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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/16 20060101AFI20231218BHJP
   B60H 3/06 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
E02F9/16 C
B60H3/06 611A
B60H3/06 611Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019147476
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028441
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-05-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 明博
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-295319(JP,A)
【文献】再公表特許第2012/108232(JP,A1)
【文献】特開平11-321299(JP,A)
【文献】特開平09-058259(JP,A)
【文献】特開2009-018599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/16
B60H 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に取り付けられる上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられる運転室と、
前記運転室に設置された運転席と、
前記運転室に設置された空調ユニットと、
前記運転席の着座部よりも下方にある、前記空調ユニットに供給される内気が通過する内気フィルタと、
前記空調ユニットに供給される内気が通過する、前記内気フィルタよりも粗な異物侵入防止部材と、を備え、
前記異物侵入防止部材は、前記運転席の支持フレームよりも前記空調ユニットに近い位置に配置された、前記運転室の内部にある空気を前記空調ユニットに取り込むための内気導入路に一体化され、前記内気フィルタに隣接するように配置され、且つ、前記内気フィルタが覆う流路面積と同じ流路面積を覆うように構成されている、
ショベル。
【請求項2】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に取り付けられる上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられる運転室と、
前記運転室に設置された運転席と、
前記運転室に設置された空調ユニットと、
前記運転席の着座部よりも下方にある、前記空調ユニットに供給される内気が通過する内気フィルタと、
前記空調ユニットに供給される内気が通過する、前記内気フィルタよりも粗な異物侵入防止部材と、を備え、
前記異物侵入防止部材は、スリット状の通気口が形成された部材、又は、ルーバー状の通気口が形成された部材であり、前記運転席の支持フレームに形成されている、
ショベル。
【請求項3】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に取り付けられる上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられる運転室と、
前記運転室に設置された運転席と、
前記運転室に設置された空調ユニットと、
前記運転席の着座部よりも下方にある、前記空調ユニットに供給される内気が通過する内気フィルタと、
前記空調ユニットに供給される内気が通過する、前記内気フィルタよりも粗な異物侵入防止部材と、を備え、
前記異物侵入防止部材は、パンチング加工によって前記運転席の支持フレームに形成されている、
ショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削機としてのショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転室内に設置された空調システムの外気導入口に設けられる外気フィルタの着脱を容易にしたショベルが知られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-18599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のショベルでは、空調システムの内気導入口は、運転室の床に近い位置、すなわち、紙片又はビニール片等の異物が溜まりやすい位置に配置されている。そのため、内気導入口に設けられた内気フィルタの清掃のために、内気導入口から内気フィルタが取り外されると、空調システム内に異物が侵入してしまうおそれがある。内気フィルタが取り外された状態では、内気導入口を通過する異物を遮る部材が存在しなくなるためである。
