間内に配置されている。そして、モータ40における端子43が設けられている側の端部は、ハウジング63の本体部70の壁部72と対向している。
【0040】
また、本体部70の壁部72には、モータ40を制御基板51に電気的に接続する端子76が立設されている。この端子76は、開口部76aと、壁部72側から制御基板51側へ向かって延びる先端部76bとを備えている。また、壁部72には、開口部76aと対向する範囲に貫通孔が形成されている。基体61とハウジング63とが固定された際、モータ40の端子43は、壁部72の貫通孔を通って端子76の開口部76aに挿入され、端子76と電気的に接続される。また、端子76が後述のように制御基板51に電気的に接続されることにより、端子76を介して、モータ40は制御基板51に電気的に接続される。すなわち、端子76が後述のように制御基板51に電気的に接続されることにより、端子76を介して、制御基板51からモータ40へ通電可能な状態となる。
【0041】
また、
図3に示すように、基体61と、ハウジング63の本体部70の枠部71と、ハウジング63の本体部70の壁部72及び壁部73とで囲まれる空間内には、少なくとも1つの駆動コイル37が配置されている。駆動コイル37は、基体61に形成された流路を開閉する液圧調整バルブ36を駆動するものである。詳しくは、駆動コイル37への通電によって該駆動コイル37に発生する磁力により、液圧調整バルブ36のプランジャを移動させ、基体61に形成された流路において液圧調整バルブ36が設けられている箇所の流路部分を開閉する。例えば、液圧調整バルブ36がインレットバルブ28の場合、該インレットバルブ28に対応して設けられた駆動コイル37への通電によって該インレットバルブ28のプランジャを移動させ、開状態であった主流路25におけるインレットバルブ28の設置箇所を閉状態とする。
【0042】
駆動コイル37は、基体61に立設されている。また、本実施の形態では、駆動コイル37は、ハウジング63の本体部70を用いて固定されている。具体的には、本体部70の壁部73は、駆動コイル37の頂部の少なくとも一部を覆っている。また、ボルト90が挿入される本体部70の貫通孔74は、壁部73等、ボルト90の雄ネジ部90aを基体61の雌ネジ62にねじ込んだ際に壁部73が弾性変形する位置に形成されている。このため、ボルト90の雄ネジ部90aを基体61の雌ネジ62にねじ込み、基体61にハウジング63の本体部70を固定する際、貫通孔74の形成位置が、ボルト90の頭部90bによって基体61側へ押し込まれる。そして、壁部73は、枠部71との接続箇所が固定端となり、貫通孔74の形成位置に集中荷重がかけられた梁の状態となって、弾性変形する。
【0043】
壁部73における駆動コイル37の頂部と対向する箇所には、枠部71との接続箇所と貫通孔74の形成位置との間となる領域に、突起75が形成されている。このため、ボルト90によって基体61にハウジング63の本体部70が固定されると、壁部73が上述のように弾性変形し、突起75が駆動コイル37の頂部を基体61に向かって押圧する。これにより、駆動コイル37は、壁部73の突起75と基体61の間に挟持され、固定される。ハウジング63の本体部70を用いて駆動コイル37を固定することにより、駆動コイル37を固定するための専用部品が不要となるため、ブレーキ液圧制御装置60の製造コストを低減することができる。なお、本実施の形態では、基体61と駆動コイル37とは、接着剤でも固定されている。
【0044】
また、
図4に示すように、本実施の形態では、ブレーキ液圧制御装置60のユニット化されている部分は、複数の駆動コイル37を備えている。そして、2つの駆動コイル37が、1つの壁部73によって基体61に向かって押圧されている。このように構成することにより、1つの壁部73を弾性変形させることによって複数の駆動コイル37を固定することができるので、ブレーキ液圧制御装置60の製造時間を短縮することができる。したがって、ブレーキ液圧制御装置60の製造コストを低減することができる。
【0045】
また、
図4に示すように、本実施の形態では、ボルト90は、1つの壁部73によって基体61に向かって押圧されている2つの駆動コイル37と、モータ40との間に配置されている。2つの駆動コイル37とモータ40との間は、デッドスペースとなりやすい領域である。本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置60は、このようなデッドスペースとなりやすい領域にボルト90を配置しているので、ブレーキ液圧制御装置60を小型化することができる。
