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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】測定ユニット及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/393 20060101AFI20231218BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20231218BHJP
   B65H 7/14 20060101ALI20231218BHJP
   G01J 3/50 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B41J29/393 105
G03G21/16 104
B65H7/14
G01J3/50
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019204660
(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2021075002
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】徳間 直人
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-301811(JP,A)
【文献】特開2013-113591(JP,A)
【文献】特開2014-082679(JP,A)
【文献】特開平1-208964(JP,A)
【文献】特開2001-069319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00 - 29/70
G01J 3/00 - 4/04
G03G 21/16 - 21/18
B65H 7/00 - 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ローラにより搬送されたシート上に形成されたパッチ画像を読み取るカラーセンサと、
第1ローラと、
第2ローラと、
第3ローラと、
第4ローラと、
前記カラーセンサ、前記第1ローラ、前記第2ローラ、前記第3ローラ及び前記第4ローラを支持する支持部材と、
を備え、
前記シートの搬送方向である第1方向と直交する第2方向において、前記支持部材は移動可能であり、
前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向において、前記支持部材は移動可能であり、
前記第1方向において上流側から下流側に向かって見た場合、前記第1ローラ、前記カラーセンサ、前記第2ローラの順でオーバーラップしており、
前記第2方向において一方側から他方側に向かって見た場合、前記第3ローラ、前記カラーセンサ、前記第4ローラの順でオーバーラップしており、
前記第3方向において、前記支持部材が第1位置にある場合、前記第1ローラ、前記第2ローラ、前記第3ローラ及び前記第4ローラは、前記シートから離間しており、且つ、前記第3方向において、前記第3ローラ及び前記第4ローラは、前記第1ローラ及び前記第2ローラよりも突出しており、
前記第3方向において、前記支持部材が第2位置にある場合、前記第1ローラ、前記第2ローラ、前記第3ローラ及び前記第4ローラは、前記シートに当接していることを特徴とする測定ユニット。
【請求項2】
前記第3ローラと前記第4ローラの各々は、前記支持部材に弾性部材を介して取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の測定ユニット。
【請求項3】
前記カラーセンサは、前記第1方向において前記第1ローラと前記第2ローラの間に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の測定ユニット。
【請求項4】
前記カラーセンサは、
回折格子と、
複数の受光素子を有し、前記回折格子を通過した光を受光するラインセンサと、を有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の測定ユニット。
【請求項5】
変換条件に基づいて画像信号を変換する変換手段と、
前記変換手段により変換された前記画像信号に基づきシートに画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段によりパッチ画像が形成された前記シートを搬送する搬送ローラと、
前記搬送ローラにより搬送された前記シート上に形成された前記パッチ画像を読み取るカラーセンサと、
第1ローラと、
第2ローラと、
第3ローラと、
第4ローラと、
前記カラーセンサ、前記第1ローラ、前記第2ローラ、前記第3ローラ及び前記第4ローラを支持する支持部材と、
前記カラーセンサによる前記パッチ画像の読取結果に基づき、前記変換条件を生成する生成手段と、
を備え、
前記シートの搬送方向である第1方向と直交する第2方向において、前記支持部材は移動可能であり、
前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向において、前記支持部材は移動可能であり、
前記第1方向において上流側から下流側に向かって見た場合、前記第1ローラ、前記カラーセンサ、前記第2ローラの順でオーバーラップしており、
前記第2方向において一方側から他方側に向かって見た場合、前記第3ローラ、前記カラーセンサ、前記第4ローラの順でオーバーラップしており、
前記第3方向において、前記支持部材が第1位置にある場合、前記第1ローラ、前記第2ローラ、前記第3ローラ及び前記第4ローラは、前記シートから離間しており、且つ、前記第3方向において、前記第3ローラ及び前記第4ローラは、前記第1ローラ及び前記第2ローラよりも突出しており、
前記第3方向において、前記支持部材が第2位置にある場合、前記第1ローラ、前記第2ローラ、前記第3ローラ及び前記第4ローラは、前記シートに当接していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記変換条件は、カラープロファイルであることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第3ローラと前記第4ローラの各々は、前記支持部材に弾性部材を介して取り付けられることを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記カラーセンサは、前記第1方向において前記第1ローラと前記第2ローラの間に位置することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
搬送ローラにより搬送されたシート上に形成されたパッチ画像を読み取るカラーセンサと、
第1ローラと、
第2ローラと、
第3ローラと、
前記カラーセンサ、前記第1ローラ、前記第2ローラ及び前記第3ローラを支持する支持部材と、
を備え、
前記シートの搬送方向である第1方向と直交する第2方向において、前記支持部材は移動可能であり、
前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向において、前記支持部材は移動可能であり、
