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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】シート給送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/06 20060101AFI20231218BHJP
   B65H 1/14 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B65H3/06 350A
B65H1/14 310B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019154160
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021031252
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 泰旭
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108067(JP,A)
【文献】特開2018-127312(JP,A)
【文献】特開2018-135171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 3/06
B65H 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが積載されるシート積載部と、
前記シート積載部に積載されたシートの上面に当接してシートを給送する給送手段と、
第1方向及び前記第1方向とは反対の第2方向の回転を出力可能な駆動モータと、
前記駆動モータに連結された昇降機構と、を備え、
前記昇降機構は、前記駆動モータが前記第1方向の回転を出力する場合に、前記シート積載部を上昇させると共に前記給送手段を下降させ、前記駆動モータが前記第2方向の回転を出力する場合に、前記シート積載部を下降させると共に前記給送手段を上昇させる、
ことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記給送手段を駆動する給送モータと、
前記給送モータ及び前記駆動モータを制御する制御手段であって、前記シート積載部からシートを給送するジョブにおいて最終シートの給送が開始された後、前記給送モータを停止させる前に前記駆動モータを前記第2方向に回転を開始させる制御手段と、をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
シートの給送方向において前記給送手段の下流に配置され、前記給送モータに駆動されてシートを搬送する搬送手段を備え、
前記制御手段は、前記ジョブにおける最終シートの前記給送方向における先端が前記搬送手段に到達した後、最終シートの後端が前記搬送手段を通過する前に前記駆動モータを前記第2方向に回転を開始させ、その後、最終シートの後端が前記搬送手段を通過した後に前記給送モータを停止させる、
ことを特徴とする請求項2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記給送モータから前記給送手段への駆動伝達を係合及び解放するクラッチをさらに備え、
前記制御手段は、前記駆動モータにより前記給送手段が前記シート積載部に積載されたシートの上面に当接している状態が維持され、かつ、前記給送モータによる前記搬送手段の駆動が継続している状態で、前記クラッチを係合した後に解放する動作を繰り返し実行することで、前記シート積載部から1枚ずつシートを給送させる、
ことを特徴とする請求項3に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記給送手段が所定の給送位置にあるか否かに応じて検知信号が変化する給送位置センサと、
前記給送手段を下方に付勢する付勢手段と、をさらに備え、
前記昇降機構は、前記給送手段を前記給送位置より上方の上方位置と前記給送位置より下方の下方位置との間で昇降させるように構成され、かつ、前記駆動モータが前記第1方向の回転を出力する場合に、前記給送手段が前記上方位置から前記下方位置に移動した後に、前記シート積載部に積載されたシートに押圧されて前記給送手段が前記付勢手段の付勢力に抗して前記給送位置まで移動することを許容する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記昇降機構は、シート給送装置の枠体により揺動可能に支持され、前記給送手段に連結され、揺動することで前記給送手段を昇降させる揺動部材を含み、
前記給送手段は、前記枠体に対して所定の取外し方向に取外し可能であり、前記取外し方向に取外される動作に伴って前記揺動部材から離脱し、前記取外し方向とは反対の方向に装着される動作に伴って前記揺動部材と係合する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項7】
前記昇降機構は、前記シート積載部を昇降させる第1昇降部と、前記給送手段を昇降させる第2昇降部と、前記駆動モータの駆動力を前記第1昇降部及び前記第2昇降部に伝達する伝達部と、を有し、
前記第2昇降部は、シート給送装置の枠体により揺動可能に支持され、前記給送手段に連結され、揺動することで前記給送手段を昇降させる揺動部材と、前記枠体によりスライド移動可能に支持され、前記伝達部と前記揺動部材とを連結するリンク部材と、を有し、前記駆動モータから前記伝達部を介して伝わる回転を、前記リンク部材により、前記揺動部材が揺動する方向に沿った直線運動に変換して前記揺動部材を揺動させる、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項8】
前記揺動部材は、前記給送手段によるシートの給送方向に垂直なシートの幅方向に延びる揺動軸を中心にして揺動する、
ことを特徴とする請求項7に記載のシート給送装置。
【請求項9】
前記揺動部材は、鉛直方向に見て前記給送手段によるシートの給送方向に平行な方向に延びる揺動軸を中心にして揺動する、
ことを特徴とする請求項7に記載のシート給送装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のシート給送装置と、
