(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 8/02 20060101AFI20231218BHJP
B43K 1/12 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B43K8/02 100
B43K8/02 110
B43K1/12 B
(21)【出願番号】P 2019148942
(22)【出願日】2019-08-14
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】中島 徹
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-046225(JP,A)
【文献】特開2014-141664(JP,A)
【文献】特開昭59-014998(JP,A)
【文献】特公昭50-019974(JP,B1)
【文献】特開2016-032876(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115843(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 8/02
B43K 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂に
ポリアセタール樹脂よりも高硬度の不溶な無機粒子又は有機粒子
であり、前記粒子のサイズが100nm~10μmの二酸化チタン、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、黄色酸化鉄、亜鉛フェライト顔料、べんがら、群青、コバルトブルー、酸化クロム、スピネルグリーン、鉄黒、黄鉛、クロムオレンジ、モリブデンレッド、カドミウムイエロー、カドミウムオレンジ、カドミウムレッド、炭酸カルシウム、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ジアソライド系、縮合アゾ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、バット系、フタロシアニン系、窒化ホウ素、シリカ、アルミナ、カーボンブラック又は酸化チタンを1%以上25%未満を配合
したインク供給芯を設けたことを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記インク供給芯はペン先を突出された状態に固定部材で支持されており、前記インク供給芯よりも前記固定部材は弾性変形しにくくなっており、前記固定部材は、円筒形状の中間円柱部と、中間円柱部の後端がフランジ状に拡径した後端フランジ部と、中間円柱部の先端側が縮径した先端円柱部とからなり、後端フランジ部の円周において軸心を挟んで対向する2箇所の円弧部分が切り欠かれた切欠部となっていることを特徴とする請求項
1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記インク供給芯はペン先を突出された状態に固定部材で支持されており、前記インク供給芯よりも前記固定部材は弾性変形しにくくなっており、前記固定部材は、筒状の中心部材と、中心部材の中間より後方寄りの外周において空隙部を隔てて成形された略筒状の周辺部材と、周辺部材の先端から、中心部材の中間より前方寄りの位置までを覆うように形成された弾性部材とを備えることを特徴とする請求項
1に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマーキングペン等の筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
物体にインクを筆記や塗布するマーキングペン等の筆記具は、通常、インク供給芯には耐摩耗性を向上させるために高強度の材質を使用している。
【0003】
その種のインク供給芯に関して、特許文献1において、ペン先に200kg/mm2以上の繊維を混入して、耐摩耗性を向上させ、筆記時にペン先の磨り減りやすさを防止した繊維製ペン先が提案されている。
【0004】
また、特許文献2において、ペン先がばらけることを防ぐため繊維径0.1~10デニールのアクリル系合成繊維を集束したペン先が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-35278号公報
【文献】特開2013-123839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、耐摩耗性を向上させたインク供給芯を用いる場合、条件によって、筆感が悪くなってしまう問題がある。
【0007】
また、インク供給芯によって粗悪な紙やコート紙に筆記したり、押し書き筆記したりすると、紙面を削り、削ったカスがインク供給芯のインク流を塞ぎ、筆記不良となってしまう可能性がある。
【0008】
