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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】押出し容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 35/02 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
B65D35/02 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019158921
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021037974
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【弁理士】
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】津田 直毅
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-105930(JP,A)
【文献】米国特許第05255808(US,A)
【文献】特開2019-011116(JP,A)
【文献】特開2002-053151(JP,A)
【文献】特開2004-276916(JP,A)
【文献】特開2003-237757(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0240673(US,A1)
【文献】特開2018-016317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/00 - 35/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉塞された底部(5)と、該底部(5)の上に高さ方向に沿って連設された平面視略楕円形状から成る胴部(4)及び肩部(3)と、該肩部(3)の上に起立設された口筒部(2)とを有して成る合成樹脂製の押出し容器であって、
前記胴部(4)の長軸側の両端には鉛直折り返し部(6)が形成され、前記肩部(3)と前記胴部(4)との間には水平折り返し部(7)が形成されており、
前記肩部(3)の前方(a)及び後方(b)の面には、上方に向かって凸を成して正面視略半楕円形に形成されて成る第1肩側部(3A)が形成され、前記肩部(3)の右方(c)及び左方(d)の面には、側面視略三角形状に形成されて成る第2肩側部(3B)が形成され、
更に前記第1肩側部(3A)に容器内方に向かって凸状に突出する押出し部(9)が設けられていることを特徴とする押出し容器。
【請求項2】
水平折り返し部(7)に沿って複数の横溝(8)が配置されている請求項1記載の押出し容器。
【請求項3】
第1肩側部(3A)と第2肩側部(3B)との境界辺(3C)の下端部が、直線状又は正面視において僅かな略円弧凹形状を有して形成されている請求項1又は2記載の押出し容器。
【請求項4】
前方(a)及び後方(b)に設けられた両水平折り返し部(7)を共に谷折りとすることにより、第1使用状態に設定させられる請求項1乃至のいずれか一項に記載の押出し容器。
【請求項5】
前方(a)と後方(b)に設けられた一方の水平折り返し部(7)を谷折りとし、他方の水平折り返し部(7)を山折りとすることにより、第2使用状態に設定させられる請求項1乃至のいずれか一項に記載の押出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は押出し容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マヨネーズ、ケチャップ、おろしワサビ又はおろし生姜などの練り状乃至ペースト状の食品、あるいはクリーム状の化粧料、洗顔料などの内容物を収容する用途に用いられる容器として、スクイズボトルやチューブ容器などの、胴部が押圧により変形して内容物を絞り出し可能に構成されて成る合成樹脂製の押出し容器が広く用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、低密度ポリエチレンを主材とした合成樹脂材料を押出ブロー成形(EBM:Extrusion Blow