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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】画像読取装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20231218BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20231218BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
H04N1/00 567M
H04N1/12 Z
G03G21/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019162396
(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2021040292
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉原 千晶
(72)【発明者】
【氏名】関 哲志
(72)【発明者】
【氏名】砂田 秀則
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 薫
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-311890(JP,A)
【文献】特開2009-117966(JP,A)
【文献】特開2016-072833(JP,A)
【文献】特開2011-040844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/04
G03G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のシートを積載可能な積載部と、
前記積載部に積載されたシートを1枚ずつ給送する給送手段と、
前記給送手段によって前記積載部から給送されたシートを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送されているシートから画像データを読取る読取手段と、
前記読取手段によって読取られた画像データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された画像データを外部の情報処理装置に転送する転送手段と、
前記給送手段によって複数枚のシートを1枚ずつ連続的に給送させながら、シートから前記読取手段によって読取られて前記記憶手段に記憶された画像データを、前記転送手段によって前記情報処理装置に転送させるジョブを実行する実行手段と、を備え、
前記実行手段は、前記情報処理装置から前記転送手段による画像データの転送速度を第1の速度から前記第1の速度より遅い第2の速度に変更する指示を前記ジョブの実行中に受けた場合に、前記ジョブの実行中に前記第2の速度に基づいて前記給送手段によるシートの給送間隔を第1の間隔から前記第1の間隔より長い第2の間隔に変更する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記実行手段は、前記ジョブの実行中に前記転送速度を前記第2の速度から前記第1の速度に変更する指示を受けた場合に、前記ジョブの実行中に前記給送間隔を前記第2の間隔から前記第1の間隔に変更する
ことを特徴とする請求項に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記実行手段は、前記転送速度を前記第2の速度から前記第1の速度に変更する指示を受けた後に前記ジョブを開始する場合、前記給送間隔を前記第2の間隔に設定して前記ジョブを実行する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
シート1枚当たりに前記読取手段によって読取られる画像データを前記転送手段が転送するための所要時間をシート当たりの転送時間とするとき、
前記第1の間隔は、前記第1の速度に基づくシート当たりの転送時間以上の長さで、かつ、前記第2の速度に基づくシート当たりの転送時間より短く、
前記第2の間隔は、前記第2の速度に基づくシート当たりの転送時間以上の長さである、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記ジョブの設定に応じてシート1枚当たりに前記読取手段によって読取られる画像データのデータサイズが異なる場合において、
前記実行手段は、前記ジョブの実行中に前記転送速度を前記第1の速度から前記第2の速度に変更した場合、実行中の前記ジョブの設定と前記第2の速度とに基づいて、シート1枚当たりに前記読取手段によって読取られる画像データを前記転送手段が前記第2の速度で転送するための所要時間を算出し、前記第2の間隔を前記所要時間以上の長さに設定する、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記読取手段をシートの第1面から画像データを読取る第1読取手段とするとき、前記搬送手段によって搬送されるシートの前記第1面とは反対の第2面から画像データを読取る第2読取手段をさらに備え、
前記実行手段は、前記ジョブの設定として、各シートの前記第1面及び前記第2面から画像データを読取る両面モードと、各シートの前記第1面又は前記第2面から画像データを読取る片面モードと、を実行可能であり、前記両面モード及び前記片面モードのいずれが選択されているかに応じて前記第2の間隔の長さを変更する、
ことを特徴とする請求項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記実行手段は、前記ジョブの設定として、各画素に色毎の複数の階調データが割り当てられた画像データを取得するカラーモードと、各画素に1つの階調データが割り当てられた画像データを取得するモノクロモードと、を実行可能であり、前記カラーモード及び前記モノクロモードのいずれが選択されているかに応じて前記第2の間隔の長さを変更する、
ことを特徴とする請求項又はに記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記実行手段は、前記ジョブの設定として、前記積載部に積載されるシートのサイズを設定する設定指示を受け付けて、設定されたシートのサイズに応じて前記第2の間隔の長さを変更する、
ことを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像読取装置と、
記録材に画像を形成する画像形成手段と、
前記画像読取装置から画像データを受信し、当該画像データに基づいて前記画像形成手段に画像形成動作を実行させる情報処理装置である制御手段と、を備え、
前記制御手段から前記画像読取装置に送信される指令に基づいて、前記転送速度が変更される、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートから画像を読取る画像読取装置及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置は、原稿として用いるシートの画像を光学的に走査して、原稿からの反射光を撮像素子により電子信号に変換することで、画像データを読取る画像読取装置を備えている。画像読取装置は、複数の原稿に対する読取動作を一度の操作で実行させることができるよう、原稿を1枚ずつ自動的に給送する自動原稿給送装置(Auto Document Feeder、以下ADFと呼ぶ)を備えているものがある。
【0003】
画像読取装置で読取られた画像データは、画像形成装置本体のコントローラへ転送され、必要な画像処理が行われた後、印刷物の出力に用いられ、あるいはPDF等の形式に変換されデータとして出力される。ここで、画像読取装置には、撮像素子によって読取られた画像データを一時的に格納する画像メモリが搭載されたものがある。画像メモリを用いて画像データのバッファを行うことで、コントローラ側の処理待ち等によって画像データの転送ができない状況が発生しても、画像読取装置は読取動作を継続できる。
【0004】
