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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】下塗塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20231218BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20231218BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/20
C09D5/00 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019191336
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2020066744
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2018198601
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591163720
【氏名又は名称】エーエスペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀一
(72)【発明者】
【氏名】竹田 佳靖
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-095917(JP,A)
【文献】特開2002-037971(JP,A)
【文献】特開2016-121286(JP,A)
【文献】特開平06-073261(JP,A)
【文献】特開2004-211015(JP,A)
【文献】特開平04-202486(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0149820(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
C09D 7/20
C09D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解部と粒子部を有する非水分散樹脂(I)および有機溶媒(II)を含む、下塗塗料組成物であって、
前記溶解部が、高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマーに由来する構成単位を有する共重合体であり、
前記非水分散樹脂(I)の重量平均分子量は30,000~100,000の範囲内であり、
前記有機溶媒(II)は、
脂肪族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒および芳香族炭化水素系溶媒からなる群から選択される1種またはそれ以上である有機溶媒(II-a)、および
アルコール溶媒(II-b)、
を含み、
前記有機溶媒(II-a)は、アニリン点または混合アニリン点が10℃を超え、かつ、40℃を超えないものであり、
前記アルコール溶媒(II-b)は、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、またはsec-ブチルアルコールであり、
前記下塗塗料組成物中に含まれる前記有機溶媒(II-a)および前記アルコール溶媒(II-b)の質量比は、(II-a):(II-b)=94:665:35の範囲内である、下塗塗料組成物。
【請求項2】
前記高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマーが、
グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、またはメタアリルグリシジルエーテルの、
ミリストレイン酸付加物、パルミトレイン酸付加物、オレイン酸付加物、リノール酸付加物、リノレイン酸付加物、またはリシノール酸付加物である、請求項1に記載の下塗塗料組成物。
【請求項3】
前記高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマーが、
グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートの、オレイン酸付加物、リノール酸付加物またはリノレイン酸付加物である、請求項2に記載の下塗塗料組成物。
【請求項4】
前記有機溶媒(II-a)が、ロウス、HAWS、ソルベッソ100、ソルベッソ150、スワゾール100、スワゾール200、スワゾール1000、スワゾール1500、スワゾール1800、出光イプゾール100、出光イプゾール150、ペガゾールARO-80、ペガゾールR-100、昭石特ハイゾール、日石ハイゾール、およびKソルベントからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の下塗塗料組成物。
【請求項5】
前記有機溶媒(II-a)が、ロウスとスワゾール1000の混合物である、請求項4に記載の下塗塗料組成物。
【請求項6】
前記下塗塗料組成物中に含まれる前記有機溶媒(II-a)の量は、前記非水分散樹脂(I)の樹脂固形分100質量部に対して150~373質量部である、請求項1~5のいずれか1項に記載の下塗塗料組成物。
【請求項7】
前記下塗塗料組成物中に含まれる前記アルコール溶媒(II-b)の量は、前記非水分散樹脂(I)の樹脂固形分100質量部に対して13~68質量部である、請求項1~6のいずれか1項に記載の下塗塗料組成物。
【請求項8】
属キレート化合物をさらに含み、
前記金属キレート化合物は、アルミニウム、コバルト、バリウム、ジルコニウム、マンガン、鉄、セシウム、鉛、亜鉛、およびカルシウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の下塗塗料組成物。
【請求項9】
屋外建材用下塗塗料組成物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の下塗塗料組成物。
【請求項10】
1液形塗料組成物である、請求項1~9のいずれか1項に記載の下塗塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水分散樹脂(I)および有機溶媒(II)を含む下塗塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に対して塗膜を形成する場合において、基材に下塗塗料組成物を塗装することによって、基材と塗膜との密着性を確保することがある。このような下塗塗料組成物は一般に、基材の種類に応じて、適した塗料組成物が選択される。
【0003】
例えば特開2001-355317号公報(特許文献1)には、新生瓦の補修塗装方法において、(A)シリコン変性アクリルポリオール、(B)ポリイソシアネート化合物および(C)有機溶剤を含む下塗塗料を塗装する方法が記載される。この下塗塗料は、新生瓦への密着性、耐水性に優れた塗膜を形成することができると記載される。