【0046】
制御基板51は、ハウジング63の本体部70の壁部72及び壁部73を基準として、基体61とは反対側に配置されている。制御基板51は、プリント基板であり、表面に銅等で形成された金属製配線と、該金属製配線に電気的に接続するように表面に実装された電子部品52とを備えている。そして、該金属製配線及び電子部品52等によって電子回路が構成されている。また、制御基板51には、貫通孔54が形成されている。貫通孔54には、ハウジング63の本体部70の壁部72に設けられた端子76の先端部76bが挿入される。これにより、端子76が制御基板51の電子回路に電気的に接続される。そして、モータ40と制御基板51の電子回路とが端子76を介して電気的に接続され、制御基板51からモータ40へ通電可能な状態となる。また、制御基板51には、駆動コイル37の端子37aが挿入される貫通孔55が形成されている。制御基板51の貫通孔55に駆動コイル37の端子37aが挿入されることにより、駆動コイル37と制御基板51の電子回路とが電気的に接続され、制御基板51から駆動コイル37へ通電可能な状態となる。
【0047】
制御基板51の貫通孔54に端子76の先端部76bが挿入されて、制御基板51と端子76とが接続されることにより、制御基板51は、上述の配置位置に固定される。換言すると、制御基板51の貫通孔54に端子76の先端部76bが挿入されて、制御基板51と端子76とが接続されることにより、制御基板51は、上述の配置位置に保持される。
【0048】
ハウジング63の蓋部80は、制御基板51を覆うように、ハウジング63の本体部70に取り付けられている。これにより、制御基板51は、ハウジング63に収納された状態となる。
【0049】
制御基板51が上述の配置位置に固定された状態において、制御基板51の一部の領域は、ボルト90の頭部90bと対向している。また、制御基板51は、ボルト90の頭部90bと対向する位置に放熱部53を有している。そして、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置60においては、制御基板51で発生する熱が放熱部53からボルト90の頭部90bに伝達される構成となっている。すなわち、制御基板51で発生する熱は、ボルト90を介して金属製の基体61に伝達され、基体61から外部へ放出される。
【0050】
制御基板51の放熱部53は、例えば、次のように構成することができる。
制御基板51は、ボルト90の1つであるボルト91の頭部90bと対向する位置に電子部品52が実装されている。この場合、当該電子部品52の表面を放熱部53とすることができる。すなわち、当該電子部品52の発する熱が、ボルト91を介して金属製の基体61に伝達され、基体61から外部へ放出される。このように構成することにより、電子部品52が発生する熱を効率的にボルト91に伝達することができ、制御基板51の放熱性を向上させることができる。なお、以下では、当該電子部品52を他の電子部品52と区別して示したい場合、当該電子部品52を第1電子部品52aと称する。
【0051】
ここで、本実施の形態では、制御基板51は、ボルト91の頭部90bと対向する側の面に、複数の電子部品52を備えている。このような場合、これら複数の電子部品52のうちで発熱量が最も大きい電子部品52を、第1電子部品52aとすることが好ましい。これら複数の電子部品52のうちで発熱量が最も大きい電子部品52が発する熱を効率的にボルト91に伝達することができ、制御基板51の放熱性をより向上させることができる。
【0052】
制御基板51は、ボルト90の1つであるボルト92の頭部90bと対向する位置に電子部品52が実装されていない。このような場合、放熱部53を以下のように構成するとよい。プリント基板である制御基板51の表面には、金属製配線間の絶縁等を目的として、樹脂等のソルダーレジストが設けられる。制御基板51におけるボルト92の頭部90bと対向する位置に金属製配線を配置し、当該金属製配線の表面にソルダーレジストを設けず、当該箇所を放熱部53とすればよい。すなわち、ボルト92の頭部90bに熱を伝達する制御基板51の放熱部53は、金属製配線の表面にソルダーレジストが設けられていない部分となっている。このように放熱部53を構成することにより、電子部品52等の発した熱が金属製配線を通ってボルト92の頭部90bに伝達される。そして、ボルト92の頭部90bに伝達された熱は、ボルト92を介して金属製の基体61に伝達され、基体61から外部へ放出される。このため、制御基板51の放熱性を向上させることができる。なお、このように放熱部53を構成する場合、金属製配線を剥き出しにしてもよいし、金属製配線の防錆等を目的として金属製配線の表面に金属製のメッキを施してもよい。