ところで、コントローラへの画像データの転送待ち状態が続く場合には、蓄積された画像データが画像メモリの容量に到達してオーバーフローが発生する前に、新たな画像データの取得を停止する必要がある。特許文献1は、前の原稿から読取られてコントローラに転送された画像データの画像処理に時間がかかる場合に、ADFによる後の原稿の搬送を中止して、画像処理の終了後に搬送を再開する技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-39419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、画像読取装置から外部の情報処理装置(例えば画像形成装置本体のコントローラ)への画像データの転送速度は一定であるとは限らない。例えば、画像読取装置による読取動作に並行して画像形成装置による印刷処理やファクシミリの送受信が行われる状況など、コントローラの処理負荷が重い場合に、画像データの転送速度を制限して処理負荷の軽減を図ることが考えられる。
【0007】
画像データの転送速度が制限されている状態でADFが次々に原稿を給送して画像データを取得していくと、コントローラへの画像データの転送が間に合わず、最終的には画像メモリのオーバーフローが生じ、原稿の搬送を中止する。しかし、上記文献の構成では、原稿を搬送するローラ等の部材及びその駆動構成への消耗や、搬送動作の停止及び再開に伴う騒音が懸念されていた。
【0008】
そこで、本発明は、画像データの転送速度の変化に対してより適切に対処可能な画像読取装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、複数枚のシートを積載可能な積載部と、前記積載部に積載されたシートを1枚ずつ給送する給送手段と、前記給送手段によって前記積載部から給送されたシートを搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送されているシートから画像データを読取る読取手段と、前記読取手段によって読取られた画像データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された画像データを外部の情報処理装置に転送する転送手段と、前記給送手段によって複数枚のシートを1枚ずつ連続的に給送させながら、シートから前記読取手段によって読取られて前記記憶手段に記憶された画像データを、前記転送手段によって前記情報処理装置に転送させるジョブを実行する実行手段と、を備え、前記実行手段は、前記情報処理装置から前記転送手段による画像データの転送速度を第1の速度から前記第1の速度より遅い第2の速度に変更する指示を前記ジョブの実行中に受けた場合に、前記ジョブの実行中に前記第2の速度に基づいて前記給送手段によるシートの給送間隔を第1の間隔から前記第1の間隔より長い第2の間隔に変更する、ことを特徴とする画像読取装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像データの転送速度の変化に対してより適切に対処可能な画像読取装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施形態に係る画像形成装置の概略図。
図2】実施形態に係る自動原稿読取装置の斜視図(a)及び断面図(b)。
図3】実施形態に係る自動原稿読取装置のブロック図。
図4】実施形態に係る両面読取動作の経過を表すタイムチャート。
図5】実施形態に係る画像メモリに対する画像データの入出力を説明するための図。
図6】実施形態に係る両面読取動作の途中における画像メモリの状態を表す図。
図7】参考例に係る両面読取動作の経過を表すタイムチャート。
図8】参考例に係る両面読取動作の途中における画像メモリの状態を表す図。
図9】実施形態に係る両面読取動作の経過を表すタイムチャート。
図10】実施形態に係る両面読取動作の途中における画像メモリの状態を表す図。
図11】実施形態に係る自動原稿読取装置の制御方法を示すフローチャート。
図12】実施形態に係る自動原稿読取装置の制御方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための例示的な形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本開示の実施形態に係る自動原稿読取装置300と、この自動原稿読取装置300を備えた画像形成装置10の概略図である。まず、画像形成装置10の概略構成について説明する。
【0014】
本実施形態の画像形成装置10は、電子写真方式によりフルカラー画像を記録材に出力するタンデム型中間転写方式の複写機である。画像形成装置10は、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像を作成する画像形成ステーションPY、PM、PC、PKと、中間転写ユニット70と、定着装置14と、を備えている。
【0015】
画像形成装置10が画像形成動作を実行する場合、各画像形成ステーションPY~PKは、電子写真プロセスにより単色のトナー像を作成する。即ち、像担持体としての感光ドラム1が所定の回転方向R1に回転駆動され、帯電器2が感光ドラム1の表面を一様に帯電させる。露光装置3は、画像データを色成分ごとに分解したデータに基づいて変調したレーザ光を用いて感光ドラム1を走査し、ドラム表面に静電潜像を書き込む。この潜像は、現像装置4から供給される現像剤によって現像され、トナー像として可視化される。
【0016】
中間転写ユニット70は、中間転写体としての中間転写ベルト7が、駆動ローラ71、二次転写内ローラ72及びテンションローラ73に巻き回されたものである。画像形成動作が開始されると、中間転写ベルト7は駆動ローラ71によって感光ドラム1に連れ回る回転方向R2に回転駆動される。各画像形成ステーションPY~PKにおいて作成され感光ドラム1に担持されるトナー像は、一次転写ローラ5が形成するバイアス電界により、一次転写部N1において感光ドラム1から中間転写ベルト7に一次転写される。このとき、各色のトナー像が互いに重なるように多重転写されることで、中間転写ベルト7の表面にフルカラーのトナー像が形成される。また、中間転写ベルト7に転写されずに感光ドラム1に残った転写残トナー等の付着物は、各ステーションのドラムクリーナ6によって除去される。
【0017】
中間転写ベルト7を挟んで二次転写内ローラ72に対向する位置には、二次転写ローラ8が配置され、二次転写ローラ8と中間転写ベルト7との間のニップ部として二次転写部N2が形成されている。中間転写ベルト7に担持されたトナー像は、二次転写部N2において、後述するように二次転写部N2に向けて1枚ずつ搬送されてくる記録材Sに対して二次転写される。記録材Sに転写されずに中間転写ベルト7に残った転写残トナー等の付着物は、ベルトクリーナ75によって除去される。
【0018】
二次転写部N2においてトナー像を転写された記録材Sは、搬送ベルト13を介して定着装置14に送られる。定着装置14は、記録材Sを挟持して搬送する回転体対と、記録材上のトナー像を加熱するハロゲンランプ等の熱源とを有し、記録材Sを回転体対によって搬送しながらトナー像を加熱及び加圧する。これによりトナーが溶融し、その後固着することで、記録材Sに定着した画像が得られる。
【0019】
このようなプロセスに並行して、記録材Sを給送し、二次転写部N2へ向けて搬送する搬送動作が行われる。画像形成装置10は、装置本体19の下部に記録材Sを収納する複数の給送カセット11を有し、いずれかの給送カセット11から記録材Sを1枚ずつ給送する。記録材Sとしては、普通紙及び厚紙等の紙、プラスチックフィルム、布、コート紙のような表面処理が施されたシート材、封筒やインデックス紙等の特殊形状のシート材等、サイズ及び材質の異なる多様なシートを使用可能である。
【0020】
給送カセット11に積載された記録材Sは、給送ローラ21によってカセットから繰出されて、分離ローラ対22に到達する。分離ローラ対22は、記録材Sを引き続き搬送する搬送ローラ22aと、搬送ローラ22aに当接する分離ローラ22bとを有する。分離ローラ22bは、例えば画像形成装置10の装置本体19に対して固定された軸にトルクリミッタを介して接続されており、搬送ローラ22aと分離ローラ22bとの間の分離ニップを通過する記録材Sに摩擦力を付与する。これにより、分離ニップに複数枚の記録材Sが進入したときは搬送ローラ22aに接する最上位の記録材のみが搬送され、他の記録材は分離ローラ22bにより搬送を阻まれる。
【0021】
分離ローラ対22から送り出された記録材Sは、引抜ローラ対24によりレジストレーションローラ12に向けて搬送される。レジストレーションローラ12は、記録材Sの斜行を補正すると共に、画像形成ステーションPY~PKによるトナー像の作成開始に同期したタイミングで記録材Sを二次転写部N2に向けて送り込む。二次転写部N2及び定着装置14を通過することで画像が形成された記録材Sは、画像形成装置内部の排出経路を搬送されて、装置本体19の側方に設けられた排出トレイ15に排出される。
【0022】