【0004】
一方で、補修塗装などにおける塗装現場では、外壁材、屋根材などの様々な基材に対して良好な密着性を有する下塗塗料組成物が求められている。また、塗装準備作業性向上の観点から、2液形下塗塗料組成物よりも1液形塗料組成物の方が好まれる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-355317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
建材に対する下塗塗料組成物として、現在、様々な塗料組成物が存在する。しかしながら、例えば外壁材、屋根材などの様々な屋外建材に対して良好に密着する下塗塗料組成物についてもまた、依然として求められている。本発明は上記従来の課題を解決するものであり、その目的とするところは、様々な基材に対して良好に密着する下塗塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
非水分散樹脂(I)および有機溶媒(II)を含む、下塗塗料組成物であって、
上記非水分散樹脂(I)の重量平均分子量は30,000~100,000の範囲内であり、
上記有機溶媒(II)は、
脂肪族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒および芳香族炭化水素系溶媒からなる群から選択される1種またはそれ以上である有機溶媒(II-a)、および
アルコール溶媒(II-b)、
を含み、
上記有機溶媒(II-a)は、アニリン点または混合アニリン点が10℃を超え、かつ、40℃を超えないものであり、
上記アルコール溶媒(II-b)は、一般式:R-OH(式中、Rは、炭素数3~6の直鎖状アルキル基、または炭素数3~8の分枝状アルキル基であって主鎖の炭素数が2~6であることを条件とするアルキル基である。)で表されるものであり、
上記下塗塗料組成物中に含まれる上記有機溶媒(II-a)および上記アルコール溶媒(II-b)の質量比は、(II-a):(II-b)=96:4~60:40の範囲内である、下塗塗料組成物。
[2]
上記下塗塗料組成物中に含まれる上記有機溶媒(II-a)の量は、上記非水分散樹脂(I)の樹脂固形分100質量部に対して150~373質量部である、上記下塗塗料組成物。
[3]
上記下塗塗料組成物中に含まれる上記アルコール溶媒(II-b)の量は、上記非水分散樹脂(I)の樹脂固形分100質量部に対して13~68質量部である、上記下塗塗料組成物。
[4]
上記下塗塗料組成物は、さらに金属キレート化合物を含み、
上記金属キレート化合物は、アルミニウム、コバルト、バリウム、ジルコニウム、マンガン、鉄、セシウム、鉛、亜鉛およびカルシウムからなる群から選択される1種またはそれ以上の金属元素を含む、
上記下塗塗料組成物。
[5]
屋外建材用下塗塗料組成物である、上記下塗塗料組成物。
[6]
1液形塗料組成物である、上記下塗塗料組成物。
【発明の効果】
【0008】
上記下塗塗料組成物は、特定の非水分散樹脂(I)および有機溶媒(II)を含み、そして、上記有機溶媒(II)は、脂肪族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒および芳香族炭化水素系溶媒からなる群から選択される1種またはそれ以上である有機溶媒(II-a)およびアルコール溶媒(II-b)を含むことによって、各種基材(例えば様々な屋外建材など)に対する密着性が良好であるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上記下塗塗料組成物は、非水分散樹脂(I)および有機溶媒(II)を含む。以下、各成分について詳述する。
【0010】
非水分散樹脂(I)
上記下塗塗料組成物に含まれる非水分散樹脂(I)は、下塗塗膜を形成する樹脂成分である。非水分散樹脂(I)は、有機溶媒を媒体として樹脂を分散安定化させた樹脂である。非水分散樹脂(I)は、モノマー混合物を重合することによって、調製することができる。上記重合は、多段階重合であるのが好ましく、2段階重合であるのがより好ましい。
【0011】
非水分散樹脂(I)の調製に用いられるモノマー混合物は、ラジカル重合性モノマーを含む。上記モノマー混合物は、高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマーを含むのが好ましい。モノマー混合物が、高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマーを含むことによって、非水分散樹脂を好適に調製することができる利点がある。
【0012】
上記高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマーとして、例えば、高級不飽和脂肪酸とエチレン性不飽和グリシジルエステルとの反応によって得られるものが挙げられる。上記高級不飽和脂肪酸としては、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、リシノール酸などを用いることができる。また、亜麻仁油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、大豆油脂肪酸、米糠油脂肪酸、胡麻油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、綿実油脂肪酸、トール油脂肪酸などのような非共役二重結合をもつ乾性油、半乾性油脂肪酸などを用いることができる。上記乾性油、半乾性油脂肪酸などは、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸もしくはリシノール酸などの不飽和脂肪酸類を含む。高級不飽和脂肪族基の平均炭素数は13~23であるのが好ましい。なお、全飽和脂肪酸に対して30質量%以下となる量で、桐油脂肪酸などの共役二重結合をもつ脂肪酸を併用してもよい。また、上記エチレン性不飽和グリシジルエステルとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタアクリレート、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテルなどを用いることができる。これらの中でも、特に、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、サフラワー油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸、トール油脂肪酸より選ばれた少なくとも一種と、グリシジルアクリレートおよび/またはグリシジルメタアクリレートとの反応によって得られるものが好ましい。また、上記ラジカル重合性不飽和モノマーとしては、ヨウ素価が60~180、特に70~150のものが好ましい。
【0013】
