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特許7404009加工情報管理システム及び加工情報管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】加工情報管理システム及び加工情報管理方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/10 20060101AFI20231218BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20231218BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B24B49/10
H01L21/78 F
B24B27/06 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019170545
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021045831
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 秀一
(72)【発明者】
【氏名】河村 健太
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-187524(JP,A)
【文献】特開2016-219756(JP,A)
【文献】特開2004-336055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/10
H01L 21/301
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象の第1ウェハにダイシングを行うウェハ加工装置と、前記ウェハ加工装置の後段で前記加工対象の第1ウェハ上で後処理を行う後段装置と、を備えた加工システムで加工情報の管理を行う加工情報管理システムであって、
前記ウェハ加工装置に設けられた第1センサから入力されたダイシング状態を検知する第1センサ信号に基づく加工位置情報を用いて、異常発生位置情報を含む加工対象の第1ウェハの異常発生データを生成する異常解析部と、
前記加工対象の第1ウェハに対応するプロセス工程からテスト工程までのデータが記録された第1ウェハマップデータに前記加工対象の第1ウェハの前記異常発生データを統合させ、前記加工対象の第1ウェハと異なる同一ロットの第2ウェハに対応するプロセス工程からテスト工程までのデータ及び前記第2ウェハの異常発生データが記録された第2ウェハマップデータと前記第1ウェハマップデータとを比較する統合部と、を備え、
前記統合部が出力した前記第1ウェハマップデータに基づいて、前記後段装置に前記加工対象の第1ウェハ上で後処理を行わせる、
加工情報管理システム。
【請求項2】
前記ウェハ加工装置は、モータにより回転駆動されるブレードによりウェハのダイシングを行うダイシング装置であり、
前記第1センサ信号は、前記モータのスピンドル抵抗値に対応する信号あるいは前記モータの駆動電流に対応する信号を含む、
請求項1記載の加工情報管理システム。
【請求項3】
前記ウェハ加工装置は、異常状態を検知する第2センサ信号を出力する第2センサを有し、
前記第2センサは、加速度センサあるいはTOFセンサであり、前記第2センサ信号は、加速度信号あるいは距離信号を含み、
前記異常解析部は、前記第1センサ信号に基づく加工位置情報及び前記第2センサ信号に基づく異常検知情報を用いて前記異常発生データを生成する、
請求項2記載の加工情報管理システム。
【請求項4】
加工対象の第1ウェハにダイシングを行うウェハ加工装置と、前記ウェハ加工装置の後段で前記加工対象の第1ウェハ上で後処理を行う後段装置と、を備えた加工システムで加工情報の管理を行う加工情報管理システムであって、
前記ウェハ加工装置は、前記ウェハ加工装置に設けられた第1センサから入力されたダイシング状態を検知する第1センサ信号に基づく加工位置情報を用いて、異常発生位置情報を含む加工対象の第1ウェハの異常発生データを生成する異常解析部を備えており、
前記加工対象の第1ウェハに対応するプロセス工程からテスト工程までのデータが記録された第1ウェハマップデータに前記加工対象の第1ウェハの前記異常発生データを統合させ、前記加工対象の第1ウェハと異なる同一ロットの第2ウェハに対応するプロセス工程からテスト工程までのデータ及び前記第2ウェハの異常発生データが記録された第2ウェハマップデータと前記第1ウェハマップデータとを比較する統合部を備え、
前記統合部が出力した前記第1ウェハマップデータに基づいて、前記後段装置に前記加工対象の第1ウェハ上で後処理を行わせる
加工情報管理システム。
【請求項5】
加工対象の第1ウェハにダイシングを行うウェハ加工装置と、前記ウェハ加工装置の後段で前記加工対象の第1ウェハ上で後処理を行う後段装置と、を備えた加工システムで加工情報の管理を行う加工情報管理システムで実行される加工情報管理方法であって、