以上の説明において、中間転写型の電子写真機構を構成する画像形成ステーションPY~PK、中間転写ユニット70及び定着装置14は、記録材に画像を形成する画像形成手段の一例である。上記構成に代えて、例えば感光体上に作成したトナー像を中間転写体を介さずに直接記録材に転写する直接転写方式の電子写真機構を用いてもよい。また、電子写真方式に限らず、例えばインクジェット方式の印刷ユニットやオフセット印刷機構を画像形成手段として用いてもよい。
【0023】
次に、本実施形態に係る画像読取装置である自動原稿読取装置300の構成について、図2(a、b)を用いて説明する。図2(a)は、本実施形態の自動原稿読取装置300の斜視図であり、図2(b)はその断面構成を表す概略図である。
【0024】
自動原稿読取装置300は、原稿を搬送するADF200と、ADF200によって搬送される移動原稿及び原稿台ガラス101に載置される静止原稿から画像情報を読取る読取装置(以下、リーダ100とする)と、を備えている。ADF200は、画像形成装置の装置本体19の上部に固定されるリーダ100に対して、リーダ100の上面奥側に設けられた開閉ヒンジを介して開閉自在に連結されている。
【0025】
リーダ100は、原稿台ガラス101と、表面読取ユニット104と、光学系モータ225(図3)と、読取移動ガイド109と、を有する。表面読取ユニット104は、原稿となるシートから画像データを読取る読取手段(第1読取手段)の例である。本実施形態の表面読取ユニットは、密着型イメージセンサ(CIS)方式を採用している。即ち、表面読取ユニット104は、光源となるLED105,106と、CMOS等の撮像素子からなるラインセンサ108と、原稿からの反射光をラインセンサ108の受光面に結像するレンズアレイ107とによって構成されている。リーダ100は、光学系モータ225を用いて表面読取ユニット104を読取移動ガイド109に沿って移動させながら、透明部材である原稿台ガラス101を通して、原稿台ガラス101に載置された原稿の表面を走査する固定読み動作を行う。この場合、表面読取ユニット104は主走査方向(ラインセンサ108の整列方向)の線画像を1ラインずつ取得し、線画像を副走査方向である表面読取ユニット104の移動方向に関して統合することで、原稿全体の画像データが取得される。
【0026】
また、リーダ100には原稿台ガラス101とは別の透明部材である表面流し読みガラス102が設けられている。自動原稿読取装置300がADF200によって原稿を1枚ずつ搬送しながら画像データを読取る流し読み動作を行う場合、表面読取ユニット104は表面流し読みガラス102を通して原稿の表面(第1面)を走査し、表面の画像データを読取る。この場合も、表面読取ユニット104は主走査方向の線画像を1ラインずつ取得し、線画像を副走査方向である原稿の搬送方向に関して統合することで、原稿の表面全体の画像データが取得される。なお、ADF200は、固定読み動作において原稿を原稿台ガラス101に押し付ける白色の圧板221と、表面流し読みガラス102に対向し、流し読み動作において原稿の背景となる流し読みガイド211と、を有している。
【0027】
ADF200は、原稿トレイ201、ピックアップローラ204、分離ローラ対206、引抜ローラ対208、リード上流ローラ対209、リード下流ローラ対218、排出ローラ対219及び排出トレイ220を備えている。原稿トレイ201は、読取対象のシートである原稿を複数枚積載可能な積載部である。給送手段の例であるピックアップローラ204は、原稿トレイ201に積載された原稿束の上面に当接して、最上位の原稿を分離ローラ対206に向けて送り出す。分離ローラ対206は、分離ニップを形成する搬送ローラ206a及び分離ローラ206bを有し、ピックアップローラ204によって送り出される原稿を1枚ずつ分離しながら搬送する。シートを分離する分離部材の例である分離ローラ206bは、例えばADF200の枠体に固定された軸に対してトルクリミッタを介して接続され、分離ニップにおいてシートに摩擦力を作用させることでシートを分離する。
【0028】
引抜ローラ対208、リード上流ローラ対209、リード下流ローラ対218及び排出ローラ対219は、原稿トレイ201からその下方に配置される排出トレイ220に向かってU字状に湾曲した搬送路に沿って配置されている。これらのローラ対は、いずれも、読取手段による読取位置を介してシートを搬送する搬送手段の例である。引抜ローラ対208は、分離ニップを通過した原稿を挟持してリード上流ローラ対209へ向けて搬送する。リード上流ローラ対209は、表面読取ユニット104が表面流し読みガラス102を通して原稿の表面を走査する位置(表面読取位置)を介して原稿を搬送する。
【0029】
ここで、本実施形態のADF200は、原稿の裏面(第2面)から画像データを読取る裏面読取ユニット212と、透明部材である裏面流し読みガラス217と、を備えている。読取手段(第2読取手段)の例である裏面読取ユニット212は、表面読取ユニット104と同じくCIS方式を採用している。即ち、裏面読取ユニット212は、光源となるLED213、214と、CMOS等の撮像素子からなるラインセンサ216と、原稿からの反射光をラインセンサ216の受光面に結像するレンズアレイ215とによって構成されている。
【0030】
裏面読取ユニット212及び裏面流し読みガラス217は、ADF200内部の搬送路における原稿搬送方向に関してリード上流ローラ対209とリード下流ローラ対218との間に配置されている。流し読み動作においては、裏面読取ユニット212が裏面流し読みガラス217を通して原稿の裏面を走査する位置(裏面読取位置)を介して原稿が搬送される。この場合、裏面読取ユニット212により主走査方向の線画像を1ラインずつ取得し、線画像を副走査方向である原稿の搬送方向に関して統合することで、原稿の裏面全体の画像データが取得される。つまり、裏面読取ユニット212は、裏面読取位置において原稿の裏面を走査し、表面読取ユニット104による表面の画像データの読取りに並行して裏面の画像データを読取ることが可能である。以下、自動原稿読取装置300が、ADF200によって搬送する各原稿の表面及び裏面の両方から並行して2ページ分の画像データを読取るモードを両面モードとする。また、自動原稿読取装置300が、ADF200によって搬送する各原稿の表面又は裏面(通常は表面)から1ページ分の画像データを読取るモードを片面モードとする。なお、リーダ100には、後述のシェーディング補正において白レベルの基準となる表面白基準部材103及び裏面白基準部材222が設置されている。
【0031】
裏面読取位置を通過した原稿は、リード下流ローラ対218により、排出ローラ対219へ向けて搬送される。排出ローラ対219は、画像データの読取りが終了した原稿を排出トレイ220に排出する。複数枚の原稿が原稿トレイ201に積載されている場合、自動原稿読取装置300は、最終原稿の流し読み動作が終了するまで、原稿の給送、分離、搬送、表面及び/又は裏面からの画像データの読取り、及び排出を含む一連の動作を繰り返す。
【0032】
なお、表面読取ユニット104や裏面読取ユニット212としては、他のイメージセンサユニットを用いてもよい。例えば、CIS方式に代えて、撮像素子として電荷結合素子(CCD)を用い、原稿からの反射光を縮小光学系を構成する複数のミラーを介してCCDの受光面に結像するCCD方式を用いることができる。
【0033】
(自動原稿読取装置の制御回路)
次に、自動原稿読取装置300の制御構成について説明する。図3は、本実施形態の自動原稿読取装置300及びこれを含んだ画像形成装置10の制御回路を示すブロック図である。
【0034】
自動原稿読取装置300において、プログラムを実行する実行手段としてのCPU301は、リーダ100及びADF200の各ユニットを統括的に制御する中央演算処理装置である。ROM302はCPU301が実行すべき制御内容をプログラム及びプログラムの実行に用いるデータとして格納した記憶装置である。RAM303はCPU301が制御を行うのに必要な作業領域として使用される記憶装置である。
【0035】
CPU301の制御対象となるユニットは、以下の通りである。CPU301には、原稿搬送機能を実現するため、ADF200に設けられた搬送用の各ローラを駆動する搬送モータ224が接続されている。搬送モータ224は、分離クラッチ223を介してピックアップローラ204及び分離ローラ対206と連結されている。分離クラッチ223は、搬送モータ224からピックアップローラ204及び分離ローラ対206への駆動伝達を連結及び切断することが可能である。分離クラッチ223を切断することで、引抜ローラ対208に到達する手前の位置(以下、一時停止位置Pと呼ぶ。図2参照)で原稿の搬送を停止することができる。