【0005】
上述の点に鑑み、空調システム内への異物の侵入をより確実に防止できるように構成されたショベルを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るショベルは、下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に取り付けられる上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられる運転室と、前記運転室に設置された運転席と、前記運転室に設置された空調ユニットと、前記運転席の着座部よりも下方にある、前記空調ユニットに供給される内気が通過する内気フィルタと、前記空調ユニットに供給される内気が通過する、前記内気フィルタよりも粗な異物侵入防止部材と、を備え、前記異物侵入防止部材は、前記運転席の支持フレームよりも前記空調ユニットに近い位置に配置された、前記運転室の内部にある空気を前記空調ユニットに取り込むための内気導入路に一体化され、前記内気フィルタに隣接するように配置され、且つ、前記内気フィルタが覆う流路面積と同じ流路面積を覆うように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
上述のショベルは、空調システム内への異物の侵入をより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ショベルの左側面図である。
図2】キャビンの内部の左側面図である。
図3】キャビンの断面図である。
図4】運転席の左側面図である。
図5】キャビンの断面図である。
図6】空調システムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る建設機械としてのショベル100を示す。ショベル100は、下部走行体1と、下部走行体1の上に旋回機構2を介して旋回可能に搭載された上部旋回体3とを含む。上部旋回体3の左前部には、運転室としてのキャビン10が設けられている。キャビン10の左側面には、キャビン10の内部に外気を導入するための外気導入口を覆うカバー10Cが取り付けられ、且つ、カバー10Cの前側にはドア10Dが取り付けられている。図1に示す例では、カバー10Cは、カバー10Cの周囲の隙間を通じて外気が外気導入路内に吸い込まれるように構成されている。但し、カバー10Cは、複数の通気穴を有する金属板で構成されていてもよい。
【0010】
上部旋回体3の中央前部には、ブーム4が回動可能に取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が回動可能に取り付けられ、アーム5の先端にはバケット6が回動可能に取り付けられている。ブーム4は、ブームシリンダ7で駆動され、アーム5は、アームシリンダ8で駆動され、バケット6は、バケットシリンダ9で駆動される。
【0011】
図2は、キャビン10の内部の左側面図である。図3は、キャビン10の断面図であり、図2に示す一点鎖線L1を含むXY平面に平行な仮想平面におけるキャビン10の断面を示している。図3に示す点線矢印は、空気の流れを表している。図4は、キャビン10の内部に設置された運転席DSの左側面図である。
【0012】
図2に示すように、キャビン10の内部には、空調システムAC、運転席DS、及び、操作装置26等が設置されている。
【0013】
運転席DSは、ショベル100の操作者が着座できるように構成されている。そして、運転席DSは、支持フレームSFを介してキャビン10の床に固定されている。
【0014】
支持フレームSFは、運転席DSを支持する部材である。運転席DSは、支持フレームSF上を前後方向(X軸方向)にスライドできるようにシートレール等を介して支持フレームSFに取り付けられていてもよい。本実施形態では、支持フレームSFは、図3に示すように、運転席DSを支持する左右一対の金属板であり、左側(-Y側)の左支持フレームSFLと右側(+Y側)の右支持フレームSFRとを含む。支持フレームSFは、合成樹脂で形成されていてもよい。支持フレームSFは、空調ユニット40を覆うボックスコンソールであってもよい。
【0015】
本実施形態では、運転席DSは、図2に示すように、着座部SP、背もたれ部BR、ヘッドレスト部HR、肘掛け部AM、及びコンソールCSを含む。図4では、明瞭化のため、背もたれ部BR及びヘッドレスト部HRの図示が省略され、着座部SPは不可視となっている。
【0016】
着座部SPは、操作者の臀部及び大腿部を支持する部材である。背もたれ部BRは、操作者の背中を支持する部材である。ヘッドレスト部HRは、操作者の頭部を支持する部材である。
【0017】
肘掛け部AMは、操作者の肘を支持する部材である。本実施形態では、肘掛け部AMは、操作者が左腕の肘を置くことができるように構成された左肘掛け部AML、及び、操作者が右腕の肘を置くことができるように構成された右肘掛け部AMR(図2では不可視)を含む。