前記ウェハ加工装置に設けられた第1センサから入力されたダイシング状態を検知する第1センサ信号に基づく加工位置情報を用いて、異常発生位置情報を含む加工対象の第1ウェハの異常発生データを生成する過程と、
前記加工対象の第1ウェハに対応するプロセス工程からテスト工程までのデータが記録された第1ウェハマップデータに前記加工対象の第1ウェハの前記異常発生データを統合させ、前記加工対象の第1ウェハと異なる同一ロットの第2ウェハに対応するプロセス工程からテスト工程までのデータ及び前記第2ウェハの異常発生データが記録された第2ウェハマップデータと前記第1ウェハマップデータとを比較する過程と、
前記異常発生データが統合された前記第1ウェハマップデータに基づいて、前記後段装置に前記加工対象のウェハ上で後処理を行わせる過程と、
を備えた加工情報管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、加工情報管理システム及び加工情報管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェハ上に形成されたIC、LSI等の半導体装置は、ダイシング装置のブレードによりダイシングがなされ、個々のチップとして分割されていた。
【0003】
ダイシング装置によりダイシングを行う場合には、切断面にチッピング(ウェハの欠け)が生じたり、ダイシング装置のカメラの基準線であるヘアラインと、ブレードの中心線の位置とがずれて、実際の切断溝の位置がずれてしまったりすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5134216号公報
【文献】特開2017-185599号公報
【文献】特開2018-195618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような状態に到った場合においては、ダイシング装置に設けられたセンサにより検出することが可能であるが、それらの情報は、半導体製造システムにおけるダイシング加工以降に検査を行う検査装置あるいはダイシング加工以降に加工を行う他の加工装置において有効に利用されているとはいえなかった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ダイシング装置で得られたチッピング等の異常情報を後段の検査装置或いは加工装置で有効に利用することを可能とし、ひいては、後段の検査装置或いは加工装置における処理の効率化、迅速化等を図ることが可能な加工情報管理システム及び加工情報管理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の加工情報管理システムは、加工対象の第1ウェハにダイシングを行うウェハ加工装置と、ウェハ加工装置の後段で加工対象の第1ウェハ上で後処理を行う後段装置と、を備えた加工システムで加工情報の管理を行う加工情報管理システムであって、ウェハ加工装置に設けられた第1センサから入力されたダイシング状態を検知する第1センサ信号に基づく加工位置情報を用いて、異常発生位置情報を含む加工対象の第1ウェハの異常発生データを生成する異常解析部と、加工対象の第1ウェハに対応するプロセス工程からテスト工程までのデータが記録された第1ウェハマップデータに加工対象の第1ウェハの異常発生データを統合させ、加工対象の第1ウェハと異なる同一ロットの第2ウェハに対応するプロセス工程からテスト工程までのデータ及び第2ウェハの異常発生データが記録された第2ウェハマップデータと第1ウェハマップデータとを比較する統合部と、を備え、統合部が出力した第1ウェハマップデータに基づいて、後段装置に加工対象の第1ウェハ上で後処理を行わせる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態の半導体加工システムの概要構成ブロック図である。
図2図2は、ダイシング動作の説明図である。
図3図3は、実施形態の動作フローチャートである。
図4図4は、ウェハのダイシング状態の説明図である。
図5図5は、センシング結果としてのスピンドル抵抗の変化を説明する図である。
図6図6は、マッピングデータの表示例の説明図である。
図7図7は、センシング結果としてのスピンドル抵抗の変化及び加速度の変化を説明する図である。
図8図8は、第3実施形態の半導体加工システムの概要構成ブロック図である。
図9図9は、第4実施形態の半導体加工システムの概要構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に図面を参照して実施形態について詳細に説明する。
[1]第1実施形態
図1は、第1実施形態の半導体加工システムの概要構成ブロック図である。