上記モノマー混合物に含まれる、高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマー以外の、他のラジカル重合性不飽和モノマーとして、例えば、
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、i-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、i-ノニルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸エステルモノマー;
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、i-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、i-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、i-ノニルメタクリレート、n-ドデシルメタクリレート、i-ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルモノマー;
スチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼンなどの芳香族ビニルモノマー;
アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレートなどのカルボキシル基含有モノマー;
アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-n-ブトキシメチルアクリルアミドなどのアミド基もしくは置換アミド基含有モノマー;
2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルアルコール、メタリルアルコールなどの水酸基含有モノマー;
アミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルメタアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタアクリレートなどのアミノ基もしくは置換アミノ基含有モノマー;
グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルアリルエーテル、グリシジルメタリルエーテル、グリシジルビニルエーテルなどのエポキシ基含有モノマー;
ビニルメルカプタン、アリルメルカプタンなどのメルカプト基含有モノマー;
(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼンなどの1分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和基を有するモノマー;
などが挙げられる。
【0014】
上記他のラジカル重合性不飽和モノマーのうち、例えば、
アクリル酸エステルモノマー(好ましくはエチルアクリレート、n-ブチルアクリレートなど)、
メタクリル酸エステルモノマー(好ましくはメチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレートなど)、
カルボキシル基含有モノマー(好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレートなど)、
置換アミノ基含有モノマー(好ましくは、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタアクリレートなどのN,N-ジ低級アルキルアミノ-低級アルキル(メタ)アクリレートなど)、
からなる群から選択される1種またはそれ以上を含むのが好ましい。
【0015】
上記モノマー混合物中に含まれる、高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマーの量は、モノマー混合物の総量100質量部に対して0.5~30質量部の範囲内であるのが好ましく、5~15質量部の範囲内であるのがより好ましい。また、上記モノマー混合物中に含まれる、アクリル酸エステルモノマーとメタクリル酸エステルモノマーとの合計量は、モノマー混合物の総量100質量部に対して、50~90質量部の範囲内であるのが好ましい。また、上記モノマー混合物中に含まれる、カルボキシル基含有モノマーの量は、0~10質量部の範囲内であるのが好ましい。さらに、上記モノマー混合物中に含まれる、置換アミノ基含有モノマーの量は、0~10質量部の範囲内であるのが好ましい。なお、本発明の非水分散樹脂(I)の調製が多段階重合でなされる場合、上記モノマー混合物中に含まれるモノマーの量は、それぞれの重合で用いたモノマーの総量である。
【0016】
非水分散樹脂(I)を調製する重合条件は、使用するモノマーの種類および量に応じて、当業者が通常用いられる重合条件を適宜選択して行うことができる。例えば、適宜の重合開始剤および必要に応じて用いられる連鎖移動剤を用い、窒素気流中または有機溶媒の還流温度で、攪拌しながら数時間加熱反応させることによって、後述する重量平均分子量の範囲内になるよう上記モノマー混合物を重合させるのが好ましい。重合温度としては、一般に30~180℃、好ましくは60~150℃の範囲がよい。
【0017】
重合において用いる有機溶媒として、例えば、
シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン、「ロウス」、「ミネラルスピリットEC」、「シェルゾール71」、「VM&Pナフサ」、「シェルTS28ソルベント」〔以上、オクサリスケミカルズ社製〕、「アイソパーC」、「アイソパーE」、「アイソパーG」、「アイソパーH」、「アイソパーM」、「ナフサ3号」、「ナフサ5号」、「ナフサ6号」、「ソルベント7号」〔以上、エクソンモービル・ケミカル社製〕、「IPソルベント1016」、「IPソルベント1620」、「IPソルベント2028」、「IPソルベント2835」〔以上、出光興産(株)製〕、「ホワイトゾール」「三菱ミネラルターペン」、「ダイヤモンドソルベント」、「ペガゾールAN-45」、「ペガゾール3040」〔以上、JXTGエネルギー(株)製〕などの脂肪族または脂環式炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、「ソルベッソ100」、「ソルベッソ150」〔以上、エクソンモービル・ケミカル社製〕などの芳香族炭化水素系有機溶媒;
アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系有機溶媒;
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸アルミニウムなどのエステル系有機溶媒;
メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n-プロピルセロソルブ、i-プロピルセロソルブ、n-ブチルセロソルブ、i-ブチルセロソルブ、i-アミルセロソルブ、フェニルセロソルブ、ベンジルセロソルブなどのセロソルブ系有機溶媒;