前記第1方向において上流側から下流側に向かって見た場合、前記第1ローラ、前記カラーセンサ、前記第2ローラの順でオーバーラップしており、
前記第2方向において一方側から他方側に向かって見た場合、前記第3ローラ、前記カラーセンサの順でオーバーラップしており、
前記第3方向において、前記支持部材が第1位置にある場合、前記第1ローラ、前記第2ローラ及び前記第3ローラは、前記シートから離間しており、且つ、前記第3方向において、前記第3ローラは、前記第1ローラ及び前記第2ローラよりも突出しており、
前記第3方向において、前記支持部材が第2位置にある場合、前記第1ローラ、前記第2ローラ及び前記第3ローラは、前記シートに当接しており、
前記第2方向において前記支持部材を前記他方側から前記一方側に移動させ、前記シート上の前記パッチ画像を読み取る場合、前記カラーセンサによる前記パッチ画像の読み取りを開始する前に、前記第1ローラと前記第2ローラと前記第3ローラは、前記シートに当接することを特徴とする測定ユニット。
【請求項10】
変換条件に基づいて画像信号を変換する変換手段と、
前記変換手段により変換された前記画像信号に基づきシートに画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段によりパッチ画像が形成された前記シートを搬送する搬送ローラと、
前記搬送ローラにより搬送された前記シート上に形成された前記パッチ画像を読み取るカラーセンサと、
第1ローラと、
第2ローラと、
第3ローラと、
前記カラーセンサ、前記第1ローラ、前記第2ローラ及び前記第3ローラを支持する支持部材と、
前記カラーセンサによる前記パッチ画像の読取結果に基づき、前記変換条件を生成する生成手段と、
を備え、
前記シートの搬送方向である第1方向と直交する第2方向において、前記支持部材は移動可能であり、
前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向において、前記支持部材は移動可能であり、
前記第1方向において上流側から下流側に向かって見た場合、前記第1ローラ、前記カラーセンサ、前記第2ローラの順でオーバーラップしており、
前記第2方向において一方側から他方側に向かって見た場合、前記第3ローラ、前記カラーセンサの順でオーバーラップしており、
前記第3方向において、前記支持部材が第1位置にある場合、前記第1ローラ、前記第2ローラ及び前記第3ローラは、前記シートから離間しており、且つ、前記第3方向において、前記第3ローラは、前記第1ローラ及び前記第2ローラよりも突出しており、
前記第3方向において、前記支持部材が第2位置にある場合、前記第1ローラ、前記第2ローラ及び前記第3ローラは、前記シートに当接しており、
前記第2方向において前記支持部材を前記他方側から前記一方側に移動させ、前記シート上の前記パッチ画像を読み取る場合、前記カラーセンサによる前記パッチ画像の読み取りを開始する前に、前記第1ローラと前記第2ローラと前記第3ローラは、前記シートに当接することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに形成された画像の色を測定する測定ユニット及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、オンデマンドプリンタの市場が拡大している。特に、電子写真方式及びインクジェット方式のオンデマンドプリンタがオフセット印刷市場へ広がりつつある。しかし、市場へ新たに参入するプリンタは、その市場を担ってきたそれまでのオフセット印刷機の画像品質(以下、画質という)を要求される。画質には、粒状性、面内一様性、文字品位、色再現性(色安定性を含む)などがある。しかし、最も重要な画質は、色再現性であると言われている。
【0003】
人は、経験に基づいて期待する色(特に人肌、青空、金属などの色)についての記憶がある。人がイメージとして記憶したこれらの色は、記憶色という。プリンタによって形成された画像の色が記憶色の許容範囲を超えると、人は、違和感を覚える。そこで、プリンタによって形成される画像の色を記憶色に調整することが多くなった。記憶色に限らずOffice系文書においても、モニタとの色の差に違和感を覚えるオフィスユーザ層がいる。また、CG画像の色再現性を追求するグラフィックアーツユーザ層もいる。このように、オンデマンドプリンタに対する色再現性(色安定性を含む)の要求度が増している。
【0004】
色の再現性については、同機種間だけでなく、異機種間、他方式によるプリンタ又は画像表示装置との色の違いも問題になる。そこで、これらの機器同士のカラーマッチングを行うために、画像の色を検出するカラーセンサとICC(インターナショナル・カラー・コンソーシアム)プロファイルと呼ばれる多次元LUTを作成するソフトウェアが用いられる。ICCプロファイルを用いることによってプリンタで出力される色をオフセット印刷機で印刷される色に合わせることができるので、プリンタは、オフセット印刷機の色校正に用いられたり、小部数の生産財として使用されたりする。
【0005】
しかし、オフラインのカラーセンサを用いるカラー・マネージメントの場合、色の測定に時間がかかり、ICCプロファイルの作成が容易ではない。また、作成したICCプロファイルをプリンタのコントローラへアップロードし、アップロードしたICCプロファイルを有効に使用するという作業は、一般ユーザへなかなか普及しない。そこで、画像が形成されたシートを排出する排出部の付近にインラインでカラーセンサを搭載することによって、色の測定をより速く行い、簡単にICCプロファイルを作成し、設定作業を自動化するプリンタが提案されている。特許文献1及び特許文献2は、インラインで搭載されたカラーセンサであって、シート上に形成されたパッチ画像を検出するカラーセンサの色検出精度を向上させたプリンタを開示している。
【0006】
特許文献2のカラーセンサは、プリンタに固定され、シートの搬送方向に配列されたパッチ画像の色を測定する。カラーセンサがプリンタに固定されているため、シートの搬送方向に直交する主走査方向に配列されたパッチ画像の色を測定することができない。つまり、1枚のシートに配列されるパッチ画像の数が少ない。そのため、カラー・マネージメントに必要なシートの枚数が多くなる。
【0007】
そこで、特許文献1は、移動可能なカラーセンサを開示している。カラーセンサを主走査方向に移動させることによって1枚のシートに配列されるパッチ画像の数を多くし、それによって、カラー・マネージメントに必要なシートの枚数を低減することができる。また、主走査方向におけるシートの全域の色を検出して画像均一性を向上させることができるという点でも、カラーセンサを主走査方向に移動させる方式は望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-53346号公報
