IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋化成工業株式会社の特許一覧 ▶ 日産自動車株式会社の特許一覧

特許7404044リチウム含有負極活物質の製造方法、リチウムイオン電池用負極の製造方法及びリチウムイオン電池の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】リチウム含有負極活物質の製造方法、リチウムイオン電池用負極の製造方法及びリチウムイオン電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/36 20060101AFI20231218BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20231218BHJP
   H01M 4/587 20100101ALN20231218BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALN20231218BHJP
【FI】
H01M4/36 C
H01M4/36 A
H01M4/139
H01M4/587
H01M4/1393
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019215434
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2021086755
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】小林 真也
(72)【発明者】
【氏名】庄司 直史
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】山内 昇
(72)【発明者】
【氏名】土井 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】住谷 孝治
(72)【発明者】
【氏名】谷頭 幸
(72)【発明者】
【氏名】小川 真輝
(72)【発明者】
【氏名】安東 信雄
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/137041(WO,A1)
【文献】特開2018-101623(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188388(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/36
H01M 4/139
H01M 4/587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池用負極活物質と非水電解液とを含むスラリーにリチウム及び/又はリチウム含有化合物を接触させる接触工程を含むリチウム含有負極活物質の製造方法であって、
前記接触工程において、前記非水電解液に含まれる電解質の濃度が2.5~4.5mol/Lであり、かつ、前記スラリーに含まれる固形分濃度が45~60重量%であることを特徴とするリチウム含有負極活物質の製造方法。
【請求項2】
前記電解質が、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含む請求項1に記載のリチウム含有負極活物質の製造方法。
【請求項3】
前記リチウムイオン電池用負極活物質は、前記リチウムイオン電池用負極活物質の表面の少なくとも一部が、高分子化合物及び導電助剤を含む被覆剤で被覆されてなる被覆負極活物質である請求項1又は2に記載のリチウム含有負極活物質の製造方法。
【請求項4】
前記高分子化合物が、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを単量体とする重合体を含む請求項3に記載のリチウム含有負極活物質の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のリチウム含有負極活物質の製造方法により製造されたリチウム含有負極活物質からなる負極活物質層を得る工程を含み、
前記負極活物質層が、前記リチウム含有負極活物質同士を結着する結着剤を含んでいないことを特徴とするリチウムイオン電池用負極の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のリチウムイオン電池用負極の製造方法により製造されたリチウムイオン電池用負極を、セパレータを介してリチウムイオン電池用正極と組み合わせる工程を含むことを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム含有負極活物質の製造方法、リチウムイオン電池用負極の製造方法及びリチウムイオン電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護のため二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が鋭意行われている。二次電池としては、高エネルギー密度、高出力密度が達成できるリチウムイオン電池(リチウムイオン二次電池ともいう)に注目が集まっている。
【0003】
このようなリチウムイオン電池のエネルギー密度を向上させるために、負極活物質に予めリチウムを含有させる(ドープさせるともいう)方法が行われている。
例えば、特許文献1には、負極活物質層の表面にリチウムを蒸着させることで負極活物質にリチウムをドープする方法が開示されている。