また、紙面等の比較的脆弱な素材に筆記する際に、耐摩耗性を向上させたインク供給芯では、被筆記面である素材を痛めることがある。
【0009】
また、削れた紙面は、見た目や筆記面の保存性も良いものではない。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑み、筆感を向上できる筆記具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、摩耗促進剤を混入させたインク供給芯を設けたことを特徴とする筆記具である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の筆記具によれば、インク供給芯に摩耗促進剤を混入させたので、筆記の際に被筆記面側の紙面等を痛めずに滑らかな筆感が得られるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る筆記具においてインク供給芯の突出位置における説明図であって、(a)が正面図、(b)が(a)から周方向に90度回転させた図、(c)が(a)のC-C線に沿う縦断面図である。
【
図2】
図1の筆記具においてインク供給芯の没入位置における説明図であって、(a)が正面図、(b)が(a)から周方向に90度回転させた図、(c)が(a)のC-C線に沿う縦断面図である。
【
図3】
図1の筆記具において前方部の拡大断面図であって、(a)がインク供給芯の突出位置、(b)がインク供給芯の没入位置における各図である。
【
図4】
図1の筆記具においてインク供給芯及び被覆部材の部品図であって、(a)が正面図、(b)が縦断面図である。
【
図5】
図1の筆記具において変位部材の部品図であって、(a)が斜視図、(b)が正面図、(c)が縦断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る筆記具の説明図であって、(a)が正面図、(b)が(a)のB-B線に沿う縦断面図、(c)が前方部の拡大断面図である。
【
図7】
図6の筆記具において芯周囲部材の部品図であって、(a)が前方斜視図、(b)が前方からの視図、(c)が正面図、(d)が(b)のD-D線に沿う縦断面図、(e)が(c)から周方向に90度回転させた図、(f)が(b)のF-F線に沿う縦断面図、(g)が後方斜視図、(h)が後方からの視図である。
【
図8】
図6の筆記具において変位部材を構成する移動部材の部品図であって、(a)が前方斜視図、(b)が前方からの視図、(c)が正面図、(d)が(c)から周方向に90度回転させた図、(e)が(b)のE-E線に沿う縦断面図、(f)が後方斜視図、(g)が後方からの視図である。
【
図9】
図6の筆記具において先端部分の斜視図であって、(a)がインク供給芯が突出位置の状態の図、(b)が芯周囲部材を装着する途中の状態の図、(c)が(a)と周方向に90度回転させ位置から見たインク供給芯が突出位置の状態の拡大図、(d)がインク供給芯が没入位置にある状態の拡大図である。
【
図10】
図6の筆記具においてインク供給芯が曲げられて没入位置の状態の説明図であって、(a)が筆記具の全体正面図、(b)が筆記具の全体縦断面図、(c)が筆記具の先端部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態に係る筆記具1として、軸筒10の先端に筆記先端としてのインク供給芯50を備えたマーキングペン等の筆記具1を例に説明する。なお、実施形態において、筆記具1及びその構成部品についての「前方」及び「先端」とはインク供給芯50を備えた方向を示し、「後方」及び「後端」とはその反対側の方向を示すものとする。
【0016】
(第1実施形態)
図1~
図2は、本発明の第1実施形態に係る筆記具の全体説明図、
図3は、同筆記具において前方部の拡大断面図、
図4は、同筆記具においてインク供給芯及び被覆部材の部品図、
図5は、同筆記具において変位部材の部品図である。
【0017】
(全体構成)
第1実施形態に係る筆記具1は、
図1(a)に示すように、先軸11及び後軸12を備えた軸筒10と、先軸11の前方側に固定された芯周囲部材20とを備えた外観を呈している。
【0018】
また、軸筒10の内部には、
図1(b)に示すように先軸11の前方側から芯周囲部材20の先端にかけて筆記先端としてのインク供給芯50が収容されている。
【0019】
なお、
図2(a)は、没入位置における筆記具1の外観を示した正面図であり、インク供給芯50の芯周囲部材20からの突出している寸法が
図1(a)と比べて小さくなっている以外は、
図1(a)と同様の構成となっている。また、
図2(b)についても、インク供給芯50の芯周囲部材20からの突出している寸法が
図1(b)と比べて小さくなっている以外は、
図1(b)と同様の構成となっている。
【0020】
(軸筒10)
本実施形態に係る筆記具1は、