Molding(以下同様))することにより、筒状の口部と、口部の下端から径方向外側に向けて延びる肩部と、肩部の下端に連なる筒状の胴部と、胴部の下端を閉塞する閉塞部(底部)とを備えたボトル形状を成すとともに、胴部が押圧により変形して内容物を絞り出し可能に構成されている合成樹脂製の押出し容器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-143127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の押出し容器では、、胴部は、その上端において口部の下端から径方向外側に延びる肩部の外周端に連ねられた構成となっているので、胴部の肩部の近傍部分は押し潰し難く、内容物を最後まで押し出すことが困難であることから、特に肩部や口部近傍における内容物の残量を低減するという点ではまだまだ改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、従来以上に押し潰し易い構成とすることにより、肩部や口部近傍における内容物の残量をより効果的に低減させる押出し容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる手段は、
閉塞された底部と、底部の上に高さ方向に沿って連設された平面視略楕円形状から成る胴部及び肩部と、肩部の上に起立設された口筒部とを有して成る合成樹脂製の押出し容器であって、
胴部の長軸側の両端には鉛直折り返し部が形成され、胴部と肩部との間には水平折り返し部が形成されており、
肩部の前方及び後方の面には、上方に向かって凸を成して正面視略半楕円形に形成されて成る第1肩側部が形成され、肩部の右方及び左方の面には、側面視略三角形状に形成されて成る第2肩側部が形成され、更に前記第1肩側部に容器内方に向かって凸状に突出する押出し部が設けられていることを特徴とする、と云うものである。
本発明の主たる手段では、胴部を鉛直折り返し部において折り畳むことにより、胴部内の内容物を吐出させることができる。また残り少なくなった残留内容物については、水平折り返し部において、胴部に対して口筒部及び肩部を折り畳むことで残留内容物を口筒部及び肩部内に集めることが可能となるため、残留内容物を口筒部内に容易に押し出すことができる。
更に上記手段では、肩部に集めた残留内容物をより積極的に口筒部に向けて押し出すことができる。
【0008】
本発明の他の手段は、上記主たる手段に、水平折り返し部に沿って複数の横溝が配置されているとの手段を加えたものである。
上記手段では、水平折り返し部における折り畳みを容易とすることができる。
【0009】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、第1肩側部と第2肩側部との境界辺の下端部が、直線状又は正面視において僅かな略円弧凹形状を有して形成されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、押出し操作時における操作性を向上させることができる。
【0011】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、前方及び後方に設けられた両水平折り返し部を共に谷折りとすることにより、第1使用状態に設定させられる、との手段を加えたものである。
上記手段では、残量内容物を肩部内に集めて押し出すことが可能となることから、残量内容物を低減できるようになる。
【0012】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、前方と後方に設けられた一方の水平折り返し部を谷折りとし、他方の水平折り返し部を山折りとすることにより、第2使用状態に設定させられる、との手段を加えたものである。
上記手段では、肩部内に集めた残留内容物を水平折り返し部において堰き止め、肩部から胴部側に逆流することを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、肩部や胴部を従来以上に折り畳みやすい構成とすることにより、胴部内に集めた残留内容物を口筒部に押し出し易くなり、結果として残留内容物をより効果的に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例としての押出し容器を示す正面図である。
図2】押出し容器の側面図である。
図3】Aは押出し容器の平面図、Bは図1のA-A線における平断面図、Cは押出し容器の底面図である。
図4】第1使用状態を示す押出し容器の側面図ある。
図5】第2使用状態を示す押出し容器の部分側面図ある。
図6】第2使用状態を示す押出し容器の部分正面図である。
図7】第2使用状態を示す押出し容器の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
