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特許7404028アクティブ電流位置(ACL)及び組織近接度指示(TPI)を組み合わせたシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】アクティブ電流位置(ACL)及び組織近接度指示(TPI)を組み合わせたシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/25 20210101AFI20231218BHJP
   A61B 5/06 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
A61B5/25
A61B5/06
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019193256
(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公開番号】P2020065931
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】16/170,661
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】バディム・グリナー
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-516588(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0275827(US,A1)
【文献】特開2018-114270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0193089(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0351652(US,A1)
【文献】特表2003-502104(JP,A)
【文献】米国特許第06391024(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/25
A61B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
患者の身体に取り付けられ、かつ電気信号を前記身体内に伝送するように構成されている、1つ又は2つ以上の対の身体表面電極と、
プロセッサであって、
送された前記電気信号から生じる、前記患者の器官内に挿入された医療用プローブの外向き電極及び内向き電極によって取得されている電位を示す信号を受信し、
前記外向き電極によって取得された前記電位を示す前記信号に基づいて、前記器官の表面組織に対する前記医療用プローブの近接度を推定し、かつ
前記内向き電極によって取得された前記電位を示す前記信号に基づいて、前記器官内の前記医療用プローブのポジションを推定するように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、(i)前記内向き電極の推定ポジション、及び(ii)前記医療用プローブ内の前記外向き電極と前記内向き電極との間の既知の幾何学的関係に基づいて、前記外向き電極のポジションを計算することによって、前記医療用プローブの前記ポジションを推定するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記1つ又は2つ以上の対の身体表面電極は、第1の周波数を有する第1の信号と、前記第1の周波数よりも高い第2の周波数を有する第2の信号との重ね合わせを伝送するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記第1の周波数及び前記第2の周波数それぞれで取得された前記電位から導出されていた第1のインピーダンスと第2のインピーダンスとの間の比を計算することと、前記比に基づいて前記近接度を計算することとによって、前記近接度を推定するように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記第1の周波数で前記内向き電極によって取得された前記電位から導出されたインピーダンスを計算することと、前記インピーダンスに基づいて前記医療用プローブの前記ポジションを計算することとによって、前記医療用プローブの前記ポジションを推定するように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記外向き電極及び前記内向き電極は、互いに正反対に配設されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つ又は2つ以上の対の身体表面電極は、血液内を伝搬する電位を受信するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記1つ又は2つ以上の対の身体表面電極は、前記外向き電極と接触している組織内を伝搬する電位を受信するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