また、特許文献2には、リチウムイオン電池の内部にリチウム源を有する第3電極を配置し、リチウムイオン電池を組み立てた後に、第3電極と負極とを短絡させて、負極にリチウムをドープする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-199216号公報
【文献】特開2017-199510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、ドープが完全に進行せず、表面に残存したリチウムがデンドライトの原因となって電池性能を低下させることや、電極活物質層の表面にリチウムを蒸着させる工程が煩雑でコストが高いなどの問題があった。
また、特許文献2に記載の方法では、ドープ処理を行う電極サイズに応じた第3電極を準備する工程が必要となり、ドープ処理コストが大きくなるという問題があった。また、特許文献2に記載の方法では、電池容量に寄与しない第3電極が電池内部に配置されるためにエネルギー密度を向上させることができないという問題があった。さらに、特許文献1及び特許文献2のいずれの方法においても、ドープ処理に掛かる時間が長いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、リチウム含有負極活物質の製造方法において、ドープ速度を高速化できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、リチウムイオン電池用負極活物質と非水電解液とを含むスラリーにリチウム及び/又はリチウム含有化合物を接触させる接触工程を含むリチウム含有負極活物質の製造方法であって、上記接触工程において、上記非水電解液に含まれる電解質の濃度が2.5~4.5mol/Lであり、かつ、上記スラリーに含まれる固形分濃度が45~60重量%であることを特徴とするリチウム含有負極活物質の製造方法;本発明のリチウム含有負極活物質の製造方法により製造されたリチウム含有負極活物質からなる負極活物質層を得る工程を含み、上記負極活物質層が、上記リチウム含有負極活物質同士を結着する結着剤を含んでいないことを特徴とするリチウムイオン電池用負極の製造方法、及び、本発明のリチウムイオン電池用負極の製造方法により製造されたリチウムイオン電池用負極を、セパレータを介してリチウムイオン電池用正極と組み合わせる工程を含むことを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、リチウム含有負極活物質の製造方法において、ドープ速度を高速化できる方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、リチウムイオン電池と記載する場合、リチウムイオン二次電池も含む概念とする。
【0010】
本発明のリチウム含有負極活物質の製造方法は、リチウムイオン電池用負極活物質と非水電解液とを含むスラリーをリチウム及び/又はリチウム含有化合物と接触させる接触工程を含むリチウム含有負極活物質の製造方法であって、上記接触工程において、上記非水電解液に含まれる電解質の濃度が2.5~4.5mol/Lであり、かつ、上記スラリーに含まれる固形分濃度が45~60重量%であることを特徴とする。
【0011】
[接触工程]
接触工程では、リチウムイオン電池用負極活物質と非水電解液とを含むスラリーにリチウム及び/又はリチウム含有化合物を接触させてリチウム含有負極活物質を含んだ電極組成物を得る。
【0012】
リチウム含有化合物は、被覆負極活物質にリチウムを供給できるものであればよく、例えば、リチウム合金、リチウム塩等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
リチウム合金としては、例えば、Li-Si合金、Li-Sn合金、Li-Al合金、Li-Al-Mn合金等が挙げられる。
リチウム塩としては、例えば、炭酸リチウムやクエン酸リチウム等が挙げられる。
【0013】
接触工程において用いられるリチウム及び/又はリチウム含有化合物の形態は特に限定されず、板状であってもよく、粒子状であってもよいが、板状であることが好ましい。
【0014】
リチウム及び/又はリチウム含有化合物が板状である場合には、スラリーに板状のリチウム及び/又はリチウム含有化合物を押し当てることにより接触工程を行ってもよい。
この場合、リチウム及び/又はリチウム含有化合物は上記スラリーと混ざらず、リチウム及び/又はリチウム含有化合物に含まれるリチウムイオンだけが、上記スラリー中の負極活物質と反応する。
【0015】
リチウム及び/又はリチウム含有化合物が粒子状である場合には、スラリーと粒子状のリチウム及び/又はリチウム含有化合物とを混練することにより接触工程を行ってもよい。
この場合、混練中に負極活物質とリチウム及び/又はリチウム含有化合物とが反応し、リチウム含有負極活物質と非水電解液とを含む電極組成物が得られる。
この電極組成物には、未反応のリチウム及び/又はリチウム含有化合物が含まれていてもよいが、未反応のリチウム及びリチウム含有化合物が含まれていないことが好ましい。
【0016】
接触工程では、非水電解液に含まれる電解質の濃度が2.5~4.5mol/Lである。
非水電解液に含まれる電解質の濃度が2.5~4.5mol/Lであると、スラリーのリチウムイオン伝導度が充分に高く、リチウムイオン電池用負極活物質に対するリチウム及び/又はリチウムイオンのドープ速度を速めることができる。
電解質の上記濃度が2.5mol/L未満であると、非水電解液中のリチウムイオン濃度が低すぎて、リチウムイオン伝導度が低下してしまうことがある。一方、電解質の上記濃度が4.5mol/Lを超えると、非水電解液の粘度が高くなり、リチウムイオン伝導度が低下してしまうことがある。