半導体加工システム10は、大別すると、ウェハのダイシングを行うダイシング装置11と、ダイシング時の異常解析を行う異常解析装置12と、異常解析装置12の解析結果情報を生産情報として管理する統合生産情報システム(MES:Manufacturing Execution System)13と、半導体製造におけるダイシング加工後のいずれかの工程において検査或いは加工を行う検査装置又は加工装置として構成される後段装置14と、を備えている。
【0010】
ダイシング装置11は、ウェハ21をダイシング加工時に真空吸着機構等により保持するチャックテーブル22と、ウェハ21を切断するためのブレード23と、ブレード23を回転駆動するブレード駆動部24と、ブレード23の加工点(切断点)における状態を検出するセンサ部25と、ブレード駆動部24(及びセンサ部25)及びチャックテーブル22を駆動する駆動機構26と、ダイシング装置11全体の制御を行うとともに、外部との通信を行うコントローラ27と、を備えている。
【0011】
上記構成において、センサ部25は、ブレード駆動部24を構成し、ブレード23を回転駆動する図示しないスピンドルモータの抵抗値であるスピンドル抵抗、スピンドルモータの駆動電流値等を検出する。
また、駆動機構26は、ブレード駆動部24(及びセンサ部25)及びチャックテーブル22の相対的な位置関係を制御するように駆動し、或いは、チャックテーブル22を回転駆動して、ブレード23によりウェハ21の所望の位置のダイシングを行わせるように駆動を行う。
【0012】
また、コントローラ27は、センサ部25の出力信号及び駆動機構26の制御情報に基づいてブレード23の加工位置情報を把握し、異常解析装置12に出力する。
【0013】
次に第1実施形態の動作について説明する。
図2は、ダイシング動作の説明図である。
図3は、実施形態の動作フローチャートである。
【0014】
まず、駆動機構26は、ウェハ21を保持するチャックテーブル22を回転させて、対象となる切断予定ラインの伸長する方向を、位置P0に位置しているダイシング装置11のブレード23の向きに合わせる初期設定を行う(ステップS11)。
【0015】
そして、ブレード23の下端をウェハ21の表面より低い位置まで移動させる。
その後、ブレード23を回転させながら、図2に示すように、駆動機構26によりチャックテーブル22を図2中、左方向に移動させ、相対的にブレード23を右方向に移動させ所定の切断予定ラインに沿ってブレード23を切り込ませ、切削位置P1においてウェハ21を切削するダイシング加工を行う(ステップS12)。
【0016】
これと並行してセンサ部25は、ブレード23を回転駆動する図示しないスピンドルモータの抵抗値であるスピンドル抵抗を検出するセンシングを行い、センシング結果をコントローラ27に出力する(ステップS12)。
【0017】
これに伴い、コントローラ27は、ダイシング位置及びセンシング結果を異常解析装置12に出力する。
異常解析装置12は、FDC(Fault Detection and Classification)として機能し、センサ部のセンシング結果に基づいて異常波形が検出されたか否かを判定する(ステップS13)。
【0018】
ここで、異常波形について説明する。
図4は、ウェハのダイシング状態の説明図である。
図4に示すように、ブレード23は、位置P11から切断を開始し、y方向に沿って、位置P12まで、切断を行う。
【0019】
つづいて、ブレード23は、駆動機構26により-x方向に駆動され、今度は、位置P13から切断を開始し、-y方向に沿って、位置P14まで、切断を行う。
そして、ブレード23は、駆動機構26により-x方向に駆動され、今度は、位置P15から切断を開始して切断を継続する。
【0020】
切断がさらに進み、ブレード23が位置P21に到ると、切断を開始し、-y方向に沿って位置P22まで切断を行う。そして、駆動機構26によりまた-x方向に駆動されて、今度は、位置P23から切断を開始し、y方向に沿って、位置P24まで、切断を行う。
【0021】
さらに、ブレード23は、駆動機構26により-x方向に駆動され、今度は、位置P25から切断を開始し、-y方向に沿って位置P26まで切断を行い、このウェハの向きにおけるダイシングを終了する。
【0022】
図5は、センシング結果としてのスピンドル抵抗の変化を説明する図である。
図5においては、図4のダイシング処理を行った場合について位置及び時間を示している。
図5(a)は、センサ部25の出力信号の波形概観図であり、図5(b)は、図5(a)の破線枠部分の部分拡大図である。
【0023】
図5(a)において、矩形波状のそれぞれの波形は、ウェハ21の一方の端部(位置P11に相当)から他方の端部(位置P12に相当)に向かってウェハ21の切断を開始してから、切断終了(位置P26に相当)までのスピンドル抵抗の変化を示している。
【0024】
すなわち、ウェハ21のいずれかの端部における切断開始時(例えば、位置P11)には、スピンドル抵抗値が急激に増加し、実際にウェハ21の切断が開始されるとほぼ一定の値となり、他方の端部(例えば、位置P12)に到る切断終了時に急激に減少していることが分かる。
【0025】