【文献】特開2013-54324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、カラーセンサが移動する際にカラーセンサとシートの距離が変化することがある。カラーセンサが安価な分光反射計である場合は、カラーセンサの焦点深度が浅いため、カラーセンサとシートの距離が変化するとカラーマッチング精度が低下する。この問題を解決するために、焦点深度が深い分光測色計を用いることも考えられる。しかし、焦点深度が深い分光測色計は高価であるという問題がある。また、カラーセンサとして焦点深度が深いCCDを用いることも考えられるが、CCDは分光測色計よりも色検出精度が低いため、カラーマッチング精度が低下する。このように、カラーセンサを主走査方向に移動させながら色を測定することと、焦点深度が深い高価なカラーセンサが必要になることとは、トレードオフの関係を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明の一実施例による測定ユニットは、
搬送ローラにより搬送されたシート上に形成されたパッチ画像を読み取るカラーセンサと、
第1ローラと、
第2ローラと、
第3ローラと、
第4ローラと、
前記カラーセンサ、前記第1ローラ、前記第2ローラ、前記第3ローラ、及び前記第4ローラを支持する支持部材と、
を備え、
前記シートの搬送方向である第1方向と直交する第2方向において、前記支持部材は移動可能であり、
前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向において、前記支持部材は移動可能であり、
前記第1方向において上流側から下流側に向かって見た場合、前記第1ローラ、前記カラーセンサ、前記第2ローラの順でオーバーラップしており、
前記第2方向において一方側から他方側に向かって見た場合、前記第3ローラ、前記カラーセンサ、前記第4ローラの順でオーバーラップしており、
前記第3方向において、前記支持部材が第1位置にある場合、前記第1ローラ、前記第2ローラ、前記第3ローラ及び前記第4ローラは、前記シートから離間しており、且つ、前記第3方向において、前記第3ローラ及び前記第4ローラは、前記第1ローラ及び前記第2ローラよりも突出しており、
前記第3方向において、前記支持部材が第2位置にある場合、前記第1ローラ、前記第2ローラ、前記第3ローラ及び前記第4ローラは、前記シートに当接していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シートの上のパッチ画像を読み取るカラーセンサがシートに対して移動する際のシートとカラーセンサとの距離の変化を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】画像形成装置の断面図。
図2】調整ユニットの断面図。
図3】プリンタ及び調整ユニットの制御システムを示すブロック図。
図4】カラーセンサの説明図。
図5】ICCプロファイルを示す図。
図6】カラー・マネージメント環境を示す図。
図7】測定ユニットを示す図。
図8】移動ユニットを示す図。
図9】カラーセンサが取り付けられた昇降ユニットを示す図。
図10】測定ユニットの昇降ユニットの動作を示す図。
図11】昇降コロのシート押さえ動作の説明図。
図12】参考例における昇降コロのシート押さえ動作の説明図。
図13】本実施例の昇降コロとシート上のパッチの位置関係を示す図。
図14】色の測定ジョブの動作を示す流れ図。
図15】変形例の昇降コロとシート上のパッチの位置関係を示す図。
図16】別の変形例のシート上のパッチと昇降コロの位置関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(画像形成装置)
本実施形態では電子写真方式のレーザビームプリンタを用いて上記課題の解決方法を説明する。ここでは、一例として、電子写真方式の画像形成装置を採用する。しかし、インクジェットプリンタや昇華型プリンタなども熱乾燥方式による画像定着による同様の課題を有するので、本実施形態は、インクジェット方式の画像形成装置及び昇華方式の画像形成装置にも適用される。
【0014】
図1は、画像形成装置(以下、プリンタという)100の断面図である。プリンタ100は、筐体(本体)101を備える。筐体101は、調整ユニット400に接続されている。調整ユニット400は、後処理装置600に接続されている。筐体101には、エンジン部(画像形成部)200を構成するための各機構と、制御ボード収納部104とが設けられている。制御ボード収納部104には、各機構による各印刷プロセス処理(例えば、給送処理など)に関する制御を行なうエンジン制御部102及びプリンタコントローラ103が収納されている。
【0015】
エンジン部200には、YMCKに対応した4つのステーション120、121、122、123が設けられている。ステーション120、121、122、123は、トナー像をシート110へ転写して画像を形成する像形成手段である。ここで、YMCKは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの略称である。ステーション120、121、122、124は、ほぼ共通の部品により構成されている。エンジン部200は、光学処理機構、定着処理機構、給送処理機構及び搬送処理機構を有する。
【0016】
光学処理機構は、レーザスキャナ部107を有する。レーザスキャナ部107は、半導体レーザ(光源)108、レーザドライバ(不図示)、回転多面鏡(不図示)及び反射鏡109を有する。レーザドライバ(不図示)は、プリンタコントローラ103から出力される画像データに従って半導体レーザ108から出射されるレーザ光をオン/オフする。半導体レーザ108から出射されたレーザ光は、回転多面鏡(不図示)によって主走査方向に偏向される。主走査方向に偏向されたレーザ光は、反射鏡109によって感光ドラム105へ照射され、感光ドラム105の表面上を主走査方向に露光する。
【0017】
像担持体としての感光ドラム105は、回転可能である。一次帯電器111は、感光ドラム105の表面を均一に帯電する。レーザスキャナ部107は、均一に帯電された感光ドラム105の表面へレーザ光を照射して感光ドラム105の表面上に静電潜像を形成する。現像器112は、現像剤としてのトナーで静電潜像を現像してトナー像を形成する。一次転写ローラ118は、トナー像とは逆極性の電圧を印加され、トナー像を中間転写体106へ転写する(一次転写)。カラー画像を形成する場合は、ステーション120、121、122、123によって、イエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像及びブラックトナー像をそれぞれ形成し、中間転写体106上に順次転写する。その結果、フルカラー可視像が中間転写体106上に形成される。尚、感光ドラム105及び現像器112は着脱可能である。
【0018】
シート110は、給送処理機構によって収納庫113から転写ローラ114へ搬送される。転写ローラ114には、トナーと逆極性のバイアスが印加される。転写ローラ114は、シート110を中間転写体106に圧接し、給送処理機構によって副走査方向に搬送されるシート110に転写される(2次転写)。
【0019】
また、中間転写体106の周りには、画像形成開始位置センサ115、給送タイミングセンサ116及び濃度センサ117が配置されている。画像形成開始位置センサ115は、画像形成を行なう際の印刷開始位置を決めるための検出信号を出力する。給送タイミングセンサ116は、シート110の給送のタイミングを決めるための検出信号を出力する。濃度センサ117は、濃度制御時にそれぞれのパッチの濃度を測定するための検出信号を出力する。
【0020】