前記シート給送装置から給送されるシートに画像を形成する画像形成手段と、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを給送するシート給送装置及びシートに画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、複合機等の画像形成装置は、記録材又は原稿として用いるシートを給送するために、トレイ等に積載されたシートを給送ローラ又はピックアップローラ等の給送手段によって1枚ずつ給送するシート給送装置を備えている。このようなシート給送装置において、給送ローラ等が長時間シートに接触していると、ローラの外周部を構成するゴム材料の油分がシートに染み出して次回の印刷時における画像不良の原因となる場合がある。
【0003】
特許文献1には、モータが正転する場合にピックアップローラが用紙を送り出し、当該モータが逆転する場合にピックアップローラが用紙から離間する構成の原稿搬送装置が記載されている。特許文献2の給紙装置では、給送カセットが装置本体に装着されると、モータを正転させてリフト板上のシート束をピックアップローラに当接させ、給紙動作の終了時には、モータを逆転させてシート束をピックアップローラから離間させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-24513号公報
【文献】特開2010-64805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記各文献の構成では、ピックアップローラを用紙から離間させるのに十分な量でモータを逆転させる必要があった。しかし、モータの逆転時間が長くなる程、稼働音が発生する期間が長くなり、あるいはモータの寿命が縮まるなどの影響が現れる。
【0006】
そこで、本発明は、給送手段をシートから離間させる動作を短縮可能なシート給送装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、シートが積載されるシート積載部と、前記シート積載部に積載されたシートの上面に当接してシートを給送する給送手段と、第1方向及び前記第1方向とは反対の第2方向の回転を出力可能な駆動モータと、前記駆動モータに連結された昇降機構と、を備え、前記昇降機構は、前記駆動モータが前記第1方向の回転を出力する場合に、前記シート積載部を上昇させると共に前記給送手段を下降させ、前記駆動モータが前記第2方向の回転を出力する場合に、前記シート積載部を下降させると共に前記給送手段を上昇させる、ことを特徴とするシート給送装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、給送手段をシートから離間させる動作を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係る画像形成装置の概略図。
図2】実施例1に係る給送ユニットの断面図。
図3】実施例1に係るリフト板及びその昇降機構を示す斜視図(a、b)。
図4】実施例1に係る給送ローラの昇降機構を示す斜視図。
図5】実施例1に係る給送ローラとリフト板の昇降動作を説明するための図(a、b)。
図6】実施例1に係る給送ローラとリフト板の昇降動作を説明するための図(a、b)。
図7】実施例1に係る給送ローラとリフト板の昇降動作を説明するための模式図(a~d)。
図8】実施例1に係る画像形成装置の制御構成を表すブロック図。
図9】実施例1に係る画像形成装置の制御方法を表すフローチャート。
図10】実施例2に係る給送ローラの昇降機構を示す斜視図。
図11】実施例2に係る給送ローラとリフト板の昇降動作を説明するための図(a、b)。
図12】実施例2に係る給送ローラとリフト板の昇降動作を説明するための図(a、b)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための例示的な形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
<実施例1>
図1は、実施例1に係る画像形成装置1を表す概略図である。画像形成装置1は、モノクロのトナー像を形成する電子写真方式のレーザビームプリンタである。画像形成装置1は、記録材として用いるシートを給送するシート給送部2と、シートに画像を形成する画像形成部5と、を有している。なお、記録材としては、普通紙及び厚紙等の紙、プラスチックフィルム、布、コート紙のような表面処理が施されたシート材、封筒やインデックス紙等の特殊形状のシート材など、サイズ及び材質の異なる多様なシートを使用可能である。
【0012】
画像形成部5は、プロセスカートリッジPと、レーザスキャナ52と、転写ローラ53と、を有している。画像形成装置1に対して画像形成の指令が入力されると、画像形成部5は電子写真プロセスによる画像形成動作を開始する。即ち、プロセスカートリッジPに設けられた感光ドラム51が回転を開始し、帯電器がドラム表面を一様に帯電させる。レーザスキャナ52は、画像形成装置1に入力された画像情報に基づいて、感光ドラム51に向けてレーザ光を照射して露光し、ドラム表面に静電潜像を書き込む。この潜像は、現像器から供給される現像剤によって現像され、感光ドラム51にトナー像が形成される。
【0013】
このプロセスに並行して、シート給送部2からシートSが給送される。シート給送部2は、画像形成装置1の筐体から引き出し可能なカセット3のリフト板31に積載されたシートSを給送する給送ローラ211を備えている。シート給送部2によって給送されるシートSは、搬送ローラ対4を介して、感光ドラム51と転写ローラ53との間のニップ部である転写部へと搬送される。転写部において、転写ローラ53にトナーの正規帯電極性とは反対極性のバイアス電圧が印加されることにより、感光ドラム51に担持されているトナー像がシートSへと転写される。
【0014】
定着部6は、定着フィルム及び定着フィルムの内周側に配置された発熱手段としてのセラミックヒータ等によって構成される加熱ユニット61と、これと圧接する加圧ローラ62によって定着ニップを形成している。シートSが定着ニップを通過する際に、シート上のトナー像が加熱及び加圧されてトナーが溶融し、その後固着することで、未定着画像がシートSに永久定着される。定着部6を通過したシートSは、排出パス7を経由して、排出ローラ対8により機外に排出され、排出トレイ9に積載される。
【0015】
本実施例では、シートに画像を形成する画像形成手段として、直接転写式の電子写真ユニットである画像形成部5を用いている。しかし、これに限らず、感光体に形成したトナー像を中間転写ベルト等の中間転写体を介してシートに転写する中間転写式の電子写真ユニットを画像形成手段として用いてもよい。また、これに限らず、例えばノズルからインク液を吐出させることによってシートに画像を形成するインクジェット式の画像形成ユニットを画像形成手段として用いてもよい。
【0016】
[シート給送部]
本実施例におけるシート給送装置であるシート給送部2の詳細な構成について、図2を用いて説明する。図2は、シート給送部2により給送されるシートの幅方向(給送方向に直交する方向)から見たシート給送部2の断面を表したものである。