メチルカルビトール、エチルカルビトール、n-プロピルカルビトール、i-プロピルカルビトール、n-ブチルカルビトール、i-ブチルカルビトール、i-アミルカルビトール、フェニルカルビトール、ベンジルカルビトールなどのカルビトール系有機溶媒;
などを挙げることができる。
【0018】
上記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ-i-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレートなどの有機過酸化物;2,2’-アゾビス-i-ブチルニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物など;を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を組み合わせて用いてもよい。上記重合開始剤の使用量は、モノマー総量100質量部に対して、一般に0.5~15質量部であるのが好ましく、2~8質量部であるのがより好ましい。
なお、本発明の非水分散樹脂(I)の調製が多段階重合でなされる場合、上記重合開始剤の好ましい使用量の範囲は、それぞれの重合に適用することができる。
【0019】
上記連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸;アルキル基の炭素数が1~8のシアノ酢酸アルキルエステル類;ブロモ酢酸;アルキル基の炭素数が1~8のブロモ酢酸エステル類:アントラセン、フェナントレン、フルオレン、9-フェニルフルオレンなどの芳香族化合物類;p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、p-ニトロトルエンなどの芳香族ニトロ化合物類;ベンゾキノン、2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンなどのベンゾキノン誘導体類;トリブチルボランなどのボラン誘導体;四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロエタン、トリブロモメタン、3-クロロ-1-プロペンなどのハロゲン化炭化水素類;クロラール、フラルデヒドなどのアルデヒド類;炭素数1~18のアルキルメルカプタン類;チオフェノール、トルエンメルカプタンなどの芳香族メルカプタン類;メルカプト酢酸;メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル類;炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン類;ピネン、ターピノレンなどのテルペン類などを挙げることができる。このような連鎖移動剤を用いる場合、その使用量は、モノマー総量100質量部に対して、0.005~3質量部であるのが好ましい。
【0020】
非水分散樹脂(I)の調製において、モノマー混合物を2段階重合する場合は、最初の重合段階において、高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を共重合して溶解部を形成し、次いで、高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマーを含まないモノマー混合物または高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を共重合して粒子部を形成してもよい。
【0021】
非水分散樹脂(I)が例えば溶解部および粒子部を有する場合において、溶解部の重量平均分子量は15,000~100,000であり、粒子部の重量平均分子量は15,000~300,000であるのが好ましい。ここで、溶解部の重量平均分子量は粒子部の重量平均分子量より小さいことを条件とするのが好ましい。なお、非水分散樹脂(I)が例えば溶解部および粒子部を有する場合における、溶解部および粒子部の重量平均分子量は、非水分散樹脂(I)の重量平均分子量をゲル透過クロマトグラフ(GPC)で測定する際に、ピーク部分の面積比から分子量を算出することによって求めることができる。
【0022】
非水分散樹脂(I)が溶解部および粒子部を有する場合における溶解部および粒子部の質量比率は、溶解部:粒子部=20:80~80:20の範囲内であるのが好ましく、30:70~70:30の範囲内であるのがより好ましい。
【0023】
非水分散樹脂(I)の調製の他の1例として、高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマーを含まないモノマー混合物を重合し、得られた共重合体に、高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を導入する例が挙げられる。具体的には、例えば、アルキレン基含有モノマーを含むモノマー混合物を重合し、次いで、高級不飽和脂肪酸のカルボキシル基と、得られた共重合体が有するアルキレン基とを反応させることによって、高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を導入することができる。
【0024】
上記非水分散樹脂(I)の酸価は、1~30mgKOH/gであるのが好ましく、2~20mgKOH/gであるのがより好ましい。上記非水分散樹脂(I)のヨウ素価は、0.1~80であるのが好ましく、0.5~30であるのがより好ましい。非水分散樹脂(I)の酸価およびヨウ素価が上記範囲内であることによって、耐水性、耐候性などの塗膜性能が良好な塗膜が得られる利点がある。
【0025】
上記非水分散樹脂(I)は、重量平均分子量が30,000~100,000の範囲内であることを条件とする。上記重量平均分子量は、40,000~80,000の範囲内であるのが好ましい。非水分散樹脂(I)の重量平均分子量が上記範囲内であることによって、被塗物である基材に対する密着性を向上させることができる利点がある。さらに、上記下塗塗料組成物を塗装した後に上塗塗料組成物を塗装する際に、下塗塗膜が溶解することを防ぐことができる利点がある。
【0026】
上記重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)により、TSK-GEL GMHXL(東ソー製スチレン系ポリマー充填剤)をカラムとして測定し、ポリスチレン換算して得られる値である。
【0027】
有機溶媒(II)
上記下塗塗料組成物は有機溶媒(II)を含む。上記有機溶媒(II)は、脂肪族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒および芳香族炭化水素系溶媒からなる群から選択される1種またはそれ以上である有機溶媒(II-a)、および、アルコール溶媒(II-b)を含む。
【0028】