定着処理機構は、シート110に転写されたトナー像を熱圧によって定着させるための第一定着器150および第二定着器160を有している。第一定着器150は、シート110に熱を加えるための定着ローラ151、シート110を定着ローラ151に圧接させるための加圧ベルト152及び定着完了を検出する第一定着後センサ153を含む。定着ローラ151は、中空ローラであり、内部にヒータを有する。定着ローラ151及び加圧ベルト152は、回転され、シート110を搬送するように構成されている。第二定着器160は、シート110の搬送方向において第一定着器150の下流に配置されている。第二定着器160は、第一定着器150によって定着されたシート110上のトナー像にグロスを付加したり、定着性を確保したりする目的で配置されている。第二定着器160も、第一定着器150と同様に定着ローラ161、加圧ローラ162及び第二定着後センサ163を有する。
【0021】
シート110の種類によっては、シート110を第二定着器160に通す必要が無い場合がある。この場合は、エネルギ消費量低減の目的で、シート110を第二定着器160へ通さずに搬送経路130を通過させる。搬送経路切替フラッパ131は、シート110を搬送経路130へ搬送するか第二定着器160へ搬送するかを切り替える。
【0022】
搬送経路切替フラッパ132は、シート110を搬送経路135へ搬送するか排出経路139へ搬送するかを切り替える。搬送経路135には、反転センサ137が設けられている。シート110の先端は、反転センサ137を通過し、反転部136へ搬送される。反転センサ137がシート110の後端を検出すると、シート110の搬送方向が切り替えられる。搬送経路切替フラッパ133は、シート110を両面画像形成用の搬送経路138へ搬送するか、搬送経路135へ搬送するかを切り替える。搬送経路切替フラッパ134は、シート110を排出経路139へ誘導する誘導部材である。反転センサ137によってシート110の位置検出がなされた後、反転部136でスイッチバック動作することで、シート110の先後端が入れ替えられる。シート110は、排出経路139から調整ユニット400へ搬送される。調整ユニット400は、測定ユニット500を有する。
【0023】
図2は、調整ユニット400の断面図である。操作部180からの指示に従ってシート110に形成されたパッチ画像の色を測定する場合は、排出経路139から搬送ローラ401によって搬送されたシート110は、切替フラッパ421によって搬送路431へ搬送される。シート110は、搬送ローラ405、406、407及び408によって測定ユニット500へ搬送される。シート110は、搬送ローラ409、410、411、412、413、414及び403によって測定ユニット500から切替フラッパ422へ搬送される。シート110は、切替フラッパ422によって搬送路432へ搬送される。シート110は、搬送ローラ415、416、417及び418によって調整ユニット400の排出トレイ423へ排出される。
【0024】
パッチ画像の色を測定しない場合は、排出経路139から搬送ローラ401によって搬送されたシート110は、切替フラッパ421によって搬送路430へ搬送される。シート110は、搬送ローラ402及び403によって切替フラッパ422へ搬送される。切替フラッパ422は、シート110を排出ローラ404へ誘導する。排出ローラ404は、シート110を後処理装置600へ排出する。
【0025】
(カラーセンサ)
以下、シート110に形成された画像の色を測定する測定ユニット500内の測定部(以下、カラーセンサという)551の構造及び色の測定動作を説明する。図4は、カラーセンサ551の説明図である。カラーセンサ551は、白色LED501、レンズ506、回折格子502、ラインセンサ503、演算部504及びメモリ505を有する。白色LED501は、シート110上の測定用パッチ画像(以下、パッチという)Pへ光を照射する発光素子である。レンズ506は、白色LED501から照射された光をシート110上のパッチPに集光し、パッチPから反射した光を回折格子502へ集光する。なお、レンズ506は、省略されてもよい。
【0026】
回折格子502は、パッチPから反射した光を波長ごとに分光する分光部品である。ラインセンサ503(503-1から503-n)は、回折格子502によって波長ごとに分解された光を検出するn個の画素(受光素子)を備えた光検出素子である。演算部504は、ラインセンサ503によって検出された各画素の光強度値から各種の演算を行う。メモリ505は、演算部504が使用する各種データを保存する。演算部504は、例えば、光強度値から分光演算する分光演算部504a及びLab値を演算するLab演算部504bを有する。
【0027】
カラーセンサ551によって検出された分光反射率データは、色の三刺激値を考慮してCIE L色空間へ変換される。ここで、CIEは、国際照明委員会(Commission Internationale de l'Eclairage)の略称である。本実施例のカラーセンサ551は、反射光を回折格子502によって波長ごとに分光して色味を検出する分光測色計である。分光測色計は、RGBによって色味を検出するCIS又はCCDより精度よく色味を検出することができる。一般に、分光測色計の焦点深度は、CCDの焦点深度より浅い。焦点深度が深い分光測色計もあるが、焦点深度が深い分光測色計は高価である。焦点深度が浅い分光測色計は、安価である。
【0028】
カラーマッチング精度や色の安定性についての指標として、ISO 12647-7に記載のカラーマッチング精度規格(IT8.7/4(ISO 12642:1617パッチ)[4.2.2])は、色差ΔEの平均が4.0以下であると規定されている。また、安定性の規格である再現性[4.2.3]では、各パッチの色差ΔEが1.5以下であることが規定されている。上記スペックを満足するためには、カラーセンサの検出精度は、色差ΔEが1.0以下であることが望ましい。なお、色差ΔEは、後述するCIEが定めるL色空間内の2点間(L ,a ,b )(L ,a ,b )における三次元距離(式1)で表すことができる。
【0029】
(調整基本動作の説明)
次に、カラーセンサ551によって検出された結果をプリンタ100内でフィードバックする構成を説明する。プリンタ100は、プロファイルを作成し、プロファイルに基づいてシート110上に画像を形成する。プロファイルを用いて画像を形成する調整基本動作を説明する。優れた色再現性を実現するプロファイルとして、ここでは、近年市場で受け入れられているICC(International Color Consortium)プロファイルを用いることとする。ただし、本実施例は、これに限定されるものではない。ICCプロファイル以外にも、Adobe社のPostScript(登録商標)のレベル2から採用されているCRD(Color Rendering Dictionary)又はPhotoshop(登録商標)内の色分解テーブルを用いてもよい。また、墨版情報を維持するEFI社のColorWise(登録商標)内のCMYKシミュレーションを用いてもよい。ここで、CMYKは、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの略称である。
【0030】
(カラーセンサ551によって分光反射率を測定し、色度を演算)