図1(b)に示すように、後端が閉鎖された筒形状のインクを収容するインクタンク13と、先端が先細り形状を呈している筒形状の先軸11と、後端を閉鎖されてインクタンク13を覆う筒形状の後軸12とを備える。先軸11の後部の内周には、インクタンク13の先端部が嵌入している。後軸12の先端部の内周には先軸11の後端部が嵌入している。
【0021】
(インク)
図1(c)や
図2(c)に示されたインクタンク13内に収容するインクは、水、固形シリコーン粒子、及び着色剤、並びに水溶性有機溶剤を含有している。
【0022】
水は、イオン交換水、蒸留水等であることができる。
【0023】
固形シリコーン粒子は、動的光散乱法で測定したときの平均粒子径が20nm~500nmとすることで動摩擦係数が低減し、滑らかな書き味を得ることができる。平均粒子径とは、動的光散乱法により検出された散乱強度分布を正規分布に当てはめて平均粒子径を算出するキュムラント解析法により求めたD50の値である。ここで、動的光散乱法による粒径の測定は、例えば大塚電子株式会社の濃厚系粒径アナライザー「FPAR-1000」を用いて行うことができる。
【0024】
固形シリコーン粒子の含有率は、インク組成物の全量に対して、1質量%以上30質量%未満とすることが好ましい。特に、インク組成物の粘度がコーンプレート型粘度計における25℃、50rpm条件下で3~80mPa・sと小さくし、それにより良好な書き味を発現させることができる。
【0025】
また、固形シリコーン粒子は、架橋シリコーン粒子、特にオルガノポリシロキサンが架橋物質で架橋されている構造を有する固形シリコーン粒子、より特にオルガノポリシロキサンがオルガノハイドロジェンポリシロキサンで架橋されている構造を有する固形シリコーン粒子であることが、本発明のサインペンの書き味を向上させる観点から好ましい。この架橋されている構造により、弾性を有することとなるため、このような固形シリコーン粒子は、「シリコーンゴム」としても言及される。
【0026】
架橋シリコーン粒子としては、信越化学工業株式会社が「RTVシリコーンゴム」として販売している液状シリコーン組成物を硬化させたシリコーンゴム粒子を用いることが好ましい。
【0027】
着色剤としては、染料、顔料、又は染料と顔料との混合物等を使用することができる。
【0028】
染料としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、媒染・酸性媒染染料、酒精溶性染料、アゾイック染料、硫化・硫化建染染料、建染染料、分散染料、油溶染料、食用染料、金属錯塩染料、造塩染料、樹脂に染料を染着した染料等の中から任意のもの、及びこれらの水溶液を使用することができる。
【0029】
顔料としては、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン顔料等の無機顔科、タルク、シリカ、アルミナ、マイカ、アルミナシリケート等の体質顔科、アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アンスラキノン顔料、キナクドリン顔料、イソインドリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、各種レーキ顔料等の有機顔料、蛍光顔料、パール顔料、金色、銀色等のメタリック顔料等が挙げられる。
【0030】
着色剤の含有率は、インク組成物の全量に対して、1質量%以上60質量%未満とすることができる。
【0031】
水溶性有機溶剤としては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等のヒンダードアルコール、グリセリン又はその誘導体(例えば、ポリグリセリンなど)、ソルビタン、蔗糖、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のポリグリコール類等が好ましく使用できる。
【0032】
インクはpH調整剤、防腐剤、ノンドライ剤等の添加剤等を含有していてもよい。
【0033】
(先軸11)
図1(a)に示すように、先軸11は、略筒状でその先端は先細り形状を呈している。先軸11の外周には、先軸11の後端から先軸11の全長の約1/4の距離を隔てた位置に先軸鍔部15が設けられている。先軸鍔部15の外径は後軸12の外径と略同径であり、後軸12の先端が当接している。また、先軸11は、先軸鍔部15を境にして、略円筒状を呈した後方側の先軸後部14と、先細り形状を呈した前方側の先軸前部16とを備える。
【0034】
図3(a)に示すように、先軸前部16の先端部分には、段部をもって縮径し、後述する変位部材30の先端が貫通する先軸前部縮径孔16aと、再び段部をもって縮径し、先軸前部縮径孔16aの前方に連設している芯周囲部材挿入孔16bとが設けられている。芯周囲部材挿入孔16bには芯周囲部材20が挿入される。なお、先軸前部16の先端近傍の外周には、比較的幅広の溝が設けられており、滑り止めとなるグリップ部材17が装着されている。
【0035】
(コレクター40)