【0036】
本実施形態での搬送モータ224はパルスモータであり、CPU301は駆動パルス数を制御することで搬送モータ224の駆動量を管理している。つまり、搬送モータ224に対する駆動指令により指定されるパルス数は、搬送中の原稿の搬送距離として捉えることができ、CPU301はパルス数から算出した搬送距離を基に原稿の現在位置を判断し、原稿搬送動作を制御する。また、ADF200には、原稿トレイ201に積載された原稿を検知する原稿有無センサ205、原稿搬送路上の原稿の先端及び後端を検知する給送センサ207及びリードセンサ210が接続されている。CPU301は、搬送モータ224のパルス数に加えて、給送センサ207及びリードセンサ210の検知タイミングに基づいて原稿の現在位置を判断する。
【0037】
また、CPU301には、画像読取機能を実現するために、表面読取ユニット104を副走査方向に移動させるための光学系モータ225と光学系HPセンサ226、画像メモリ305、画像処理部306、画像転送部304がそれぞれ接続されている。光学系HPセンサ226は、光学系モータ225による移動方向における表面読取ユニット104の位置を検知するためのセンサである。表面読取ユニット104及び裏面読取ユニット212は、原稿の画像を走査し、1ライン毎に読取りを行うイメージセンサユニットであり、表面LED105及び裏面LED213はその光源である。
【0038】
画像メモリ305は、表面読取ユニット104及び裏面読取ユニット212により読取られた画像データを一時的に格納する記憶手段である。画像メモリ305は、リーダ100で読める最大原稿サイズかつ表面読取ユニット104及び裏面読取ユニット212で読取可能な最大解像度で4ページ分の容量を備えている。従って、先行して読取られた先行原稿の画像データが画像メモリ305に格納されている状態で後続原稿の流し読み動作を行い、後続原稿から読取った画像データを先行原稿の画像データとは別の記憶領域に格納していくことが可能である。なお、本実施形態における「記憶手段」とは、読取手段を介して取得した画像データを、外部に転送するために一時的に保持するための記憶領域を有する任意の記憶装置を指し、例えばDRAM等の揮発性メモリを用いることができる。
【0039】
画像処理部306は、表面読取ユニット104及び裏面読取ユニット212によって読取られて画像メモリ305に格納された画像データに対して画像処理を施し、画像の補正(例えば、シェーディング補正、ガンマ補正、形状補正)を行う。本実施形態の転送手段である画像転送部304は、画像処理部306により画像処理が施された画像メモリ305内の画像データを、画像転送ライン402を介して後述するコントローラ310の画像転送部314に転送する。画像転送部304は、コントローラ310の画像転送部314との同期をとるためのクロック信号を生成するクロック生成回路と、画像メモリ305から取得した画像データをクロック信号に同期した信号として画像転送部314に送信する回路とを含む。後述するように、画像転送部304は、コントローラ310からの指示に基づいてクロック周波数を切り替えて動作することが可能である。
【0040】
図3の下部に示すコントローラ310は、リーダ100、ADF200を含む画像読取システムとしての画像形成装置10の全体を制御する制御手段であると共に、画像転送部304による画像データの転送先となる外部の情報処理装置の例である。CPU311はコントローラ310の各ユニットを統括的に制御する中央演算装置である。ROM312はCPU311が実行すべき制御内容をプログラムとして格納した記憶装置である。RAM313はCPU311が制御を行うのに必要な作業領域として使用される記憶装置である。画像転送部314は、画像転送部304から画像を受信し、画像メモリ315へ格納する。操作部316は、CPU311と通信することで、ユーザからの画像形成装置10に対する動作指示やデータの入力を受け付け、ユーザへのメッセージや読取られた画像の表示を行う為のユーザーインタフェースである。操作部316は、入力装置として、画像読取動作の実行ボタン及びテンキー並びにディスプレイのタッチパネル機能部等を有し、出力装置として、液晶ディスプレイやLEDランプ等を有する。
【0041】
CPU311は、CPU301との通信ライン401を介して、画像読取制御に関する制御コマンドのやり取り及び制御用データの授受を行う。例えば、CPU311は、操作部316からユーザの画像読取動作の開始指示(実行ボタンの押下を表す信号等)を受け取り、CPU301に画像読取開始要求を送信する。また、例えば、CPU311は、操作部316からユーザの原稿サイズ設定指示を受け取り、CPU301に原稿のサイズ(主走査方向の長さ(原稿幅)及び副走査方向の長さ(原稿長さ))を送信する。また、例えば、CPU311は、CPU301から異常発生通知を受け取り、異常の種類に応じたユーザへのメッセージを操作部316に表示させる。
【0042】
(シェーディング補正)
自動原稿読取装置300によるシェーディング補正について説明する。自動原稿読取装置300に設けられた表面白基準部材103及び裏面白基準部材222(図2(b)参照)は、シェーディング補正における白レベルの基準データを作成するための白板である。自動原稿読取装置300は、画像読取動作を実行する前に表面白基準部材103及び裏面白基準部材222を表面読取ユニット104及び裏面読取ユニット212でそれぞれ読取り、画像処理することで表裏それぞれの基準データを作成する。自動原稿読取装置300が流し読み動作を行う場合、画像処理部306は作成済みの基準データに基づき、原稿の表面及び裏面から読取られた画像データのシェーディング補正を行う。
【0043】
具体的には、図2(b)に示すように、表面白基準部材103は表面流し読みガラス102と原稿台ガラス101の間に固定して設けられている。シェーディング補正の準備として、CPU301は光学系モータ225の駆動により表面読取ユニット104を移動させ、表面白基準部材103に対向する位置(以下、表面シェーディング位置と呼ぶ)で停止させる。さらに、表面読取ユニット104を表面シェーディング位置に停止させた状態で、表面読取ユニット104に表面白基準部材103の画像を読取らせ、表面画像のための白レベルの基準データを作成する。一方、裏面白基準部材222は原稿搬送路を挟んで裏面読取ユニット212に対向するように表面流し読みガラス102に貼付けられている。CPU301は、裏面読取ユニット212に裏面白基準部材222の画像を読取らせ、裏面画像のための白レベルの基準データを作成する。
【0044】
(画像データの転送)
コントローラ310において自動原稿読取装置300で読取られた画像データを受け取る準備ができると、CPU311は、通信ライン401を介してリーダ100のCPU301へ、ページ単位で画像取得要求を通知する。自動原稿読取装置300のCPU301は、画像取得要求を受け取った際に、要求されたページの画像データが既に画像メモリ305に格納されていたら、画像転送部304から画像転送部314へ画像転送ライン402を介して画像データを転送させる。
【0045】
ここで、コントローラ310は、自動原稿読取装置300のCPU301に対して画像取得要求と同時に、要求している画像データの転送速度を通知する。CPU301は、コントローラ310が通知した転送速度に合わせて画像転送部304から画像データを転送する。つまり、自動原稿読取装置300の画像転送部304は、コントローラ310から通知された転送速度に対処するクロック周波数で、クロック信号及び画像データの信号を送信する。
【0046】
コントローラ310は、例えばシステム全体で複数の処理が重なりCPU311の負荷が重くなった場合等、現状の転送速度では新たに画像データを受け取ることが難しい場合に転送速度の設定を遅くするようにCPU301に通知する。これにより、コスト面や発熱量等の理由でCPU311の処理能力に限界がある場合でも、システム全体としての安定性が確保される。反対に、CPU311の負荷が軽くなったときは、CPU301に対して転送速度を元へ戻すように通知する。本実施形態において、このような転送速度の変更は、画像読取動作の入力待ち状態に限らず、自動原稿読取装置300が複数枚の原稿に対して連続的に流し読み動作を実行するジョブ(流し読みジョブ)の実行中においても行われる。
【0047】
(画像転送処理)