プロセッサの作動方法であって、
前記プロセッサが、患者の器官内に挿入された医療用プローブの外向き電極及び内向き電極によって、前記患者の身体に取り付けられた1つ又は2つ以上の対の身体表面電極の間で伝送された電気信号から生じる電位を取得することと、
前記プロセッサが、前記外向き電極によって取得された前記電位に基づいて、前記器官の表面組織に対する前記医療用プローブの近接度を推定することと、
前記プロセッサが、前記内向き電極によって取得された前記電位に基づいて、前記器官内の前記医療用プローブのポジションを推定することと、を含む、プロセッサの作動方法。
【請求項10】
前記プロセッサが前記医療用プローブの前記ポジションを推定することは、(i)前記内向き電極の推定ポジション、及び(ii)前記医療用プローブ内の前記外向き電極と前記内向き電極との間の既知の幾何学的関係に基づいて、前記プロセッサが前記外向き電極のポジションを計算することを含む、請求項9に記載のプロセッサの作動方法。
【請求項11】
前記電気信号は、第1の周波数を有する第1の信号と、前記第1の周波数よりも高い第2の周波数を有する第2の信号と重ね合わされた信号である、請求項9に記載のプロセッサの作動方法。
【請求項12】
前記プロセッサが記近接度を推定することは、前記プロセッサが、前記第1の周波数及び前記第2の周波数それぞれで取得された前記電位から導出されていた第1のインピーダンスと第2のインピーダンスとの間の比を計算することと、前記プロセッサが、前記比に基づいて前記近接度を計算することと、を含む、請求項11に記載のプロセッサの作動方法。
【請求項13】
前記プロセッサが前記医療用プローブの前記ポジションを推定することは、前記プロセッサが、前記第1の周波数で前記内向き電極によって取得された前記電位から導出されたインピーダンスを計算することと、前記プロセッサが、前記インピーダンスに基づいて前記医療用プローブの前記ポジションを計算することと、を含む、請求項11に記載のプロセッサの作動方法。
【請求項14】
前記外向き電極及び前記内向き電極は、互いに正反対に配設されている、請求項9に記載のプロセッサの作動方法。
【請求項15】
前記プロセッサが前記電位を取得することは、前記プロセッサが、血液内を伝搬する電位を取得することを含む、請求項9に記載のプロセッサの作動方法。
【請求項16】
前記プロセッサが前記電位を取得することは、前記プロセッサが、前記外向き電極と接触している組織内を伝搬する前記電位を取得することを含む、請求項9に記載のプロセッサの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、同日付に出願された、「ELECTRODES ON DOUBLE-SIDED PRINTED CIRCUIT BOARD(PCB)TO CANCEL FAR-FIELD SIGNAL」と題された米国特許出願、代理人整理番号1002-1807、及び、「BALLOON CATHETER WITH DIAGNOSTIC ELECTRODES,FAR FIELD DETECTION ELECTRODES,AND GUIDEWIRE」と題された米国仮特許出願、代理人整理番号1002-1833に関連し、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、患者の体内の医療用プローブを追跡するためのシステム及び方法に関し、具体的には、インピーダンスに基づいた心臓ポジション追跡システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
患者の心臓内のカテーテルポジションを追跡するための様々な方法が提案されている。例えば、米国特許出願公開第2012/0130267号は、バスケットカテーテルを使用した心腔の解剖学的構造の判定及び表現のための方法及びシステムを記載している。いくつかの実施形態では、特定のカテーテル位置に対して局所的表面が生成されている。システムは、有効である局所的パラメータ化された表面の領域を検出及びマークする。局所的表面の有効領域は、真の心腔境界上にあると予想される領域(複数可)である。次いで、カテーテルを別の位置に移動させ、局所的な解剖学的構造の構築及び有効なパッチの検出のプロセスが繰り返される。
【0004】
別の例として、米国特許第5,983,126号は、カテーテル位置マッピングのためのシステム及び方法、並びに関連する手順について記載している。3つの実質的に直交する交流信号が、患者の心臓などの、マッピング対象の領域に実質的に向けられて、患者を通じて印加される。カテーテルは、少なくとも測定電極を備え、この測定電極は、心臓手術のために患者の心臓壁に接して、又は冠状静脈若しくは動脈内で、様々な位置に配置される。カテーテル先端部と、基準電極、好ましくは患者の表面電極との間で電圧が検知され、この電圧信号は、直交して印加された3つの電流信号に対応する成分を有する。3つの成分をx信号、y信号、及びz信号として分離するために3つの処理チャンネルが使用され、これらの信号から、体内のカテーテル先端部の三次元位置を判定するために計算が行われる。