図1(c)に示すように、先軸前部16の内部には、ABS樹脂製のコレクター40が圧入されている。コレクター40には、複数枚の板状部材(枚葉体)が軸方向に平行に配され、この板状部材間に図示しないインクが保留可能となっている。さらに、そのコレクター40の軸心には、繊維束体により形成されたコレクター芯41が貫装されている。また、コレクター40の前方には変位部材30が装着される。
【0036】
(変位部材30)
図5(a)に示すように、変位部材30は、略筒状の中心部材31と、中心部材31の中間より後方寄りの外周においてコレクター40の先端の厚さ分の空隙部34を隔てて成形された略筒状の周辺部材32と、周辺部材32の先端から、中心部材31の中間より前方寄りの位置までを覆うように形成された弾性部材33とを備える。
【0037】
筆記具内においての変位部材30は、
図3(a)に示すように、中心部材31の内部には、後方からコレクター芯41が挿入され、前方からインク供給芯50が挿入される。インク供給芯50の後端はコレクター芯41の先端内に没入するように刺設されている。
【0038】
(中心部材31)
図5(c)に示すように、中心部材31の内周には、コレクター芯41と略同径の後方挿入孔31aが中心部材31の後端から中間より先端寄りの位置にかけて設けられ、インク供給芯50と略同径の前方挿入孔31cがその前方に設けられている。
【0039】
また、中心部材31の外周の中間付近に円環状の中心部材鍔部31eが形成されている。さらに、中心部材31は、後端から中心部材鍔部31eまでの後方円柱部後部31dと、中心部材鍔部31eから後方挿入孔31aの先端よりも後端寄りの箇所までに位置する後方円柱部前部31fと、後方円柱部前部31fの先端から後方挿入孔31aの先端のやや前方までに位置する中間円柱部31gと、中間円柱部31gの先端から中心部材31の先端までに位置する前方円柱部31hとを有している。
【0040】
なお、変位部材30にインク供給芯50を装着した状態で、前方円柱部31hの中間辺りに外周から内側にポンチ加工を施して内方突起35が形成される(
図3参照)。この内方突起35は、インク供給を阻害しない程度の力でインク供給芯50を押圧することで、中心部材31とインク供給芯50とを固定している。そして、中心部材31とインク供給芯50とが固定されているため、インク供給芯50の動きに伴い、変位部材30の中心部材31がともに移動することとなっている。
【0041】
ここで、後方円柱部後部31d及び後方円柱部前部31fの外径は、コレクター40の先端部の内径と略同径であり、中間円柱部31gの外径は、後方円柱部前部31fの外径よりやや小径である。さらに、前方円柱部31hの外径は、
図3(a)に示す芯周囲部材20の後方側に設けられた後部挿入孔24の径と略同径である。
【0042】
(周辺部材32)
図5に示す、周辺部材32の内径は、コレクター40の先端部の外径と略同径である。また、
図5(c)に示すように、周辺部材32の内周面32aの中間より後端寄りの箇所に、円環状に形成された周辺部材内方突起32bが設けられている。なお、周辺部材内方突起32bは、コレクター40の先端部を周辺部材32と中心部材31とで挟持すべく設けられている。
【0043】
また、周辺部材32の外周は、その後端から周辺部材内方突起32bまでの間に位置する周辺部材後方外周部32cと、周辺部材後方外周部32cに連設し外径が縮小している周辺部材中間外周部32dと、周辺部材中間外周部32dに連設し、周辺部材32の先端までに位置し外径が縮小している周辺部材前方外周部32eとからなる。
【0044】
周辺部材前方外周部32eの先端付近には、円環状の周辺部材外方突部32fが設けられている。
【0045】
(弾性部材33)
図5(c)に示すように、弾性部材33は、周辺部材32の周辺部材前方外周部32eを覆い、その外径が周辺部材中間外周部32dの径と略同径であって略円筒状を呈する弾性部材後方円柱部33aと、弾性部材後方円柱部33aに連設し、中心部材鍔部31eの後方寄りの位置までを覆い、段階的に蛇腹状に縮径する連結部33bと、連結部33bに連設し、中間円柱部31gの後方側部分までを覆い、なだらかな先細な円錐形状を呈する弾性部材前方円錐部33cとからなる。
【0046】
弾性部材後方円柱部33aは、周辺部材前方外周部32eの後端から周辺部材前方外周部32eの先端までを覆い、その結果として周辺部材外方突部32fと係合している。
【0047】
ここで、弾性部材33の内周は、中心部材31及び周辺部材32の外周に密着するように形成され、連結部33bの後端側の内径は、周辺部材32の内径と同一である。また、連結部33bの前方側の内径は段階的に縮径している。
【0048】
(変位部材30)
変位部材30は、二色成形により成形された部品であり、中心部材31及び周辺部材32を一次成形で成形し、これら中心部材31及び周辺部材32に対し弾性部材33を二次成形により一体成形している。弾性部材33は、連結部33bにおいて、撓りをもたせるため、弾性樹脂材料によって形成される。