【0053】
金属製配線の表面にソルダーレジストが設けられていない部分を放熱部53とする場合、制御基板51のグランド部56(より詳しくは、制御基板51に形成された電子回路のグランド部56)を放熱部53とするのが好ましい。グランド部56は、金属製配線を構成する金属箔が比較的広範囲に広がる箇所である。このため、制御基板51のグランド部56を放熱部53とすることにより、放熱部53からボルト92へ伝達される熱量を大きくすることができ、制御基板51の放熱性をより向上させることができる。また、制御基板51のグランド部56は、制御基板51に必ず設けられるものである。制御基板51に必ず設けられるグランド部56を放熱部53とすることにより、金属製配線内に放熱部専用の箇所を設ける必要がなくなるので、制御基板51が大型化することを抑制でき、ブレーキ液圧制御装置60が大型化することを抑制できる。なお、
図5に示すように、放熱部53に、少なくとも1つのサーマルビア57を形成してもよい。制御基板51の放熱性をより向上させることができる。
【0054】
また、制御基板51は、放熱部53が設けられている面の反対面に実装された電子部品52を備えている。金属製配線の表面にソルダーレジストが設けられていない部分を放熱部53とする場合、放熱部53が設けられている面の反対面に実装された電子部品52は、当該放熱部53と対向する位置に実装されていることが好ましい。当該電子部品52が発する熱を放熱部53からボルト92へ伝達しやすくなり、制御基板51の放熱性をより向上させることができる。
【0055】
ここで、
図3に示すように、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置60は、制御基板51の放熱部53とボルト90の頭部90bとによって挟持された熱伝導性を有する緩衝材95を備えている。緩衝材95は、例えば、熱伝導性を有するシリコン等で形成されたシートである。このため、制御基板51で発生する熱は、放熱部53から緩衝材95を介して、ボルト90の頭部90bに伝達される。放熱部53とボルト90の頭部90bとの間に緩衝材95を設けることにより、ボルト90の頭部90bから制御基板51に負荷がかかりそうになった際、緩衝材95が変形して、当該負荷を吸収してくれる。このため、放熱部53とボルト90の頭部90bとの間に緩衝材95を設けることにより、ブレーキ液圧制御装置60の信頼性が向上する。
【0056】
なお、放熱部53とボルト90の頭部90bとを熱的に接続する構成は、緩衝材95を用いた構成に限定されない。放熱部53とボルト90の頭部90bとを、直接接触させてもよい。このような構成とすることにより、緩衝材95を用いた場合と比べ、放熱部53からボルト90へ伝達される熱量を大きくすることができ、制御基板51の放熱性をより向上させることができる。
【0057】
ここで、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置60においては、ボルト90の頭部90bと制御基板51との対向方向(
図3の上下方向)において、ボルト90の頭部90bの位置は、ハウジング63の本体部70で決定される。また、ボルト90の頭部90bと制御基板51との対向方向において、制御基板51の位置は、ハウジング63の本体部70に立設された端子76で決定される。すなわち、ボルト90の頭部90bと制御基板51との対向方向において、ボルト90の頭部90bの位置及び制御基板51の位置は、ハウジング63の本体部70で決定される。このため、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置60においては、ボルト90の頭部90bと制御基板51との対向方向において、ボルト90の頭部90bの位置及び制御基板51の位置は、設計位置からのずれが小さくなる。このため、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置60においては、放熱部53とボルト90の頭部90bとを直接接触させても、ボルト90の頭部90bから制御基板51に負荷がかかることを抑制でき、ブレーキ液圧制御装置60の信頼性を担保することができる。
【0058】
<ブレーキ液圧制御装置の効果>