【0005】
米国特許出願公開第2016/0287137号は、アブレーションエネルギの送達前に電極-組織接触を評価するための方法及びシステムを記載している。この方法は、一般に、所与の電極に対する低周波数における最大インピーダンス振幅と、全ての電極にわたる低周波数における必要最小限のインピーダンス振幅との差を決定することと、所与の電極に対する高周波数における最大インピーダンス振幅と、全ての電極にわたる高周波数における必要最小限のインピーダンス振幅との差を決定することと、所与の電極に対する高周波数における最大インピーダンス位相と、全ての電極にわたる高周波数における必要最小限のインピーダンス位相との差を決定することと、を含み得る。これらの差は、線形モデルを使用して互いに相関させることができ、その結果、所与の電極が組織と接触しているか、又は接触していないかを決定する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、患者の身体に取り付けられた1つ又は2つ以上の対の身体表面電極の間で電気信号を伝送することを含む方法を提供する。伝送された電気信号から生じる電位は、患者の器官内に挿入された医療用プローブの外向き電極及び内向き電極によって取得される。器官の表面組織に対する医療用プローブの近接度は、外向き電極によって取得された電位に基づいて推定される。器官内の医療用プローブのポジションは、内向き電極によって取得された電位に基づいて推定される。
【0007】
いくつかの実施形態では、プローブのポジションを推定することは、(i)内向き電極の推定ポジション、及び(ii)プローブ内の外向き電極と内向き電極との間の既知の幾何学的関係に基づいて、外向き電極のポジションを計算することを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、電気信号を伝送することは、第1の周波数を有する第1の信号と、第1の周波数よりも高い第2の周波数を有する第2の信号との重ね合わせを伝送することを含む。
【0009】
一実施形態では、組織近接度を推定することは、第1の周波数及び第2の周波数それぞれで取得された電位から導出された第1のインピーダンスと第2のインピーダンスとの間の比を計算することと、その比に基づいて組織近接度を計算することと、を含む。
【0010】
別の実施形態では、プローブのポジションを推定することは、第1の周波数で内向き電極によって取得された電位から導出されたインピーダンスを計算することと、そのインピーダンスに基づいてプローブのポジションを計算することと、を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、外向き電極及び内向き電極は、互いに正反対に配設されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、電位を取得することは、血液内を伝搬する電位を取得することを含む。
【0013】
一実施形態では、電位を取得することは、外向き電極と接触している組織内を伝搬する電位を取得することを含む。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、1つ又は2つ以上の対の身体表面電極とプロセッサとを含むシステムが、更に提供されている。1つ又は2つ以上の対の身体表面電極は、患者の身体に取り付けられ、かつ電気信号を身体内に伝送するように構成されている。プロセッサは、伝送された電気信号から生じる、患者の器官内に挿入された医療用プローブの外向き電極及び内向き電極によって取得されている電位を示す信号を受信するように構成されている。プロセッサは、外向き電極によって取得された電位を示す信号に基づいて、器官の表面組織に対する医療プローブの近接度を推定し、かつ内向き電極によって取得された電位を示す信号に基づいて、器官内の医療用プローブのポジションを推定するように更に構成されている。
【0015】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態による、カテーテルベースの電気解剖学的(EA)マッピングシステムの概略描写図である。
図2】本発明の一実施形態による、図1のEAシステムによって使用されるバスケットカテーテルの概略描写図である。
図3】本発明の一実施形態による、アクティブ電流位置(active current location、ACL)と組織近接度指示(tissue proximity indication、TPI)とを組み合わせることによるEAマッピングの方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
概論
