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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】強調画像モデル作成システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 17/05 20110101AFI20231218BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
G06T17/05
G09B29/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019195000
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2021068349
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】向山 栄
【審査官】村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-133952(JP,A)
【文献】特開平01-131589(JP,A)
【文献】特開平07-210704(JP,A)
【文献】国際公開第2005/124691(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 11/60
G06T 17/05
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面位置情報を有する複数の画素で構成された基礎画像モデルを用いて、強調画像モデルを作成するシステムにおいて、
前記基礎画像モデルを構成するそれぞれの前記画素には、明度を含む色情報が付与され、
前記基礎画像モデルを読み出すとともに、あらかじめ設定された2以上の基準点から前記画素までの直線距離である視線距離を、該画素ごとに求める視線距離算出手段と、
前記色情報のうちの明度を前記視線距離に応じて変更した強調色情報を、前記画素ごとに設定する強調色情報設定手段と、を備え、
前記視線距離算出手段は、それぞれの前記基準点に係る前記視線距離を前記画素ごとに求め、
前記強調色情報設定手段は、前記視線距離が短いほど明るくなるように前記強調色情報を設定するとともに、2以上の前記基準点に係る該視線距離に基づいて該強調色情報を前記画素ごとに設定し、
それぞれの前記画素に対して前記強調色情報を付与することによって、前記強調画像モデルを作成する、
ことを特徴とする強調画像モデル作成システム。
【請求項2】
前記基準点を移動させる基準点移動手段と、
前記画素ごとに前記強調色情報を出力した画像を描画する描画手段と、をさらに備え、
前記視線距離算出手段は、前記基準点の移動に伴って前記視線距離を前記画素ごとに求め、
前記強調色情報設定手段は、前記基準点の移動に伴って前記強調色情報を前記画素ごとに設定し、
前記描画手段は、前記基準点の移動に伴って前記画像を描画する、
ことを特徴とする請求項1記載の強調画像モデル作成システム。
【請求項3】
前記基礎画像モデルを構成するそれぞれの前記画素は、高さ情報を有し、
前記視線距離算出手段は、前記画素の平面位置情報及び高さ情報に基づいて前記視線距離を求める、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の強調画像モデル作成システム。
【請求項4】
前記強調色情報設定手段は、前記視線距離に応じて明度係数を求めるとともに、該明度係数を明度に乗ずることによって前記強調色情報を設定する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の強調画像モデル作成システム。
【請求項5】
前記強調色情報設定手段は、前記視線距離の2乗に応じて前記明度係数を求める、
ことを特徴とする請求項4記載の強調画像モデル作成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、地形を表現する技術に関するものであり、より具体的には、例えば視点からの距離に応じて明るさを強調した画像を作成するための強調画像モデル作成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国は地震が頻発する国として知られ、近年では、東北地方太平洋沖地震をはじめ、兵庫県南部地震、北海道胆振東部地震など大きな地震が発生し、そのたびに甚大な被害を被ってきた。例えば、兵庫県南部地震では強い直下型地震による衝撃が原因で多くの家屋が倒壊し、また東日本大震災では津波によって夥しい数の家屋が壊滅的な被害を受けた。
【0003】
我が国の陸域には、およそ2000の活断層が存在するといわれているが、すべての活断層の位置が明確になっているわけではなく、現在も文部科学省をはじめとする各機関で鋭意調査が進められている。活断層の調査手法には、地形観察、実施測量、トレンチ調査、弾性波探査といった物理探査など現地で行う調査と、空中写真判読などの机上調査があるが、一般的には、まず机上調査で活断層と疑われるいわば活断層候補を把握し、その後に特定の活断層候補に対して詳細な現地調査を行っている。
【0004】