そして、チャックテーブル22を回転させた後、ブレード23のy方向(図3参照)位置を設定し、再びウェハ21の切断を開始するので、スピンドル抵抗値が急激に増加し、x方向または-x方向への切断が継続的になされると、ほぼ一定の値を継続し、切断が終了すると再び急激に減少することとなる。
【0026】
このとき、チッピングが生じると、切断中は、ほぼ一定であるはずのスピンドル抵抗値が、図5(b)の位置PPに示すように、一時的に急上昇し、すぐに切断中に示されるほぼ一定の値に戻る。
【0027】
そこで、異常解析装置12は、コントローラ27の出力に基づいて、切削中のスピンドル抵抗値が一時的に急激に増加し、すぐに切断中を示すほぼ一定の値に戻った場合には、チッピングが発生した可能性が高いとして、当該検出タイミングにおけるダイシング位置(図5の例では、位置PP)を取得し(ステップS14)、取得したダイシング位置を異常検出位置としてスピンドル抵抗値に対応づけて記憶する(ステップS15)。
【0028】
この場合において、ダイシング位置(上述の例では、位置PP)は、加工時間及び処理速度より算出される距離と、ダイシング装置11が把握している加工位置の情報に基づいて算出される。
【0029】
続いて異常解析装置12は、当該ウェハ21におけるダイシング加工が終了したか否かを判定する(ステップS16)。
【0030】
ステップS16の判定において未だ当該ウェハ21におけるダイシング加工が終了していない場合には(ステップS16;No)、ダイシング加工及びセンシングを行わせるため、待機状態に移行し、処理は再びステップS12,S13に移行することとなる。
ステップS16の判定において当該ウェハ21におけるダイシング加工が終了した場合には(ステップS16;Yes)、記憶したスピンドル抵抗値に対応づけたダイシング位置の全てを異常発生データとして統合生産情報システム13に通知する(ステップS17)。
【0031】
これにより統合生産情報システム13は、自己のデータベースを参照して、加工対象となっていたウェハ21に対応するウェハプロセス工程からウェハテスト工程までの全てのウェハデータが記録されているウェハマップデータに異常検出位置及び異常が発生した虞があるチップ位置の情報を追記する(ステップS18)。
【0032】
この結果、異常検出位置及び異常が発生した虞があるチップ位置の情報が追記されたウェハマップデータに基づいて、マッピングデータを表示すれば、容易に対象となるウェハ21の異常発生箇所を特定できる。さらに、他の同一ロットのウェハ21のウェハマップデータと比較することで、ウェハプロセス工程あるいはウェハテスト工程との関連を把握することも可能となる。
【0033】
図6は、マッピングデータの表示例の説明図である。
一般的なウェハマップファイルのフォーマットとしては、TSKフォーマット、G85フォーマット、KRFフォーマット等が知られているが、図6においては、TSKフォーマットの場合を例として表示している。
【0034】
表示されたマッピングデータ40には、ウェハに形成された複数のチップに対応する複数のチップエリア41が表示され、異常が検出されなかったチップエリア41については、所定の色(図6の場合、白色)で表示される。
【0035】
これに対し、何らかの異常が検出された場合には、当該チップエリア41については、異常内容に応じた所定の色(図6の例の場合、ハッチング)で表示される。
【0036】
図6の例においては、マッピングデータ40には、上述したチッピング等の可能性のある異常検出位置D1、D2が表示されている。
さらに、マッピングデータ40には、異常検出位置D1に基づいて異常が発生した虞があるチップ位置の情報として、チップエリア41A、41Bが所定の色で表示されている。
【0037】
同様に、マッピングデータ40には、異常検出位置D2に基づいて異常が発生した虞があるチップ位置の情報として、チップエリア41C、41Dが所定の色で表示される。
【0038】
したがって、ウェハ21上における異常が発生した虞が高い位置を視覚的に容易に認識できる。さらに、他の工程或いは他の試験に基づいてマッピングデータに記録されている情報を参照することで、今回検出された異常のウェハの製造工程あるいは加工工程における原因を推定すること或いは対応策を講じることも可能となる。
【0039】
また、ダイシング加工により得られた異常箇所が特定されたマッピングデータを後段装置14に引き渡すことで、後段の検査処理あるいは加工処理の効率化を図ることができる。
【0040】
具体的には、例えば、後段装置14が、チッピング検査用の検査装置である場合には、チッピングの可能性が高いチップエリアを特定した状態で検査を行うことができるので、検査効率を向上することが可能となる。また、後段装置14が加工装置である場合には、不良品とされる虞が高いチップエリアに対しては、加工を行わないようにすることで、実効的な処理効率を向上することができる。
【0041】
[2]第2実施形態