本明細書に記載される本発明の実施形態は、心臓などの、患者の器官の空洞内部のカテーテルのポジションを追跡し、同時に、カテーテルに近接する空洞組織を示すための方法及びシステムを提供する。開示された方法及びシステムは、2種類の遠位電極を装着した様々なタイプのカテーテルに適用することができ、第1の電極は、心臓組織に接触することができる「外向き」電極であり、第2の電極は、組織と物理的に接触することができないが、心臓血液のみと接触する「内向き」電極である。2つのタイプの遠位電極は、互いに電気的に絶縁されている。典型的には、必ずしもそうではないが、そのような遠位電極の両方は、以下に記載されるように、互いに正反対の、カテーテルの同じスパイン上に定置される。
【0018】
いくつかの実施形態では、電気カテーテルベースの電気解剖学的(electroanatomical、EA)マッピングシステムのプロセッサは、外向き電極を使用して取得された電気生理学的(electrophysiological、EP)信号に基づいて、医療用プローブ(例えば、プローブの外向き電極)の、器官の表面組織への近接度を推定する。内向き電極を使用して取得されたEP信号に基づいて、プロセッサは、対応する外向き電極のポジションを導出する。典型的には、プロセッサは、プローブの既知の幾何学的形状を使用して、対応する内向き電極のポジションから外向き電極のポジションを導出する。同時に取得されたポジション及び組織近接度指示は、EAシステムが、電気信号のみを使用して、心臓の心臓腔などの器官の空洞を正確かつ迅速にマッピングすることを可能にする。
【0019】
信号を生成するために、いくつかの実施形態では、開示されるカテーテルベースのEAマッピングシステムは、身体表面電極の3つのほぼ相互に直交する対を含む。身体表面電極のこのようなほぼ相互に直交する3つの対を有するポジション追跡システムは、例えば、2018年4月30日に出願された、「Improved Active Voltage Location(AVL)Resolution」と題された米国特許出願第15/966,514号に記載されており、それは本特許出願の譲受人に譲渡されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
一実施形態では、EAシステムは、各対の身体表面電極間に2つの変調電圧の重ね合わせを印加する。第1の電圧は、第1の周波数で変調され、第2の電圧は、第1の周波数よりも高い第2の周波数で変調される。第1の変調周波数は、以下「低周波数」と命名され、第2の変調周波数は、以下「高周波数」と命名される。心臓内にそれぞれ誘起された高周波数及び低周波数電位は、カテーテルの外向き電極及び内向き電極の両方によって取得され、EAシステムの読み出し回路及びプロセッサに伝送される。典型的には、低周波数は数kHzの範囲であり、高周波数は数十kHzの範囲である。
【0021】
外向き電極によって取得された高周波数及び低周波数電位から計算された電気インピーダンスに基づいて、プロセッサは、対応する外向き電極の組織近接度指示(TPI)を提供する。一実施形態では、TPIは、低周波数及び高周波数インピーダンス間の計算された比に基づいて導出される。典型的には、この比は、血液中でおよそ1であるが、外向き電極が組織と接触するとき、(例えば、心臓組織内で最大3倍の因子によって)実質的に増加する。
【0022】
カテーテルの電極が器官の組織と物理的に接触しているかどうかを判定するための例示的な方法であって、カテーテル電極と1つ又は2つ以上の身体表面電極との間の低周波数及び高周波数測定インピーダンスを比較する、方法が、2018年5月29日に出願された、「Touch Detection Based on Frequency Response of Tissue」と題する米国特許出願第15/991,291号に記載されており、それは本特許出願の譲受人に譲渡されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
内向き電極によって測定された電位から計算された電気インピーダンスに基づいて、プロセッサは、内向き電極のポジションを(すなわち、ACL又はAVLを使用して)計算する(すなわち、推定する)。いくつかの実施形態では、スパインを備える伸縮可能なフレームを備える、バスケットカテーテルは、心臓の空洞のEAマッピングのために使用される。外向き電極及び内向き電極は、スパインの上に配設され、以下に記載されるように、ACL及びTPIを組み合わせた、EAマッピング用のEAマッピングシステムによって動作される。
【0024】
典型的には、プロセッサは、プロセッサが上記に概説したプロセッサ関連のステップ及び機能の各々を実行することを可能にする特定のアルゴリズムを含むソフトウェアでプログラムされる。
【0025】
内向き電極及び外向き電極をそれぞれ使用して、ACL及びTPIを組み合わせる、開示された方法は、単純な電気的セットアップを使用して、心臓の空洞の迅速かつ正確なEAマッピングを提供し得る。このため、開示された技術は容易であり得、したがってまた、低侵襲診断及び治療ソリューションの利用可能性を高め得る。