本明細書において、上記脂肪族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒および芳香族炭化水素系溶媒からなる群から選択される1種またはそれ以上である有機溶媒(II-a)は、アニリン点または混合アニリン点が10℃を超え、かつ、40℃を超えないものであることを条件とする。アニリン点とは、等容量のアニリンと試料とが均一な溶液として存在する最低温度であり、JIS K2256に規定されている。
【0029】
上記有機溶媒(II-a)のアニリン点または混合アニリン点の下限温度は、25℃であるのが好ましく、30℃であるのがより好ましい。
【0030】
上記脂肪族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒および芳香族炭化水素系溶媒からなる群から選択される1種またはそれ以上である有機溶媒(II-a)であって、アニリン点または混合アニリン点が10℃を超え、かつ、40℃を超えないものとして、例えば、
HAWS(オクサリスケミカルズ社製、脂肪族炭化水素系と芳香族炭化水素系の混合溶媒、アニリン点:17℃)、
ソルベッソ100(エクソンモービル・ケミカル社製、芳香族炭化水素系溶媒、混合アニリン点:14℃)、
ソルベッソ150(エクソンモービル・ケミカル社製、芳香族炭化水素系溶媒、混合アニリン点:18.3℃)、
スワゾール100(丸善石油化学社製、脂肪族炭化水素系溶媒、混合アニリン点:24.6℃)、
スワゾール200(丸善石油化学社製、脂肪族炭化水素系溶媒、混合アニリン点:23.8℃)、
スワゾール1000(丸善石油化学社製、芳香族炭化水素系溶媒、混合アニリン点:12.7℃)、
スワゾール1500(丸善石油化学社製、芳香族炭化水素系溶媒、混合アニリン点:16.5℃)、
スワゾール1800(丸善石油化学社製、芳香族炭化水素系溶媒、混合アニリン点:15.7℃)、
出光イプゾール100(出光興産社製、脂肪族炭化水素系溶媒、混合アニリン点:13.5℃)、
出光イプゾール150(出光興産社製、脂肪族炭化水素系溶媒、混合アニリン点:15.2℃)、
ペガゾールARO-80(エクソンモービル・ケミカル社製、脂肪族炭化水素系溶媒、混合アニリン点:25℃)、
ペガゾールR-100(エクソンモービル・ケミカル社製、脂肪族炭化水素系溶媒、混合アニリン点:14℃)、
昭石特ハイゾール(オクサリスケミカルズ社製、脂肪族炭化水素系溶媒、混合アニリン点:12.6℃)、
日石ハイゾール(JXTGエネルギー社製、脂肪族炭化水素系溶媒、混合アニリン点:約17℃)、
Kソルベント(JXTGエネルギー社製、脂肪族炭化水素系溶媒、アニリン点:37℃)
等が挙げられる。
【0031】
上記有機溶媒(II-a)は1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。そして、上記有機溶媒(II-a)が、2種またはそれ以上の混合物である場合は、アニリン点または混合アニリン点は、下塗塗料組成物中に含まれる有機溶媒(II-a)の総量に対する各有機溶媒(II-a)の配合量に従い調製した、有機溶媒(II-a)のアニリン点または混合アニリン点測定用有機溶媒混合物を用いて、JIS K2256の規定に従い実測することによって求められる。
上記有機溶媒(II-a)が2種またはそれ以上の混合物である場合は、上記有機溶媒(II-a)のアニリン点または混合アニリン点測定用有機溶媒混合物のアニリン点または混合アニリン点が10℃を超えて40℃を超えないことを条件とする。従って、上記有機溶媒(II-a)が2種またはそれ以上の混合物においては、上記条件(アニリン点または混合アニリン点が10℃を超えて40℃を超えないこと)を満たす限りは、例えばアニリン点が40℃を超える脂肪族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒または芳香族炭化水素系溶媒を含んでもよい。
具体的には、(Laws(和名:ロウス)、オクサリスケミカルズ社製、脂肪族炭化水素系と芳香族炭化水素系の混合溶媒、アニリン点:42.1℃)およびスワゾール1000(丸善石油化学社製、芳香族炭化水素系溶媒、混合アニリン点:12.7℃)の混合物を用いてアニリン点を制御してもよい(実施例参照)。
【0032】
下塗塗料組成物中に含まれる上記有機溶媒(II-a)の量は、上記非水分散樹脂(I)の樹脂固形分100質量部に対して150~377質量部の範囲内であるのが好ましく、170~300質量部の範囲内であるのがより好ましい。有機溶媒(II-a)の量が上記範囲内であることによって、下塗塗料組成物の保存安定性を維持しながら、非水分散樹脂(I)の密着性を向上させることができる利点がある。
【0033】
下塗塗料組成物に含まれる有機溶媒(II)が、上記有機溶媒(II-a)を含むことによって、被塗物である基材に対する、非水分散樹脂(I)の密着性が向上することとなる。そして、上記有機溶媒(II-a)のアニリン点または混合アニリン点が、上記範囲を満たすことによって、下塗塗料組成物の保存安定性が向上し、上記下塗塗料組成物を1液形塗料組成物として調製して用いることが可能となる利点がある。
【0034】
なお、上記下塗塗料組成物が優れた密着性を発揮するメカニズムについて以下に記載するが、当該メカニズムについては本発明の発明者の推測によるもので本発明の範囲を何ら限定するものではない。
即ち、上記下塗塗料組成物に含まれる有機溶媒(II)は、上記有機溶媒(II-a)を含むことによって、非水分散樹脂(I)に対して部分的に上記有機溶媒(II-a)が作用し(例えば非水分散樹脂(I)の溶解部に対して上記有機溶媒(II-a)が作用し)、当該部分(例えば非水分散樹脂(I)の溶解部)をさらに溶解した状態(「半溶解」という)にするため、被塗物である基材に対してアンカー効果および浸透効果が発揮され、優れた密着性を得ることができるためと考えられる。
一方で、非水分散樹脂(I)の一部(例えば溶解部)が半溶解状態になると、当該非水分散樹脂(I)の保存安定性が低下するおそれがある。そして上記下塗塗料組成物においては、特定範囲のアニリン点または混合アニリン点を有する有機溶媒(II-a)を用いることによって、保存安定性を確保することができることを見出したことを技術的特徴の1つとする。
【0035】
アルコール溶媒(II-b)は、一般式:R-OH(式中、Rは、炭素数3~6の直鎖状アルキル基、または炭素数3~8の分枝状アルキル基であって主鎖の炭素数が2~6であることを条件とするアルキル基である。)で表されるものである。このようなアルコール溶媒の具体例として、例えば、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、SEC-ブチルアルコールなどが挙げられる。
【0036】
下塗塗料組成物が、上記有機溶媒(II-a)に加えて、特定のアルコール溶媒(II-b)を含むことによって、下塗塗料組成物中における非水分散樹脂(I)の分散安定性がさらに向上することとなる。さらに、被塗物が、塗膜(例えば旧塗膜など)を有する基材である場合において、被塗物の塗膜を侵し溶解する可能性を低減することができる利点がある。
【0037】