【0017】
シート給送部2は、給送フレーム22と、給送ローラユニット21と、分離ローラ24と、を備えている。給送フレーム22は、画像形成装置の枠体に対して固定されており、本実施例におけるシート給送装置の枠体を構成している。給送ローラユニット21及び分離ローラ24は、給送フレーム22に支持されている。カセット3は、画像形成装置の本体に対して開閉可能、つまり給送フレーム22に対して移動可能であり、カセット開閉センサ74(図8)によって開閉を検知されるように構成される。
【0018】
給送ローラユニット21は、給送ローラ211、搬送ローラ212、ローラホルダ213及びアイドラギア214を含むユニットである。給送ローラ211と搬送ローラ212は、保持部材としてのローラホルダ213により回転可能に保持されている。ローラホルダ213は、搬送ローラ212の回転軸線を中心に揺動可能である。ローラホルダ213には、給送ローラ211を下方に付勢することでシートに対する加圧力を付与するため、バネ部材を例とする加圧機構が接続されている。
【0019】
給送手段としての給送ローラ211は、駆動源である後述の給送モータに駆動されることで図中反時計回り方向に回転し、シート積載部としてのリフト板31に積載されたシートを給送方向(図中右方)に送り出す。搬送ローラ212も、共通の駆動源である給送モータに駆動されることで図中反時計回り方向に回転し、給送方向の下流へ向けてさらにシートを搬送する。
【0020】
分離部材としての分離ローラ24は、給送フレーム22に固定された軸にトルクリミッタを介して接続されたローラ部材である。分離ローラ24は搬送ローラ212に当接して分離ニップを形成しており、分離ニップを通過するシートを摩擦力によって分離する。即ち、給送ローラ211によって送り出されるシートが1枚だけ分離ニップを通過しているときは、トルクリミッタが滑ることで分離ローラ24がシートを介して搬送ローラ212に連れ回る。一方、複数枚のシートが分離ニップに進入すると、分離ローラ24は回転を停止してシート同士を滑らせ、搬送ローラ212に接している最上位のシートのみが搬送される。このような分離ローラ24は分離部材の一例であり、シートの給送に逆らう方向(図中反時計回り方向)の駆動力が給送モータから入力されるリタードローラや、搬送ローラ212に接するパッド状の摩擦部材を用いてもよい。
【0021】
シート給送部2には、リフト板31に積載されたシートの上面(最上位シートの上面)が、給送ローラ211により給送を行うための適切な高さ(以下、給送位置とする)にあるか否かに応じて検知信号が変化する給送位置センサ215が設置されている。給送位置センサ215は、ローラホルダ213の位置を検知する検知手段であり、本実施例ではローラホルダ213に設けられた検知部213a(遮光部)により遮光されるフォトインタラプタを用いている。検知部213aが給送位置センサ215の光軸上にあるときは、リフト板31に積載されたシートの上面が給送位置にあると判断され、そうでないときはシートの上面が給送位置より上方又は下方のいずれかにあると判断される。
【0022】
後述するように、シート給送部2が給送動作を開始するときは、給送ローラ211が給送位置よりも上方の上方位置から下降し、一度給送位置よりも下方の下方位置に移動する。その状態で、リフト板31のリフトアップによってシートの上面が給送ローラ211に当接すると、加圧機構の付勢力に抗してローラホルダ213が持ち上げられる。そして、給送位置センサ215が検知部213aを検知するとリフト板31のリフトアップは停止する。なお、リフト板31にシートが積載されていない状態でリフト板31のリフトアップが行われると、リフト板自身が給送ローラ211に当接する。
【0023】
給送ローラ211が給送位置においてシートに当接している状態で給送モータが給送ローラ211及び搬送ローラ212を回転させることで、カセット3からシートが送り出される。さらに、搬送ローラ212及び分離ローラ24によりシートは1枚ずつに分離された状態で搬送ローラ対4へ搬送される。シートの給送が繰り返し行われることでリフト板31に積載されたシートの枚数が減少するにつれて、給送ローラ211の位置は徐々に下がっていく。ローラホルダ213の検知部213aが給送位置センサ215に検知されない位置まで移動すると、給送位置センサ215が再び検知部213aを検知するまでリフトモータ35がリフト板31を再び上昇させる。これにより、リフト板31に積載されたシートの上面は常に一定の範囲内に制御される。
【0024】
[リフト板の昇降]
次に、カセット3に設けられた昇降機構について、図3を用いて説明する。図3は本実施例の昇降機構30の概略構成を示す斜視図である。図3(a)はリフト板31が初期位置にある初期状態を表し、図3(b)はリフト板31が初期位置よりも上方にあるリフトアップ状態を示している。
【0025】
図3(a)に示すように、昇降機構30は、リフト部材32、リフト入力ギア34及びリフト出力ギア33を備えている。リフト部材32は、カセット3の底部とリフト板31との間に配置され、カセット3により回動可能に支持され、回動することでリフト板31を昇降させる。リフト出力ギア33は、リフト部材32と一体に回動する扇形ギアであり、リフト入力ギア34に噛合っている。リフト入力ギア34は、減速歯車列38を介して駆動源であるリフトモータ35に連結されており、リフトモータ35の駆動力によって回転する。
【0026】
昇降機構30の内、減速歯車列38は後述のローラ昇降部30Bにもリフトモータ35の駆動力を伝達する伝達部を構成している。リフト出力ギア33、リフト入力ギア34及びリフト部材32は、伝達部から駆動力を受け取ることで作動し、リフト板31を昇降させるリフト板昇降部30A(本実施例の第1昇降部)を構成している。
【0027】
リフトモータ35は、後述する制御部70からの指令信号に基づいて、第1方向及びその反対の第2方向の回転を出力可能な駆動モータである。以下、リフト部材32を上昇させてリフト板31をリフトアップする際のリフトモータ35の回転方向(本実施例における第1方向)を「正転方向」とする。反対に、リフト部材32を下降させてリフト板31をリフトダウンする際のリフトモータ35の回転方向(本実施例における第2方向)を「逆転方向」とする。
【0028】