【0018】
コンソールCSは、操作装置26としての操作レバーが取り付けられる部材である。本実施形態では、コンソールCSは、左コンソールCSL及び右コンソールCSR(図2では不可視)を含む。左コンソールCSLは、左支持フレームSFLに固定され、右コンソールCSRは、右支持フレームSFRに固定されている。
【0019】
操作装置26は、ショベル100に搭載されているアクチュエータを操作者が操作する際に用いる装置である。本実施形態では、アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行油圧モータ2M、及び旋回油圧モータ(図示せず。)等を含む。走行油圧モータ2Mは、左側のクローラを駆動するための左走行油圧モータと、右側のクローラを駆動するための右走行油圧モータとを含む。
【0020】
具体的には、操作装置26は、左操作レバー26L、右操作レバー26R(図2では不可視)、左走行レバー26DL、右走行レバー26DR(図2では不可視)、左走行ペダル26PL、及び右走行ペダル26PR(図2では不可視)を含む。
【0021】
本実施形態では、左操作レバー26Lは、アームシリンダ8を伸縮させる際に前後方向に操作され、旋回油圧モータを回転させる際に左右方向に操作される。右操作レバー26Rは、ブームシリンダ7を伸縮させる際に前後方向に操作され、バケットシリンダ9を伸縮させる際に左右方向に操作される。但し、左操作レバー26Lは、別の2つのアクチュエータを動かすための操作装置26として構成されていてもよい。右操作レバー26Rについても同様である。左走行レバー26DLは、左走行油圧モータを回転させる際に前後方向に操作され、右走行レバー26DRは、右走行油圧モータを回転させる際に前後方向に操作される。左走行ペダル26PL及び右走行ペダル26PRについても同様である。
【0022】
空調システムACは、キャビン10の内部の空気の状態を調整できるように構成されている。空気の状態は、例えば、温度又は湿度等である。本実施形態では、空調システムACは、図3に示すように、空調ユニット40、内気導入路41、外気導入路42、及び通風ダクト43を含む。
【0023】
空調ユニット40は、送風機、熱交換器、及び加湿器等の空気の状態を調整するための機器を一体的に含む装置ユニットである。
【0024】
内気導入路41は、キャビン10の内部にある空気を空調ユニット40に取り込むための空気通路である。内気導入路41には、内気フィルタ50が配置されている。また、内気導入路41の内気導入口41Mには、異物侵入防止部材51が配置されている。
【0025】
内気フィルタ50は、内気導入路41を通る空気に含まれる塵埃等を除去するための部材である。本実施形態では、内気フィルタ50は、フィルタ部50F及びホルダ部50Hを含む。
【0026】
フィルタ部50Fは、フィルタエレメントが取り付けられた枠部材であり、内気導入路41の内部で内気導入路41を塞ぐように設置されている。すなわち、フィルタ部50Fは、フィルタ部50Fを通過した空気が空調ユニット40に供給されるように配置されている。本実施形態では、フィルタエレメントは、不織布で形成されている。
【0027】
ホルダ部50Hは、フィルタ部50Fの点検又は清掃等を行う作業者がフィルタ部50Fを内気導入路41から取り外す際に用いる部分である。本実施形態では、ホルダ部50Hには、作業者が把持可能な取っ手が設けられている。但し、ホルダ部50Hには、作業者が把持可能な摘みが設けられていてもよく、作業者の指を差し込むための指穴が設けられていてもよい。作業者は、取っ手を把持した状態で、図2の矢印AR1で示す方向に、ホルダ部50Hを移動させることで、フィルタ部50Fを内気導入路41から引き抜くことができる。この場合、フィルタ部50Fは、ガイドレール等のガイド部に沿ってスライドさせられてもよい。
【0028】
なお、内気導入路41は、望ましくは、内気フィルタ50が内気導入路41から取り外されたときに、内気フィルタ50が配置されていた部分にできた隙間から異物が侵入しないよう、その隙間が塞がれるように構成されている。
【0029】
異物侵入防止部材51は、空調ユニット40に異物が侵入するのを防止するための部材である。本実施形態では、異物侵入防止部材51は、運転席DSの左支持フレームSFLに一体化されている。したがって、異物侵入防止部材51は、左支持フレームSFLの一部を構成している。なお、左支持フレームSFLは、内気導入口41Mを塞ぐように配置されている。
【0030】