プリンタ100は、調整ユニット400に接続されている。調整ユニット400に設けられた測定ユニット500は、分光反射率を測定できる読取手段としてのカラーセンサ551を内蔵している。測定ユニット500は、分光反射率を測定し、分光反射率を色度へ変換して色変換プロファイルを自ら作成する。そして、測定ユニット500は、作成した色変換プロファイルを用いて内部変換色処理を行う。
【0031】
白色LED501から照射された光は、パッチ(測定対象物)Pにあたる。反射された光は、回折格子502によって分光され、ラインセンサ503によって受光される。380nm~720nmの各波長領域に配置されたラインセンサ(CMOSセンサ)503は、分光反射率を出力する。本実施例では、検出演算精度向上を図るために、CIEの規定に従って、分光反射率を、等色関数などを介してL(色度)へ変換する。パッチPのYMCK色信号値とLとの関係に基いて、色変換プロファイルであるICCプロファイルが作成される。
【0032】
(L演算)
以下は、分光反射率から色度(L)を算出する方法である(ISO13655で規定)。
a.試料の分光反射率R(λ)を求める(380nm~780nm)。
b.等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)と標準光分光分布SD50(λ)を用意する。なお、等色関数は、JIS Z8701により規定されている。標準光分光分布SD50(λ)は、JIS Z8720によって規定され、補助標準イルミナントD50とも呼ばれる。
c.R(λ)×SD50(λ)×x(λ)、R(λ)×SD50(λ)×y(λ)、R(λ)×SD50(λ)×z(λ)
d.各波長積算 Σ{R(λ)×SD50(λ)×x(λ)}
Σ{R(λ)×SD50(λ)×y(λ)}
Σ{R(λ)×SD50(λ)×z(λ)}
e.等色関数y(λ)と標準光分光分布SD50(λ)の積を各波長積算
Σ{SD50(λ)×y(λ)}
f.XYZ算出
X=100×Σ{SD50(λ)×y(λ)}/Σ{R(λ)×SD50(λ)×x(λ)}
Y=100×Σ{SD50(λ)×y(λ)}/Σ{R(λ)×SD50(λ)×y(λ)}
Z=100×Σ{SD50(λ)×y(λ)}/Σ{R(λ)×SD50(λ)×z(λ)}
g.L算出
L*=116×(Y/Yn)^(1/3)-16
a*=500{(X/Xn)^(1/3)-(Y/Yn)^(1/3)}
b*=200{(Y/Yn)^(1/3)-(Z/Zn)^(1/3)} Y/Yn>0.008856のとき
Y/Yn>0.008856のとき↓ Xn、Yn、Znは標準光三刺激値
(X/Xn)^(1/3)=7.78(X/Xn)^(1/3)+16/116
(Y/Yn)^(1/3)=7.78(Y/Yn)^(1/3)+16/116
(Z/Zn)^(1/3)=7.78(Z/Zn)^(1/3)+16/116
なお、x(λ)、y(λ)、z(λ)は、
と表記するのが普通である。
【0033】
(プロファイル作成処理)
図3は、プリンタ100及び調整ユニット400の制御システムを示すブロック図である。カスタマエンジニアによる部品交換時に、カラーマッチング精度が要求されるジョブの前に、又は、ユーザがデザイン構想段階で最終出力物の色味を知るために操作部180を操作した時に、カラープロファイル作成処理が行われる。
【0034】
プリンタコントローラ103は、プロファイル作成処理を実行する。まず、プロファイル作成の指示は、操作部180を介してプロファイル作成部301へ入力される。プロファイル作成部301は、ISO12642テストフォームであるCMYKカラーチャートを、プロファイルを介さずに出力するように、エンジン制御部102へ信号を送る。プロファイル作成部301は、同時に、通信部450を介して調整ユニット400の制御部451へ測定指示を送る。
【0035】
エンジン制御部102は、プリンタ100を制御して帯電、露光、現像、転写、定着といったプロセスを実行させる。これによって、シート110にはISO12642テストフォームが形成される。制御部451は、カラーセンサ551を制御し、ISO12642テストフォームの色を測定させる。制御部451は、測定した928パッチの測定結果である分光反射率データをプリンタコントローラ103のLab演算部303へ出力する。Lab演算部303は、分光反射率データをLデータへ変換する。Lab演算部303は、Lデータをカラーセンサ用入力ICCプロファイル格納部304を介してプロファイル作成部301へ出力する。なお、Lab演算部303は、分光反射率データを、Lデータの代わりに機器に依存しない色空間信号であるCIE1931XYZ表色系へ変換してもよい。
【0036】
プロファイル作成部301は、エンジン制御部102へ出力したCMYK信号とLab演算部303から入力されたLデータとの関係に基いて、出力ICCプロファイルを作成する。プロファイル作成部301は、作成した出力ICCプロファイルを出力ICCプロファイル格納部305に格納されている出力ICCプロファイルと入れ替える。ISO12642テストフォームは、一般的な複写機が出力可能な色再現域を網羅するCMYK色信号パッチを含んでおり、それぞれの色信号値と測定したL値との関係から色変換表を作成する。つまり、CMYK→Labの変換表(A2Bxタグ)が作成される。この変換表をもとにして、逆変換表(B2Axタグ)が作成される。
【0037】
図5は、ICCプロファイルを示す図である。ICCプロファイルは、ヘッダー、タグとそのデータからなる。タグには、色変換テーブルのタグや、白色点(Wtpt)やプロファイル内部で定義されているLab値によって表現されるある色が再現可能な範囲の内側か外側かを記述する(gamt)タグなどもある。
【0038】
プロファイル作成部301は、ホストコンピュータからI/F308を通じてプロファイル作成命令を受け付けると、作成された出力ICCプロファイルをI/F308を通じてホストコンピュータに出力する。ホストコンピュータは、ICCプロファイルに対応した色変換をアプリケーションプログラムで実行することができる。
【0039】
(色変換処理)
通常のカラー出力における色変換においては、スキャナ部(画像読取装置)などの外部装置からI/F308を介してプリンタコントローラ103へRGB信号値やJapanColor(登録商標)などの標準印刷CMYK信号値が入力される。入力されたRGB信号値や標準印刷CMYK信号値などの画像信号は、外部入力用の入力ICCプロファイル格納部307へ送られる。入力ICCプロファイル格納部307は、I/F308から入力された画像信号に応じて、RGBからLへの変換又はCMYKからLへの変換を実行する。入力ICCプロファイル格納部307に格納されている入力ICCプロファイルは、複数のLUT(ルックアップテーブル)により構成されている。これらのLUTは、例えば、入力信号のガンマをコントロールする1次元LUT、ダイレクトマッピングといわれる多次色LUT、生成された変換データのガンマをコントロールする1次元LUTである。入力された画像信号(RGB信号値又は標準印刷CMYK信号値)は、これらのLUTを用いてデバイスに依存した色空間からデバイスに依存しないLデータへ変換される。
【0040】