なお、リフト部材32及びリフト出力ギア33は、カセット3に支持されており、リフト入力ギア34及び減速歯車列38は、リフトモータ35と共に画像形成装置の枠体に支持されている。したがって、カセット3が図3(a、b)におけるシートの幅方向W(給送方向Fdに垂直な方向)に引き出されると、リフト出力ギア33とリフト入力ギア34の噛合いが外れる。カセット3が画像形成装置に対して図3(a、b)に示す所定の装着位置まで挿入されていると、リフト出力ギア33とリフト入力ギア34とが噛合い、リフト部材32はリフトモータ35に対して常時連結された状態となる。したがって、本実施例では、カセット3が閉じた状態において、リフトモータ35はリフト板31のリフトアップ及びリフトダウンの両方を行うことができる。
【0029】
また、減速歯車列38は、ウォームギア38a及び複数の段ギア38b、38c(図4も参照)を含んでおり、リフトモータ35の回転を減速してリフト入力ギア34と一体の大径ギア38dに伝達する。したがって、比較的出力トルクが小さい小型のモータをリフトモータ35として使用しても、リフト板31(及び後述するように給送ローラ211)の昇降動作を安定して行うことができる。
【0030】
[給送ローラ211の昇降機構]
次に、リフトモータ35の駆動力を用いて給送ローラ211を昇降させる機構であるローラ昇降部30B(本実施例の第2昇降部)について、図4を用いて説明する。ローラ昇降部30Bは、伝達部としての減速歯車列38とローラホルダ213とを連結する形で、リフトモータ35と給送ローラユニット21との間に介在している。ローラ昇降部30Bは、リフトモータ35の駆動力を用いてローラホルダ213を揺動させることで、給送ローラ211をシートに当接及び離間するように移動させる装置(給送ローラ当接離間部)である。
【0031】
ローラ昇降部30Bは、ローラ昇降ギア36と、ローラ昇降リンク37と、ローラ昇降レバー25とによって構成される。ローラ昇降ギア36は、減速歯車列38を介してリフトモータ35と連結されている。ローラ昇降レバー25は、給送ローラユニット21に連結され、給送ローラユニット21と連動して揺動する揺動部材である。ローラ昇降リンク37は、ローラ昇降ギア36と噛合うラック部37aを有し、ローラ昇降ギア36とローラ昇降レバー25とを連結するリンク部材である。
【0032】
ローラ昇降リンク37及びローラ昇降レバー25は、給送フレーム22によって移動可能に支持されている。ローラ昇降リンク37は、上下方向(略鉛直方向)にスライド移動可能であり、ラック部37aに噛合うローラ昇降ギア36の回転を上下方向の直線運動に変換する。リフトモータ35の正転によってローラ昇降リンク37は下降し、リフトモータ35の逆転によってローラ昇降リンク37は上昇する。
【0033】
ローラ昇降レバー25は、給送ローラ211の回転軸線の方向(シートの幅方向)に延びる揺動軸X1を中心にして上下に揺動可能な揺動部材である。ローラ昇降レバー25は、軸線方向の一方の端部25aにおいて給送ローラユニット21のローラホルダ213に係合しており、ローラホルダ213と共に上下に揺動する。ローラ昇降レバー25の軸線方向の他方の端部25bは、ローラ昇降リンク37の上端に設けられた押圧部37bに対向している。押圧部37bとローラ昇降レバー25の端部25bとの係合箇所は、給送ローラ211がシートに押圧されることで、ローラ昇降リンク37が停止した状態でローラホルダ213及びローラ昇降レバー25が上方に揺動することを許容するように構成されている。また、ローラ昇降レバー25と給送フレーム22との間には付勢手段としての加圧バネ39が取付けられており、ローラ昇降レバー25を下方に付勢している。なお、図4では加圧バネ39をねじりコイルバネとして図示しているが、付勢手段の構成はこれに限らず、例えば揺動軸X1の周りに取付けたトーションコイルバネを用いてもよい。
【0034】
リフトモータ35の正転によってローラ昇降リンク37が下降する場合、ローラ昇降レバー25は加圧バネ39の付勢力及び自重により、下方へと回動する。リフトモータ35の逆転によってローラ昇降リンク37が上昇する場合、ローラ昇降レバー25はローラ昇降リンク37の押圧部37bに押圧されることで上方に揺動する。
【0035】
また、給送ローラユニット21は給送フレーム22に着脱可能に取付けられており、給送ローラユニット21とローラ昇降レバー25の係合箇所(接続部)も着脱可能となっている。当該係合箇所は、ローラホルダ213に設けられたフック部213bにローラ昇降レバー25の端部25aが嵌合するように構成されている。
【0036】
給送ローラユニット21は、給送ローラ211の回転軸線に交差する所定の取外し方向R(つまりローラ昇降レバー25の揺動軸X1の軸方向に交差する方向)に向かって給送フレーム22から取外し可能である。これに合わせて、フック部213bは取外し方向Rの上流側が開いた凹形状として構成されており、給送ローラユニット21を取外す動作に伴ってローラ昇降レバー25の端部25aがフック部213bから離脱する。給送ローラユニット21が取外しの方向Rとは逆方向に向かって給送フレーム22に装着されると、これに伴ってローラ昇降レバー25の端部25aがフック部213bに嵌り込み、ローラ昇降レバー25とローラホルダ213とが一体に揺動する状態となる。
【0037】
なお、後述するように、給送ローラ211をシートに対して当接及び離間させる動作においてリフト板31を駆動するためのリフトモータ35の駆動量は、通常、給送ローラ211を昇降させるためのリフトモータ35の駆動量より大きい。ローラ昇降部30Bにはローラ昇降レバー25への駆動伝達を遮断してこのような駆動量の差を吸収するための機構として、例えばローラ昇降ギア36にトルクリミッタが組み込まれている。また、ローラ昇降部30Bには、ローラ昇降リンク37の移動範囲を制限するためのストッパ49a,49bが給送フレーム22に固定されている。なお、ストッパ49aは図示した形状(ブロック状)のものに限らず、例えば給送フレームを構成する金属板に、ローラ昇降リンク37に設けた凸形状が嵌合する穴を設けてストッパとしてもよい。
【0038】
リフトモータ35が正転する場合、ローラ昇降リンク37がストッパ49aに当接する位置まで下降すると、トルクリミッタが滑ることで、ローラ昇降リンク37はそれ以上下降しない。このときのローラ昇降リンク37の位置は、給送ローラ211の昇降範囲の下限に対応する。ローラ昇降リンク37がストッパ49aに当接した状態でリフトモータ35が正転を継続することで、リフト板31のリフトアップを継続できる。同様に、リフトモータ35が逆転する場合、ローラ昇降リンク37がストッパ49bに当接する位置まで上昇すると、トルクリミッタが滑ることで、ローラ昇降リンク37はそれ以上上昇しない。このときのローラ昇降リンク37の位置は、給送ローラ211の昇降範囲の上限に対応する。ローラ昇降リンク37がストッパ49bに当接した状態でリフトモータ35が逆転を継続することで、リフト板31のリフトダウンを継続できる。言い換えると、ローラ昇降ギア36のトルクリミッタのトルク値は、ローラホルダ213と共にローラ昇降レバー25を揺動させる程度には大きく、かつ、ストッパ49a、49bによりローラ昇降リンク37が停止する程度には小さい値に設定されている。
