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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20231218BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F25B1/00 304S
H05K7/20 Q
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019137826
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2021021528
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-03-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 裕正
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐一
(72)【発明者】
【氏名】當山 雄一郎
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】槙原 進
【審判官】水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第3346221(EP,A1)
【文献】特開2000-283569(JP,A)
【文献】特開2019-93988(JP,A)
【文献】特開2015-187525(JP,A)
【文献】特開2005-257139(JP,A)
【文献】実開昭57-1966(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 41/335
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象である発熱体の熱負荷想定値より冷却能力の方が大きい蒸発器と温度式膨張弁とを備えた冷凍サイクルシステムで構成される冷却装置であって、
前記温度式膨張弁を開閉制御するための感温部を備え、
前記感温部は、前記蒸発器の出口付近における前記発熱体の温度変化を検知できる位置とされる前記発熱体の表面から当該発熱体の内部に埋設され、前記発熱体の内部に接触した状態で取り付けられており、前記発熱体の温度に応じて前記蒸発器に供給する冷媒供給量を制御するようにし、
前記発熱体の所定温度における前記温度式膨張弁の設定流量は、その温度における前記熱負荷想定値よりも冷却能力の方が大きくなるように調整され、
前記蒸発器の出口での冷媒状態が湿り蒸気となるように調整されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
冷却対象である発熱体の熱負荷想定値より冷却能力の方が大きい蒸発器と温度式膨張弁とを備えた冷凍サイクルシステムで構成される冷却装置であって、
前記温度式膨張弁を開閉制御するための感温部を備え、
前記発熱体は、複数のフィンを有する伝熱部材を含み、
前記感温部は、前記蒸発器の出口付近における前記発熱体の温度変化を検知できる位置とされる前記伝熱部材の表面から当該伝熱部材の内部に埋設され、前記伝熱部材の前記フィンの間に挟み込まれるように設置することで、前記伝熱部材の内部に接触した状態で取り付けられており、前記発熱体の温度に応じて前記蒸発器に供給する冷媒供給量を制御するようにし、
前記発熱体の所定温度における前記温度式膨張弁の設定流量は、その温度における前記熱負荷想定値よりも冷却能力の方が大きくなるように調整され、
前記蒸発器の出口での冷媒状態が湿り蒸気となるように調整されていることを特徴とする冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度式膨張弁により蒸発器の冷却能力を制御して発熱体を冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば情報処理分野において、サーバ等の大量に発熱するシステムを冷却することが行われている。この際、発熱素子を許容温度内の一定温度に維持する必要があるため、冷却装置の蒸発器の冷却能力を制御する必要がある。このような冷却装置として、温度式膨張弁により冷却能力を制御するものが、例えば特許第3758074号公報(特許文献1)に開示されている。この特許文献1のものは、蒸発器(コールドプレート)の後段に加熱部を設け、加熱部の下流に感温筒を取り付けて過熱度を制御することにより、蒸発器出口における冷媒状態を湿り蒸気となるようにするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3758074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の従来の技術では、冷却装置のシステムに加熱部と加熱制御部とを設ける必要があり、システム構成が煩雑になるという問題がある。
【0005】