異物侵入防止部材51は、図4に示すように、左支持フレームSFLの一部として左支持フレームSFLに一体化されている。そして、異物侵入防止部材51には、複数の通気孔が設けられている。複数の通気孔は、典型的には、パンチング加工によって形成される。通気孔の形状及び大きさ(例えば孔径)は、捕捉対象に応じて任意に決定される。本実施形態では、異物侵入防止部材51は、左支持フレームSFLの後側(-X側)の一部を構成しているが、左支持フレームSFLの前側(+X側)の一部を構成していてもよく、左支持フレームSFLの中央部を構成していてもよい。或いは、異物侵入防止部材51は、左支持フレームSFLの全部を構成していてもよい。すなわち、複数の通気孔は、左支持フレームSFLの表面の全域に亘って形成されていてもよい。
【0031】
異物侵入防止部材51は、左支持フレームSFLに着脱可能な部材として構成されていてもよい。この場合、異物侵入防止部材51は、合成樹脂等、支持フレームSFとは別の材料で形成されていてもよい。そして、異物侵入防止部材51は、ボルト又はネジ等の締結部材を用いて左支持フレームSFLに固定されてもよい。
【0032】
異物侵入防止部材51は、スリット状の通気口が形成された部材であってもよく、ルーバー状の通気口が形成された部材であってもよく、防塵ネット等の網部材であってもよい。また、異物侵入防止部材51は、内気フィルタ50におけるフィルタ部50Fと同様の、不織布で形成されたフィルタエレメントが取り付けられた枠部材であってもよい。この場合、第1フィルタとしての内気フィルタ50におけるフィルタ部50Fと、第2フィルタとしての異物侵入防止部材51とは、ダブルフィルタ構造を構成できる。
【0033】
異物侵入防止部材51は、望ましくは、内気フィルタ50のフィルタ部50Fによって覆われる流路面積よりも小さい流路面積を覆うように構成されている。異物侵入防止部材51に形成された通気孔のサイズが、フィルタ部50Fの孔径よりも顕著に大きいため、異物侵入防止部材51によって覆われる流路面積が、フィルタ部50Fによって覆われる流路面積よりも小さい場合であっても、フィルタ部50Fを通過する空気の量が過度に制限されることがないためである。また、異物侵入防止部材51によって覆われる流路面積が小さいほど、内気導入路41の内部に侵入する異物の量も減少するためである。但し、異物侵入防止部材51は、内気フィルタ50のフィルタ部50Fによって覆われる流路面積以上の流路面積を覆うように構成されていてもよい。
【0034】
図2では、異物侵入防止部材51の図示が省略され、内気導入路41の内部に配置された内気フィルタ50のフィルタ部50Fの一部が内気導入口41Mから露出している状態が示されている。これに対し、図4では、異物侵入防止部材51が図示され、内気導入路41の内部に配置された内気フィルタ50のフィルタ部50Fが異物侵入防止部材51によって覆われて不可視となっている状態が示されている。
【0035】
外気導入路42は、キャビン10の外部にある空気を空調ユニット40に取り込むための空気通路である。外気導入路42の外気導入口42Mには、図3に示すように、外気フィルタ52が配置されている。
【0036】
具体的には、外気導入口42Mに配置された外気フィルタ52は、縁部42E(図6参照。)によって囲まれている。縁部42Eは、キャビン10内の空間と外気フィルタ52が配置される空間との間の連通を遮断するように構成されている。この構成により、縁部42Eは、外気フィルタ52が外気導入口42Mから取り外されたときに、キャビン10内に存在する異物が外気導入路42内に侵入してしまうのを防止できる。本実施形態では、縁部42Eは、外部空間と外気フィルタ52が配置される空間とが連通するように、且つ、外部空間とキャビン10内の空間とが連通しないように、キャビン10の外壁を構成する部材に連結されている。そして、外気フィルタ52が配置される空間は、カバー10Cによって閉じられ、カバー10Cの周囲の隙間を通じて外気が外気フィルタ52に達するように構成されている。
【0037】
外気フィルタ52は、外気導入路42に進入する空気に含まれる塵埃等を除去するための部材である。本実施形態では、外気フィルタ52は、フィルタエレメントが取り付けられた枠部材であり、外気導入口42Mを塞ぐように設置されている。すなわち、外気フィルタ52は、外気フィルタ52を通過した空気が空調ユニット40に供給されるように配置されている。本実施形態では、フィルタエレメントは、不織布で形成されている。
【0038】
通風ダクト43は、空調ユニット40によって調整された空気をキャビン10の内部に送り込むための空気通路である。本実施形態では、空調ユニット40によって調整された空気は、例えば、通風ダクト43を通り、キャビン10内に設置された複数の吹き出し口の1つである吹き出し口43Mからキャビン10の内部に送り込まれる。
【0039】
なお、図3では、明瞭化のため、内気導入路41及び外気導入路42は、空調ユニット40の手前で合流するように図示されているが、実際には、内気導入路41及び外気導入路42は、内気導入路41を通過する内気のみが空調ユニット40に供給される内気循環モードと、外気導入路42を通過する外気のみが空調ユニット40に供給される外気導入モードとの切り換えができるように構成されている。
【0040】