【0039】
なお、ここではリフトモータ35とローラ昇降リンク37との間にトルクリミッタが介在する構成を例示したが、リフトモータ35とローラ昇降リンク37との間にワンウェイギアを配置してもよい。この場合、ワンウェイギアは、リフトモータ35を停止させた状態において、ローラ昇降リンク37が下降しようとするとロックされ、ローラ昇降リンク37が上昇するときは空転するように配置される。このとき、リフトモータ35が逆転すると、ワンウェイギアがロックされた状態でローラ昇降リンク37が上昇し、給送ローラ211は上昇する。一方、リフトモータ35が正転すると、加圧バネ39の付勢力によってローラ昇降リンク37が下降することが許容される。ローラ昇降リンク37が下限位置まで下降すると、ローラ昇降リンク37の下降は停止し、ワンウェイギアは空転する。
【0040】
[昇降機構の動作]
続いて、本実施例における昇降機構30によるリフト板31及び給送ローラ211の昇降動作について、図5図7を用いて説明する。図5(a)は給送ローラ211の回転軸線の方向(シートの幅方向)から見た、給送ローラ211がリフト板31上のシートに当接した状態(以下、給送ローラ当接状態とする)を表す概略図である。図5(b)は給送ローラ211の回転軸線の方向から見た、給送ローラ211がリフト板31上のシートから離間した状態(以下、給送ローラ離間状態とする)を表す概略図である。図6(a)は、給送方向の下流側から見た給送ローラ当接状態を表す概略図であり、図6(b)は、給送方向の下流側から見た給送ローラ離間状態を表す概略図である。
【0041】
図5(a)及び図6(a)に示すように、給送ローラ離間状態から給送ローラ当接状態に移行するための動作(給送ローラ当接動作)においては、リフトモータ35が正転する。これにより、昇降機構30は、ローラ昇降部30Bにより給送ローラ211を下降させると共にリフト板昇降部30Aによりリフト板31を上昇させる動作を行う。即ち、リフトモータ35の正転によってローラ昇降リンク37が下降し(矢印A1)、それに伴ってローラ昇降レバー25が下方に回動し(矢印B1)、さらにローラ昇降レバー25に連動して給送ローラユニット21が下方に回動する(矢印C1)。これに並行して、リフトモータ35の正転によってリフト部材32が上方に回動し、リフト板31をリフトアップする(矢印D1)。上述した通り、給送位置センサ215がローラホルダ213の検知部213aを検知することでリフト板31のリフトアップが停止し、給送ローラ当接状態が実現する。
【0042】
一方、図5(b)及び図6(b)に示すように、給送ローラ当接状態から給送ローラ離間状態に移行するための動作(給送ローラ離間動作)においては、リフトモータ35が逆転する。これにより、昇降機構30は、ローラ昇降部30Bにより給送ローラ211を上昇させると共にリフト板昇降部30Aによりリフト板31を下降させる動作を行う。即ち、リフトモータ35の逆転によってローラ昇降リンク37が上昇し(矢印A2)、それに伴ってローラ昇降レバー25が上方に回動し(矢印B2)、さらにローラ昇降レバー25に連動して給送ローラユニット21が上方に回動する(矢印C2)。これに並行して、リフトモータ35の逆転によってリフト部材32が下方に回動し、リフト板31をリフトダウンする(矢印D2)。これにより給送ローラ離間状態が実現する。
【0043】
図7(a~d)は、給送ローラ離間動作の過程を簡易的に表している。図7(a)は給送ローラ当接状態を表し、図7(b)は離間動作の途中の状態を表し、図7(c)は離間動作が完了した状態を表している。図7(d)は、参考図として給送ローラ当接状態からリフト板31のみを初期位置まで下降させた状態を表している。なお、図7(a~d)における点線tは、給送ローラ211がシートの給送を行うためにシートの上面に接するときの適切な高さ位置、即ち給送位置を表している。
【0044】
上述した通り、本実施例ではリフトモータ35の駆動力を用いて給送ローラ211の昇降を行うため、給送ローラ離間動作においては、図7(b)に示すように給送ローラ211の上昇(矢印C2)とリフト板31の下降(矢印D2)とが同時進行する。このため、給送ローラ離間動作は速やかに終了する。
【0045】
ここで、給送ローラユニット21は加圧バネ39の付勢力によって下方に付勢されており、また、シートに対する適切な加圧力を確保するため、給送位置(t)は給送ローラ211の可動範囲の下限である下方位置よりも上方に設定されている。つまり、給送ローラ当接状態においては、ローラ昇降リンク37は給送ローラ211の下方位置に対応する位置にある一方で、給送ローラユニット21及びローラ昇降レバー25は、加圧バネ39の付勢力に抗して給送位置に持ち上げられている。
【0046】
このため、仮に給送ローラ211の上昇動作のみによって給送ローラ211をシートから離間させようとすると、リフトモータ35の必要な駆動量は、給送ローラ211が給送位置から上方位置まで移動するための最小の駆動量では足りないことになる。つまり、リフトモータ35が逆転を開始した時点では、給送ローラ211が給送位置(t)に留まっている状態でローラ昇降リンク37が上方に移動する。その後、ローラ昇降リンク37がローラ昇降レバー25に当接した状態でさらにリフトモータ35が逆転することで、初めて、ローラ昇降レバー25が上方に回動し、給送ローラ211は給送位置よりも上方に移動する。このように、追加的に必要となるリフトモータ35の駆動量は、給送ローラ211の下方位置から給送位置(t)までの上昇距離(オーバーストローク分)に対応している。
【0047】
ここでは給送ローラ211の上昇動作のみによって給送ローラ211をシートから離間させる場合について説明したが、給送ローラ当接状態からリフト板31の下降動作のみによって給送ローラ211をシートから離間させる場合も同様である。この場合も、リフトモータ35の逆転が追加的に必要となり、その駆動量は、給送ローラ211のオーバーストローク分に対応する。
【0048】
これに対し、本実施例では、給送ローラ離間動作においてリフトモータ35の駆動力を用いて給送ローラ211とリフト板31の両方を動作させている。このため、給送ローラ211とリフト板31の一方のみを移動させることで給送ローラ211をシートから離間させる構成に比べて少ないリフトモータ35の駆動量で、給送ローラ211をシートから離間させることが可能となる。これにより、リフトモータ35の駆動時間を稼働音が発生する期間を短くし、また、リフトモータ35の駆動量を節約してモータ寿命を延ばすことが可能となる。