以上の第1実施形態においては、センサ部25が加工位置情報把握用及び異常検出用のセンサとして1種類のセンサを備えていた場合であったが、本第2実施形態は、センサ部25が加工位置情報把握用及び異常検出用のセンサとして2種類のセンサを備えた場合の実施形態である。
【0042】
具体的には、センサ部25は、第1実施形態と同様に、ブレード駆動部24を構成し、ブレード23を回転駆動する図示しないスピンドルモータの抵抗値であるスピンドル抵抗、スピンドルモータの駆動電流値等を検出する第1センサと、ダイシング時にブレード23に生じる加速度を検出する加速度センサ、あるいはダイシング時のウェハ21との相対距離を検出するTOF(Time Of Flight)センサとして構成された第2センサと、を備えている。
【0043】
以下の説明においては、第2センサとして加速度センサを用いた場合を例として説明する。
図7は、センシング結果としてのスピンドル抵抗の変化及び加速度の変化を説明する図である。
【0044】
図7(a)は、第1センサで測定したスピンドルモータ抵抗値に相当する波形概観図であり、図7(b)は、第2センサで測定した加速度に相当する波形概観図である。
なお、加速度センサは、ダイシング処理中のブレードの移動時には計測を行わないものとする。
【0045】
図7(a)において、矩形波状のそれぞれの波形は、ウェハ21の一方の端部(図4の位置P11に相当)から他方の端部(図4の位置P12に相当)に向かってウェハ21の切断を開始してから、切断終了(図4の位置P26に相当)までのスピンドル抵抗値の変化を示している。
【0046】
同様に図7(b)は、ウェハ21の一方の端部(図4の位置P11に相当)から他方の端部(図4の位置P12に相当)に向かってウェハ21の切断を開始してから、切断終了(図4の位置P26に相当)までの加速度の変化を示している。
【0047】
上述したように、スピンドル抵抗値は、ウェハ21のいずれかの端部における切断開始時(例えば、図4の位置P11)には、スピンドル抵抗値が急激に増加し、実際にウェハ21の切断が開始されるとほぼ一定の値となり、他方の端部(例えば、図4の位置P12)に到る切断終了時に急激に減少していることが分かる。
【0048】
一方、加速度センサは、異常が無い場合には、ほぼ一定の値を示しており、異常検出位置PPにおいて、チッピング等が生じると、異常検出時のみ増大し、すぐにほぼ一定の値に戻る。
【0049】
そこで、異常解析装置12は、切削中のスピンドル抵抗値が切断により増加してほぼ一定の値となっている最中であって、加速度が一時的に急激に増加し、すぐにほぼ一定の値に戻った場合には、チッピングが発生した可能性が高いとして、当該検出タイミングにおけるダイシング位置(図7の例では、位置PP)を図7(a)のスピンドル抵抗値を参照して取得し、取得したダイシング位置を異常検出位置として記憶することとなる。
【0050】
この場合においても、第1実施形態と同様に、ダイシング位置(上述の例では、位置PP)は、加工時間及び処理速度より算出される距離と、ダイシング装置11が把握している加工位置の情報に基づいて算出される。
【0051】
続いて異常解析装置12は、当該ウェハ21におけるダイシング加工が終了したか否かを判定し、未だ当該ウェハ21におけるダイシング加工が終了していない場合には、ダイシング加工及びセンシングを行わせるため、待機状態に移行し、ダイシング加工を継続する。
【0052】
一方ダイシング加工が終了した場合には、第2センサとしての加速度センサにおける異常の検出タイミングと対応付けて算出したダイシング位置の全てを異常発生データとして統合生産情報システム13に通知し、統合生産情報システム13は、自己のデータベースを参照して、加工対象となっていたウェハ21に対応するウェハプロセス工程からウェハテスト工程までの全てのウェハデータが記録されているウェハマップデータに異常検出位置及び異常が発生した虞があるチップ位置の情報を追記する。
【0053】
この結果、本第2実施形態によれば、一種類のセンサで異常状態の検知を行う第1実施形態よりもより確実に対象となるウェハ21の異常発生箇所を特定できる。
【0054】
[3]第3実施形態
図8は、第3実施形態の半導体加工システムの概要構成ブロック図である。
図8において、図1と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
本第3実施形態が、第1実施形態と異なる点は、コントローラ27に代えて、第1実施形態の異常解析装置12の機能を実現するコントローラ27Aを備えた点である。
【0055】
この結果、コントローラ27Aは、センサ部25の出力に基づいて、切削中のスピンドル抵抗値が一時的に急激に増加し、すぐに切断中を示すほぼ一定の値に戻った場合には、チッピングが発生した可能性が高いとして、当該検出タイミングにおけるダイシング位置を取得し、取得したダイシング位置を異常検出位置としてスピンドル抵抗値に対応づけて記憶する。この場合において、ダイシング位置は、加工時間及び処理速度より算出される距離と、ダイシング装置11としてコントローラ27Aが把握している加工位置の情報に基づいて算出される。