上記下塗塗料組成物中に含まれる上記アルコール溶媒(II-b)の量は、上記非水分散樹脂(I)の樹脂固形分100質量部に対して13~68質量部であるのが好ましく、15~34質量部の範囲内であるのがより好ましい。アルコール溶媒(II-b)の量が上記範囲内であることによって、塗膜性能を良好に保ちつつ、下塗塗料組成物の保存安定性を向上させることができる利点がある。
【0038】
下塗塗料組成物中に含まれる上記有機溶媒(II-a)および上記アルコール溶媒(II-b)の質量比は、(II-a):(II-b)=96:4~60:40の範囲内であるのが好ましく、(II-a):(II-b)=94:6~65:35の範囲内であるのがさらに好ましい。有機溶媒(II-a)およびアルコール溶媒(II-b)の質量比が上記範囲内であることによって、下塗塗料組成物の保存安定性を良好に保ちつつ、基材に対する密着性を向上させることができる利点がある。
【0039】
金属キレート化合物
上記下塗塗料組成物は、非水分散樹脂(I)および有機溶媒(II)に加えて、さらに金属キレート化合物を含むのが好ましい。下塗塗料組成物が金属キレート化合物を含むことによって、非水分散樹脂(I)が有しうる高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖の不飽和結合を架橋させることができる。これにより、得られる塗膜の耐候性、耐水性などを向上させることができる利点がある。
【0040】
上記金属キレート化合物は、アルミニウム、コバルト、バリウム、ジルコニウム、マンガン、鉄、セシウム、鉛、亜鉛およびカルシウムからなる群から選択される1種またはそれ以上の金属元素を含むのが好ましく、コバルトおよびバリウムからなる群から選択される1種またはそれ以上の金属元素を含むのがさらに好ましい。上記金属元素を含む金属キレート化合物の具体例として、例えば、上記群から選択される少なくとも1種またはそれ以上の金属元素のナフテン酸塩、オクチル酸塩、樹脂酸塩、トール油脂肪酸(オレイン酸、マレイン酸を主成分とする脂肪酸)、ネオデカン酸などを挙げることができる。
【0041】
上記金属キレート化合物が含まれる場合における含有量は、非水分散樹脂(I)の樹脂固形分100質量部に対して4.2~5.6質量部の範囲内であるのが好ましい。
【0042】
他の成分
上記下塗塗料組成物は、上記非水分散樹脂(I)および上記有機溶媒(II)、そして必要に応じた金属キレート化合物に加えて、他の成分を含んでもよい。他の成分として、例えば、アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、アルキド変性アクリル樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、アルキルシリケート樹脂、アクリル変性シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などの樹脂成分;アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、モノアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ナフトール系顔料、ピラゾロン系顔料、アントラキノン系顔料、アンソラピリミジン系顔料、金属錯体顔料などの有機系着色顔料;黄鉛、黄色酸化鉄、酸化クロム、モリブデートオレンジ、ベンガラ、チタンイエロー、亜鉛華、カーボンブラック、二酸化チタン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、コバルトバイオレットなどの無機系着色顔料;マイカ顔料(二酸化チタン被覆マイカ、着色マイカ、金属メッキマイカ);グラファイト顔料、アルミナフレーク顔料、金属チタンフレーク、ステンレスフレーク、板状酸化鉄、フタロシアニンフレーク、金属メッキガラスフレーク、その他の着色、有色偏平顔料;酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、珪酸マグネシウム、クレー、タルク、シリカ、焼成カオリンなどの体質顔料;酸化ポリエチレン、アマイド系、三次元架橋を有する樹脂粒子などのチクソトロピー性を発現する増粘剤;造膜助剤、表面調整剤、防腐剤、防かび剤、消泡剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤などの添加剤;有機溶媒、水性溶媒などの各種溶媒;などを、必要に応じて用いることができる。
【0043】
上記下塗塗料組成物が顔料成分を含む場合における顔料成分の総量は、下塗塗料組成物中に含まれる樹脂成分100質量部に対して1~70質量部の範囲内であるのが好ましい。顔料成分が含まれる下塗塗料組成物を調製する場合において、顔料成分は、樹脂分散剤などの分散剤を用いて予め分散させておいた状態で、他の成分と混合して製造するのが好ましい。樹脂分散剤として、例えば、脂肪族系多価カルボン酸、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸のアミン塩、ポリエステルのアミン塩などが挙げられる。分散剤として、ノニオン系界面活性剤などの各種界面活性剤および顔料湿潤剤などを用いてもよい。
【0044】
上記下塗塗料組成物が、非水分散樹脂(I)に加えて他の樹脂成分を含む場合において、他の樹脂成分は、別途製造した樹脂成分であってもよく、また、非水分散樹脂(I)の調製において、他の樹脂成分の微粒子を与えるモノマーを、適宜の重合開始剤および必要に応じて連鎖移動剤を用い、窒素気流中または有機溶媒の還流温度で、攪拌しながら数時間加熱して共重合させることにより製造してもよい。他の樹脂成分の微粒子の調製における重合温度は、一般に30~180℃、好ましくは60~150℃の範囲であるのが好ましい。
【0045】
下塗塗料組成物の調製および塗装
上記下塗塗料組成物は、上記非水分散樹脂(I)および上記有機溶媒(II)、そして必要に応じた金属キレート化合物、他の成分、溶媒などを、SGミル、ディスパー、ボールミルなどの当業者によってよく知られた機器を用いて、分散、撹拌、混合することによって調製することができる。
【0046】
上記下塗塗料組成物は、1液形塗料組成物であってもよく、2液形塗料組成物であってもよい。上記下塗塗料組成物は、塗料組成物の保存安定性、特に非水分散樹脂(I)の分散安定性に優れることから、1液形塗料組成物として好適に用いることができる利点がある。上記下塗塗料組成物が、1液形塗料組成物であることによって、塗装準備作業性が向上するなどの利点がある。
【0047】
上記下塗塗料組成物は、例えば、刷毛、ローラー、スプレー、ロールコーター、ナイフコーターなどの手段により塗装することができる。上記下塗塗料組成物は、必要に応じて、適宜な有機溶媒を用いて希釈して塗装してもよい。下塗塗料組成物を塗装した後、常温で乾燥してもよく、また、加熱により強制乾燥してもよい。上記下塗塗料組成物は、1コートにつき0.05~0.2kg/mの範囲内の量で塗装するのが好ましい。塗装は、1コートであってもよく、複数回(例えば2~3)コートであってよい。