【0049】
また、リフト板31のみを昇降させることで給送ローラ211をシートから離間させる構成では、満載状態においてもシートを給送ローラ211から確実に離間できるようにリフト板31の回動量を確保する必要がある。このため、カセット3を大型化してリフト板31の回動スペースを確保するか、又は満載量を少なめに設定する必要がある。これに対し、本実施例では、給送ローラ211及びリフト板31の両方を昇降させることで給送ローラ離間動作を行うため、満載量を維持しつつ装置のコンパクト化を実現可能である。
【0050】
なお、上記の例におけるオーバーストロークの長さは、加圧バネ39を圧縮して給送ローラ211の加圧力を確保するために設定されている。しかし、これに限らず、例えば給送ローラユニット21の自重により給送ローラ211の加圧力を確保する構成において、給送ローラ211をシートに確実に当接させるために給送位置を下方位置よりも高い位置に設定する場合にも、本技術は適用可能である。
【0051】
[制御方法]
本実施例に係るシート給送部2の制御方法について、図8及び図9を用いて説明する。図8は、シート給送部2に関する画像形成装置1の制御構成を表すブロック図であり、図9は、シート給送部2の制御方法の例を示すフローチャートである。
【0052】
図8に示すように、画像形成装置1には制御手段としての制御部70が搭載されている。制御部70は、プログラムの実行手段である中央処理装置(CPU71)と、記憶手段としての読取専用メモリ(ROM72)及び書換え可能なランダムアクセスメモリ(RAM73)と、を含む制御回路である。CPU71は、ROM72等に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、シート給送部2を含む画像形成装置1の各部を制御する。ROM72はプログラム及び画像形成装置1の制御に必要な設定データ等を記憶し、RAM73はCPU71がプログラムを実行する際の作業場所となる。ROM72及びRAM73は、画像形成装置1を特定の方法に従って制御するための制御プログラムを格納した非一過性の記憶媒体の例である。
【0053】
CPU71は、給送位置センサ215及びカセット開閉センサ74の検知信号に基づいてシート給送部2の現在の状態を把握しつつ、リフトモータ35、給送モータ40及び電磁クラッチ41を作動させることでシート給送部2を動作させる。電磁クラッチ41は、給送モータ40と、給送ローラユニット21を構成する給送ローラ211及び搬送ローラ212との間に介在するクラッチであり、通電の有無により給送ローラ211及び搬送ローラ212への駆動伝達を連結及び解除する。
【0054】
また、本実施例の給送モータ40は、給送ローラユニット21の下流でシートを搬送する搬送ローラ対4(図1参照)の駆動源を兼ねている。したがって、CPU71は、給送モータ40を回転させている状態で電磁クラッチ41の通電をON/OFF制御することで、搬送ローラ対4による先行シートの搬送動作を継続したまま、給送ローラユニット21による後続シートの給送を制御可能である。
【0055】
以下、シート給送部2の制御方法を図9のフローチャートに沿って説明する。本フローチャートの各工程は、制御部70のCPU71がプログラムを実行することで実施される。また、以下の説明で、搬送対象のシートが搬送経路上の所定位置を通過したか否かは、搬送経路上に配置されたセンサによるシートの検知結果や、それらのセンサがシートを検知した時刻からの給送モータ40の回転量に基づいて決定される。
【0056】
フローチャートの開始時点は、画像形成装置1が印刷ジョブの投入を待機している待機状態である。画像形成装置1に対して外部のコンピュータから画像データが送信されることで印刷ジョブが投入されると(S1:Yes)、CPU71はリフトモータS2を正転させて給送ローラ当接動作を開始する(S2)。リフトモータ35が正転することで、給送ローラ211は上方位置から下降を開始し、リフト板31は待機位置から上昇を開始する。ただし、待機位置とは、前回ジョブの終了時の給送ローラ離間動作によってリフト板31が下降した位置を指す。S2でリフトモータ35が正転を開始した後、給送ローラ211は、下方位置に到達する前に一度給送位置を通過し、給送位置センサ215が検知部213aを検知するが、その時点では給送ローラ当接動作は終了していない。そのため、CPU71はリフトモータ35の正転開始から所定時間は待機し、給送位置センサ215の検知結果に関わらずリフトモータ35の正転を継続させる(S3)。
【0057】
給送ローラ211が下方位置に到達した後に、上昇中のリフト板31に積載されているシートの上面が給送ローラ211に当接し、加圧バネ39の付勢力に抗して給送ローラユニット21を持ち上げる。そして、検知部213aが再び給送位置センサ215によって検知されると(S4:Yes)、CPU35は給送ローラ当接動作が終了したと判断してリフトモータ35を停止させる(S5)。これによりシート給送部2は給送ローラ当接状態となる。なお、以上のS1~S5の処理は、開いていた状態のカセット3が閉じられたことをCPU74がカセット開閉センサ74を介して検知した場合にも実行される。
【0058】
以下、並列的に実行される給送モータ40の制御とリフトモータ35の制御の内容を説明する。
【0059】
(給送モータの制御)
画像形成部5における準備動作が完了すると、給送開始指令が発せられ、給送モータ40が起動する(S6)。給送モータ40の起動後、電磁クラッチ41が通電されて係合状態となることで、給送モータ40の駆動力が給送ローラ211及び搬送ローラ212に伝達される(S7)。給送ローラ当接状態で給送ローラ211が回転することで、リフト板31上の最上位シートがカセット3から送り出され、搬送ローラ212及び分離ローラ24により1枚ずつ分離された状態で給送される。
【0060】
給送中のシートの後端(給送方向の上流端)が給送ローラ211との接触位置を通過する前に電磁クラッチ41は通電を遮断されて解放状態となる(S8)。これにより給送ローラユニット21の駆動が停止するため、給送ローラ211が給送中のシートの次のシートを繰り出して重送等の搬送不良が生じることが避けられる。また、電磁クラッチ41の解放時点でシートの先端(給送方向の下流端)は既に下流の搬送ローラ対4に到達しており、解放後も搬送ローラ対4によって搬送が継続する。搬送ローラ対4により搬送されるシートは、転写部及び定着部を通過することで画像を形成された後、排出ローラ対により排出される。
【0061】