【0017】
接触工程では、スラリーに含まれる固形分濃度が45~60重量%である。
スラリーに含まれる固形分濃度が45~60重量%であると、リチウムイオン電池用負極活物質同士の距離が、リチウムイオンの移動に適した位置に保たれ、リチウム及び/又はリチウムイオンのドープ速度を速めることができる。
上記固形分濃度が45重量%以上であると、リチウム及び/又はリチウム含有化合物とリチウムイオン電池用負極活物質との接触頻度が向上してドープ速度を高速化させることができる。一方、上記固形分濃度が60重量%以下であると、スラリー中において非水電解液を保持できる空隙が充分に存在してリチウムイオンの移動経路を確保できるため、ドープ速度を高速化させることができる。
ここで、固形分とはスラリー中の非水電解液以外の成分をいい、固形分濃度とはスラリーの重量を100重量%とした時の固形分の含有割合のことをいう。なお、リチウム及びリチウム含有化合物の重量は、スラリーの重量に含まない。
【0018】
リチウムイオン電池用負極活物質(以下、単に負極活物質ともいう)は、粒子状である。
負極活物質としては、炭素系材料[黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiOx)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金及び珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。
【0019】
これらの中でも、電池容量等の観点から、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物が好ましく、炭素系材料としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素及びアモルファス炭素がさらに好ましく、珪素系材料としては、酸化珪素及び珪素-炭素複合体がさらに好ましい。
【0020】
負極活物質の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01~100μmが好ましく、0.1~20μmであることがより好ましく、2~10μmであることがさらに好ましい。
【0021】
本明細書において、負極活物質の体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
【0022】
負極活物質は、その表面の少なくとも一部が、高分子化合物及び導電助剤を含む被覆剤により被覆された被覆負極活物質であることが好ましい。
負極活物質の表面の少なくとも一部が被覆剤で被覆されていると、負極の体積変化をさらに緩和し易くなり、負極の膨張を抑制することができる。
【0023】
被覆負極活物質は、例えば、負極活物質、高分子化合物及び導電助剤を溶媒中で撹拌した後、溶媒を除去する方法等が挙げられる。
このとき用いる溶媒としては、1-メチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトン、DMF、ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0024】
被覆剤を構成する高分子化合物としては、特開2017-054703号公報に非水系二次電池活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができ、特開2017-054703号公報等に記載の方法で非水系二次電池活物質被覆用樹脂及び非水系二次電池用活物質を混合すること等によって被覆電極活物質粒子が得られる。
【0025】
高分子化合物としては、非水電解液に浸漬した際の吸液率が10%以上であり、飽和吸液状態での引張破断伸び率が10%以上である高分子化合物が好ましい。
【0026】
非水電解液に浸漬した際の吸液率は、非水電解液に浸漬する前、浸漬した後の高分子化合物の重量を測定して、以下の式で求められる。
吸液率(%)=[(非水電解液浸漬後の高分子化合物の重量-非水電解液浸漬前の高分子化合物の重量)/非水電解液浸漬前の高分子化合物の重量]×100
吸液率を求めるための非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積割合でEC:DEC=3:7で混合した混合溶媒に、電解質としてLiPFを1mol/Lの濃度になるように溶解した非水電解液を用いる。
吸液率を求める際の非水電解液への浸漬は、50℃、3日間行う。50℃、3日間の浸漬を行うことにより高分子化合物が飽和吸液状態となる。なお、飽和吸液状態とは、それ以上非水電解液に浸漬しても高分子化合物の重量が増えない状態をいう。
なお、リチウムイオン電池を製造する際に使用する非水電解液は、上記非水電解液に限定されるものではなく、他の非水電解液を使用してもよい。
【0027】
吸液率が10%以上であると、高分子化合物が充分に非水電解液を吸液しており、リチウムイオンが高分子化合物を容易に透過することができるため、負極活物質と非水電解液の間でのリチウムイオンの移動が妨げられることがない。
吸液率は20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。
また、吸液率の好ましい上限値としては、400%であり、より好ましい上限値としては300%である。
【0028】
飽和吸液状態での引張破断伸び率は、高分子化合物をダンベル状に打ち抜き、上記吸液率の測定と同様に非水電解液への浸漬を50℃、3日間行って高分子化合物を飽和吸液状態として、ASTM D683(試験片形状TypeII)に準拠して測定することができる。引張破断伸び率は、引張試験において試験片が破断するまでの伸び率を下記式によって算出した値である。
