(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ゲル状水性クレンジング化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20231218BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20231218BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20231218BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20231218BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20231218BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20231218BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20231218BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20231218BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/39
A61K8/44
A61K8/92
A61Q1/14
A61Q19/10
(21)【出願番号】P 2019175127
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390028897
【氏名又は名称】阪本薬品工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山内 加奈
(72)【発明者】
【氏名】山田 武
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-179526(JP,A)
【文献】特開2004-175736(JP,A)
【文献】Cream Cleansing, Ivy Cosmetics, 2015年6月, Mintel GNPD [online],[検索日 2023.11.10], インターネット<URL:http://www.gnpd.com>, ID:3299873
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(F)を含有することを特徴とするゲル状水性クレンジング化粧料。
(A)20℃で固体のポリグリセリン脂肪酸エステル 5~15重量%
(B)20℃で液状のポリグリセリン脂肪酸エステル 1~5重量%
(C)3価以上の多価アルコール 1~10重量%
(D)アミノ酸系アニオン界面活性剤 0.1~1重量%
(E)水 10~30重量%
(F)20℃で液状の油剤 50~80重量%
【請求項2】
請求項1に記載の成分(A)及び成分(B)のポリグリセリン脂肪酸エステルを油相に添加して製造することを特徴とするゲル状水性クレンジング化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル状水性クレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
クレンジング化粧料は、皮脂などに起因する脂汚れやメイクアップ化粧料等を落とすのに用いられる化粧料であり、通常の脂溶性成分を落とすことに注力した、オイル分を高濃度に含有する油性クレンジング化粧料と、水洗いにより、水性汚れを落とすと共に油性汚れを落とすことを目指した、水性クレンジング化粧料の2種が存在する。中でも、水性クレンジング化粧料は、さっぱりとした使用感である反面、油性汚れに対する洗浄力に限度があるという欠点がある。
【0003】
これに対して、特許文献1にはメイク落ちに優れる水性クレンジング化粧料として、内相に配合する油を高含有としたエマルションタイプの水性クレンジング化粧料が記載されている。しかしながら、油の含有量が多い水中油型エマルションは、製剤の安定性が悪く、経時で分離しやすいという問題がある。
【0004】
また、クレンジング化粧料の性状としては、液状タイプやゲル状タイプが市販されているが、塗布時のたれ落ち防止や、マッサージ性の観点から、近年は特許文献2のようなゲル状タイプが流行している。このようなゲル状クレンジング化粧料は、一般的に高分子化合物を用いてゲルを調製するが、高分子化合物を用いたゲルは塗布時に高分子特有のぬるつきがあり、使用者に不快感を与えるという欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-017305号公報
【文献】特開2019-137611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、経時安定性に優れ、塗布時のぬるつきがなく、メイク落ちに優れたゲル状水性クレンジング化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、
(A)20℃で固体のポリグリセリン脂肪酸エステル 5~15重量%
(B)20℃で液状のポリグリセリン脂肪酸エステル 1~5重量%
(C)3価以上の多価アルコール 1~10重量%
(D)アミノ酸系アニオン界面活性剤 0.1~1重量%
(E)水 10~30重量%
(F)20℃で液状の油剤 50~80重量%
を含有するクレンジング化粧料が上記課題を解決することを見出した。
【発明の効果】
【0008】
本発明のクレンジング化粧料は、20℃で固体のポリグリセリン脂肪酸エステルを配合することで経時安定性に優れ、塗布時のぬるつきがなく、メイク落ちに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明を実施するための形態をより詳細に説明するが、本発明の範囲は、この実施形態に限定するものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で変更等が加えられた形態も本発明に属する。なお、範囲を表す表記の「~」は、上限と下限を含むものである。
【0010】
本発明に用いられる成分(A)および成分(B)であるポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応により得られるものである。
【0011】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンは、グリセリンを脱水縮合させたものである。本発明に係るポリグリセリンとしては、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン等の平均重合度が2~10のポリグリセリンが好ましく用いられる。ここで、平均重合度は、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)である。詳しくは、下記式(1)及び下記式(2)から算出される。
分子量=74n+18 ・・・(1)
水酸基価=56110(n+2)/分子量 ・・・(2)
【0012】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数が8~22のものが好ましく、炭素数12~18のものがより好ましい。具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられる。
【0013】
本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルは、上記のポリグリセリンと脂肪酸の組み合わせから得られる様々なエステルから選択される2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを組み合わせて使用することにより、優れたメイクアップ化粧料の除去効果を発揮させることができる。