***座標へ変換された画像信号は、CMM(カラー・マネージメント・モジュール)306へ入力される。CMM306は、各種の色変換を実行する。たとえば、CMM306は、入力機器としてのスキャナ部の読取色空間と、出力機器としてのプリンタ100の出力色再現範囲のミスマッチをマッピングするGAMUT変換を実行する。また、CMM306は、入力時の光源種と出力物を観察するときの光源種のミスマッチ(色温度設定のミスマッチとも言う)を調整する色変換を実行する。またCMM306は、黒文字判定を行う。CMM306は、LデータをL*'a*'b*'データへ変換し、L*'a*'b*'データを出力ICCプロファイル格納部305へ入力する。色の測定によって作成された出力ICCプロファイルは、出力ICCプロファイル格納部305に格納されている。よって、出力ICCプロファイル格納部305は、新たに作成した出力ICCプロファイルによってL*'a*'b*'データを色変換し、出力機器に依存したCMYK信号へ変換してエンジン制御部102へ出力する。
【0041】
図3で、CMM306は、入力ICCプロファイル格納部307及び出力ICCプロファイル格納部305から分離されている。しかし、CMM306は、カラー・マネージメントを司るモジュールである。CMM306は、図6に示すように、入力プロファイル(印刷ICCプロファイル201)と出力プロファイル(プリンタICCプロファイル202)を使って色変換を行うモジュールである。
【0042】
(色の測定動作の説明)
図7図12を用いて、カラーセンサ551を含んだ測定ユニット500による色の測定動作を説明する。カラーセンサ551は、シート110に形成された測定用パッチ画像P(図13を用いて後述する)の色を測定する。図7は、測定ユニット500を示す図である。図7に示すように、測定ユニット500は、移動ユニット530、昇降ユニット(昇降部)550、第一の駆動ユニット570及び第二の駆動ユニット535を有する。移動ユニット530は、昇降ユニット550を昇降方向RLに移動可能に保持する。第一の駆動ユニット570は、昇降ユニット550が移動ユニット530と一緒にスライド移動するように、移動ユニット530をプリンタ100の前奥方向(以下、移動方向という)MDに移動させる。第二の駆動ユニット535は、昇降ユニット550を移動ユニット530に対して昇降方向RLに移動させる。
【0043】
第一の駆動ユニット570は、移動方向(スライド方向)MDにおける移動ユニット530の位置を検出するスライド位置センサ545を有する。第一の駆動ユニット570は、プリンタ100の筐体101に設けられている。第二の駆動ユニット535は、昇降方向RLにおける昇降ユニット550の位置を検出する昇降位置センサ542を有する。第二の駆動ユニット535は、移動ユニット530に設けられている。
【0044】
昇降ユニット(保持部材)550は、カラーセンサ551を保持する。第二の駆動ユニット535は、昇降ユニット550を昇降させることによって、シート110に対してカラーセンサ551を昇降させる。図2に示すように、シート110の搬送方向CDにおいて測定ユニット500の上流側に搬送ローラ408が設けられ、下流側に搬送ローラ409が設けられている。搬送ローラ408及び409は、測定ユニット500に対してシート110を搬送方向CDに搬送する搬送部を構成する。図7に示すように、測定ユニット500がシート110を搬送方向CDに受け入れた後、移動ユニット530及び昇降ユニット550がともにシート110の面に沿って移動方向MDに動きながらカラーセンサ551によって測定する。移動方向(第一の移動方向)MDは、搬送方向CDに直交しているとよい。昇降方向(第二の移動方向)RLは、移動方向MD及び搬送方向CDに直交しているとよい。
【0045】
図8を用いて移動ユニット530を説明する。図8は、移動ユニット530を示す図である。移動支板531には移動軸受532が取り付けられている。移動軸受532は、移動ベルト533に係合する歯面部と、移動軸534に係合する中空円筒部と、を有する。移動ベルト533は、移動プーリ572及び駆動ベルト573を介して第一のモータ(第一の移動部)571に係合する。すなわち、第一のモータ571が回転することによって、移動ユニット530が移動方向MDに移動される。移動方向MDにおける移動ユニット530の位置は、移動支板531のフラグ部531fがスライド位置センサ545のON/OFFを切り替えた時から送信されるパルス数をカウントすることによって制御される。移動支板531には、第二のモータ(第二の移動部)541及び昇降位置センサ542を含んだ第二の駆動ユニット535が取り付けられている。第二のモータ541は、カラーセンサ551がシート110の面に近づいたり離れたりするように、昇降ユニット550を昇降方向RLに昇降させる昇降部である。昇降位置センサ542は、昇降方向RLにおける昇降ユニット550の位置(昇降高さ)を検出する。
【0046】
図9は、カラーセンサ551が取り付けられた昇降ユニット550を示す図である。図9(a)は、昇降ユニット550の底面図である。図9(b)は、図9(a)のIXB-IXB線に沿って取った断面図である。図9(c)は、図9(a)のIXC-IXC線に沿って取った断面図である。カラーセンサ551は、昇降支板553に取り付けられ、昇降ユニット550に内蔵される。なお、光部551aは、白色LED501(図4)によって照射された光と及びその反射光を表す。
【0047】
シート110の搬送方向CDにおいて、昇降支板553の両端部側には、固定コロ(第一の押さえ部)554がそれぞれ取り付けられている。固定コロ554は、カラーセンサ551の近傍でシート110を押さえることができるように、カラーセンサ551の近傍に配置されている。固定コロ554は、シート110に接触して移動方向MDに移動しながら回転可能なコロである。固定コロ554は、搬送方向CDにおいてカラーセンサ551の上流側および下流側にそれぞれ設けられている。
【0048】
移動方向MDにおいて、昇降支板553の両端部側には、昇降コロ(第二の押さえ部)555がそれぞれ取り付けられている。昇降コロ555は、カラーセンサ551の近傍でシート110を押さえることができるように、カラーセンサ551の近傍に配置されている。昇降コロ555は、軸受556、バネ(弾性部材)557及びホルダ(保持部材)558を介して昇降支板553に取り付けられている。昇降コロ555は、バネ557によって付勢されてホルダ558に対して昇降方向RLに移動可能にホルダ558によって保持されている。昇降コロ555は、シート110に接触して移動方向MDに移動しながら回転可能なコロである。昇降コロ555は、移動方向MDにおいてカラーセンサ551の上流側および下流側にそれぞれ設けられている。昇降ユニット550は、第二の駆動ユニット535によって昇降方向RLに昇降可能であるとともに、移動ユニット530と一緒に移動方向MDに移動可能である。
【0049】
このように、第二の駆動ユニット535によって昇降ユニット550が昇降可能であり、第一の駆動ユニット570の第一のモータ571の回転によって移動ユニット530と昇降ユニット550がともに移動方向MDに往復する。すなわち、昇降ユニット550は、移動方向MDに移動しながら移動方向MDのいずれの位置においても昇降可能である。図9(b)に示すように、昇降コロ555は、固定コロ554より昇降方向RLに突出している。
【0050】