上述した通り、表面読取ユニット104及び裏面読取ユニット212により読取られた原稿の画像データは、一度画像メモリ305を経由してから画像転送ライン402を使ってコントローラ310に送信される。ここで、画像転送ライン402は表面画像データの転送と裏面画像データの転送とに共に使用される信号線である。画像転送ライン402は、カラーの画像データに対処するために全部で24本の並列した信号線及びこれに並列するその他の信号線で構成される。即ち、カラーの画像データにおいて各画素はRed/Green/Blueの3色の輝度を8bitの階調で表されており、24本の信号線を介して、1クロックにつき1画素分の24bitのデータを転送することができる。なお、その他の信号線には、クロック信号を伝達する信号線と、1ページ分の画像データの開始を示す信号を伝達する信号線と、1ライン分の画像データの開始を示す信号を伝達する信号線が含まれる。
【0048】
1ページ分の画像データの転送に掛かる時間は、画像データのデータサイズを、画像転送ライン402が伝達する信号のクロック周波数と、1クロック当たりに転送されるデータ量とによって除算したものである。本実施形態では1クロックにつき1画素分のデータが転送されるため、(1ページ分の画像データの転送に掛かる時間[sec])=(1ページ分の画素数)÷(クロック周波数[Hz])である。
【0049】
画像データの画素数は、原稿サイズ及び解像度によって定まる。主走査方向の画素数は、600dpiの解像度では、原稿サイズに関わらず、表面及び裏面で共通して5184画素である。本実施形態のADF200では、低コスト化のため、原稿トレイ201に原稿幅(主走査方向長さ)を測定するセンサ等を設けていないため、主走査方向に関しては常に表面読取ユニット及び裏面読取ユニットが読取可能な最大範囲で読取りを行うこととしている。
【0050】
なお、上記の主走査方向の画素数(5184)は、A4サイズの短辺長さ(210mm)を600dpiの解像度で表したときの画素数(4961)よりも多い。従って、本実施形態の自動原稿読取装置300は、これらのサイズ又はより幅狭の原稿から画像データを読取可能である。また、原稿幅を測定するセンサを設けた場合や、操作部を介して原稿サイズの設定を受け付ける場合は、予め原稿幅が分かっているため、これに対応する主走査方向の一部の領域でのみ画像データを取得するようにしてもよい。以下では、本実施形態において典型的な原稿サイズとして想定するA4サイズの原稿から画像データを読取る場合を例にして説明する。
【0051】
副走査方向の画素数については、A4サイズの長辺長さが297mmで、さらに画像補正処理や搬送のび量などのマージンを含めて、本実施形態では読取長さを307.7mmに設定している。この場合、副走査方向の画素数は次の式(1)にあるように7269画素となる。
307.7[mm]÷25.4[mm/inch]×600[画素/inch]
=7269[画素] ・・・式(1)
【0052】
前述した通り、本実施形態では、コントローラ310のCPU311の負荷に応じて、自動原稿読取装置300からコントローラ310への画像データの転送速度を切り替える。以下、画像データの転送速度の変更により、自動原稿読取装置300からコントローラ310への画像データの転送にどのような影響があるかを説明する。
【0053】
(1.転送速度が通常の場合)
最初に、画像データの転送速度が通常である場合、つまりコントローラ310のCPU311の負荷が通常状態の場合について説明する。本実施形態では、通常状態における画像転送ライン402の駆動クロックは59MHzに設定されている。本実施形態における第1の速度の例は、このクロック周波数のもとで24本の信号線からなる画像転送ライン402が単位時間当たりに転送するデータ量(59[MHz]×24[bit]≒1400[Mbps])である。
【0054】
カラーモードが設定され、解像度の設定が600dpiである場合、1ページ分の画像データの転送に掛かる時間は、次の式(2)にあるように0.639secである。ただし、カラーモードとは、カラーの画像データ(各画素に色毎の複数の階調データが割り当てられた画像データ)を読取るモードである。
5184(主走査方向画素数)×7269(副走査方向画素数+マージン)÷59000000[画素/sec]
=0.639sec ・・・式(2)
【0055】
さらに、画像データの転送にかかるページ間処理が0.06secであることから、1分あたりに転送可能な画像データの最大ページ数は式(3)にあるように85.8ページとなる。
60[sec]÷(0.639[sec]+0.06[sec])
=85.8[ページ/分] ・・・式(3)
【0056】
ここで、ADF200による原稿の1分あたりの搬送最大枚数がA4サイズで30枚の場合、片面モードならば毎分30ページの画像データが取得される。この場合、30[ページ/分]<85.8[ページ/分]であるから、画像データの取得ペースは画像データ転送能力を超えていないことになる。また、両面モードであったとしても、60[ページ/分]<85.8[ページ/分]であるから、画像データの取得ペースは画像データ転送能力を超えない。
【0057】
一方、自動原稿読取装置300の画像メモリ305は4Gbit分用意されており、転送速度の制約によらず、画像メモリ305がいっぱいになるまで読取りが可能である。A4サイズのカラー画像を600dpiの解像度で読み込むと、式(4-1)、式(4-2)の結果から約0.842Gbit必要であることが分かる。
5184(主走査方向画素数)×7269(副走査方向画素数)×8[bit](輝度)×3(色)
=904379904[bit] ・・・式(4-1)
904379904÷1024÷1024÷1024
=0.842…Gbit ・・・式(4-2)
【0058】
よって、式(5)にあるように、画像メモリ305には4ページ分の画像データを格納することが可能である。
4[Gbit]÷0.842[Gbit/ページ]
=4.75[ページ] ・・・式(5)
【0059】
図4は、コントローラ310が通常状態にある場合に、A4サイズの原稿6枚をセットし、カラーモード及び両面モードを設定し、解像度を600dpiに設定した状態で流し読みジョブを実行したときの自動原稿読取装置300の動作状態の推移を表している。図中左から右に向かって時間が経過していることを表す。給送、搬送、表面読取り、裏面読取り及び画像転送の各段は、各処理が行われている状態(ON)と処理が行われていない状態(OFF)を表している。
【0060】
給送処理とは、分離クラッチ223を連結した状態でピックアップローラ204及び分離ローラ対206によりシートを1枚ずつ給送させる処理である。図示した例では6枚の原稿を給送するため、給送処理が6回実行されている。
【0061】
以下、続けて給送される2枚の原稿の間で、前の原稿に対する給送処理が開始されてから、次の原稿に対する給送処理が開始されるまでの時間長さを給送間隔と定義する。図4に示す例では、ADF200が1分間当たり30枚のA4サイズ原稿を搬送しており、式(6)から平均して2000msecの給送間隔で原稿が給送されている。
60[sec]×1000[msec/sec]÷30
=2000…[msec]・・・式(6)
【0062】
搬送処理は、分離ローラ対206よりも下流の搬送部材により原稿の搬送を行う処理であり、斜線部分が原稿を搬送している状態を示している。図4では、ジョブの実行中に搬送処理が中断することはなく、平均2000msecの給送間隔で次々に給送される6枚の原稿が、継続的に実行される搬送処理によって搬送されていく。
【0063】
続いて、表面読取り処理、裏面読取り処理及び画像転送処理について説明する。表面読取り処理は、表面読取ユニット104により表面の画像データを取得する処理であり、裏面読取り処理は、裏面読取ユニット212により裏面の画像データを取得する処理である。ここでは両面モードにより6枚の原稿の表面及び裏面から画像データを読取るため、ジョブ中に取得する画像データは全部で12ページ分となる。なお、片面モードの場合は、給送処理の回数と画像データのページ数は同じとなる。表面読取ユニット104と裏面読取ユニット212の読取位置が少しずれていることから(図2(b)参照)、裏面の読取開始タイミングは表面の読取開始タイミングから少し遅れることになる。
【0064】
画像転送処理は、表面読取ユニット104及び/又は裏面読取ユニット212によって取得され、画像メモリ305に一時的に格納された画像データを画像転送部304がコントローラ31に転送する処理である。画像転送処理は、表面読取り処理及び裏面読取り処理に並行して行われる。
【0065】
また、通常状態において、画像転送処理により1ページ分の画像データを転送する転送ペースは、1ページ分の画像データの平均の取得ペース(60ページ/分)よりも短くなるように設定される。画像データの転送ペースが画像データの取得ペースよりも速ければ、画像メモリ305を用いて画像データを適宜バッファしながら画像転送処理を行うことで、ADF200による原稿の搬送を中断することなくジョブを実行できるからである。