【0048】
上記下塗塗料組成物を塗装する被塗物として、例えば、セメント、モルタル、コンクリート、ガラス、セラミック、スレート材(スレート系化粧屋根材など)、系岩石、硅カル板、鉱石などの無機質基材;吹付けタイル塗膜、アルキド樹脂系錆止塗膜、エポキシ樹脂系錆止塗膜などの新設および既設の各種塗装面;トタン、カラートタンなどの特に建築物や構造物の外壁、屋根などに用いられる金属基材;などの建材を挙げることができる。上記下塗塗料組成物を塗装する被塗物として、さらに、アルミニウム板、亜鉛板、鉄板、ステンレス鋼板などの金属板;塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ウレタン樹脂、SERなどの熱可塑性合成樹脂の成型物;フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性合成樹脂の成形物;などの基材も挙げることができる。
【0049】
上記下塗塗料組成物は、様々な基材に対して良好な密着性を有することなどから、屋外建材用下塗塗料組成物として好適に用いることができる。屋外建材として、例えば、セメント建材、モルタル建材、コンクリート建材、セラミック建材、スレート建材、スレート系化粧屋根材、金属基材(例えばトタン、カラートタンなど)、各種樹脂建材、繊維強化セメント、ケイ酸カルシウム板、住宅用化粧スレート板、ノンアススレートなどが挙げられる。
【0050】
上記下塗塗料組成物を被塗物に塗装した後、上塗塗料組成物を塗装してもよい。上塗塗料組成物として、例えば、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フッ素樹脂などの樹脂成分のうちいずれか1種または2種以上を含む、上塗塗料組成物が挙げられる。上塗塗料組成物は、塗装分野において通常用いられる塗装方法により塗装することができる。
【実施例
【0051】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
【0052】
製造例1 非水分散樹脂(I-1)の製造
(重合1段階目)
温度計、撹拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた反応器に「ロウス」(オクサリスケミカルズ社製、有機溶媒)200質量部を仕込み、次いで別の容器に2-エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)240質量部(重合1段階目におけるモノマー質量比率:40質量%)、t-ブチルメタクリレート(tBMA)318質量部(同53質量%)、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート(nの平均値2:CPCA)30質量部(同5質量%)、及びグリシジルメタクリレートのオレイン酸付加物(ヨウ素価85)12質量部(同2質量%)からなるモノマー混合物600質量部を用意し、このうち200質量部を反応器に仕込み、反応器内を窒素置換した後100℃に昇温し、重合開始剤としてt-ブチル-パーオキシ-2-エチルヘキサノエート(tBPOO)を1.2質量部添加して30分間同温度で保った。
さらに残りのモノマー混合物400質量部およびtBPOO6質量部からなる混合物を2時間かけて逐次滴下し、滴下終了後同温度で30分保持した後、次いでtBPOOを2質量部添加し、さらに3時間同温度で保ってから「ロウス」(オクサリスケミカルズ社製、有機溶媒)を350質量部加えて冷却し、共重合体(A)溶液を得た。重合1段階目で重合された「共重合体(A)」は、非水分散樹脂(I)の溶解部に該当する。

(重合2段階目)
次いで、重合で使用したものとは別の、温度計、撹拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた反応器を用意し、この反応器に、「ロウス」100質量部、前記の共重合体(A)溶液377質量部、アセチルアセトン、20質量部及び架橋剤としてアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)4.2質量部を仕込み、窒素置換した後100℃に昇温し、エチルアクリレート140質量部(重合2段階目におけるモノマー質量比率:40質量%)、メチルメタクリレート98質量部(同28質量%)、n-ブチルメタクリレート35質量部(同10質量%)、スチレン52.5質量部(同15質量%)、N,N’-ジエチルアミノエチルメタクリレート7質量部(同2質量%)、及びグリシジルメタクリレートの大豆油脂肪酸付加物(ヨウ素価98)17.5質量部(同5質量%)からなるモノマー混合物350質量部、「ロウス」180質量部、並びにtBPOO 10.5質量部を2時間かけて逐次添加し、滴下終了後同温度で30分間保持した後、次いでtBPOO 3.0質量部を添加し、更に3時間同温度で保持した。その後、重合2段階目を行った非水分散樹脂(I)100質量部に対し、20.5質量部のスワゾール1000を用いて希釈を行い、非水分散樹脂液(I-1)を得た。重合2段階目で重合された部分は、非水分散樹脂(I)の粒子部に該当する。
使用したモノマー混合物の組成、得られた非水分散樹脂(I-1)中の共重合体(A)の比率、非水分散樹脂全体の重量平均分子量、及び得られた非水分散樹脂液の不揮発分を表1に示す。
【0053】
製造例2~6 非水分散樹脂(I-2)~(I-6)の製造
重合2段階目のモノマー混合物の組成、重量平均分子量、非水分散樹脂中の共重合体(A)の質量比を変えた以外は、製造例1と同様にして、非水分散樹脂液(I-2)~(I-6)を得た。
なお、(I-2)~(I-6)それぞれの非水分散樹脂の重量平均分子量は、重合温度、重合開始剤の量を適宜変更することにより調整した。
【0054】
【表1】


【0055】
実施例1 下塗塗料組成物の調製
非水分散樹脂(I-2)64.9部、有機溶媒(II-a)であるスワゾール1000 29.5部、アルコール溶媒(II-b)であるn-プロピルアルコール 5.0部を、高速ディスパーで600~1080rpm/min撹拌することによって、下塗塗料組成物を調製した。
【0056】
実施例2~15、17~21および比較例1~10 下塗塗料組成物の調製
非水分散樹脂(I)、有機溶媒(II-a)およびアルコール溶媒(II-b)の種類および量を、下記表に記載の通り変更したこと以外は、実施例1と同様にして、下塗塗料組成物を調製した。
【0057】
なお、下記表に示される「*非水分散樹脂(I)中に含まれる(II-a)の量」は、塗料組成物の調製に用いた非水分散樹脂(I-1)~(I-6)中に含まれる有機溶媒(II-a)(Laws(和名:ロウス)、オクサリスケミカルズ社製、脂肪族炭化水素系と芳香族炭化水素系の混合溶媒、アニリン点:42.1℃)の量である。
【0058】
実施例16 下塗塗料組成物の調製