次に、図10を用いて、固定コロ554及び昇降コロ555によってシートを押さえながらカラーセンサ551によって測定する測定ユニット500の動作を説明する。図10は、測定ユニット500の昇降ユニット550の動作を示す図である。図10(a)に示すように、昇降コロ555は、固定コロ554よりもシート110へ向かって距離Lcだけ突出している。図10(a)に示すように、カラーセンサ551を含んだ昇降ユニット550は、シート110へ向かって下降方向RL1に下降される。
【0051】
図10(b)に示すように、昇降コロ555は、固定コロ554よりも先にシート110に当接する。このとき、昇降コロ555はシート110に当接し、固定コロ554とシート110の間には距離Lcの隙間がある。昇降コロ555は、昇降方向RLに移動可能に昇降ユニット550に保持されている。図10(c)に示すように、昇降ユニット550が更に下降方向RL1に下降されると、昇降コロ555がバネ557を押し上げ、昇降コロ555がシート110に当接したまま固定コロ554がシート110に当接する。このように、昇降コロ555がサスペンションのような役割を果たして、先に昇降コロ555がシート110に当接した後に固定コロ554がシート110に当接する。固定コロ554は、昇降方向RLに移動しないように昇降ユニット550に保持されている。
【0052】
図11を用いて、昇降コロ555が固定コロ554よりも先にシート110に当接することによって生じる効果を説明する。図11は、昇降コロ555のシート押さえ動作の説明図である。図11(a)は、何らかの理由によってシート110に発生したループSLを示す図である。シート110へ向かって昇降ユニット550が下降されると、図11(b)に示すように昇降コロ555によってループSLを取り除くことができる。これによって、シート110とカラーセンサ551の間の距離Laを、カラーセンサ551の光部551aに適した所定の距離の範囲内に収めることができる。
【0053】
図11(c)は、参考例として、昇降コロ555が設けられていない昇降ユニット1550を示す図である。昇降コロ555が設けられていない昇降ユニット1550を、ループSLが形成されたシート110へ向かって下降させた場合、図11(c)に示すように、シート110とカラーセンサ551の間の距離Lbが距離Laより小さくなる。距離Lbがカラーセンサ551の光部551aに適した所定の範囲より小さくなると、カラーセンサ551の読取精度、すなわちカラーマッチング精度が低下する。
【0054】
図12を用いて、固定コロ554と昇降コロ555が同時に、又は固定コロ554が昇降コロ555よりも先にシート110に当接する場合を説明する。図12は、昇降コロ555がシート110へ向かって固定コロ554と同じ距離だけ突出している参考例における昇降コロ555のシート押さえ動作の説明図である。図12(a)に示すように、ループSLが形成されたシート110へ向かって昇降ユニット2550が下降方向RL1に下降されると、例えば、図12(b)に示すように昇降コロ555と固定コロ554の間にループSLが寄せられる。このように昇降コロ555と固定コロ554の間の短い距離にループSLが寄せられると、ループSLは、シート110の弾性変形領域を超えて、シワや折れをシート110に形成する。
【0055】
シート110に形成されたシワや折れは、カラーセンサ551カラーマッチング精度を低下させるだけでなく、シート110の搬送不良を引き起こす。また、図12(b)に示すように短いスパンでループSLが形成されると、そのたわみが他の部分へも移動する。そのため、図12(c)に示すように、固定コロ554及び昇降コロ555によって囲まれた内側部分、すなわちカラーセンサ551の光部551aにループSLが残る。この場合、図11(c)に示す状態と同様に、シート110とカラーセンサ551の間の距離がカラーセンサ551の光部551aに適した所定の距離(高さ)の範囲よりも小さくなり、カラーマッチング精度が低下する。
【0056】
これに対して、本実施例によれば、第一の駆動ユニット570によって、移動ユニット530及び昇降ユニット550がともに移動方向MDに移動される。移動方向MDにおける移動ユニット530の位置は、スライド位置センサ545によって検出される。第二のモータ541によって、昇降ユニット550が移動方向MDのいずれの位置でも昇降される。昇降方向RLにおける昇降ユニット550の位置は、昇降位置センサ542によって検出される。昇降ユニット550が下降されると、昇降コロ555がシート110のループSLを固定コロ554よりも先に押さえ、それによって、カラーセンサ551とシート110の測定対象面との間の距離Laを所定の距離の範囲内に収めることができる。これによって、カラーセンサ551の検出精度を向上させることができる。
【0057】
(色の測定ジョブ動作の説明)
次に、図13及び図14を用いて、シート110上に形成された測定用パッチ画像Pの色の測定ジョブ動作を説明する。図14は、色の測定ジョブの動作を示す流れ図である。調整ユニット400の制御部451は、ROM454に保存されたプログラムに従って測定ジョブの動作を実行する。制御部451は、測定ジョブの動作中に生成されたデータをRAM455に保存する。
【0058】
ユーザから測定ジョブが投入されると、制御部451は、測定ジョブを開始する(S801)。プリンタ100によってシート110上に測定用パッチ画像(以下、パッチという)P(P1-1~Pm-n)が形成される(S802)。シート110は、調整ユニット400の測定ユニット500へ搬送される(S803)。測定ユニット500へシートが到達すると、上述したように第一のモータ571によって測定ユニット500は、パッチP1-1の近傍の測定位置MPへ移動される(S804)。
【0059】
図13は、本実施例の昇降コロ555とシート110上のパッチPの位置関係を示す図である。図13(a)は、シート110を上から見た図である。図13(a)は、測定ユニット500が測定位置MPに位置する時のシート110上のパッチP、カラーセンサ551の光部551a、固定コロ554及び昇降コロ555の位置関係を示す。シート110には、パッチPが移動方向(主走査方向)MD及び搬送方向(副走査方向)CDに複数配置されている。シート110の搬送方向CDにおいて、パッチPは、シート110の先端部の最初の行のパッチP1、2行目のパッチP2、・・・、後端部の最終の行のパッチPmを含む。最初の行のパッチP1は、左端部にパッチP1-1、その隣にパッチP1-2、その隣にパッチP1-3、・・・、パッチP1の最終端にパッチP1-nを含む。つづいて、2行目のパッチP2は、右端部にパッチP2-1、その隣にパッチP2-2、その隣にパッチP2-3、・・・、パッチP2の最終端にパッチP2-nを含む。同様にして、パッチPは、最終の行のパッチPmまで配列されている。つまり、一枚のシート110にn×m個のパッチPが配置されている。

【0060】
カラーセンサ551を含む昇降ユニット550は、移動ユニット530とともに、図13(a)に示すように、最初の行の左端部のパッチP1-1から所定の距離だけ外側の測定位置MPへ移動される。その後、制御部451は、第二のモータ541によって昇降ユニット550を下降させる(S805)。昇降ユニット550が下降されると、上述したように昇降コロ555が固定コロ554よりも先にシート110に当接してシート110を押さえ(S806)、シート110のループSLを取り除き、シート110を平面化する。次に、固定コロ554がシート110に当接してシート110を押さえ(S807)、シート110とカラーセンサ551の間の距離Laがカラーセンサ551の光部551aに適した所定の範囲内に収められる。