【0066】
式(3)で算出したように、本実施形態において通常状態における画像転送能力は85.8ページ/分であることから、画像データの転送ペースはこれ以下の値を設定する必要がある。図示した例では、ちょうど85ページ/分に相当する間隔で各ページの画像転送処理を実行するように設定されている。この場合、画像転送処理の実行間隔は、式(7)にあるように705msecである。ただし、画像転送処理の実行間隔は、理論上の画像転送能力(ここでは85.8ページ/分)を超えない転送ペース(例えば85ページ/分)を実現するために予め設定され、ROM302等に格納されている。
60[sec]×1000[msec/sec]÷85
=705[msec] ・・・式(7)
【0067】
なお、図示した例において、2ページ目(1枚目の原稿の裏面)の画像データの画像転送処理と、3ページ目(2枚目の原稿の表面)の画像データの画像転送処理との間隔は、705msecよりも広がっている。これは、画像データの転送ペースが取得ペースよりも速いことから、後続原稿の画像データが読取られて画像メモリ305に格納されるのを待機する必要があるからである。
【0068】
図5は、両面モードにおいて原稿から読取られた画像データが画像メモリ305を介してコントローラ310に転送されるまでの流れを説明するための図である。ここでは、両面モードにおいて1枚目の原稿の両面から1ページ目及び2ページ目の画像データを読取る読取り処理の途中であって、1ページ目についての画像転送処理が開始された後の状態を表している。
【0069】
表面読取ユニット104と裏面読取ユニット212によって読取られる2ページ分の画像データは、画像メモリ305の入力セレクタを経由して、画像メモリ305に用意された4つの記憶領域のいずれか2つに格納されていく。ただし、画像メモリ305には、A4サイズかつカラーの1ページ分の画像データをそれぞれ格納可能な4つの記憶領域が設定されているものとする。画像処理を施すことでコントローラ310に転送可能な状態となった画像データは、出力セレクタを経由してコントローラ310に転送されていく。
【0070】
ここで、入力セレクタは、表面読取ユニット104及び裏面読取ユニット212によって並列的に読取られる2ページ分の画像データを、並列的に画像メモリ305に格納する。その一方で、画像転送ライン402は複数ページの画像データを並列的に転送可能な構成とはなっていないため、出力セレクタは、画像転送ライン402を介して出力する画像データとしていずれか1ページの画像データのみを選択することになる。
【0071】
そのため、1枚の原稿の両面から2ページ分の画像データを読取っている間、2ページ分の画像データが画像メモリ305の別々の領域に並列的に入力される一方で、画像メモリ305からの出力は1ページずつしか行われない。図5に示した時点では、表面読取ユニットによって読取られる画像データが画像メモリ305の領域「1」に格納されていくと共に、既に画像メモリ305に格納されている部分について順次コントローラ310へ転送されている。つまり、表面の画像データは、斜線領域で示したように図中の左側から順番に右側に向けて(灰色の矢印)格納されつつ、網点領域で示したように図中の左側から順番に右側に向けて(黒色の矢印)コントローラに転送されている。このとき、裏面読取ユニットによって読取り済みの画像データの量は、裏面の読取りが表面の読取りよりも遅れて始まることから、表面読取ユニットによって読取り済みの画像データの量よりも少ない。また、画像転送ライン402は表面の画像データの転送に使用されていることから、裏面の画像データは画像メモリ305の領域「2」に蓄積されている。
【0072】
図6は、2枚目の原稿の先端が一時停止位置Pに到達した時点(図4参照)の画像メモリの状態を示している。画像メモリ305の領域「1」に格納されていた画像データは既に転送完了しており、領域「2」については、裏面読取ユニットにより読取られた画像データが格納されると同時にコントローラへの転送も行われている。
【0073】
ここで、画像メモリ305の記憶領域には3ページ分の画像データを格納可能な空き領域があり、次の原稿の表面、裏面から読取られる2ページ分の画像データを受入可能である。従って、図6に示した時点では、既に読取られた画像データのコントローラへの転送待ちをするためにジョブを停止する必要はなく、2枚目の原稿の搬送処理及び表面及び裏面の読取り処理が続行される。つまり、画像メモリ305の容量に、次の原稿から読取られる画像データを格納するのに十分な空きがある限りは、ADF200による次の原稿の搬送処理を停止することなくジョブの実行を継続できる。また、画像メモリ305に十分な空きがあるということは、コントローラ310についても、自動原稿読取装置300がジョブを続行した場合に発生する画像データを受入可能な状態であることを意味している。
【0074】
(2.転送速度が制限された場合[参考例])
続いて、画像データの転送速度が制限されている場合の画像転送処理について説明する。上述した通り、画像データの転送速度は、例えばコントローラ310のCPU311の負荷が重くなり、通常の転送速度でリーダからの画像データを受け取れない状態になったときに制限される。
【0075】
図7は、給送間隔を変更しない参考例の構成において、流し読みジョブの実行中に画像データの転送速度が制限された場合の自動原稿読取装置300の動作状態の推移を表している。ジョブの設定は図4に示した例と同様であり、A4サイズの原稿6枚から画像データを読取るジョブであって、カラーモード及び両面モードが設定され、解像度が600dpiに設定されている。
【0076】
図7において、2枚目の原稿の先端が一時停止位置Pに到達した時点での動作状態は、図4に示した例と同様である。しかし、コントローラ310からの要求により、3ページ目(2枚目の表面の画像データ)から、画像転送処理における画像データの転送速度を通常の速度よりも遅い速度に切り替えることが通知される。具体的には、画像転送ライン402の駆動クロックが、通常状態における59MHzから29MHzに切り替えられる。本実施形態における第2の速度の例は、このクロック周波数のもとで24本の信号線からなる画像転送ライン402が単位時間当たりに転送するデータ量(29[MHz]×24[bit]≒700[Mbps])である。
【0077】
クロック周波数が29MHzの場合、A4サイズの原稿の1ページ分の画像データを転送するのにかかる時間を算出すると、式(9)にあるように1.3secとなる。
5184(主走査方向画素数)×7269(副走査方向画素数+マージン)÷29000000[画素/sec]
=1.3[sec] ・・・式(9)
【0078】
画像データの転送にかかるページ間処理が0.06secであることから、1分あたりに転送可能な画像データの最大ページ数は式(10)にあるように44.1ページとなる。
60[sec]÷(1.3[sec]+0.06[sec])
=44.1ページ/分 ・・・式(10)
【0079】
式(10)で算出したように、転送速度が制限された状態における画像転送能力は44.1ページ/分であることから、画像データの転送ペースはこれ以下の値を設定する必要がある。図示した例では、ちょうど44ページ/分に相当する間隔で各ページの画像転送処理を実行するように設定されている。この場合、画像転送処理の実行間隔は、式(11)にあるように1364msecである。
60[sec]×1000[msec/sec]÷44
=1364[msec] ・・・式(11)
【0080】
画像転送処理の実行間隔がこのように通常状態に比べて広がる結果、1枚の原稿から読取られる2ページ分の画像データの画像転送処理を実行するためには1364[msec]×2=2728[msec]の時間が必要となる。しかし、この時間長さは、ADF200が実行可能な最短の給送間隔(ADF200の搬送最大枚数である30枚/分に相当する間隔)である2000msecよりも長い。言い換えると、図7に示した例で転送速度が制限された後の状態では、画像データの転送ペース(44ページ/分)が画像データの平均の取得ペース(60ページ/分)よりも遅くなってしまっている。
【0081】
その結果、少しずつ画像メモリ305に転送待ち状態の画像データが増えていき、画像メモリ305の空き領域が少なくなっていく。そして、最終的には画像メモリ305のオーバーフローを防ぐために原稿の搬送処理を一時停止する必要が生じる。
【0082】