印刷済みのシート枚数が印刷ジョブで指定された枚数に到達していない場合(S9:Yes)、次のシートに対する画像形成を行うためにS7,S8の処理が繰り返し実行される。このとき、先行シートの後端に対して後続シートの先端が一定の間隔(いわゆる紙間)をあけて追従するように、電磁クラッチ41の係合タイミングが制御される。このように、本実施例では、給送ローラ当接状態が維持されている状態で電磁クラッチ41のON/OFFを繰り返すことで、1枚ずつシートを給送する。この構成は、シートを1枚給送する度にカム機構により給送ローラ211を昇降させる構成や、シートを1枚給送する度に給送モータ40をON/OFFする構成に比べて、紙間を短く設定して画像形成装置の生産性向上を図ることに有効である。電磁クラッチの応答時間は、通常、給送ローラ211を機械的に昇降させるための所要時間や、給送モータ40を起動及び停止させるための所要時間よりも短いからである。
【0062】
印刷済みのシート枚数が印刷ジョブで指定された枚数に等しくなると(S9:No)、給送モータ40を停止させる処理が行われる。このとき、最終シートの後端が搬送ローラ対4を抜けるまでは給送モータ40の駆動が継続され、搬送ローラ対4を抜けた後に給送モータ40は停止される(S10)。
【0063】
(リフトモータの制御)
一方、CPU71はシートの給送が行われている間は給送ローラ当接状態を維持させ、最終シートの先端が搬送ローラ対4に到達した後に(S11:Yes)、リフトモータ35を逆転させて給送ローラ離間動作を開始する(S12)。リフトモータ35は、逆転開始から所定時間経過後に停止される(S13)。所定時間とは、給送ローラ211を上方位置に移動させ、かつ、最上位のシートが給送ローラ211の下方位置よりも下方となる位置(待機位置)までリフト板31を移動させるための時間である。したがって、リフトモータ35が所定時間経過後に停止した時点で、リフトモータ35を正転させることで上記の給送ローラ当接動作(S2~S5)を再び実行可能な状態となっている。リフトモータ35が停止し、かつ、S10で給送モータが停止することで、シート給送部2は次回のジョブ投入を受け付け可能な待機状態に戻る。
【0064】
なお、印刷ジョブが複数枚のシートに対する画像形成を要求する場合において、シートの給送を連続的に実行している期間中(S11:Noの状態)、CPU71はリフトモータ35に対して最上位シートの高さを給送位置に維持するための制御を行う。即ち、シートの給送によりリフト板31上のシート枚数が減ることで給送位置センサ215の検知信号がONからOFFに変化したときに、リフトモータ35を所定量正転させてリフト板31をリフトアップすることが繰り返し行われる。これにより、シートの残量が少なくなっても最上位シートの高さが給送位置に維持され、給送ローラ211のシートに対する加圧力が適切な範囲に保たれる。
【0065】
ここで、本実施例では、給送ローラ211の昇降及びリフト板31の昇降を行うための駆動源であるリフトモータ35の制御(給送ローラの当接離間制御)が、シートの搬送を行うための駆動源である給送モータ40の制御(搬送制御)とは独立している。したがって、印刷ジョブの終了時の処理として、給送モータ40が最終シートの搬送を行うために回転している状態で、リフトモータ35を逆転させて給送ローラ211をシートから離間させる動作を開始することが可能である。言い換えると、シートの搬送制御の実行中に、給送ローラ離間動作を開始することが可能である。
【0066】
具体的には、最終シートの先端が搬送ローラ対4に到達した時点(S11:Yes)では、最終シートの後端はまだ搬送ローラ対4よりも上流にあるため、給送モータ40による搬送ローラ対4の駆動が継続している。本実施例では、この状態でリフトモータ35を逆転させて給送ローラ離間動作が開始される。このとき、最終シートは既に搬送ローラ対4に挟持されていることから、リフトモータ35の逆転により給送ローラ211が最終シートから離間しても最終シートの搬送は問題なく継続される。
【0067】
これにより、給送ローラ離間動作の実行期間の少なくとも一部は、最終シートが搬送ローラ対4及びその下流の搬送機構(転写部、定着部、排出ローラ対等)によって搬送されている期間と重複する。つまり、給送ローラ211をシートから離間させるためにリフトモータ35の駆動音が発生する期間の少なくとも一部は、シートを画像形成装置内部で搬送する稼働音が発生する期間内に収まることになり、画像形成装置が騒音を発生する期間の短縮が可能である。
【0068】
また、ジョブの内容が同一であれば、例えば最終シートの給送後に給送モータ40を逆転させることで給送ローラ211を上方位置まで上昇させる構成に比べて、ジョブの投入から再びシート給送部2が待機状態に復帰するまでの所要時間が短くなる。また、本実施例では、給送モータ40を逆転させることで給送ローラ211を昇降させる構成をとっていないため、給送モータ40の逆転駆動を別の制御目的に使用することが可能である。
【0069】
(変形例)
なお、本実施例では給送ローラユニット21が給送フレーム22に対して着脱可能な構成を採用しているが、給送ローラユニット21が着脱不能な構成であってもよい。例えば、ローラホルダ213をローラ昇降レバー25と一体化し、当該一体部材に対して給送ローラ211及び搬送ローラ212を個別に着脱可能な構成としてもよい。
【0070】
<実施例2>
次に、実施例2について図10図12を用いて説明する。本実施例は、ローラ昇降部30Bの構成が実施例1と異なっている。その他の実施例1と同様の構成及び作用を有する要素については、実施例1と共通の符号を付して説明を省略する。
【0071】
図10は、本実施例におけるローラ昇降部30Bの構成を示す斜視図である。実施例1と同じく、ローラ昇降部30Bは、リフトモータ35の駆動力を用いてローラホルダ213を揺動させることで、給送ローラ211をシートに当接及び離間するように移動させる装置(給送ローラ当接離間部)である。
【0072】
本実施例のローラ昇降部30Bは、実施例1のローラ昇降レバー25に代えて、ローラ側レバー26及びリンク側レバー27を備えた構成となっている。即ち、ローラ昇降部30Bは、ローラ昇降ギア36と、ローラ昇降リンク37と、ローラ側レバー26及びリンク側レバー27とによって構成される。ローラ昇降ギア36及びローラ昇降リンク37の構成は実施例1と同様であり、リフトモータ35の正転及び逆転する場合に、ローラ昇降ギア36を介して伝達される駆動力によってローラ昇降リンク37が略上下方向にスライド移動する。
【0073】
ただし、実施例1と異なり、リフトモータ35が正転する場合にローラ昇降リンク37は上方にスライドし、リフトモータ35が逆転する場合にローラ昇降リンク37は下方にスライドするように構成される。このような構成は、例えば、実施例1においてローラ昇降ギア36と噛合っている減速歯車列38の歯車と本実施例のローラ昇降ギア36との間に、アイドラギアを介在させることで実現可能である。