【0049】
また、弾性樹脂材料としては、成型工程において、金型を用いて、高温下で行うため熱可塑性エラストマー等の粘弾性材料が望ましい。なお、一次成形体である中心部材31及び周辺部材32の材質は、弾性部材33より剛性の高いPBT樹脂等の硬質樹脂が望ましい。
【0050】
(変位部材30の撓みの説明)
以下、
図3を用いて、インク供給芯50に対して大きな筆記荷重がかかった際に突出位置から没入位置へと移動する過程について説明する。
【0051】
上述のように、本実施形態における変位部材30は弾性部材33が弾性樹脂材料により形成されているため、インク供給芯50に対して大きな筆記荷重がかかった際に弾性部材33が弾性変形することで撓みが生ずる。
【0052】
具体的には、大きな筆記荷重、すなわち、インク供給芯50が加圧により後退を開始する際にインク供給芯50に加わるセット荷重が本実施形態においては1Nから7Nの間で設定されており、このセット荷重よりも大きな荷重がかかると、弾性部材33が弾性変形して撓みが生ずる。本実施形態においてセット荷重を1N以上で設定した理由としては、1Nよりも小さいと、多少の筆記荷重でインク供給芯50が後方に移動してしまい、インク供給芯50ががたついて筆感が悪くなるからである。一方、本実施形態においてセット荷重を7N未満で設定した理由としては、7Nよりも大きいと、多少の筆記荷重ではインク供給芯50が後方に移動しないため、インク供給芯50がその全ての筆記荷重を受ける結果、インク供給芯50が折れたり潰れたりしてしまうからである。
【0053】
図3(a)は、筆記具1の突出位置を示した拡大断面図であるが、セット荷重よりも大きな荷重がかかった場合には、
図3(b)に示すように、弾性部材33が弾性変形して撓みが生ずることに伴いインク供給芯50も後方に移動して、筆記具1が突出位置から没入位置へ移動する。
【0054】
(芯周囲部材20)
図3(a)に示すように、芯周囲部材20は、円筒状の芯周囲部材固定部21と、芯周囲部材固定部21に対し段部をもって一旦拡径して連設する略円錐形状の芯周囲部材テーパー部22とからなる。芯周囲部材テーパー部22の先端には、面取りされた芯周囲部材先端部23が設けられている。ここで、本実施形態における芯周囲部材20はポリアセタールで形成されている。
【0055】
また、芯周囲部材20には、その後端から先端にかけて孔が貫通している。具体的には、芯周囲部材固定部21から芯周囲部材テーパー部22への段部を超えた箇所までの内周が後部挿入孔24であり、その先の芯周囲部材テーパー部22の内周が、段階的に縮径した前部挿入孔25である。
【0056】
ここで、芯周囲部材固定部21は、芯周囲部材挿入孔16bに装着されることで、先軸11に固定される。そして、芯周囲部材20はインク供給芯50及び後述する被覆部材51を被覆する。この際、後部挿入孔24に変位部材30の前方円柱部31h(
図5(b)、(c)参照)が挿入され、前部挿入孔25には、変位部材30から突出するインク供給芯50が挿入される。
【0057】
(インク供給芯50)
図4(a)に示すインク供給芯50は、ポリアセタール等の樹脂素材を押出成形することにより形成される。押出成形時には、毛細管現象によりインク供給芯50の先端までインクを誘導するための通路、すなわちインク供給空間が形成されている。また、
図4(b)に示すように、インク供給芯50の外周は、被覆部材51により覆われている。なお、被覆部材51とは、インク供給芯50の外周を覆うものであればよく、本実施形態のように独立した筒状の樹脂製の部材であってもよいし、インク供給芯50の外周を樹脂などでコーティングしたものであってもよい。そして、インク供給芯50は被覆部材51によってその外周を覆われていることから、変位部材30への挿入の際にインク供給芯50の外周が他の部材に引っかかりにくくなるため、変位部材30への挿入が容易となり、かつ、インク供給芯50の強度を保つことができる。なお、インク供給芯50のベース材料は、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種若しくは2種以上の組み合わせからなるものを使うことができる。また、並行繊維束やフェルト等の繊維束を加工若しくはこれらの繊維束を樹脂加工した繊維芯、各種のプラスチック粉末などを焼結したポーラス体(焼結芯)としてもよい。
【0058】
ここで、インク供給芯50は、摩耗促進剤を混入させたインク供給芯を設けたものである。インク供給芯のベース材料はポリアセタール樹脂が好適である。
【0059】
前記摩耗促進剤は、インク供給芯内のベース材料に不溶な粒子を1%以上配合したものが好適である。1%以上配合しないと十分な摩耗量を得ることが困難であり、また25%以上の場合は、筆記の際に著しく摩耗してしまいインク供給芯としての品質を得ることが困難であるので、25%未満とすることが好ましい。
【0060】