【0026】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、カテーテルベースの電気解剖学的マッピングシステム30の概略描写図である。システム30は、挿入図25に見られるように、シャフト22の遠位端に取り付けられたバスケットカテーテル40を使用して電気解剖学的マッピングのためにACLとTPIとを組み合わせる。
【0027】
カテーテル40は、医師56によって、患者35の心臓38の心腔などの体内の体腔内に挿入される。カテーテル40は、挿入図25に更に見られるように、1つ又は2つ以上の外向き電極32及び内向き電極33備える。電極32及び33は、互いに電気的に絶縁されており、したがって、シャフト22を通るワイヤによって、コンソール24内に含まれるプロセッサ46に接続されたドライバ回路44に別個に接続されている。ドライバ回路44は、プロセッサ46によって指示されるように、電極32及び33を駆動する。明確さ及び簡潔さのために、単一の外向き電極32、及び外向き電極32の正反対の単一の内向き電極33を使用する実施形態が、以下に記載される。
【0028】
プロセッサ46は、典型的には、好適なフロントエンド、ほぼ相互に直交する3つの対の表面電極60Pから信号を送受信するためのインターフェース回路、及び適切な信号処理回路を備えた汎用コンピュータを備える。これは、以下でパッチ60、62、64、66、68、及び70と命名されている、又はまとめて以下で「パッチ60P」と命名されている、患者の皮膚に取り付けられた6個の表面電極にケーブル39を介してワイヤによって接続されたドライバ回路44を使用することで達成される。
【0029】
挿入図45に見られるように、パッチ60Pは、患者35の身体上に分布している。例として、パッチ60は大腿に位置付けられ、パッチ62は首のうなじに位置付けられ、パッチ64及び66は、胸の両側(上腕の下)に位置付けられ、一方でパッチ68及び70はそれぞれ、胸及び背中上で心臓38に近接して位置付けられている。
【0030】
一実施形態では、低周波数及び高周波数で変調された電圧の重ね合わせが、3つの対の直交表面電極60Pの各々の間に印加される。第1の比較的高い周波数は12~100kHzの範囲内であり、第2の比較的低い周波数は1~5kHzの範囲内である。
【0031】
全体では、典型的には、6つの異なる信号があり、3つの対の身体表面電極の各々に対して2つの周波数がある。したがって、電極32及び33は、心臓38において誘起される6つの結果として生じる電圧を測定し、これらは典型的には、インピーダンスに変換される(すなわち、前述のAVL又はACL方法を使用して)。
【0032】
低周波数でのACL又はAVL取得は、高周波数でなされたものよりも正確である。しかしながら、低周波数ポジション信号は、組織接触に敏感である。このため、外向き電極が組織と物理的に接触しているときにカテーテルの正確なポジションを得るために、低周波数ポジション信号は、正反対の内向き電極33によって取得される。
【0033】
位置測定システム30は、他の体腔で使用されてもよい。他のプローブを使用することもでき、これらのプローブは、内向きの電極を含むことができる限られた体積を有する。同様の限られた体積を有するカテーテルの幾何学形状の例には、PENTARY(登録商標)及びLASSO(登録商標)があり、どちらもBiosense-Webster製である。
【0034】
典型的には、システム30は他の要素を含み、それらは、簡略化のために図には示されておらず、必要に応じて、以下の説明で言及される。例えば、システム30は、ECG同期信号をコンソール24に提供するために、1つ又は2つ以上の身体表面のECG電極からの信号を受信するように連結されたECGモニタを含んでもよい。別の例として、システム30は、アブレーションカテーテル及び/又は追加のマッピングカテーテルなどの、1つ又は2つ以上の追加のカテーテルを備えてもよい。したがって、図1の構成は、概念を分かりやすくするだけの目的で選択された例示的な構成である。代替的な実施形態では、他の任意の好適な構成もまた用いることができる。
【0035】
身体表面電極を使用するカテーテルの電極のポジション検知のための別の方法は、アクティブ電流位置(ACL)であり、それは、様々な医療用途において、例えば、Biosense-Webster Inc.(Irvine,California)によって生産されているCARTO(商標)システムに実装されており、米国特許第7,756,576号、同第7,869,865号、同第7,848,787号、及び同第8,456,182号に詳細に記載され、これらの開示は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
プロセッサ46は通常、本明細書に記載される機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされた汎用プロセッサを含む。そのソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でプロセッサにダウンロードしてもよく、あるいは、それに代えて若しくはそれに加えて、磁気的メモリ、光学的メモリ、又は電子的メモリなどの有形のメディア上に提供及び/又は記憶されてもよい。