尚、以下においては、図3Aに示されるように、押出し容器の正面側を前方aとし、その逆側となる背面側を後方bとする。また前方aから見て右側を右方cとし、左側を左方dとする。更に容器軸O回りに周回する方向を周方向とし、容器軸Oに沿う方向を鉛直方向(又は高さ方向)とし、これに直交する方向を水平方向とする。
【0016】
本発明の押出し容器1は、例えば、マヨネーズ、ケチャップ、おろしワサビ又はおろし生姜などの練り状乃至ペースト状の食品、あるいはクリーム状の化粧料、洗顔料などの内容物を収容する用途に用いられるものであるが、これらに限定されるものではない。
図1乃至図3に示すように、押出し容器1は、最下部に設けられた底部5の上に胴部4が連設され、更に胴部4の上に連設された肩部3の中央に円筒状の口筒部2が起立設されて構成されている。このような押出し容器1は、例えばポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)などから成る合成樹脂材製のパリソン(図示せず)を、例えば押出ブロー成形(EBM)することにより形成されている。
【0017】
胴部4は、平面視略楕円状(又は猫目状ともいう)に形成され、その直軸側となる右方c及び左方dの両端には、容器軸Oに沿う高さ方向に延びる鉛直折り返し部6が夫々形成されている。胴部4は、右方c及び左方dの両端に設けられた鉛直折り返し部6において、前方aの胴部4と後方bの胴部4とが互いに接触する内方向に向かって弾性変形可能に構成されている。
尚、胴部4の変形は、上記のような弾性変形であっても良いし、塑性変形であっても良い。
【0018】
肩部3は口筒部2と胴部4との間に設けられており、図1又は図2に示すように、肩部3の前方a(後方bも同様)には、図示上方に向かって凸を成す正面視略半楕円形の面から成る第1肩側部3Aが形成され、肩部3の右方c及び左方dには、側面視略三角形状の面から成る第2肩側部3Bが形成されている。そして、第1肩側部3Aと第2肩側部3Bとは、その間に設けられた境界辺3Cにおいて折り曲げられている。
境界辺3Cは、図1に示すように中央部が図示上方に向かって凸を成す略半楕円形(略半猫目状)で形成されている。そして、境界辺3Cの下端部は、直線状又は僅かな略円弧凹形状を有して右方c及び左方dに設けられた両鉛直折り返し部6の上端に向かって延びる態様が好ましい。
【0019】
肩部3の第1肩側部3Aと胴部4との境界部分(図1のA-A線に沿う部分)は水平折り返し部7が周設されており、この水平折り返し部7には容器内方に向かって細溝状に形成されて成る複数の横溝8(本実施例では、前方aに2つ、後方bに2つの合計4つ)が周方向に間欠的に配置されている。そして、第1肩側部3Aの前方a(後方bも同様)中央の位置で、且つ右方cの横溝8と左方dの横溝8との間には、平面視略半円形状を有して凹状に陥没設されて成る押出し部9が夫々に形成されている。押出し部9は第1肩側部3Aの内面から容器内方に向かって凸状に突出しており、また押出し部9の下端部9aは、水平折り返し部7(図1のA-A線)上に設けられている。
そして、肩部3の第1肩側部3Aは、水平折り返し部7(図1のA-A線)において胴部4に対して谷折り状に折り畳み可能であり、前方aの胴部4と後方bの胴部4とが互いに接触する容器内方に向かって弾性変形可能に構成されている(図4参照)。
尚、複数の溝部8が形成されていなくても水平折り返し部7において折り畳むことは可能であるが、図1のA-A線上に沿って複数の溝部8を設けることにより、水平折り返し部7における折り畳みを容易とすることが可能となる。
【0020】
口筒部2は、その外周面に雄ネジ2aが刻設されており、図示しないキャップの螺着が可能となっている。また底部5は、図3Cに示すようにパリソン下端の食い切り跡である食切り部5aを介して閉塞されている
尚、キャップが吐出口を備える注出キャップである場合あっては、残留内容物を押し出す前に、キャップを口筒部2から螺脱させて取り外し、その後に後述するような内容物の押し出し操作が行われる。またキャップが吐出口を備えない蓋体である場合には、口筒部3が内容物の吐出口として機能することになる。
【0021】
次に、上記構成からなる押出し容器1の作用効果について図4乃至図7を参照しつつ説明する。
本発明の押出し容器1では、胴部4を容器内方に向かって押圧すると、胴部4が両端の鉛直折り返し部6において折り畳まれ、すなわち前方aの胴部4と後方bの胴部4とが互いに接触して略扁平状に変形させられ、胴部4内に収容されている内容物を口筒部2を通じて外部に吐出させることが可能となっている。
【0022】
大部分の内容物が吐出され、押出し容器1内の内容物の残量が少なくなった場合には、例えば押出し容器1を倒立姿勢にして内容物を口筒部2及び肩部3近傍に集めた後、図4に示すように水平折り返し部7において胴部4に対して肩部3の第1肩側部3Aを谷折り状に折り畳む第1使用状態に設定する。