摩耗促進剤としては、二酸化チタン、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、黄色酸化鉄、亜鉛フェライト顔料、べんがら、群青、コバルトブルー、酸化クロム、スピネルグリーン、鉄黒、黄鉛、クロムオレンジ、モリブデンレッド、カドミウムイエロー、カドミウムオレンジ、カドミウムレッド、炭酸カルシウム、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ジアソライド系、縮合アゾ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、バット系、フタロシアニン系、窒化ホウ素、シリカ、アルミナ、などの無機粒子、有機粒子を用いることができ、その中でもカーボンブラックや酸化チタンが好適である。
また、粒子のサイズは100nm~10μmが好ましく、サイズの測定は、動的光散乱法による粒子径測定器 FPAR-1000(大塚電子社製)より求めた値である。
【0061】
前記摩耗促進剤は、インク供給芯50のベース材料よりも高硬度の材料を1%以上配合したものであることが好適である。1%以上配合しないと十分な摩耗量を得ることが困難であり、また50%以上の場合は、筆記の際に著しく摩耗してしまいインク供給芯としての品質を得ることが困難であるので、50%未満とすることが好ましい。
【0062】
また、前記インク供給芯50はペン先を突出された状態に固定部材の変位部材30で支持されており、前記インク供給芯50よりも固定部材である変位部材30が弾性変形しにくくなっており、インク供給芯50が摩耗しやすいように前記変位部材30が構成されている。
【0063】
前記インク供給芯50は、1mあたりの摩耗量が1μm以上であることが好適である。なお、1mあたりの摩耗量は、JIS S6037に準拠した試験方法(上質紙面上で筆記角度65°、筆記荷重1N、速度7cm/sでの螺旋筆記)に従った後、インク供給芯の重量を測定することで求めることができる。
【0064】
なお、上記のインク供給空間は、押出成形時に、インク供給芯50の内部に毛細管力が発生する間隙を形成することも、インク供給芯50の外部に毛細管力が発生する間隙を形成することも可能である。
【0065】
ここで、本実施形態においては、インク供給芯50の外周部分と芯周囲部材先端部23との間の距離は、最大0.05mmとなるように形成されている。このように、インク供給芯50の外周部分と芯周囲部材先端部23との間の距離を極力少なくすることで、インク供給芯50に斜め方向から大きな筆記荷重がかかった場合であってもインク供給芯50の後方への移動を容易に行うことができることとなる。
【0066】
また、本実施形態においては、突出位置におけるインク供給芯50の先端部分が芯周囲部材先端部23から突出している寸法がインク供給芯50の径の100%以上となるように形成されている。すなわち、
図3(a)では、インク供給芯50の先端部分が芯周囲部材先端部23から突出している寸法がインク供給芯50の径よりも長くなっている。具体的には、本実施形態におけるインク供給芯50の径は1.0mmであるため、突出位置におけるインク供給芯50の先端部分が芯周囲部材先端部23から突出している寸法は、1.0mm以上であればよい。なお、この突出位置におけるインク供給芯50の先端部分が芯周囲部材先端部23から突出している寸法は、15mm以上であることが望ましい。
【0067】
(筆記具1の特性)
本実施形態に係る筆記具1は、摩耗促進剤を混入させたのでインク供給芯50が耐摩耗性が落ちるため、筆記の際に滑らかな筆感が得られる。また、流路のつまりを抑制することができる。
【0068】
したがって、耐摩耗性が高いペン先のインク供給芯で筆記する場合に比較して、ざらつき感がなく滑らかな筆感が得られる。例えば、粗悪な紙やコート紙に筆記したり、押し書き筆記しても紙面よりも先にインク供給芯のペン先が削れ落ち、削った紙面カスが流路を防ぐことがない。
【0069】
紙面等の比較的脆弱な素材に筆記する際にも、摩耗性が高まるため筆記面である素材を傷めることを防止できる。紙面が削れないので、見た目や引き面の保存性がよい等の優れた効果が得られる。
【0070】
なお、筆記具1は、変位部材30が3部材からなっており、その特性として周辺部材32と中心部材31とが、同一の一次成形体でありながら、互いに一次成形体としては連続していないため、弾性部材33の連結部33b付近が変形し、変位部材30が撓りやすい構造となっている。
【0071】
そのため、
図3(b)に示すように、筆記圧によって変位部材30を撓ませることでインク供給芯50と芯周囲部材20との相対的な位置関係が変位し、インク供給芯50を没入位置へと移動させることができる。
【0072】
一方、
図3(a)に示すように、筆記荷重を減らしてインク供給芯50にかかる筆記荷重が弱まった場合には、変位部材30の弾性作用により撓んだ形状が初期の形状に戻り、それに応じてインク供給芯50も突出位置に戻ることとなる。