上述の構成により、異物侵入防止部材51は、内気フィルタ50が内気導入路41から取り外された場合であっても、異物が内気導入路41を通って空調ユニット40に至るのを防止できる。
【0041】
なお、異物侵入防止部材51は、内気フィルタ50の上流側に配置されているが、内気フィルタ50の下流側に配置されていてもよい。この場合、異物侵入防止部材51は、着脱可能に構成され、内気フィルタ50と同様に、異物侵入防止部材51を内気導入路41から引き抜くためのホルダ部を有していてもよい。
【0042】
次に、図5及び図6を参照し、異物侵入防止部材51の別の構成例である異物侵入防止部材51Aについて説明する。図5は、キャビン10の断面図であり、図3に対応している。図5に示す点線矢印は、空気の流れを表している。図6は、空調システムACの斜視図である。
【0043】
図5及び図6に示す異物侵入防止部材51Aは、内気導入路41を構成している部材に一体化されている点で、左支持フレームSFLに一体化されている、図2図4に示す異物侵入防止部材51と異なる。
【0044】
具体的には、異物侵入防止部材51Aは、内気導入路41の内気導入口41Mに固定された枠部材であり、フィルタエレメントが取り付けられている。フィルタエレメントは、例えば、不織布で形成されている。異物侵入防止部材51Aは、内気導入口41Mに対して着脱可能となるように構成されていてもよい。この場合、異物侵入防止部材51Aとしての枠部材は、内気導入路41を構成する部材と同じ材料で形成されてもよい。内気導入路41を構成する部材の材料は、典型的には、合成樹脂である。そして、異物侵入防止部材51Aは、スナップフィット構造を利用して内気導入路41を構成する部材に着脱可能に取り付けられてもよい。内気導入路41を構成する部材の材料は、金属であってもよい。また、異物侵入防止部材51Aは、ボルト又はネジ等の締結部材を用いて内気導入路41を構成する部材に固定されていてもよい。
【0045】
本実施形態では、異物侵入防止部材51Aは、内気フィルタ50のフィルタ部50Fと隣接するように配置されている。
【0046】
そして、異物侵入防止部材51Aにおけるフィルタエレメントの孔径は、内気フィルタ50のフィルタ部50Fの孔径よりも大きくなるように構成されている。異物侵入防止部材51Aの捕捉対象のサイズは、フィルタ部50Fの捕捉対象のサイズよりも大きいためである。
【0047】
また、異物侵入防止部材51Aは、内気フィルタ50のフィルタ部50Fが覆う流路面積とほぼ同じ流路面積を覆うように構成されている。異物侵入防止部材51Aにおけるフィルタエレメントの孔径は、内気フィルタ50のフィルタ部50Fの孔径よりは大きいが、図2図4に示す異物侵入防止部材51の通気孔よりは顕著に小さいためである。すなわち、異物侵入防止部材51Aによって覆われる流路面積を、図2図4に示す異物侵入防止部材51によって覆われる流路面積と同程度に小さくすると、フィルタ部50Fを通過する空気の量が過度に制限されてしまうためである。
【0048】
以上の構成により、異物侵入防止部材51Aは、内気フィルタ50が内気導入路41から取り外された場合であっても、異物が内気導入路41を通って空調ユニット40に至るのを防止できる。
【0049】
なお、異物侵入防止部材51Aは、内気フィルタ50の上流側に配置されているが、内気フィルタ50の下流側に配置されていてもよい。この場合、異物侵入防止部材51Aは、内気フィルタ50と同様に、異物侵入防止部材51Aを内気導入路41から引き抜くためのホルダ部を有していてもよい。
【0050】
上述のように、本発明の実施形態に係るショベル100は、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に取り付けられる上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられる運転室としてのキャビン10と、キャビン10に設置された運転席DSと、キャビン10に設置された空調ユニット40と、運転席DSの着座部SPよりも下方にある、空調ユニット40に供給される内気が通過する内気フィルタ50と、空調ユニット40に供給される内気が通過する、内気フィルタ50よりも粗な異物侵入防止部材51と、を備えている。
【0051】
なお、異物侵入防止部材51が内気フィルタ50よりも粗な部材であることは、異物侵入防止部材51における通気孔の孔径が、内気フィルタ50の孔径よりも大きいこと、すなわち、内気フィルタ50によって捕捉される異物のサイズよりも、異物侵入防止部材51によって捕捉される異物のサイズが大きいことを意味する。
【0052】
この構成は、内気の吸入抵抗が過度に増大してしまうのを防止でき、且つ、内気導入路41から内気フィルタ50が取り外されたときに異物が空調ユニット40に取り込まれてしまうのを防止できるという効果をもたらす。
【0053】
また、この構成は、比較的大きな異物が異物侵入防止部材51によって捕捉されるため、内気フィルタ50の目詰まりを発生させ難くする効果をもたらす。
【0054】