従来、机上調査として行われてきた空中写真判読は、航空機などで地形を撮影した2枚の空中写真を並べ、人が立体視することによって地形の起伏などを読み取り、活断層の存在を把握するものである。この空中写真判読には熟練を要するため誰でも実施できるものではなく、また立体視した状態の画像を他人に示すことが極めて困難な手法である。
【0005】
一方、コンピュータの性能や情報化技術の高度化に伴い、近年では地形を3次元の地形モデル(以下、「数値標高モデル」という。)として取り扱うケースが増えてきた。この数値標高モデルとしては、地表面を覆う樹木や建造物など(以下、「被覆物」という。)を地形モデルとして含む数値表層モデル(DSM:DigitalSurfaceModel)や、被覆物を除く純粋な地表面を表す数値標高モデル(DEM:DigitalElevationModel)などを例示することができる。いずれにしろ数値標高モデルは、コンピュータによる処理が可能なものであり、立体的な表現を可能にするものである。
【0006】
数値標高モデルを利用して地形を立体的に表現する手法としては、陰影図や傾斜量図、標高段彩図といった正射影画像を作成する手法、あるいは起伏や地物の奥行などが理解しやすい鳥瞰図を作成する手法などが知られている。また本願の出願人が本願に先立って出願した特許文献1では、航空レーザー計測で取得した点群データからDEMを作成し、DEMの各メッシュに傾斜量や標高値などの地形量を付与し、この地形量に基づいてカラー標高図(標高段彩図)やグレースケール傾斜図を作成し、さらにこのカラー標高図とグレースケール傾斜図を合成したカラー標高傾斜図を作成するシステムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-48185
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、人が薄暗闇の中で周囲を見たとき、その景色は距離感が把握しづらいうえに立体的に感得することが難しい。一方、懐中電灯などでその薄暗闇を照らすと、人の視線方向における距離感が把握できるようになり、しかも立体的かつ鮮明に周囲を見ることができるようになる。しかしながら地形を立体的に表現する手法に関し、このように光を照らした効果(以下、「ヘッドライト効果」という。)を発揮するような手法が採られることはなかった。すなわち、従来手法である陰影図や傾斜量図、標高段彩図、鳥瞰図、あるいは特許文献1によるカラー標高傾斜図などは、ヘッドライト効果を奏することがなく、つまり人の肉眼に近い表現を実現するものではなかった。
【0009】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわちヘッドライト効果が期待できる地形の立体的表現を可能にする強調画像モデル作成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、例えば視点からの距離に応じて画素ごとに明度を調整する、という点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0011】
本願発明の強調画像モデル作成システムは、複数の画素(平面位置情報を有する画素)で構成された「基礎画像モデル」を用いて「強調画像モデル」を作成するシステムであり、視線距離算出手段と強調色情報設定手段を備えたものである。なお、基礎画像モデルを構成するそれぞれの画素には、明度を含む色情報が付与されている。視線距離算出手段は、基礎画像モデルを読み出すとともに、あらかじめ設定された基準点から画素までの直線距離である「視線距離」を画素ごとに求める手段である。また強調色情報設定手段は、色情報のうちの明度を視線距離に応じて変更した「強調色情報」を画素ごとに設定する手段であり、視線距離が短いほど明るくなるように強調色情報を設定する。そして、それぞれの画素に対して強調色情報を付与することによって強調画像モデルを作成する。
【0012】
本願発明の強調画像モデル作成システムは、あらかじめ設定された2以上の基準点に基づいて強調画像モデルを作成するものとすることもできる。この場合、視線距離算出手段は、それぞれ2以上の基準点に係る視線距離を画素ごとに求め、強調色情報設定手段は、2以上の視線距離に基づいて強調色情報を画素ごとに設定する。
【0013】
本願発明の強調画像モデル作成システムは、基準点移動手段と描画手段をさらに備えたものとすることもできる。基準点移動手段は、基準点を移動させる手段であり、描画手段は、画素ごとに強調色情報を出力した画像を描画する手段である。この場合、視線距離算出手段は、基準点の移動に伴って視線距離を画素ごとに求め、強調色情報設定手段は、基準点の移動に伴って強調色情報を画素ごとに設定し、そして描画手段は、基準点の移動に伴って画像を描画する。
【0014】
本願発明の強調画像モデル作成システムは、(基準点に代えて)基準平面に基づいて強調画像モデルを作成するものとすることもできる。この場合、視線距離算出手段は、あらかじめ設定された基準平面から画素までの最短距離である視線距離を画素ごとに求める。
【0015】
本願発明の強調画像モデル作成システムは、それぞれの画素が高さ情報を有する基礎画像モデルに基づいて、強調画像モデルを作成するものとすることもできる。この場合、視線距離算出手段は、画素の平面位置情報及び高さ情報に基づいて視線距離を求める。
【0016】