本発明は、簡単な構成で、蒸発器出口での冷媒状態を安定して湿り蒸気となるように制御できる冷却装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の冷却装置は、冷却対象である発熱体の熱負荷想定値より冷却能力の方が大きい蒸発器と温度式膨張弁とを備えた冷凍サイクルシステムで構成される冷却装置であって、前記温度式膨張弁を開閉制御するための感温部を備え、前記感温部は、前記蒸発器の出口付近における前記発熱体の温度変化を検知できる位置とされる前記発熱体の表面から当該発熱体の内部に埋設され、前記発熱体の内部に接触した状態で取り付けられており、前記発熱体の温度に応じて前記蒸発器に供給する冷媒供給量を制御するようにし、前記発熱体の所定温度における前記温度式膨張弁の設定流量は、その温度における前記熱負荷想定値よりも冷却能力の方が大きくなるように調整され、前記蒸発器の出口での冷媒状態が湿り蒸気となるように調整されていることを特徴とする。
【0007】
このような本発明の冷却装置によれば、温度式膨張弁は、感温部で検知される温度が高いほど冷媒流量が増加するように設定されており、この感温部の所定温度における設定流量は、その温度における熱負荷想定値よりも冷凍能力の方が大きくなる様に調整されている。したがって、蒸発器出口の冷媒状態が安定して湿り蒸気となり、発熱体を均一に冷却できて発熱体の温度分布を均一に保つことができる。
【0011】
また、本発明の冷却装置は、冷却対象である発熱体の熱負荷想定値より冷却能力の方が大きい蒸発器と温度式膨張弁とを備えた冷凍サイクルシステムで構成される冷却装置であって、前記温度式膨張弁を開閉制御するための感温部を備え、前記発熱体は、複数のフィンを有する伝熱部材を含み、前記感温部は、前記蒸発器の出口付近における前記発熱体の温度変化を検知できる位置とされる前記伝熱部材の表面から当該伝熱部材の前記フィンの間に挟み込まれるように設置することで、前記伝熱部材の内部に埋設され、前記伝熱部材の内部に接触した状態で取り付けられており、前記発熱体の温度に応じて前記蒸発器に供給する冷媒供給量を制御するようにし、前記発熱体の所定温度における前記温度式膨張弁の設定流量は、その温度における前記熱負荷想定値よりも冷却能力の方が大きくなるように調整され、前記蒸発器の出口での冷媒状態が湿り蒸気となるように調整されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の冷却装置によれば、簡単な構成で、蒸発器出口での冷媒状態を安定して湿り蒸気となるように制御でき、発熱体を均一に冷却できて発熱体の温度分布を均一に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態の冷却装置の冷凍サイクルシステムの要部を示す図である。
図2】実施形態の冷凍装置における温度式膨張弁の感温部温度と冷媒流量及び発熱体熱負荷の関係を示す図である。
図3】実施形態における冷凍サイクルシステムのモリエル線図である。
図4】実施形態における蒸発器中の冷媒の湿り度を従来と比較して示す図である。
図5】発熱体に対する蒸発器と感温部の変形例1を示す図である。
図6】発熱体に対する蒸発器と感温部の変形例2を示す図である。
図7】発熱体に対する蒸発器と感温部の変形例3を示す図である。
図8】発熱体に対する蒸発器と感温部の変形例4を示す図である。
図9】発熱体に対する蒸発器と感温部の変形例5を示す図である。
図10】発熱体に対する蒸発器と感温部の変形例6を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の冷却装置の実施形態について図面を参照して説明する。図1は実施形態(参考例)の冷却装置を構成する冷凍サイクルシステムの要部を示す図である。図1において、10は温度式膨張弁、20は圧縮機、30は凝縮器、40は蒸発器、50はアキュムレータであり、これらは配管で環状に接続することにより冷凍サイクルシステムを構成している。温度式膨張弁10は、弁本体部1、ダイヤフラム装置2、例えば従来の感温筒と同様な感温部3、及びキャピラリチューブ4を有している。弁本体部1の一次側継手管1aは凝縮器30の出口側配管30aに接続され、二次側継手管1bは蒸発器40の入口側配管40aに接続されている。そして、蒸発器40は冷却対象である発熱体100に接触して併設され、この蒸発器40の出口側配管40b側において、感温部3が発熱体100に接触するように取り付けられている。なお、発熱体100は、例えばメモリやCPU等の発熱素子などであり、この発熱体100の発熱体熱負荷の挙動は既知である。
【0018】
圧縮機20は冷凍サイクルシステムを流れる冷媒を圧縮し、圧縮された冷媒は凝縮器30で凝縮液化され、一次側継手管1aを通して弁本体部1に流入される。弁本体部1は流入される冷媒を減圧(膨張)して二次側継手管1bから蒸発器40に流入させる。蒸発器40は冷媒の一部を蒸発気化し、気液混合状態の冷媒がアキュムレータ50に流入し、このアキュムレータ50から気相冷媒が圧縮機20に循環される。そして、蒸発器40は、冷媒の一部を蒸発気化することで、発熱体100から熱を吸収する。これにより発熱体100が冷却される。また、発熱体100に取り付けられた感温部3にはガス(又は液)が封入されており、この感温部3はキャピラリチューブ4によりダイヤフラム装置2に連結されている。
【0019】