非水分散樹脂(I)、有機溶媒(II-a)およびアルコール溶媒(II-b)の種類および量を、下記表に記載の通り変更し、さらに下記表に示す顔料を加えたこと以外は、実施例1と同様にして、下塗塗料組成物を調製した。
【0059】
実施例22~36 下塗塗料組成物の調製
非水分散樹脂(I)、有機溶媒(II-a)およびアルコール溶媒(II-b)の種類および量を、下記表に記載の通り変更し、さらに下記表に示す金属キレート化合物を加えたこと以外は、実施例1と同様にして、下塗塗料組成物を調製した。
【0060】
なお、下塗塗料組成物の調製に用いた有機溶媒(II-a)の混合アニリン点またはアニリン点を、JIS K2256に準拠して求めた。
【0061】
実施例および比較例で調製した下塗塗料組成物を用いて、下記手順により評価を行った。評価結果を下記表に示す。
【0062】
貯蔵安定性(-5℃および40℃)
実施例および比較例で調製した下塗塗料組成物をガラスビン中に密封し、それぞれを-5℃および40℃条件下で1週間貯蔵し、1週間後の下塗塗料組成物の状態変化を観察し、下記基準に基づき評価した。

○:下塗塗料組成物の分離は確認されず、状態は良好である。
○△:下塗塗料組成物の分離がほんのわずか確認される。
△:下塗塗料組成物の分離がわずかに確認される。
×:下塗塗料組成物の分離がはっきり分かる
【0063】
基材付着性
各実施例および比較例で調製した下塗塗料組成物を、各種基材(繊維強化セメント・ケイ酸カルシウム板・住宅用化粧スレート板・ノンアススレート)に対して、刷毛を用いて200g/mの量を塗装し下塗塗膜を得た。室温で16時間乾燥した後、この下塗塗膜上に、塗料用シンナーで5%希釈したニッペ ファインパーフェクトベスト(日本ペイント株式会社製、ターペン可溶2液屋根用塗料)を上塗塗料組成物として刷毛を用いて140g/mの量を塗装した。これを室温で3時間放置した後に、さらに上記の上塗塗料組成物を塗装し、温度23℃、湿度50%の条件下で7日間乾燥した。
同様にして、各種基材上に形成された下塗塗膜上に、塗料用シンナーで5%希釈したニッペ ファインシリコンベスト(日本ペイント株式会社製、1液ターペン可溶シリコン樹脂屋根用塗料)を上塗塗料組成物として刷毛を用いて140g/mの量を塗装した。これを室温で3時間放置した後に、さらに上記の上塗塗料組成物を塗装し、温度23℃、湿度50%の条件下で7日間乾燥した。
その後、JIS K5600 5-6に定められたクロスカット法にて付着性を評価した。
碁盤目のマス目の間隔およびマス目の数はそれぞれ2mm、25マスとした。
付着性の評価は、下記基準に従って点数で表し、○、○△、△、×の評価とした。

分類0:全ての基材及び上塗塗料組成物ではがれ部分が生じていない。
分類1:全ての基材及び上塗塗料組成物で生じたはがれ部分の総計が5%未満である。
分類2:全ての基材及び上塗塗料組成物で生じたはがれ部分の総計が5%以上15%未満である。
分類3:全ての基材及び上塗塗料組成物で生じたはがれ部分の総計が15%以上35%未満である。
分類4:全ての基材及び上塗塗料組成物で生じたはがれ部分の総計が35%以上65%未満である。
分類5:全ての基材及び上塗塗料組成物で生じたはがれ部分の総計が65%以上である。

上記分類0、1の評価を○とし、分類2の評価を○△、3の評価を△とし、分類4、5の評価を×とした。
【0064】
耐溶剤性
各実施例および比較例で調製した下塗塗料組成物を、基材(スレート板)に200g/m刷毛で塗装して下塗塗膜を形成した。室温で4時間乾燥後、形成された下塗塗膜上に、塗料用シンナーで5%希釈したニッペ ファインパーフェクトベスト(日本ペイント株式会社製、ターペン可溶2液屋根用塗料)を上塗塗料組成物として刷毛を用いて140g/mの量を塗装した際において、下塗塗膜が溶けているか否かを目視で評価した。
同様に下塗塗膜上に、塗料用シンナーで5%希釈したニッペ ファインシリコンベスト(日本ペイント株式会社製、1液ターペン可溶シリコン樹脂屋根用塗料)を上塗塗料組成物として刷毛を用いて140g/mの量を塗装した際において、下塗塗膜が溶けているか否かを目視で評価した。

○:全ての上塗塗料組成物で下塗塗膜の溶解は確認されない。
○△:いずれかの上塗塗料組成物で下塗塗膜の溶解がごくわずかに確認される。
△:いずれかの上塗塗料組成物で下塗塗膜の溶解がわずかに確認される。
×:全ての上塗塗料組成物で下塗塗膜の明らかな溶解が確認される。
【0065】
上塗外観性
各実施例および比較例で調製した下塗塗料組成物を、基材(ケイ酸カルシウム板)に200g/m刷毛で塗装し、室温で16時間乾燥後、この下塗塗膜上に、塗料用シンナーで5%希釈したニッペ ファインパーフェクトベスト(日本ペイント株式会社製、ターペン可溶2液屋根用塗料)を上塗塗料組成物として刷毛を用いて140g/mの量を塗装した。次いで室温で3時間乾燥後に上記の上塗塗料組成物を塗装し、温度23℃、湿度50%の条件下で1日静置して、測定板を作成した。
測定板の光沢値を、「Micro-TRI-gloss」(BYK-ガードナー社製)を使用して、JIS K5600-4-7に準拠して、入射光軸60°の幾何条件(60°グロス)で3回測定し、これらの測定値から平均値を算出した。

○:光沢60°グロス値が80以上である。
○△:光沢60°グロス値が70以上80未満である。
△:光沢60°グロス値が60以上70未満である。
×:光沢60°グロス値が60未満である。
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
実施例の下塗塗料組成物はいずれも、貯蔵安定性が良好であることが確認された。また、実施例の下塗塗料組成物を用いて調製した下塗塗膜および上塗塗膜を含む複層塗膜は、基材付着性および耐溶剤性に優れ、また上塗外観も良好であることが確認された。
比較例1~4の下塗塗料組成物はいずれも、アルコール系溶媒を含むものの、本発明におけるアルコール溶媒(II-b)ではないアルコール系溶媒である例である。これらの例では、貯蔵安定性または基材付着性が劣ることが確認された。
比較例5の下塗塗料組成物は、アルコール溶媒(II-b)を含まない例である。この例では、貯蔵安定性が劣ることが確認された。
比較例6および7は、有機溶媒(II-a)およびアルコール溶媒(II-b)を含むものの、質量比(II-a):(II-b)が本発明の範囲を満たさない例である。これらの例では、貯蔵安定性が劣ることが確認された。
比較例8および9は、非水分散樹脂(I)の重量平均分子量が本発明の範囲を満たさない例である。これらの例では、基材付着性または耐溶剤性が劣ることが確認された。
比較例10は、有機溶剤(II-a)のアニリン点が本発明の範囲を満たさない例である。この例では、基材付着性が劣ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
上記下塗塗料組成物は、基材(例えば様々な屋外建材など)に対する密着性が良好であるという利点がある。上記下塗塗料組成物はまた、保存安定性が良好であることから1液形下塗塗料組成物として用いることができる。そのため、塗装準備作業性に優れているという産業上の利点がある。