図7の例は、5枚目の原稿の先端が一時停止位置Pに到達した時点で搬送処理が停止されたケースを表している。このとき、図8に示すように、画像メモリ305は3つの領域が使用中であり、1ページ分しか空き領域がない。具体的には、3枚目の裏面から読取られた6ページ目の画像データが画像メモリ305の領域「1」から転送中である。また、4枚目の表面及び裏面から読取られた7、8ページ目の画像データが、画像メモリ305の領域「2」「3」に格納されて転送待ちの状態となっている。このように、5枚目の原稿を搬送して読取り処理を行ったとしても、2ページ分の画像データを格納する空き領域がないため、当該原稿に対して搬送処理の一時停止が発生している。具体的には、給送センサ207の検知結果に基づいて、5枚目の原稿の先端が一時停止位置Pに到達したタイミングで分離クラッチ223が切断され、分離ローラ対206による原稿の搬送が停止する。
【0083】
6ページ目の画像データの画像転送処理が完了すると、画像メモリ305には2ページ分の画像データを格納する空き領域が確保されるため、分離クラッチ223が再連結される。これにより、5枚目の原稿の搬送が再開され、表面及び裏面の読取り処理が実行される。
【0084】
しかし、このような搬送処理の一時停止が度々発生すると、装置の耐久性及び騒音の面での懸念が生じる。即ち、本実施形態の一時停止処理では分離クラッチ223を切断し、その後再連結される。このとき、駆動トルクの変化に伴う分離ローラ対206の駆動構成(ギヤ列や軸部材等)への負荷によって部材の消耗が早まったり、搬送動作の停止及び再開に伴う騒音が発生する。
【0085】
実際、図7に示す例では、6枚目の原稿が一時停止位置Pに到達した時点で、再び画像メモリ305が8、9、10ページ目の画像データで占有され、2ページ分の画像データを格納する空き領域がない状態となっている。そのため、5枚目に引き続き6枚目の原稿に対しても一時停止処理が発生する。また、7枚以上の原稿を搬送するジョブであった場合には、7枚目以降の各原稿について一時停止処理が繰り返し発生する。
【0086】
なお、一時停止処理が可能な他の構成例として、ピックアップローラ204及び分離ローラ対206を駆動する給送モータと、その下流の引抜ローラ対208等を駆動する搬送モータとを別個に設けて、給送モータの駆動を一時停止させることが考えられる。そのような構成でも、駆動構成への負荷や、モータの停止及び再起動が繰り返されることによる騒音が生じる。
【0087】
このように、画像データの転送速度が制限されることで、読取り処理による画像データの取得ペースに画像転送処理による転送ペースが追い付かない状態になると、画像メモリ305において転送待ちの画像データが徐々に増えていく。そして、いずれは原稿の搬送を一時停止させる必要が発生することから、装置の耐久性及び騒音の面での懸念があった。
【0088】
(3.転送速度が制限され、給送間隔を調整する場合)
そこで、本実施形態では、画像データの転送速度が変更された場合に、必要に応じて原稿の給送間隔を調整することで上記の不都合を回避している。以下、本実施形態において画像データの転送速度が制限された場合の動作について説明する。
【0089】
図9は、本実施形態において、流し読みジョブの実行中に画像データの転送速度が制限された場合の自動原稿読取装置300の動作状態の推移を表している。ジョブの設定は図4及び図7に示した例と同様であり、A4サイズの原稿6枚から画像データを読取るジョブであって、カラーモード及び両面モードが設定され、解像度が600dpiに設定されている。
【0090】
図7に示した参考例の場合と同様に、コントローラ310からの要求により、2ページ目の画像データ転送後に画像データの転送速度が変更される。つまり、1、2ページ目は59MHzのクロック周波数で画像転送処理が実行され、3ページ目以降は29MHzのクロック周波数で画像転送処理が実行される。このため、画像転送処理の実行間隔は式(7)で算出された705msecから、式(11)で算出された1364msecへと広がる。その結果、転送速度が通常である場合の給送間隔(2000msec)に比べて、1枚の原稿から読取られる2ページ分の画像データの転送に要する時間の方が長くなる。
【0091】
このような場合、本実施形態では、変更後の画像データの転送速度に基づく画像転送処理の実行間隔に基づいて新たな給送間隔を算出する。以下、新たな給送間隔の算出方法を説明する。
【0092】
変更後の転送速度に基づく画像転送処理の実行間隔は、式(11)にあるように1364msecである。また、ここでは両面モードを例に説明するため、1枚の原稿に対して2回の画像転送処理が発生する。従って、搬送処理を停止させずに読取り処理を行うことを前提として、画像転送処理による画像データの転送ペースと読取り処理による画像データの取得ペースが釣り合う給送間隔は、式(12)の通り2728msecとなる。なお、式(12)は、両面モードの場合の算出式であり、片面モードの場合には1ページ分(「×2」を「×1」に変更)となる。
1364[msec]×2[page/枚]
=2728…[msec/枚] ・・・式(12)
【0093】
言い換えると、本実施形態では、画像データの転送速度が第1の速度から第2の速度に変更する場合に、給送間隔を第1の間隔から第2の間隔に広げる処理を行う。図9の例において、第1の速度はクロック周波数59MHzの場合の転送速度であり、第2の速度はクロック周波数29MHzの場合の転送速度であり、第1の間隔は2000msecであり、第2の間隔は2728msecである。
【0094】
次に、給送間隔の切り替えタイミングについて説明する。3枚目の原稿の給送を開始した時点では、コントローラから3ページ目の画像転送要求は通知されておらず、3ページ目の画像データの転送はまだ開始されていないため、通常の給送間隔(2000msec)で給送を開始する。
【0095】
次に、3枚目の原稿の給送開始から通常の給送間隔が経過した時点(破線の四角)では、3ページ目の画像転送が既に開始されており、コントローラからの要求により転送速度が切り替わっていることが分かっている。このため、4枚目の原稿については、通常の給送間隔よりも長い、前述した式(12)で算出した給送間隔(2728msec)が経過するまで給送開始を遅らせる(非破線の四角)。
【0096】
このように給送間隔を広げることで、変更後の転送速度に基づく画像転送処理の実行間隔が原稿の給送間隔よりも短い状態が解消され、画像メモリ305の容量不足が回避される。具体的には、4枚目の原稿が一時停止位置Pに到達した時点で、画像メモリ305には2ページ分の空き容量が確保される。図10はこの時点での、画像メモリ305の状態を示しており、5ページ目の画像データが転送中で、6ページ目の画像データは転送待ちの状態であり、4ページ目及びそれ以前の画像データは既に転送が完了していることが分かる。従って、次の4枚目の原稿から読取られる2ページの画像データを格納する空き領域があることになり、画像データの転送待ちをするために搬送処理を一時停止させることなく、ジョブの実行は継続される。
【0097】
なお、本実施形態では、原稿の給送時の搬送速度と読取位置を通過するときの搬送速度が一定であるものとして給送間隔を算出したが、給送時と読取時の搬送速度が異なる場合においては、給送速度と読取速度の差分を式(12)に加味することもできる。
【0098】
また、図4図10では、A4サイズの原稿から画像データを読取るジョブであって、カラーモード及び両面モードが設定され、解像度が600dpiに設定された場合を例に説明している。本実施形態の自動原稿読取装置300は、これ以外のモードで流し読みジョブを実行する場合にも、画像データの転送速度の変更があった場合に必要に応じて給送間隔を調整することができる。例えば、A3サイズの原稿から画像データを読取る場合や、モノクロモード(各画素に1つの階調データ(グレースケール)が割り当てられたモノクロの画像データを取得するモード)においても、給送間隔を調整可能である。
【0099】
給送間隔の調整を行う場合において、転送速度の変更後に給送される原稿の給送間隔は、シート1枚当たりに読取られる画像データを変更後の転送速度で転送するための所要時間(以下、シート当たりの転送時間とする)に基づいて決定することが好ましい。片面モードの場合、シート当たりの転送時間とは、画像転送処理が連続的に実行されるときの1回分の実行間隔である。両面モードの場合、シート当たりの転送時間とは、画像転送処理が連続的に実行されるときの2回分の実行間隔である。なお、上述した通り、画像転送処理の実行間隔は、1ページ分の画像データを単位時間当たりのデータ転送量で除算した時間に、必要なページ間処理の時間を加算したものである。
【0100】