引張破断伸び率(%)=[(破断時試験片長さ-試験前試験片長さ)/試験前試験片長さ]×100
【0029】
高分子化合物の飽和吸液状態での引張破断伸び率が10%以上であると、高分子化合物が適度な柔軟性を有するため、充放電時の負極活物質の体積変化によって被覆剤が剥離することを抑制しやすくなる。
引張破断伸び率は20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。
また、引張破断伸び率の好ましい上限値としては、400%であり、より好ましい上限値としては300%である。
【0030】
高分子化合物としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などが挙げられ、例えば、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート、ポリサッカロイド(アルギン酸ナトリウム等)及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの中ではビニル樹脂が好ましい。
【0031】
ビニル樹脂は、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを単量体とする重合体であることが好ましい。
すなわち、高分子化合物は、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを単量体とする重合体を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを単量体とする重合体はリチウムイオンの移動度が高いため、被覆剤を介して、負極活物質にリチウムイオンが供給されやすくなり、ドープ速度が向上する。
なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。
【0032】
高分子化合物の重量に占める、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを単量体とする重合体の重量の割合は、5~95重量%であることが好ましい。
【0033】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、下記一般式(1)で表される単量体(a1)が好ましい。
CH=C(R)COOR (1)
[式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数4~12の直鎖アルキル基又は炭素数3~36の分岐アルキル基である。]
【0034】
上記一般式(1)で表される単量体(a1)について、Rは、炭素数4~12の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は、炭素数13~36の分岐アルキル基であることが好ましい。
【0035】
(a11)Rが炭素数4~12の直鎖又は分岐アルキル基である単量体
炭素数4~12の直鎖アルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が挙げられる。
炭素数4~12の分岐アルキル基としては、1-メチルプロピル基(sec-ブチル基)、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基(tert-ブチル基)、1-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基(ネオペンチル基)、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2-エチルペンチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1,2-ジメチルヘキシル基、1,3-ジメチルヘキシル基、1,4-ジメチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、3-メチルオクチル基、4-メチルオクチル基、5-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、7-メチルオクチル基、1,1-ジメチルヘプチル基、1,2-ジメチルヘプチル基、1,3-ジメチルヘプチル基、1,4-ジメチルヘプチル基、1,5-ジメチルヘプチル基、1,6-ジメチルヘプチル基、1-エチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、1-メチルノニル基、2-メチルノニル基、3-メチルノニル基、4-メチルノニル基、5-メチルノニル基、6-メチルノニル基、7-メチルノニル基、8-メチルノニル基、1,1-ジメチルオクチル基、1,2-ジメチルオクチル基、1,3-ジメチルオクチル基、1,4-ジメチルオクチル基、1,5-ジメチルオクチル基、1,6-ジメチルオクチル基、1,7-ジメチルオクチル基、1-エチルオクチル基、2-エチルオクチル基、1-メチルデシル基、2-メチルデシル基、3-メチルデシル基、4-メチルデシル基、5-メチルデシル基、6-メチルデシル基、7-メチルデシル基、8-メチルデシル基、9-メチルデシル基、1,1-ジメチルノニル基、1,2-ジメチルノニル基、1,3-ジメチルノニル基、1,4-ジメチルノニル基、1,5-ジメチルノニル基、1,6-ジメチルノニル基、1,7-ジメチルノニル基、1,8-ジメチルノニル基、1-エチルノニル基、2-エチルノニル基、1-メチルウンデシル基、2-メチルウンデシル基、3-メチルウンデシル基、4-メチルウンデシル基、5-メチルウンデシル基、6-メチルウンデシル基、7-メチルウンデシル基、8-メチルウンデシル基、9-メチルウンデシル基、10-メチルウンデシル基、1,1-ジメチルデシル基、1,2-ジメチルデシル基、1,3-ジメチルデシル基、1,4-ジメチルデシル基、1,5-ジメチルデシル基、1,6-ジメチルデシル基、1,7-ジメチルデシル基、1,8-ジメチルデシル基、1,9-ジメチルデシル基、1-エチルデシル基、2-エチルデシル基等が挙げられる。これらの中では、2-エチルヘキシル基が好ましい。