【0061】
その後、制御部451は、測定ユニット500をパッチP1の読取方向RDにスライド移動させ、パッチP1の測定を開始する(S808)。制御部451は、測定ユニット500をパッチP1の読取方向RDにスライド移動させながら、パッチP1-1~P1-nの測定を行う。パッチP1-nの測定が完了すると、制御部451は、測定ユニット500のスライド移動を終了し、最初の行のパッチP1の測定を終了する(S809)。図13(b)は、測定ユニット500によるパッチP1の測定が終了した状態を示す図である。
【0062】
その後、制御部451は、昇降ユニット550を上昇させる(S810)。制御部451は、最終行のパッチの測定が終了したか否かを判断する(S811)。最終行のパッチの測定が終了していない場合(S811でNO)、制御部451は、搬送部としての搬送ローラ408及び409によってシート110を搬送方向CDにパッチP1からパッチP2の間の距離(所定の搬送距離)だけ搬送する(S812)。図13(c)は、シート110をパッチP1からパッチP2の間の所定の搬送距離だけ搬送された状態を示す図である。
【0063】
その後、制御部451は、昇降ユニット550を下降させる(S813)。昇降コロ555がシート110を押さえる(S814)。次に、固定コロ554がシート110を押さえる(S815)。制御部451は、測定ユニット500をパッチP1の読取方向RDと反対の方向にスライド移動させながら、パッチP2-1~P2-nの測定を行う(S816)。制御部451は、測定ユニット500のスライド移動を終了し、パッチP2の測定を終了する(S817)。図13(d)は、測定ユニット500によるパッチP2の測定が終了した状態を示す図である。
【0064】
その後、制御部451は、昇降ユニット550を上昇させる(S818)、処理をS811へ戻す。S811~S818の処理は、測定ユニット500が最終行のパッチPmの測定を完了するまで繰り返される。測定ユニット500は、一方向(読取方向RD)に移動しながら一行のパッチPを測定し、反対方向(読取方向RDと反対の方向)に移動しながら次の行のパッチPを測定する。このように、測定ユニット500は、移動方向MDに沿って往復移動しながらパッチPを測定する。最終行のパッチの測定が終了した場合(S811でYES)、制御部451は、シート110を測定ユニット500から排出し(S819)、測定ジョブを終了する(S820)。
【0065】
上述したように、カラーセンサ551を有する測定ユニット500は、移動方向(主走査方向)MDに移動可能である。これによって、測定ユニット500は、移動方向MDに配置された複数のパッチPを測定することができる。したがって、シート110の幅方向及び長さ方向の全体にわたって複数のパッチPを配置することができるので、より多くのパッチPをシート110に配置することができる。すなわち、測定に必要なシートの枚数を削減することができる。また、シート110の全域にパッチPを配置することができるため、シート110の面内の濃度均一性の補正をすることも可能となる。
【0066】
カラーセンサ551の近傍に設けられた昇降コロ555及び固定コロ554によってシート110を平面化し、シート110とカラーセンサ551の間の距離Laを所定の距離(高さ)の範囲内にすることができる。これによって、測定ユニット500にカラーセンサ551として安価で焦点深度が浅い分光測色計を搭載することができる。分光測色計のカラーマッチング精度は、CCDのようなRGBセンサのカラーマッチング精度より高い。一般的に、安価な分光測色計は焦点深度が浅く、焦点深度が深い分光測色計は高価である。
【0067】
図15は、変形例の昇降コロ1555とシート110上のパッチPの位置関係を示す図である。本実施例の変形例の測定ユニット1500は、昇降コロ1555を一つだけ有する。昇降コロ1555は、読取方向RDにおいて光部551aの下流側に設けられ、昇降コロ1555によってシート110を押さえながら昇降コロ1555の上流側で測定を行う。測定ユニット1500は、常に一方向(図15の左から右へ向かう読取方向RD)のみに移動しながら測定を行う。もし、読取方向RDと反対の方向に移動しながら測定を行うと、昇降コロ1555の下流側で光部551aが測定を行うため、シート110とカラーセンサ551の間の距離を所定の距離の範囲内にすることができない。そこで、1行のパッチPの測定が終了する度に、測定ユニット1500は、読取方向RDと反対の方向に移動する。そのため、測定時間が長くなる。
【0068】
図16は、別の変形例のシート110上のパッチPと昇降コロ1555の位置関係を示す図である。本実施例の別の変形例の測定ユニット1500も、昇降コロ1555を一つだけ有する。測定時間を短くするために、移動方向MDにおける両端部のパッチPを削除する。移動方向MDにおける一行のパッチP1-1~P1-kの個数kは、図15に示す変形例の一行のパッチP1-1~P1-nの個数nより2つ以上小さい(k≦n-2)。図16に示す別の変形例においては、パッチPの個数が減ってしまうこと及びシート110の移動方向MDにおける端部の測定ができないことによって、シート面内の一様性が低下する。
【0069】
よって、本実施例の測定ユニット500は、移動方向MDにおいてカラーセンサ551の上流側及び下流側のそれぞれに昇降コロ555が設けられている。これによって、測定時間を短縮しつつシート110の面内の広い領域で測定を行うことができる。本実施例によれば、シート面内の色の一様性を高め、カラーマッチング精度を向上することができる。
【0070】
本実施例によれば、測定ユニット500は、シート110を押さえながらカラーセンサ551によって画像の色を測定することができる。これによって、シート110とカラーセンサ551の間の距離を所定の距離の範囲内にすることができる。したがって、焦点深度の浅い安価なカラーセンサ551を用いることができる。また、シート110の搬送方向CDに直交する移動方向MDにカラーセンサ551が移動するので、シート110の略全域を測定できる。よって、1枚のシート110に多くのパッチPを配置することができ、色の測定に必要なシート110の枚数を減らすことができる。また、シート110の略全域の面内均一性を補正することができる。
【0071】
本実施例によれば、シート110の上の画像の色を測定するカラーセンサ551がシート110に対して移動する際のシート110とカラーセンサ551との距離の変化を低減することができる。
【符号の説明】
【0072】
200・・・エンジン部(画像形成部)
408、409・・・搬送ローラ(搬送部)
500・・・測定ユニット
541・・・第二のモータ(第二の移動部)
551・・・カラーセンサ(測定部)
554・・・固定コロ(第一の押さえ部)
555・・・昇降コロ(第二の押さえ部)
571・・・第一のモータ(第一の移動部)
CD・・・搬送方向
MD・・・移動方向(第一の移動方向)
RL・・・昇降方向(第二の移動方向)
図1
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