【0073】
また、インク供給芯50に対して大きな筆記荷重がかかり、インク供給芯50を没入位置に移動させた場合には、インク供給芯50の代わりに芯周囲部材20が筆記荷重を受けることとなるため、インク供給芯50の折れや潰れを防ぐことができる。さらに、インク供給芯50は芯周囲部材20で覆われている為、筆記具1をぶつけてしまったり、落下により筆記具1に衝撃が加わったりしてもインク供給芯50が破損して筆記不能になることがない。
【0074】
なお、本実施形態に係る筆記具1は、インク供給芯50に対して後方に大きな筆記荷重がかかると変位部材30の弾性作用に伴って、インク供給芯50が没入位置に移動し、芯周囲部材20の先端からのインク供給芯50の突出距離が小さくなった場合には、滑らかに細い描線を描くことができなくなる。そのため、インク供給芯50が没入位置にある場合において、細い描線を描くためには、使用者は筆記荷重を減少させ、変位部材30の弾性作用によって、インク供給芯50を突出位置に移動させることが必要となる。そして、筆記荷重を減少させ、変位部材30の弾性作用によって、インク供給芯50が突出位置に再び移動した場合には、芯周囲部材20の先端からのインク供給芯50の突出距離が大きくなるので、再び細い描線を描くことができる。
【0075】
さらに、本実施形態においては、インク供給芯50を樹脂素材で形成し、かつ、芯周囲部材20をポリアセタールから形成することとしている。その結果、インク供給芯50と芯周囲部材20との摩擦係数を減少させることができ、インク供給芯50が後方へ移動する滑りが良好となるため、インク供給芯50に斜めから大きな筆記荷重がかかった場合でもインク供給芯50を後方へ移動させることができることとなっている。
【0076】
(第2実施形態)
(全体構成)
第2実施形態に係る筆記具1は、
図6(a)、(b)に示すように、略円筒形状の軸筒10と、軸筒10の後端に装着される尾栓19と、軸筒10の先端から一部が突出している芯周囲部材20と、芯周囲部材20の先端から一部が突出しているインク供給芯50を備えた外観を呈している。なお、軸筒10の先端側は段階的に縮径した軸筒先端縮径部10aとなっており、この部分には図示しないキャップが装着可能である。
【0077】
(軸筒10)
本実施形態に係る筆記具1では、
図6(b)、(c)に示すように、軸筒10の内部空間がインクタンク13となっていて、その中にポリエステルファイバー製の中綿18が充填されている。中綿18には水性のインクが浸潤している。インクタンク13の先端には、中心に貫通孔のある略円盤状の芯貫通部材60が係止している。尾栓19は軸筒10の後端から挿入される。尾栓19の先端は中綿18の後端と当接している。すなわち、中綿18は、先端が芯貫通部材60で、後端が尾栓19の先端でそれぞれ支持されている。芯貫通部材60の前方には変位部材30が位置し、さらにその前方には芯周囲部材20が位置している。芯周囲部材20の一部は、上述の通り軸筒10の先端から露出している。変位部材30は、略円筒形状の移動部材36と、これに外挿されるスプリングで構成される弾性部材33とからなる。芯周囲部材20及び変位部材30の構造の詳細については後述する。中綿18の先端側部分には棒状のインク供給芯50が刺設されている。このインク供給芯50は、芯貫通部材60の貫通孔を通り、変位部材30及び芯周囲部材20の内部空間を通過して、先端が芯周囲部材20の先端から露出している。
【0078】
(芯周囲部材20)
図7に示すように、芯周囲部材20は、円筒状の後方円柱部26と、その前方に位置とともに外方に拡径する中間フランジ部27と、その前方に位置するとともに段階的に縮径する先端縮径部28とからなる。中間フランジ部27は、より詳しくは、前方に向かってテーパー状に拡径する後向テーパー面27aと、この前方に位置するとともに前方に向かってテーパー状に縮径する前向テーパー面27bとからなる。また、先端縮径部28は、より詳しくは、前方に向かって緩慢に縮径する第1縮径部28aと、その前方に位置するとともに前方に向かってより急激に縮径する第2縮径部28bと、その前方に位置するとともに前方に向かって先端まで再び緩慢に縮径する第3縮径部28cとからなる。また、芯周囲部材20の側面において軸心を挟んで対向する2箇所が、第1縮径部28aの後方部分を平面上に削ぎ落とすとともに中間フランジ部27及び後方円柱部26を切り欠いた通気溝29として形成されている。
【0079】
インク供給芯50が突出位置にある状態では、この通気溝29と軸筒10の先端開口との間で生じた隙間29aによって軸筒10の内外の通気が可能となっている(
図9参照)。ここで、この芯周囲部材20はポリアセタールで形成されている。
【0080】
また、芯周囲部材20には、その後端から先端にかけて孔が貫通している。具体的には、後端から第1縮径部28aの中途箇所までの内周部分が後部挿入孔24であり、その先のより小径の内周部分が前部挿入孔25である。
【0081】
(変位部材30)