また、この構成は、キャビン10の内部が汚れている状況下で、或いは、工事現場等の埃っぽい環境下で風雨に晒されながらドア10Dを開け閉めして内気フィルタ50の点検又は清掃等を行わざるを得ない場合に特に有効である。内気導入口41Mが配置される位置は、運転席DSの着座部SPよりも下方、すなわち、着座部SPよりも低い位置にあり、異物が溜まり易いためである。また、内気導入口41Mは、ドア10Dの内壁に対向するように配置されており、内気導入口41Mの外側にある異物は、キャビン10の外から吹き込む風によって巻き上げられ易いためである。
【0055】
例えば、上述の構成は、内気フィルタ50の清掃中にキャビン10内に風が吹き込み、キャビン10内の床に落ちている異物が巻き上げられて内気導入口41Mに向かったとしても、異物侵入防止部材51によってその異物が空調ユニット40内に侵入してしまうのを確実に防止できる。この場合の異物は、例えば、砂塵等より顕著に大きい、煙草の吸い殻、紙片、又はビニール片等である。
【0056】
そのため、空調ユニット40に異物が取り込まれたことに起因する空調ユニット40におけるブロアモータの通電不良等の発生を確実に防止できる。その結果、アクセス性が悪いために大きな工数がかかり且つ高い工賃を発生させる空調ユニット40のメンテナンスが必要となる頻度を低下させることができる。なお、空調ユニット40のメンテナンスは、空調ユニット40の修理又は交換等を含む。
【0057】
内気フィルタ50は、着脱可能に構成されている。上述の実施形態では、内気フィルタ50は、図2の矢印AR1で示す方向に作業者がホルダ部50Hを移動させることで、作業者がフィルタ部50Fを内気導入路41から引き抜くことができるように構成されている。異物侵入防止部材51は、このようにして内気フィルタ50が内気導入路41から引き抜かれた場合であっても、内気導入口41Mを通じて異物が内気導入路41の内部に侵入してしまうのを防止できる。
【0058】
異物侵入防止部材51は、運転席DSの支持フレームSFに形成されていてもよい。すなわち、異物侵入防止部材51は、運転席DSの支持フレームSFを構成する部分として、運転席DSの支持フレームSFに一体化されていてもよい。例えば、異物侵入防止部材51は、図4に示すように、左支持フレームSFLの一部として左支持フレームSFLに一体化されていてもよい。
【0059】
この構成により、内気導入路41への異物の侵入を防止する機能は、空調システムAC及び支持フレームSFがキャビン10の内部に組み付けられた段階で実現され得る。すなわち、内気導入路41への異物の侵入を防止する機能は、例えば、支持フレームSFを構成する部材にパンチング加工を施して通気孔を形成するだけで容易に実現され得る。
【0060】
異物侵入防止部材51は、空調ユニット40を含む空調システムACに形成されていてもよい。すなわち、異物侵入防止部材51は、空調システムACを構成する部分として、空調システムACを構成する部材に一体化されていてもよい。例えば、異物侵入防止部材51としての枠部材は、図5に示すように、内気導入路41を構成する部材に一体化されていてもよい。この場合、内気導入路41及び異物侵入防止部材51としての枠部材は、合成樹脂で一体的に成形されてもよい。
【0061】
この構成により、内気導入路41への異物の侵入を防止する機能は、異物侵入防止部材51としての枠部材にフィルタエレメントが取り付けられた段階で実現され得る。すなわち、内気導入路41への異物の侵入を防止する機能は、例えば、異物侵入防止部材51としての枠部材にフィルタエレメントを取り付けるだけで容易に実現され得る。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形又は置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1・・・下部走行体 2・・・旋回機構 2M・・・走行油圧モータ 3・・・上部旋回体 4・・・ブーム 5・・・アーム 6・・・バケット 7・・・ブームシリンダ 8・・・アームシリンダ 9・・・バケットシリンダ 10・・・キャビン 10C・・・カバー 10D・・・ドア 26・・・操作装置 26L・・・左操作レバー 26DL・・・左走行レバー 26PL・・・左走行ペダル 40・・・空調ユニット 41・・・内気導入路 41M・・・内気導入口 42・・・外気導入路 42M・・・外気導入口 43・・・通風ダクト 43M・・・吹き出し口 50・・・内気フィルタ 50F・・・フィルタ部 50H・・・ホルダ部 51、51A・・・異物侵入防止部材 52・・・外気フィルタ 100・・・ショベル AC・・・空調システム AM・・・肘掛け部 AML・・・左肘掛け部 BR・・・背もたれ部 CS・・・コンソール CSL・・・左コンソール DS・・・運転席 HR・・・ヘッドレスト部 SF・・・支持フレーム SFL・・・左支持フレーム SFR・・・右支持フレーム SP・・・着座部
図1
図2
図3
図4
図5
図6