【0037】
具体的には、プロセッサ46は、位置及びそれぞれの近接度の計算を含む、開示されたステップをプロセッサ46が実行することを可能にする専用アルゴリズムを実行する。
【0038】
アクティブ電流位置(ACL)及び組織近接度指示(TPI)を組み合わせたシステム
図2は、本発明の一実施形態による、図1のEAシステムによって使用されるバスケットカテーテルの概略描写図である。見られるように、シャフト22の遠位端に連結されたカテーテル40は、複数の伸縮可能なスパイン49を備える。
【0039】
各スパイン49は、その外面に多数の外向き電極32を担持する。このため、カテーテル40が心臓38の空洞内に配置されて診断EP信号を取得するとき、外向き電極32の一部は組織と繰り返し接触する。それぞれの多数の内向き電極33は、外向き電極32と正反対のスパイン49によって担持され、スパイン49によって画定されるシャフト22を中心とした回転表面によって画定される内部体積に面していると区別することができる。それぞれの外向き電極32の反対側の各内向き電極33は、血液のみと接触する。
【0040】
上記のように、外向き電極32及び正反対の内向き電極33両方の各々は、高周波数及び低周波数電気信号の重ね合わせを取得する。いくつかの実施形態では、外向き電極32によって取得された高及び低周波数信号から計算された電気インピーダンスに基づいて、プロセッサは、カテーテルの組織近接度指示(TPI)を提供する。内向き電極33によって取得された低周波数信号から計算された電気インピーダンスに基づいて、プロセッサは、TPIが指示された(すなわち、前述のACL又はAVLを使用して)と同時にカテーテルのポジションを計算する。
【0041】
図2に示されている図は、単に概念を明確化する目的のために選択されている。図2は、本発明の実施形態に関連する部分のみを示す。例えば、明瞭にするために、アブレーション電極及び温度センサなどのカテーテル40の他の可能な要素は省略されている。
【0042】
図3は、本発明の一実施形態による、アクティブ電流位置(ACL)と組織近接度指示(TPI)とを組み合わせることによるEAマッピングの方法を概略的に示すフローチャートである。このプロセスは、医師56が、カテーテルポジショニングステップ72で、心臓腔の内部などの器官の空洞内の所与のポジションにカテーテル40を定置することから始まる。次に、身体表面電極60Pの対の間で変調された電圧の重ね合わせを伝送するEAマッピングシステム30は、実質的に平行して、近接度取得ステップ74で、外向き電極32を使用して近接度信号を、及びポジション取得ステップ76で、内向き電極33を使用してポジション信号を、取得する。近接度及びポジション信号の本質的に同時の取得に基づいて、プロセッサ46は、位置及び近接度計算ステップ78で、専用アルゴリズムを使用して、空洞内のカテーテル40のTPI及びACLを提供する。医師56が、空洞内のカテーテル40のポジションを(例えば、N回)繰り返し変更すると、ポジション変更ステップ80で、ステップ74~78のプロセスはそれ自体を繰り返す。プロセッサ46によって計算された2NのTPI及びACL指示に基づいて、プロセッサ46は、解剖学的マップ導出ステップ82で、空洞(例えば、心臓腔)の解剖学的マップを導出する。
【0043】
図3に示されたフローチャートは、単に概念を明確化する目的のために選択されている。例えば、代替実施形態では、カテーテル40の各ポジションにおいて、システム30は、心臓内心電図を更に取得する。
【0044】
一実施形態では、低周波数測定信号から計算された電気インピーダンスに基づいて、プロセッサは、内向き電極のポジションを(すなわち、ACL又はAVLを使用して)計算する。低周波数信号は、一般に、低周波数ポジション信号が高周波数信号よりも幾分正確であるために使用される。
【0045】
代替的な実施形態では、外向き電極によっても取得される高周波数信号は、例えば、内向き電極を使用して測定されるポジションの任意の曖昧さを取り除くために、追加のポジション信号として使用される。高周波数信号は、場合によっては、組織接触に対してほとんど反応しないため、この方法で使用されることがある。別の実施形態では、TPIは、外向き電極及び反対側の内向き電極で測定された低周波数インピーダンスの比を使用して確立される。内向き電極は、血液のみと接触しているため、使用され得る。
【0046】
本明細書に記載されている実施形態は、主に、心臓用途に対処するものであるが、本明細書に記載されている方法及びシステムはまた、身体内の異なる位置での大きな血管の解剖学的マッピングになど、他の用途に使用することもできる。
【0047】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていないそれらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0048】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