【0036】
(a12)Rが炭素数13~36の分岐アルキル基であるエステル単量体
炭素数13~36の分岐アルキル基としては、1-アルキルアルキル基[1-メチルドデシル基、1-ブチルエイコシル基、1-ヘキシルオクタデシル基、1-オクチルヘキサデシル基、1-デシルテトラデシル基、1-ウンデシルトリデシル基等]、2-アルキルアルキル基[2-メチルドデシル基、2-ヘキシルオクタデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、2-デシルテトラデシル基、2-ウンデシルトリデシル基、2-ドデシルヘキサデシル基、2-トリデシルペンタデシル基、2-デシルオクタデシル基、2-テトラデシルオクタデシル基、2-ヘキサデシルオクタデシル基、2-テトラデシルエイコシル基、2-ヘキサデシルエイコシル基等]、3~34-アルキルアルキル基(3-アルキルアルキル基、4-アルキルアルキル基、5-アルキルアルキル基、32-アルキルアルキル基、33-アルキルアルキル基及び34-アルキルアルキル基等)、並びに、プロピレンオリゴマー(7~11量体)、エチレン/プロピレン(モル比16/1~1/11)オリゴマー、イソブチレンオリゴマー(7~8量体)及びα-オレフィン(炭素数5~20)オリゴマー(4~8量体)等から得られるオキソアルコールから水酸基を除いた残基のような1又はそれ以上の分岐アルキル基を含有する混合アルキル基等が挙げられる。
【0037】
高分子化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、2,000,000以下であることが好ましく、1,500,000以下であることがより好ましく、1,000,000以下であることがさらに好ましく、800,000以下であることが特に好ましい。また、高分子化合物の数平均分子量は、3,000以上であることが好ましく、50,000以上であることがより好ましく、100,000以上であることがさらに好ましく、200,000以上であることがより特に好ましい。
【0038】
高分子化合物の数平均分子量は、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記)測定により求めることができる。
装置:Alliance GPC V2000(Waters社製)
溶媒:オルトジクロロベンゼン
標準物質:ポリスチレン
検出器:RI
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED-B 2本直列(ポリマーラボラトリーズ社製)
カラム温度:135℃
【0039】
被覆負極活物質に含まれる高分子化合物の重量割合は、特に限定されないが、1~15重量%であることが好ましい。
高分子化合物の上記割合が上記範囲の場合、被覆負極活物質に対するリチウムのドープ速度を高速化することができる。さらに上記高分子化合物の割合が15重量%以下の場合には、負極全体に占める高分子化合物の割合が多くなりすぎず、電池性能の悪化及びエネルギー密度の低下を抑制できる。
【0040】
導電助剤は、導電性を有する材料から選択される。
具体的には、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
これらの導電助剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電助剤としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0041】
非水電解液としては、リチウムイオン電池の製造に用いられる、電解質及び非水溶媒を含有する公知の非水電解液を使用することができる。
【0042】
電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO及びLiN(SOF)等の無機アニオンのリチウム塩、LiN(SOCF、LiN(SO及びLiC(SOCF等の有機アニオンのリチウム塩等が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、LiN(SOF)及びLiPFである。また、ドープ速度を向上させる観点から、電解質は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド[LiN(SOF)]を含むことが好ましい。
非水電解液の電解質濃度は特に限定されないが、1~5mol/Lであることが好ましい。
【0043】
非水溶媒としては、公知の非水電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。
【0044】
ラクトン化合物としては、5員環(γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトン等)及び6員環のラクトン化合物(δ-バレロラクトン等)等を挙げることができる。
【0045】