本願発明の強調画像モデル作成システムは、視線距離に応じて明度係数を求めるとともに、この明度係数を明度に乗ずることによって強調色情報を設定するものとすることもできる。この場合、前記視線距離の2乗に応じて明度係数を求めることもできる。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の強調画像モデル作成システムには、次のような効果がある。
(1)本願発明による強調画像モデルに基づいて描画された画像は、ヘッドライト効果によってより実感的に(人の肉眼に近い状態で)地形を立体的に把握することができる。
(2)既製の画像モデル(基礎画像モデル)を利用することができることから、比較的容易かつ低コストの強調画像モデルを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は基礎画像モデルに基づいて描画された地形画像、(b)は強調画像モデルに基づいて描画された地形画像。
図2】基礎画像モデルを模式的に示すモデル図。
図3】本願発明の強調画像モデル作成システムの主な構成を示すブロック図。
図4】本願発明の強調画像モデル作成システムの主な処理の流れを示すフロー図。
図5】平面座標のみを有する画素における基準点からの視線距離を模式的に示すモデル図。
図6】3次元座標を有する画素における基準点からの視線距離を模式的に示すモデル図。
図7】2つの基準点が設定された場合の視線距離を模式的に示すモデル図。
図8】基準点を移動させる場合の強調画像モデル作成システムの主な処理の流れを示すフロー図。
図9】平面座標のみを有する画素における基準平面からの視線距離を模式的に示すモデル図。
図10】3次元座標を有する画素における基準平面からの視線距離を模式的に示すモデル図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明の強調画像モデル作成システムの実施形態の一例を、図に基づいて説明する。
【0020】
1.全体概要
本願発明は、陰影図や傾斜量図、標高段彩図、あるいは鳥瞰図を作成するための基礎となるいわばモデル(以下、「基礎画像モデル」という。)を利用して、明度が強調された画像を作成するためのモデル(以下、「強調画像モデル」という。)を作成することをひとつの特徴としている。図1(a)に基礎画像モデルに基づいて描画された地形画像(以下、単に「基礎画像」という。)を示し、図1(b)に強調画像モデルに基づいて描画された地形画像(以下、単に「強調画像」という。)を示す。図1(a)と図1(b)を見比べると、基礎画像より基礎画像の方が、ヘッドライト効果によって実感的に(人の肉眼に近い状態で)地形を立体的に把握することができることが理解できる。
【0021】
ここで基礎画像モデル200は、図2に示すように対象範囲を分割した複数の小領域(画素PX)で構成されるものである。また基礎画像モデル200を構成するそれぞれの画素PXは、少なくとも平面位置情報(平面座標)を有しており、あるいは平面位置情報に加え高さ情報(つまり3次元座標)を具備することもできる。さらに基礎画像モデル200の各画素PXには、明度を含む色情報が付与されている。
【0022】
本来、色は人の視覚で認識するものであり、個人差が伴うものであるが、近年この色をコンピュータで取り扱うべくモデル化されるようになった。色をモデル化する手法にも種々あり、赤(Red)・緑(Green)・青(Blue)の3色を基本色とするRGB、シアン(Cyan)・マゼンタ(Magenta)・イエロー(Yellow)・ブラック(Keycolor)の4色を基本色とするCMYK、黄・赤・青・緑・黒・白の6色を基本色とするNCSやオストワルト表色系などが知られている。ここでいう色情報とは、RGBや、CMYK、NCS、オストワルト表色系といった色のモデル化によって規定される、「色を特定するための値」を指す。例えばRGBを採用した場合、純色の赤の色情報は(255、0、0)であり、純色の緑の色情報は(0、255、0)、純色の青の色情報は(0、0、255)となる。
【0023】
またここでいう色情報には、いわば明度のみからなるグレースケールも含まれる。グレースケールとは白から黒まで複数の段階に分けるモデルであり、これによって規定される「濃淡の程度を特定する値」がグレースケール値である。例えば、白から黒まで256段階に分けたとすると、白を255というグレースケール値で表し、黒を0というグレースケール値で表すことができる。もちろんグレースケールは、無次元である0~1の範囲で表すことも、0~100%の百分率で表すこともできる。
【0024】
強調画像は、基礎画像モデルの各画素PXが有する色情報のうち特に明度を強調した画像であり、強調画像モデルは、この強調画像を作成するためのモデルである。より詳しくは、光源点や視点としての基準点(あるいは基準平面)を設定したうえで、この基準点や基準平面から各画素PXまでの距離(以下、「視線距離」という。)を求め、さらに視線距離に応じて基礎画像モデルの画素PXの明度を調整することによって新たな色情報(以下、「強調色情報」という。)を設定し、そして強調色情報を各画素PXに付与することで強調画像モデルは作成される。すなわち強調画像モデルは、基礎画像モデルの各画素PXによって構成される(つまり、強調画像モデルと基礎画像モデルを構成する各画素PXは共通する)わけである。なお、視線距離が短いほど明るくなるように強調色情報は設定される。