【0023】
第1使用状態では、水平折り返し部7において第1肩側部3Aが谷折り状に折り畳まれると同時に、境界辺3Cにおいては前方a及び後方bに設けられた両第1肩側部3Aが第2肩側部3Bに対して山折り状に折れ、両第1肩側部3Aが口筒部2の下端に接近することになる(図4参照)。これにより、両第1肩側部3Aが、肩部3内に集まっていた残留内容物を口筒部2側に押し込むことが可能となる。
【0024】
この際、両第1肩側部3Aに設けられ且つ容器内方に向かって凸状に突出している一対の押出し部9が、肩部3内の残留内容物を口筒部2に向かって押し出すことが可能となる。よって、これまで以上に残留内容物が口筒部2側に押し込まれ易くなり、口筒部2を通じて外部に押し出すことが可能となるため、残量内容物を効果的に低減することができる。
【0025】
次に、第1使用状態においても押し出せない少量の残留内容物については、図5乃至図7に示すように、前方aに設けられた水平折り返し部7においては胴部4に対して第1肩側部3Aを山折り状に折り曲げ、後方bに設けられた水平折り返し部7においては胴部4に対して第1肩側部3Aを谷折り状に折り曲げることにより、全体として口筒部2及び肩部3が容器軸Oに対して約90度に折り畳まれる第2使用状態に設定する。
【0026】
第2使用状態では、両第1肩側部3Aに設けられ且つ容器内方に向かって凸状に突出している一対の押出し部9の下端部9a同士が互いに接近し、図6に示す正面図では、一対の押出し部9が全体として略円形状を成す状態で口筒部2に対向するようになる。この状態では、図5及び図7に白抜き矢印で示すように、両手の親指等で一対の押出し部9を口筒部2の先端に向けて夫々押圧することが可能となる。よって、この押圧により残留内容物を口筒部2内により積極的に押し込むことが可能となり、結果として内容物を口筒部2を通じて容易に押し出すことができ、残量内容物をより効果的に低減することが可能となる。
【0027】
また第2使用状態では、肩部3と胴部4との間が水平折り返し部7において約90度に折り曲げられるため、残留内容物を肩部3から口筒部2にかけての空間内に集めることができると共に、押圧した際に、集まっている残留内容物を堰き止め、肩部3から胴部4側に逆流することを防止できる。よって、残留内容物を確実に口筒部2内に押し込むことが可能となる。
【0028】
更に、境界辺3Cの下端部が直線状又は僅かな略円弧凹形状に形成される好ましい態様では、第2使用状態にすると、図7に示すように、第2肩側部3Bの上面も直線状又は僅かな略円弧凹形状となる。よって、後方bの位置では人指し指等の腹で第2肩側部3Bを容易に押さえ込むことが可能となる。更に前方aの位置では残りの親指を使用し、両第1肩側部3Aに設けられた一対の押出し部9を口筒部2に向けて容易に押圧することが可能となる。よって、押出し操作時における操作性を向上させることが可能となり、これまで以上に残留内容物を効果的に押し出すことが可能となる。
【0029】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
例えば、上記実施例の第2使用状態では、口筒部2及び肩部3を後方bに折り畳んだ構成を示して説明したが、前方aに折り畳む構成とするものであっても良い。
【0031】
また上記実施例では、押出し部9の形状として略半円形状の構成を示して説明したが、押出し部9は略半円形状に限定されるものではなく、その他の形状であっても良い。
【0032】
また上記実施例では押出し容易1として、底部5が食切り部5aを介して閉塞された壜体型の容器を示して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、底部5が扁平状にシールされたチューブ型の容器であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、押出し容器の分野における用途展開を更に広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 : 押出し容器
2 : 口筒部
2a : 雄ネジ
3 : 肩部
3A : 第1肩側部
3B : 第2肩側部
3C : 境界辺
4 : 胴部
5 : 底部
5a : 食切り部
6 : 鉛直折り返し部
7 : 水平折り返し部
8 : 横溝
9 : 押出し部
9a : 下端部
a : 前方
b : 後方
c : 右方
d : 左方
O : 容器軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7