本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置60の効果について説明する。
【0059】
本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置60は、ブレーキ液の流路が形成されている基体61と、ブレーキ液の流路に設けられているポンプ装置31の駆動源であるモータ40と、モータ40を制御する制御装置50の制御基板51と、モータ40を制御基板51に電気的に接続する端子76が立設されているハウジング63と、を備えている。ハウジング63に立設されている端子76は、制御基板51に接続されている。ハウジング63には、貫通孔74が形成されている。基体61には、雌ネジ62が形成されている。また、ブレーキ液圧制御装置60は、ハウジング63の貫通孔74に挿入されて、基体61の雌ネジ62にねじ込まれ、ハウジング63を基体61に固定するボルト90を備えている。制御基板51は、ボルト90の頭部90bと対向する位置に放熱部53を有している。そして、ブレーキ液圧制御装置60は、制御基板51で発生する熱が放熱部53からボルト90の頭部90bに伝達される構成となっている。
【0060】
本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置60は、ハウジング63を基体61に固定するボルト90を用いて、制御基板51で発生する熱を基体61に伝達する。そして、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置60は、制御基板51で発生する熱を基体61から外部に放出する。このため、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置60は、制御基板51の放熱性を向上させることができる。また、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置60は、制御基板51が発する熱を外部に放出させるための専用部品をハウジング63内に配置する必要がないので、制御基板の放熱性の向上を図った従来のブレーキ液圧制御装置よりも小型化することもできる。
【0061】
また、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置60は、制御基板51が発する熱を外部に放出させるための専用部品をハウジング63内に配置する必要がないので、制御基板の放熱性の向上を図った従来のブレーキ液圧制御装置と比べ、部品数を削減することができる。このため、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置60は、制御基板の放熱性の向上を図った従来のブレーキ液圧制御装置と比べ、製造コストを低減することもできる。
【0062】
以上、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置60ついて説明したが、本発明に係るブレーキ液圧制御装置は、本実施の形態の説明に限定されない。例えば、本実施の形態の一部のみが実施されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 胴体、2 ハンドル、3 前輪、3a ロータ、4 後輪、4a ロータ、10 ブレーキシステム、11 ブレーキレバー、12 第1液圧回路、13 ブレーキペダル、14 第2液圧回路、21 マスタシリンダ、22 リザーバ、23 ブレーキキャリパ、24 ホイールシリンダ、25 主流路、25a 主流路途中部、26 副流路、26a 副流路途中部、27 増圧流路、28 インレットバルブ、29 アウトレットバルブ、30 アキュムレータ、31 ポンプ装置、32 切換バルブ、33 増圧バルブ、34 マスタシリンダ液圧センサ、35 ホイールシリンダ液圧センサ、36 液圧調整バルブ、37 駆動コイル、37a 端子、40 モータ、41 出力軸、42 偏心体、43 端子、50 制御装置、51 制御基板、52 電子部品、52a 第1電子部品、53 放熱部、54 貫通孔、55 貫通孔、56 グランド部、57 サーマルビア、60 ブレーキ液圧制御装置、61 基体、62 雌ネジ、63 ハウジング、70 本体部、71 枠部、72 壁部、73 壁部、74 貫通孔、75 突起、76 端子、76a 開口部、76b 先端部、80 蓋部、90 ボルト、90a 雄ネジ部、90b 頭部、91 ボルト、92 ボルト、95 緩衝材、100 車両、MP マスタシリンダポート、WP ホイールシリンダポート。