環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びブチレンカーボネート等が挙げられる。
鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート及びジ-n-プロピルカーボネート等が挙げられる。
【0046】
鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及びプロピオン酸メチル等が挙げられる。
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン及び1,4-ジオキサン等が挙げられる。
鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン及び1,2-ジメトキシエタン等が挙げられる。
【0047】
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(トリフルオロメチル)、リン酸トリ(トリクロロメチル)、リン酸トリ(トリフルオロエチル)、リン酸トリ(トリパーフルオロエチル)、2-エトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン、2-トリフルオロエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン及び2-メトキシエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン等が挙げられる。
ニトリル化合物としては、アセトニトリル等が挙げられる。アミド化合物としては、DMF等が挙げられる。スルホンとしては、ジメチルスルホン及びジエチルスルホン等が挙げられる。
非水溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
非水溶媒の内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及びリン酸エステルであり、更に好ましいのはラクトン化合物、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルであり、特に好ましいのは環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合液である。最も好ましいのはエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液、又は、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合液である。
【0049】
本発明のリチウム含有負極活物質の製造方法において、スラリーには、負極活物質及び非水電解液以外の成分として、導電材料等が含まれていてもよい。
【0050】
接触工程の所要時間は、特に限定されないが、30~180分であることが好ましい。
接触工程の所要時間が30分以上の場合、負極活物質に対するリチウム及び/又はリチウムイオンのドープを充分に進行させることができる場合がある。一方、接触工程の所要時間が180分以下の場合、接触工程に係る時間が長くならず、製造コストを抑制することができる場合がある。
【0051】
負極活物質に対するリチウム及び/又はリチウムイオンのドープ速度は、28mAh/gh以上であることが好ましく、35mAh/g以上であることがより好ましい。
負極活物質に対するリチウム及び/又はリチウムイオンのドープ速度は28mAh/gh以上であると、接触工程に必要な時間が長くならず、製造コストを抑制できる。
なお、負極活物質に対するリチウム及び/又はリチウムイオンのドープ速度は、1時間接触工程を行った場合の、接触工程前後の負極活物質の電極電位の差から求めることができる。
接触工程の所要時間が1時間未満の場合は、単位時間あたりの平均ドープ速度を1時間あたりになおした値とする。
【0052】
接触工程によって得られた電極組成物は、リチウム含有負極活物質及び非水電解液を含む。上記電極組成物をリチウムイオン電池用負極の製造に用いる場合、リチウム含有負極活物質及び非水電解液からなる電極組成物のままで用いてもよく、電極組成物から非水電解液を除去した状態(すなわち、リチウム含有負極活物質のみ)で用いてもよい。さらに、必要に応じて、上記電極組成物に導電材料等を添加してもよい。
【0053】
[リチウムイオン電池用負極の製造方法]
本発明のリチウムイオン電池用負極の製造方法は、本発明のリチウム含有負極活物質の製造方法により製造されたリチウム含有負極活物質からなる負極活物質層を得る工程を含み、上記負極活物質層が、上記リチウム含有負極活物質同士を結着する結着剤を含んでいないことを特徴とする。
【0054】
本発明のリチウムイオン電池用負極の製造方法では、本発明のリチウム含有負極活物質の製造方法により製造されたリチウム含有負極活物質からなる負極活物質層を得る工程を含むため、ドープ速度が速く、リチウム含有負極活物質を製造するまでの製造コストを抑制することができる。
【0055】
さらに、本発明のリチウムイオン電池用負極の製造方法では、負極活物質層が、リチウム含有負極活物質同士を結着する結着剤を含んでいない。
負極活物質層がリチウム含有負極活物質同士を結着する結着剤を含んでいないと、負極活物質層に占めるリチウム含有負極活物質の割合を大きくすることができ、エネルギー密度を高めることができる。
【0056】