【0074】
ローラ側レバー26及びリンク側レバー27は、どちらも給送フレーム22に対して揺動可能に支持され、連動して揺動するように互いに接続されている。本実施例において、ローラ側レバー26及びリンク側レバー27は、給送ローラ211の回転軸線方向に垂直な揺動軸X2(鉛直方向に見て給送方向Fdに平行な軸線)を共通の軸線として、揺動軸X2を中心に揺動する。ローラ側レバー26は、端部26aを給送ローラユニット21のローラホルダ213に係合されており、給送ローラユニット21と連動して揺動する。リンク側レバー27は、端部27aにおいてローラ昇降リンク37に対向しており、ローラ昇降リンク37に連動して揺動する。なお、ローラ側レバー26及びリンク側レバー27は、互いに固定することで一体の部材として構成してもよく、バネ部材を介して相対移動可能な状態で連結した構成としてもよい。
【0075】
また、給送ローラユニット21は給送フレーム22に着脱可能に取付けられており、給送ローラユニット21とローラ側レバー26の係合箇所(接続部)も着脱可能となっている。当該係合箇所は、ローラホルダ213に設けられたフック部213bにローラ側レバー26の端部26aが嵌合するように構成されている。
【0076】
給送ローラユニット21は、給送ローラ211の回転軸線に交差する方向Rに向かって給送フレーム22から取外し可能である。これに合わせて、フック部213bは取外しの方向Rの上流側が開いた凹形状として構成されており、給送ローラユニット21を取外す動作に伴ってローラ側レバー26の端部26aがフック部213bから離脱する。給送ローラユニット21が取外しの方向Rとは逆方向に向かって給送フレーム22に装着されると、これに伴ってローラ側レバー26の端部26aがフック部213bに嵌り込み、ローラ側レバー26とローラホルダ213とが連動して揺動する状態となる。
【0077】
続いて、本実施例における昇降機構30によるリフト板31及び給送ローラ211の昇降動作について、図11及び図12を用いて説明する。図11(a)は給送ローラ211の回転軸線の方向(シートの幅方向)から見た、給送ローラ当接状態を表す概略図である。図11(b)は給送ローラ211の回転軸線の方向から見た、給送ローラ離間状態を表す概略図である。図12(a)は、給送方向の下流側から見た給送ローラ当接状態を表す概略図であり、図12(b)は、給送方向の下流側から見た給送ローラ離間状態を表す概略図である。
【0078】
図11(a)及び図12(a)に示すように、給送ローラ当接動作においては、リフトモータ35が正転する。これにより、昇降機構30は、ローラ昇降部30Bにより給送ローラ211を下降させると共にリフト板昇降部30Aによりリフト板31を上昇させる動作を行う。即ち、リフトモータ35の正転によってローラ昇降リンク37が上昇し(矢印A2)、それに伴ってローラ側レバー26及びリンク側レバー27が第1の揺動方向に揺動する(矢印E1)。さらに、ローラ側レバー26に連動して給送ローラユニット21が下方に回動する(矢印C1)。これに並行して、リフトモータ35の正転によってリフト部材32が上方に回動し、リフト板31をリフトアップする(矢印D1)。上述した通り、給送位置センサ215がローラホルダ213の検知部213aを検知することでリフト板31のリフトアップが停止し、給送ローラ当接状態が実現する。
【0079】
一方、図11(b)及び図12(b)に示すように、給送ローラ離間動作においては、リフトモータ35が逆転する。これにより、昇降機構30は、ローラ昇降部30Bにより給送ローラ211を上昇させると共にリフト板昇降部30Aによりリフト板31を下降させる動作を行う。即ち、リフトモータ35の逆転によってローラ昇降リンク37が下降し(矢印A1)、それに伴ってローラ側レバー26及びリンク側レバー27が第2の揺動方向に揺動する(矢印E2)。さらに、ローラ側レバー26に連動して給送ローラユニット21が上方に回動する(矢印C2)。これに並行して、リフトモータ35の逆転によってリフト部材32が下方に回動し、リフト板31をリフトダウンする(矢印D2)。これにより給送ローラ離間状態が実現する。
【0080】
このように、本実施例では、ローラ昇降部30Bの構成が一部異なるものの、実施例1と同様に、給送ローラ離間動作においてリフトモータ35の駆動力を用いて給送ローラ211とリフト板31の両方を動作させている。このため、実施例1と同様に、給送ローラ離間動作を速やかに行って、リフトモータ35の駆動時間を稼働音が発生する期間を短くし、また、リフトモータ35の駆動量を節約してモータ寿命を延ばすことが可能となる。給送ローラ211及びリフト板31の両方を昇降させることで給送ローラ離間動作を行うため、満載量を維持しつつ装置のコンパクト化を実現可能である。
【0081】
また、本実施例に係るシート給送部2の動作は、実施例1で説明したものと同様の制御方法により制御される。したがって、実施例1と同様に、画像形成装置が騒音を発生する期間の短縮が可能である。また、ジョブの投入から再びシート給送部2が待機状態に復帰するまでの所要時間が短くなり、給送モータ40の逆転駆動を別の制御目的に使用することが可能であるという利益が得られる。
【0082】
なお、実施例1と同じく、本実施例の給送ローラユニット21は給送フレーム22に対して着脱不能な構成であってもよい。
【0083】
(その他の実施形態)
以上の実施例1、2では、画像形成装置に組み込まれたシート給送装置であるシート給送部2について説明した。しかし、これに限らず、本技術は画像形成装置とは別個に設置されるシート給送装置にも適用可能である。例えば、画像形成装置と共に画像形成システムを構成するように画像形成装置に連結され、記録材としてのシートを画像形成装置に給送するシート給送装置が挙げられる。
【0084】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…画像形成装置/2…シート給送装置(シート給送部)/5…画像形成手段(画像形成部)/22…枠体(給送フレーム)/25、26、27…揺動部材(ローラ昇降レバー、ローラ側レバー、リンク側レバー)/30…昇降機構/30A…第1昇降部(リフト板昇降部)/30B…第2昇降部(ローラ昇降部)/31…シート積載部(リフト板)/35…駆動モータ(リフトモータ)/37…リンク部材(ローラ昇降リンク)/38…伝達部(減速歯車列)/39…付勢手段(加圧バネ)/40…給送モータ/41…クラッチ(電磁クラッチ)/70…制御手段(制御部)/211…給送手段(給送ローラ)/X1、X2…揺動軸
図1
図2
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図12