変更後の転送速度に基づくシート当たりの転送時間が、変更前の給送間隔よりも長くなる場合には、画像データの転送ペースが画像データの取得ペースに追い付かないことになる。従って、この場合は、変更後の転送速度に基づくシート当たりの転送時間以上となるように、給送間隔を長くすることが好ましい。これにより、画像データの転送待ちをするために搬送処理を一時停止させることなく、ジョブの実行を継続することができる。
【0101】
また、変更後の転送速度に基づくシート当たりの転送時間が、変更前の給送間隔よりも短くなる場合には、変更後の転送速度に基づくシート当たりの転送時間以上であって、変更前の転送速度に基づくシート当たりの転送時間よりも短くすることが好ましい。これにより、給送間隔を必要最小限の長さとし、自動原稿読取装置300及びこれを備える画像形成装置10の生産性向上が可能となる。
【0102】
なお、解像度の設定が300dpiである場合は、原稿サイズ等の他の条件が等しければ、600dpiの場合に比べて画像データのデータサイズが約半分に小さくなる。よって、画像データの転送にかかる時間は約半分に短くなり、ジョブの実行中に画像データの転送速度が制限されたとしても給送間隔を長くする必要はないことになる。ただし、変更後の転送速度が本実施形態の例よりもさらに遅いときや、通常の給送間隔が本実施形態の例よりも短いときには、同じ状況でも給送間隔を長くする必要が生じ得る。
【0103】
また、図9の例では、コントローラから転送速度制限が要求された時点で、変更後の転送速度で転送されるページ(3ページ目)を含む原稿(2枚目)の次の原稿(3枚目)は既に給送開始されており、その次の原稿(4枚目)は給送開始されていない。従って、3枚目と4枚目の間で給送間隔が変更されている。しかし、原稿サイズやジョブの設定条件によっては通常の給送間隔がより短く設定されていることも考えられる。そのような場合、コントローラから転送速度の制限が要求された時点で、より多くの枚数の原稿が既に給送開始されており、給送間隔を変更する位置は図9の例よりも遅らせることになる。
【0104】
また、図9の例では、コントローラからの転送速度制限の要求がジョブの実行中に通知された場合を示しているが、自動原稿読取装置300がジョブの受付を待機している期間にコントローラの処理負荷が重い状態となることもある。このような場合に、コントローラが予め自動原稿読取装置300に対して転送速度制限の要求を通知しておき、自動原稿読取装置300が、ジョブの開始時点から29MHzのクロック周波数で画像転送処理を行うようにしてもよい。この場合、ジョブの開始時点から29MHzのクロック周波数に対応した給送間隔(図9の例で2728msec)で給送処理を行うことにすれば、上述の例と同様の利点を得ることができる。
【0105】
(制御例)
本実施形態に係る自動原稿読取装置300の制御方法について、図11及び図12を用いて説明する。図11(a)は、流し読みジョブにおける給送処理の流れを表すフローチャートである。図11(b)は、流し読みジョブにおける読取り処理の流れを表すフローチャートである。また、図12は、流し読みジョブにおける画像転送処理の流れを表すフローチャートである。なお、各フローチャートの処理は、CPU301(図3)がROM302に格納されているプログラムを実行することにより実施される。
【0106】
図11(a)に示す給送制御は、ユーザが操作部316のボタンを押下するなどのトリガにより、流し読みジョブの実行指示(原稿読取のスタート指示)をCPU301が受けた場合に開始される。S101の給送開始処理では、原稿トレイ201に積載されている最上位の原稿がピックアップローラ204及び分離ローラ対206によって給送される。この原稿はADF200の内部を搬送され、S102で開始される読取制御により、表面読取ユニット104及び裏面読取ユニット212によって画像データが読取られる。
【0107】
給送センサ207を原稿後端が通過すると、S103(YES)で、次の原稿の給送を開始してもよい状態(次原稿給送タイミング)と判断される。S104(YES)で原稿有無センサ205によって次の原稿が原稿トレイ201に有ることが検出されると、S105で、画像データの転送速度が切り替わっているかを判断するために、RAM303を参照する(後述)。S105(YES)で転送速度が切り替わっていたら、S106で、前述した式(12)から算出される給送間隔と、前の原稿の給送開始時刻から、適正な給送待ち時間を算出する。S105(NO)で、転送速度が切り替わっていなければ、給送待ち時間を再度算出することなく、前の原稿と同じ給送待ち時間を適用する。S107(NO)では給送待ち時間が経過するまで待機し、S107(YES)で給送待ち時間の経過を確認すると、S101に戻って原稿トレイ201から次原稿の給送を開始する。以下、S104(NO)で原稿トレイ201に原稿がなくなったと判断するまで、S101~S107の処理を繰り返す。
【0108】
図11(b)に示す読取制御は、分離ローラ対206から1枚の原稿がADF200内部の搬送路に送り込まれる度に実行される。従って、例えば前の原稿に対する以下の読取制御と、次の原稿に対する給送制御の処理とは、通常、並列的に実行される。S111(YES)で表面読取位置に原稿先端が到達すると、S112で表面読取ユニット104によって原稿の表面の走査が開始され、S113で表面読取ユニット104が読取った表面の画像データの画像メモリ305への入力が開始される。S114(YES)で両面モードが設定されていた場合は、S115に進む。S115(YES)で裏面読取位置に原稿先端が到達すると、S116で裏面読取ユニット212によって原稿の裏面の走査が開始され、S117で裏面読取ユニット212が読取った裏面の画像データの画像メモリ305への入力が開始される。表面及び裏面の画像データの入力は並行して進められ、S118(YES)で両方の画像データの入力が完了すると、現在の原稿についての読取制御は終了する。なお、S114(NO)で両面モードが設定されていない場合(片面モードの場合)は、S115~S117の処理は行わない。
【0109】
図12に示す画像転送制御は、自動原稿読取装置300が読取った画像データをコントローラ310に転送する処理の流れを表している。流し読みジョブの実行が開始され、画像データがメモリに入力開始されると、S201(NO)でコントローラ310から通信ライン401を介して送信される画像取得要求を待つ。S201(YES)で画像取得要求を受け取ると、S202で画像取得要求と同時に通知される転送クロックが、前回の画像転送処理を実行した時点から変更されたかを判別する。
【0110】
S202(YES)で、今回の転送クロックが前回とは異なる場合、S203で、CPU301は画像転送部304に対して転送クロックの切り替えを指示する処理を実行し、S204でクロック切り替えがあったことをRAM303に記録しておく。S202(NO)で、今回の転送クロックが前回から変わっていない場合、S207でクロック切り替えがなかったことをRAM303に記憶しておく。S205で、コントローラ310から要求された転送クロックに基づいて画像転送部304に画像データの転送開始を指示し、S206(NO)で転送完了を待つ。S206(YES)で画像データの転送終了を画像転送部304から通知されると、今回の画像転送制御は終了し、次の画像取得要求を待機する状態となる。
【0111】
(変形例)
上記の実施形態では、画像読取装置が画像データを転送する外部の情報処理装置として画像形成装置のコントローラ310を例示したが、他の情報処理装置に画像データを転送する場合にも本技術は適用可能である。例えば、画像読取装置をLANを介してパーソナルコンピュータ(PC)に接続し、読取った画像データをPCに転送する構成において、PCからの指示に基づいて転送速度を変更するようにしてもよい。
【0112】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0113】
10…画像形成装置/104…読取手段、第1読取手段(表面読取ユニット)/201…積載部(原稿トレイ)/204…給送手段(ピックアップローラ)/208、209、218、219…搬送手段(引抜ローラ対、リード上流ローラ対、リード下流ローラ対、排出ローラ対)/212…読取手段、第2読取手段(裏面読取ユニット)/300…画像読取装置(自動原稿読取装置)/301…実行手段(CPU)/304…転送手段(画像転送部)/305…記憶手段(画像メモリ)/310…情報処理装置、制御手段(コントローラ)/PY~PK、14、70…画像形成手段(電子写真機構)
図1
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図5
図6
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