温度式膨張弁10の機械的な構成としては、広く知られている一般的なものを採用することができる。例えば、ダイヤフラム装置2は、キャピラリチューブ4によって感温部3に接続された受圧室と均圧室とを、ダイヤフラムにより区画するよう構成されている。なお、外部均圧式の場合は均圧室は蒸発器40の出口側配管40bに導通される。弁本体部1は、ダイヤフラムに連結された弁体により、一次側継手管1aと二次側継手管1bとの間に形成された弁ポートの弁開度を調整するよう構成されている。そして、感温部3による感知温度に応じて変化する受圧室の内圧に応じて冷媒を流す弁ポートの弁開度を変化させ、蒸発器40へ供給する冷媒の流量制御を行う。
【0020】
また、実施形態の温度式膨張弁10は以下のように設定されている。図2は実施形態における感温部温度と冷媒流量及び発熱体熱負荷の関係を示す図である。感温部3で検知される感温部温度「T」は、発熱体100の発熱量に対応する発熱体熱負荷「H」に応じたものとなる。また、前記のように、温度式膨張弁10における弁開度すなわち蒸発器40へ供給される冷媒の流量「Q」は、感温部3で検知される感温部温度「T」に応じたものとなる。ここで、従来の過熱度制御を行う温度式膨張弁は、蒸発器の出口配管に設けた感温部により過熱度に応じて流量を制御しているが、本発明では、発熱体100の発熱体熱負荷に応じて流量を制御するように温度式膨張弁10の特性が設定されている。
【0021】
詳細には、図3のモリエル線図に示すように、温度式膨張弁10の出口と乾き度1.0の位置の比エンタルピーの差を「Δh」とすると、この「Δh」と冷媒流量「Q」により、蒸発器40における冷却能力「W」は、
W=Q×Δh
となる。そして、この冷却能力(Q×Δh)が発熱体100の発熱体熱負荷「H」より大きくなる様に、温度式膨張弁10の弁体のリフト量が調整されている。
【0022】
このように、冷却対象である発熱体100の熱負荷想定値より冷却能力の方が大きい蒸発器40と温度式膨張弁10とを備えた冷凍サイクルシステムで構成されている。また、温度式膨張弁10を開閉制御するための感温部3(感温筒)の取り付け位置が、蒸発器40の出口付近の発熱体100の温度変化を検知できる位置とされている。これにより、発熱体100の温度に応じて蒸発器40に供給する冷媒供給量を制御している。すなわち、発熱体100の温度に応じた冷媒流量となるように制御することで蒸発器40の出口での冷媒の状態を湿り蒸気状態に保持することができる。
【0023】
例えば、蒸発器40内の内部状態は図4のようになる。従来の過熱度制御を行う場合は、蒸発器出口付近では湿り度(1.0-乾き度)が0.0となる過熱蒸気領域となるが、実施形態の場合は、湿り度を保持した状態となる。このように、実施形態では、発熱体100の所定温度における設定流量は、その温度における熱負荷想定値よりも冷却能力の方が大きくなる様に調整されているため、蒸発器40の出口での冷媒状態を安定して湿り蒸気となるようにできる。これにより、発熱体100を均一に冷却できて発熱体100の温度分布を均一に保つことができる。
【0024】
図5図10は、実施形態における蒸発器40と発熱体100と感温部3の設置状態の変形例1変形例6を示す図である。図5の変形例1(第1実施例)は、感温部3、蒸発器40の出口側配管40b側において発熱体100の温度変化を検知できる位置とされる発熱体100の表面から当該発熱体100の内部に埋設され、発熱体100の内部に接触した状態で取り付けられた例である。
【0025】
図6の変形例2は、感温部3を、蒸発器40の出口側配管40b側において発熱体100の蒸発器40とは反対側の面に取り付けた例である。
【0026】
図7の変形例3は、蒸発器40と発熱体100とを伝熱的に接続する伝熱部材60で囲い、蒸発器40の出口側配管40b側において伝熱部材60に感温部3を取り付けた例である。
【0027】
図8の変形例4(第2実施例)は、蒸発器40と発熱体100との間に、伝熱的に接続する伝熱部材70を設け、感温部3が、蒸発器40の出口側配管40b側において発熱体100の温度変化を検知できる位置とされる伝熱部材70の表面から当該伝熱部材70の内部に埋され、伝熱部材70の内部に接触した状態で取り付けられた例である。
【0028】
図9の変形例5は、感温部3を、蒸発器40の出口側配管40b側において蒸発器40の発熱体100とは反対側の面に取り付けた例である。
【0029】
図10の変形例6(第3実施例)は発熱体100の具体例を示しており、この発熱体100は、例えば複数のメモリなどを積層したもの、あるいは複数のフィンを有する伝熱部材(例えば熱交換器)であり、これらのメモリや伝熱部材の間に挟み込まれるような形状とした感熱部3を設けた例である。なお、この変形例6は、感温部3の左右の2面が挟まれて発熱体100と接するものであるが、これに限定されず、4面が接触する様に埋め込み式でもよい。また、感温部3は直方体形状ではなく円柱形状でもよく、円柱形状に合った穴に埋め込み式などとしてもよい。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述し、その他の実施形態についても詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1 弁本体部
2 ダイヤフラム装置
3 感温部
4 キャピラリチューブ
10 温度式膨張弁
20 圧縮機
30 凝縮器
40 蒸発器
40a 入口側配管
40b 出口側配管
50 アキュムレータ
60 伝熱部材
70 伝熱部材
100 発熱体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10