【0025】
2.強調画像モデル作成システム
図3は、本願発明の強調画像モデル作成システム100の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように強調画像モデル作成システム100は、視線距離算出手段101と強調色情報設定手段102を含んで構成され、さらに基準点移動手段103や描画手段104、基準設定手段105、ディスプレイなどの表示手段106、基礎画像モデル記憶手段107、強調画像モデル記憶手段108を含んで構成することもできる。
【0026】
強調画像モデル作成システム100を構成する視線距離算出手段101と強調色情報設定手段102、基準点移動手段103、描画手段104、基準設定手段105は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。このコンピュータ装置は、パーソナルコンピュータ(PC)や、iPad(登録商標)といったタブレット型PC、スマートフォンを含む携帯端末などによって構成することができる。コンピュータ装置は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリを具備しており、さらにマウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを含むものもある。表示手段106は、このコンピュータ装置のディスプレイを利用するとよい。
【0027】
また基礎画像モデル記憶手段107と強調画像モデル記憶手段108は、汎用的コンピュータの記憶装置を利用することもできるし、そのほかデータベースサーバに構築することもでき、この場合、ローカルなネットワーク(LAN:LocalAreaNetwork)に置くこともできるし、インターネット経由(つまり無線通信)で保存するクラウドサーバとすることもできる。
【0028】
以下、図4を参照しながら本願発明の強調画像モデル作成システム100の主な処理について詳しく説明する。図4は、本願発明の強調画像モデル作成システム100の主な処理の流れを示すフロー図である。なおこれらのフロー図では、中央の列に実施する行為を示し、左列にはその行為に必要なものを、右列にはその行為から生ずるものを示している。
【0029】
まず、基準設定手段105(図3)を用いて基準点を設定する(図4のStep101)。例えばオペレータが、マウス等のポインティングデバイスやキーボードを利用して基準点を入力することができる。なお基準点310は、図5図6に示すように1点のみ設定する仕様とすることもできるし、図7に示すように2点あるいは3点以上の設定が可能な仕様とすることもできる。また基準点310は、例えば基礎画像モデル200が対象とする地形から高い位置(つまり上方)に設定するとよく、そのため3次元空間に配置する(3次元座標を有する)ように設定するとよい。
【0030】
基準点310が設定されると、基礎画像モデル記憶手段107(図3)から基礎画像モデル200が読み出され(図4のStep102)、この基礎画像モデル200と基準点310に基づいて視線距離算出手段101(図3)が「視線距離」を算出する(図4のStep103)。この視線距離400は、基準点310から各画素PXまでの距離であり、特に基準点310から画素PXまでの直線距離として求められる。したがって視線距離400は、画素PXの数だけ算出されるわけである。
【0031】
既述したとおり基礎画像モデル200は、平面位置情報(平面座標)のみを有する(つまり高さ情報がない)画素PXで構成することもできるし、3次元座標を具備する画素PXで構成することもできる。平面座標のみを有する画素PXで構成された基礎画像モデル200を利用する場合、図5に示すように基礎画像モデル200(つまり各画素PX)に所定の「基準高さ(例えば、海抜0mなど)」を与えたうえで視線距離400を算出することができる。具体的には、各画素PXが具備する平面座標と基準高さからなる3次元座標と、基準点310が具備する3次元座標に基づいて、基準点310から画素PXまでの直線距離である視線距離400を算出する。
【0032】
一方、3次元座標を具備する画素PXで構成された基礎画像モデル200を利用する場合は、図6に示すように基礎画像モデル200を構成する各画素PXにあらかじめ高さ情報が与えられていることから、各画素PXが具備する3次元座標と基準点310が具備する3次元座標に基づいて、基準点310から画素PXまでの直線距離である視線距離400を算出するとよい。
【0033】
また2以上の基準点310を設定することもできると説明したが、この場合における視線距離400は、設定した基準点310ごとに求められる。例えば図7に示すケースでは、基準点311と基準点312の2つの基準点310が設定されており、1の画素PXに着目すると、基準点311に係る視線距離401が求められ、さらに基準点312に係る視線距離402が求められるわけである。すなわち、複数の基準点310が設定される場合、視線距離400は、基準点310の数(図7では2つ)と画素PXの数の積(基準点数×画素数)だけ求められることとなる。
【0034】