患者の身体に取り付けられた1つ又は2つ以上の対の身体表面電極の間で電気信号を伝送することと、
前記患者の器官内に挿入された医療用プローブの外向き電極及び内向き電極によって、前記伝送された電気信号から生じる電位を取得することと、
前記外向き電極によって取得された前記電位に基づいて、前記器官の表面組織に対する前記医療用プローブの近接度を推定することと、
前記内向き電極によって取得された前記電位に基づいて、前記器官内の前記医療用プローブのポジションを推定することと、を含む、方法。
(2) 前記プローブの前記ポジションを推定することは、(i)前記内向き電極の前記推定ポジション、及び(ii)前記プローブ内の前記外向き電極と前記内向き電極との間の既知の幾何学的関係に基づいて、前記外向き電極のポジションを計算することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記電気信号を伝送することは、第1の周波数を有する第1の信号と、前記第1の周波数よりも高い第2の周波数を有する第2の信号との重ね合わせを伝送することを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記組織近接度を推定することは、前記第1の周波数及び前記第2の周波数それぞれで前記取得された電位から導出されていた第1のインピーダンスと第2のインピーダンスとの間の比を計算することと、前記比に基づいて前記組織近接度を計算することと、を含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記プローブの前記ポジションを推定することは、前記第1の周波数で前記内向き電極によって取得された前記電位から導出されたインピーダンスを計算することと、前記インピーダンスに基づいて前記プローブの前記ポジションを計算することと、を含む、実施態様3に記載の方法。
【0049】
(6) 前記外向き電極及び前記内向き電極は、互いに正反対に配設されている、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記電位を取得することは、血液内を伝搬する電位を取得することを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記電位を取得することは、前記外向き電極と接触している組織内を伝搬する前記電位を取得することを含む、実施態様1に記載の方法。
(9) システムであって、
患者の身体に取り付けられ、かつ電気信号を前記身体内に伝送するように構成されている、1つ又は2つ以上の対の身体表面電極と、
プロセッサであって、
前記伝送された電気信号から生じる、前記患者の器官内に挿入された医療用プローブの外向き電極及び内向き電極によって取得されている電位を示す信号を受信し、
前記外向き電極によって取得された前記電位を示す前記信号に基づいて、前記器官の表面組織に対する前記医療用プローブの近接度を推定し、かつ
前記内向き電極によって取得された前記電位を示す前記信号に基づいて、前記器官内の前記医療用プローブのポジションを推定するように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
(10) 前記プロセッサは、(i)前記内向き電極の前記推定ポジション、及び(ii)前記プローブ内の前記外向き電極と前記内向き電極との間の既知の幾何学的関係に基づいて、前記外向き電極のポジションを計算することによって、前記プローブの前記ポジションを推定するように構成されている、実施態様9に記載のシステム。
【0050】
(11) 前記1つ又は2つ以上の対の身体表面電極は、第1の周波数を有する第1の信号と、前記第1の周波数よりも高い第2の周波数を有する第2の信号との重ね合わせを伝送するように構成されている、実施態様9に記載のシステム。
(12) 前記プロセッサは、前記第1の周波数及び前記第2の周波数それぞれで前記取得された電位から導出されていた第1のインピーダンスと第2のインピーダンスとの間の比を計算することと、前記比に基づいて前記組織近接度を計算することとによって、前記組織近接度を推定するように構成されている、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記プロセッサは、前記第1の周波数で前記内向き電極によって取得された前記電位から導出されたインピーダンスを計算することと、前記インピーダンスに基づいて前記プローブの前記ポジションを計算することとによって、前記プローブの前記ポジションを推定するように構成されている、実施態様11に記載のシステム。
(14) 前記外向き電極及び前記内向き電極は、互いに正反対に配設されている、実施態様9に記載のシステム。
(15) 前記1つ又は2つ以上の対の身体表面電極は、血液内を伝搬する電位を受信するように構成されている、実施態様9に記載のシステム。
【0051】
(16) 前記1つ又は2つ以上の対の身体表面電極は、前記外向き電極と接触している組織内を伝搬する電位を受信するように構成されている、実施態様9に記載のシステム。
図1
図2
図3