【0014】
具体的には、成分(A)に相当するものとして、ステアリン酸ポリグリセリル-4、ステアリン酸ポリグリセリル-6、ステアリン酸ポリグリセリル-10、トリステアリン酸ポリグリセリル-4、トリステアリン酸ポリグリセリル-6、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-6、ジステアリン酸ポリグリセリル-10、トリステアリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10等が挙げられる。また、成分(B)に相当するものとして、オレイン酸ポリグリセリル-2、オレイン酸ポリグリセリル-4、オレイン酸ポリグリセリル-6、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-6、オレイン酸ポリグリセリル-10、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-4、イソステアリン酸ポリグリセリル-6、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-4、ラウリン酸ポリグリセリル-6、ラウリン酸ポリグリセリル-10等が挙げられる。
【0015】
成分(A)のHLBは10~16であることが好ましく、成分(A)を2種以上用いる場合は、混合HLBが10~16であることが好ましい。また、成分(B)のHLBは4~12であることが好ましく、成分(B)を2種以上用いる場合は、混合HLBが4~12であることが好ましい。さらに、成分(A)および成分(B)の混合HLBは9~15であることが好ましく、10~14であるのがより好ましく、11~13とするのが最も好ましい。成分(A)および成分(B)の混合HLBが9~15の範囲内であれば、より優れたメイクアップ除去効果が発揮される。尚、ここでHLBとはアトラス法から算出されるものを意味し、詳しくは、下記式(3)から算出される。混合HLBとは、個々のポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBに、それぞれの重量割合を乗じたものの総和を意味する。
HLB=20×(1-S/A) ・・・(3)
S:ポリグリセリン脂肪酸エステルのけん化価
A:原料脂肪酸の中和価
【0016】
本発明に用いられる成分(C)である3価以上の多価アルコールとしては特に限定はないが、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、トレハロース、キシリトール等が挙げられる。中でも、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン等の平均重合度が1~10の(ポリ)グリセリンが好ましく用いられる。
【0017】
本発明に用いられる成分(D)であるアミノ酸系アニオン界面活性剤としては、特に限定はないが、例えば、N-アシルグルタミン酸、N-アシルタウリン、N-アシルサルコシネート、N-アシル-N-メチル-β-アラニン等のN-アシルアミノ酸のナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩、L-アルギニン塩等が挙げられる。
【0018】
本発明に用いられる成分(F)である20℃で液状の油剤としては、特に限定はないが、例えば、オリーブ油、メドウフォーム油、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン、ホホバ油、エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸エチルヘキシル、イソステアリン酸イソステアリル、ミネラルオイル、スクワラン、ドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリイソブテン、シクロペンタシロキサン、ジメチコン等が挙げられる。
【0019】
本発明のクレンジング化粧料は、D相乳化法により製造されることが好ましい。上記の成分(A)、成分(B)および成分(C)を混合後、成分(F)を撹拌しながら少量ずつ添加後、成分(D)および成分(E)を撹拌しながら少量ずつ添加混合することで容易に得られる。D相乳化法については、鷺谷らによる文献 油化学,第40巻,第11号,(1991)に詳しく記載されている。
【0020】
本発明のクレンジング化粧料は、化粧料で通常使用されている任意成分を本発明の効果を損なわない範囲において含有することができる。
【0021】
このような任意成分としては、例えば、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のワックス類、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の増粘剤、表面を処理されていても良い、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類、表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等、フェノキシエタノール等の抗菌剤等が好ましく例示できる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。尚、実施例における配合量は全て重量%である。
【0023】
表1に記した組成に従い、実施例1~4及び比較例1~3のクレンジング化粧料を調製した。
〔試料の調製〕
50℃にて加熱混合した成分8~10を70℃にて加熱混合した成分1~7に撹拌しながら少量ずつ添加混合した。これに、50℃にて加熱した成分11~13を撹拌しながら少量ずつ添加し、各実施例および比較例のクレンジング化粧料を得た。なお、成分1~4の混合HLBは12であった。
【0024】
〔評価方法:経時安定性評価〕
クレンジング化粧料を13.5mL容量のガラス瓶に充填し、60℃の恒温槽に7日間保管後、分離層の高さを目視にて観察し、以下の判定基準に基づき評価した。結果を表1に併記する。
<判定基準>
◎:分離なし
○:分離層の高さがクレンジング化粧料全体に対して10%より小さいのもの
△:分離層の高さがクレンジング化粧料全体に対して10~30%のもの
×:分離層の高さがクレンジング化粧料全体に対して30%より大きいもの
【0025】
〔評価方法:使用感の評価〕
前腕内側部に口紅(商品名:口紅(詰替用)550、株式会社ちふれ化粧品製)を適量塗布し、実施例及び比較例の各クレンジング化粧料0.2gを塗布し、指でクレンジング動作を上下に15往復し、ぬるつきの有無を評価した。その後、流水で洗い流し、メイク落ちの評価を行った。評価は、被験者20名で実施し、下記評価基準に従い判定した。結果を表1に併記する。
<クレンジング塗布時のぬるつきの有無の評価基準>
◎:18~20名がぬるつきを感じないと回答。
○:14~17名がぬるつきを感じないと回答。
△:10~13名がぬるつきを感じないと回答。
×:0~9名がぬるつきを感じないと回答。
<メイク落ちの評価基準>
◎:18~20名が十分にメイク落ちが良いと回答。
○:14~17名が十分にメイク落ちが良いと回答。
△:10~13名が十分にメイク落ちが良いと回答。
×:0~9名が十分にメイク落ちが良いと回答。
【0026】
【0027】
表1の結果から、実施例1~4のクレンジング化粧料は、成分(A)~(F)を含有しているため、比較例1~3のクレンジング化粧料に比べ、経時安定性に優れ、クレンジング化粧料を塗布した際のぬるつきがなく、メイク落ちに優れていた。