画素PXごとの視線距離400が算出されると、強調色情報設定手段102(図3)が「強調色情報」を設定する(図4のStep104)。この強調色情報は、基礎画像モデル200の各画素PXが有する明度(以下、「基礎明度」という。)を視線距離400に応じて調整した色情報であり、視線距離400が短いほど明るくなるように、視線距離400が長いほど暗くなるように設定される。
【0035】
例えば強調色情報は、次式(1)により得られる明度(以下、「強調明度」という。)に基づいて算出することもできる。なお、式中のEは強調明度であり、dは視線距離400、F(d)は視線距離400の関数である「明度係数」、Eは基礎明度である。
=F(d)×E (1)
例えば、基礎画像モデル200の各画素PXに色情報としてグレースケール(0~255)が付与されている場合、明度係数F(d)を0~1の範囲で求めることとし、視線距離400が短いほど明度係数F(d)が1に近い値で、視線距離400が長いほど明度係数F(d)が0に近い値で算出されるよう、明度係数F(d)を設定するとよい。また明度係数F(d)は、視線距離400に応じて対象となる面積(例えば光源が照らす面積)が拡がっていくことを考えると、次式(2)に示すように視線距離400の2乗に反比例する関数とすることもできる。なお、式中のa(ただし、a>0)は任意の定数である。
F(d)=a÷d (2)
【0036】
2以上の基準点310を設定した場合、つまり画素PXごとに2以上の視線距離400が得られた場合は、それぞれの視線距離400に基づいて強調色情報を設定するとよい。例えば、複数の視線距離400の統計値(平均値や中央値、最頻値、加重平均値など)をその画素PXにおける代表的な視線距離400とし、この代表的な視線距離400に基づいて強調色情報を設定することができる。
【0037】
画素PXごとに強調色情報が設定されると、この強調色情報をそれぞれの画素PXに対して付与することで強調画像モデルが作成され(図4のStep105)、強調画像モデル記憶手段108(図3)に記憶される。そして描画手段104(図3)が、各画素PXの強調色情報にしたがって強調画像モデルを描画することで、ディスプレイ等の表示手段106(図3)に強調画像を表示する(図4のStep106)。このとき、基準設定手段105(図3)によって基準点310を移動させながら強調画像を表示することもできる。具体的には図8に示すように、基準点310の移動に伴って(図8のStep107)、視線距離算出手段101が画素PXごとに視線距離400を求めるとともに、強調色情報設定手段102が画素PXごとに強調色情報を設定し、さらに描画手段104(図3)が描画して強調画像を表示する。つまり、基準点310が移動するたびに強調画像を表示することで、動画(静止画のコマ送り)として強調画像を表示するわけである。なお基準設定手段105は、オペレータによって基準点310を移動させる仕様とすることもできるし、あらかじめ定められた(あるいは入力された)軌跡にしたがって基準点310を移動させる仕様とすることもできる。
【0038】
ここまで基準点310が設定される場合で説明してきたが、本願発明の強調画像モデル作成システム100は基準点310に代えて基準平面を設定する(図4のStep101)こともできる。基準平面を設定する場合、視線距離400は基準平面から各画素PXまでの最短距離として求められる。例えば図9では基準平面310が水平に設定されており、各画素PXから基準平面320に対して垂直方向(つまり鉛直方向)に伸ばし、その結果得られる線分の長さが視線距離400として求められる。なお、図9に示す基礎画像モデル200は平面座標のみを有するものであり、図5と同様、所定の「基準高さ」が与えられている。これに対して図10に示すように3次元座標を具備する画素PXで構成された基礎画像モデル200を利用する場合は、各画素PXの3次元座標からやはり水平に設定された基準平面320に対して垂直方向(つまり鉛直方向)に伸ばし、その結果得られる線分の長さが視線距離400として求められる。
【0039】
各画素PXの視線距離400が得られると(図4のStep103)、基準点310を設定する場合と同様、画素PXごとに強調色情報を設定し(図4のStep104)、強調画像モデルを作成して(図4のStep105)、強調色画像を描画することができる(図4のStep106)。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本願発明の強調画像モデル作成システムは、山地部の地形をより実感的に閲覧するために利用できるほか、市街地や観光地など様々な地形を閲覧するために利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
100 本願発明の強調画像モデル作成システム
101 (強調画像モデル作成システムの)視線距離算出手段
102 (強調画像モデル作成システムの)強調色情報設定手段
103 (強調画像モデル作成システムの)基準点移動手段
104 (強調画像モデル作成システムの)描画手段
105 (強調画像モデル作成システムの)基準設定手段
106 (強調画像モデル作成システムの)表示手段
107 (強調画像モデル作成システムの)基礎画像モデル記憶手段
108 (強調画像モデル作成システムの)強調画像モデル記憶手段
200 基礎画像モデル
310 基準点
320 基準平面
400 視線距離
PX 画素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10