図6(b)に示すように、変位部材30は、略円筒形状の移動部材36と、これに外挿される弾性部材33で構成される。
図8に示すように、移動部材36は円筒形状の中間円柱部36bと、中間円柱部36bの後端がフランジ状に拡径した後端フランジ部36cと、中間円柱部36bの先端側が縮径した先端円柱部36aとからなる。後端フランジ部36cの円周において軸心を挟んで対向する2箇所の円弧部分が切り欠かれた切欠部36dとなっている。
【0082】
図6(c)に示すように、芯貫通部材60の弾性部材33は中間円柱部36bの外周面に外挿される。弾性部材33の後端は後端フランジ部36cの前方側の面で支持される。
【0083】
ここで、軸筒先端縮径部10aの内部において、芯貫通部材60の前方部分の内径は弾性部材33の外径より大きく、この部分が変位部材収容部10bとなっている。また、変位部材収容部10bの前方の空間は段差10cをもって縮径した軸筒縮径部10dとなっている。
【0084】
軸筒縮径部10dの内径は弾性部材33の外径より小さい。弾性部材33の先端はこの段差10cで支持される。軸筒縮径部10dの先端部分の内径はわずかに拡径しておりこの部分が軸筒先端孔10eとなっている。
【0085】
芯周囲部材20の後方円柱部26は、
図6(c)に示すようにインク供給芯50が突出位置にある状態(以下、「突出状態」とする。)においては、軸筒縮径部10d及び軸筒先端孔10eの内部に位置している。そして、段差10cに跨がる位置で、移動部材36の先端円柱部36aは、芯周囲部材20の後端から後部挿入孔24に圧入されて固定されている。突出状態においてはさらに、中間フランジ部27の後向テーパー面27aが軸筒先端孔10eの先端縁と当接している。
【0086】
インクタンク13から芯貫通部材60及び変位部材30を貫通したインク供給芯50は後部挿入孔24を通り前部挿入孔25を摺動自在に貫通してその先端を第3縮径部28cの先端から露出させている。なお、インク供給芯50の材質については前記第1実施形態と同様である。
【0087】
(変位部材30の撓みの説明)
突出状態においては、
図6(c)に示すように、弾性部材33によって移動部材36が後方に付勢され、後端フランジ部36cが芯貫通部材60に当接している。これにより、移動部材36に固定されている芯周囲部材20も後方へ付勢され、中間フランジ部27の後向テーパー面27aが軸筒先端孔10eの先端縁と当接している。この状態を斜視図で示したのが
図9(a)、(c)であり、インク供給芯50の先端は芯周囲部材20に対して相対的に突出した状態を保っている。
【0088】
筆記状態においては、インク供給芯50は筆記面に対して垂直に押圧されることは稀であり、幾分かの角度をもって斜めに押圧されることが多い。その場合、インク供給芯50に加圧により撓みが生ずるが、この撓みにより生じた力により、筆記面とはインク供給芯50を挟んだ反対側の中間フランジ部27の後向テーパー面27aが軸筒先端孔10eの先端縁から滑るようにして前方へ移動する。一方、この反対側の中間フランジ部27は軸筒先端孔10eの先端縁から離れる。これに伴い、
図9(d)や
図10に示すように芯周囲部材20は軸筒に対して斜めに傾いた状態となる。そして芯周囲部材20に固定されている移動部材36もこれに伴い同様に傾いた状態となって、芯貫通部材60の端面から離れる。そして、芯周囲部材20が先端方向へ移動したことによって、インク供給芯50の先端は芯周囲部材20に対して相対的に没入した状態となる(以下、「没入状態」とする。)。
【0089】
この没入状態から、筆記先端を紙面から離すと、インク供給芯50への加圧が解かれ、弾性部材33が復元し、芯周囲部材20もそれに伴い軸筒先端縮径部10aの内部へ後退し、
図6及び
図9(a)、(c)に示す突出状態に復帰する。
【0090】
(その他)
なお、上記第2実施形態では弾性部材33としてのスプリングは筆記先端への加圧によって圧縮されることとなっているが、それには限られない。たとえば、
図6に示す突出状態において、移動部材36と芯貫通部材60とが離間した位置を保つとともに、これらの部材が、これらの間に介在する、弾性部材33としての自然長のスプリングで連結されるようにすることができる。このようにすることで、筆記先端に何らの力もかかっていない状態では、移動部材36が常に弾性部材33によって後方に引きつけられているようにすることができる。そして、インク供給芯50が加圧された際には、弾性部材33が引っ張られて延伸することを除けば、第2実施形態に示すのと同様に芯周囲部材20を挙動させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の筆記具は、マーキングペン等の筆記具に利用することができる。
【符号の説明】
【0092】
10 軸筒
11 先軸
12 後軸
13 インクタンク
30 変位部材
31 中心部材
32 周辺部材
33 弾性部材
36 移動部材
50 インク供給芯
60 芯貫通部材