従来のリチウムイオン電池における負極活物質層は、負極活物質と結着剤とを溶媒中に分散させたスラリーを集電体等の表面に塗布し、加熱・乾燥させることにより製造されるため、負極活物質層は結着剤により固められた状態となっている。このとき、負極活物質は結着剤により互いに固定されており、負極活物質の位置が固定されている。そして、負極活物質層が結着剤により固められていると、充放電時の体積変化によって負極活物質に過度の応力が掛かり、自壊しやすくなる。
一方で、本発明のリチウムイオン電池用負極の製造方法により得られる負極活物質層は、結着剤を含んでいないため、上述した問題が発生せず、サイクル特性に優れる。
【0057】
結着剤としてはデンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン及びスチレン-ブタジエン共重合体等の公知のリチウムイオン電池用結着剤が挙げられる。
【0058】
なお、負極活物質が被覆負極活物質である場合、負極活物質層中において、例え被覆負極活物質同士が接触したとしても、接触面において被覆剤同士が不可逆的に接着することはなく、接着は一時的なもので、被覆剤を破壊することなくほぐすことができるものであるから、被覆負極活物質同士が不可逆的に被覆剤によって固定されることはない。従って、負極活物質層が結着剤を含まずに構成されている場合には、該負極活物質層を構成する被覆負極活物質同士は、互いに結着されていない。
【0059】
負極活物質層は、導電材料を含んでいてもよい。
導電材料としては、本発明のリチウム含有被覆負極活物質の製造方法において説明した導電助剤と同様のものを好適に用いることができる。
なお、導電助剤が被覆負極活物質の一部を構成する被覆剤に含まれるのに対して、導電材料は被覆剤に含まれない点で明確に区別できる。
【0060】
[リチウムイオン電池の製造方法]
本発明のリチウムイオン電池の製造方法は、本発明のリチウムイオン電池用負極の製造方法により製造されたリチウムイオン電池用負極を、セパレータを介してリチウムイオン電池用正極と組み合わせる工程を含むことを特徴とする。
【0061】
本発明のリチウムイオン電池の製造方法では、本発明のリチウムイオン電池用負極の製造方法により製造されたリチウムイオン電池用負極を、セパレータを介してリチウムイオン電池用正極と組み合わせる工程を含むため、製造コストの抑制と、エネルギー密度及びサイクル特性の向上を両立させることができる。
【実施例
【0062】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。また、特記しない限り全ての操作はドライルーム(露点-40℃)で行った。
【0063】
<製造例1>
[非水電解液の作製]
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)にLiN(SOF)を2.5mol/Lの割合で溶解させて非水電解液を準備した。
【0064】
<実施例1>
[接触工程]
負極活物質である難黒鉛化性炭素(HC)粒子[(株)クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン製カーボトロン(登録商標)PS(F)、数平均粒子径18μm]45部と製造例1で得られた非水電解液55部を混合してスラリーを得る。得られたスラリーを、厚み450μm、直径1.7cm(面積2.3cm)の円盤状基板上に塗布し、上から直径1.7cm(面積2.3cm)の円盤状の金属リチウムを押し当て、1時間接触させて、難黒鉛化性炭素粒子にリチウム及び/又はリチウムイオンをドープして、リチウム含有負極活物質を含む電極組成物を得た。上記スラリーにおける固形分濃度は45重量%であった。
【0065】
[リチウムイオン電池用負極の作製]
得られた電極組成物を、ドクターブレード法により銅箔上に塗布し、アラミドセパレータを介して余分な非水電解液を吸引することで、負極集電体である銅箔の表面に厚さ100μmの負極活物質層が形成されたリチウムイオン電池用負極を得た。
【0066】
[電極電位の測定(ドープ速度の測定)]
リチウムイオン電池用負極をセパレータを介して金属リチウム箔と積層して、アルミラミネートフィルムで封止することによって、試験用ハーフセルを作製した。
ハーフセルの電圧を測定することによって、ドープを行った負極活物質からなる負極の電極電位(vs.Li/Li)を求め、ドープ前の負極活物質からなる負極の電極電位(vs.Li/Li)と比較することによって、1時間あたりのリチウム及び/又はリチウムイオンのドープ速度を測定した。結果を表1に示す。
【0067】
<実施例2~4及び比較例1~5>
スラリーの組成を表1に示すように変更したほかは、実施例1と同様の手順でリチウムイオン電池用負極を作製し、ドープ速度を測定した。結果を表1に示す。
なお、比較例3については、非水電解液に代わって同量の非水溶媒を用いた。
【0068】
<実施例5>
スラリーの組成を表1に示すように変更し、スラリーに対して円盤状の金属リチウムを押し当てる代わりに、スラリーと粒状の金属リチウム2部を1時間混合することによって接触工程を行ったほかは、実施例1と同様の手順でリチウムイオン電池用負極を作製し、ドープ速度を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1の結果より、本発明のリチウム含有負極活物質の製造方法を用いると、ドープ速度を28mAh/ghより速くすることができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のリチウム含有負極活物質の製造方法は、特に、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車及び電気自動車用に用いられる双極型二次電池用及びリチウムイオン二次電池用の負極活物質を製造する方法として有用である。