【0056】
続いてコントローラ27Aは、当該ウェハ21におけるダイシング加工が終了したか否かを判定し、当該ウェハ21におけるダイシング加工が終了した場合には、記憶したスピンドル抵抗値に対応づけたダイシング位置を統合生産情報システム13に通知する。
【0057】
これにより、統合生産情報システム13は第1実施形態と同様の処理を行うこととなる。
したがって、本第3実施形態によれば、加工装置であるダイシング装置11を統合生産情報システム13に連携するだけで、より簡易に第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
この場合においても、第2実施形態と同様に、第1センサ及び第2センサを備え、より確実に異常を検出するように構成することも可能である。
【0058】
[4]第4実施形態
図9は、第4実施形態の半導体加工システムの概要構成ブロック図である。
図9において、図1と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
【0059】
本第4実施形態が、第1実施形態と異なる点は、統合生産情報システム13に代えて、第1実施形態の異常解析装置12の機能を実現し、加工情報管理システムとして単体で機能する統合生産情報システム13Aを備えた点である。
この構成によれば、コントローラ27は、ダイシング位置及びセンシング結果を統合生産情報システム13Aに出力する。
【0060】
統合生産情報システム13Aは、FDC(Fault Detection and Classification)としても機能し、コントローラ27が出力したセンサ部25のセンシング結果に基づいて異常波形が検出されたか否かを判定し、切削中のスピンドル抵抗値が一時的に急激に増加し、すぐに切断中を示すほぼ一定の値に戻った場合には、チッピングが発生した可能性が高いとして、当該検出タイミングにおけるダイシング位置を取得し、取得したダイシング位置を異常検出位置としてスピンドル抵抗値に対応づけて記憶する。この場合において、ダイシング位置は、加工時間及び処理速度より算出される距離と、ダイシング装置11としてコントローラ27が把握している加工位置の情報に基づいて算出される。
【0061】
続いて統合生産情報システム13Aは、当該ウェハ21におけるダイシング加工が終了したか否かを判定し、当該ウェハ21におけるダイシング加工が終了した場合には、第1実施形態と同様の処理を行うこととなる。
【0062】
したがって、本第4実施形態によれば、第3実施形態と同様に、加工装置であるダイシング装置11を単体で加工情報管理システムとして機能する統合生産情報システム13Aに連携するだけで、より簡易に第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
この場合においても、第2実施形態と同様に、第1センサ及び第2センサを備え、より確実に異常を検出すするように構成することも可能である。
【0063】
本実施形態のコントローラ、異常解析装置あるいは統合生産情報システムは、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0064】
本実施形態のコントローラ、異常解析装置あるいは統合生産情報システムで実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでDVD(Digital Versatile Disk)等の記録媒体、USB、SSD(Solid State Drive)等の半導体記憶装置等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0065】
また、本実施形態のコントローラ、異常解析装置あるいは統合生産情報システムで実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。
【0066】
また、本実施形態のコントローラ、異常解析装置あるいは統合生産情報システムで実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
また、本実施形態のコントローラ、異常解析装置あるいは統合生産情報システムで実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
10 半導体加工システム(加工情報管理システム)
11 ダイシング装置
12 異常解析装置
13 統合生産情報システム
13A 統合生産情報システム(加工情報管理システム)
14 後段装置
21 ウェハ
22 チャックテーブル
23 ブレード
24 ブレード駆動部
25 センサ部
26 駆動機構
27 コントローラ
27A コントローラ(異常解析部)
40 マッピングデータ
41 チップエリア
41A~41D チップエリア(異常可能性あり)
D1、D2 異常検出位置
PP 異常検出位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9